10月 2016 No. 391 平成28年9月25日発行 目に見える形は消えても、 観た人の心に 何かが残る芝居を。 オリジナル台本による時代劇の公演や殺 陣を取り入れたイベントで活躍中の広島 こ まめ ぐみ の劇団《小 豆 組 》。その座付き作家兼演出 家の橋村基子さんに、創作活動について 伺いました。 ■時代劇にこだわる理由 高校で演劇を始め、大学在学中から広島の劇 団で活動してきました。就職して仕事を覚える のに必死だった 2 年間は休みましたが、時間を やりくりしながらずっと演劇を続けています。 演劇を通して表現したいのは“人間”。私にとっ て現代の言葉より時代劇の方が伝えやすいで す。というのも、今は情報があふれ、人との関係 が薄くてもある程度満足に暮らすことができ ますが、昔は人と関わらないと何も始まらない。 人とまっすぐ向き合い、死と隣り合わせだから こそ、人間性が濃く立ち上がってくるように思 います。人間味あふれる時代劇のセリフを通し て現代の生きづらさから解放され、楽しんでい る部分もあるかもしれません。 ■台本作りについて 橋村 基子さん(はしむら・もとこ) 脚本家・演出家・役者 劇団「小豆組」副代表。大学時代より広島で劇団活動を始める。時代劇ファンの朋友と旗揚げし た劇団「太陽」で時代劇の奥深さにハマる。舞台に立つ傍ら脚本を書き始め、後半は演出も担 当。演劇引力広島『水曜日の食卓』 (2004 年度)ではマキノノゾミ氏の演出助手を務めた。2007 年、劇団「小豆組」旗上げ。最近では殺陣・演舞等のイベント出演も多い。目指すのは、時代の波 間に生きる人々の想いが絡まり、ぶつかり、躍動する舞台。 舞台 劇団小豆組 第五回本公演「虹色維新」 脚本・演出:橋村基子 新しい文化がどっと押し寄せた明治時代初期。異国に開かれた港町 神戸の片 隅にある写真館に転がり込んだ 無口で笑わない娘 輝(てる)、そして元赤報隊 という男 健(たける)。日本中が生まれ変わろうと必死だった時代に、二人は 別のうねりをもがき進んでいた。幕末から約十年。二人は出会い、止まったま まだった時が再び動き始める…。 時/ 11 月 5 日(土)18:30 ~、6 日(日)13:30 ~ 所/青少年センター ホール ¥/一般 2,000 円(当日 2,500 円)、高校生以下 1,000 円(当日 1,500 円) 読者プレゼント 問/メール [email protected] 青少年センター TEL.082-228-0447 (P.13 に詳細) 作品の時代設定が決まるとその時代を描い た本を読んだりネットで情報を得たり、時に はゆかりの地に旅行するなど調べる日々が続 きます。その中で心にヒットしたこと、作品に 使えるかなと思ったことを手書きで創作ノー トに残します。そして溜まったメモを見返しな がら、物語の構成や登場人物を具体的なものに していきます。今回の公演は《小豆組》初の明治 時代の芝居で、調べ物をする期間を含めるとプ ロットができあがるまでに約 6 ヵ月かかって います。稽古に入る前に役者ごとにキーワード を割り振り、みんなで調べたことを発表し合う こともあります。そうやってセリフを覚えるだ けではなく、役者自身の力でその時代を自分の ものにしていきます。物語の一部は稽古に入っ てもまだ変わることもあり、いつも「いい意味 で観客を裏切る物語」を探りながら創っていま す。生の舞台はその 1 回だけ、繰り返し見られ ない儚いもの。終演とともに形あるものは全て 消えるけど、お客さんの心にだけは舞台で共有 した一期一会の瞬間が残っている。そんな作品 を創りたいです。
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