臨時レポート 足元のロシアの投資環境 ■ロシア中央銀行3カ月ぶりの利下げ ロシア中央銀行(以下、「中銀」)は9月16日(現地時間)に 開催した政策決定会合で、市場予想通り政策金利を年率 10.5%から10.0%に引き下げました。 2016年6月の会合以来3カ月ぶりの利下げとなりましたが、 主な背景として、インフレの鈍化が挙げられます。 ウクライナ情勢に対する懸念や、ロシアの主要輸出品目で ある原油価格の急落による景気悪化懸念等を受け、2014 年にロシアの通貨ルーブルは急落しました。 ルーブルの急落は輸入物価の高騰につながり、その結果 ロシアのインフレ率は急騰しました。これを受け、中銀は通 貨防衛やインフレ抑制のため、2014年12月に政策金利を 大幅に引き上げました。 その後、中銀はインフレ率や景気動向を注視しつつ、機動 的、且つ慎重に利下げを行ってきました。なお今回の決定 についても、中銀は8月に入りインフレ率が再び低下トレン ドに入ったことを理由の一つとして挙げる等、インフレ動向 をより意識した形で判断を下していることが伺えます。 中銀は声明文の中で、金融引締策を継続した場合、2017 年後半にはインフレ率は目標水準である4%にまで低下す るとの見通しを示すと共に、次の利下げは2017年前半に なるとの考えも示唆しています。 2016年10月6日 ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社 (%) 18 【図表1】主要政策金利・インフレ率の推移 (2014年1月1日~2016年10月4日、日次) 16 14 12 10 8 主要政策金利 6 インフレ率(前年同月比) 4 2014/1 2014/7 2015/1 2015/7 2016/1 2016/7 (年/月) 出所:Bloombergのデータを基にドイチェ・アセット・マネジメント㈱が作成 ※インフレ率は2016年9月まで。 【図表2】ロシア・ルーブル(対米ドル)とWTI原油先物の推移 (2014年1月1日~2016年10月4日、日次) (ロシア・ルーブル) 20 (米ドル) 140 米ドル/ロシア・ルーブル(左軸) 30 120 WTI原油先物(右軸) 40 100 50 80 60 60 70 40 ■ルーブルは安定的な推移が続くと予想 80 20 通貨ルーブルについては、原油価格が以前に比べ緩やか に推移していることや、中銀が利下げに対し機動的、且つ 慎重な姿勢を取っていること等を背景に、安定的に推移す ると予想しています。 90 2014/1 ロシアの主要輸出品目である原油の価格とルーブルの連 動性は依然高い状況が続いています。原油価格について は2015年に大幅下落して以降、足元では1バレル当たり40 米ドル~50米ドルの間での相場が続いており、それに呼 応するように、ルーブルも今年5月以降概ね横ばいで推移 しています。 中銀はインフレ率にあわせ機動的に利下げを実施してい るものの、そのペースは緩やかです。また、先進国を中心 に低金利環境が継続する中において、ロシアの金利水準 は魅力的であるとも言えます。仮に中銀が利下げのペー スを加速することになれば、ルーブル下落につながる可能 性も考えられますが、インフレ鈍化が確認された上で利下 げを行うというこれまでの中銀の慎重な姿勢を考えれば、 このリスクは想定しにくいと見られます。 0 2014/6 2014/11 2015/4 2015/9 2016/2 2016/7 (年/月) 出所:Bloombergのデータを基にドイチェ・アセット・マネジメント㈱が作成 【図表3】ロシア・ルーブルの推移(対円、対米ドル) (2014年1月1日~2016年10月4日、日次) (ロシア・ルーブル) 20 (円) 4.5 米ドル/ロシア・ルーブル(左軸) ロシア・ルーブル/円(右軸) 30 4.0 40 3.5 50 3.0 60 2.5 70 2.0 80 1.5 90 2014/1 2014/7 2015/1 2015/7 2016/1 1.0 2016/7 (年/月) 出所:Bloombergのデータを基にドイチェ・アセット・マネジメント㈱が作成 ※データは記載時点のものであり、将来の傾向、数値等を保証もしくは示唆するものではありません。 当資料は、情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品の推奨や投資勧誘を目的としたものではありません。当資料は、信頼できる情報をもとにドイチェ・アセット・マネジメント株 式会社が作成しておりますが、正確性・完全性について当社が責任を負うものではありません。当資料記載の情報及び見通しは、作成時点のものであり、市場の環境やその他の状況 によって予告なく変更することがあります。当資料に記載されている個別の銘柄・企業名については、あくまでも参考として記載したものであり、その銘柄・企業の株式等の売買を推奨す るものではありません。 D-161005-4 1/3 臨時レポート 足元のロシアの投資環境 【図表4】ロシア国債(指数)の推移 (2014年1月1日~2016年10月4日、日次) ■ロシアの債券市場も堅調に推移 ロシアの債券市場は堅調な推移が続いています。 (ポイント) 原油価格に底打ち感が見られた後は、財政懸念が和らい だことや、減少傾向にあった外貨準備にも底入れの兆しが 見られたこと等から、ロシアの債券市場は堅調に推移して います。その後は、対外債務の減少、外貨準備高の緩や かな増加傾向等を背景に、財政懸念が後退し、債券市場 は底堅く推移しました。2016年初には原油価格の下落に より、投資家のリスク回避姿勢が強まったこと等が市場の 重石となりましたが、2月半ば以降は原油価格の上昇や市 場心理の改善が市場を下支えしました。 260 このように財政懸念がやや後退したことに加えて、①足元 のルーブルの安定的な推移、②相対的に高い利回りを求 める投資家の動き、③インフレ鈍化期待、④緩やかな利下 げ期待等が債券市場のプラス材料になると予想されます。 ■回復が見込まれるロシア経済 今回の声明文の中で、中銀はロシアの四半期成長率は 2016年中にもプラス圏に回復するとの見通しを示すと共に、 2017年は1%以上のプラス成長を達成すると予測していま す。この見通しは原油価格が1バレル当たり40米ドル程度 で推移することを想定したものであり、厳しい条件の下で の予測と言えます。 ロ シ ア 経 済 に つ い て は 、 2016 年 10 月 に 国 際 通 貨 基 金 (IMF)が発表した世界経済見通しにおいても成長率予測 が引き上げられる等、外部機関による評価も改善していま す。 ロシアは依然欧米諸国からの経済制裁下に置かれており、 厳しい外部環境に晒されていることに変わりはありません。 しかしその中でも経常収支は黒字の状態が継続する等、 ロシア景気にとって明るい材料も見られます。 240 220 200 180 160 140 2014/1 2014/7 2015/1 2015/7 2016/1 2016/7 (年/月) 出所:Bloombergのデータを基にドイチェ・アセット・マネジメント㈱が作成 【図表5】ロシアの経常収支(対GDP比)の推移 (2013年第1四半期~2016年第2四半期、四半期) (%) 6 5 4 3 2 1 中銀の予想通りインフレが抑制され、景気回復が確実なも のとなれば、ロシア市場は堅調な推移を見せるものと考え られます。 0 2013/3 2013/9 2014/3 2014/9 2015/3 2015/9 2016/3 (年/月) 出所:Bloombergのデータを基にドイチェ・アセット・マネジメント㈱が作成 ※データは記載時点のものであり、将来の傾向、数値等を保証もしくは示唆するものではありません。 ロシア国債(指数): JPモルガン・GBIロシア指数(ルーブル建) JPモルガン・GBIロシア指数(ルーブル建)は、JPMorgan Chase & Co.の子会社であるJ.P. Morgan Securities LLC(以下「J.P.Morgan」といいます。)が算出 する債券インデックスであり、その著作権及び知的所有権は同社に帰属します。J.P. Morganは、JPモルガン・GBIロシア指数(ルーブル建)及びそのサブイ ンデックスが参照される可能性のある、または販売奨励の目的でJPモルガン・GBIロシア指数(ルーブル建)及びそのサブインデックスが使用される可能性 のあるいかなる商品についても、出資、保証、または奨励するものではありません。J.P. Morganは、証券投資全般もしくは本商品そのものへの投資の適否 またはJPモルガン・GBIロシア指数(ルーブル建)及びそのサブインデックスが債券市場一般のパフォーマンスに連動する能力に関して、何ら明示または黙 示に、表明または保証するものではありません。 当資料は、情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品の推奨や投資勧誘を目的としたものではありません。当資料は、信頼できる情報をもとにドイチェ・アセット・マネジメント株 式会社が作成しておりますが、正確性・完全性について当社が責任を負うものではありません。当資料記載の情報及び見通しは、作成時点のものであり、市場の環境やその他の状況 によって予告なく変更することがあります。当資料に記載されている個別の銘柄・企業名については、あくまでも参考として記載したものであり、その銘柄・企業の株式等の売買を推奨す るものではありません。 D-161005-4 2/3 臨時レポート 足元のロシアの投資環境 ご留意事項 ●投資信託に係るリスクについて 投資信託は、主に国内外の株式や公社債等の値動きのある証券を投資対象とし投資元本が保証されていないため、 当該資産の市場における取引価格の変動や為替の変動等により投資一単位当たりの価値が変動します。したがって お客様のご投資された金額を下回ることもあります。 また、投資信託は、個別の投資信託毎に投資対象資産の種類や投資制限、取引市場、投資対象国等が異なることか ら、リスクの内容や性質が異なりますので、ご購入に際しては、事前に最新の投資信託説明書(交付目論見書)や契約 締結前交付書面の内容をご確認の上、ご自身で判断して下さい。 ●投資信託に係る費用について 【お申込みいただくお客様には以下の費用をご負担いただきます。】 購入時に直接ご負担いただく費用・・・購入時手数料 上限3.78%(税抜3.50%) 換金時に直接ご負担いただく費用・・・信託財産留保額 上限1.0% 投資信託の保有期間中に間接的にご負担いただく費用・・・運用管理費用(信託報酬) 上限2.0404%程度(税込) その他費用・・・上記以外に保有期間等に応じてご負担いただく費用があります。 投資信託説明書(交付目論見書)、契約締結前交付書面等でご確認下さい。 ≪ご注意≫ 上記に記載しているリスクや費用項目につきましては、一般的な投資信託を想定しております。費用の料率につきまし ては、ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社が運用するすべての投資信託のうち、徴収するそれぞれの費用における 最高の料率を記載しております。投資信託の運用による損益は、すべて受益者に帰属します。投資信託は、金融機関 の預貯金と異なり、元本及び利息の保証はありません。投資信託は、預金または保険契約ではないため、預金保険及 び保険契約者保護機構の保護の対象にはなりません。登録金融機関を通じてご購入いただいた投資信託は、投資者 保護基金の対象とはなりません。投資信託に係るリスクや費用は、それぞれの投資信託により異なりますので、ご購入 に際しては、事前に最新の投資信託説明書(交付目論見書)や契約締結前交付書面の内容をご確認の上、ご自身で 判断して下さい。 なお、当社では投資信託の直接の販売は行っておりませんので、実際のお申込みにあたっては、各投資信託取扱いの 販売会社にお問合せ下さい。 ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第359号 加入協会:一般社団法人投資信託協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、 一般社団法人第二種金融商品取引業協会 当資料は、情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品の推奨や投資勧誘を目的としたものではありません。当資料は、信頼できる情報をもとにドイチェ・アセット・マネジメント株 式会社が作成しておりますが、正確性・完全性について当社が責任を負うものではありません。当資料記載の情報及び見通しは、作成時点のものであり、市場の環境やその他の状況 によって予告なく変更することがあります。当資料に記載されている個別の銘柄・企業名については、あくまでも参考として記載したものであり、その銘柄・企業の株式等の売買を推奨す るものではありません。 D-161005-4 ` 3/3
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