陸奥湾を回遊するイルカの行動に関する研究

青森大学付属総合研究所紀要 Vol.17, No.2, 12-25, March, 2016
【研究論文】
陸奥湾を回遊するイルカの行動に関する研究
Study on the Migratory Behavior of Pacific White-Sided Dolphin Lagenorhynchus obliquidens In The
Mutsu Bay, Aomori Prefecture
清川 繁人
青森大学薬学部
Abstract
The passenger on the ferry which linked Hakodate to Aomori and the fisherman often observed the wild
dolphins in the region of the Mutsu Bay from spring to summer. The dolphins, migrating the Mutsu bay
called Pacific white-sided dolphin (Lagenorhynchus obliquidens Gill, 1865) mainly inhabits the coastal
waters of the Sea of Japan and the Pacific Ocean, and are thought to move the seas around Japan with the
change of the season. As the first step to know the migration behavior of the dolphins in the Mutsu bay, the
dolphin appearance data provided by the Mutsuwan ferry company crossing the Mutsu bay were
compared with the visual observation from a fishing boat, and the area of Mutsu bay where the dolphins
migrate was determined. From the two sets of data, the dolphin appeared around the entrance of the
Mutsu bay from the end of April, and was observed that the group of a dolphin is distributed throughout
the western bay in May. Dolphins became large groups in June around the western part of the Mutsu bay
and the appearance individual of the dolphins decreased rapidly according to the rise of sea water
temperature. It was suggested that the number of the dolphins which migrates the Mutsu bay is related to
sea water temperature. As long as it was compared with landing data of sardine, it doesn't match
completely the general theory that dolphins are chasing the sardines and migrating around Japan, and
the behavior of dolphins was probably affected by other factors such as photoperiod and climatic
conditions.
Keywords: pacific white-sided dolphin, migration behavior, Mutsu bay, sea water temperature, sardine
Lagenorhynchus obliquidens と 呼 ば れ る
1.はじめに
青函連絡船は明治から昭和に至る期間,
種類で,背びれにカマのような模様があり,
北海道と本州間で物資と人を運んできたが,
イルカの中では小型で活発にジャンプする
春から夏にかけてイルカが目撃されること
特徴を有する.カマイルカは,主に日本海
は,特に修学旅行生を中心に知られていた.
や太平洋の海域に生息し,季節の変化に伴
連絡船廃止後も,青森県外ヶ浜町蟹田とむ
い回遊しているものと考えられている
2)
.
つ市脇野沢を結ぶむつ湾フェリーや,函館
イルカが津軽海峡を経由して陸奥湾に来
-青森間を往来する津軽海峡フェリーから
遊する目的は,エサとなるカタクチイワシ
イルカの目撃例が報告され,むつ湾フェリ
の群れが津軽海峡から陸奥湾の豊富なプラ
ーのホームページには写真と便ごとのイル
ンクトンを求めて入り,それを追いかけて
カ出現個体数が紹介されている
1)
.
きた結果と推測されている
陸奥湾を回遊するイルカはカマイルカ
3)
.またその行
動は海水温の上昇と密接な関連があり
12
4)
,
青森大学付属総合研究所紀要 Vol.17, No.2, 12-25, March, 2016
5)
や
6 月後半に群れのサイズが拡大すること
6)
時期により回遊エリアが移動すること
いては,ビデオでの撮影も同時に実施し,調
査後 PC において照合作業を実施した.
が確認されている.
調査日以外の目視個体データはむつ湾フ
これまで北海道大学水産学部で実施され
ェリー社から提供いただいた.また,回遊行
てきた調査では,津軽海峡フェリーの船上
動に関連があるデータとして,むつ湾の海水
で目視されたデーターから回遊行動の解析
温記録は青森県産業技術センター水産総合研
がなされてきたが,航路が固定しているフ
究所から提供いただき,またイワシの漁獲量
ェリーからでは,海域全体のイルカについ
については青森県農林水産部で公開している
て回遊エリアの詳細を捉えることはできな
漁業統計を用いた.
かった.そこで魚船を定期的にチャーター
3.結果
し,イルカが泳ぐ海域を調査するとともに,
水温や漁業データ,気象などとの相互関係
陸奥湾におけるイルカの回遊時期は年に
を検討することにより,総合的にイルカの
よって異なるが,4~7 月頃までとされている.
回遊行動について解析を試みた.
本研究では目撃頻度の高い 5~6 月にかけて,
毎週調査を実施する予定を立てた.しかし,
2.方法
春は気圧の変化が激しいため強風が吹く頻度
平成 27 年度の調査では 10 回にわたりイル
が高く,6 月に入るとやませの影響から冷た
カの生態調査を行った.実施日は次の通りで
い東寄りの風が吹くことも増加するため,必
ある.
ずしも一週間おきに,一定の時間帯で調査に
5 月 2 日,5 月 9 日,5 月 23 日,5 月
出かけることはできなかった.
24 日,5 月 30 日,6 月 5 日,6 月 7 日,
調査初日の 5 月 2 日は,今別町高野崎沖合
6 月 14 日,6 月 21 日
から平舘海峡にかけて 2 群,約 50 頭のカマ
7 月 5 日(釣り客同乗による無料乗船)
イルカが出現し,時々漁船と併泳する姿が確
認された(図 1,写真 1~3).5 月 2 日以降
蟹田港から漁船(海鵬丸)をチャーターし,
調査メンバーとして薬学部の学生を中心に,
は,6 月 7 日と 7 月 5 日でイルカを 1 頭も目
北海道大学水産学部鯨類研究会の学生,浅虫
視できなかった以外は,毎回異なるエリアで
水族館職員,プロカメラマン,マスコミ関係
確認された(図 2~8).調査の結果から,イ
者などが加わった.調査時間は午後 1 時~午
ルカは 5 月上旬まで今別沖から平舘海峡付近
後 5 時頃で,安全のため風速 6m以下の条件
に分布し,5 月中旬になると蟹田沖へ移動,5
で出港した.船上ではスマートフォンを用い
月下旬から 6 月下旬にかけて大群となって陸
て GPS 位置情報を記録し,国土地理院地図
奥湾を回遊することがわかった.特に陸地か
にマッピングしてイルカの出現エリアを記録
らの調査で,5 月下旬には青森港の岸壁付近
した.一方,出現個体数のカウントは,海中
まで南下が認められた.
にいる全個体数の正確な把握は不可能である
調査で確認された頭数を,むつ湾フェリー
ため,船の周辺を 5 秒間にジャンプした個体
社が公開しているデータと重ね合わせたとこ
数の約 2 倍のイルカが海中で泳いでいる調査
ろ(図 10),むつ湾フェリーの航路はイルカ
実績があり,これを目安として,ジャンプし
の 1 日の回遊ルートと重なっているため,高
た個体数の 3 倍で表した.個体数の確認につ
確率でイルカのウォッチングができる一方,
13
青森大学付属総合研究所紀要 Vol.17, No.2, 12-25, March, 2016
今別~平舘海峡付近や,夏泊~青森港付近を
た塩分濃度の組み合わせで,夏になるほど植
回遊する 4~5 月中旬,6 月中~下旬にはイル
物プランクトンが増殖し,それを求めてイワ
カの群れと交差する機会が減少することがわ
シの群れが回遊してくることが図 12 のデー
かった.特に 6 月下旬は群れが集結して大集
タから示唆された.
団となったが,フェリーから観察できない日
イルカはイワシの他に,小型魚類やイカ類
が多くなった.
を捕食しているものと考えられている
7)
.し
青森県産業技術センター水産総合研究所
かしながら,漁業統計からイルカの回遊時期
では,陸奥湾各所にブイロボットを浮かべ,
と関連を有する魚種は確認できず,これまで
海水温を測定している.様々なデータの中か
の考えと同様,イワシの群れの回遊行動に同
ら平舘沖海面下 1m の海水温を選び出し,イ
調してイルカが陸奥湾に入ってくることは間
ルカ出現数と比較したものを図 11 に示した.
違いないと思われる.ただし,魚種について
これによると,目撃最終日である 6 月 21 日
は平成 27 年は圧倒的にマイワシの漁獲量が
の海水温は約 18℃であった.漁船船長の目撃
多かったため,マイワシが主要なエサであっ
談から,6 月 22 日の早朝にイルカが見られた
た可能性がある.
のを最後に,以降は出現していないとのこと
イワシの漁獲量について詳細に検討する
と急激に数が増えるのは 7 月で,もしイワシ
である.
青森県全域におけるイワシの漁獲データ
を追いかけて移動しているのであれば,7 月
をまとめたのが図 12 である.陸奥湾で漁獲
もイルカは陸奥湾内を回遊しているはずであ
されるイワシはマイワシとカタクチイワシに
る.今回は,7 月初旬にイルカが 1 頭も確認
大別される.マイワシとカタクチイワシの漁
できなかったのを最後に調査を終了したため,
獲量は年次により大幅に変動し,月次漁獲量
それ以降のイルカとイワシの関連を知ること
も月により大幅に変動する.平成 27 年度は
はできなかったが,陸奥湾から出て行った原
圧倒的にマイワシの比率が高く,夏以降,急
因として,海水温の上昇が考えられた.
激に漁獲量が増加し,例えば 6 月に比べ 7 月
青森県産業技術センター水産総合研究所
の漁獲量が約 30 倍に増加していることもわ
から出された水温データによると,平舘沖の
かった.
海面下 1m における海水温が 18℃に到達した
時にイルカが陸奥湾外に移動した.それでは
18℃ が 陸 奥 湾 か ら 出 て い く サ イ ン か ど う か
4.考察
漁船による調査から,4月下旬頃に津軽半
については,年によって陸奥湾の水温の上昇
島の沖合いから平舘海峡付近で見られたイル
速度が異なることから,必ずしも決まった温
カの群れが,その後蟹田沖で頻繁に確認され
度があるとは考えていない.前述の通り,陸
るようになり,5 月下旬以降陸奥湾の西側全
奥湾は暖流と雪解け水の流入によって,海域
域に回遊エリアを広げることがわかった.
によって温度勾配が生じており,4 月~5 月
徐々にイルカが南下するのは,対馬海流の影
上旬までは陸奥湾北部の海水温が高いのに対
響から春先は津軽海峡の水温が高く,山から
し,5 月中旬以降は雪解け水の影響が減って,
の雪解け水の作用で,青森湾や陸奥湾東部の
陸奥湾南側の水深の浅い青森湾で海水温が急
水温が低いからだと思われる.これらの海域
上昇し,温度勾配が逆転する傾向があること
は,雪解け水に含まれるミネラルと希釈され
がわかった.このように,水温の温度分布が,
14
青森大学付属総合研究所紀要 Vol.17, No.2, 12-25, March, 2016
イルカの北上を決める一因となっているのか
やミンククジラ,ウトウなど,貴重な野生生
もしれない.
物を観察することが出来た(写真 4~6).今
イルカの大移動が起こる 6 月で考えておか
後も,陸奥湾を取り巻く地域の活性化,そし
なければならないのは,ちょうどこの頃梅雨
て青函地域の交流を一層盛んなものとするた
入りし,
「やませ」特有の冷たい東風が吹くこ
め,イルカをはじめとする野生生物の行動を
と,そして 6 月下旬に夏至を迎えることであ
探求することで,陸奥湾の自然の豊かさを情
る.
報発信したいと考えている.
イルカは超音波により,前方の障害物を避
5.謝辞
けて泳ぐことが知られているが,現在でも幼
いイルカが漁網に絡まって身動きが取れなく
イルカの目視データはむつ湾フェリー株
なり,水族館に保護される例は後も絶たない.
式会社,水温データは青森県産業技術センタ
陸奥湾はホタテ養殖が盛んで,蟹田~平舘沖
ー水産総合研究所から提供いただき感謝いた
と夏泊半島一帯でホタテの養殖施設が分布し
します.また,イワシの漁獲量については青
ている.今回の調査でイルカの回遊行動を調
森県農林水産部の公開データを使用させてい
べると,ホタテの養殖施設を避けて回遊して
ただきました.本研究の一部は公益財団法人
いることがわかり,イルカにとってはやませ
青森学術文化振興財団助成によって行われま
による東風で海水が濁り,視界が利かなくな
した.
る時期になると,安全な外洋へ出るとしても
不思議ではない.
参考文献
1) 陸 奥 湾 フ ェ リ ー 公 式 サ イ ト .
さらに,イルカはイワシの漁獲量が極めて
http://www.mutsuwan-ferry.jp/
少ないにもかかわらず,毎年ほぼ同じ時期に
陸奥湾にやってきて,ほぼ決まった時期に北
2) 松田純佳, 岩原由佳, 小林沙羅, 金子信
上することから,夏至という,最も日長が延
人, 鈴木励, 松石 隆 (2011) 津軽海峡に
びる時期を移動のシグナルとしていることも
おけるカマイルカの来遊個体数推定.
考えられる.全ての真核生物は時計遺伝子や
Japan Cetology (21):15-18
カレンダー遺伝子を持っていて,太陽の動き
3) 北 村 志 乃 , 栗 原 縁 , 柴 田 泰 宙 , 松 石 隆
を捉えて生活のリズムとしている.エサの動
(2008) 津 軽 海 峡 に お け る カ マ イ ル カ の
きとは関係なく,日長の変化を移動のきっか
出 現 時 期 の 変 化 . Japan Cetology
けとしている動物は渡り鳥などでも見られる.
(18):13-16
4) 柴田泰宙, 片平浩孝, 篠原沙和子, 鈴木
これは動物に普遍的な現象であり,太古の昔
から受け継がれた生命の営みであるといえる.
初美, 岡田佑太, 上田茉利, 鵜山貴史,
以上のことから,イルカの回遊行動はエサ
飯塚慧, 松石隆 (2007) 津軽海峡内にお
や海水温との関連が強く示唆されるものの,
けるカマイルカの季節的・地理的分布に
動物の本能を支配する本質的な行動原理につ
ついて.Japan Cetology (17):11-14
5) 堀本高矩, 金子拓未, 柴田泰宙, 松石隆
いての解明は,様々な要因の年次変化を長期
(2009) 津 軽 海 峡 内 で の カ マ イ ル カ の 回
間にわたり調査することが必要である.
遊.Japan Cetology (19):13-15
本調査はイルカの行動を知ることが中心
6) 小野雄大, 佐橋玄記, 西沢文吾, 山田若
課題であるが,陸奥湾内ではキタオットセイ
15
青森大学付属総合研究所紀要 Vol.17, No.2, 12-25, March, 2016
奈, 柴田泰宙, 松石 隆 (2010) 津軽海峡
におけるカマイルカ群れサイズの時間的
変動.Japan Cetology(20):13-15
7) 粕谷俊雄 (1980) イルカの生活史.アニ
マ 8(9):13-23
16
青森大学付属総合研究所紀要 Vol.17, No.2, 12-25, March, 2016
30(14:46~15:33)
20(16:02~16:26)
40 頭
図 1.5 月 2 日の調査
黒線は調査ルート,白は漁船でイルカを目撃したエリアと頭数,目撃時間帯,破線はむつ湾フェリー社
が同日イルカを目撃したエリアと頭数を示す.
10(15:36~15:43)
15 頭
図 2.5 月 9 日の調査
黒線は調査ルート,白は漁船でイルカを目撃したエリアと頭数,
,目撃時間帯,破線はむつ湾フェリー
社が同日イルカを目撃したエリアと頭数を示す.
17
青森大学付属総合研究所紀要 Vol.17, No.2, 12-25, March, 2016
5(16:58~17:17)
15 頭
105(17:31~17:42)
頭
図 3.5 月 23 日の調査
黒線は調査ルート,白は漁船でイルカを目撃したエリアと頭数,
,目撃時間帯,破線はむつ湾フェリー
社が同日イルカを目撃したエリアと頭数を示す.
20(17:15~17:46)
5頭
図 4.5 月 24 日の調査
黒線は調査ルート,白は漁船でイルカを目撃したエリアと頭数,
,目撃時間帯,破線はむつ湾フェリー
社が同日イルカを目撃したエリアと頭数を示す.
18
青森大学付属総合研究所紀要 Vol.17, No.2, 12-25, March, 2016
30 頭
100(14:29~16:19)
図 5.5 月 30 日の調査
黒線は調査ルート,白は漁船でイルカを目撃したエリアと頭数,
,目撃時間帯,線はむつ湾フェリー社
が同日イルカを目撃したエリアと頭数を示す.
10(16:14~16:31)
20 頭
図 6.6 月 5 日の調査
黒線は調査ルート,白は漁船でイルカを目撃したエリアと頭数,
,目撃時間帯,破線はむつ湾フェリー
社が同日イルカを目撃したエリアと頭数を示す.
19
青森大学付属総合研究所紀要 Vol.17, No.2, 12-25, March, 2016
0
10
図 7.6 月 7 日の調査
黒線は調査ルート,破線はむつ湾フェリー社が同日イルカを目撃したエリアと頭数を示す.
100
200(14:15~17:02)
図 8.6 月 14 日の調査
黒線は調査ルート,白は漁船でイルカを目撃したエリアと頭数,目撃時間帯,破線はむつ湾フェリ
ー社が同日イルカを目撃したエリアと頭数を示す.
20
青森大学付属総合研究所紀要 Vol.17, No.2, 12-25, March, 2016
0
300(14:52~16:44)
図 9.6 月 21 日の調査
黒線は調査ルート,白は漁船でイルカを目撃したエリアと頭数,目撃時間帯を示す.
(頭)
350
300
250
200
150
100
50
0
4 4 4 4 4 5 5 5 5 5 5 5 5 5 5 5 5 5 5 5 5 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6
月月月月月月月月月月月月月月月月月月月月月月月月月月月月月月月月月月月月
2 2 2 2 2 1 3 5 7 9 1 1 1 1 1 2 2 2 2 2 3 2 4 6 8 1 1 1 1 1 2 2 2 2 2 3
1 3 5 7 9 日日日日日 1 3 5 7 9 1 3 5 7 9 1 日日日日 0 2 4 6 8 0 2 4 6 8 0
日日日日日
日日日日日日日日日日日
日日日日日日日日日日日
(調査日)
図 10.漁船からのイルカ目視頭数とむつ湾フェリー社によるイルカ目視頭数の比較
縦線はむつ湾フェリー社の船員による目視頭数.1 日 2 往復のうち,最も多くのイルカが見られた
頭数,丸は漁船による目視頭数を示した.
21
青森大学付属総合研究所紀要 Vol.17, No.2, 12-25, March, 2016
(頭)
(海水温℃)
250
20
18
200
16
目視最終日
14
150
12
10
100
8
6
50
4
2
0
0
4 4 4 4 4 5 5 5 5 5 5 5 5 5 5 5 5 5 5 5 5 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6
月月月月月月月月月月月月月月月月月月月月月月月月月月月月月月月月月月月月
2 2 2 2 2 1 3 5 7 9 1 1 1 1 1 2 2 2 2 2 3 2 4 6 8 1 1 1 1 1 2 2 2 2 2 3
1 3 5 7 9 日日日日日 1 3 5 7 9 1 3 5 7 9 1 日日日日 0 2 4 6 8 0 2 4 6 8 0
日日日日日
日日日日日日日日日日日
日日日日日日日日日日日
(調査日)
図 11.むつ湾フェリー社によるイルカ目視頭数と海水温の関係
縦線はむつ湾フェリー社の船員による目視頭数,
折れ線は平舘沖海面下1m における海水温を示す.
(t) 6,000
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
1月
2月
3月
4月
5月
6月
マイワシ
7月
8月
カタクチイワシ
図 12.平成 27 年度の青森県におけるイワシの漁獲量の推移
実線はマイワシ,破線はカタクチイワシの漁獲量を示す.
22
9月
10月 11月 12月
(月)
青森大学付属総合研究所紀要 Vol.17, No.2, 12-25, March, 2016
図 13.漁船の周囲で泳ぐカマイルカ
図 14.舳先を泳ぐカマイルカの親子
図 15.背びれを欠いたカマイルカ.こ
の個体は 3 週間にわたり漁船から観察
されたため,1 つの群れが陸奥湾に長期
間回遊することがわかった.
23
青森大学付属総合研究所紀要 Vol.17, No.2, 12-25, March, 2016
図 16.マッコウクジラ.陸奥
湾内で 2 頭確認された.
図 17.キタオットセイ.陸奥
湾内に 1 頭のみ確認され,昼
寝の最中だった.
図 18.ウトウ.青森湾では見
られなかったが,
平舘海峡に多
数確認された.
24
青森大学付属総合研究所紀要 Vol.17, No.2, 12-25, March, 2016
STUDY ON THE MIGRATORY BEHAVIOR OF PACIFIC WHITE-SIDED DOLPHIN
Lagenorhynchus obliquidens IN THE MUTSU BAY, AOMORI PREFECTURE.
Shigeto KIYOKAWA
Faculty of Pharmaceutical Sciences, Aomori University
要旨
春から夏にかけて陸奥湾のエリアで野生のイルカが目撃されることは,古くから青森と
函館を結ぶフェリーの乗客や漁業者の間で知られていた.陸奥湾を回遊するイルカはカマ
イルカ Lagenorhynchus obliquidens と呼ばれ,主に日本海や太平洋の温暖な海域に生息し,
季節の変化に伴い日本周辺を回遊しているものと考えられている.イルカの陸奥湾におけ
る回遊行動を知るための第一歩として,漁船からの目視調査による観察結果に陸奥湾を横
断するむつ湾フェリー社が提供するイルカ出現データを照合し,イルカが回遊する陸奥湾
のエリアを時期ごとに決定した.それによると,イルカは4月下旬から陸奥湾湾口付近に
現れはじめ,5月になると陸奥湾西部全域を回遊しているのが見られた.さらに6月は大
きな群れとなって陸奥湾西部を回遊し,海水温の上昇とともに急激に出現個体が減少した.
このことから陸奥湾を回遊するイルカの数は海水温と関連があることが示唆された.一方,
水揚げデータと比較する限り,イルカはイワシを追いかけて行動しているとする定説と必
ずしも一致せず,イルカの行動は気象条件や日長条件など他の影響を受けることが考えら
れた.
キーワード:カマイルカ、回遊行動、陸奥湾、海水温、イワシ
25