GKH021203 - 天理大学情報ライブラリーOPAC

天理大学学報 2
1
2:2
5
3
4,2
0
0
5
小学校体育専科教員としての採用方策に関する研究
- 天理大学体育学部の卒業生を対象 として深 見 英 一 郎1)
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として採用 されている。 しか し,現在,教員
1.研究の 目的
志望者の増加傾向 と少子化の影響 を受け,敬
本学体育学部には,将来教員 を希望する学
員採用試験 は全国的に, また全教科 にわたっ
生が多い。 これまで,多 くの卒業生が関西 を
て厳 しい状況 にある。なかで も中学校 ・高等
中心 とした中学校 ・高等学校の保健体育教員
学校の保健体育教員への道 は非常 に厳 しい。
1) 天理大学体育学部
1.F
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2
6
小学校体育専科教員 としての採用方策 に関する研究
-
天理大学体育学部の卒業生 を対象 として-
本学体育学部 における現役合格者は, ここ数
小学校体 育専 科教員 の採用 に踏み切 ってい
午,片手で余 るほどの数である。 4年間かけ
る5
'
。この ような教員の採用方策 は,同 じ関
て一生懸命勉学 に励み,体育 ・スポーツの専
西圏にある本学体育学部の卒業生 にとっては
門性 を身につけたにもかかわらず,卒業 して
就職口の拡大 につながる と予想 される。 さら
もそれ を生かす場がない とい うのが現状であ
に,小学校での指導経験 は中学 ・高校の体育
る。
近年,子 どもの体力低下が指摘 されている。
この背景 には,生活が便利 にな り過 ぎて子 ど
・スポーツ指導 に十分 に生かす ことがで きる
と考 えられる。他方で,小学校体育専科教員
の採用方策は,子 どもたちに楽 しく運動 に取
もが 日常的に身体 を動かす機会が減少 してい
り組 ませ る機会 を定期的に保障 し,確実 に体
ることが挙げ られる。 また, もう 1つの重大
力の向上 を図 り,スポーツが大好 きな子 ども
な原 因は,地域や学校で子 どもの発達段階に
を育成することにもつながる と考えられる。
応 じて適切 なスポーツ指導がで きる指導者が
本研究では,大学の教員養成課程 の立場か
少ない ことが挙げ られる。特 に,小学校 にお
ら,小学校 の体育専科教員の採用方策の可能
いては,大学で体育 を専攻 した教員が非常 に
性 を探 るために,実際に小学校 に勤務 してい
少 な く,効果的に体 を動かす楽 しさを味合わ
る本学体育学部卒業生の実態調査 を行いたい
せることがで きない教員や,体育指導 に困難
と考えた。中学 ・高等学校保健体育の教員免
を感 じてい る高年齢 の教 員 も存在 す る とい
許 を取得 した彼 らが, どの ような経緯で小学
う2)。小学校期 は,身体 の発 育 ・発達が著 し
校教員 となったのか,小学校教員の魅力 とは
い時期である。特 に,巧みな動作 に関係する
何か等 について,彼 らの現状お よび考え方 を
脳 ・神経系の発達時期であ り, この時期 にス
明 らかにすることによって,小学校の体育専
ポーツに必要な様 々な動 きづ くりを適切 に行
科教員 としての採用方策の可能性 を探 ろうと
ってお く必要がある。そのためには,大学で
した。
体育 ・スポーツの専門的知識や技術 を習得 し,
2.研究の方法
それ らを適切かつ効果的に子 どもたちに習得
させることがで きる体育専科の教員 を充実 さ
1)対象
せ る必要がある6
)
。
天理大学体育学部の卒業生で,現在小学校
実際 に,大阪府教育委員会 は平成元年か ら
に勤務 している者,あるいは過去 に小学校 に
3年間,体育専科教員の小学校 における教育
勤務 した経験がある者 を対象に質問紙調査 を
効果 について調査 を行 っている。その結果,
実施 した。表 1は,対象者の現在の勤務先,
専科教員 を配置 した小学校では,3カ年 にわ
お よび年齢構成 を示 した。
た り男女 ともに体力が着実 に向上 しているこ
とが明 らかであった。特 に,低学年 ほど伸 び
表 1 対象
が大 きく,運動経験の少 ない時期 に効果的な
現在 の勤務先
学習指導 を行 うことの重要性が示唆 された4
)
0
残念 なが ら,わずか 3年で専科教員制度が廃
年齢構成
n(
%)
\
n(
%)
\
学
校
24(80)
止 されることとなったが,その後 も子 どもた
中
学
校
4(1
3)
30 代
4(1
3)
ちは定期的に運動 ・スポーツに取 り組 むよう
高等学 校
o( 0)
40 代
1
6(盟)
8(27)
にな り,習慣化 にもつながった といわれてい
る。 また,大阪府では平成 1
6年度か ら国語 ・
社会 ・数学 ・理科 ・音楽 ・保健体育の 6教科
に限 り,小 ・中学校の枠 を取 り払 って採用 し,
20 代
1( 3)
小
養 護学校
0( 0)
50 代
そ
2( 7)
60 代
30(
1
0)
計
の
計
他
※その他 ・
-・
-社 会教育研究施設 - 1名
民 間健康管理施設 - 1名
1( 3)
30(
1
00)
人数 (
%)
2
7
深見
表 3 小学校での採用形態
2)期 日
2
0
0
4
年 4月2
7日か ら 5月2
9日までの 1カ月
n (
%)
間で実施 した。質問紙 を郵送 し,匿名で郵送
専 任
教
諭
27 (90)
非 常 勤 講 師
1 ( 3)
0部,
返信 して もらう方式で回収 した。発送数6
0%であった。
回収数30部,回収率は5
・
x・
専任教諭の うち4名は常勤講師経験 あ りo
3)質問紙調査の作成
常勤講師の うち 1名 は非常勤講師経験 あ りO
調査 内容 は, 日本体育大学就職部3)の 「日
本体育大学卒業生で小学校 に勤務する教員の
て,二種免許取得者は小学校勤務か ら離れる
小学校勤務 に至 った経緯 に関す る調査」
,井
傾 向が高いことが示唆 された。
筒 ほか1)の 「
小学校体育専科教 員設置 に関す
表 3は,小学校 に勤務 していた ときの採用
る一考察」で用い られた質問紙 を参考 に新た
形態 を示 した。その結果,2
7
名が専任教諭 と
な質問紙 を作成 した。 ここでは,実際に小学
して採用 されてお り,常勤 ・非常勤講師は少
校 における体育専科教員の採用方策の可能性
ないことが示 された。 しか し,専任教諭のう
ち 4名は常勤講師の経験,常勤講師の うち 1
を探 るために,新たに 「
体育専科教員が設置
」「体育系大学出身者
(
中 ・高
名 は非常勤講師の経験があることか ら,講師
保健体育教員免許取得者)が小学校教員にな
経験 を積 んだ上で専任教諭 として採用 される
ることのメ リッ ト/デメ リッ ト 「
小学校教
ケースが少 な くないことがわかる。
され る可能性
」
」「今後の勤務希望」 とい った 4項
員の魅力
表 4は,小学校 に勤務 していた ときの勤務
形態 を示 した。その結果 ,2
6
名がすべての教
目を加えた。
科 を担当する全科教諭 として勤務 してお り,
3.結果 と考察
養護教諭 を除いて,現在,専科教諭 として勤
表 2は,小学校教員免許状 の取得状況 を示
務する者はみ られなかった。 しか し,全科教
した。その結果,現在,小学校 に勤務 してい
諭のうち 3名 は体育専科の経験があ り, 1名
る教員のうち,一種免許状 を取得 している者
は補助教諭 としての体育指導の経験がみ られ
1
3名,二種免許状 8名,未取得者 3名であっ
た。 しか しなが ら,これ らの経験は,すべ て
た。 この結果か ら,現在,小学校 に勤務 して
常勤 ・非常勤講師 として採用 されていた頃の
いる教員が必ず しも一種免許状 を取得 してい
もので,専任教諭 として採用 された後に専科
るわけではないことが示 された。 また,二種
教員 として勤務 している者 は 1名 もみ られな
免許状 を取得 している者で,現在 は小学校 に
かった。
勤務 していない者が 4名み られた。 この結果
か ら,一種免許状 を取得 している者 と比較 し
表 2 小学校教員免許状の取得状況
現
勤
務
在
の
先
中 学
校
1 ( 3)
0(0)
3 (1
0)
0 ( 0)
0(0)
4 (1
3)
そ
他
o(0)
1 ( 3)
1 ( 3)
0 ( 0)
0 ( 0)
2 ( 7)
の
一種 免許
一種
二種 を取得
を有 し、
中
二種 免許
未 り 取 予得
予 定 あ
定 な し
計
人数 (
%)
2
8
小学校体育専科教員 としての採用方策 に関す る研究
-
天理大学体育学部の卒業生 を対象 として-
表 4 小学校での勤務形態
表 7 取得に要 した期間
間
期
全 科
教
諭
n (% )
2
6 (87)
養
護 教
諭
1 ( 3)
そ
の
他
3 (1
0)
計
1年 - 2 年
30 (
l
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o)
3 年
以
1
3 (4
8)
o ( 0)
上
27 (
l
o
o)
計
※全科教諭のうち 3名は体育専科 、 1名は補助教諭の経
験あ り。
※その他は管理職 1名,補助教諭 2名
表 5は,小学校教員免許状 の取得方法 を示
表 5 小学校教員免許状の取得方法
4名が一種免許
した ものであ る。その結果 ,2
人数 (
%)
状 ,二種免許状 ともに通信教育で取得 してい
通 信 教
育
大
学
ll (
41
)
1 (4)
1
3(
4
8)
24 (89)
たことが示 された。それ以外 には,各都府県
(0)
1 ( 4)
て別の大学 に再入学 して取得 した者が 1名で
0
にある教 員養成所で取得 した者が 2名,改め
あった。
※両方の免許状 を取得 している者 3名に
(
n-27)
表 6は,小学校教員免許状 の取得時期 ,表
ついては一種免許のみを分類 した。
7は,取得 に要 した期 間を示 した ものであ る
。
表 6 小学校教員免許状の取得時期
これ らの結果か ら,教員免許状 の取得時期 は,
人数 (
%)
一種 ・二種 ともに小学校勤務 中が 1
4名 と最 も
一種免許
二種免許
教 員 採 用 前
5(
1
9)
5(
1
9)
1
0 (37)
小 学校 勤務 中
7(
2
6)
7(
26)
1
4 (5
2)
が1
0名であった。一種免許 と二種免許の取得
中学校 勤 務 中
1 (4)
1 (4)
2 ( 7)
時期 に違いはみ られなかった。 また,取得 に
の
1 (4)
0(
0)
1 ( 4)
そ
他
計
※その他 1名は、「
育児休暇中」
多 く,過 半数 を占めた。次いで,教員採用前
3名 , 1年 -2年
要 した期 間は, 1年以内-1
-1
3
名 と 9割以上 を占め,ほ とん どの教員が
短い期 間で小学校教員免許状 を取得 してい る
(
n-2
7)
ことがわか る。
表 8 専科教員の配置状況とその必要性
(
複数回答可,a-30)
実際に配置 している(
た)
低
.
国
語
o(0)
社
会
0 (0
)
学
必
年
1 (3)
/
/
算
数
4(
1
3)
理
科
5(
1
7)
3(
1
0)
生
活
0 (0
)
0 (0)
音
楽
20 (
67)
9(
3
0)
家
庭
ll(
37)
/
必
要
性
要
あ
り
中 学 年
高 学 年
必要な し
1 (3)
2 (7)
1
3(
43)
0(
0)
3(
1
0)
1
3(
43)
4(
1
3)
4(
1
3)
1
2(
4
0)
3(
1
0)
1
0(
33)
5(
1
7)
/
1
6(
5
3)
/
/
9(
30)
26 (
87)
2 (7)
1
3(
43)
8(
27)
人数 (
%)
29
深見
2
0
名 ,2
1
-4
0%が 3名 といったように,多 く
表 9 体育専科教具が配置される可能性
n (
%)
の教員は体育専科教員が配置 される可能性 は
満
2
0(
6
7)
低 い と回答 していることが明 らかであった。
41 -
6
0%
1(3)
61 -
8
0%
1(3)
81 - 1
0
0%
0(
0)
可
2
0%
能 性
未
その理由 として,表1
0か ら 「
生徒数 により教
」「国や県が体育
員数が決 まっている- 7名
の重要性 を感 じていない- 2名」 といった学
校別度 自体 に問題があると回答 した割合が多
(
n-3
0)
表 8は,勤務先の小学校 における専科教員
の配置状況 とその必要性 を示 した ものである。
,「体育 よ りも,音楽 ・理科 な
」「校長 の考 え
か った。 また
ど他教科が優先 される- 5名
方によって専科教科が決 まる- 2名」 といっ
た各学校の方針の問題が挙げられた。その一
に,全教科 について調査 を実施 した。 この結
,「体育は生徒 の実態 を把握するバ ロメ
ー ターであ り,担任がや るべ き・
・
・
4名」
「
体
果か ら,体育の専科教員 を実際に配置する小
育は生活指導 と深 く関係 している-3名」 と
学校で勤務経験のある教員は 7名であった。
いった学級経営 と体育授業 との関係か ら,体
0
名,図画工作 1
7
名,家庭
この結果は,音楽2
育 は担任がやるべ きだ とい う意見 もみ られた。
11
名 に次いで 4番 目に多かった。次 に,専科
表11は,体育学部の卒業生が小学校教員 に
体育専科教員の必要性の程度 を理解するため
方で
教 員の必要性 について
,「必要あ り」 と回答
なることのメリッ トについて,表 1
2はデメリ
した割合は低学年 9名,中学年 1
2
名,高学年
ッ トについてそれぞれまとめた ものである。
1
6名 と学年が上がるほど必要性が高 まってい
その結果,メ リッ トとしては 「
連動の楽 しさ
ることがわかる。 このことは,学年が上がる
を教 えることがで き,体育好 きな子 どもが増
心 ・意欲や技能 レベルに合 った体育指導 を困
」「子 どもの体力 向上が期待 で き
る- 2名」
「
高度 な技術指導 に も対応 で きる
難だ と感 じる教員が少 な くない と考 えられる。
-2名」
「
体育的行事が魅力的になる- 1名」
表 9は,体育専科教員が配置 される可能性
「
水泳指導 に差が出る・
-1名」 といった体育
を示 した ものである。その結果,2
0%未満が
・スポーツの専門性が活かされるという意見
ほ ど指導内容が高度化す るために子 どもの関
える・
-3名
表1
0 体育専科教具が配置される 「
可能性は低い」と回答 した理由 (
自由記述)
(
「
0-4
0%」 と回答 した2
3名 を対象,複数回答可)
①学校制度の間尾・
・
=・
・
1
3名 (
5
7)
・生徒数 により教月数が決 まっている- 7名
・国や県が体育の重要性 を感 じていない- 2名
・小規模校のため,教貞配置はぎりぎりであ り,可能性 はない-3名
・専科教員の枠その ものが少ない- 1名
②各学校の方針の問題 ・
- 8名 (
3
5)
・ .
・体育 よりも,音楽 ・理科 など他教科が優先 される-5名
・校長の考え方によって専科教科が決 まる- 2名
・体育授業が困難な教師は,他の教月 と交換授業・
-1名
④学耕経営 と体育授業との関係・
・
-・
・
7
0名 (
4
3)
・体育は生徒の実態 を把握するハロメーターであ り,担任がやるべ き・
・
・
・体育は生活指導 と深 く関係 している-3名
・体育は学級軽骨の柱 となる-3名
(
o
i
.),(
n-2
3)
3
0
小学校体育専科教員 としての採用方策 に関する研究
-
天理大学体育学部の卒業生 を対象 として-
表1
1 体育学部の卒業生が小学校教員になることのメリット (
自由記述)
①専門性の活用・
.
・
・
・
・
1
5
名 (
5
0)
・連動の楽 しさを数 えることがで き.体育好 きな子 どもが増える・
・
・
3名
2名
・子 どもの体力の向上が期待で きる-・
・高度 な技術指劃 こも対応で きる-2名
・保健 ・給食 (
食育)を充実 させることがで きる・
-2名
・基礎 ・基本 を しっか り教えることがで きる- 1名
・体育的行事が魅力的になる- 1名
・応急処置 に素早 く対応で きる-・1名
・クラブ指導が充実する- 1名
・子 どもと一緒 に運動 してふれあ うことがで きる- 1名
1名
・水泳指導に差が出る-・
・7名 (
2
3)
②学校経営や学級経営への貢献・
-.
・スポーツを通 して身につけた力 (
社会性 ・行動力など) を学校経営や生徒指導に活かせ る-4名
・集団行動 を効果的に身につけさせることがで きる- 2名
・いろいろなことに気づ き,率先 して動 くことがで きる- 1名
1
3)
③ その他-- 4名 (
・職場が明る くなる-2名
・採用 されやすい・
・
・1名
・小学校教員の高齢化が加速。若い人材が必要・
・
・1名
(
%)
,(
n-3
0)
表1
2 体育学部の卒業生が小学校教員になることのデメリット (
自由記述)
①低年齢の子 どもに対応できない・
-・
・
1
2名 (
4
0)
・低年齢の子 どもに対応で きない・
・
・5名
・小学生についての理解度が低い-2名
・技術指導が中心 にな り,子 どもの主体性 を生かす ことがで きない・
・
・
2名
・幅広い年齢 (6歳 -1
2歳)に対応で きない・
・
・1名
・ルールや道徳性 などをきちん と説明 して理解 させることが苦手- 1名
・
・1名
・感情がす ぐに態度や言動 にでる・
1
3
)
②運動が苦手な子 どもに対応できない-- 4名 (
・上手な子 どもには対応で きるが,苦手な子 どもに対応で きない- 3名
・競技スポーツの発想か ら,苦手な子 どもには目が向かない- 1名
.
・
・
3名 (
1
0)
(
亘
)
他教科の指執 こ対応できない-・
・他教科の指導ができない・
・
・
2名
・音楽や図下工作 など他の専門分野に対応で きない- 1名
1
0)
④専門性が活かせない-- 3名 (
・専門的に学んだスポーツを部活動 として指導で きない・
・
・1名
・持 っている運動能力 を十分 に活かせ ない- 1名
・特定の種 目において突出 した競技能力はあるが,多様 な運動,競技 に対応で きない- 1名
⑤その他・
--1名 (3)
・教養的にレベルが低 い と思われが ち- 1名
※無記 入 3名
・
xメリッ ト/デメリッ トに共通 して,「
本人次第,やる気があれば関係 ない」 という回答 4名 もみ られたD
(
%),(
n-3
0)
31
深見
表1
3 小学校教員の魅カー中学 ・高等学校 と比較 して- (
自由記述)
①子 とも 自身の魅力・
--1
2名 (
4
0)
・子 どもは素直で純粋 - 6名
・教 えた ことが ダイ レク トに返って くる-3名
・学習意欲が高 く,何事 にもや る気がある-・2名
・
・1名
・純粋 さに接す ることがで き, 自分 も人間 と して成長で きる・
②子 とも との生活体験の共有 -・
・
・8名 (
27)
・体育だけでな く,学校生活すべ てにおいて深 く関わることがで きる・
-4名
・いろいろな教科 を子 ども遠 と一緒 に学ぶ ことがで きる・
・
・2名
・担任制 なので,自由な取 り組みがで きる-・1名
・
・1名
・嬉 しい こと.悲 しい ことを共有することがで きる・
③子 どもの成長への関わ り-=-6名 (
20)
・人間性の基礎 を築 くとき。子 どもの成長 を手助 けで きる-3名
・高い技術 を与 えることによって どんどん伸 びる- 2名
・子 どもの初めてで きた ! とい う初体験 に居合わせ ることがで きる-・1名
@ その他・
.
-・4名 (
1
3)
・義務教育の基盤 を担 っている職務- の誇 り‥・1名
・加齢 とともに体 は動 かな くなる。体育だけで教 師 を続 けるのは難 しい。
0歳 まで働 ける- 1名
小学校の場合は6
・
・1名
・それぞれの学校 に良 さがある と思 うので何 とも言 えない・
・採用が多い - 1名
(
%)
,(
n-3
0
)
,「スポー ツを通 して
が最 も多 か った。次 に
身につけた力 (
社会性 ・行動力 な ど) を学校
」「集 団行
た ものである。その結果,最 も多か ったのは
「
子 どもは素直 で純粋 - 6名
」「教 えた こ と
・
・
4名
経営 や生徒指導 に活 かせ る・
が ダイレク トに返 って くる-3名」 といった
動 を効果的に身につ けさせ ることがで きる-・
子 ども自身の魅力 に関す る内容であった。次
,「体育 だ けで な く,学校 生活 すべ て に
」「い
2名」 といった学校経営や学級経営 に対 して
いで
貢献で きる とい う意見 も数多 くみ られた。
おいて深 く関わる こ とがで きる- 4名
その一方で,デメ リッ トとしては 「
/
J
、
学生
につ いての理解度 が低 い- 2名
」「技術指導
ろいろな教科 を子 ども達 と一緒 に学ぶ ことが
で きる- 2名」 といった子 どもとの生活体験
,「人 間性 の基
が中心 とな り,子 どもの主体性 を生かす こと
の共有が挙 げ られた。 さ らに
がで きない- 2名」 といった意見や,運動が
礎 を築 くとき,子 どもの成長 を手助 けで きる
」
「
上手 な子 どもには対応 で きるが,苦手 な子
-3名 「高 い技術 を与 える こ とに よって,
どもに対応 で きない-3名」 といった低年齢
どん どん伸 びる- 2名」 といった意見 もみ ら
の子 どもや運動能力の低 い子 どもに対応で き
れた。それ以外 に も 「
義務教 育 の基 盤 を担
他
ない とい う意見が多 くみ られた。他 に も 「
ってい る職務 へ の誇 り- 1名
,
,
,
」「加齢 ととも
専門性
教科 の指導 に対応で きない-3名」 「
に体 は動かな くなる。体育 だけで教師 を続 け
が活かせ ない-・
3名」 といった意見 もみ られ
0
歳 まで働 け
るのは難 しい。′
J
、
学校 の場合 は6
た。
る-・1名」 といった意見 もみ られた。
,
それ ら以外 に も 「メ リッ ト/ デ メ リッ ト
4は,今後 の勤務希望,お よびその理 由
表1
なんてない。本人次第,やる気があれば関係
をまとめた ものである。その結果,現在,小
ない- 4名」 とい う意見 もみ られた。
学校 に勤務 してお り 「
今後 も小学校 に勤務 し
表1
3は,小学校教員の魅力 についてまとめ
0
名」
, また現在,中学校 に勤 務 して
たい-2
3
2
小学校体育専科教員 としての採用方策に関す る研究
-
天理大学体育学部の卒業生 を対象 として-
表1
4 今後の勤務希望、およびその理由
① 「
小学校」- 「
小学校」 ・
・
-・
20名 (
67)
・もっと子 どものために取 り組みたい ことがある・
・
・
3名
・
・2名
・子 どもと一緒 に学ぶ とい うス タイルが 自分 に合 っている・
・
・
3名
・長年掛 ナて きたか ら (
他には考え られない) ・
・中 ・高校 で専 門的 に体育指導す る自信が ない・
・
・
3名
・年齢的 ・体力的 に自信が ない-・4名
・土 ・日に部活動 の指導はや りた くない・
・
・
3名
・進路指導が大変そ う- 2名
② 「
小学校」- 「中学校」・
・
・
・
・
・2名 (7)
・
・1名
・競技スポーツを指導 したい・
・生徒 との関わ り合いが深い- 1名
③ 「中学校」- 「中学校」 ・
-・
・4名 (
1
4)
・今は管理職 なので体育科 に戻 りたい・
・
・1名
・中学へ行 った らやる気 をな くす子 どもを放 っておけない=・1名
④ 「中学校」- 「
小学校」--・0名 (0)
⑤ その他 ・
-・
・4名 (
13)
「
社会教育施設」- 「
小学校」 (1名)現場 に戻 りたい
「
′
」
、
学校」- 「
小 ・中学校」 (2名) ともに義務教育 なので,そ う違いがある と思 わない
「
小学校」- 「
養護学校」 (1名)
※③ 「中学校」- 「中学校」 の理 由では、無記名 2名がみ られた。
おり 「
今後 も中学校で勤務 したい-4名」 と
長
いう意見が多かった。その理由 としては,「
年続 けて きたか ら (
他 には考えられない)-
(
%)
,(
n-3
0)
4. ま と め
本研究は,体育系大学 を卒業 し,現在ある
3名」「もっと子 どものため に取 り組みたい
ことがある- 3名」 といった意見がみ られた。
いは過去に小学校で勤務経験のある者 を対象
今後 も小学校 に勤務 したい」
その一方で,「
採用方策の可能性 を探 ろうとした。そのね ら
に質問紙調査 を行い,小学校体育専科教員の
理由の中に,「
中 ・高校 で専 門的 に体育指導
いの 1つは,4年間かけて体育 ・スポーツの
年齢 的 ・体 力的 に
す る 自信 が ない- 3名」「
専門的知識や技術 を習得 した体育系大学の卒
土 ・目に部活動 の指導
自信が ない-4名」「
業生の就職口を拡大することである。 もう 1
進路指導が大変 そ
はや りた くない- 3名」「
つは,巧みな動作 に関係す る脳 ・神経系の発
う- 2名」 といった意見 もみ られた。 これは, 達が著 しい小学校期 に,体育 ・スポーツの専
中学校で専門的に体育指導 をやってみたい と
門的知識や技術 を習得 した教員が,スポーツ
いう気持 ちを持 っていなが ら,現実的には非
に必要な様 々な動 きづ くりを適切 に行 うこと
常 に厳 しい と捉 えていることが読み取れる。
によって, よ り多 くの体育好 きの子 どもを育
その中で,現在,中学校 に勤務 してお り「
今
て,体力の向上 を図ることがねらいである。
後 も中学校で勤務 したい」 と回答 した者の理
調査の結果,以下の点が明 らかにされた。
由で,「
小学校 に勤務 していた頃,中学校-
1)小学校 に勤務 している教員は,必ず しも
行 った らやる気 をな くす卒業生 を放っておけ
一種免許状 を取得 しているわけではなか
な くて,実際に中学校 に転勤 した」 という非
った。 しか し,二種免許状で小学校 に勤
常 に積極的で行動力のある教員の存在 も確認
務 した経験がある教員は,のちに小学校
された。
勤務か ら離れる傾向がみ られた。
33
深見
2)免許状は,一種 ・二種 ともに通信教育で
取得 した教員がほ とん どであった。 また,
それ らは学校 に勤務 している時 に, 1,
2年 とい う短期 間で取得 していた。
体育指導するには年齢的 ・体力的に自信
がない,土 ・目の部活指導や進路指導が
大変そうだ といった意見 も少な くなかっ
た。
3)ほとんどが専任教諭 としての採用形態で
以上の結果か ら,多 くの教員が制度的な問
あるが,一定期 間,講師経験 を積 んだ上
題か ら小学校 に体育専科教員が配置 される可
で専任教諭 として採用 されるケースも少
能性 は非常 に低い と捉 えていたことがわかっ
な くないことが示 された。
た。全教科 を指導 しなければならない小学校
4)常勤 ・非常勤講師 として採用 されていた
においては,体育 よりも優先的に専科制に し
時に体育専科教員 を経験 した教員が数名
て もらいたい教科があるために,体育専科教
確認 された。 しか しなが ら,体育専科の
員の必要性 は高 くなかった。 また,彼 らは大
専任教諭 と して勤 務 してい る (してい
学 において体育 ・スポーツを専 門的に学んだ
た)教員は 1人 もみ られなかった。
教員であることか ら,体育専科教員の必要性
5)勤務先の′
J
、
学校 において実際 に体育専科
をあまり感 じていない と考 えられる。その一
教員 を配置 している割合 は非常 に少 なか
方で,彼 らの多 くが体育系大学の卒業生が小
ったが,体育専科教員の必要性 は,学年
学校教員 になることによって体育好 きの子 ど
を追 って高 まる傾向がみ られた。
もが増え,子 どもの体力向上が期待で きる と
6)ほ とん どの教員が,制度的な問題や学校
考えていた。 これは,彼 らが勤務する小学校
の指導方針の問題か ら体育専科教員が配
において も,例外 な く子 どもたちの望 ましい
置 される可能性は低 いと回答 していた。
発育 ・発達 を保障するような適切 な体育授業
また,体育授業 は学級経営や生徒指導 と
が少ないことを示唆 している。 このことか ら
も深 く関係 しているため,体育授業は担
ち,小学校 に体育 .スポーツを専門的 に学 ん
任がやるべ きだ とい う意見 も多かった。
だ教員 を 1人で も多 く配置 させ,多 くの子 ど
7)小学校教員 になることのメリッ トは,高
度な技術指導 にも対応で きる,子 どもの
もたちに適切 な体育授業 を受けさせることが
急務である と考 えられる。
体力向上が期待で きるなど体育 ・スポー
今後の課題 として,大学で体育以外 を専攻
ツの専門性 を活かせるとい う意見が多か
した教員や管理職の教員 たちが体育専科教員
った。 またデメリッ トは,低年齢の子 ど
をどの くらい求めているかを調査研究すべ き
もや運動が苦手な子 どもに対応で きない,
である。 また, どのようにすれば小学校体育
他教科の指導がで きないといった意見が
専科教員の採用方策の道が拓かれるのか,本
多かった。
研究ではその点 に踏み込んで調査で きなかっ
8)小学校教員の魅力 について,教 えたこと
が ダイレク トに返 って くる素直で純粋 な
,「体 育学部 に小学校免許 を
た。回答の中で
取得で きるような条件 を整えて もらいたい」
子 ども自身の魅力や,学校生活すべてに
との意見 もみ られたが,現実的 には困難であ
おいて子 どもと深 く関わることがで きる
る。 しか し,大阪府 に代表 されるように中 ・
点が挙げられた。
高校の免許 しか持 ってな くて も,小学校教員
9) 今後の勤務希望 について,彼 らの多 くが
として採用 される機会 も少 しずつ増えて きて
現在の勤務先で引 き続 き教員 を続 けたい
いる。体育学部の卒業生 は,低年齢の子 ども
と考 えていた。その理由 としては, もっ
や運動が苦手な子 ども, さらには他教科の指
と子 どものためにや りたいことがあると
導 には対応で きないとい う意見 もみ られたの
いった意見や,今 さら中 ・高で専門的に
で,まずはそれ らの課題 を克服する必要があ
3
4
小学校体育専科教員 としての採用方策 に関す る研 究
-
天理大学体育学部の卒業生 を対象 として-
ろ う。 た とえば,低年齢の子 どもと自由にふ
れ合 う機会 を得 るために,近隣の幼稚園や小
学校 において 「
ふれ合 い実習」 を計画す るな
ど,新 たな教員養成 プログラムの開発が必要
であろ う。
文
献
1)井 筒 次 郎 ・中 馬 充 子 ・吉 田 豊 一 郎
(
2
00 )小学校 における体育の専科教員
設置 に関す る一考察. 日本体育大学紀要
2
9巻 2号2
21
-2
27.
2
0
0
0)スポ
2) 日本スポーツ振興セ ンター (
ーツ振興基本計画 「
生涯スポーツ及び競
技スポーツ と学校体育 ・スポーツとの連
.
携 を推進す るための方策」
ht
t
p:
/
/
ww .
na
as
h.
g
o.
j
p
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s
i
nko
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ke
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ka
n
k
al
l
.
ht
ml
#08
2
0
03) 日本体育大
3) 日本体育大学就職部 (
学卒業生で小学校 に勤務す る教員の小学
校勤務 に至 った経 緯 に関す る調査 結 果
(
報告)
4)大阪府教育委員会 (
1
9
9
8)小学校 にお け
る体育専科教員の教育効果 に関す る調査.
5)大阪府教育委員会 (
2
0
0
3)平成1
6年度
大阪府公立学校教員採用選考 ホームペ ー
ジ.h
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j
p/
I
Jky
o
s
a
i/
ky
o
s
ho
kui
6)山本晃弘 (
2
00
4)小学校体育専科教員 に
関す る研究 - ある体育専科教員の 「ボ
ール運動 ・球技」 の実践 を手がか りに し
て- .
なお,本研究 は′
」
、
学校 に勤務す る卒業生 の
情報 を得 るため に,天理大学ふ るさと会 にご
協力いただいた。