百石高校(青森・県立)

進路指導実践を磨く!
普通科編
地域と協働し3年かけて進路意識を育成、
就職内定率100%を達成
毎号1 校ずつ高校にご登場いただき、進路指導の取り組みをご紹介しています。
第3回の今回は、キャリア教育を強化し県内での評価が高まっている青森県立百石高校。
地域と密接につながりながら、生徒の将来を見据え、3 年間かけてじっくりと育てていく取り組みをご紹介します。
取材・文/永井ミカ
百石高校(青森・県立)
■ 分掌を超え学校全体が取り組むキャリア教育(抜粋)
進路指導主事
宮本利行先生(左)
授業改革
アクティブラーニング
型授業の推進
学校設定科目
「新聞を読もう」の
推進
進路指導副主任
生徒が気付き、考え、伝えあう授業。生徒の
活動・体験を重視。おいらせ町の補助で購入
したタブレットPCなども活用。
天坂美幸先生(右)
読む力、書く力の定着と、情報収集と分析活
用を通じた自己表現力の育成を図る探求型
授業。記者による出前授業も実施。
校 。調 理 師 免 許が取 得できる食 物
ィブラーニングの定 着など新しい魅
取り組んできたことに加え 、
アクテ
3
1948年創立/普通科・食物調理科
生徒数451人(男子191人・女子260人)
進路状況(2016年3月実績)/大学進学8人、短大
進学13人、専各進学31人、就職94人、
その他2人
︵ 管 理 職 以 外 全 員 参 加 ︶な ど を 経
調理科に比べ、普通科は際立った特
力づくりにも 着 手 。新キャッチフレ
2
て普 通 科の特 色 を 整 理 。従 来から
色がないという 認 識 をされていた。
ーズ﹁ 発 見・挑 戦・実 現∼君の輝く
青森県立百石高校はおよそ 分
の の 生 徒 が就 職 す る 進 路 多 様
しかし 同 校 は 、入 学して く る 生 徒
2016 OCT. Vol.414
意 識づけした。そして、取り組みを
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地 域 社 会と協力したキャリア教
育の充実が認められての受賞。
場 所がある∼ ﹂を掲 げ、教 職 員にも
同校では多くの生徒が生徒会活
動に参加している。
SNS標語づく
りなど、自主的な活動が目立つ。
地域のイベントなどにも積極的に
参加。
キャリア教育優良学校
文部科学大臣賞受賞
育にも 地 道に取り 組み、地 域 と も
生徒会による掲示物
の学び直しに力を入れ、キャリア教
検定料の一部を町が補助。生徒が目標とす
る資格取得に向けて講習会や校内模試など
で支援。
学 校から発 信 することにも 力 を 入
資格取得支援
密に連 携していた 。また 生 徒 会 活
生徒会活動
定員の定めがなく、希望者の多くは役員とな
り、活発に意見を交わし主体的に行事運営を
行う。
れ 、2015 年 度 、キャリア教 育 優
その他
動 が盛 んで あるという 伝 統 も あっ
町の要請に応え実施。300人分の調理と配
膳、会食のもてなしを実践的に学ぶ。
良 学 校 と して 文 部 科 学 大 臣 賞 を
成人式もてなし料理
提供(食物調理科)
受賞した。
青森県消費生活センターによる家庭科での
授業。消費者と製造者のそれぞれの視点か
ら安全問題を考える。
学 者 が減り 、2014 年 度 の 入 学
消費者教育
た。にもかかわらず 、地 元からの入
保育園体験学習
家庭科の授業の一環。園児とのふれあいを
通じて異年齢とのコミュニケーションを図る力
を育成。
者選抜で倍率が1倍を下 回った。
外部講師の体験学習の後で施設を訪問。高
齢者との交流を図るとともに、産業や職業の
理解を深める。
取り 調 査やフリートーク職 員 会 議
老人施設体験学習
危 機 感 を 感 じた 校 長 の 荒 川 由
美 子 先 生は、周 辺 中 学 校への聞 き
地域連携・世代間交流
■ 地域連携を中心としたキャリア教育・進路指導の取り組み
地元企業研究会で企業や仕事の説明を聞き、質疑応答を
行い、
ワークシートを完成させ、後日、班ごとの情報交換会を
行う。
12月
職業を
知る
地元企業協力企業の事前学習。
10∼11月
う。就 職や進 学で面 接を課される生 徒に
地元企業合同就職説明会
リア教 育 を 実 践 するにあたり 、主 事にな
就業体験
向け、同 校では入 学 早々こうしたプレゼン
地域を知る
の機 会 を 設けており、これは3年 間 幾 度
企業見学会に向けて、見学先の地元企業について調べ学
習を行い、働くことの意義を考える。
就業体験
7∼11月
インターンシップ先を決定する。ビジネスマナー講習会を経
て、就業体験を実施。事後に報告書を作成し、職業理解を
深める。
就業体験
報告会
12∼1月
就業体験を通してわかったこと、考えたことを振り返り、わかり
やすくまとめ、1年生に向けて報告する。
受験体験シートを作成し、体験を通じて学んだことを確認し、
1∼2年生に報告、
アドバイスをする機会としている。
必ず力は付いてくるという。
3 年生
非 常に役 立ったという 。
﹁3年 生から始め
5∼6月
け生徒自身が行う。
月 卒 業 生 の 就 職 内 定 率1
地域とのつながりを密にし
地元の協力で模擬面接も
員による 祭りやボランティア参 加 なども
2 年生
る前の3年 間 、学 年 主 任 を 務めた経 験が
職業理解
めの企 業との電 話 連 絡 なども 、できるだ
進 路 指 導 副 主 任の天 坂 美 幸 先 生は言
う。
﹁ 生 徒に負 荷のかかる取り組みに、最
初はとにかく﹃ 無 理 、できない﹄と 言いま
す。それを何 度も根 気よく繰り返しやら
せているうちに、
3年 生になると 、自 分で
求 人 票 を 見て、担 任と相 談し、面 接 を 受
年
信じて引っ張れば力が付きます ﹂。同校は
けて就 職していくようになっていきます 。
201
3
00%を達成した。
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同 校は青 森 県おいらせ町に位 置し 、町
内で 唯一の高 校である 。元々、生 徒や教
地域連携
盛んだったが、各 分 掌や学 年 、教 科などが
1 年生
3年間を通して育てる
社会で役立つ力
となく繰り返される。
活 躍できる人 材を育てなければならない
の 中 で は 聴 く 力 も 育 て たい ﹂と 宮 本 先
﹁ 発 表することが大切なのはもちろん、
﹃ 人の話 を 聴 く ﹄ことも 重 要 。総 合 学 習
るのでは遅い、
3年かけてじっくり社 会で
1学 年で基 礎 学 力
同 校の普 通 科では、
の養 成に力 を 入れ、
2学 年から希 望 進 路
要なものを必 要なときに徐々に取り入れ
と考えてきました。試 行 錯 誤しながら必
生。考える、調べる、発表する、聴く、判断
間 を 見 通した組 織 的 、計 画 的 、継 続 的 な
ているうちに、今の形ができあがったと思
する ⋮ この学 習を繰り返しているうちに
に沿ったクラス編 成を行う。そして、
3年
キャリア教 育 を 総 合 的 な 学 習の時 間﹁ス
います ﹂という。
1月
年が中心になって運 営にあたりながら、生
テップアップタイム﹂で実 施 。教 務 部と学
受験体験
発表会
1学 年の最 初の取り組みは自 分が生ま
れ育った地 域について調べること。同じ出
地元企業人、PTA・同窓会などの外部関係者の協力を得て
実施。生徒自ら課題と努力目標を設定し、
進路実現へのステ
ップとする。
徒 全 員の希 望 進 路 実 現を目 指す。なお、
9月
その後 、地 元 企 業 研 究 会や職 業 調べ、
2学 年での地 元 企 業・大 学 見 学 会 、就 業
模擬面接
身 中 学 校の生 徒がグループを 作り 、自 由
地元企業の協力を得て、
学校独自で実施。求人内容の理解
を深め、応募先選択の一助とする。
学 校のキャッチフレーズ﹁ 発 見・挑 戦・実
7月
体 験︵インターンシップ︶、
3学 年でのテー
合同就職
説明会
マ別 研 究 など 、ただ 講 演 を 聴 くだけとい
自己の経験から強みを見出し、
自己を受容し、
自己 PRシート
を作成。
グループ内発表とプレ面接を行う。
育 館でのポスターセッション形 式 なので 、
6月
なテーマで地 域を調べプレゼンをする。体
自己探求
現 ﹂は、それぞれが1年 、
2年 、
3年のキャ
KJ 法を用いた探究。グループワークにて意見をまとめ、発表
する。
リア教育のテーマにもなっている。
5月
3年 生
﹁ 実現 ﹂
テーマ
テーマ別
研究
うような 取り組みはない。就 業 体 験のた
自己の適性、可能性を高め、学ぶことへの意義や役割について
理解を深める
2年 生
﹁ 挑戦 ﹂
テーマ
進路志望実現に向けて取り組むとともに、社会に貢献しようとする
態度を身に付ける
生 徒は全 員 参 加で 何 度 も 同じ 発 表 を 行
町長との懇談会に向けて、
ポスター発表の内容からテーマを
設定。プレゼン用の資料を作成、
プレゼン練習、発表会を経
て代表発表者を決定、町長と意見交換を行う。
進 路 指 導 主 事の宮 本 利 行 先 生はキャ
12∼2月
地元企業の協力
で、就職説明会を
校内で合同開催。
3年生の進路選択
の一助とする。
希望する地元企業で3日間の就
業体験。後輩の1 年生に向けて
報告会も実施する。
総合的な
学習の時間
生まれ育った地域の自然や歴史、文化、産業について考察さ
せ、
グル ―プワークによる制作物作成、
ポスター発表を行う。
地域を
知る
6∼10月
1年 生
﹁ 発見 ﹂
テーマ
自分の良さに気付き、自己の在り方、社会への関わり方について
考える姿勢を身に付ける
総合的な学習の時間「ステップアップタイム」
と進路指導における地域と連携した取り組み例
同じ中 学 出 身 者に
よるグループ学習。
出身地域のことを調
べ、発表する。
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2016 OCT. Vol.414
進路指導実践を磨く! 普通科編
■「地元企業研究会」ワークシート
地元企業研究会
社 会 貢 献の姿 勢などの話を聞き、自 分の
同 校の進 学 希 望 者の場 合 、推 薦やAO
入 試での受 験が多い。人 数は就 職 希 望 者
バラバラに行ってきたことを 、キャリア教
3 学 年 では 、実 際 の 就 職 面 接 の 直 前
に、地 元の協 力の下で模 擬 面 接 を 実 施 。
に比べて少ないため、志 望 校に合わせてほ
生徒の志望に合わせた
きめ細やかな進学指導
PTAや後 援 会 、地 元 企 業 人 などが生 徒
ぼオーダーメイドで 教 員が指 導 する 。英
聞いた 内 容 をグループに持 ち 帰って 情 報
町には、
地元で人材を育て町内ま
また、
たは県 内に就 職してもらいたいというニー
の面 接 をしてくれる。なかには実 際の面
検 など 、資 格 取 得のための受 験 料の一部
育の視 点を取り入れて整 理 。
﹁ なぜ、地 域
ズがある。そして、高 校 側にも 、地 元から
接 官 もいて 、面 接に加 え 評 価 もしてくれ
を 町が負 担してくれることになり 、受 験
交換する。
多 くの生 徒に通ってほしいという 希 望が
る。
﹁ 多 くの人たちの協 力 を 得て 、
2回 、
者 、合 格 者が増えたことは、今 後の推 薦・
社 会に参 加 するのか﹂を 生 徒や教 員が考
ある。学 校の地 域 参 加への意 識が高まる
3回と繰り返せば、生徒たちにとって大き
されている。
AO受 験のモチベーションにもなると期 待
えるようにしているという。
につれ、町も﹁ 高校生のために協力したい﹂
な 自 信につながります ﹂と 宮 本 先 生 。ま
の生の声 を 、進 路 指 導に生かすこともで
きる。
も推薦・AO入試に役立っているようだ。
などを主体的・積極的に運営する。
このこと
多くの生徒が生徒会活動に関わり、
また、
体 育 祭や文 化 祭 、
中 学 生 向けの体 験 入 学
た 、これらの取り 組みを 通して 企 業から
進学指導
と考えるようになってきた。
実 際 、キャリア教 育の取り 組みの多 く
が地 域の協 力なくては実 施できないもの
元 企 業 研 究 会を実 施 。事 前 学 習をし、ブ
だ。例えば、
1年生の 月という時期に地
10
就職、進学にかかわらず、進
路実現を果たした3年生が2
年生に向けて体験を語る。
こういった取り組みを通して、町 内から
の入 学 者は増 加 。2016年 度は過 去
年間で最高の 人が入 学した。
受験体験発表会
ース 形 式 で 地 元 企 業 の
担 当 者 から 業 務 内 容 や
生 徒の少し先 を 行き
引っ張り上 げて力 を 伸ばす
同 校では、家 庭 科における 保 育
園 実 習や 、学 校 設 定 科 目﹁ 新 聞 を
読 も う ﹂による 探 究 型 学 習 な ど 、
進 路 指 導 部の担 当 以 外でのキャリ
ア 教 育 的 視 点 を もった 学 習 も 多
い。生 徒が視野を広げる機会は、学
校 教 育の様々な場 面で存 分に設け
られているのだ。
﹁これらの取り組みを通して生徒
一人ひとりをしっかり見るのが担 任
の役 目 、情 報 を 収 集し大きな 視 点
と宮 本 先 生 。
﹁ 生 徒の成 長 を 見 な
で 見 渡 すのが進 路 指 導 部の役 目 ﹂
がら、少し先を行 くようにしていま
す 。生 徒 を 引っ張り 上 げるよう な
気 持 ちで 、地 域 も 巻 き 込みながら
どんどん仕 掛ける。そんななか、素
晴らしい努 力 をする生 徒が出てく
体の雰 囲 気が今よりもっと 良 く な
る。そういう生徒を中心に、学 校 全
ることを 目 指しています ﹂という 。
加 えて 、全 教 員がアクティブラーニ
ている。
ングの取り組みを 積 極 的に実 施し
町 内からの入 学 者の増 加 、入 試
倍 率の 回 復 、県 内 就 職 者の 増 加 、
利 用 者の大 幅 な 減 少 など 、様々な
さらには部 活 動の活 性 化や保 健 室
取り組みの成果が現れ始めている。
※ダウンロードサイト:リクルート進学総研 >> 発行メディアのご紹介 >> キャリアガイダンス(Vol.414)
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地域の中の企業や地域の
人との関わりを学ぶことが
目的。町の商工会の協力
を得て例年 10 社ほどが参
加。1人の生徒が4企業の
説明を聞き、
その後、
グルー
プ内で情報交換する。
12
百石高校の進路指導のスタンス