リバーロキサバンのワルファリンに対するネットクリニカルベネフィット

2016/10/4
ESC 2016レポート|抗血栓療法トライアルデータベース
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2016年8月27~31日,イタリア・ローマ
リバーロキサバンのワルファリンに対するネットクリニカルベネフィット
2016.10.4
ESC 2016取材班
NVAF患者に対し,リバーロキサバンはワルファリンを上回るネットクリニカルベネフィットを有する-8月28日,欧州心臓病
学会学術集会(ESC 2016)にて,Jonathan Piccini氏(Duke Clinical Research Institute,米国)が発表した。
●背景・目的
脳卒中リスクが中~高リスクの非弁膜症性心房細動(NVAF)患者を対象としたROCKET AFで,リバーロキサバンは脳卒
中および全身性塞栓症の発症抑制について,ワルファリンに対する非劣性を示した1)。ただし,抗凝固薬の評価にあたって
は,血栓塞栓イベント発症を抑制するベネフィット,ならびに出血性イベント(特に致死的あるいは不可逆的なイベント)を引
き起こすリスクとのバランスを考える必要がある。
本解析では,ROCKET AFにて試験薬を1回以上投与された患者14,236例(リバーロキサバン群7,131例,ワルファリン群
7,133群)について,リバーロキサバンのワルファリンに対するベネフィットとリスクの定量化を行った。
●方法
ROCKET AFで事前に規定した解析では,ネットクリニカルベネフィット(NCB)として,全死亡,脳卒中,心筋梗塞,全身性塞
栓症,重大な出血の複合について検討した。しかし,ISTH基準での重大な出血の中には,必ずしも不可逆的イベントにつ
ながらないものもある。そこで,NCBに対する事後解析として,全死亡,脳卒中,心筋梗塞,全身性塞栓症,致死的出血,
重要な臓器における出血の複合,ならびに,Singerらが提唱した血栓塞栓症と頭蓋内出血から算出する方法2)(血栓性塞
栓症の両試験薬間のリスク差+1.5×頭蓋内出血の両試験薬間のリスク差)を用いて評価した。
●患者背景
年齢中央値はリバーロキサバン群73歳,ワルファリン群73歳,女性はそれぞれ39.7%,39.7%で同程度であった。平均
CHADS2 スコア(3.5,3.5),脳卒中/一過性脳虚血発作/全身性塞栓症既往(54.9%,54.6%),ビタミンK拮抗薬投与歴
(62.3%,62.5%)も,すべて同程度であった。
●結果
1. 有効性・安全性主要評価項目
有効性に関して,全死亡,脳卒中,心筋梗塞,全身性塞栓症の複合の発症率は,リバーロキサバン群4.25%/年と,ワルフ
ァリン群5.12%/年にくらべ低値であった。個々の評価についても同様であった(全死亡:それぞれ1.87%/年,2.21%/年,
脳卒中:1.65%/年,1.96%/年,心筋梗塞:0.91%/年,1.12%/年,全身性塞栓症:0.04%/年,0.19%/年)。
安全性に関して,重大な出血はリバーロキサバン群3.60%/年,ワルファリン群3.45%/年であった。個々の評価項目につ
いて,致死的または重要な臓器における出血はリバーロキサバン群0.83%/年と,ワルファリン群1.25%/年にくらべ少なか
った。一方,輸血を要するまたはヘモグロビン量の低下が2g/dLを超える出血はリバーロキサバン群のほうが多かった(そ
れぞれ2.94%/年,2.45%/年)。
2. ネットクリニカルベネフィット(NCB)
http://att.ebm­library.jp/conferences/2016/esc/esc1604.html
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事前に規定した全死亡,脳卒中,心筋梗塞,全身性塞栓症,重大な出血の複合は,リバーロキサバン群7.424%/年と,ワ
ルファリン群7.779%/年にくらべ少なかった(両群間の率差:10,000患者/年あたり-35.5[95%CI -108 ~37.3])。また,事
後解析として規定した全死亡,脳卒中,心筋梗塞,全身性塞栓症,致死的出血,重要な臓器における出血の複合も,リバ
ーロキサバン群のほうが少なかった(それぞれ4.763%/年, 5.731%/年,率差は10,000患者/年あたり-96.8[95%CI -
157.0 ~-36.8])。
さらに,Singerらの方法によるNCBの率差は10,000患者/年あたり-65.2(95%CI -112.3 ~-17.8)であり,リバーロキサ
バン群のほうがワルファリン群よりすぐれていた。
●結論
脳卒中の中~高リスクNVAF患者に対するリバーロキサバンとワルファリンのNCBについて,事前に規定した解析では,リ
バーロキサバンはワルファリンにくらべ,10,000患者/年あたり35.5イベント少ないことが示された。さらに,全死亡,脳卒
中,心筋梗塞,全身性塞栓症,致死的出血および重要な臓器における出血の複合でみたNCBでは,リバーロキサバンで
10,000患者/年あたり96.8イベント,Shingerらの方法では65.2イベント少なかった。以上より,いずれの評価方法において
も,リバーロキサバンのワルファリンを上回るNCBが示された。
文献
1. Patel MR, et al.; the ROCKET AF Investigators. Rivaroxaban versus warfarin in nonvalvular atrial fibrillation. N Engl J
Med 2011; 365: 883-91.
2. Singer DE, The net clinical benefit of warfarin anticoagulation in atrial fibrillation. Ann Intern Med 2009; 151: 297-305.
抗血栓療法トライアルデータベース
http://att.ebm­library.jp/conferences/2016/esc/esc1604.html
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