グローバル・マクロ・ トピックス 2016/ 10/5 投資情報部 シニアエコノミスト 折原 豊水 インド中銀は新体制のもと利下げ実施、成長下支え インド中銀は10/4、0.25%の利下げを実施。パテル総裁がラジャン前総裁のややタカ派的な姿 勢を引き継ぐとみられていたことからサプライズ。 食料品価格の鈍化見通しが利下げの余地を生んだとしたが、公務員の給与引き上げ等でイン フレリスクがくすぶる。ラジャン氏が去ったことで政府からの利下げ圧力が強まった可能性も。 インド株はモディ政権の改革継続や利下げによる景気下支え期待で底堅い展開が続く見込 み。一方、ルピーは在外インド人の外貨預金の満期が続いていることや米利上げ観測の再燃 リスク等でしばらく上値が重い展開を見込む。 パテル総裁のもとで の初会合で市場予想 に反し利下げ インド準備銀行(以下、中銀)は10/4、政策金利(レポレート)を0.25%引き下げ、 6.25%とすることを全会一致で決定した。利下げは2016年4月以来となる。事前の市 場予想では金利据え置きが0.25%の利下げ予想を上回っていた。 9月に就任したパテル総裁にとって初めての中銀会合となった。また、金融政策委 員会が創設され、金融政策は、従来の総裁1名による決定から、金融政策委員会の 6名(総裁、副総裁ら3名の中銀指名と、政府指名の3名で構成)のメンバーによる投 票で決定された。事前の市場予想では、パテル総裁がラジャン前総裁のもとで金融 政策担当の副総裁として物価安定に貢献したという実績から、前総裁のややタカ派 的なスタンスを引き継ぐとみられていたため、利下げ決定はサプライズであった。 インフレリスクがある ものの、食料品価格 の 鈍化が 利下げ の 余地を生んだとした 中銀は、農業生産の増加等が食料品価格の見通しを改善させ、利下げの余地を 生んだと指摘、物価は、2017年3月までに消費者物価を前年比+5.0%まで抑制し、 中期的には同+4.0%±2.0%にする、という目標に沿って推移しているとした。会合後 の記者会見では実質金利(政策金利-インフレ率)の望ましい水準が従来の1.5%~ 2.0%から1.25%に引き下げられた。現状はその水準近辺となっている(政策金利 6.25%、17年3月消費者物価目標5.0%)。一方、リスクとしては、約10年ぶりに公務員 の給与が前年度比で23.55%引き上げられるほか、最低賃金や家賃の引き上げ等が その他の品目に波及してインフレ期待が生じることを挙げた。金融政策はそうした物 価の上方リスクを注視するとした。 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 1 2016/10/5 グローバル・マクロ・トピックス 景気については、輸出の低迷が重しとなるものの、公務員の給与引き上げや農業 生産の増加等により個人消費を中心に持ち直し、2016年度の実質経済成長率(粗 付加価値ベース)は前年比+7.6%になるという見通しを維持した。 ラジャン氏が去った ことで政府から中銀 へ 利下げ 圧力が 強 まった可能性も 足元の物価動向をみると、8月の消費者物価指数は前年同月比+5.0%と前月の同 +6.1%から上昇率が鈍化した。全体の約46%のシェアを占める食料品・飲料価格が同 +5.8%と7月の同+8.0%から鈍化したことが大きい。農業生産の増加傾向からすれば 食料品価格のうち、穀物価格はしばらく安定するとみられるが、穀物と同様にシェア の大きい野菜・果物等の品目は天候次第で振れが大きい。また、原油価格が反発 していることでエネルギー価格は卸売物価ベースで上昇している。さらに10年ぶり に公務員の給与が大幅に引き上げられたことで、過去の経験則上向こう1~2年は サービス価格等に波及して、インフレ圧力が高まりやすいとみられている。こうしたな かで今回中銀が利下げに踏み切った背景には、景気が経済成長率ほどには力強 くなく、政府系銀行の不良債権問題がくすぶっていることから、さらなる金融緩和の 必要性があったとみられる。ただ、総裁が交代して初めての会合において利下げを 行うほど物価見通しが前回から改善したとはみられない。ラジャン氏が去ったことで 政府サイドから利下げ圧力が強まった可能性もあろう。 声明文では中銀会合の各メンバーの発言等はうかがえないため、10/18に発表さ れる議事録を確認する必要がある。今後の金融政策は、上記のように中銀のスタン スが成長下支えを意識したものとなっていることから、追加緩和の可能性がくすぶる とみられる。ただ、物価に上方リスクがあることから足元の物価動向を確認しながら の判断となろう(次回会合は12/6~12/7開催予定)。 インドの政策金利と実質金利 (%) インドの消費者物価(前年比) (%) (月次:2011/1~2016/10) 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 6 5 4 3 2 1 0 ▲1 ▲2 ▲3 ▲4 11 12 13 14 実質金利(右目盛) 15 16 (年) 政策金利(レポ、左目盛) (月次:2014/1~2016/8) (%) 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 食料品飲料 燃料光熱 CPI総合 たばこ 住宅 5.0 14 15 16 (注)品目シェアは食料品・飲料45.9%、たばこ2.4%、衣服靴6.5%、 燃料光熱6.8%、住宅10.1%、その他(サービス関連)28.3% 出所:CEICデータよりみずほ証券作成 消費者物価前年比(左目盛) (注)実質金利=政策金利-消費者物価前年比。政策金利は10/4まで、消費者物価、 実質金利は8月まで 出所:CEICデータよりみずほ証券作成 衣服靴 その他 (年) この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 2 2016/10/5 グローバル・マクロ・トピックス インド株やルピーは 利下げによる成長下 支え期待で上昇 インドルピーは中銀の利下げを受けて、1ドル=66.46ルピーと前日の66.58ルピー から小幅ルピー高となった。また、代表的な株価指数であるSENSEX30指数が前日 比0.3%上昇し、28334ポイントで引けたほか、10年国債利回りは前日の6.77%から 6.73%へ低下(債券価格は上昇)した。インフレリスクへの懸念は一部であるものの、 利下げを受けた金利低下が景気下支えに寄与するとの見方により株価やルピーの 小幅上昇につながった。 今後はインド株が底 堅い一方、ルピーは 上値重い展開か 今後については、物品サービス税(GST)法案の成立により、モディ政権の改革姿 勢が続いていることや、中銀の利下げによる下支えにより景気が徐々に持ち直して いくと見込まれることから、海外投資家の株式投資の増加が期待され、インド株は底 堅く推移するとみられる。一方、ルピーについては、株式投資の増加が下支えする ものの、2013年に増加した在外インド人の外貨預金の満期が11月にかけて集中す ることや、米利上げ観測の再燃等のリスクもくすぶっていることから、しばらく上値が 重いとみている。 インド・SENSEX30と予想PERの推移 海外機関投資家の証券投資とインドルピー (月次:2009/1~2016/9) (10億ドル) 8 6 4 2 0 ▲2 ▲4 ▲6 ▲8 モディ政権発足 米利上げ ↓ルピー安 ↓資金流出 09 10 11 12 13 14 株式投資(左目盛) (ポイント) (1ドル=ルピー) 15 40 44 48 52 56 60 64 68 72 24000 25 20 12000 15 8000 10 4000 5 0 (年) 04 05 06 07 08 09 ルピー相場の推移 11 12 10 11 12 13 14 14 15 16 (年) 3.2 3.0 2.8 2.6 2.4 2.2 2.0 1.8 1.6 1.4 1.2 1.0 ルピー円(右目盛) 09 13 (1ルピー=円) (週次:2007/1/5~2016/10/4) ドル・インドルピー(左逆目盛) 08 10 (注)予想PERの04年以降の平均は16.2倍 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 ↑ルピー高 ↓ルピー安 07 30 16000 (注)投資はネット・ベース、インドルピー相場は9/30まで 出所:CEICデータよりみずほ証券作成 32 36 40 44 48 52 56 60 64 68 72 35 20000 インドルピー相場(右逆目盛) (1ドル=ルピー) 40 SENSEX30(左目盛) 予想PER(右目盛) 予想PER・平均(右目盛) 28000 16 債券投資(左目盛) (倍) (週次:2004/1/4~2016/9/30) 32000 15 16 (年) 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 3 2016/10/5 金融商品取引法に係る重要事項 グローバル・マクロ・トピックス ■国内株式のリスク リスク要因として株価変動リスクと発行者の信用リスクがあります。株価の下落や発行者の信用状況の悪化 等により、投資元本を割り込むことがあり、損失を被ることがあります。 ■国内株式の手数料等諸費用について ○国内株式の売買取引には、約定代金に対して最大 1.134%(税込み)、最低 2,700 円(税込み)の委託手数料を ご負担いただきます。ただし、売却時に限り、約定代金が 2,700 円未満の場合には、約定代金に 97.2%(税込 み)を乗じた金額を委託手数料としてご負担いただきます。 ○株式を募集等により購入する場合は、購入対価のみをお支払いいただきます。 ○保護預かり口座管理料は無料です。 ■外国株式のリスク ○外国株式投資にあたっては、株価変動リスク、発行者の信用リスク、為替変動リスク(平価切り下げ等も含 む)、国や地域の経済情勢等のカントリーリスクがあります。それぞれの状況悪化等により投資元本を割り込 むことがあり、損失を被ることがあります。 ○現地の税法、会計基準、証券取引に関連する法令諸規則の変更により、当該証券の価格に大きな影響を与 えることがあります。 ○各国の取引ルールの違いにより、取引開始前にご注文されても、始値で約定されない場合や、ご注文内容が 当該証券の高値、安値の範囲であっても約定されない場合があります。 ○外国株式において有償増資等が行われた場合は、外国証券取引口座約款の内容に基づき、原則権利を売 却してお客さまの口座に売却代金を支払うことになります。ただし、権利売却市場が存在しない場合や売却市 場があっても当該証券の流動性が低い場合等は、権利売却ができないことがあります。また、権利が発生し ても本邦投資家が取り扱いできないことがあります。 ○外国株式の銘柄(国内取引所上場銘柄および国内非上場公募銘柄等を除く)については、わが国の金融商 品取引法に基づいた発行者開示は行われていません。 ■外国株式の手数料等諸費用について ○外国委託取引 国内取次手数料と現地でかかる手数料および諸費用の両方が必要となります。現地でかかる手数料および 諸費用の額は金融商品取引所によって異なりますので、その金額をあらかじめ記載することはできません。 詳細は当社の担当者までお問い合わせください。国内取次手数料は、約定代金 30 万円超の場合、約定代金 に対して最大 1.08%+2,700 円(税込み)、約定代金 55,000 円超 30 万円以下の場合、一律 5,940 円(税込み)、 約定代金 55,000 円以下の場合、約定代金に対して一律 10.8%(税込み)の手数料をご負担いただきます。 ○国内店頭(仕切り)取引 お客さまの購入単価および売却単価を当社が提示します。単価には手数料相当額が含まれていますので別 途手数料および諸費用はかかりません。 ○国内委託取引 当社の国内株式手数料に準じます。約定代金に対して最大 1.134%(税込み)、最低 2,700 円(税込み)の委託 手数料をご負担いただきます。ただし、売却時に限り、約定代金が 2,700 円未満の場合には、約定代金に 97.2%(税込み)を乗じた金額を委託手数料としてご負担いただきます。 ○外国証券取引口座 外国証券取引口座を開設されていないお客さまは、外国証券取引口座の開設が必要となります。外国証券 取引口座管理料は無料です。 外貨建商品等の売買等にあたり、円貨と外貨を交換する際には、外国為替市場の動向をふまえて当社が決 定した為替レートによるものとします。 商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面や目論見書または お客さま向け資料等をよくお読みください。 商 号 等 : みずほ証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 94 号 加入協会 : 日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、 一般社団法人第二種金融商品取引業協会 広告審査番号 : MG5690-161005-19 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 4
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