平成 28 年8月上旬の中国公船及び中国漁船の活動状況について 平成 28 年 10 月 18 日 1.概要 平成 28 年8月5日、約 200~300 隻の中国漁船が尖閣諸島周辺海域に見られる中、中 国漁船に続いて、中国公船(中国政府に所属する船舶)1隻が尖閣諸島周辺領海に侵入 した。その後、中国公船が中国漁船に引き続く形で領海侵入を繰り返す事象が見られた。 この8月5日、7日、8日及び9日の4日間で、領海侵入した中国公船は延べ 28 隻に上 った1。また、接続水域に同時入域する中国公船は、8月8日には、最大 15 隻にも達し た。このように、尖閣諸島周辺海域において中国公船が中国漁船に引き続く形で領海侵 入を繰り返した点及び集結した隻数が最大 15 隻にも上ったのは今回が初めてであった。 今回、8月上旬に尖閣諸島周辺海域に確認された中国公船の隻数は、それ以前まで確 認されていた中国公船(3隻程度)及び南シナ海のスカボロー礁周辺海域に確認されて いる中国公船(4~5隻と言われる)を大きく上回る。 なお、その後、8月中旬以降9月末までに、尖閣周辺海域で確認された中国公船の状 況は、中国漁船に引き続く形での領海侵入は行われておらず、領海侵入及び接続水域入 域の頻度は、8月上旬の活動以前と同程度となり、その隻数は、8月中旬及び下旬に は、3~8隻の範囲内に、9月は3~4隻の範囲内となった。しかし、荒天時を除き、 中国公船が尖閣諸島周辺の接続水域内をほぼ毎日航行し、1か月間に3回程度の頻度で 領海侵入を行っているという状況は依然として続いている。 尖閣諸島は歴史的にも国際法上も我が国の固有の領土であり、現に我が国はこれを有 効に支配している。中国による一方的な現状変更の試みには、関係省庁が一体となっ て、我が国の領土・領海・領空は断固として守り抜くとの決意で毅然かつ冷静に対処し ている。 い集する漁船の状況 (8月6日撮影) 1 ここでいう延べ隻数は、領海侵入した回数の合計値。 1 中国公船と漁船の状況 (8月6日撮影) 2.中国公船及び中国漁船による領海侵入の状況は下図のとおり。 (平成 28 年8月1日から9月 30 日) 4 日間で延べ 28 隻の領海侵入 12隻 :中国公船の領海侵入延べ隻数 :中国漁船の領海からの退去警告延べ隻数 11 10 10隻 8隻 6隻 4 4 4 4 4 4隻 3 2隻 8月1日 2日 3日 4日 5日 6日 7日 8日 9日 10日 11日 12日 13日 14日 15日 16日 17日 18日 19日 20日 21日 22日 23日 24日 25日 26日 27日 28日 29日 30日 31日 9月1日 2日 3日 4日 5日 6日 7日 8日 9日 10日 11日 12日 13日 14日 15日 16日 17日 18日 19日 20日 21日 22日 23日 24日 25日 26日 27日 28日 29日 30日 0隻 0隻 1 中国公船が中国漁船に引き続く形で領海侵入を繰り返した日 5隻 10隻 8 15隻 15 20隻 25隻 24 25 2 (平成 28 年8月1日から9月 30 日) 中国公船の接続水域内確認隻数 16隻 15 14 13 14隻 ※荒天時を除き、接続水域内をほぼ毎日航行 12 12隻 10隻 8隻 8 7 4隻 6 6 6隻 5 44 4 333 5555 4 4 33 3 444444 3 444 444 33 2隻 8月1日 2日 3日 4日 5日 6日 7日 8日 9日 10日 11日 12日 13日 14日 15日 16日 17日 18日 19日 20日 21日 22日 23日 24日 25日 26日 27日 28日 29日 30日 31日 9月1日 2日 3日 4日 5日 6日 7日 8日 9日 10日 11日 12日 13日 14日 15日 16日 17日 18日 19日 20日 21日 22日 23日 24日 25日 26日 27日 28日 29日 30日 0隻 3.今回尖閣諸島周辺海域で確認された中国公船の概要(平成 28 年8月1日から9月 30 日) ※は、砲らしきものを搭載している中国公船 は、領海侵入した中国公船 3 4.中国政府への主な抗議 事態をエスカレートさせた中国側の行動は我が国として全く容認できるものではない。 現場において我が国領海内に侵入しないよう警告し、領海侵入が発生した際には、その 都度現場において退去要求等を行い、冷静かつ毅然と対処した。また、外交ルートを通 じて中国政府に対して直ちに厳重に抗議し、即時の退去を強く求めた。 <日本側の主張のポイント> ◆中国公船の尖閣諸島領海侵入や同海域での活動は我が国主権の侵害であり、断固として認められな い。 ◆我が国から累次にわたって厳しい抗議を行っているにもかかわらず、中国側が現場の緊張を更に高め る一方的な行動をとっていることは断じて受け入れられない。 ◆直ちに我が国領海から退去し、また、接続水域から立ち去るよう強く抗議。 <主な抗議の例> 8月5日(金) 【中国公船による領海侵入】 15:05 頃/16:30 頃 アジア大洋州局参事官 → 在京大公使参事官 17:10 頃 杉山外務事務次官 → 程永華駐日大使 17:30 頃 伊藤在中国大次席公使 → 欧陽玉靖・外交部辺境海洋事務司長 8月6日(土) 【周辺海域に新たに複数の中国公船確認】 11:45 頃 金杉アジア大洋州局長 → 郭燕・在京大公使 13:15 頃 横井駐中国大使 → 孔鉉佑・外交部部長助理 18:00 頃 伊藤次席 → 欧陽玉靖・外交部辺境海洋事務司長 18:15 頃 金杉アジア大洋州局長 → 郭燕・在京大公使 8月7日(日) 【周辺海域に新たに複数の中国公船確認】 08:29 頃 金杉アジア大洋州局長 → 郭燕・在京大公使 10:15 頃 伊藤次席 → 欧陽玉靖・外交部辺境海洋事務司長 【中国公船による領海侵入】 11:25 頃 杉山外務事務次官 → 程永華大使 13:25 頃 横井大使 → 孔鉉佑・外交部部長助理 14:00 頃 滝崎アジア大洋州局審議官 → 郭燕・在京大公使 17:00 頃 杉山外務事務次官 → 程永華大使 20:10 頃 石兼総合外交政策局長 → 郭燕・在京大公使 21:20 頃 石兼総合外交政策局長 → 郭燕・在京大公使 22:10 頃 横井大使 → 孔鉉佑・外交部部長助理 (↓次頁に続く) 4 【現場の緊張を更に高める中国側の行動】 23:15 頃 金杉アジア大洋州局長 → 郭燕・在京大公使 8月8日(月) 【中国公船による領海侵入】 12:45 頃 金杉アジア大洋州局長 → 郭燕・在京大公使 16:00 頃 伊藤次席 → 欧陽玉靖・外交部辺境海洋事務司長 19:30 頃 金杉アジア大洋州局長 → 郭燕・在京大公使 21:10 頃 伊藤次席 → 欧陽玉靖・外交部辺境海洋事務司長 8月9日(火) 10:10 頃 岸田外務大臣 → 程永華大使 11:10 頃 伊藤次席 → 欧陽玉靖・外交部辺境海洋事務司長 13:50 頃 伊藤次席 → 欧陽玉靖・外交部辺境海洋事務司長 14:15 頃 四方アジア大洋州局参事官 → 郭燕・在京公使 16:40 頃 滝崎アジア大洋州局審議官 → 郭燕・在京公使 17:37 頃 四方アジア大洋州局参事官 → 郭燕・在京公使 18:15 頃 伊藤次席 → 欧陽玉靖・外交部辺境海洋事務司長 8月10日(水) 11:19 頃 金杉アジア大洋州局長 → 郭燕・在京公使 21:30 頃 伊藤次席 → 欧陽玉靖・外交部辺境海洋事務司長 8月17日(水) 【中国公船による領海侵入】 11:13 頃 金杉アジア大洋州局長 → 郭燕・在京公使 11:30 頃 伊藤次席 → 欧陽玉靖・外交部辺境海洋事務司長 8月21日(日) 【中国公船による領海侵入】 10:09 頃 金杉アジア大洋州局長 → 郭燕・在京公使 11:22 頃 伊藤次席 → 欧陽玉靖・外交部辺境海洋事務司長 9月11日(日) 【中国公船による領海侵入】 10:38 頃 金杉アジア大洋州局長 → 劉少賓・在京公使 11:05 頃 石川公使 → 肖建国・外交部辺境海洋事務司副司長 9月24日(土) 【中国公船による領海侵入】 10:27 頃 金杉アジア大洋州局長 → 劉少賓・在京公使 11:10 頃 石川公使 → 肖建国・外交部辺境海洋事務司副司長 5 (参考1)尖閣諸島周辺海域への中国公船の接近に関わる過去の経緯等 (1)尖閣諸島周辺海域における動向 ① 平成 20 年 12 月8日、中国公船2隻が突如として我が国尖閣諸島周辺の領海内に 初めて侵入し、度重なる海上保安庁巡視船からの退去要求及び外交ルートを通じた 抗議にもかかわらず、同日夕刻までの約9時間にわたり我が国領海内を徘徊・漂泊 する事案が発生。 ② 平成 22 年9月7日の尖閣諸島周辺の我が国領海内での中国漁船衝突事件以降 は、中国公船が従来以上の頻度で尖閣諸島周辺海域を航行するようになり、平成 23 年8月に2隻、平成 24 年3月に1隻、同年7月に4隻による尖閣諸島周辺の我 が国領海への侵入事案が発生した。 ③ さらに、平成 24 年9月 11 日に政府が尖閣諸島のうち3島(魚釣島、北小島及び 南小島)を取得後、同月 14 日以降、中国公船が荒天の日を除きほぼ毎日接続水域 にて確認されるようになり、最近でも、毎月3回程度の頻度で領海侵入を繰り返し ている。 ④ 平成 27 年 12 月 22 日には、外観上、明らかに機関砲を搭載した中国公船による 接続水域への入域が初めて確認され、同月 26 日以降は当該船舶による領海侵入も 発生している。 〔参考〕尖閣諸島周辺海域における今回の活動以前の中国公船の活動状況(月平均領海侵 入件数) ●政府の尖閣3島取 得 前 1 年 間(H23.9~H24.8):0.3 件/月 ● 〃 取 得 後 1 年 間(H24.9~H25.8):4.9 件/月 ● 〃 取得後 2 年目以降(H25.9~H28.7):2.9 件/月 6 (2)中国公船の増強 下図に示すとおり、平成 24 年における 1000 トン以上の大型中国公船の勢力は 40 隻であったが、3年後の平成 27 年には、その3倍の 120 隻を保有するに至るなど著 しい体制強化が確認されている。また、各種公開情報によれば、今後平成 31 年まで に 135 隻まで増強することが見込まれている。 7 (参考2)尖閣諸島周辺海域における中国漁船の操業について (1)例年夏の禁漁期が明ける8月以降、東シナ海においては、約 1000 隻を超 える中国の漁船が操業しているのを確認している。また、尖閣諸島周辺海域 においても、数百隻が主にトロール操業により、ウマヅラハギやアジ、サバ 等を漁獲しているのを確認している。 (2)尖閣諸島周辺海域における中国漁船の退去警告隻数の推移 (隻数) 500 注1 430 450 400 注2 350 300 250 208 200 150 50 104 88 100 70 39 16 8 0 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 (平成 28 年9月 30 日現在) 注1)平成 22 年9月には、中国漁船公務執行妨害等被疑事件が発生。同年 は、中国漁船に対し、年間 430 隻の退去警告を実施。 注2)平成 23 年の8隻以降、平成 26 年には 208 隻の 26 倍に増加したが、 海上保安庁による対応を強化したところ、平成 27 年には 70 隻にまで減 少。 (問い合わせ先) 内閣官房副長官補室 参事官補佐 大戸 貴之/小寺 次郎 TEL:03-5253-2111(内線:82444/82443 番) 海上保安庁総務部政務課 政策評価広報室 海上保安報道官 大達 弘明 TEL:03-3591-9780 外務省 アジア大洋州局 中国・モンゴル第一課 首席事務官 石飛 節 TEL:03-3580-3311(内線:2432 番) 8
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