海外 トピックス 競争促進策として期待される「オープンバンキング」 英競争・市場庁(CMA)は8 動する金銭的メリットがあり平均年 月、リテール銀行市場の競争促進に 間約92ポンドの節約をできたはず 向けて、スマホなどで銀行間の商品 だが、実際に当座預金を別の銀行に 比較が簡単にできる「オープンバン 移した個人は1年間に3%に過ぎな キング」の推進を含む広範な施策 かったという。 パッケージを公表した。 CMAは特に「オープンバンキン 英国のリテール銀行市場について グ」の推進が、個人や中小企業が銀 は、市場の集中度が高く競争が十分 行間のサービスを容易に比較できる に働いていないとたびたび指摘さ 環境を整えるカギになると期待す れ、英政府は銀行認可手続きの柔軟 る。具体的には、大銀行に対して 化などさまざまな改革を実施してき 「オープンAPI 基準」を策定して、 た。CMAでは、こうした状況を踏 商品の情報や顧客の取引履歴を他社 まえながら、特に個人や中小企業の と共有可能にすることを求めてい 当座預金(英国では個人も一般に財 る。業界が進めているオープンAPI 布代わりに用いている)と中小企業 基準導入の早期実現をより確実にす 貸付の市場で競争が有効に働いてい るものと見込まれる。 るか、一昨年から独自に検証を進め 今回の報告書を作成するにあた てきた。 り、少数の銀行に集中する市場構造 今回の施策パッケージの最大の特 が、競争を阻害しているのではない 徴は、個人や中小企業の顧客に現 かという懸念から大銀行を分割する 在取引のある当座預金口座やロー ことも検討されたが、そうした提案 ンが自分にとって適切か関心を持っ を盛り込むことは見送られた。それ てもらい、他行と比較したり乗り だけに、テクノロジーを活用して顧 換えたりする行動を促すことを中核 客の行動に働きかけるCMAの施策 に据えた点である。背景には、こう がどれだけ英国の銀行市場を変えら した行動が少ないことが銀行同士の れるか注目される。 サービス競争を阻害する根本的な原 因となっているという分析結果があ る。試算では当座預金を利用する個 人顧客の9割は低コストの口座に移 16 野村総合研究所 金融 ITナビゲーション推進部 ©2016NomuraResearchInstitute,Ltd.Allrightsreserved. 米SEC、投資アドバイザー業者に事業継続・移行計画の導入を提案 米証券取引委員会(SEC)は7月、SEC パーティ業者を特定し、そうした業者のBCP に登録するすべての投資アドバイザー(投信 を評価することも規定された。 運用会社から個人向けアドバイザーまで広く 提案のもう1つのポイントは、アドバイザー 含まれる)に対して「事業継続・移行計画 が事業を継続できなくなった場合に備え、予め (BCTP)」の導入を求める規則を提案した。 他社への事業移管について説明した「移行計 たとえば、アドバイザーが一時的に業務を継続 画」(TP)を作成しておくことを新たに求めた できないと、顧客の指図を受けられないなど顧 ことである。 客の利益をリスクにさらしかねない。そこで、 TPは、会社を後継者に引き継ぐための「継 顧客に対するフィデューシャリーデューティー 承計画」と共通する面もあるが、特に、顧客口 の一部として取り組むべき、と説明している。 座と事業の安全な移管に重点を置いている。具 今回の提案のポイントの一つは、BCTPに含 体的には、移行時の顧客情報の保護・移管、ま むべき項目を具体的に示したことである。 た移行に伴いアドバイザーや顧客に発生する契 事業継続計画(BCP)については、SECが 約上の責務などの特定といった項目を盛り込む 2003年に投資アドバイザーに対する「コン ことを求めている。 プライアンスプログラム規則」を採択した際に 今回の規制案について業界団体は概ね支持し 対象とすべき項目として挙げたこともあり、既 ているようだ。上述のようにBCTPの要件が具 にほとんどの業者が何らかの形で導入してい 体的に規定されハードルは上がったが、一律の る。ところが、BCPの具体性はまちまちで、 細かい要件は課されず、それぞれのアドバイ 例えば自然災害後の調査などから、広域にわた ザーの業務に関連したリスクに基づいて作成す る災害などに十分に対処できるBCPとはなっ るよう柔軟性が認められているためである。 ていないものもあるといった問題も浮かび上 SECは今回の提案について、1)すべての投資 がっていた。今回の提案ではBCPに含むべき アドバイザーに規定を適用すべきか、運用資 項目として、重要な業務やシステムの維持、 産の大きなアドバイザーに限定すべきか、2) データの保護、代替拠点、顧客や従業員などと アドバイザーの顧客にBCTPの開示を行うべき の連絡方法とともに、カストディや注文執行と か、といったコメントも求めており、今後の行 いった自社にとって重要な機能を担うサード 方が注目される。 <文責> 金融 I T ナビゲーション推進部 國見 和史 [email protected] Financial Information Technology Focus 2016.10 17
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