VTE患者に対するリバーロキサバン延長投与の有用性

2016/10/5
ESC 2016レポート|抗血栓療法トライアルデータベース
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2016年8月27~31日,イタリア・ローマ
VTE患者に対するリバーロキサバン延長投与の有用性
2016.10.5
ESC 2016取材班
リバーロキサバンによる6ヵ月間の治療の後,さらに延長して投与されたVTE患者は,6ヵ
月間で治療を中止した患者にくらべ,重大な出血リスクの上昇はなく,VTE再発リスクを有
意に抑制-8月30日,欧州心臓病学会学術集会(ESC 2016)にて,Concetta Crivera氏
(Janssen Scientific Affairs,米国)が発表した。
●背景・目的
静脈血栓塞栓症(VTE)治療において,リバーロキサバンはヘパリンやワルファリンなどに
よる従来治療にくらべ,有効性は非劣性を示し,重大な出血は有意に低下させることが
RCTにより示されている。そのうえ,リバーロキサバンは,従来療法で必要とされたルーチ
ンの抗凝固モニタリングを必要としないことから,医師と患者双方にとって負担が軽減され
Concetta Crivera氏
る。また,EINSTEIN-extension では,6~12ヵ月の抗凝固療法を終了したVTE患者におい
て,リバーロキサバンをさらに6~12ヵ月間延長投与したところ,プラセボにくらべVTE再発
リスクは82%抑制され,重大な出血リスク上昇はわずかであった1)。
本研究は,リアルワールドでリバーロキサバン延長投与を行ったVTE患者において,VTE再発および重大な出血のリスク
を評価した。
●方法
2011年2月~2015年4月,Truven Health MarketScan(約1億7,000万人をカバーする米国の民間健康保険)の薬剤処方デ
ータベースを用い,初発VTE患者で30日以上の中断がなく,6ヵ月以上継続してリバーロキサバンを投与された患者を後ろ
向きに特定した。リバーロキサバンの初回6ヵ月間投与が終了した日を起点日として観察を開始。治療期間が6ヵ月以上の
患者を継続群(1,764例),6ヵ月の患者を中止群(793例)とした。
主要転帰については,VTE再発は入院中に主傷病名での診断,重大な出血はCunninghamらのアルゴリズム2)を用いて評
価した。解析はプロペンシティスコアの逆数を重みづけするIPTW法を用いた。初回のVTE再発および初発の重大な出血発
現までの期間について,Kaplan-Meier生存率分析を行った。
●結果
平均観察期間は継続群164.1日,中止群190.3日であった。
VTE再発率は,3ヵ月後は継続群0.74%,中止群1.83%(Log-rank p=0.019),6ヵ月後はそれぞれ1.11%,3.04%(Log-rank
p=0.003),9ヵ月後は1.11%,3.80%(Log-rank p=0.001),12ヵ月後は1.64%,4.62%(Log-rank p=0.002)と,すべての時
点で継続群のほうが低かった。
重大な出血発現率は,3ヵ月後は継続群0.39%,中止群0.44%(Log-rank p=0.775),6ヵ月後はそれぞれ0.63%,1.05%
(Log-rank p=0.497),9ヵ月後は0.63%,1.39%(Log-rank p=0.353),12ヵ月後は1.51%,1.39%(Log-rank p=0.597)と,
すべての時点で同程度であった。
http://att.ebm­library.jp/conferences/2016/esc/esc1610.html
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●結論
リバーロキサバンによる6ヵ月間の治療の後,さらに延長して投与されたVTE患者は,6ヵ月間で治療を中止した患者にくら
べ,重大な出血リスクの上昇なく,VTE再発リスクを有意に抑制した。この結果はEINSTEIN-extensionと一貫しているもの
であった。
文献
1. EINSTEIN Investigators. Oral rivaroxaban for symptomatic venous thromboembolism. N Engl J Med 2010; 363: 2499510.
2. Cunningham A, et al. An automated database case definition for serious bleeding related to oral anticoagulant use.
Pharmacoepidemiol Drug Saf 2011; 20: 560-6.
抗血栓療法トライアルデータベース
http://att.ebm­library.jp/conferences/2016/esc/esc1610.html
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