律子 選・村松五灰子 浴衣着て少しくだけし母偲ぶ 愛知県 伊藤 ◆弁天のやうな妻なり百合の花 長野県 下島 博 愛媛県 井上 征郎 千葉県 鈴木 英子 ◆早苗田の根付き見届け母逝きぬ 神奈川県 ◆機銃掃射に伏せし日よ麦の秋 ◆ 励みけり梅雨の晴間のボランティア 東京都 伊奈 三郎 星野 博 ◆螢と同じ水飲み谷戸ぐらし 静岡県 小泉八千代 埼玉県 日尾野安子 ◆水輪の先鋒たりしが長考す ◆河鹿声とどく窓閉ぢ旅枕 ◆赤紙に行きしままなり敗戦忌 ◆足るを知る隠元豆を片手ほど 大分県 武石富美子 岩手県 上沖 貞子 愛知県 松井 暁見 評 どちらかと言えばふだん厳格な母が浴衣にくつろぐ、い つもと違う母、それが嬉しかった記憶。遠い思い出の母はい ほととぎす 五灰子 ﹁ 笹 の 小 揺 れ に 宇 宙 を 見 よ ﹂ 私 の 師 伊 藤 柏 翠 の 言 葉 で す。 やっとこの頃少し判るような、判らないような。 *作句小見 良き兆し木の実が肩を打てるのは *選者吟 ◆住み古りてここが一番時鳥 勝行 つも切ない。 か や つりぐさ 道草を食って蚊帳吊草の中 長崎県 麻生 評 ﹁蚊帳吊草の中﹂の表現が楽しい。その草を丁寧に裂い て小さな蚊帳を作ることに夢中なのだ。 24 選・長澤 ちづ 梅雨晴れの青田育む稲の花越後平野に香り 漂う 新潟県 星野 三興 評 平和で豊かな日本の典型のような景色が詠われていてほ っとするものがある。目に美しいばかりではなく稲の花の香 りまで漂うという。視覚と嗅覚に訴える歌柄の大きな気持の 良い一首である。 すでに銀杏の葉の形して芽吹きいる巨木の 下のうすみどり色 兵庫県 前田あつ子 評 銀杏のあの特徴的な形が、芽吹きの段階から見られると いう発見が、素直にすっきりと詠われている。言葉の斡旋が 巧み。体言止めには驚きがこもる。 ◆遼太郎周五郎また正太郎雨の降る日も終日たのし 広島県 小畑 宣之 ◆津波浴びし砂利の間に間に生えゐたる韮をちぎりて汁に 岩手県 阿部 子 放てり みどり しょう ◆桑の実の熟るる頃だと添え書きする便り最後に友は逝き 福島県 西木 甚 たり いととんぼ ◆過去未来いづべへ過ぎむ糸蜻蛉鏡の中のわがうしろ飛ぶ 兵庫県 小林喜美代 出てくる引っ込むまたかける指よすばやくつ ◆塩をかまけてる がい 福岡県 三吉 誠 かめ馬刀貝 なな わら てん ◆飲兵衛は隣の谷の酒を飲む﹁七つ笑﹂って﹁天笑﹂でに 長野県 毛涯 潤 こにこ ◆海水浴色とりどりの熊野灘洋上遙か志摩賢島 三重県 山下 利夫 ◆真夜中に 木の歌口遊み刻の経過を指折るわれは 佐賀県 丹野 湊 ◆風わたり青田の稲がおじぎしてハクセキレイがとととと 秋田県 小松 紀子 歩く ◆糸遊び風の水面に織りなすは翠の綾の光る葉衣 長崎県 小玉愛美理 *選者詠 ち づ 藤棚に花は終れど気配あり花の伝言聞こえ るようで *作歌小見 コツがあるらしいマテ貝の潮干狩りの様子を勢いよく詠う 三吉さん、ひょうきん者の貝とのやりとりがいかにも楽しそ う。また毛涯さんの地酒の名前を詠みこんだ歌も、呑兵衛ら しい可笑し味がある。 25 達磨忌 30 ご本山だ よ り 大本山永平寺 山の斜面を開いて築かれた永平寺の七堂伽藍。一〇〇段以上あ る階段を登りきった一番高い所にあるお堂が法堂です。そこから 眺める景色は、ぐるりと山に囲まれており、永平寺が深山幽谷の 地にあることがよくわかります。境内の木々は少しずつ紅に色づ きはじめ、朝夕と少し肌寒く、秋を感じさせる時節となりました。 十月五日は、赤色の衣を纏う坐禅すがたの﹁だるまさん﹂で親 しまれている達磨大師のご命日です。お釈迦さまの正しいみ教え を受け継がれた、お祖師さまの二十八代目になり、インドから中 国へと初めて仏法を伝えてくださったのも達磨大師です。その正 しい仏法が、道元禅師さまのお師匠さまである天童如浄禅師さま へと伝わり、道元禅師さまがお継ぎになり、第五十一代となられ ました。そして、達磨大師が中国へと仏法を伝えたように、中国 から日本へと正しく伝えてくださいました。 永平寺の名は、達磨大師が中国へ仏法を伝えた年の年号が﹁永 平﹂であったことに由来します。 達磨忌は、達磨大師が中国へと渡り仏法を伝えてくださり、私 たちがお釈迦さまのみ教えを頂けることへの報恩感謝のご供養法 要なのです。 大本山永平寺/0776- 63- 3102 御両尊の御征忌会 31 ご本山だ よ り 大本山總持寺 曹洞宗の大本山である福井県の永平寺と神奈川県の總持寺で は、開山忌法要のことを﹁御征忌会﹂と申します。 特に總持寺では、御開山さまの瑩山禅師さまと二祖さまの峨山 禅師さまお二方を合わせて﹁御両尊﹂と称し、 ﹁御両尊の御征忌会﹂ を奉修しております。 御征忌会は、毎年十月十二日から十五日にかけて厳修され、全 国から選ばれた焼香師さまが禅師さまの御代理として法要の導師 を勤められます。同時に随喜︵お手伝い︶のご寺院・檀信徒の皆 さまの方々も大勢参集して、報恩の誠が捧げられます。 總持寺では十月上旬から冬安居制中に入り、これから正月明け までの一〇〇日間、首座和尚を中心に集中修行が続けられます。 さて、来月十一月二日から三日に、一泊で﹁本山檀信徒の集い﹂ が開催されます。總持寺は曹洞宗の大本山であると同時に、多く の檀信徒を擁する寺院でもあります。坐禅や聞法、写経の他、今 年は落語家の桂歌丸師匠を迎え、円熟した話芸を堪能いたします。 翌三日は、広大な境内を開放して﹁つるみ夢ひろばイン總持寺﹂ が開催されます。地元鶴見の文化歴史に親しみ、東日本大震災の 被災地と絆を結ぶことをテーマに開かれます。読者の皆さまにも ご来場くださいますようご案内申し上げます。 大本山總持寺/045- 581- 6021
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