藤牧 朗先生 - リクルート進学総研

や 治 療 法が出てきて 、現 場の対 処の仕
くくる。
回のテーマや予 習 内 容 を 確 認して 締め
一連の授 業のなかで 藤 牧 先 生が重 点
を 置 くのは、生 徒から的 確 な 質 問 を 引
方 も 変 わります 。ひととおり専 門 的 な
知 識 。その上に新しい知 識やスキルをど
き出すこと。良い質 問ができるというこ
知 識 を 学んでも 、それはあ くまで 基 礎
んどん積み上 げていかなくてはなりませ
とは、テーマの要 点 を 理 解していること
であり、それができる力は社 会に出てか
ん﹂︵ 藤 牧 先 生・以下 同 ︶
﹁インターネットの動 画ではなくリアル
しい﹂と感じられる授 業を目 指している。
科 目の学 習 を 通じて 、学 び続ける基 礎
の意 義だとは考えていません。むしろ 、
﹁ 科 目の知 識 を 得 ることだけが、授 業
らも役 立つとの考えからだ。
な 授 業 だからこその楽しさがあるはず 。
の 力 として 普 遍 的に一生 使 え るリテラ
学び続ける力はどう育んだらよ
では、
いか。藤 牧 先 生は第一に﹁ 学ぶことは楽
人と人が交わる教 室という 場 をうまく
シーやコンピテンシーを育むことを大 切
にしています ﹂
活 用したい﹂
しかしながら 、人によって楽しさやわ
かりやすさは違う 。
﹁ 様々な授 業 方 法か
議 院 が参 議 院 より も 優 越 す る 理 由 を
定 期 考 査には記 号や穴 埋めの問 題が
な く 、すべて 記 述 問 題 だ 。例 えば、
﹁衆
記せ﹂と 知 識 を 問 う 問 題のほか、
﹁ 現代
ら 自 分に合った 学 び 方 を 見つけてほし
型とは異なるスタイルで、
生 徒が主 体 的
日 本のマス・メディアの働きに対して、具
い﹂と 、藤 牧 先 生はあえて一般 的 な 講 義
に参 加する授 業を行う 。その基 本 的な
体 例 を 挙 げてあ なたの 考 え を 述べよ ﹂
京 大 学 医 学 部で学 び直し、最 終 的に教
﹁ 自ら学び続ける力を育てたい﹂。警
視 庁や塾での社 会 経 験 を 積んだ後 、東
ラス全 体 で 共 有 し 、藤 牧 先 生 が回 答へ
質 問 を 考 える 。各 グループの質 問 をク
に生 徒はグループで 内 容 を 掘り 下 げる
ゼンテーション︶
を使って解 説 。それを基
ついて 、藤 牧 先 生がKP法︵ 紙 芝 居 プレ
する。次に、当 日の授 業テーマの要 点に
たり 、他 の 生 徒からの 質 問に答 えたり
なりきって自 己 紹 介︵ 役の人 物 紹 介 ︶
し
徒2人が、授 業に関 連 する 重 要 人 物に
いう 演 劇 的 手 法 を 活 用 。指 名された生
で答えを作っていく 力を育む、生 徒の将
解のない問 題もたくさんあるなか、
自分
く 、自 分たちで作るもの。世の中には正
﹁ 本 来 、答 えは与 えられるものではな
生のメッセージでもある。
点でものを考えてほしい﹂という藤 牧 先
価 基 準を示すだけでなく 、﹁こういう 視
布する︵ 左ページ 上 ︶。ルーブリックは評
験 前に設 問 内 容を伏せた形で生 徒に配
これらの採 点の基 準を明 確 化するた
め、設 問 ごとにルーブリックを 作 成 。試
のような意 見を求める問 題もある。
授 業 展 開はこうだ︵ 図1︶。
員になった 藤 牧 朗 先 生 の 回 答 は 明 快
来につながるテストにしたいと 考えてい
ま ず 、前 回の授 業の学 びを 深める 冒
頭の時 間には、
﹁ホットシーティング ﹂と
だ。
のヒントや情 報の提 供を行う。最 後に、
ます ﹂
どんな授業なのか
﹁ 変 化のスピードが速い現 代 、医 学の世
当 日に学んだ 内 容や 感 想 をまとめ、次
生徒の疑問・質問を引き出す
生徒参加型の授業
界 を 例にとっても 、数 年たてば新しい薬
20
2016 OCT. Vol.414
1940年創立/普通科/生徒数877人
(男子648人・女子229人)
/進路状況
(2016
年3月実績)
大学118人・短大3人・専門学校29人、就職5人、
その他51人
学校データ
演劇的手法やKP法、グループ学習を交え
授業の中に社会の場を作る
政治
・
経済
目黒学院高校(東京・私立)
藤牧 朗先生
慶 應 義 塾 大 学 商 学 部を卒 業
後、
警視庁職員、
塾講師を経て、
東京大学医学部に入学。
「子ど
もたちが社会に出て困らない力
をつけさせたい」
と卒業後は中
学校・高校の教員に。社会科や
理科をはじめ10 種類の教員免
許をもつ。
「授業」で社会を生きる力を育む
【Report 03】政治・経済
図1 藤牧先生の授業デザイン
1 前回の復習 ∼ホットシーティング
金融をテーマにした授業では、
シャウプ
氏と日本郵便の職員の役の生徒が登
場。
「登場人物が自分で話すという設
定なので、何を言ってもよいんだよと繰
り返し伝えています」
(10分)
2
教科書知識の確認 ∼KP法
授 業 前に準 備した 2 0
枚弱の用紙を使って教
科 書 内 容 のポイントを
解説。
「板書に比べ、生
徒から目を離さずにすみ
ます」
(10分)
法 を 学ぶだけでな く 、生 徒の意 見 も 取
藤 牧 先 生は外 部で開 催される様々な
勉 強 会に頻 繁に参 加して新しい授 業 手
「以前はニュースを見てもただその事実を受け止めていただけ
でしたが、今は『なぜこういうことが起こるのだろう』
などと疑問
が生まれるようになりました」
今 後 行いたい授 業
﹁ 自 分で 考 える力がつく ﹂など 、成 長 を
り入れながら授 業 を 改 善 。現 在のよう
藤牧先生の授業を受けるようになって、
自分が変わったと感じることは?
ようと取り組んできました﹂
実 感 するコメントがあがる。また、中 学
Q
生徒はどう変わったか
授 業 中 、生 徒は積 極 的に手 を 挙 げて
質 問 する。ホットシーティングでは照れ
3年から 担 当したあるクラスでは、
﹁自
な 授 業 展 開にたどり 着いて 、まだ1 年
「最初のホットシーティングは結構面白いです。今日の授業で
は日本の戦後税制の生みの親ともいえるシャウプ役を務めま
したが、質問に答えられるよう事前にしっかり調べて臨みまし
た」
自らも新しいことを学んで、良いと思う
Q 授業の面白いところはどこですか?
方 法があればどんどん変えていきます ﹂
「社会科といえば暗記科目、
というイメージが変わりました。考
える力の大切さを改めて実感しています。自分の頭の中だけ
で考えるのではなく、意見として発信したり話し合ったりするこ
とは、社会に出ても役に立ちそうです」
新しい手法も積極的に取り入れ
多様な学び方を提示し続ける
ること な く 登 場 人 物になりきり 、予 習
分たちで授 業 をしたい﹂と 、高 校3年の
足らずだ。藤 牧 先 生はこれで授 業の型
Q 今年度、初めて藤牧先生の授業を受けた感想は?
定 期 考 査 の 最 後 には 授 業 や 試 験 に
対 する 意 見 を 求める 設 問 もあり 、その
に基づいて真 剣に演じる。グループ活 動
﹁ 現 代 社 会 ﹂の授 業は生 徒が交 替で 教
﹁これからも 生 徒の状 況に合 わせてい
を固 定しようとは考えていない。
3学年 小岩井春岐くん
回 答には﹁いろんな 人の考 え 方 を 吸 収
では臆することなく 自 分の意 見を言う。
師 役 を 務めたこともあった。生 徒には、
けた
授業を受
声
の
生徒
生徒が交替で教師となって
授業を行った例も
﹁ 以 前 、希 望 する 授 業 方 法について 生
自ら学び続けていくためのリテラシーや
プリントを配布。今回の授業で学んだこ
とを確認し、次の授業に向けて準備させ
る。
(5分)
できる ﹂
﹁ 協 調 性 を 養 うことができる ﹂
徒に聞いたところ 、
最も多かったのが
﹃自
∼リフレクション
分で発 言できる授 業 ﹄。生 徒は黙って聞
5 まとめ・感想
ろんな 学 び方 を 提 示し 、生 徒の選 択 肢
各グループからあがった質問に答える
形で、今回の授業の重要事項を解説す
る。すべてを解説するのではなく、
「これ
は調べてね」
と促すにとどめることも。
(10分)
コンピテンシーが確 実に育っているよう
質問回答・解説
いているより、対 話 型の授 業 を 望んでい
4
を 増やしていきたいですね。そのために
3∼4人のグループで、疑問に感じたこ
とやさらに知りたいことについて話し合
い、質問1∼2点を紙に書き出して発表。
「質問の良し悪しは言わず、できるだけ
自由に質問を出せる雰囲気づくりに努
めています」
(15分)
だ。
質問精査・発表 ∼グループ活動
るようです 。そんな 生 徒の期 待に応 え
3
高校3年「政治・経済」第1回定期考査ルーブリック。設問ごとに内容面
3段階、表現面2段階の評価基準を設定。例えばある設問の内容面は、
「目的と問題点がそれぞれ挙げられている」
が4点、
「目的または問題点の
片方が示されている」
が2点、
「どちらも示されていない」
が0点。
取材・文/藤崎雅子
21
2016 OCT. Vol.414
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