tweet!アドバイザー デマンド制御と電力の見える化 について 資源エネルギー環境部 エネルギー対策課 省エネルギー技術指導員 西川 克治 1.デマンドについて 工場やビル店舗・事務所等に電気エネルギーを使用されている事業者(以下「需要家」 という。 )は、ほとんどが小売電気事業者(以下「電力会社」という。)と電力供給契約 を締結して、その契約に基づいて、電力使用量に応じた電気使用料(以下「電気代」と いう。)を支払われています。 このうち、高圧電力契約B相当の需要家を対象に話を進めます。 電気代=①契約電力に応じた基本料金(約1,700円/kW)×デマンド(kW)+②使 用電力量に応じた電力量料金(約12円/kWh)×使用量(kWh/月)で計算されます。 ②の部分は、まさに使用量に応じて支払う金額であり、使用量が少なければ安く、多 ければ高くなり、電気使用量の節約に取り組まれれば、即成果が現れますが、①の契約 電力に応じた基本料金部分は、取り組みの成果が長期にわたり影響する部分です。それ を決定するのが、デマンドです。 デマンドとは、電力を使用する需要家の最大電力のことで、電力会社と電気の供給契 約を結ぶ際、1年を通じて最も高い電力を契約電力として契約します。 基本料金は、この契約電力を使用して計算します。 デマンドは、30分間単位の平均電力で計測されており、瞬間的に大きな値が出ても、 契約電力の改定には結びつきませんが、ある月に平均電力の最大値を更新したならば、 最大需要電力として、翌月から1年間は、そのデマンドで計算した基本料金を支払い続 けることになります。つまり、一度デマンドが契約値を超過すると、翌月から1年間は その更新した契約値となり、変わらないことになります。 出来る限りデマンドを低く抑えれば小さな契約電力となり、電気代が安くなることで、 コスト低減が可能となってきます。 2.デマンドの制御について 需要家側としては、デマンドを現在の契約値より超過させない、できればより低く抑 えたいとして、以前は、超過しそうになると、例えば、人の判断により生産工程に直接 旬レポ中国地域 2016 年 10 月号 1 必要がない事務所の空調を制限するとか、今動かさなくても良い送水ポンプを停止する などのことを行っていましたが、バラツキがあったり、対応の遅れによるデマンド超過 (更新)が発生したりしていました。 このため、デマンド監視装置が発達してきました。 デマンド監視装置は、現在の使用電力と負荷状況を常時監視・予測することで、デマ ンドが契約値を超過しないよう、負荷設備の運転を制御するもので、予測電力が契約電 力を超過しそうになると警報を出したり、負荷の一部または全部を自動的に登録してい る順番に停止することで、予期せぬデマンド超過を防止する機能が付いています。 デマンドが大きくなる時間帯は、需要家の生産・営業等がフル稼働の時間帯というこ とになりますから、負荷の一部または全部を自動的に停止することは、優先順位の決定 が必要であり、事前に関係各所と十分な調整を済ませておくことが必要です。 特に、お客様に関係する需要家の場合は、運転している空調機を停止する、温度設定 を上げる、送風運転に切り替えるなどを行うことは、空気環境の悪化を招くことになり ますから、十分な調整が必要となります。 これらの、デマンド制御を行うにあたり、社内情報ネットワークを使用して、関係各 所に情報を発することが、電力の見える化ということで、関係各所の協力を得て無理の ないコストダウンが図れたり、情報を共有することで、従業員の省エネルギー意識の醸 成にも繋がってくると思います。 使用電力量変化 使用実績電力量‐予想電力量 契約電力 電力量 予想 時間 時間 実績 監 視 盤 事業所ネットワーク 製 造 部 門 事 務 所 ユーティリティー部門 製 造 設 備 空調・照明・昇降機 ユーティリティー設備 見える化イメージ図 旬レポ中国地域 2016 年 10 月号 2 まだデマンド制御を採用されていない需要家においては、電気使用量を計測する計器 の設置が必要となりますが、可能な限り、小さいブロック単位でシステムを組むことで、 期待以上の成果が得られると思いますので、検討されてはいかがでしょうか。 3.その他 先ほどから述べてきたデマンド制御は、デマンドを抑えることであり、言い換えれば、 ピークを抑制することでしたが、別の切り口として、別の電源設備を設置することで対 応する方法もあります。 従来からある自家用発電設備の設置も一例ですが、屋上や側壁・空地等が確保できる のであれば、ピーク時以外にも継続してベース電源となる自社内消費用(売電を行わな い設備)の太陽光発電設備の設置という方法もあります。 導入に際しては、国からの補助金制度もあり、自家用発電設備に比べて、さほどメン テナンスは必要ないため、長期的な面からみれば、十分な経済効果が期待できると思い ます。 経済産業省 中国経済産業局 広報誌 旬レポ中国地域 2016 年 10 月号 Copyright 2016 Chugoku Bureau of Economy , Trade and Industry. 3
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