JP 5549586 B2 2014.7.16 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 マルトース、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、フルクトース、ブドウ糖、ラ クチトール、イソマルトース、乳糖、エリスリトール、マンニトール、トレハロースおよ びショ糖の少なくとも1種である水溶性物質と、被覆層重量に対して10∼60重量%の ポリビニルアルコール系樹脂とを含有し、被覆層中のポリビニルアルコール系樹脂と前記 水溶性物質の重量比が1:0.2∼1:6であり、遮光剤を含有した被覆層により被覆さ れた、被覆層が口腔内で18秒未満に崩壊し、かつ口腔内崩壊性被覆錠剤が口腔内で60 秒未満に崩壊することを特徴とする、ナルフラフィンまたはその薬理学的に許容される塩 を含有する安定な口腔内崩壊性被覆錠剤。 10 【請求項2】 遮光剤が、酸化チタン、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黒酸化鉄、タルクおよびカオリン の少なくとも1種である、請求項1記載の安定な口腔内崩壊性被覆錠剤 【請求項3】 被覆層中の遮光剤の配合量が、被覆層重量に対して、0.1∼40重量%であることを特 徴とする、請求項1記載の安定な口腔内崩壊性被覆錠剤。 【請求項4】 口腔内崩壊性被覆錠剤の内核である口腔内崩壊性錠剤がナルフラフィン塩酸塩、マンニト ール、クロスポビドン、チオ硫酸ナトリウム水和物およびステアリン酸マグネシウムを含 む請求項1記載の安定な口腔内崩壊性被覆錠剤。 20 (2) JP 5549586 B2 2014.7.16 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、安定な口腔内崩壊性被覆錠剤に関する。更に詳しくは、20℃において10 mL未満の水に1g以上溶け、かつ分子内にヒドロキシ基を有し単位ヒドロキシ基当たり の分子量が200以下の水溶性物質と、被覆層重量に対して5重量%以上のポリビニルア ルコール系樹脂とを含有する被覆層により被覆された、薬物を含有する安定な口腔内崩壊 性被覆錠剤に関する。 【背景技術】 10 【0002】 錠剤被覆とは、錠剤表面に薄い膜状の物質を形成させる処理の一つであり、被覆組成物 に応じて、外観の改善、耐水性の付与、摩損性の改善、光安定化、識別性の付与などの様 々な機能を付与する目的で実施される。 【0003】 現在、疾患、加齢、唾液分泌量の低下など様々な原因から、嚥下機能の低下した患者に 対して、服用しやすい剤型として、口腔内で迅速に崩壊する口腔内崩壊性錠剤の開発が進 められている。口腔内崩壊性錠剤は、患者の服用性の観点から、一般的な錠剤と比較して 求められる崩壊速度が圧倒的に速く、崩壊速度を追求した特殊剤型である。しかしながら 一般的に、速崩壊性と高い錠剤硬度は相反する特性であるため、口腔内崩壊性錠剤は錠剤 20 硬度不足や高い摩損性のために、分包時の錠剤の欠け、割れを生じ、調剤現場での取り扱 い面で課題が指摘されている。さらに、錠剤は、自動分包前の分包機内では無包装形態で 保存され、また分包後は簡易包装形態で保存されるため、光、温度、湿度などの保存環境 の影響を受けやすく、これら外的環境に弱い薬物は適応できない欠点があった。これは、 例えば光に不安定な薬物を錠剤化する場合、一般的に錠剤に遮光剤を添加した被覆層によ り被覆され安定化を図るが、口腔内崩壊性錠剤の場合には、被覆層による崩壊遅延が懸念 され、錠剤自体への遮光被覆による安定化は困難である。 【0004】 さらに、口腔内崩壊性錠剤は、吸湿性の賦形剤や強力な崩壊剤を添加し速崩壊性能を付 与しているため、高湿度下では口腔内崩壊性錠剤の多くは体積膨張が生じる。そのため、 30 口腔内崩壊性錠剤を被覆錠剤とするためには、速崩壊性のみならず被覆層に伸びが必要と なるが、従来知られている被覆組成物では、口腔内崩壊性能を維持しつつ錠剤の膨張に耐 え得る性能のものは知られていないのが現状である。 【0005】 一方、一般的な錠剤にポリビニルアルコールを被覆ポリマーとして使用することは従来 から知られている。また、膨張性錠剤に対してポリビニルアルコールを被覆することで、 保存時の被覆層の亀裂発生を防止することが開示されている(例えば、特許文献1)。ま た、ポリビニルアルコールに糖類、粘着性低下剤を添加して、膨張性錠剤を被覆すること で、保存時の被覆層の亀裂発生を防止することも開示されている(例えば、特許文献2) 。さらに、糖衣錠の中間層として水溶性高分子と糖類の被覆層を設けることで錠剤の割れ 40 が軽減することが開示されている(例えば、特許文献3)。しかし、いずれの報告もポリ ビニルアルコールフィルムが優れた伸びを示すことが開示されているに留まり、口腔内崩 壊性錠剤に被覆した際に口腔内での服用性が良いほどに優れた速溶解性を示すことはなん ら開示されていない。 【0006】 一方、上記目的の服用しやすい別の剤型として、口腔内で崩壊する口腔内崩壊性フィル ム製剤がある。フィルム製剤としてはヒドロキシプロピルメチルセルロースなど水溶性高 分子に糖類を添加した組成物が開示されている(例えば、特許文献4)が、これらは主に 崩壊性に着目しており、フィルムの伸びについては記載されていない。むしろ、フィルム 製剤におけるフィルムの伸びは、フィルムの軟化など好ましくない形態をもたらすなど、 50 (3) JP 5549586 B2 2014.7.16 口腔内崩壊性錠剤の被覆層に必要な条件とは本質的に異なる。 【0007】 さらに、口腔内崩壊性錠剤の錠剤硬度不足や高い摩損性を改善するため、低融点ポリマ ーなどの可溶性粉末を溶融させ被覆層を形成する手法が開示されている(例えば、特許文 献5)。しかし、溶融技術では錠剤全体に均一に被覆層を形成することは難しく、光に対 する安定化方法としては不十分である。また、口腔粘膜吸収薬物の投与製剤として、口腔 内で崩壊可能な核に、ジェランガムからなる組成物で被覆された製剤が開示されている( 例えば、特許文献6)。しかしながら、被覆層の伸びについて一切報告されていない。 【0008】 一方、ナルフラフィン塩酸塩の安定化手法としては、チオ硫酸ナトリウム、糖または糖 10 アルコール類、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含有する固形製剤が開示され、 被覆錠剤とすることも記載されている(例えば、特許文献7、特許文献8)。しかし、一 般的な被覆組成物が被覆可能であることが開示されるに留まり、口腔内崩壊性錠剤として 必要な優れた速崩壊性や、保存時の被覆層の亀裂防止効果について全く記載されておらず 、これらの報告から本発明を容易に類推することは出来ない。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0009】 【特許文献1】特開2007−091620号公報 【特許文献2】特開昭54−28812号公報 20 【特許文献3】特開2000−169365号公報 【特許文献4】特開平11−116469号公報 【特許文献5】特表2005−524654号公報 【特許文献6】特表2005−519924号公報 【特許文献7】国際公開第2008/133330号パンフレット 【特許文献8】国際公開第99/02158号パンフレット 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0010】 本発明は、口腔内での速崩壊性を確保しながら、口腔内崩壊性錠剤が高湿度下において 30 吸湿により膨潤した場合においても、被覆層に亀裂が生じることが無い安定な口腔内崩壊 性被覆錠剤を提供することを目的とする。また、光に不安定な薬物を含有する口腔内崩壊 性錠剤においては、被覆層に遮光剤を配合することで、薬物の分解を抑制することも目的 とする。 【課題を解決するための手段】 【0011】 錠剤被覆は、外観の改善、耐水性の付与、摩損性の改善、光安定化、識別性の付与など を目的として実施される。しかし、一般に口腔内崩壊錠剤は速崩壊性を有するという性質 上、特に高湿度下において吸湿により錠剤が膨張するため、汎用されているヒドロキシプ ロピルメチルセルロースなどの被覆ポリマーでは、保存時に被覆層に亀裂が発生すること 40 が明らかとなった。また、錠剤を被覆することで、被覆層の崩壊が律速となり、速崩壊特 性を維持することが困難であることも明らかとなった。 【0012】 そこで、発明者らは、速崩壊性を有し、さらに高湿度下でも亀裂が生じない安定な口腔 内崩壊性被覆錠剤を開発すべく鋭意検討を行った結果、錠剤の被覆に使用されるポリマー の中でもポリビニルアルコール系樹脂と20℃において10mL未満の水に1g以上溶け 、かつ分子内にヒドロキシ基を有し単位ヒドロキシ基当たりの分子量が200以下の水溶 性物質(以下、本発明水溶性物質と略記することがある。)の組み合わせに限っては、優 れた速崩壊性を有し、さらに高湿度下においても亀裂が生じない安定な口腔内崩壊被覆錠 剤が得られることを見出した。また、光に不安定な薬物を含有する錠剤においては、被覆 50 (4) JP 5549586 B2 2014.7.16 層に遮光剤を配合することで、薬物の分解を抑制することもあわせて見出し、本発明を完 成するに至った。 【0013】 すなわち本発明は、下記の発明に関するものである。 〔1〕20℃において10mL未満の水に1g以上溶け、かつ分子内にヒドロキシ基を有 し単位ヒドロキシ基当たりの分子量が200以下の水溶性物質と、被覆層重量に対して5 重量%以上のポリビニルアルコール系樹脂とを含有する被覆層により被覆された、薬物を 含有する安定な口腔内崩壊性被覆錠剤。 〔2〕前記水溶性物質が、糖、糖アルコールおよび多価アルコールの少なくとも1種であ る、〔1〕記載の安定な口腔内崩壊性被覆錠剤。 10 〔3〕前記水溶性物質が、マルトース、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、グ リセリン、フルクトース、ブドウ糖、ラクチトール、イソマルトース、乳糖、エリスリト ール、マンニトール、トレハロース、ショ糖および平均分子量が400以下のポリエチレ ングリコールの少なくとも1種である、〔1〕記載の安定な口腔内崩壊性被覆錠剤。 〔4〕被覆層中のポリビニルアルコール系樹脂の配合量が、被覆層重量に対して、10∼ 60重量%である、〔1〕記載の安定な口腔内崩壊性被覆錠剤。 〔5〕被覆層中のポリビニルアルコール系樹脂と、前記水溶性物質の重量比が1:0.1 ∼1:9であることを特徴とする、〔1〕記載の安定な口腔内崩壊性被覆錠剤。 〔6〕被覆層が口腔内で18秒未満に崩壊し、かつ口腔内崩壊性被覆錠剤が口腔内で60 秒未満に崩壊することを特徴とする、〔1〕記載の安定な口腔内崩壊性被覆錠剤。 20 〔7〕被覆層に遮光剤を含有することを特徴とする、〔1〕記載の安定な口腔内崩壊性被 覆錠剤。 〔8〕遮光剤が、酸化チタン、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黒酸化鉄、タルクおよびカ オリンの少なくとも1種である、〔7〕記載の安定な口腔内崩壊性被覆錠剤 〔9〕被覆層中の遮光剤の配合量が、被覆層重量に対して、0.1∼40重量%であるこ とを特徴とする、〔7〕記載の安定な口腔内崩壊性被覆錠剤。 〔10〕薬物が、ナルフラフィン、アムロジピン、ドネペジル、エバスチン、セレギリン 、ファモチジン、イルソグラジン、ブロチゾラム、オランザピン、ランソプラゾール、ベ ポタスチン、ラモセトロン、タムスロシン、ナフトピジル、ポラプレジンク、ボグリボー ス、リザトリプタン、ミドドリン、リスペリドン、オンダンセトロン、ロラタジン、モン 30 テルカスト、アズレンスルホン酸、エチゾラム、エナラプリル、カプトプリル、グリベン クラミド、クロルマジノン酢酸エステル、ドキサゾシン、トリアゾラム、ドンペリドン、 ケトチフェン、ブロムペリドール、プラバスタチン、シンバスタチン、ロペラミド、リシ ノプリル、リルマザホン、沈降炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、メコバラミン、アル ファカルシドール、ブロモクリプチンおよびプラミペキソールならびにその薬理学的に許 容される塩および溶媒和物の少なくとも1種である、〔1〕記載の安定な口腔内崩壊性被 覆錠剤。 【発明の効果】 【0014】 本発明によれば、錠剤の硬度不足、高い摩損性の改善、または光などの外的環境要因に 40 よる分解の改善された口腔内崩壊性被覆錠剤を提供することができる。より詳細には、本 発明は、口腔内での速崩壊性を確保しながら、口腔内崩壊性錠剤が高湿度下において吸湿 により膨潤した場合においても、被覆層に亀裂が生じることが無い安定な口腔内崩壊性被 覆錠剤を提供することができる。また、光に不安定な薬物を含有する口腔内崩壊性錠剤に おいては、被覆層に遮光剤を配合することで、薬物の分解を抑制することもできる。これ らの効果により、これまで一包化包装ができなかった口腔内崩壊錠に対しても、一包化包 装が可能となり、患者の服薬コンプライアンスを改善し、治療効果を向上させることがで きる。 【発明を実施するための形態】 【0015】 50 (5) JP 5549586 B2 2014.7.16 本発明の口腔内崩壊性被覆錠剤について、以下に説明する。 本発明に用いられるポリビニルアルコール系樹脂とは、ポリビニルアルコール(PVA) およびその誘導体もしくは共重合体を指し、一般に市販されているものを用いればよい。 ポリビニルアルコールの具体的な商品として例えば、日本合成化学製のゴーセノール(R) EG05、EG25、EG30、EG40、メルク製のポリビニルアルコール4−88、 5−88、8−88、26−88、40−88、クラレ製のPVA−102、103、1 05、110、117、120、124、HC、203、205、210、217、22 0、224、235、L−8,L−9、L−9−78、L−10、PVA−505などが 挙げられる。ポリビニルアルコールの共重合体の具体的な商品として例えば、BASF製 のポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、Kollic 10 oat(R) IRなどが挙げられる。ポリビニルアルコールの誘導体の具体的な商品とし て例えば、ポリビニルアルコールコポリマーの大同化成工業製のPOVACOAT(R) Type F、Type R、Type Lなどが挙げられる。また、ポリビニルアルコ ールの側鎖にグリセリンなどの多価アルコール基を導入し、ポリビニルアルコールの分子 内相互作用を低下させ、当該ポリマーを用いて形成したフィルムの溶解性または伸度など の特性を向上させたものも用いることができる。なお、これらの具体例のうち1種または 2種以上を組み合わせて用いることができる。 【0016】 本発明の20℃において10mL未満の水に1g以上溶ける水溶性物質とは、第15改 正日本薬局方通則第A−13頁の溶解性に関する記載に従い20±5℃で5分ごとに強く 20 30秒間振り混ぜるとき、1gを30分以内に溶かすのに、10mL未満の水で十分な、 速やかな溶解性を示す水溶性物質を示す。表1に第15改正日本薬局方通則第A−13頁 記載の溶解性を示す用語に関する一覧表を示す。表1中の「極めて溶けやすい」、または 「溶けやすい」に分類されるものが好適に用いられる。 【0017】 【表1】 30 【0018】 また、分子内にヒドロキシ基を有し、単位ヒドロキシ基当たりの分子量が200以下の 水溶性物質とは、分子量を分子内のヒドロキシ基の数で割った値が200以下であること 40 を意味する。200超過であると、ポリビニルアルコール系樹脂に対して十分な相互作用 が期待できず、被覆層に伸びを与えることができない。 【0019】 本発明水溶性物質としては、糖、糖アルコール、多価アルコールが好適である。例えば 、マルトース、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、グリセリン、フルクトース 、ブドウ糖、ラクチトール、イソマルトース、乳糖、エリスリトール、マンニトール、ト レハロース、ショ糖、および平均分子量400以下のポリエチレングリコールなどが挙げ られ、低吸湿性の点からマルトース、マルチトール、ラクチトール、乳糖、エリスリトー ル、マンニトール、トレハロース、イソマルトースが好ましく、乳糖、マンニトール、マ ルチトール、ラクチトールがさらに好ましい。これらの具体例のうち1種または2種以上 50 (6) JP 5549586 B2 2014.7.16 を組み合わせて用いることができる。 【0020】 本発明の被覆層中のポリビニルアルコール系樹脂の配合量は、被覆層重量に対して、5 重量%以上であればよく、10∼60重量%であることが好ましく、10∼40重量%で あることがさらに好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂の配合量が被覆層重量に対して 、5重量%未満になるとポリビニルアルコールの成膜性が失われ、製造時の錠剤同士の付 着や、高湿度下で被覆層に亀裂が発生する。 【0021】 本発明の被覆層中のポリビニルアルコール系樹脂と、本発明水溶性物質の重量比は特に 制限はないが、崩壊性とポリビニルアルコール系樹脂による成膜性の点から、1:0.1 10 ∼1:9であることが好ましく、1:0.2∼1:6であることがより好ましく、1:0 .4∼1:4であることがさらに好ましい。 【0022】 本発明の安定な口腔内崩壊性被覆錠剤とは、口腔内崩壊性錠剤が高湿度下において吸湿 により膨潤した場合においても、被覆層に亀裂が生じにくいことを意味する。被覆層の亀 裂の生じにくさは、口腔内崩壊性被覆錠剤を40℃、75%RH(Relative H umidity)の雰囲気下に24時間放置し、被覆層の外観を確認することで評価する ことが出来る。そのような被覆層の伸び率は1%以上であればよく、2%以上であること が好ましく、4%以上であることがさらに好ましい。被覆層の伸び率は、被覆組成物の固 形分が約30重量%の溶液もしくは懸濁液をガラス面にアプリケーター(YBA型ベーカ 20 ーアプリケーター0∼1 mm)にて、0.5mmでキャスティングし、乾燥して得られ た幅10mm×厚さ約0.075mmのフィルムを引張試験器(テンシロン)で25℃、 60%RH雰囲気下、引張速度100mm/minで測定することができる。 【0023】 本発明の被覆層は、上述の成分のほか、必要に応じて遮光剤を含有することも可能であ る。遮光剤として例えば、酸化チタン、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黒酸化鉄、タルク 、およびカオリンなどが挙げられ、好ましくは酸化チタン、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄 を添加することで十分な遮光効果が得られる。これらの具体例のうち1種または2種以上 を組み合わせて用いることができる。これら遮光剤は多量に配合するとフィルムの伸びが 失われ、配合量が少なすぎると十分な添加効果が得られないため、遮光剤の配合量は被覆 30 層重量に対して、0.1∼40重量%であればよく、1∼35重量%であることが好まし く、5∼30重量%であることがさらに好ましい。 【0024】 本発明の被覆層には、上述の成分のほか、必要に応じて薬学的に許容される添加剤を本 発明の効果を損なわない範囲内で加えることが可能である。当該添加剤として例えば、賦 形剤、崩壊剤、結合剤、矯味剤、香料、着色剤または滑沢剤などが挙げられる。例えば賦 形剤として、コーンスターチ、ポテトスターチなどのデンプン類、微結晶セルロース、軽 質無水ケイ酸などを挙げることができる。例えば崩壊剤として、部分アルファー化デンプ ン、カルメロースカルシウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウムなどを挙げるこ 40 とができる。例えば結合剤として、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセ ルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アラビアゴム末、ゼラチン、プルラン、カル メロースナトリウム、エチルセルロース、アミノアルキルメタルリレートコポリマーなど を挙げることができる。例えば矯味剤として、アスパルテーム、スクラロース、サッカリ ンナトリウム、グリチルリチン二カリウム、ステビア、ソーマチン、クエン酸などを挙げ ることができる。例えば香料として、メントール、ペパーミント、レモン、レモンライム 、オレンジ、ハッカ油、各種フレーバーを挙げることができる。例えば着色剤として、タ ール系色素、ウコン抽出液、カラメル、カロチン液、β―カロテン、銅クロロフィル、リ ボフラビンなどを挙げることができる。例えば滑沢剤として、ポリエチレングリコール、 流動パラフィン、シリコーン、長鎖脂肪酸エステルなどの界面活性剤類、ミツロウ、カル 50 (7) JP 5549586 B2 2014.7.16 ナウバロウ、パラフィンなどのワックス類などが挙げられる。これら添加剤は例示された ものであり、何ら限定するものではない。また、本発明の被覆層の内外表面に、当該添加 剤を添加することも可能である。 【0025】 本発明の安定な口腔内崩壊性被覆錠剤の被覆操作は、乾式被覆法もしくは湿式被覆法を 用いることが可能である。乾式被覆法としては、例えば特表2005−529645号公 報に記載されるように、打錠時に被覆層を介在させ被覆する方法などが挙げられる。また 、湿式被覆法としては、被覆液を錠剤の表面に噴霧、乾燥することにより被覆する方法な どが挙げられる。被覆液は、本発明水溶性物質と、被覆層重量に対して5重量%以上のポ リビニルアルコール系樹脂とを含有する被覆層組成物を、水またはエタノール、メタノー 10 ル等の溶媒に溶解もしくは懸濁して調製される。これらの溶媒は単独もしくは混合して用 いることが可能である。口腔内崩壊性錠剤の表面に被覆する工程は、一般的に使用される 装置が用いられ、例えばパンコーティング装置などを使用することができる。運転条件は 特に制限はないが、摩損性が高い口腔内崩壊性錠剤の場合は、パンの回転数は通常より低 速に設定することで、錠剤のエッジ部分にも均一に被覆層を形成することができる。形成 される被覆層の厚さは、製剤の形状や大きさによって異なるが、速崩壊性である観点から 、200μm以下であればよく、100μm以下であることが好ましく、50μm以下で あることがさらに好ましい。 【0026】 口腔内崩壊性錠剤の口腔内崩壊時間は、健康な成人男性および女性の口腔内で、水を服 20 用せず、錠剤を噛まずに唾液により錠剤が完全に崩壊するまでの時間を測定し、3名以上 の測定者の平均値とすることで客観的な値が得られる。ここで、錠剤が完全に崩壊すると は、口腔内で異物感を感じなくなった時点を意味する。口腔内崩壊性錠剤は、Patri cia Van Arnum, “Advancing ODT Technology ,” Pharmaceutical Technology, Vol.3,No.1 0 pp.66−76,2007(ファルマシューティカル・テクノロジー「アドバンシ ング・オーディーティー・テクノロジー」アルナム著、3巻10号66∼76頁、発行日 2007年[平成19年]10月2日。)に記載されているように、一般に口腔内で水無 しで60秒以内に崩壊するように設計される。そのため、口腔内崩壊性被覆錠剤の口腔内 崩壊時間は、60秒未満であればよく、50秒未満であることが好ましく、40秒未満で 30 あることがさらに好ましい。 【0027】 被覆層の口腔内崩壊時間は、まず口腔内崩壊性被覆錠剤の口腔内崩壊時間を測定し、別 に口腔内崩壊性被覆錠剤の被覆層を切削した内核部分の口腔内崩壊時間を測定し、口腔内 崩壊性被覆錠剤の崩壊時間から内核部分の崩壊時間を差し引いた時間で求めることができ る。沖本著、「月刊薬事」、じほう出版、第50巻11号47∼55頁(発行日2008 年[平成20年]10月1日。)に記載されるように、市販品の口腔内崩壊性錠剤の口腔内 崩壊時間は10秒から42秒程度であることから、口腔内崩壊性被覆錠剤の口腔内崩壊時 間を60秒未満とするためには、被覆層の口腔内崩壊時間は18秒未満であればよく、1 5秒未満であることが好ましく、12秒未満であることがさらに好ましい。なお、本発明 40 の口腔内崩壊性被覆錠剤は、水なしで服用することを限定したものではなく、水とともに 服用してもよい。 【0028】 本発明における内核つまり、口腔内崩壊性錠剤は、口腔内での崩壊時間が1∼42秒程 度であれば、製法、組成に関して特に制限はされない。例えば、直接打錠法、間接打錠法 、鋳型成形法など製剤分野における慣用の方法により製造されるものを用いることができ る。このような製法として、例えば湿潤した粒子を打錠して多孔性錠剤を得る製法や、糖 類の結晶化など物理化学的性質を利用する製法、凍結乾燥技術を用いた製法、クロスポビ ドンなどの崩壊剤を利用した製法、外部滑沢剤法を用いた製法などが挙げられる。 【0029】 50 (8) JP 5549586 B2 2014.7.16 本発明における安定な口腔内崩壊性被覆錠剤の薬物は特に限定する必要はなく、薬理活 性を有する薬物であれば制限されない。例えば、薬物が、ナルフラフィン、アムロジピン 、ドネペジル、エバスチン、セレギリン、ファモチジン、イルソグラジン、ブロチゾラム 、オランザピン、ランソプラゾール、ベポタスチン、ラモセトロン、タムスロシン、ナフ トピジル、ポラプレジンク、ボグリボース、リザトリプタン、ミドドリン、リスペリドン 、オンダンセトロン、ロラタジン、モンテルカスト、アズレンスルホン酸、エチゾラム、 エナラプリル、カプトプリル、グリベンクラミド、クロルマジノン酢酸エステル、ドキサ ゾシン、トリアゾラム、ドンペリドン、ケトチフェン、ブロムペリドール、プラバスタチ ン、シンバスタチン、ロペラミド、リシノプリル、リルマザホン、沈降炭酸カルシウム、 酸化マグネシウム、メコバラミン、アルファカルシドール、ブロモクリプチンおよびプラ 10 ミペキソールならびにその薬理学的に許容される塩および溶媒和物の少なくとも1種を薬 物として含有することができる。なかでも、ナルフラフィン、アムロジピン、エバスチン 、セレギリン、ブロチゾラム、ラモセトロン、ミドドリン、モンテルカスト、アズレンス ルホン酸、エチゾラム、ブロムペリドール、メコバラミン、アルファカルシドール、ブロ モクリプチンおよびプラミペキソールならびにその薬理学的に許容される塩および溶媒和 物の少なくとも1種を薬物として含有する場合、光に対して不安定であるので本被覆層に 遮光剤を添加することが好ましい。 【0030】 ナルフラフィンまたはその薬理学的に許容される塩および/もしくは溶媒和物を含有す る口腔内崩壊性錠剤の製造方法として、例えば、粉末のマンニトール(ロケットジャパン 20 製PEARLITOL(登録商標)50C等)とクロスポビドン(BASF製Kolli don CL等)を造粒し、別に造粒顆粒マンニトール(ロケットジャパン製PEARL ITOL(登録商標)300DC等)にナルフラフィンまたはその薬理学的に許容される 塩および/もしくは溶媒和物を造粒した造粒顆粒と混合し打錠することで口腔内崩壊性錠 剤とすることができる。粉末マンニトールと、造粒顆粒マンニトールとの配合比は、1: 9∼1:1程度の重量比に設定することで、打錠性および崩壊性の優れた口腔内崩壊性錠 剤とすることができる。さらに、製剤中でのナルフラフィンまたはその薬理学的に許容さ れる塩および/もしくは溶媒和物の安定性を確保するための安定化剤などを配合すること ができ、チオ硫酸ナトリウムなどを配合することもできる。ナルフラフィンまたはその薬 理学的に許容される塩および/もしくは溶媒和物と造粒マンニトールの造粒顆粒は、例え 30 ばナルフラフィンまたはその薬理学的に許容される塩および/もしくは溶媒和物とチオ硫 酸ナトリウムを共に水または薬理学的に許容される溶媒に溶解または懸濁して、造粒マン ニトールに添加する工程を含む湿式造粒法により製造することができる。湿式造粒には、 一般的に使用される装置が用いられ、例えば流動層造粒機、転動流動層造粒機、攪拌造粒 機、円筒押出造粒機、湿式押出造粒機などを使用することができる。打錠工程は、一般的 に使用される装置が用いられ、例えば単発式打錠機、ロータリー式打錠機などを使用する ことができる。打錠の際の成型圧力は、被覆操作上問題とならない程度の錠剤硬度を有す るように設定すればよい。また、錠剤の形状も特に制限は無いが、WR錠とすることで摩 損性が改善する傾向にある。 【実施例】 40 【0031】 以下、本発明の優れた効果を明らかにするために、実施例を用いて説明するが、本発明 はこれにより制限されるものではない。 【0032】 参考例1 マンニトール(ペアリトール300DC、ロケットジャパン)を96.745重量部( 以下「部」と略記する。以下も特に断らない場合には同様とする。)秤り目開き1mmの Meshで篩過し、流動層造粒機(FLO−5、フロイント産業)に投入した。次にこの 顆粒に対しナルフラフィン塩酸塩を0.005部、チオ硫酸ナトリウム水和物0.1部を 蒸留水に溶解したスプレー液を噴霧し、造粒顆粒を製造した。次にマンニトール(ペアリ 50 (9) JP 5549586 B2 2014.7.16 トール50C、ロケットジャパン)を25.87部秤りとり目開き1mmのMeshで篩 過し、クロスポビドン(Kollidon CL、BASF)6.5部と共に攪拌造粒機 (NMG−3L、奈良機械)に投入した。次に三二酸化鉄(癸巳化成)を0.13部分散 させた蒸留水を加えながら造粒し、造粒物を製造した。流動層造粒機にて製造した造粒顆 粒および攪拌造粒機にて製造した造粒顆粒を、それぞれコーミルを使用して処理し整粒顆 粒を得た。整粒顆粒129.35部に対してステアリン酸マグネシウム(大平化学産業) 、0.65部添加して5分間混合した。得られた顆粒を、打錠機(Correct19、 菊水製作所)を用いて130mgのWR錠剤とした。 【0033】 実施例1 10 PVA(ポリビニルアルコール4−88、メルク)10部、マルチトール(MALTI SORBP200、ロケットジャパン)90部を蒸留水に溶解し、固形分10重量%の被 覆液を調製した。参考例1により製造した口腔内崩壊性錠剤200gをフィルムコーティ ング機(DRC−200、パウレック)に投入し、被覆液を噴霧し130mgの錠剤に対 して1.95mgの被覆層を有する131.95mgの口腔内崩壊性被覆錠剤とした。 【0034】 実施例2 実施例1の被覆液が、ポリビニルアルコール系樹脂であるPOVACOAT(TYPE F、大同化成工業)60部、グリセリン(日本局方濃グリセリン、旭電化工業)5部、乳 糖(Pharmtose200M、DMV)35部からなる固形分10重量%水溶液であ 20 ること以外は同様の操作で被覆を行い、130mgの錠剤に対して3.9mgの被覆層を 有する133.9mgの口腔内崩壊性被覆錠剤とした。 【0035】 実施例3 実施例1の被覆液が、PVA60部、グリセリン6部、クロスポビドン(Kollid on CLSF、BASF)34部からなる固形分10重量%水分散液であること以外は 同様の操作で被覆を行い、130mgの錠剤に対して3.9mgの被覆層を有する133 .9mgの口腔内崩壊性被覆錠剤とした。 【0036】 比較例1 30 実施例1の被覆液が、PVA60部、PEG6000(日本油脂)40部からなる固形 分10重量%水溶液であること以外は同様の操作で被覆を行い、130mgの錠剤に対し て3.9mgの被覆層を有する133.9mgの被覆錠剤とした。 【0037】 比較例2 実施例1の被覆液が、PVA60部、ラウリル硫酸ナトリウム(日光ケミカル)40部 からなる固形分10重量%水溶液であること以外は同様の操作で被覆を行い、130mg の錠剤に対して3.9mgの被覆層を有する133.9mgの被覆錠剤とした。 【0038】 比較例3 40 実施例1の被覆液が、PVA60部、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−H PC)(LH−31、 信越化学)40部からなる固形分10重量%水分散液であること 以外は同様の操作で被覆を行い、130mgの錠剤に対して3.9mgの被覆層を有する 133.9mgの被覆錠剤とした。 【0039】 比較例4 実施例1の被覆液が、PVA60部、結晶セルロース(セオラスPH−101、旭化成 ケミカルズ)40部からなる固形分10重量%水分散液であること以外は同様の操作で被 覆を行い、130mgの錠剤に対して3.9mgの被覆層を有する133.9mgの被覆 錠剤とした。 50 (10) JP 5549586 B2 2014.7.16 【0040】 比較例5 実施例1の被覆液が、PVA60部、タルク(クラウンタルク局方PP、松村産業)4 0部からなる固形分10重量%水分散液であること以外は同様の操作で被覆を行い、13 0mgの錠剤に対して3.9mgの被覆層を有する133.9mgの被覆錠剤とした。 【0041】 比較例6 実施例1の被覆液が、PVA60部、クロスポビドン40部からなる固形分10重量% 水分散液であること以外は同様の操作で被覆を行い、130mgの錠剤に対して3.9m gの被覆層を有する133.9mgの被覆錠剤とした。 10 【0042】 比較例7 実施例1の被覆液が、PVA3部、マルチトール97部からなる固形分10重量%水溶 液であること以外は同様の操作で被覆を行った。 【0043】 実施例4 実施例1の被覆液が、PVA60部、グリセリン2.5部、低置換度ヒドロキシプロピ ルセルロース(L−HPC)(LH−31、信越化学)37.5部からなる固形分10重 量%水分散液であること以外は同様の操作で被覆を行い、130mgの錠剤に対して3. 9mgの被覆層を有する133.9mgの口腔内崩壊性被覆錠剤とした。 20 【0044】 実施例5 実施例1の被覆液が、PVA70部、マルチトール30部からなる固形分10重量%水 溶液であること以外は同様の操作で被覆を行い、130mgの錠剤に対して3.9mgの 被覆層を有する133.9mgの口腔内崩壊性被覆錠剤とした。 【0045】 実施例6 実施例1の被覆液が、PVA20部、マルチトール50部、酸化チタン(HA−R、フ ロイント産業)27部、三二酸化鉄3部からなる固形分10重量%水分散液であること以 外は同様の操作で被覆を行い、130mgの錠剤に対して2.6mgの被覆層を有する1 30 32.6mgの口腔内崩壊性被覆錠剤とした。 【0046】 実施例7 実施例1の被覆液が、PVA30部、マルチトール40部、酸化チタン27部、三二酸 化鉄3部からなる固形分10重量%水分散液であること以外は同様の操作で被覆を行い、 130mgの錠剤に対して3.9mgの被覆層を有する133.9mgの口腔内崩壊性被 覆錠剤とした。 【0047】 実施例8 実施例1の被覆液が、PVA40部、マルチトール30部、酸化チタン27部、三二酸 40 化鉄3部からなる固形分10重量%水分散液であること以外は同様の操作で被覆を行い、 130mgの錠剤に対して3.9mgの被覆層を有する133.9mgの口腔内崩壊性被 覆錠剤とした。 【0048】 実施例9 実施例1の被覆液が、PVA30部、マルチトール38部、酸化チタン27部、三二酸 化鉄3部、シリコーン(SH200C FLUID100CS 、東レダウコーニング) 2部からなる固形分10重量%水分散液であること以外は同様の操作で被覆を行い、13 0mgの錠剤に対して3.9mgの被覆層を有する133.9mgの口腔内崩壊性被覆錠 剤とした。 50 (11) JP 5549586 B2 2014.7.16 【0049】 実施例10 実施例1の被覆液が、PVA30部、マルチトール20部、ラクチトール(ラクチトー ルMC、ダニスコジャパン)20部、酸化チタン27部、三二酸化鉄3部からなる固形分 10重量%水分散液であること以外は同様の操作で被覆を行い、130mgの錠剤に対し て3.9mgの被覆層を有する133.9mgの口腔内崩壊性被覆錠剤とした。 【0050】 実施例11 実施例1の被覆液が、PVA30部、ラクチトール40部、酸化チタン27部、三二酸 化鉄3部からなる固形分10重量%水分散液であること以外は同様の操作で被覆を行い、 10 130mgの錠剤に対して3.9mgの被覆層を有する133.9mgの口腔内崩壊性被 覆錠剤とした。 【0051】 実施例12 実施例1の被覆液が、PVA20部、ラクチトール45部、酸化チタン27部、三二酸 化鉄3部、ポリシングワックス(103、フロイント産業)5部からなる固形分10重量 %水分散液であること以外は同様の操作で被覆を行い、130mgの錠剤に対して3.9 mgの被覆層を有する133.9mgの口腔内崩壊性被覆錠剤とした。 【0052】 実施例13 20 実施例1の被覆液が、PVA30部、トレハロース(トレハロースG、旭化成ケミカル ズ)40部、酸化チタン27部、三二酸化鉄3部からなる固形分10重量%水分散液であ ること以外は同様の操作で被覆を行い、130mgの錠剤に対して3.9mgの被覆層を 有する133.9mgの口腔内崩壊性被覆錠剤とした。 【0053】 実施例14 実施例1の被覆液が、PVA30部、マンニトール(ペアリトール50C、ロケットジ ャパン)40部、酸化チタン27部、三二酸化鉄3部からなる固形分10重量%水分散液 であること以外は同様の操作で被覆を行い、130mgの錠剤に対して3.9mgの被覆 層を有する133.9mgの口腔内崩壊性被覆錠剤とした。 30 【0054】 実施例15 実施例1の被覆液が、PVA30部、マルトース(精製マルトース、林原)40部、酸 化チタン27部、三二酸化鉄3部からなる固形分10重量%水分散液であること以外は同 様の操作で被覆を行い、130mgの錠剤に対して3.9mgの被覆層を有する133. 9mgの口腔内崩壊性被覆錠剤とした。 【0055】 実施例16 実施例1の被覆液が、PVA30部、エリスリトール(日研化成)40部、酸化チタン 27部、三二酸化鉄3部からなる固形分10重量%水分散液であること以外は同様の操作 40 で被覆を行い、130mgの錠剤に対して3.9mgの被覆層を有する133.9mgの 口腔内崩壊性被覆錠剤とした。 【0056】 実施例17 実施例1の被覆液が、PVA30部、乳糖35部、グリセリン5部、酸化チタン27部 、三二酸化鉄3部からなる固形分10重量%水分散液であること以外は同様の操作で被覆 を行い、130mgの錠剤に対して3.9mgの被覆層を有する133.9mgの口腔内 崩壊性被覆錠剤とした。 【0057】 比較例8 50 (12) JP 5549586 B2 2014.7.16 実施例1の被覆液が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(TC−5R 、信越化学)30部、乳糖35部、グリセリン5部、酸化チタン27部、三二酸化鉄3部 からなる固形分10重量%水分散液であること以外は同様の操作で被覆を行い、130m gの錠剤に対して3.9mgの被覆層を有する133.9mgの口腔内崩壊性被覆錠剤と した。 【0058】 実施例18 実施例1の被覆液が、PVA30部、マルチトール5部、ラクチトール10部、乳糖2 5部、酸化チタン27部、三二酸化鉄3部からなる固形分10重量%水分散液であること 以外は同様の操作で被覆を行い、130mgの錠剤に対して3.9mgの被覆層を有する 10 133.9mgの口腔内崩壊性被覆錠剤とした。 【0059】 実施例19 PVA30部、マルチトール5部、ラクチトール10部、乳糖25部、酸化チタン27 部、三二酸化鉄3部からなる固形分10重量%水分散液を調製した。薬物としてアムロジ ピンベシル酸塩を含有するアムロジン(R)OD錠2.5mg(大日本住友製薬)200g をフィルムコーティング機(DRC−200、パウレック)に投入し、被覆液を噴霧し8 5mgの錠剤に対して1.3mgの被覆層を有する86.3mgの口腔内崩壊性被覆錠剤 とした。 【0060】 20 比較例9 特開昭54−28812号公報(特許文献2)記載の手法により固形製剤を製造した。 乳糖(Pharmatose 200M、DMV)を47.2部、結晶セルロース(セオ ラス PH−101、旭化成ケミカルズ)を35.4部、コーンスターチ(W、日本食品 化工)35.4部秤りとり、攪拌造粒機(NMG−3L、奈良機械)に投入した。メチル セルロース(SH−15、信越化学)1.2部を溶解させた蒸留水を加えながら造粒し、 造粒物を製造した。得られた造粒物、コーミル(197S、パウレック)を使用して処理 し整粒顆粒を得た。整粒顆粒119.2部に対してステアリン酸マグネシウム(太平化学 産業)0.8部を添加し5分間混合した。得られた顆粒を打錠機(correct19、 菊水製作所)を用いて120mgの錠剤とした(内核)。 30 次に本錠剤200gをフィルムコーティング機(DRC−200、パウレック)に投入し 、PVA45.2部、流動パラフィン(国産化学)5.65部、マンニトール45.2部 、Span80(和光純薬工業)1.69部、Tween80(関東化学)2.26部を 分散した液を噴霧し、120mgの錠剤に対して3mgの被覆層を有する123mgの被 覆錠とした。 【0061】 参考例2 マンニトール(ペアリトール300DC)を96.745重量部秤り目開き1mmのM eshで篩過し、流動層造粒機に投入した。次にこの顆粒に対しナルフラフィン塩酸塩を 0.005部、チオ硫酸ナトリウム水和物0.1部を蒸留水に溶解したスプレー液を噴霧 40 し、造粒顆粒を製造した。次にマンニトール(ペアリトール50C)を25.9675部 秤りとり目開き1mmのMeshで篩過し、クロスポビドン6.5部と共に攪拌造粒機( NMG−3L)に投入した。次に三二酸化鉄を0.0325部分散させた蒸留水を加えな がら造粒し、造粒物を製造した。流動層造粒機にて製造した造粒顆粒および攪拌造粒機に て製造した造粒顆粒を、それぞれコーミルを使用して処理し整粒顆粒を得た。整粒顆粒1 29.35部に対してステアリン酸マグネシウム(大平化学産業)、0.65部添加して 5分間混合した。得られた顆粒を、打錠機(Correct19、菊水製作所)を用いて 130mgのWR錠剤とした。 【0062】 実施例20 50 (13) JP 5549586 B2 2014.7.16 PVA30部、乳糖40部、酸化チタン27部、三二酸化鉄3部を蒸留水に分散し、固形 分10重量%の被覆液を調製した。参考例2により製造した口腔内崩壊性錠剤200gを フィルムコーティング機に投入し、被覆液を噴霧し130mgの錠剤に対して3.9mg の被覆層を有する133.9mgの口腔内崩壊性被覆錠剤とした。 【0063】 実施例21 実施例20と同様に被覆液を調製し、薬物としてタムスロシン塩酸塩を含有するハルナー ル(R)D錠0.1mg(アステラス製薬)に、被覆液を噴霧し、119.2mgの錠剤に 対して3.7mgの被覆層を有する122.9mgの口腔内崩壊性被覆錠剤とした。 【0064】 10 実施例22 実施例20と同様に被覆液を調製し、薬物としてファモチジンを含有するガモファー(R) D錠10mg(サンド)に、被覆液を噴霧し、128.0mgの錠剤に対して3.6mg の被覆層を有する131.6mgの口腔内崩壊性被覆錠剤とした。 【0065】 実施例23 実施例20と同様に被覆液を調製し、薬物としてエバスチンを含有するエバステル(R)O D錠 5mg(大日本住友製薬)に、被覆液を噴霧し、101.0mgの錠剤に対して2 .9mgの被覆層を有する103.9mgの口腔内崩壊性被覆錠剤とした。 【0066】 20 実施例24 実施例20と同様に被覆液を調製し、薬物としてランソプラゾールを含有するタケプロン (R)OD錠15(武田薬品工業)に、被覆液を噴霧し、283.6mgの錠剤に対して1 3.0mgの被覆層を有する296.6mgの口腔内崩壊性被覆錠剤とした。 【0067】 実施例25 実施例20と同様に被覆液を調製し、薬物としてボグリボースを含有するボグリボースO D錠0.2mg「トーワ」(東和薬品)に、被覆液を噴霧し、135.6mgの錠剤に対 して1.8mgの被覆層を有する137.4mgの口腔内崩壊性被覆錠剤とした。 【0068】 30 実施例26 実施例20と同様に被覆液を調製し、薬物としてブロチゾラムを含有するレンドルミン(R )D錠0.25mg(ベイリンガーインゲルハイム)に、被覆液を噴霧し、167.4m gの錠剤に対して4.9mgの被覆層を有する172.3mgの口腔内崩壊性被覆錠剤と した。 【0069】 実施例27 1.口腔内崩壊時間の測定 実施例1∼26および比較例1∼6、比較例8、比較例9のそれぞれで得られる口腔内 崩壊性被覆錠剤について、健康な成人男性および女性からなる3名の測定者により口腔内 40 崩壊時間を測定した。口腔内崩壊性被覆錠剤の口腔内崩壊時間から、内核錠の口腔内崩壊 時間を差し引いた時間を被覆層の口腔内崩壊時間として算出した(表2)。 2.高湿度下の被覆層の亀裂 実施例1∼26および比較例1∼6、比較例8、比較例9のそれぞれで得られる口腔内 崩壊性被覆錠剤について、40℃、75%RHに1日間保存後、錠剤を目視で観察し被覆 層の亀裂の有無を評価した(表2)。 3.光安定性試験 実施例7で用いた内核(参考例1)と、実施例7の口腔内崩壊性被覆錠剤をシャーレ上 に重ならないように広げ、白色蛍光灯2000Lux、累積60万Lux・hr照射した 後、下記の条件のHPLC法により薬物残存率(%)を測定することで安定性を評価した 50 (14) JP 5549586 B2 2014.7.16 (表3)。 カラム:Inertsil ODS−3(内径3.0mm×長さ150mm、粒径5μm ) ガードカラム:カートリッジカラムE(内径3.0mm×長さ10mm、粒径5μm) 移動相:25mmolリン酸緩衝液(pH4.5)/アセトニトリル混液(77.5:2 2.5)(v/v) 流量:0.5mL/min 検出波長:280nm 4.錠剤硬度測定 実施例7で用いた内核(参考例1)と、実施例7の口腔内崩壊性被覆錠剤を硬度計(T ABLET TESTER6D、Schleuniger)を用いて測定した(表4)。 5.摩損度測定 アムロジン(R)OD錠2.5mgと実施例19で得られたアムロジン(R)OD錠2.5m g被覆錠剤の製造直後および40℃、75%RH条件下で2時間保存した後の摩損度を第 15改正日本薬局方通則第F−131頁記載の摩損度試験法に従い測定した(表5)。 【0070】 10 (15) JP 5549586 B2 2014.7.16 【表2−1】 10 20 30 40 【0071】 (16) JP 5549586 B2 2014.7.16 【表2−2】 10 20 30 【0072】 【表3】 【0073】 40 (17) JP 5549586 B2 2014.7.16 【表4】 【0074】 【表5】 10 【0075】 表2に示されるように、20℃において10mL未満の水に1g以上溶け、かつ分子内 にヒドロキシ基を有し単位ヒドロキシ基当たりの分子量が200以下の水溶性物質と、被 20 覆層重量に対して5重量%以上のポリビニルアルコール系樹脂とを含有する被覆層により 被覆された、薬物を含有する安定な口腔内崩壊性被覆錠剤は、比較例処方に比べ優れた口 腔内崩壊性を有するとともに、40℃、75%RH条件の高湿度下で保存した場合も被覆 層に亀裂を生じないことが示された。また表3に示されるように、顕著な光安定化効果を 示し、光に不安定な薬物も医薬品を取り扱う際に十分な安定性を確保できることが明らか となった。さらに表4、表5で示されるように、錠剤の硬度を向上するとともに摩損性も 顕著に改善し、これらの効果により、これまで一包化包装不可であった口腔内崩壊錠に対 しても、一包化包装が可能となり、患者の服薬コンプライアンスを改善し、治療効果を向 上させることができる。 【産業上の利用可能性】 【0076】 本発明は、種々の薬物に対しても適応が可能である。特に、これまで適応が困難であっ た光に不安定な薬物の口腔内崩壊性錠剤化を達成することができる。また錠剤の硬度を向 上するとともに摩損性も顕著に改善し、これらの効果により、これまで一包化包装不可で あった口腔内崩壊錠に対しても、一包化包装が可能となり、患者の服薬コンプライアンス を改善し、治療効果を向上させることができる。 30 (18) JP 5549586 B2 2014.7.16 フロントページの続き (51)Int.Cl. FI A61K 47/04 (2006.01) A61K 47/04 A61K 47/02 (2006.01) A61K 47/02 (56)参考文献 特開平9−511489(JP,A) 特表2005−524654(JP,A) 特開昭54−28812(JP,A) 特表2003−509339(JP,A) 特開平8−59512(JP,A) 特開2008−261849(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.,DB名) A61K 31/00 A61K 9/00 A61K 47/00 10
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