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農林中金総合研究所
2016 年 10 月 7 日号
調査第二部
趙 玉亮
≪来週のポイント≫
FOMC 議事要旨と FRB 関係者らの講演などに注目
米国では、ISM 景況指数や新規失業保険申請件数など市場予想より改善した経済指標が発表された
ことを受け、年内利上げの観測が高まった。9 月の雇用統計(日本時間 7 日 21:30 分発表)のほか、来週
も引き続き利上げを占う上で重要視される材料を中心に、注目していきたい。
こうしたなか、12 日に FOMC 議事要旨(9/20、21 分)が公表される。9 月 FOMC では利上げが見送ら
れたものの、利上げを支持したボードメンバーが 3 名に増えた(前回は 1 名)ことも判明した。年内 1 回の
利上げの可能性が高いと見られるなか、議事要旨の中で雇用と物価を巡る現状認識・見通し、また内外
のリスク要因などがどう議論されていたか、市場の関心が集まりそうである。
また、来週には FRB 関係者の講演も多数予定されている。とくに、足元の堅調な経済指標を踏まえ、
直近は早期利上げには慎重な態度を示したイエレン議長とダドリー・ニューヨーク連銀総裁は、年内利
上げを示唆するような発言をするかなど、注目したい。
なお、来週から米国企業の決算発表(7∼9 月期)シーズンを迎える。前期並みの小幅な減益にとどま
ると予想されている。
経済指標など
日本では 12 日、機械受注(8 月)が発表される。7 月の「船舶・電力を除く民需」の受注額は前月比
4.9%増だったが、8 月のコンセンサス中央値(Bloomberg 社とりまとめ、7 日現在)は同▲4.6%と予想され
ている。
来週のスケジュール(10/10∼10/14)
月 日
国内の予定
10 月 10 日(月)
休場(体育の日)
10 月 11 日(火)
「国際収支(8 月)」(2p に予測掲載)
「景気ウォッチャー調査(9 月)」
「機械受注(8 月)」(2p に予測掲載)
10 月 12 日(水)
10 月 13 日(木)
10 月 14 日(金)
国庫短期証券(3M)入札(4.4 兆円)
「第 3 次産業活動指数(8 月)」(2p に予測掲載)
5 年利付国債入札(2.4 兆円)
「企業物価指数(9 月)」(2p に予測掲載)
海外の予定
米
欧
中
欧
独
米
米
米
米
米
米
米
米
米
米
米
中
中
休場(コロンバスデー)
ユーロ圏財務相会合
「新規融資・マネーサプライ(9 月、∼15 日まで)」
EU 財務相理事会
「ZEW 景況感(10 月)」
FOMC 議事要旨(9/20、21 分)
ダドリー・ニューヨーク連銀総裁講演
ジョージ・カンザスシティ連銀総裁講演
「新規失業保険申請件数(10 月 8 日週)」
「失業保険継続受給件数(10 月 1 日週)」
MMF 新規制実施
イエレン・FRB 議長講演
ローゼングレン・ボストン連銀総裁講演
「小売売上高(9 月)」
「生産者物価指数(9 月)」
「ミシガン大学消費者マインド(10 月速報)」
「消費者物価指数(9 月)」
「生産者物価指数(9 月)」
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無断転載を禁ず。本資料は、信頼できると思われる各種データに基づき作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するも
のではありません。本資料は情報提供を目的に作成されたものであり、投資のご判断等はご自身でお願い致します。
1
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1.来週発表予定の経済指標予測
南 武志
8 月の国際収支統計【10 月 11 日(火)8:50】
<当社予測>経常収支: 原系列 1兆5,582億円、前年比▲4.1% (7月:1兆9,382億円、8.0%)
季節調整済 1兆5,905億円、前月比 9.9%(7月:1兆4,478億円、▲12.2%)
8 月の通関貿易統計によれば、収支尻は▲192 億円と 3 ヶ月ぶりの赤字であった。それを踏まえると、
国際収支統計ベースでの貿易収支は 882 億円と 7 ヶ月連続の黒字ながらも、その額は小幅にとどまるこ
とが見込まれる。また、サービス収支は 150 億円と 3 ヶ月ぶりの黒字が見込まれるが、前年同月の水準か
らは黒字幅が縮小するだろう。さらに、円高進行や世界的な金利低下などで黒字幅が縮小傾向を強め
ている第一次所得収支も 1 兆 6,000 億円の黒字と、6 ヶ月連続で前年水準を下回るだろう。以上から、
経常収支は約 1.6 兆円(原系列)の黒字と予想する。
8 月の機械受注【10 月 12 日(水)8:50】
<当社予測>船舶・電力を除く民需:前月比▲5.5%(7月:4.9%)、前年比 6.5%(7月:5.2%)
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
円高進行や世界経済失速懸 (10億円、2010年価格表示)
(2010年=100)
設備投資関連の指標
1,000
150
念の台頭を背景に、年初にか
140
けて設備投資の調整が見られ
900
130
たが、このところは持ち直しの
兆しも散見されている。なお、
120
800
関連指標である鉱工業出荷の
110
資本財(除く輸送機械、8 月)は
700
100
前月比▲1.9%、工作機械受注
90
(内需、8 月)も同▲5.1%(当総
600
実質機械受注 (船舶・電力を除く民需、左目盛)
80
研による季節調整値)と、いず
資本財出荷 (除く輸送機械、右目盛)
500
70
れも 3 ヶ月ぶりに減少している。
ちなみに、前々回発表された 7
~9 月期見通し(内閣府集計) (資料)経済産業省、内閣府、日本銀行 (注)3ヶ月移動平均。企業物価の資本財指数で実質化。
は前期比 5.2%と 2 四半期ぶりの増加が見込まれているが、6、7 月分と堅調だったため、8~9 月にかけ
ては前月比▲4.43%のペースで達成可能である。以上から、「船舶・電力を除く民需」も 3 ヶ月ぶりの減
少が予想されるが、「緩やかな回復傾向」が変調するような状況にはならないだろう。
8 月の第 3 次産業活動指数【10 月 13 日(木)13:30】
<当社予測>第3次産業活動指数:前月比▲0.4%(7月:0.3%)
鉱工業生産は前月比 1.5%と上昇したが、出荷が同▲1.3%と低下するなど、製造業の活動は依然鈍
く、関連サービス業もその影響を受けたとみられる。また、商業動態統計からは、卸売業には持ち直しも
見られたが、天候不順などの影響で小売業は不調であった(前月比でそれぞれ 1.5%、▲1.1%)。また、
自然災害などの影響を受けた業種も少なくないと思われる。そのため、8 月の第 3 次産業活動指数は 3
ヶ月ぶりの低下と予想する。
9 月の企業物価【10 月 14 日(金)8:50】
<当社予測>国内企業物価:前年比▲3.4%(8月:▲3.6%)、前月比▲0.1%(8月:▲0.3%)
8 月に入り、原油価格が持ち直し傾向を強めたこともあり、日銀が試算する国際商品指数(9 月)は前
月比 1.0%と 2 ヶ月連続で上昇した。また、天候不順や猛暑の影響で、農水産物の一部に価格上昇も見
受けられる。とはいえ、在庫調整圧力は依然強いほか、為替レートの円高定着もあり、輸入品価格の下
落傾向は強い状況も考慮する必要があるだろう。そのため、9 月の国内企業物価は前月比が小幅低下
だが、前年比の下落幅は 4 ヶ月連続で縮小すると予想する。
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2
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2.債券市場
多田 忠義
◎市場概況 (10/3∼10/7 前場)
長期金利(新発 10 年国債利回り)は、誘導水準のゼロ%と政策金利の▲0.1%との中央付近で
小幅に推移した。
日銀は 9 月末、長期国債買入れオペの運営方針で中∼超長期ゾーンの買入れ額の減額を通知し
た。これを受け、週初は超長期ゾーンを中心に売られ、それにつられて長期金利もじりじりと上昇した。4
日に実施された 10 年国債入札は、「長短金利操作付き量的・質的緩和」を導入してから初めての 10 年
国債入札であったが、応札倍率が前回から上昇し 6 月以来の水準となり順調な結果となった。しかし、そ
の後も 0%と設定された長期金利の操作目標が意識され、週後半にかけて長期金利は上下小幅に推移
している。
イールドカーブは、前週末比でみると短中期ゾーンと超長期ゾーンで上昇した。
◎来週の市場予想 (10/11∼10/14)
長期金利を概ね 0%程度で推移するよう政策目標が設定されたことを受け、長期金利は来週も小幅な
レンジで推移すると見られる。なお、12 日には 30 年国債入札、14 日には 5 年国債入札が予定されてい
るが、超長期債のオペ減額が予定されているなか、30 年国債の需要について注目が集まっている。
<10/7 11時6分時点> ・新発10年国債(#344)
▲0.065% (先週末比 +2ベーシスポイント)
<10/7 11時2分時点> ・10年国債先物(中心限月12月物) (%)
0.8
0.6
0.4
日本国債のイールドカーブ
152円04銭 (先週末比 ▲30銭)
イールドスプレッド
(%)
2016年10月6日
2016年9月30日 (先週末)
2016年9月6日 (1ヶ月前)
2016年7月6日 (3ヶ月前)
2016年4月6日 (6ヶ月前)
20年−10年
0.6
10年−5年
5年−2年
0.5
0.4
0.3
0.2
0.2
0.0
0.1
0.0
▲ 0.2
▲ 0.1
5/6
▲ 0.4
(%)
0.100
▲ 0.6
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0.0
▲ 0.1
▲ 0.2
6/6
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 15 20 25 30 40
(年)
先週末差
1ヶ月前差
3ヶ月前差
7/6
8/6
9/6
10/6
新発10年物国債利回り
0.000
▲ 0.100
▲ 0.200
▲ 0.300
7/26
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 15 20 25 30 40
(年)
8/9
8/24
9/7
9/23
10/7
(資料)財務省「国債金利情報」より作成
新発10年国債利回りはBloombergより作成
◎国債入札結果
入札日
銘柄 ( 回号)
表面利率
発行予定額
応札倍率
テール
最低価格 最高利回
10/4
10年利付国債 (#344)
0.1%(0.1%)
2.4兆円
3.82倍(3.74倍)
2銭(2銭)
101.57円
10/6
10年物価連動国債 (#21)
0.1%(0.1%)
0.4兆円
3.21倍(2.84倍)
- (-)
104.80円
▲0.391%
(発行価格)
(応募者利回)
▲ 0.056%
(資料)財務省ホームページより農中総研作成。表面利率及び応札倍率、テールの( )内数値は前回入札の値
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3
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3.株式市場
古江 晋也
◎市場概況 (10/3~10/7 前場)
日経平均株価は米利上げ観測の高まりや円安進行を背景に 4 営業日続伸。
週初の日経平均株価は、欧州銀行経営に対する懸念が後退したことから反発。その後は 3 日に発表され
た米 ISM 製造業景況感指数(9 月)が事前予想を上回ったことや、それを受けた米利上げ観測の再台頭から
為替レートが円安になったことが好感されたため続伸した。週央から週後半にかけても円安が進行したため、
6 日の日経平均株価は終値で 1 万 6,889 円 10 銭と 1 ヵ月ぶりに 4 営業日続伸となった。週末前場は、米雇用
統計の発表を見極めたいとの動きや前日の米株の調整もあり小幅反落して推移。
◎来週の市場予想 (10/11~10/14)
来週の株価は引き続き為替レートの動向に影響を受けるものの、上値の重い展開になると予想。また 11 日
にはアルコア、14 日には JP モルガン、ウェルズ・ファーゴ、シティグループなど米国企業の決算発表が本格
化する中、その動向や業績見通しも注視したい。
<10/7前場終値>
日経平均: 16,869.09
(前週末比
+419.25
日経平均株価の日足グラフ
(円)
25日移動平均線
)
TOPIX: 1,349.77
(同
200日移動平均線
TOPIX
食品
エネルギー資源
建設・資材
素材・化学
医薬品
自動車・輸送機
鉄鋼・非鉄
機械
電機・精密
情報通信・サービス他
電力・ガス
運輸・物流
商社・卸売
小売
銀行
金融(除く銀行)
不動産
17,500
17,000
16,500
16,000
15,500
15,000
(億株)
8/26
9/1
9/7
9/13
東証一部 出来高
9/20
9/27
10/3
10/7
出来高 株数 (千億円)
出来高 金額
-4%
40
40
35
35
30
30
25
25
0
20
20
-2
15
15
10
10
8/30
9/2
9/7
)
TOPIX 業種(17)別 前週末比変化率
18,000
8/22
+26.99
9/12 9/15 9/21 9/27 9/30 10/5
-2%
0%
2%
4%
6%
(兆円) 投資部門別株式売買状況(15年1月~累積)
6
4
海外投資家
買越
2
信託銀行
-4
-6
-8
15/1/2
個人
売越
15/3/20
15/6/5
決算発表 注目銘柄 (変更になることがありますのでご注意ください)
15/8/21
15/11/6
16/1/22
16/4/8
16/6/24
16/9/9
(資料) Bloomberg より農中総研作成
(10/11)イズミ、ライフコーポレーション、ユニー・ファミリーマートホールディングス、久光製薬
(10/12)コスモス薬品、ローソン、サイゼリヤ
(10/13)ビックカメラ、近鉄百貨店、ファーストリテイリング、ホギメディカル
(10/14)アークス、ジェイアイエヌ、いちご、松竹
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4
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4.外国為替市場
木村 俊文
◎市場概況 (10/3∼10/7 前場)
ドル・円相場は、米国の年内利上げ観測が強まり、一時 104 円台前半と 1 ヶ月ぶりのドル高・円安
週初のドル・円相場は、先週からのリスク回避に伴う円買いの流れが続き、1 ドル=101 円台前半でス
タートした。しかし、その後は、欧州銀行の経営不安が後退したほか、米 9 月の ISM 景況指数(製造業 3
日、非製造業 5 日発表)が市場予想を上回ったことに加え、米利上げを巡り FRB 高官からタカ派的な発
言が相次いだことなどから、ドル買い・円売りの流れとなった。7 日の米国時間には、新規失業保険申請
件数が良好な内容だったことを受け米 9 月の雇用統計に対する期待感が高まり、一時 104 円 16 銭と 9
月 2 日以来 1 ヶ月ぶりのドル高・円安水準となった。7 日前場は雇用統計の発表を直前に控え様子見姿
勢が強く、103 円台後半で推移している。
ユーロ・円相場も、一時 116 円台前半と 1 ヶ月ぶりのユーロ高・円安
ユーロ・円相場も、ドル・円の動きと同様、円売りの流れとなり、6 日には一時 1 ユーロ=116 円 28 銭と
9 月 2 日以来 1 ヶ月ぶりのユーロ高・円安水準となった。なお、ECB による資産買い入れプログラムが来
年 3 月の期限前に減額(テーパリング)される可能性があると報道(4 日)された直後には、1 円以上ユー
ロ高・円安が急進する場面が見られた。7 日前場は 115 円台後半での取引となっている。
◎来週の市場予想 (10/10∼10/14)
ドル・円、ユーロ・円ともに、米 9 月の雇用統計(日本時間 7 日 21:30 発表)の結果が相場の流れを左
右すると予想。ただし、急ピッチで円安が進んだ反動から一服感が出る可能性もあり、注意が必要。
(円/ドル)
円/ドル・レート
98
円
高
100
(円/ユーロ)
114
104
116
110
112
120
円
安
122
124
200日移
動平均
114
116
2016/7/15
2016/8/12
2016/9/9
ドル/ユーロ・レート
1.14
2016/10/7
ー
ユ
200日移
動平均
ロ
安
1.08
2016/7/15
2016/8/12
2016/9/9
128
2016/7/15
2016/8/12
2016/9/9
2016/10/7
ユ
1.12
1.1
200日移
動平均
126
ロ
高
25日移
動平均
円
安
ー
(ドル/ユーロ)
25日移
動平均
118
25日移
動平均
108
円
高
112
102
106
円/ユーロ・レート
110
2016/10/7
シカゴIMM円ポジション
(円/ドル)
(1万コントラ クト)
▲ 12
124
▲ 10
122
▲8
120
▲6
118
▲4
116
▲2
114
0
112
2
110
4
108
6
106
8
104
円ポジション(左軸)
10
102
12
100
円ドル(右軸)
14
98
15/11 15/12 16/02 16/04 16/06 16/08 16/10
(注) 1コントラクト=1250万円
(資料)Bloombergより農中総研作成
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5
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5−1.海外市場(米国、欧州)
(米国)趙 玉亮、
(欧州)山口 勝義
◎市場概況 (9/30∼10/6)
【米国】
ISM 景況指数や新規失業保険申請件数など堅調な経済指標が発表されたこと等を受け、年内利上げの観
測が高まった。また、欧州では緩和縮小の報道を受けて長期金利が上昇した。こうしたなか、米国の長期金利
(10 年国債利回り)は大きく上昇し、6 日は 1.74%(先週 30 日比 18bp 上昇)で引けた。一方、株式市場につい
ては、原油価格の上昇や、年内利上げ観測の高まりを受けて、エネルギーや金融セクターが上昇したのに対
し、ドル高の進行や利上げを嫌気する公益、通信、不動産といったセクターが下落した。結局 6 日のダウ工業
株 30 種平均は 18,268.50 ドル(先週比 125.05 ドル、0.69%)で取引を終了した。
【欧州】
4 日に ECB が QE の段階的な縮小を行うことで非公式にも合意がなされたと報道されたことを受け、長期国
債利回りは全般に上昇するとともに、銀行株が上昇した。期間を通じて 10 年ゾーンでドイツ国債の利回りは
10bp 上昇するとともに、イールドカーブはスティープ化した。また、国民投票に向けた政治情勢に対する懸念
からイタリア国債の、また格下げ懸念からポルトガル国債の、対ドイツ国債スプレッドはそれぞれ引き続き拡大
s
した。株式市場では、欧州ストックス
600 指数は 9 月 29 日比でほぼ変わらずの水準であるが、主要セクター別
では銀行が 3.4%上昇したほか、原油価格の上昇のなか石油・ガスが 2.2%上昇した。
3.0
16/04/07
2.5
16/07/07
2.0
欧州の国債利回り(10年債)
(%)
米国債のイ-ルドカーブ
(%)
16/10/06
4
11
ポルトガル
3
10
スペイン
2
9
イタリア
1
8
アイルランド
0
7
▲1
6
1.5
1.0
0.5
0.0
1ヵ月 3ヵ月 6ヵ月
1年
2年
3年
5年
7年
10年
30年
16/4
16/5
16/6
16/7
16/8
16/9
ドイツ
ギリシャ
(右軸)
16/10
0.40
0.35
0.25
1ヵ月前差
0.20
3ヵ月前差
ドイツ国債との利回りスプレッド(直近1週間の変動幅)(10年債)
(bp)
15
1週前差
0.30
10
5
0.15
0
0.10
(ドル)
5年
7年
10年
30年
米国の株価指数
19,000
NYダウ工業株30種
18,000
17,500
17,000
16/4
欧州の株価指数
(ポイント)
18,500
16/5
16/6
16/7
16/8
16/9
16/10
400
220
350
210
300
200
250
190
200
180
150
170
100
160
16/4
(参考)日本
3年
(参考)米国
2年
英国
1年
ポルトガル
1ヵ月 3ヵ月 6ヵ月
アイルランド
▲ 15
▲ 0.10
スペイン
▲ 10
フランス
0.00
▲ 0.05
イタリア
0.05
ギリシャ
▲5
16/5
16/6
16/7
16/8
16/9
ストックス欧州
600指数①
うち銀行
セクター②
①−②
(右軸)
16/10
(資料)Bloomberg より農中総研作成
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5−2.海外市場(中国、その他新興・資源国)
(中国)王 雷軒
◎市場概況 (9/30∼10/6)
【中国】
財新が発表した 9 月の中国製造業 PMI が 50.1 と 2 ヶ月ぶりに 50 を上回ったことなどから、30 日の上海総
合指数は1週間ぶりに節目の 3,000 ポインを回復した。ただ、国慶節大型休暇(1日∼7日)を控えて商いが薄
く、小幅な上昇に留まった。なお、市場は国慶節のため、3 日から 7 日まで休場となるが、取引は 10 日から再
開される。
上海総合指数/人民元レート
(ポイント)
上海総合指数←
↑人民元高
(ポイント)
(人民元/ドル)
USD/CNY→
株価:S&P/ASX200指数←
↑豪ドル高
(USD/AUD)
為替:USDAUD→
5,400
1.30
3,000
6.6
5,200
1.35
2,800
6.7
5,000
1.40
2,600
6.8
16/09
6.5
4,800
345
340
350
320
355
16/5
16/6
16/7
16/8
16/9
50
110
100
90
16/10
5.4 2400
40
5.2
35
5.0
30
4.8 2200
(%)
16
EMヨーロッパ
120
45
25
16/4
EMラテンアメリカ
商品価格指数の動向
(ポイント)
200
十万
55
EMアジア
130
米原油在庫(SPR除く)→
('84=1000)
(億バレル)
WTI期近物←
2600
ICE(北海)ブレント期近物←
5.8
2500
5.6
原油価格・在庫の動向
(米ドル/バレル)
16/10
16/10
360
16/9
16/09
340
16/8
16/08
380
16/7
16/07
335
16/05
330
400
16/6
新興国株価指数(MSCI Index)
MSCI-EM
140
16/04
420
米ドル高→
440
16/4
16/5
('16.01=100)
ELMI+(通貨指数)→
325
ポイント (逆目盛)
bp(新興国債券と米債とのスプレッド)
債券スプレッド・通貨指数
EMBI+(債券スプレッド)←
1.45
16/4
16/06
16/08
3,200
16/07
1.25
16/06
5,600
16/05
6.4
16/04
3,400
オーストラリア:株価指数・対米ドル為替
16/5
16/6
16/7
16/8
16/9
16/10
14
12
10
ブラジル
LMEX金属指数←
150
16/5
16/6
16/7
ブラジル・レアル/ボベスパ 株
ロシア・ルーブル/RTS
インド
インド・ルピー/SENSEX
16/8
ド
ル
高
ド
ル
安
)
中国元/上海指数
株価前週(9/29)比
為替前週(9/29)比
(
4
オーストラリア
インドネシア・ルピア/ジャカルタ総合
オーストラリア・ドル/ASX200
16/10
株
高
・
自
国
通
貨
高
)
中国
16/9
安
・
自
国
通
貨
安
(
インドネシア
160
CRB指数→
ロシア
6
0
16/04 16/05 16/06 16/07 16/08 16/09 16/10
170
2300
通貨:対米ドル騰落率/株価騰落率
8
2
180
4.6 2100
16/4
政策金利の推移
190
0%
2%
4%
6%
▲2%
(注)前週が休場の場合、前週の休場前終値との比較
(資料)Bloomberg、Thomson Reuters Datastreamより農中総研作成
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6.指標分析・注目点
南 武志
① 今週のレビュー
6 日の G20 財務相・中央銀行総裁会議、さらに 7 日からの国際通貨基金(IMF)・世界銀行総会を控え、
IMF は 4 日に「世界経済見通し(WEO)」を発表した。世界経済全体の見通しとしては 16 年を 3.1%、17
年を 3.4%とするなど、7 月の中間見直しから据え置きとなった。内容的には、米国を中心に先進国が下
方修正(日本は上方修正)されたが、新興国の上方修正で相殺された格好となっている。全般的に、16
年は低調な状態が残るものの、17 年は新興国の堅調さが世界経済全体を牽引し始めるとしているが、回
復力が弱く、不安定であるとの認識は変わっていない。また、米大統領選でも取り上げられているように保
護主義的な動きが出ていることに警戒を示している。低成長・低インフレへの処方箋としては、9 月に経済
見通しを公表した経済協力開発機構(OECD)と同様、すでに疲弊している金融政策だけではなく、財政
政策、構造改革を組み合わせることが重要であるとしている。
なお、麻生財務相は第 2 次補正予算の早期成立や米大統領選前の TPP の国会承認を最優先するた
めに、6 日の G20 は欠席、IMF・世銀総会からの出席となった。
以下、今週発表された経済指標を確認してみよう。まず、日銀短観 9 月調査からは、足元の企業マイン
ドは全体としては小幅改善ながらも、先行きは小幅悪化との内容であった。代表的な大企業製造業の業
況判断 DI は 2 期連続の横ばい(6)で、先行
短観:雇用・生産設備過不足感とインフレ率
(%ポイント)
3
雇用・生産設備判断 (全規模全産業、左目
盛)
全国消費者物価 (生鮮食品を除く総合、除く
消費税要因、右目盛)
全国消費者物価 (食料(除く酒類)・エネル
ギーを除く総合、除く消費税要因、右目盛)
きも横ばい予想であった。また、16 年度の設
-20
備投資計画調査では中小企業を中心に上
方修正されたが、この数年の中では控えめ
(%前年比)
-30
-10
不
足
(見通し) 2
1
なものにとどまっている(含む土地投資額、
0
0
前年度比 1.7%)。なお、日本銀行が注目す
10
-1
る加重平均 DI(雇用人員、生産用・設備用
20
-2
過
剰
設備の過不足感)をみると、3 期ぶりに不足
感じ取っていることが示唆される。一方、企
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
-3
2000年
30
感が強まるなど、需要持ち直しを企業側が
(資料)日本銀行、総務省統計局の統計資料より作成 (注)雇用・生産設備判断DIを2:1で加重平均。
業の物価見通しは相変わらず鈍く、全体で 1 年後は前年比 0.6%、3 年後は同 1.0%、5 年後は 1.0%(い
ずれも前回調査時から 0.1 ポイントの下方修正)であった。
消費者マインドにも持ち直しが見られた。9 月の消費動向調査によれば、消費者態度指数は 2 ヶ月連
続で改善、約 3 年ぶりの水準まで回復した。これを構成する消費者意識指標もすべて改善している。一
方で、物価見通しについては、日銀の分析に見られるように、足元の物価下落に引きずられてアベノミク
ス始動前の状況まで戻ってしまったものの、足元では更なる鈍化は止まっている様子も見て取れる。
最後に 8 月の毎月勤労統計によれば、現金給与総額は前年比▲0.1%と 3 ヶ月ぶりの減少となった。
所定内給与は同 0.5%と増加したものの、所定外給与が同▲1.9%と減少したほか、特別に支払われた給
与(中小企業の夏季賞与など)も同▲7.7%と減少、全体を押し下げた。ただし、足元の物価下落(主にエ
ネルギー)のおかげで実質賃金は同 0.5%、時間当たり賃金も同 0.8%と、いずれも鈍化したとはいえ、増
加基調を維持している。
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7.日米経済指標の動向(グラフ)
【日本】
(ポイント)
日銀短観:D.I.(9月調査)
(%)
先行き
新設住宅着工戸数(8月)
(万戸)
30
20
110
25
10
100
0
90
▲ 10
80
20
15
10
大企業製造業
大企業非製造業
5
▲ 20
70
着工戸数(季調済年率・右軸)
前年比(原数値・左軸)
▲ 30
0
14/9
15/3
15/9
16/3
60
'14.8
16/9
'15.2
'15.8
'16.2
'16.8
大企業製造業業況判断DIは6と、前回(6月調査)から変わら 新設住宅着工戸数(季調済年率)は95.6万戸と4ヶ月ぶりに
ず、先行き(12月)も6。大企業非製造業は18と前回から1ポ 100万戸台を割った。前年比(原数値)では7.1%と2ヶ月連続
イント低下、先行きも2ポイント低下を見込む。
の増加。
(兆米ドル)
(%)
外貨準備高(9月末)
1.30
1.28
マネタリーベース:前年比(9月末)
(兆円)
50
500
40
400
30
300
20
200
1.26
1.24
月末残高(右目盛)
前年比(平残)
10
100
0
1.22
'14.9
'15.3
'15.9
'16.3
'16.9
外貨準備高は、1兆2,601億米ドルと前月から増加した。
(%)
0
'14.9
'15.3
'15.9
'16.3
'16.9
マネタリーベースの9月末残高は412.8兆円で、平残ベースで
は前年比22.7%と、7ヶ月連続で鈍化。
毎月勤労統計:前年比(8月速報)
2.0
1.0
0.0
▲ 1.0
所定内給与
現金給与総額
▲ 2.0
▲ 3.0
'14.8
'15.2
'15.8
'16.2
'16.8
現金給与総額は、前年比▲0.1%と減少した。所定内給与は
同0.5%、所定外給与は同▲1.9%。
(資料)Bloomberg より農中総研作成
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【米国】
(万人) 新規失業保険申請件数(10月1日週)
32
(万人) (%)
240
新規失業保険申請者件数
4週移動平均
失業保険継続受給者(右軸)
30
個人支出:季調済前月比(8月)
1.2
個人消費支出
個人所得
1.0
230
0.8
0.6
28
220
26
210
24
200
4/16
5/28
7/9
8/20
10/1
0.4
0.2
0.0
▲ 0.2
▲ 0.4
'14.8
'15.2
'15.8
'16.2
'16.8
新規失業保険申請者件数は24.9万人と減少、事前予測
(25.6万人)を下回った。また、失業保険継続受給者数(9月
24日週)は、205.8万人。
個人支出は前月比0.0%と、前月から鈍化、事前予測(同
0.1%)を下回った。個人所得も、同0.2%と、鈍化したが、19ヶ
月連続で増加、こちらは事前予測通りだった。
(万人)
(ポイント)
ADP雇用統計:季調済(9月)
35
60
30
58
25
56
20
15
54
10
52
5
非農業部門雇用者数増減
'14.9
'15.3
'15.9
'16.3
製造業
非製造業
50
0
'16.9
ADP社発表の雇用統計の非農業部門雇用者数は15.4万人
増と事前予測(16.5万人)を下回った。
(%)
ISM景況指数:季調済(9月)
48
'14.9
'15.3
'15.9
'16.3
'16.9
米供給管理協会(ISM)発表の製造業景況指数は51.5と事前
予想(50.4)を上回った。非製造業景況指数も57.1と事前予測
(53.0)を上回った。いずれも前月から大きく上昇した。
製造業受注指数:季調済前月比(8月)
4.0
2.0
0.0
▲ 2.0
▲ 4.0
▲ 6.0
▲ 8.0
▲ 10.0
▲ 12.0
'14.8
'15.2
'15.8
'16.2
'16.8
製造業受注指数は、前月比0.2%と事前予測(同▲0.2%)を
上回った。
(資料)Bloomberg より農中総研作成
農林中金総合研究所
10