日高高校

先 進 校 に 学 ぶキャリア 教 育 の 実 践
グローバル社会における地方創生をにらんだ
「地方の普通の高校」の挑戦
日高高校
(和歌山・県立)
SSHやSGH、
「OECD地方創生イノベーションスクール2030」のプロジェクトに参加している日高高校。
グローバル社会において新たな地方創生の道を切り拓いていく人材の育成のため、
なぜこうした挑戦が始まり、10 年間でどう活動の幅を広げ、そして生徒にどんな効果をもたらしたのでしょうか。
取材・文/藤崎雅子
国公立 大学合格率が
年間で急伸
和 歌山県中部の農業・漁 業が盛んでの
どかな 地 域にある 県 立 日 高 高 校 。市 内
幅 広い生 徒が学んでいる。上田優 人 校 長
に2校しかない高 校のうちの1校として、
は﹁ 地 方によくあるタイプのごく 普 通の
高校 ﹂という。
3つの大きな事 業
そんな同 校は現 在 、
に取り組んでいる。文 部 科 学 省のSSH
︵スーパーサイエンスハイスクール︶
とSGH
︵スーパーグローバルハイスクール︶、そして
世 紀 型スキルを実 践 研 究するOECD
日 本イノベーション教 育 ネットワークのプ
ール2030﹂だ。
ロジェクト、﹁ 地 方 創 生イノベーションスク
(%)
30.0
25.0
20.0
15.0
10.0
5.0
1990 1995 2000 2005 2010 2015
(年)
に象 徴されるとおり、控え 目でおとなし
年 前にSSHの指 定 校になった当 初 、
生 徒 会 選 挙はほぼ 信 任 投 票 だったこと
目 指しての挑 戦だった。
た時 期で、新たな中 高一貫 教 育の構 築を
れる 付 属 中 学 校 開 設 準 備が進 行してい
のは2007年 度。理 科教育にも力を入
同 校は今 年 度 まで2期 連 続SSH指
定 校 となっているが、最 初に手 をあ げた
地 域の教 育 力 向 上のた め
SSHに挑戦
図1 国公立大学合格率の推移
かった同 校 生 徒 。それが今は積 極 性や主
10
0
10
21
と取り組み、新しいことにも 意 欲 的に挑
体 性 を 発 揮して様々な 事 業に生き 生き
がありました﹂︵上田校 長︶
流 出に歯 止めをかけたいという 強い思い
めることで、高 校 進 学 時の周 辺 地 区への
﹁その背景には、
日高地区の教育力を高
手 探り状 態から始まった同 校SSHを
方 向づけたのは、 年 度 、高 校 生が自 作
戦する。そうした生徒の変化に呼応する
∼
年 間を振
このような 変 化はどのように起こった
のか。
を皮 切りとして各 種 事 業に
次々と取り組んできた、この
り返ってみたい。
10
そうだ﹂
と考える教 員が増え、
生 徒は
﹁自
徒を主 体 的に動かすとすごいことができ
タイプの教 員だった。これを機 会に、﹁ 生
したことだ。指導したのは、
生 徒に任せる
甲 子 園 ﹂全 国 大 会で、同 校チームが優 勝
衛星︶
の技術力・創造 力を競う﹁ 缶サット
した缶サット︵ 空き 缶サイズの模 擬 人工
12
1︶。
﹁約
%の間で推 移しています ﹂︵キャリア指
%に満たない状 況でしたが、近 年は
年 前まで国 公 立 大 学 合 格 率は
かのように、進路内容も変わってきた︵ 図
10
20
10
S
S
H
導部長 中前勝吾先生︶
30
地方創生
OECDイノベーションスクール SGH SSH 併設型中高一貫校 56
2016 OCT. Vol.414
普通科・総合科学科/1914年設立
/生徒数704人
(男子324人・女子380人)
進路状況
(2016年3月実績)
大学149人・短大16人
専門学校35人・就職10人・その他22人
和歌山県御坊市島45
0738-22-3151
http://www.hidaka-h.wakayama-c.ed.jp/
併設型中高一貫校。附属中学校からの内部進学先である総合科学科と、高校からの入
学者向けの普通科の2学科を設置。2007年度から今年度まで、
2期連続SSH指定校。
14年度に百周年記念事業として
「アジア高校生フォーラム」
を企画・開催し成功を収める。
15年度から「 OECD 地方創生イノベーションスクール2030」に参加、16年度よりSGH
指定校となり、
グローバル社会における地方創生に貢献する人材育成に取り組んでいる。
図2「アジア高校生フォーラム」参加国(研究発表テーマ別)
分たちもやればできるかもしれない﹂と
リア。単 独の高 校が開 催 するイベントと
域からの寄 付により 資 金 面の問 題 もク
の参 加にこぎつけた︵ 図2︶。同窓会や地
気持ちになったのか、それ以降 、生徒の積
ばらしい。
﹃ これではあかんやろ ﹄という
﹁ 英 語でも 発 言でも 他 国の高 校 生はす
極的な発言や質 問が増えました﹂
イベントにしよう ﹂と、形 式ばった記 念 式
業だ。同 校は﹁みんなの心に残る大きな
前 後の交 流イベントの企 画 など 、約
研 究 、海 外 参 加 校のリサーチ、
フォーラム
光﹂
﹁アジアの文 化 ﹂の3テーマについての
議 題となる﹁アジアの環 境 ﹂
﹁アジアの観
た﹂︵田中先 生︶
ル教育における日本の後れを痛感しまし
しいイベントではないとのこと 。グローバ
だフォーラムでしたが、
アジア各 国では珍
危機 感をもったのは、教員も同じだ。
﹁ 自 分たちが目 新しいと 思って 取り組ん
典ではな く 、
アジアの高 校 生 を 招いて意
カ
見交換する
﹁アジア高校生フォーラム﹂︵以
月かけて準 備を行った。当 日は発 表だけ
しかし 、それは簡 単 なことではなかっ
た。最 大の課 題は、海 外の参 加 校をどう
でなく司 会や裏 方の運 営も生 徒が担い、
成功を収めた。
集めるか。ネットワークを 駆 使して奔 走
10
生 徒は達 成 感の一方でショックも 受け
たことを 、教 師 実 行 委 員 会 だった田 中一
フォーラム開 催から数カ月 後 、﹁OEC
D地 方 創 生イノベーションスクール203
0﹂︵以下﹁イノベーションスクール﹂︶
に参
加してみないかと 、同 校に声がかかった。
● 全体の構成は、
自分が思っていたより本格的で、高校生フォーラ
ムらしくてよかった。各国のプレゼンを聞いていくうちに耳が慣れてき
て、英語がわかって、内容を理解すればするほど楽しくなってきた。各
テーマの中での討論は、やはり日高生がおされている感じが伝わって
きて、
もっと会話力が必要だなと思った。
●このフォーラムを通して学べたことのいちばん大きかったのが、英
語の可能性の大きさでした。僕たちが普段、机の上で書いている英
語がこんなにもすばらしい思い出を作り上げてくれたのです。でも国
際交流というのは、言葉だけではない、
ということも知ることができまし
た。人と人とが接しあうからこそ、言葉だけでは通じ合えない絆という
ものを僕の人生の中で初めて知ることができました。
也先生は感じていた。
「アジア高校生フォーラム」
参加生徒の感想より
し、文 科 省や外 務 省 、各 国 大 使 館などの
16
イ「ノベーションスクール﹂に
高校主導で参加
下﹁フォーラム﹂︶
を企 画した。
大 学やJICA関 西などの協 力を得て、
その主 役は生 徒だ。生 徒 実 行 委 員 会
には 人 を 超 える 有 志が集 結 。和 歌 山
しては、あまり例のない規 模となった。
気付き始めたという。
転機となった百周年記念
﹁アジア高校生フォーラム﹂
そんな前向きなムードに大きな弾みを
つけたのが、 年 度の創 立 百 周 年 記 念 事
70
「アジア高校生フォーラ
ム」は2日目の全体会を
中心とした4日間のプロ
グラム。歓迎夕食会や世
界遺産ツアーなど、高校
生 同 士がカジュアルに
交流する機会ももった。
支 援を受け、目 標を上 回る カ国・地 域
発表国・
地域
2016 OCT. Vol.414
57
14
アジアの文化
モンゴル
インド
香港
日本(日高高校)
ベトナム
タイ
ブルネイ
アジアの観光
ネパール
カンボジア
韓国
中国
日本(日高高校)
台湾
アジアの環境
フィリピン
日本(日高高校)
インドネシア
マレーシア
カタール
トルコ
テーマ
和歌山クラスターでは年
3∼4回の会合の他、
ト
ルコやドイツの学校と情
報交換を行ったり、今年
度は代表生徒によるカ
ナダ研修も実施した。
企業と連携した商品開発による地場産業振興
和歌の浦などの観光資源を活用した地方創生
星林高校
「ぼくらの和歌山線プロジェクト」∼ローカル線の活性化∼
那賀高校
彼らは﹁ 発 信 力の弱さ ﹂という 地 域 課
の挑 戦 的な取り組みが関 係 者に知られ、
題 を 発 見し 、その解 決 策 として 情 報 発
を実現させた。さらには、﹁ 海外との交流
成や交 渉なども行い、自らの手で講 演 会
聞きたい﹂と上田校 長に提 案 。企 画 書 作
﹁ 学びとは与えられるばかりでなく 、自
地 域の魅 力 を 世 界に発 信 する
グローバル人材を育成
さらに今 年 度はSGHの指 定を獲 得 。
その構 想 名は﹁ 翔べ 日 高から 世 界へ∼
地 方 を 創 生 するグローバルリーダーの育
成 ﹂だ︵ 図4︶。
﹁イノベーションスクール﹂
と 同 様のテーマに、
﹁ 総 合 的 な 学 習の時
間﹂
の授業として普通科全体で取り組む。
先生はこう語る。
その狙いについて、
SGH担 当の櫻 井 健
﹁ 世 界 中を飛び回る人だけがグローバル
というわけではありません。近い将 来 、地
58
2016 OCT. Vol.414
設立した
︵今年度より1校増加︶。他のク
高 校 主 導の和 歌 山クラスターは異 色 だ
ラスターは大 学や自 治 体が主 導するなか、
が、﹁﹃フォーラム﹄をやり遂げた経 験があ
ったからこそチャレンジできた ﹂︵ 田 中 先
生︶
という。和 歌山クラスターが共 通で掲
げるテーマは、人口減 少の著しい和 歌 山
信 力 を もった人 材 を 育 成 する 教 育の開
ール﹂の候補としてあがったという。
分たちでも 創っていくものだという 意 識
アクティブラーニング、
実践的な英語力の育成
自治体、県教委、団体、企業、大学、
高専、OECDイノベーションスクール
支援
支援
●「アジア・オセアニア高校生フォーラ
ム」の開催
アクションプラン(政策提言)
『和歌山発−地方創生課題解決モデ
ル』
の再生。それを参 加校が地 域性に合わせ
発 を 打 ち 出した。2年 目 となる 今 年 度
のために、自 分たちでこんな 英 語の授 業
地 域のためにという 高い視 点 をもって
答えのない課 題に取り組んだ経 験は、生
の表れ。こういう 生 徒が増えていくこと
地方創生グローバルサミット
『国内外高校生との協働学習』
動している︵ 図3︶。
は、あまり知られていない和 歌 山の魅 力
を 作りたい﹂との提 案 もした。授 業の実
徒たちの意 識 と 行 動 を 変 えた。熊 本 地
る生 徒たちは﹁こんな講 師を招いて話を
﹁イノベーションスクール﹂は、今 後 大き
く 変 化する日 本 社 会を見 据えて地 方 課
を 知ってもらう 、和 歌 山ツアーの企 画に
その後 継 事 業である﹁イノベーションスク
題の解 決に中 高 生が取り組む、 年 度か
ターが立ち上がり︵ 当 初 ︶、それぞれが海
震が起こればすぐさま立ち上がって街 頭
勢や発想を高く評価している。
外とも連携しながら活動。その研究成果
で 、日 本の教 育は変わるのではないかと
福井、東北、高等専門学校の5つのクラス
を国内外に発信することを目指している。
で 募 金 活 動 を 始め、町おこしイベントで
心強く感じます ﹂︵ 上田校 長 ︶
同 校は自 ら 事 務 局 校 と なり 、県 内の
3 校 の 高 校 と 共に和 歌 山 クラスターを
地域防災学修
『ふるさとの防災に学ぶ』
●海外交流
∼デンマークの姉妹校
(生徒派遣交流事業、ICTを活用した
意見交換会)
∼台湾修学旅行
(学校体験フィールドワーク)
地域産業学修
『ふるさとの産業に学ぶ』
日高と世界をつなぐ
体験活動の充実
和歌山と世界をつなぐ
「課題研究」
取り組んでいる。
地方を創生するグローバルリーダーの育成
(グローバル化の中の地方創生)
現は難しかったが、上 田 校 長は生 徒の姿
図4 日高高校SGH構想図
は率 先して地 域を盛り上 げる。また、あ
ら3カ年のプロジェクトだ。和歌山、広島、
15
移民の歴史学修
『ふるさとの先人に学ぶ』
●海外の高校との連携
∼中国の姉妹校2校
(「地域課題」に関するテーマについて
生徒派遣交流事業、ICTを活用した意
見交換会)
地域文化学修
『ふるさとの文化に学ぶ』
て 具 体 化した 個 別 テーマを 設 定して 活
同 校では約 人の有 志 生 徒が、放 課
後や休 日 を 中 心に活 動 。昨 年 度はまず
自 治 体 職 員や地 域 住 民の方の話 を 聞い
がないからだと思っていたのです。しかし、
﹁ 最 初 、生 徒は人口が流 出するのは仕事
ールドワークを行った。
分 析だけでなく 、地 域に出て幅 広 くフィ
地 域の実 態 を 探 るため、データの収 集・
40
て、仕事はある、それでも人が出ていくの
海南高校
先のフォーラムで 国 際 的 教 育 復 興 支 援
熊野古道のツーリズムから考える多文化共生社会
らだ、と気 付きました﹂︵田中 先生︶
田辺高校
は地 域の 魅 力 を 感じる 機 会が少 ないか
日高高校
「和歌山ツアー」の企画による観光客の招致
(事務局校)
事 業﹁OECD東 北スクール﹂に参 加した
和歌山クラスター全体のテーマ:
「地方創生」
高 校 生 をゲストに招いたことから 、同 校
図3 イノベーションスクール和歌山クラスターの各校テーマ
SGH担当
イノベーションスクール担当
キャリア指導部長
校長
清水 理先生
櫻井 健先生
田中一也先生
中前勝吾先生
上田優人先生
﹁ 自 分 も 長 く 教 師 をやっていて、答えを
ある。SSHは最 終年度を迎え、﹁ 特 別な
SSHやSGHの活 動の評 価 方
現在、
法 など 、まだ 試 行 錯 誤の段 階の課 題 も
促している。
見つけさせないといかん、失 敗したらあか
活動をうまく日常の授業につなげていき
ではないでしょうか﹂︵ 上田校 長︶
んと考えがちです 。でも 、失 敗しても 次
たい﹂︵清 水先生 ︶
と新たな挑戦も始まる。
方 も 海 外 と 直 接つながる 社 会になるは
を 世 界に発 信 することで 地 域の発 展 を
組み方で生 徒が変わる﹂と上田校 長 。同
そんな﹁ 場 ﹂の生かし 方にもカギがあ
りそうだ。
﹁ 課 題 解 決 型 学 習はその取り
に修正をかければよい。こうあるべきとい
ず 。その時 、地 元にいながら地 域の魅 力
牽 引 する、グローバル人 材の育 成 を 目 指
校はそのプロセスにおいて、
徹底的に生徒
します ﹂
これからも﹁ 地 方の普 通の高 校 ﹂とし
て挑 戦を続けていくうえで、上田校 長は
う 意 識を横へ除けて、生 徒を信じて任せ
るようにしています ﹂︵ 櫻 井 先 生 ︶
を主体とし、丁寧に対応している。
具 体 的に取り組む内 容として、﹁ 地 域
文化 ﹂
﹁ 移 民の 歴 史 ﹂
﹁ 地域産業 ﹂
﹁ 地域
同じよう な 価 値 観 をもつ高 校 同 士の連
ばここまでできる。こういった取り組みが
﹁こんな田 舎の小さな 学 校でも 頑 張れ
●
年 間で、﹁ 教 員にも 学 校の枠 組
この
みを破って新しいものにチャレンジするス
テーマ設定では生徒自身の
﹁や
例えば、
りたい﹂を 重 視 。生 徒から意 見が出るま
ピリットが育まれた﹂と田中 先 生はいう 。
他の学 校でも 増 えてお互いに意 見 交 換
防災 ﹂
の4テーマを設定。1学年は全テー
という。
﹁ 失 敗してもいいからまずやってみよう ﹂。
携に期待を寄せる。
各 自1テーマを 選んで 国 内 外の 高 校 生
﹁ 生 徒が本 心から興 味がもてれば、こち
で 、焦らずじっくり話 をする教 員が多い
と連携しながら課題研究に取り組む。そ
らが先にへこたれるぐらい粘り強 く 取り
マの基 礎 的な学 習を行い、
2・3学 年では
地方創生課題解
がします ﹂︵上田校 長︶
していけたら 、さらに大きな 力になる気
の成 果 を﹁ 和 歌 山 発
を変化させた最 大の要因かもしれない。
こうした教 員 自 身の姿 勢こそ、実は生 徒
決モデル﹂としてまとめ、行 政 機 関 等への
政 策 提 言を目 指す。活 動はまだ始まった
徒 の 力 を 引 き 上 げる 方 法 も あるが、清
目標設定でも生 徒が起 点となる。コン
テスト 入 賞 な ど 格 上 の 目 標 を もって 生
﹁これまでの国際交流のやり方を一歩進
水先生はそれで失敗した経 験をもつ。高
か、どう工夫したかが大 事です 。外 部か
日高高校では2011年から
「課題研究」
でタンポポの研究を行っている。昨年度は
高校1年生を中心とした有志9人のチーム
が、先輩の先行研究を深める研究に取り
組んだ。市街地、里山、
ダム上流の3エリ
アにおいてタンポポを採取。外部形態に
加えてDNA分析の手法も用いて在来種・
外来種・雑種の識別を行うと、
在来種が多 総合科学科2年の
濱田真衣子さん(写真左)
と
いはずのダム上流で外来種や雑種の分 望月春菜さん(同右)
布の割合が高いことが判明した。この矛
盾点に着目し、環境指標の再検討を試みる研究を実施。その研究結果は「第
59回日本学生科学賞」の県審査で県教育委員会賞を受賞した。
チームの代表を務めた濱田真衣子さんはこう振り返る。
「高価な遠心分離機やピペットを使って細かい分析をしたり、
連携する大学の協
力で過去の調査データを入手したり、
SSHならではの貴重な経験をすることがで
きました。各地でのタンポポの採取など大変な面もありましたが、
結果が出て評価
もいただき、大きな達成感があります」
また、
メンバーの同2年望月春菜さんは、
この経験による自身の成長を感じている。
「最初は先生がおっしゃることをやるという受け身な姿勢だったんですが、だんだ
ん皆で
『こんな仮説が立てられるのでは?』
など意見交換できるようになっていきま
した。
また、大きな舞台で発表した経験は自信にもなっています」
2人は今年度、
「 課題研究」の授業のなかで、昨年度の研究で積み残した課
題の解決に挑むという。
組みます ﹂︵ 清水先生︶
10
身近なタンポポの粘り強い研究が高い評価
ばかり。
る方向で進めていけたらと考えています﹂
め、もっと企 画 段 階から生 徒を参 加させ
ところ、途 中で﹁ 面白くない﹂と生 徒の気
い目標を掲げて生徒を引っ張ろうとした
この 年 間 で 、同 校 生 徒に積 極 性 や
主 体 性が育った要 因について改めて考え
﹁ 課 題 解 決 型 学 習では結 果よりもむし
設定の大切さを知ったという。
持ちが離れてしまい、生 徒に見 合う 目 標
︵櫻井先生︶
教員が思う以上に
生徒は﹁何かしたい﹂
てみると、際立つのはフォーラムや各種事
なく、どう生 徒たちの力を引き上げるか
らの 評 価 を 気にして 背 伸 びするのでは
に努めています ﹂︵ 清 水 先 生 ︶
ろ 、そこに至 るプロセスでどう 思 考した
業など生徒の活躍の﹁ 場 ﹂の多さだ。
させる場を設 定する必 要があります。積
﹁ 地 方では、
学 校が生 徒に多 様な経 験を
そして、課 題の解 決に向けた生 徒の活
動において、教 員は極 力﹁ 教えない﹂。
﹁イ
ちの足で稼いだ情報から地域課題にたど
極 的に参 加し楽しそうに取り組む生 徒
に﹃ もっと何かしたい﹄という 気 持ちが強
ノベーションスクール﹂では生 徒が自 分た
かったのだと 感じました。こうした経 験
ぜ?﹂と問いかけ、正解を押し付けるので
り着いた。櫻 井 先 生はいつも 生 徒に﹁ な
たちを見て、
彼らは我々が思っていた以上
による充 実 感が、高い進 路 目 標への挑 戦
はなく、生徒自身が考え行動することを
2016 OCT. Vol.414
59
10
や意 欲 的 な 学 習 姿 勢につながっているの
SSH活動例
−
SSH担当