PE/DVTに対するDOACの血栓消失効果

2016/10/14
JCC 2016レポート|抗血栓療法トライアルデータベース
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2016年9月23~25日,東京
PE/DVTに対するDOACの血栓消失効果
2016.10.14
JCC 2016取材班
PE/DVTの血栓消失において,リバーロキサバンの3週間強化療法は有効-9月24日,第
64回日本心臓病学会学術集会(JCC 2016)にて,中村伸一氏(JCHO人吉医療センター循
環器内科)が発表した。
●背景・目的
肺血栓塞栓症(PE)および深部静脈血栓症(DVT)の治療にはこれまで,ヘパリンやワルフ
ァリンが用いられてきた。ただし,ワルファリンは効果発現に時間を要するとともに,内因性
凝固阻害因子であるプロテインSやプロテインCの産生を抑制することから,導入直後は過
凝固状態となる。そのため,効果が治療域に達するまでヘパリンの併用が必要となる1)。
しかし,JAVA studyによれば,未分画ヘパリンが投与されたVTE患者のうち,37.6%は治
療域未満(活性化部分トロンボプラスチン時間:APTT<1.5倍)であったと報告されている
中村 伸一氏
2)。このように,ワルファリンとヘパリンによる従来療法には,課題が多かった。
近年,それらの課題を解決し得る直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)が使用可能となった。そこで,PE/DVTに対する
DOACの有効性の検討を行った。
●方法
PE/DVTに対し,2015年4月~9月にエドキサバン投与を開始した連続10例,ならびに2015年10月~2016年1月にリバーロ
キサバン投与を開始した連続10例を比較した。
●結果
1. エドキサバン
エドキサバン群は平均年齢64.8歳,男性2/10例,病型はPE 2例,遠位部DVT3例,近位部DVT 5例であり,近位部DVTで
は全例に下大静脈フィルター留置を行った。
PE患者1/2例,遠位部DVT患者2/3例で血栓の消失を認めた。近位部 DVT患者では2/5例で血栓が消失したものの,消失
までに3~6ヵ月を要した。エドキサバン群における血栓消失率は50%であった。
2. リバーロキサバン
リバーロキサバン群は平均年齢69.4歳,男性5/10例,病型はPE+遠位部DVT合併4例,PE+近位部DVT合併3例,遠位
部DVT 2例,近位部DVT 1例であった。近位部DVTを認めた患者では,全例に下大静脈フィルター留置を行った。
近位部DVT患者の1例では血栓退縮のみで消失はしなかったが,それ以外の全例で血栓消失を認めた。リバーロキサバ
ン群における血栓消失率は90%で,退縮も含めると全例で改善が認められた。
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リバーロキサバンが著効した1例を示す。症例は69歳男性で,体重58kg,PE+近位部 DVT合併例であった。下大静脈フィ
ルター留置後に未分画ヘパリンを48時間投与し,ヘパリン中止後にエドキサバン 30mg 1日1回投与を開始した。3週間後
にDダイマーは9.3μg/mLから5.1μg/mLに低下したものの,左下腿浮腫は変わらず,連日鎮痛剤を必要とした。そこで,リ
バーロキサバン 15mg 1日2回投与に変更したところ,腫脹は10日後に軽減し始め,痛みもなくなった。投与3週間後にはD
ダイマーは2.6μg/mLとさらに低下し,左下腿浮腫はほぼ改善した。その後,リバーロキサバン 15mg 1日1回4週間投与後
には,Dダイマーは0.6μg/mLとなり,血栓も消失したため,下大静脈フィルターを抜去した。
なお,出血性合併症はすべての症例で認めなかった。
●結論
PE/DVTの血栓消失において,リバーロキサバンの3週間強化療法は有効である。
文献
1. Azoulay L, et al. Initiation of warfarin in patients with atrial fibrillation: early effects on ischaemic strokes. Eur Heart
J 2014; 35: 1881-7.
2. Nakamura M, et al. Current venous thromboembolism management and outcomes in Japan. Circ J 2014; 78 : 708-17.
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