高知公園天守・懐徳館等展示改修計画 平成 2 8 年 1 0 月 高知県教育委員会 第一章 高知公園天守・懐徳館等の基本理念 1. 基 本 理 念 高知城は、山内一豊により、1601(慶長 6)年に築城が始められてから10年を経て 1611 (慶長 16) 年までに築城されました。南に鏡川が、北に江ノ口川がそれぞれ東流する間に挾まれた平地中に位置す る独立丘陵大高坂山を利用して築城されており、本丸の北に二ノ丸、二ノ丸の東側に三ノ丸を配置した 平山城である。以降、土佐山内家は高知城を居城とし、江戸時代を通じて土佐を支配しました。 明治維新を迎え、1871(明治 4)年の廃藩置県及び廃城令により、現存する15棟の重要文化財建物を 除き破却。 1873(明治 6)年には高知県最初の公園のひとつである高知公園として整備され、現在に至 ります。この時残された建造物15棟は重要文化財に、高知城の城域の中心部は史跡に文化財保護法に より、それぞれ指定されています。 高知城は、以来高知のシンボルとして県民に親しまれるとともに多くの見学者が訪れる高知県有数の 観光地です。 高知城は、高知市中心部にあるという好立地を活かし、現在追手門前に整備中の高知城歴史博物館と 連携し高知の歴史観光の中心的な施設としての役割を果たしていくことが求められています。 (1)高知城の文化財の概要 ①重要文化財(建造物 15 棟) 本丸 天守、懐徳館、納戸蔵、東多聞、西多聞、黒鉄門、廊下門、詰門、天守東南矢狭間塀、 天守西北矢狭間塀、黒鉄門西北矢狭間塀、黒鉄門東南矢狭間塀 その他 追手門、追手門西南矢狭間塀、追手門東北矢狭間塀 ②史跡 高知城跡 別図で示す範囲(指定面積135,805.89㎡) 2. 展 示 改 修 の 対 象 と な る 範 囲 高知城天守、懐徳館、納戸蔵、東多聞、廊下門(以下、高知城天守等という。)の展示を改修範囲とし ます。 ○対象建造物の概要 名称 構造形式 面積 建造年 天守 四重五階天守、本瓦葺 500.69 ㎡ 延享 4 年(1747) 懐徳館 木造平屋建本瓦葺 362.31 ㎡ 寛延 2 年(1749) 納戸蔵 木造平屋建本瓦葺 懐徳館に含まれる 延享 4-寛延 2(1747~1749) 東多聞 一重櫓、本瓦葺 41.65 ㎡ 享和年間(1801-1803) 廊下門 櫓門、入母屋造、本瓦葺 126.41 ㎡ 享和年間(1801-1803) 3. 基本方針 (1)歴史観光の中心的施設 高知城の歴史や文化財を楽しくわかりやすく展示し、お城好きの方だけでなく、高知を初めて訪れた方 にも高知城への理解を促す、歴史と観光のバランスの取れた施設として役割を果たします。 (2)児童•生徒の歴史体験 学校教育との連携を強化し、高知の未来を担う子ども達に家庭や学校とは異なる学びの場を創出します。 児童•生徒が高知城で本物の文化財に触れ、従来の遠足の場所に止まらず、幅広い学びができるよう想像 力や視野を広げることができる場として機能します。 (3)外国人観光客の高知城体験 近年、クルーズ船の寄港などにより増加する外国人観光客は、2020年に開催される東京オリンピッ ク・パラリンピックに向けてますます増加するものと考えられます(平成26年宿泊者数 約2.9万人)。 日本を象徴する建造物の一つである城郭は、外国人観光客にも人気が高いことから、外国人が高知城の 魅力を理解し高知に好感を持つことにつなげる場としての役割を果たします。 4. 施設の活動テーマ 高知城には、高知城の歴史的価値を語りかける建造物や石垣が残されています。高知城がどのよう に作られ、江戸時代を通じてどのような役割を果たしてきたのか学び、文化財としての価値だけでな く江戸時代の政治や人々の生活について考えることが高知城の公開の目的です。 そのために、高知城の建物や石垣などの文化財や藩政に関する事柄だけでなく、建物や石垣を作る 技術や人々についても情報発信の活動を展開します。 5. 来館者 観光客、児童•生徒、県民を対象として想定します。加えて近年増加している外国人観光客も視野に 入れ、英語、中国語(簡体字、繁体字)、ハングル、タイ語などの表記や対応を図ります。また、子 どもや高齢者が快適に利用できるように工夫を行います。 6. 展示改修の時期 平成 28 年度の改修を予定します。展示改修にあたっては、 教育委員会文化財課と現在の高知城管 理事務所職員が連携して準備を進めます。 第二章 高知城の現状と課題 1.改修へ至る経緯と現状 高知城の天守等は、明治6年の高知公園開設の後、天守を咸臨閣、本丸御殿を懐徳館として公開したこ とに始まり、大正2年には、懐徳館協賛会により、県内外から様々な資料の寄贈、寄託を受け高知の歴史 施設として整備されました。当時県内には、博物館が無かったことから、高知県立郷土文化会館が昭和4 2年に高知城内に開館するまでは歴史博物館としての役割も担っていました。 しかしながら、歴史的建造物であり温度湿度など資料の適切な保存管理を行うことが難しいことから、 高知県立歴史民俗資料館、高知県立美術館などの博物館整備を契機として資料の移管を行いました。その 結果、城内には、棟札など少数の一次資料と解説板中心の展示という状態となったことから、多くの資料 が展示されていたことを知っている見学者からは、物足りないとの意見が出されました。 そうしたことから、築城400年祭が開催された平成5年に解説を充実することとして、現在の解説板 を整備しました。その後も、平成18年に放映されたNHK大河ドラマ「功名が辻」のパビリオンに設置 されていたジオラマを移設するなどして、現在の展示内容は整備されてきたものです。 これらの展示は、高知城の歴史、建造物や石垣など文化財について解説した内容のものに加え、土佐藩 の歴史、江戸時代の高知について紹介したものなど全体を俯瞰する内容となっています。そうしたことも あり、限られた空間に多数の解説板が壁状に設置されることとなり、本来知って欲しい高知城の建造物の 特徴などが解りづらくなっています。 また、近年クルーズ船が来航するなどにより高知を訪れる外国人観光客が増加しています。高知城では、 英語、中国語(簡体字、繁体字)、ハングルのパンフレットを準備していますが、城内の解説板は、日本 語表記のみであり、外国人観光客に高知城の良さを十分お伝えできていません。高知県では、平成 27 年度、 平成 28 年度の 2 カ年で受け入れ基盤整備を進める取り組みとして「標識ツールの多言語化」「案内ツール の多言語化」を進めることとしています。高知城においても、2020年の東京オリンピック・パラリン ピックに向けて外国人観光客をお迎えするためには、多言語化などの対応が必要です。 こうした現状を改善し、高知城の魅力を多くの方にお伝えするために解説板等の改修を行うものです。 ※入館者数状況の推移 天守・懐徳館等入館者数 400,000 372,753 344,641 350,000 300,000 252,445 250,000 200,000 181,230 277,117 269,628 252,031260,807247,266 214,580208,500 150,000 100,000 50,000 0 ※平成17年度以降、各年度の入館者の詳細は、「高知公園天守・多門他入館者の状況」参照 2. 課 題 第一章に掲げた高知城の基本理念と基本方針に、現在の高知城天守等の施設の状況を照らし合わせると、 主に次のような問題点が浮かび上がります。 〇効果的な資料の展示公開•ガイダンスを行える施設でない •歴史的資料を保管展示できる展示ケースが無い(耐震•温湿度管理•光量調整•防犯対策が出来てい ない) •解説板の数が多く、導線を複雑化させるとともに両面に記載があるなど情報量が多いため、見学 時間が長くなることから、十分読まれていない。 •建物内に防犯カメラがない。 〇施設の快適化などが図られていない ・身体障害者、高齢者、外国人、子ども連れが見学をするための配慮が施されていない。 ・解説板等が多く通路が狭くなっている場所がある。 ・解説板等の転倒防止策など地震対策が不十分である。 〇展示用情報システムが未整備である ・解説板は、日本語表記のみである。 ・映像や音声を活用した情報提示ができていない。 なお、これらの問題点を解決するための解説板の改修を実施するにあたっては、すべてにおいて、 メンテナンスコス卜、ランニングコストなど後年度負担が過大とならないよう検討する必要があり ます。 また、今回は展示改修を計画していない映像や音声を活用した展示の阻害とならない配慮も必要 です。 第三章 リニューアル後の展示計画 1.高知城と城下町における資源の活用方針と担当施設の役割分担 高知市は、昭和20年7月4日の高知空襲により中心部の多くの建物が消失したため江戸時代の高知城下 を偲ぶものは限られています。しかし、重要文化財「旧山内家下屋敷長屋」などいくつかの建造物、道や水 路などの町割にその名残を見ることができます。 高知城は、前述したようにかつては博物館としての役割を果たしていましたが、現在は、高知城の歴史、 建造物や石垣などの文化財を味わう場所となっています。土佐藩の治世や山内家の宝物、人々の暮らしなど については、現在整備中の高知城歴史博物館が担う予定です。これを基本に新たな展示計画を検討するもの とします。 2.展示計画の方針 計画にあたっては、志国高知幕末維新博基本計画書(別添抜粋P15、P16)に記載されている歴史資 源の磨き上げの取り組み(磨き上げの考え方、磨き上げの方針)を踏まえた上で、下記の方針を元に検討す ること。 ※志国高知幕末維新博基本計画書URL:http://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/020101/rekishihaku ・高知城に関する歴史•文化資料を活用し、高知城の魅力を伝えます。 ・展示は、「高知城の歴史と文化財」を、解説板などを用いて楽しく展示します。 ・現在、複雑になっている見学動線を最適化し、分かりやすい見学ルートを提示します。 ・ジオラマは、原則として現在のまま活用します。(ただし、見学動線適正化のための移設や展示テー マに合わないものについての撤去は、やむを得ないものとします) ・棟札など江戸時代から伝わる資料については、その適切な保存をはかるための展示ケース等を整備し ます。 ・約 10 年を目途に展示全体を更新していきます。 ※解説板等の現状は、別添「高知城資料展示等一覧表」参照 ※今回の更新対象は、別添「高知城資料展示等一覧表」のパネル展示、説明板、案内看板・注意看板、キ ャプション等とする。 ・次期整備では、映像や音声などの情報提示ツールを整備する予定です。 3.展 示 空 間 展示空間としては、下記の建造物を利用します。それぞれが重要文化財であることから、建造物の持つ 価値を損なわないよう配慮した展示とします。 高知城天守、懐徳館、納戸蔵、東多聞、廊下門(平面図参照) 第四章 今後のスケジュール等 1.整備スケジュール(予定) 平成28年度 項目 設 1−4半期 計 展示工事 2-4半期 3−4半期 4−4半期 設計 製作 完成 2.概算全体工事費 39,279千円 3.成果物 (1)概算設計書(数量計算書、見積もり根拠資料を含む)2部 (2)計画図・意匠図 2部(縮尺等については、実施段階で協議します) (3)(1)及び(2)の電子データ(CADデータについては、JW形式及びDXF、SFC形式。マ イクロソフトワード、エクセル、アドビアクロバットで読み込み可能な形式)を格納したCD−R又 は、DVD-R 2部 4.留意事項 (1)展示空間となる建造物は、いずれも重要文化財に指定されていることから、解説板の設置により建 造物を破損したり雰囲気を損なわないようにすること。 (2)照明設備整備のための配線にあたっては、可能な限り既存の配線ルートを活用すること。 (3)地震により、解説板が転倒しないよう構造上の配慮に努めるとともに必要に応じて固定するなど転 倒防止措置をとること。 (4)開館を行いながら、更新を行うことを前提とするので、見学者の安全確保に十分留意すること。
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