質疑応答 2016年8月 薬事情報センターに寄せられた質疑・応答の紹介(2016年8月) 【医薬品一般】 Q:抗血小板薬のエフィエントTM を経皮冠動脈形成術適用の急性冠症候群等に使用する場合、アス ピリンを併用しなければならないか?(薬局) A:経皮冠動脈形成術(PCI:percutaneous coronary intervention)には、新生内膜増殖が主 因のステント内再狭窄を予防するため、シロリムス等を使用した薬剤溶出性ステント( DES: drug-eluting stent)の使用が主流である。一方で、遅発性ステント血栓症(ステント留置後 1ヶ月以後1年以内)や超遅発性ステント血栓症(ステント留置後1年以後)が臨床的に問題 となる。ステント血栓症予防のため、低用量アスピリンにワルファリンを加えた抗血栓療法が 行われていたが、急性期に3%程度の血栓症が発症した。現在、STARS(Stent Anticoagulation Restenosis Study)試験等の結果により、低用量アスピリンとチエノピリジ ン系抗血小板薬の2剤併用療法(DAPT:dual antiplatelet therapy)が推奨されている。 チエノピリジン系抗血小板薬〔エフィエントTM 錠(プラスグレル)、プラビックスTM 錠(クロ ピドグレル)〕をアスピリン(81~100mg/日、エフィエントTM 錠併用時の初回負荷投与は324mg まで)と併用する。 Q:2型糖尿病患者の食後過血糖を抑制するのに、野菜を先に食べる方法が勧められるが、ご飯や おかずは、どのくらい時間を空けたら良いのか?(薬局) A:具体的な摂取間隔は検証されていないが、食品の摂取順序による血糖コントロール改善効果を 検討した報告がある。 2型糖尿病と診断され食事療法のみで治療中の外来通院患者15名(男性7名、女性8名)を対 象とし、試験食(米飯150gと野菜サラダ90g、エネルギー340kcal)を、米飯と野菜サラダの順 番を変えて摂取させ、食後血糖値とインスリン値の変動を観察したクロスオーバー試験。米飯 と野菜サラダの摂取間隔は10分、試験食の咀嚼回数は1口20回とし、15分かけて摂取させた。 その結果、野菜を先に摂取すると米飯を先に摂取した場合と比較して、試験食摂取30分後の血 糖値は217±40mg/dLから172±31mg/dL(p<0.01)と低値を示し、インスリン値も30分後、60 分後共に有意に抑制された。 先に野菜を摂取することで、野菜に含まれる食物繊維が糖質の分解、吸収の遅延をもたらすこ とと、十分な咀嚼により食物繊維が細分化され糖質の拡散速度がより遅延したことが 要因と考 えられる。 Q:アトピー性皮膚炎の治療に保湿外用剤は勧められるか?(薬局) A:アトピー性皮膚炎では角層の水分含有量が低下して皮膚が乾燥し、皮膚バリア機能の低下をき たしている。乾燥した皮膚への保湿外用剤(保湿剤・保護剤)の使用は、低下した角層水分量 を改善し、皮膚バリア機能を回復させ、皮膚炎の再燃予防と痒みの抑制につながる。 皮膚炎のある状態にはステロイド外用薬やタクロリムス外用薬と併用して保湿剤を外用 し、皮 膚炎が寛解した後も保湿剤を継続的に外用することが勧められる。保湿剤は尿素製剤、ヘパリ ン類似物質等がある。ただし、保湿剤による接触皮膚炎に注意する(アトピー性皮膚炎診療ガ イドライン2016年版より)。 Q:副腎皮質ステロイドのアレルギーへの作用機序は?(薬局) A:副腎皮質ステロイドの抗アレルギー作用は、抗炎症作用の1つの毛細血管透過性亢進抑制作用、 肥満細胞からのアレルギー性ケミカルメディエーター遊離および産生抑制作用、好酸球減少作 用などの複合的な作用による。 Q:カプサイシン軟膏の用途と製法は?(薬局) A:カプサイシンはトウガラシの辛味成分の1つで、軟膏として帯状疱疹後神経痛、糖尿病性神経 障害、慢性掻痒等に用いられる(保険適用外使用)。海外ではZostrix-HP(0.075%)等の 市販がある。 投与初期には内因性痛覚物質のサブスタンスPの放出が促進され血管拡張や局所刺激(痛覚過 敏、灼熱感等)が起こるが、長期投与ではサブスタンスPが枯渇し、痛覚閾値が上昇すること により鎮痛効果を示す。また、局所の末梢循環改善にも作用している。 【0.025%カプサイシン軟膏の製法】 カプサイシン(試薬)0.125gを適量の無水エタノールで溶解し(カプサイシンは疎水性の ため)、親水軟膏と十分に練合し、全量500gとする。 カプサイシンは眼や鼻等に強い刺激があるので、秤取、混合する時は、マスク、メガネ等を 着用し、換気に注意する。 【使用法】 1日3~4回塗布。使用後はよく手を洗う。発汗時及び入浴直後の塗布は避ける。 Q:ハイリスク患者の抜歯等で、感染性心内膜炎予防に使用する抗菌薬は何か?(薬局) A: 対象 標準的予防法 経口投与可能 抗菌薬 アモキシシリン 用量 投与法 *1、2 成人:2.0g 処置1時間前に経口投与 小児:50mg/kg アンピシリン 成人:2.0g 処置前30分以内に筋注又は静 経口投与不可 小児:50mg/kg 注 クリンダマイシン 成人:600mg 処置1時間前に経口投与 ペ 小児:20mg/kg ニ 経口投与 セファレキシン *3 成人:2.0g 処置1時間前に経口投与 シ 可能 小児:50mg/kg リ アジスロマイシン又は 成人:500mg ン 処置1時間前に経口投与 ア クラリスロマイシン 小児:15mg/kg レ クリンダマイシン 成人:600mg ル 処置30分以内に静注 小児:20mg/kg 経口投与 ギ ー 不可 セファゾリン 成人:1.0g 処置30分以内に筋注又は静注 小児:25mg/kg *1:体重に応じて減量可能(日本の成人では30mg/kgでも十分) *2:日本化学療法学会はアモキシシリン大量投与による下痢の可能性を踏まえ、リスク の少ない患者にはアモキシシリン500mgを提唱 *3:近年、MIC(最小発育阻止濃度)が上昇していることに留意 【安全性情報】 Q:サジージュースと医薬品との相互作用はあるか?(薬局) A:サジー〔沙棘、サージ、サーチ、サクリュウカ(学名:Hippophae rhamnoides)〕は、ヨーロ ッパ、アジア原産のグミ科植物で、オレンジ色の果実、果肉および種子から採取した果実・種 油が皮膚疾患、消化器障害、咳など様々な疾患に用いられていた。サジー (サクリュウカ/ラ ムノイデス) の果実・種油は「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分 本質 (原材料) 」に該当する。サジー果実油は血小板凝集能を阻害する可能性があるため、抗 凝血薬や抗血小板薬と併用すると、出血のリスクが増加する可能性がある。 Q:医療用経腸成分栄養剤で牛乳アレルギーの人に使用できるものは何か?(薬局) A:エレンタールTM 配合内用剤、エレンタールTMP乳幼児用配合内用剤、ツインラインTMNF配合 経腸用液。これらはカゼイン等の乳タンパク由来物質を含まないので、牛乳アレルギーでも使 用可能である。
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