阿久根諸白を造った おりぐちいへえしげよし 折口伊兵衛重芳 水です。伊兵衛は諸所に出向いて 焼酎造りに欠かせないのが良質の 粟 を 原 料 と し た 粟 焼 酎 で し た が、 阿 久 根 に 移 り 住 ん だ 伊 兵 衛 は、 焼酎造りに精進しました。当時は を行っていたとあります。 琉球から折口村に移住して、貿易 の伝えによると、伊兵衛の先祖は る焼酎造りの元祖です。また、別 は、貿易商であり、阿久根におけ ( 諸 説 で は 伊 衛 尉 と も い い ま す。) んだと言われている折口伊兵衛 寛永(正確な年数は不明)の頃、 日置郡折口村から阿久根に移り住 することになりました。 その頃、薩摩藩主光久(十九代) の参勤交代の一行が阿久根に一泊 造屋となりました。 に乗り、粟数百石を使用する大醸 るようになり、粟焼酎造りは軌道 や京都方面)にも船で積み出され 伊兵衛の千酒は評判がよく、阿 久根はもちろん上方(現在の大阪 いを立てていました。 立派な鳥居を奉納します」との誓 実り家業が繁栄した暁には、必ず 神 社 に 詣 で、「 も し 自 分 の 努 力 が この千酒が出来る前に、信仰心 の厚かった伊兵衛は、波留の諏訪 くことを命ぜられました。 その翌年、伊兵衛は藩庁に招か れ、藩の唐通詞(通訳)として働 いことでした。 味で、伊兵衛の名誉はこの上もな この諸白とは、最上級の焼酎の意 と焼酎銘の変更を命じたのでした。 『阿久根諸白』と呼ぶことにせよ」 招 き、 千 酒 を 褒 め 称 え、「 今 後 は ころ、光久は伊兵衛を地頭役所に 兵衛が献上したものだと言ったと そしてこの千酒の出所を尋ねる 光久に、郷土の年寄の一人が、伊 しました。 建立を実行し、神に感謝の誠を示 万 治 二 年( 1 6 5 9 年 )、 伊 兵 衛は、以前諏訪神社に誓った鳥居 業はますます繁盛しました。 伊兵衛は藩主の信頼に応えよう と、焼酎造りに精進したので、家 ました。 折口伊兵衛重芳と名乗ることとし 主の旅の疲れを癒すには十分なも 水を探した結果、妙見川の清い冷 この鳥居は、阿久根焼酎の由来 を物語る記念碑となっています。 のでした。 水に出会い、豊かな焼酎造りに成 唐通詞は藩主の御用商人で、身 分は士族であったので、伊兵衛は 功しました。そして「千酒」と命 ち ざけ 伊兵衛は、役人たちのすすめも あって焼酎「千酒」を献上しまし と書かれていました。 ※万治二年= 1659 年 生 ま れ 故 郷 の 折 口 村 に ち な ん で、 万治二年十月吉祥寺建立 折口伊兵衛重芳 奉寄進 諏訪大明神御宝前 諸願成就 た。この千酒の風味と芳香は、藩 名しました。 」(平成 14 年 12 月発行) 当 時、 諏 訪 ( 南 方 ) 神 社(波留 区 ) に あ る 鳥 居の刻文には、 Akune 4 五十代半ばとは思えないほどにや を逃れて行われることもあった ま し た。 中 に は 幕 府 の 役 人 の 目 え、 琉 球 と の 貿 易 に 従 事 し て い た の で、 若 い 頃 か ら 薩 摩 藩 に 仕 河南源兵衛家と姻戚関係であっ れ ま し た。 庄 右 衛 門 は、 豪 商・ 八丈島では米を多く作れないこ とを知った庄右衛門は、阿久根か いる焼酎を思いつきました。 た。そこで故郷阿久根で造られて なれる方法はないかと苦慮しまし 庄右衛門は、島人たちの生活の 苦しさを知るにつけ、何とか力に 海の孤島でした。 碑には、密貿易の罪によって八丈 に「島酒の碑」が建立されました。 績をたたえて、八丈島観光協会な 島を離れて百年後の昭和四十二 年( 1 9 6 7 年 ) 、庄右衛門の功 んだ 年の生涯を閉じました。 となっていました。そして、同八 つれて、心労のためか白髪の老人 といいます。 ら 甘 藷 の 苗 と 蒸 留 器 を 取 り 寄 せ、 島に流れてからの間、苦しみに耐 八丈島は伊豆諸島の最南端にあ り、江戸から290 を隔てた絶 このことが幕府の役人に知ら れ、 密 貿 易 の 罪 で 江 戸 で 捕 ま り、 島民に薩摩の甘藷を原料とした焼 えながら、島民に焼酎の製法を伝 丹 宗 庄 右 衛 門 は、 文 化 九 年 ( 1 812年)現在の本町に生ま 嘉 永 六 年( 1 8 5 3 年 )、 東 京・ 酎造りを親切に教えました。 年(1875年)9月、波乱に富 八丈島に流されました。 います。 島酒の碑(東京都八丈町) えた功績への感謝の意が記されて どにより、役場近くの護神山公園 64 たんそうしょうえもん 丹宗庄右衛門 八丈島に焼酎を伝えた 許されて故郷に帰った庄右衛門は、 15 丹宗庄右衛門翁ハ薩州出水郡阿 久 根村ノ産デ 嘉永六年密貿易ノ 罪 ニヨリ八丈島二流サレ 明治元 年赦免マデ謫居スルコト十五年 初 メ テ八丈島ニ焼酎ノ製法ヲ伝 エタ 此ノ島酒タルヤ真二芳醇一酌忽 チ胸襟ヲ洗ッテ陶然万累ヲ忘レマ サニ酎界の王者デアル 茲ニ碑ヲ建テ翁ノ徳ヲ頌シ天ノ「島酒の碑」の台座に 美禄ヲ酔郷ノ賓ト共ニ礼讃スル は、 左 の こ と が 記 さ れています 丹宗庄右衛門の墓 (波留区蓮華寺跡地) ㎞ 時は過ぎ、流人の生活を送るこ と 年、 明 治 元 年( 1 8 6 8 年 ) 写真:八丈町役場提供 5 Akune 参考文献 「阿久根の人物」( 本格焼酎とは、 ①芋や米、黒糖など伝統的な原料 焼酎、麦焼酎、黒糖焼酎と呼ばれ ぞれの原料ごとに、米焼酎やいも 焼酎を造ることができます。それ から造られているもの ※熟成を終えた後、タンクごとに風味を均 一にするためブレンドを行います。 そのままではアルコール度数が高いた め、水を加えて規定の度数 ( 主に 25 度 ) に下げます。 ます。 ※蒸留した原酒を貯蔵 し、熟成させます。 割水・ブレンド ②伝統的な手法である麹を用いて 貯蔵・熟成 糖化したもの ※発酵し終わった二次もろみを単式蒸留機で加熱し、 沸騰させます。 蒸発して出てくる、アルコールやその他の揮発成分 を含む蒸気を冷ましたものが「原酒」です。 焼酎はどのようにして造られて いるのか、ここでは一般的ないも 蒸留 など、製造方法において一定の条 ※一次仕込みのもろみに主原料の芋と水を加え、混ぜ 合わせます。 麹菌と増殖した酵母によって、10 ~ 15 日かけて、 原料の糖化とアルコール発酵が行われます。 その後、甘く芳醇な「二次もろみ」ができます。 ができるまで 二次仕込み 本格焼酎 ※米麹に焼酎酵母と水を 加えて、一週間程度発酵 させ、焼酎酵母を増殖さ せます。 そ の 結 果 で き る の が、 「もろみ ( 酒母一次もろ み )」です。 焼酎の製造工程をご紹介します。 一次仕込み 件を満たしたものをいいます。 ※主原料となるサツマ イモは、デンプン質と 水分が多くて痛みやす いため、集荷されたば かりの新鮮なものを使 用します。 造り方を知ることによって、焼 酎選びや味わいにも新たな楽しみ ※芋単体ではアルコー ルを発生させることが できないため、「麹菌」 の力を借りて、芋のデ ンプン質を糖化させる 必要があります。 原料 ( 芋 ) ↓ 洗う・選別 ↓ 蒸芋 ↓ 粉砕 製造方法は、500年前からあ る製法の「単式蒸留」によって造 原料 ( 米 ) ↓ 洗穀・浸清 ↓ 蒸米 ↓ 製麹 ( せいきく ) を見つけてはいかがでしょうか。 主原料仕込み 麹づくり仕込み られ、原料の香味成分が溶け込み やすく、特有の芳香と風味がある 一般的な本格焼酎(芋)の製造過程 瓶詰め 調 整 完 了 後、 瓶 に 詰 め、 製 品 チ ェ ッ クを行い出荷され ます。 Akune 6 鶴見 「現代の名工」黒瀬杜氏が手がける逸品揃い 百年続く伝統の味を是非お試しください 鹿児島県産「白豊」を100%使用 福徳長酒類 鹿児島酒造 大石酒造 脇本 432-1/☎ 0996-64-3290 栄町 130 /☎ 0996-72-0585 蔵元紹介 明治 35 年から脇本で創業 した蔵元を、平成 14 年に当 社が引き継ぎ、焼酎製造を 行っています。 厳選された鹿児島県産の 芋を使い、昔ながらの甕に よる酒母仕込みで大切に手 造りしています。 蔵元紹介 総杜氏・黒瀬安光氏を中 心に、多種類の麹を使い、 焼き芋焼酎を開発し、それ ぞれの貯蔵の技術を重ね、 酒類専門の販売店からの厳 しいご要望にお応えできる 製品造りに取り組んでいま す。 代表的な銘柄 ・あくねの華 ・さつま美人 代表的な銘柄 ・さつま諸白・阿久根 ・やきいも黒瀬・初光 福徳長酒類㈱ 薩摩工場長 吹譯 達生さん 蔵元のお薦めの飲み方 まずはストレートで! 香りがよく、すっきりと した味わいをぜひお楽しみ ください。 蔵元紹介 明治 32 年から鹿児島県 の恵まれた風土に小さな 蔵を構え、これまで代々 5代にわたり焼酎造りに 専念しています。 こだ わりの味を守りつ つ、未来へ続く焼酎をじっ くりと造り続けていきます。 代表的な銘柄 ・鶴見・莫祢氏 ・蔵純粋・あくね日和 鹿児島酒造㈱ 総杜氏 黒瀬 安光さん 大石酒造㈱ 工場長 北川 喜継さん 蔵元のお薦めの飲み方 季節によってお湯割り・ 水割りが一般的ですが、前 割・炭酸割りもお薦めです。 蔵元のお薦めの飲み方 鶴見にはお湯割りがおス スメ!割ってからの時間で 味が変化するのを楽しんで みてください。 阿久根の3酒造 7 Akune 波留 1676 /☎ 0996-72-0385 阿久根市内には3つの蔵元があり、特徴のある焼 酎を出しています。 また市内焼酎小売店には蔵元からのプライベート ブランドを販売しているところもあります。 ※お酒は 20 歳から ※飲酒運転禁止
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