第2回 社会とは何か? 川端 浩平 [email protected] ワークシートの問い Q.日常生活のどのような場面で「社会」 の存在に気づくことがありますか。 具体的な例をあげて考察してください。 また、そのとき、あなたは「社会」に 対して何を感じますか。 今日の講義 1. 社会とは? 2. 社会学とは? 3. 社会学と近代 1.社会とは? 個人と社会 個人(Individual)と社会(Society) ・個人:一個ノ人、独立人民、一個人、個人(1884) ・社会:明治時代のジャーナリスト福地源一郎が『東 京日日新聞』(1875)でソサイチーというル ビつきで使用したのがはじまりといわれる。 c.f. 世間:個人と社会を明確に分けていない。 どのような場面で 社会に出くわすか? アルバイト 逸脱行為(交通違反) 異文化との接触(言語、習慣) 空気のような「社会」 目に見えない「社会」 複雑化:複雑化する知識・情報を通じた 社会イメージの共有 e.g. メディア 問題意識によって可視化される「社会」 e.g. ホームレスの人びと 社会を読み解くliteracy (リテラシー=識字能力)を身につける 自分の問題関心や視点から社会を読み解く e.g. 仕事、家族、地域、etc… 「常識」を疑う、Critical(批判的)に考える 知識を「生産」する(=自分の言葉で語る) 社会の認識地図を作成する 思考実験1: マス・メディア(媒体)という装置 「社会」を描くマス・メディアが発信するメッセージを Critical(批判的)に読み解く メディアの情報を判断する際に気をつけるべき点 ・商品としての情報であるということ(消費、視聴率) ・創造物だということ(制作・編集の舞台裏) ・政治性があること(企業の思想・イデオロギー、 政治による介入) 「治安が悪化している」 戦後日本の治安状況(データ) 昭和30年代? 日本の治安をめぐるQ&A 昔にくらべて治安が悪くなった?(昔、治安が良 かったわけではない) 少年犯罪の凶悪化?(60歳以上の高齢者の検挙人 員が増加している) 殺人は増えているか?(減少している) 不審者?(殺人の8割以上が顔みしり、そのうち4 割は家族間で起こる) 国際的にみた日本の治安はとても良い。 2.社会学とは? 社会学という学問 大学における学問の分類 (1)人文科学(Humanities) (2)社会科学(Social Sciences) (3)自然科学(Natural Sciences) (1)人文科学 哲学、歴史学、文学、言語学 文献を通じた調査 (2)社会科学 法律学、政治学、経済学、経営学、教育学、 心理学、文化人類学、地理学、社会学 連字符社会学(●●社会学):30以上の 分野(e.g. 都市社会学、農村社会学、地域 社会学など) 時代とともに新しい枠組みができる 連字符社会学 医療社会学 エスニシティの社会学 音楽社会学 家族社会学 環境社会学 教育社会学 国際社会学 産業社会学 ジェンダーの社会学 スポーツ社会学 政治社会学 知識社会学 都市社会学 農村社会学 地域社会学 犯罪社会学 情報社会学 歴史社会学 など 社会学と他の学問との近接性 (例)文化人類学 「核家族」(nuclear family) ・Nuclear=核(当時の物理学の最小単位) ・ジョージ・マードック『社会構造』(1949) ・1950年代後半以降の都市化(日本の場合) ・学際性(Interdisciplinary) (3)自然科学 工学、理学、農学、医学、歯学、薬学 人文科学と社会科学の違い 人文科学:文献批判(text critique) 社会科学:調査、フィールドワーク、 実験的要素(実証的研究) 自然科学と社会科学の違い 実験可能性 ⇒ 社会学的実験は危険 客観的な測定可能性 ⇒ 主観性と客観性を往来する 研究者と研究対象との分離可能性 ⇒ 自分も考察の対象である 社会科学と客観性 データ収集(統計、フィールド調査) 客観的な測定 理論構築 社会学は、自論を展開するのでも、社会現象 に対して印象を述べるわけでもない。常に、 先行の研究(社会学の知)を参考とし、その 延長線で研究が進められる。 社会学的想像力 100%客観的であることは可能か? 個人的な問題を公的な問題とむすびつけて考え てみる。 社会やそこで生活する「他者」に対する想像力 を深める。 自分が何者なのかをめぐる理解がより多様に、豊 かになる。 3.社会学と近代 近代と社会学 Sociologie:仏社会学者オーギュスト・ コント(1798-1857) 近代(Modern) (例)日本の近代は明治時代(1868年)から 現代(Contemporary) (例)Contemporary Art 近代社会の成立 産業化(Industrialization)にともなう変化 e.g. 仕事、教育、家族、地域、etc 民主主義(Democracy) 近代化する生活空間 (1)地域社会の形成(都市化、郊外化) (2)国民国家の形成 (1)地域社会の形成から近代を考える 郊外(Suburb:sub+urb) 近代化とともに、20世紀初頭に広 がっていく。 田園都市(Garden City) 都市と農村の結婚 エベネザー・ハワード レッチワース(1904) 日本の田園都市とニュータウン 田園都市(1910~1930) 大阪:室町(池田駅)、箕面市(桜井駅) 小林一三(阪急電鉄) 東京:田園調布、洗足 渋沢栄一(田園都市株式会社) ⇒ 避暑地、観光・アミューズメント、住宅地 戦後のニュータウン(1950~1980年代) 千里ニュータウン 多摩ニュータウン ⇒ ベッドタウン、消費・観光(S・モールや、アウトレット) 千里ニュータウン 多摩ニュータウン 蓬莱団地(1969~ ) (2)国民国家の形成から近代を考える ヨーロッパ型の国民国家づくり ・「伝統の創造」(エリック・ホブズボウム) ・「想像の共同体」(ベネディクト・アンダーソン) (例1)神前結婚式(1900年~) (例2)武士道 新渡戸稲造 Bushido: The Soul of Japan (1900) Bushido, the Soul of Japan まとめ 常識やメディアが映し出す社会は、諸個人が 知っている社会と必ずしも同じものではない。 知識や実感から常識を疑い、社会を読み解い ていくことが大事。 社会は常に変化し、他の社会や文化と混ざり 合い、刷新されていくもの。 均質な社会や文化(国家であれ地域であれ) は存在しない。社会は多様である。 授業資料のダウンロード https://www.ad.ipc.fukushima-u.ac.jp/~a050/
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