67 超音波検査が診断の一助と成り得た肉腫様肝癌の一例 ◎瀧本 桂子 1)、多久島 新 1)、松本 慎吾 1)、田中 宏枝 1)、中村 花菜子 1)、阿部 美智 1) 地方独立行政法人 佐賀県医療センター好生館 検査部 1) 【はじめに】肉腫様肝癌は、極めて稀な疾患で た。 あり、臨床的には増殖速度が早く予後不良とさ 【病理組織所見】生検組織では、低分化腺癌の れている。今回我々は、胆管系の形質・分化を 所見であった。摘出された肝腫瘍は約 8cm 大、 示す肉腫様肝癌を経験したので報告する。 白色充実性で横隔膜への浸潤がみられた。腫瘍 【症例】70 歳代男性【主訴】発熱 の組織像は炎症性背景に明瞭な核小体を持つ紡 【現症】食欲不振にて前医受診。出血性びらん 錘形主体の異型細胞が不規則に増生しており、 性胃炎の診断および、ピロリ菌陽性にて除菌施 核分裂像の増加を認め、腫瘍の中心部には広範 行。その後発熱を認め、再度受診。胸部レント な壊死がみられた。免疫染色にて CK7 が陽性で ゲンおよびCTにて右肺下葉に結節影を認め、 あり、肝細胞癌や胆管癌の成分は不明瞭である 精査加療目的に当院呼吸器内科に紹介受診とな が、胆管系の形質・分化を示す肉腫様肝癌と診 る。胸腹部CTにて横隔膜下に肝膿瘍を疑う所 断された。また、肺結節および胸膜結節に腫瘍 見を認め、肝胆膵内科へコンサルトとなる。 細胞を認め、肺転移と胸膜播種も伴っていた。 【既往歴】糖尿病、胆嚢摘出術。 【まとめ】今回、胆管系の形質・分化を示す肉 【血液検査所見】白血球数 11.9×103/μL、 腫様肝癌の症例を経験した。本疾患は極めて稀 CRP17.6 mg/dL で AFP、PIVKA-Ⅱ、CEA、CA19- であり、典型的な画像所見は確立されておらず、 9、シフラなどの腫瘍マーカーは陰性であった。 治療前の画像診断は多岐にわたる。本症例もC 【超音波検査所見】肝 S4/8 に 60×78mm 大の不 T所見では肝膿瘍が疑われ、超音波検査所見で 整形腫瘤を認めた。腫瘤は充実性で一部無エコ は不整形の充実性腫瘤として描出、胸腔への連 ー部分もみられた。内部はやや低エコーで不均 続性も疑われ悪性が示唆された。CT所見と超 一、後方エコーの増強を認め、胸腔への連続性 音波検査所見には乖離があり、生検が実施され も疑われた。 低分化腺癌と診断された。その後、腫瘍摘出術 【CT所見】胸腹部造影CTにて肝 S4/8 に が施行され確定診断へと至り、超音波検査がそ 57×82mm 大の低吸収域が認められた。造影に の一助に成り得たと考える。 て辺縁がリング状に増強しており肝膿瘍が疑わ れた。また、この病変から右肺下葉に連続する ように S8 に 20mm 大の結節を認め、肺への炎症 波及が疑われた。 【MRI所見】MRIでは、肝腫瘤は正常肝の 実質に対し T1WI で低信号、 T2WI で等〜高信 号を呈し、造影後は腫瘤辺縁および内部に不整 に造影される部分を認め、拡散能低下がみられ 連絡先:0952-24-2171(内線:1180)
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