小説は、読まれて、受け取る 人がいてこそ、完成する さまざまな社会現象を背景にしながら、大胆な発想のミステリーで、 ベストセラーを連発している宮部みゆき氏。作品の着想や執筆について の質問を起点に、ミステリーへの愛があふれる対談から、現在の社会情勢、 さらには、各種テクノロジーの利便性や問題点について、多岐にわたる さまざまな提言と展望が導き出された。 日本銀行総裁 黒田東彦 Haruhiko Kuroda Miyuki Miyabe NICHIGIN 2016 NO.47 創作の秘密 黒田 宮部さんにぜひお聞き したいと思っていたことがあ ります。 宮 部 さ ん は、 幅 広 く い ろ い ろな小説をお書きになってお り、 時 代 背 景 ひ と つ を と っ て も、 現代、 戦前、 江戸時代もある。 主人公も、 子供、 青年、 中年の人、 老 人 も い ま す し、 犬 や お 財 布 な ど、 あ り と あ ら ゆ る 主 人 公 が い て、 い ろ い ろ な 人 間 や 社 会の局面をスリリングに描い て い ま す。 そ う し た さ ま ざ ま な小説を創作するに当たって の ヒ ン ト を、 ど う い う と こ ろ か ら 得 ら れ て い る の か、 非 常 に関心があります。 宮部 黒田総裁が就任された 際 の 報 道 で、 時 代 小 説 や ミ ス テリーがお好きだという情報 が あ り、 私 の ま わ り で も、 総 裁にどんな作品を読んでいた だいているのだろうと話題に 私 は、 デ ビ ュ ー し て 二 九 年 で、 来 年 で 三 〇 年 に な り ま す なりました。 が、 一 貫 し て 単 調 な 生 活 を し 野瀬勝一 宮部みゆき 1960 年東京都生まれ。87 年『我らが隣人の犯罪』でオール讀 物推理小説新人賞を受賞し、小説家としてデビュー。89 年『魔 術はささやく』で日本推理サスペンス大賞、93 年『火車』で山 本周五郎賞、97 年『蒲生邸事件』で日本 SF 大賞、99 年『理由』 で直木賞を受賞する。2002 年『模倣犯』で司馬遼太郎賞、芸術 選奨文部科学大臣賞(文学部門)を受賞。 『ペテロの葬列』 『名 もなき毒』など、数々のベストセラーを生み出している。 1944 年福岡県生まれ。67 年東京大学法学部卒業後、 大蔵省 (現 財務省)に入省。71 年イギリス・オックスフォード大学経済 学修士号取得、75 年から 78 年まで IMF(国際通貨基金)に 出向、96 年大蔵省財政金融研究所長、97 年同国際金融局長、 98 年同国際局長、99 年財務官、2003 年内閣官房参与、同年 一橋大学大学院経済学研究科教授(兼務) 、05 年アジア開発 銀行総裁、13 年 3 月日本銀行総裁就任、同年 4 月同再任。 写真 小説家 16 注1/豊田商事事件 豊田商事による組織的詐欺 事件。金・地金を販売するが、 顧客に現物を渡さない現物ま がい商法を手口とした。高齢 者を中心に数万人が被害に遭 い、被害総額は二千億円近く と見積もられる。 の 話 を 初 め て 読 ん だ と き、 す に出ているキャッシュカード う だ い ぶ 前 の 短 編 集 で、 冒 頭 例えば『返事はいらない』とい 黒田 執筆時には、取材はされ るのでしょうか。というのは、 かけになっていると思います。 ようなことが、何かしらのきっ ふうになったら嫌だなと思う いなと思ったことやこういう しろいなと思ったこと、逆に怖 こと、日常の中で私自身がおも 創作のヒントになるのは、本 で読んだこと、ニュースで見た 視主義では何も書けません。 て い ま す。 で す か ら、 経 験 重 の で、 変 化 の な い 生 活 を 送 っ す し、 あ ま り 旅 行 も し ま せ ん た話や現実とかけ離れていて、 か し、 実 際 に 書 い た の は 伺 っ 営 者 に 会 い に 行 き ま し た。 し 思 っ た と き は、 そ の 会 社 の 運 さっている方の話を書こうと 報をチェックするお仕事をな ルというネット上の危険な情 きます。去年、ネットパトロー けないというときは取材に行 法 律 的 な こ と と か、 こ れ だ けは押さえておかなければい は少ないです。 そ う い う ケ ー ス は、 私 の 場 合 バイスしてもらえます。でも、 方に聞くのが一番ですとアド ん に お 願 い す る と、 今 は こ の と に、 版 元 の 担 当 の 編 集 者 さ と い う 場 合 は、 あ り が た い こ 現場で働いていらっしゃる 方にお会いしたほうがいいな あ り、 い ろ い ろ な 書 類 が 置 か 件で被害に遭った方の窓口が た が、 東 京 地 裁 に も、 あ の 事 の事件の主な舞台は関西でし 度 か 裁 判 所 へ 行 き ま し た。 あ し て い な か っ た の で す が、 何 て い ま し た。 専 門 的 な こ と は ろ、 新 宿 の 法 律 事 務 所 で 働 い 私は、豊田商事事件が起きたこ ばらしい本を参考にしました。 管財人の方がまとめた大変す 宮部 『ペテロの葬列』は、豊 田 商 事 事 件( 注 1) に つ い て 話でもないと感じました。 定の専門家に聞いて間に合う 会 現 象 を 扱 う 話 に な る と、 特 た。 こ の よ う な 広 い 意 味 の 社 がいたとかいうような話でし かも、その背後にどういう人々 ミ 講 み た い な 話 ま で あ り、 し な も の を 売 る 話、 そ し て ネ ズ 社会現象を扱っていますが、特 その点、宮部さんの作品は、 クレジットカードの破綻とか、 れていく形が多く見られます。 で一般の人が事件に巻き込ま があって、そうした背景のもと といった巨悪による陰謀史観 占領軍、悪徳政治家、悪徳官僚 清張の社会派のミステリーは、 しろい『点と線』もありますが、 ま す。 推 理 小 説 と し て も お も た が、 最 近 は 縁 遠 く な っ て い 黒 田 社 会 現 象 を 背 景 に し た ミステリーというと、学生時代 が執筆の際に役に立ちました。 に置いて読んでいました。それ ている本が出ると買って手元 があったので、事件を取り扱っ く、 純 粋 に こ の 事 件 に は 興 味 う気持ちがあったわけではな 事 じ ゃ な い し、 自 分 だ っ て こ く 見 て い ま し た。 こ れ は 他 人 れ て い て、 そ れ を 大 変 興 味 深 ま う か も し れ な い し、 自 分 も せ ん。 誰 も が ひ っ か か っ て し るという感じの話ではありま 定の巨悪が人を裏で操ってい て い ま す。 身 軽 な ひ と り 身 で ごいことを知っておられるな 先方も驚いたと思います。 ういうことにひっかかっちゃ 悪いほうに回ってしまうかも に松本清張の作品を読みまし と思ったのです。 うことがあるかもしれないと しれないという……。 宮部 昔から私は、何かを書こ う と い う と き に は、 資 料 に な 思ったので、ずっと記憶に残っ セ キ ュ リ テ ィ ー で あ れ ば、 セ 店に探しに行きます。例えば、 り そ う な 本 を ま ず、 大 き な 書 黒田 ごく最近読んだ『ペテロ の葬列』はすごく複雑な話で ていたのです。 ミステリー作家の ネタが豊富な時代は、 本当は困る時代 キュリティーというコーナー す よ ね。 バ ブ ル 期 の い ろ い ろ 当時、私は作家になろうとい に 行 っ て 探 し ま す。 そ う い う な 社 会 現 象 の 話 か ら、 怪 し げ 宮部 自分もうっかりすると 人をだましてしまうかもしれ 参考資料で大体用が足ります。 NICHIGIN 2016 NO.47 17 注2/サイコパス 反社会的人格の一種を意味 する心理学用語。 注3/岡本綺堂(一八七二~ 一九三九) 新歌舞伎を代表する劇作 家。 『 維 新 前 後 』 や『 修 禅 寺 物語』によって知られる。そ のスタイルから「綺堂物」と いった言葉も生まれた。新聞 の長編小説、探偵もの、怪奇 スリラーもの等数多くを執 筆。シャーロック・ホームズ の影響を受けて執筆した岡引 捕り物小説『半七捕物帳』は、 シリーズ六九作品となる人気 作。本誌二〇一六年夏号の 「黒 田総裁 特別寄稿(私の出会っ た文豪) 」参照。 な ら な い 時 代 で も あ り、 闘 う 全てを立て直していかなきゃ を、近い距離で背負っていて、 になっていたという暗い過去 中はマスコミが大政翼賛の側 暴き立てる力はなかった。戦時 マスコミもいろいろなものを はまだ力がありませんでした。 年 代 は、 一 般 庶 民、 市 井 の 人 築き上げていかれた昭和三十 ティックな清張ミステリーを を 書 き 始 め て、 ジ ャ ー ナ リ ス たんです。清張さんが推理小説 本清張さんの作品を読み始め 宮 部 私 は 昭 和 三 十 五 年 生 ま れで、高校一年生ぐらいから松 と思っています。 うでないところがすばらしい か し、 宮 部 さ ん の 作 品 は、 そ く な る ケ ー ス が あ り ま す。 し 小 説 も 古 び て し ま い、 読 め な と な っ た 後、 そ れ を 取 り 扱 う 会現象が変化して過去のもの ど ん 変 わ っ て い ま す。 そ の 社 黒 田 そ う で す。 社 会 現 象 自 体 は、 二 〇 年、 三 〇 年 で ど ん それで、何かの拍子にちょっと が、大半の人は中間ですよね。 な感じの人もいるのでしょう 方でサイコパス(注2)みたい 黒田 いろいろな人がいて、一 方で底抜けの善人がいるし、他 のですが。 本 当 は、 そ ん な 時 代 で は 困 る はネタを見つけやすいのです。 ミステリー作家の私にとって というのが素材になるのです。 ぜそんなことをするのだろう じ ゃ な い の で、 ど ん な 人 が な に針が刺してあるのは他人事 装とかスーパーのメロンパン るんです。私にとって、食品偽 それがミステリーの題材にな でいることを身近に感じます。 そうした不具合を抱えてい て、 い ろ い ろ な も の が き し ん ではないかと思います。 出 て く る と か、 そ う い う 時 代 反対側でものすごく困る人が そ こ を 直 し ち ゃ う と、 今 度 は 困る人がたくさんいる、でも、 ここがこうなってくれないと 今 は な い で す よ ね。 悪 と い う よ り も、 不 具 合 と い う か、 ん で す。 も う 学 部 で は だ め で 黒 田 も ち ろ ん ア メ リ カ の 大 学は、どんどん専門化している ね。 宮 部 見 直 さ れ て い る ん で す 最近また言われているんです。 カ で も、 一 般 教 養 の 必 要 性 が き ま す。 し か し、 実 は ア メ リ 拡大されるという話をよく聞 黒田 最近、大学改革という流 れで、文系が圧迫されて理系が ものだと思います。 で す。 幅 広 い 教 養 は、 大 切 な す が、 そ の 点 で も 憧 れ の 作 家 ん作品も素晴らしく面白いで 一 流 の 教 養 人 で し た。 も ち ろ 戯 曲 を 書 く 人 で も あ り、 当 代 も 尊 敬 し て い ま す。 こ の 方 は い る 岡 本 綺 堂( 注 3) を、 私 その中でも総裁もあげられて 的なファンライターなんです。 れから書き始めたという典型 き で 好 き で 物 語 を 読 ん で、 そ 宮 部 怖 が っ て い た だ け る な んて光栄です。私は、自分が好 も怖いですね。 し て 宮 部 さ ん の 小 説 は、 と て 面 で は 非 常 に 印 象 も 深 く、 そ い る わ け で す よ ね。 そ う い う わっていると、その魔法によっ すが、それを子供のころから味 法というのがあると思います。 も ら わ な い と、 か か ら な い 魔 で す が、 丸 々 一 冊 読 み 通 し て 思います。電子書籍でもいいの 変わった。流通の問題もあると 宮部 ただ、決して読まれてい ないわけではなく、読まれ方が 黒 田 最 近 は、 ネ ッ ト で 情 報 が 得 ら れ る た め、 紙 の 本 が 売 うことを宣伝したいです(笑) 。 偉 く な れ な い の で す よ、 と い り ま せ ん。 小 説 を 読 ま な い と れて無駄なものでは決してあ すね。小説は、時間ばかりとら 広く若い方に知ってほしいで さっているんだということを 宮 部 お 忙 し い 総 裁 が こ ん な にミステリーを読んでくだ とおりだと思います。 が 言 わ れ て い ま す。 私 も そ の う な 一 般 教 養、 文 科 系 の 教 養 た だ、 他 方 で、 一 九 世 紀 的 と い う か、 二 〇 世 紀 前 半 の よ 大学院が必須という感じです。 ないみたいな……。 べき巨悪があったのだろうと 悪いほうに寄ったような人が その魔法自体は小さいもので れないという話も耳にします。 が重要ではないかということ 思います。 18 NICHIGIN 2016 NO.47 注4/ニューヨーク連銀 アメリカの中央銀行である 「連邦準備制度」を構成して いる連邦銀行のひとつ。 注5/SWIFT 外国中銀を含む金融機関の 金融取引に関する電文を受発 信するための国際的なネット ワークシステムを提供する組 織。また、システム自体もS WIFTと呼ぶ。約二〇〇カ 国の一万以上のユーザーを結 んでいる。 ピューターシステムで処理さ 日銀ネットという巨大なコン 決 済 さ れ ま す。 こ の 決 済 は、 決 済 は、 最 終 的 に 日 銀 の 中 で 間 で 決 済 が 行 わ れ、 銀 行 間 の ろ い ろ な 企 業 の 決 済 は、 銀 行 政 府 の 銀 行 で も あ り ま す。 い しており、銀行の銀行であり、 真 ん 中 に い ま す。 銀 行 券 を 出 黒 田 話 は 変 わ り ま す が、 日 本銀行は金融システム全体の お話しする機会があると申し ん だ、 と 特 に 若 い 読 者 の 方 と た魔法が物を言うことがある ら少しずつかけてもらってい ら 本 を 読 ん で き た、 そ の 本 か と き な ん か に、 子 供 の こ ろ か しいときとかうまくいかない に な っ て、 つ ら い と き と か 苦 て く る ん じ ゃ な い か と。 大 人 て、 使 え る 魔 法 が ど こ か に 出 指示を受け付けない仕組みは ニ ュ ー ヨ ー ク 連 銀 は、 不 正 な 散 霧 消 し て し ま っ た の で す。 まな銀行口座に送金されて雲 ま い、 さ ら に そ こ か ら さ ま ざ リピンの銀行に送金されてし 八一〇〇万ドルのお金がフィ ヨ ー ク 連 銀 に あ る 口 座 か ら、 のお金を預かっているニュー が、バングラデシュの中央銀行 詳細は明らかではないのです 金 さ れ た 事 件 が 起 き ま し た。 銀 行 の 預 金 が、 不 正 に 海 外 送 あったバングラデシュの中央 ニ ュ ー ヨ ー ク 連 銀( 注 4) に 日本のメディアではそれほ ど報道されていないのですが、 をすると全世界に波及します。 なっています。他方、悪いこと 経済のグローバル化の先兵に な取引を全世界と行えるなど、 発 展 で、 一 瞬 に し て い ろ い ろ 金 融 の 世 界 で は、 情 報 技 術 の 黒 田 最 近、 テ ク ノ ロ ジ ー が す ご い 勢 い で 進 歩 し て お り、 実感がないくらいの額ですね。 このアジア開発銀行はアジア 際機関の総裁をしていました。 で、 ア ジ ア 開 発 銀 行 と い う 国 私は、二〇〇五年から一三年ま の島々で発達しているんです。 ばアフガニスタンとか太平洋 ちなみに、モバイルバンキン グは、日本よりもむしろ、例え けません。 の で、 非 常 に 警 戒 し な い と い うに技術的能力を高めている いことをする人もまた同じよ と 並 行 し、 ハ ッ カ ー な ど の 悪 すごく便利になっていること 進歩でさまざまなことがもの し か し、 考 え て み る と、 技 術 てさらに安全になっています。 え に、 最 近、 新 日 銀 ネ ッ ト と ら入られたこともなかったう トはものすごく頑健で、外部か 宮部 すごい事件ですね。 黒田 日本ではそういう事件 は起こっていません。日銀ネッ あったために起きたのです。 由 し て、 真 正 な 形 で 指 示 さ れ ルバンキングが行われました。 らに携帯電話を使ったモバイ 用できるようになりました。さ 百万人もの人が携帯電話を利 れ は 非 常 に う ま く い っ て、 何 社にも投融資をしたんです。そ 情報テクノロジーの発達と グローバル化の落とし穴 いう新しいシステムに更新し アフガニスタンの携帯電話会 幅広いジャンルにわたる宮部氏の作品の数々 れ て い ま す。 一 日 に 一 二 〇 兆 あ り ま し た。 し か し、 通 常 の の開発途上国を支援しており、 るという極めて巧妙な手口で とか一三〇兆円の取引が行わ 世界的な通信ネットワークで 上げるようにしています。 れているのです。 あ る S W I F T( 注 5) を 経 宮 部 あ そ こ は 内 戦 も あ る の で、 銀 行 の 支 店 を 建 て る と い 宮 部 あ ま り に も 大 金 で、 現 NICHIGIN 2016 NO.47 19 てしまったことがありました。 乱して書きかけの原稿を消し て い る 猫 が 急 病 に な り、 取 り ん(笑) 。ただ、一度だけ、飼っ ラッシュしたことがありませ 生が理解して小中学生に授業 先 生 方 に 説 明 し て 次 い で、 先 に 講 師 に な っ て も ら い、 ま ず を知っている金融に詳しい人 金 融 商 品 と か、 そ う い う こ と の 中 で 話 し て い く。 そ れ が 進 い本を探すのもすごく便利で に 便 利 で す ね。 ネ ッ ト だ と 古 ブ レ ッ ト を 導 入 し た ら、 確 か ん で し た が、 今 年 に な っ て タ ネットでは何もやっていませ 宮部 私は、モバイルバンキン グ は や っ て い ま せ ん。 今 ま で 非常に怖い面もあります。 わ け で す。 そ う い う 意 味 で は かの国から入ってきてやれる な く、 イ ン タ ー ネ ッ ト で ど こ を 一 挙 に、 し か も 一 国 内 で は が 悪 用 さ れ る と、 巨 額 の 損 失 こ う し た 技 術 進 歩 は、 す ば ら し い の で す が、 他 方 で そ れ ナは立てられます。 ク ア ッ プ が と れ ま す し、 私 の います。そうすると二重にバッ タで出版社に送ってもらって 務所に渡して、事務所からデー モリースティックに入れて事 を、 今 で も フ ロ ッ ピ ー と か メ 宮部 私のやり方は中途半端 で、パソコンでつくったデータ も便利だと思います。 と 比 較 し て パ ソ コ ン は、 と て 黒 田 私 も 機 械 の こ と は よ く わ か り ま せ ん。 た だ、 手 書 き が遠くなるような気がします。 な い の だ ろ う な と 思 う と、 気 こると、きっとスムーズにいか テムは誰がつくったんだろう、 懸 命 や っ て お り、 各 都 道 府 県 銀行としても金融教育を一生 黒 田 今、 金 融 広 報 中 央 委 員 会 と い う 組 織 を 通 じ て、 日 本 だけどと。 みとかを教えると随分違うん 済」という項目で金利の仕組 小学校の社会科で、せめて「経 ことをおっしゃっていました。 が、 そ の 当 時 か ら ず っ と そ の で、 弁 護 士 の 宇 都 宮 健 児 先 生 いて書くために取材したころ ちょうどクレジット破産につ にと申し上げました。あれは、 校で金融教育をすればいいの 宮 部 二 二 年 前 に こ ち ら に お 招 き い た だ い た と き は、 小 学 宮 部 そ れ こ そ、 金 融 の 何 た るかを大人も全く何も知らな かったわけです。 そもそも金融という概念がな 一方、ロシアや東欧等の長年社 融に親しんでいると思います。 続 い て い る と こ ろ は、 ま だ 金 黒田 ただ、日米あるいは西欧 といった資本主義経済が長く れよあれよという感じでした。 マ ン シ ョ ッ ク の と き に は、 あ 思っていました。だから、リー のだから大丈夫なんだろうと か り ま せ ん。 銀 行 の 人 が 言 う 言 わ れ て も、 い ま だ に よ く わ 宮 部 私 た ち 大 人 も 学 ぶ 機 会 が な い で す か ら、 投 資 信 託 と 会主義体制であったところは、 20 NICHIGIN 2016 NO.47 うわけにいかないのですね。 黒 田 そ の 通 り で す。 モ バ イ ルバンキングは、携帯のステー ションだけあれば対応できま す。 太 平 洋 の 島 々 も、 す べ て の島に銀行の支店をつくるの す。 ク レ ジ ッ ト カ ー ド を 登 録 パソコンは完全に独立したま の 教 育 委 員 会、 学 校 の 先 生 方 い と こ ろ に、 リ ー マ ン シ ョ ッ ん で い ま し て、 い い こ と だ と し て お け ば、 翌 日 に は 注 文 し ま で い ら れ ま す。 パ ソ コ ン に にこれが重要だということを クのような問題が発生してし は 無 理 で す が、 携 帯 の ア ン テ た物が運ばれてきます。でも、 「おまえはワープロだよ」と言 認識していただいています。 まったわけですね。 思いますね。 一体何人の人が介在してこれ い 聞 か せ て、 ワ ー プ ロ ソ フ ト 適 切 な 教 材 と か、 そ れ か ら グローバル化を前提とした 金融教育 ができるようにしてくれたの し か 動 か し て い な い の で、 ク どこかで何か一つ間違いが起 だ ろ う、 そ も そ も 最 初 の シ ス 宮部氏の愛猫 に、 財 務 大 臣 と 中 央 銀 行 総 裁 が、 モ ス ク ワ で あ っ た と き 主要二〇カ国の財務大臣と 中 央 銀 行 総 裁 の 会 議 で あ るG 黒 田 だ か ら、 旧 社 会 主 義 国 では金融教育に熱心なんです。 トがあふれる国になるんじゃ くのであれば、どんどんロボッ 少子高齢化で人口が減ってい だそうです。だから、これから トに対して抵抗がない国なの 進国では珍しいくらい、ロボッ 大な方のおかげでしょうが、先 日本は、手塚治虫さんという偉 人がいないと言われています。 ころで人手が必要なのに担う 宮 部 日 本 は 少 子 高 齢 化 が 進 ん で、 介 護 と か さ ま ざ ま な と 部結びついているんですよね。 れ ど も、 世 界 は、 経 済 で は 全 宮部 怖いことに、生活習慣、 言葉、文化、風習、全部違うけ い目に遭ったのだと思います。 明 し て い ま し た か ら、 相 当 痛 命やっているかというのを説 に金融教育をロシアで一生懸 と 文 部 科 学 大 臣 で す ね。 い か 宮 部 人 の 情 緒 に 訴 え か け る ようなところは人の手でやら ています。 められるサービス業だと思っ 人との何らかのふれあいが求 考 え る と、 そ の 多 く は、 人 と 人間が、ロボットで代替でき ないどんな仕事ができるのか 物への需要が出てきます。 の中でまた新しいサービスや て 購 買 力 が 出 て、 そ の 購 買 力 すから、必ず誰かの所得になっ り、 そ の 分、 G D P も 増 え ま 確 か に、 い ろ い ろ な 労 働 を 代 替 し ま す が、 生 産 性 が 上 が 論が欧米では多くみられます。 るのではないかと懸念する議 の で、 多 く の 労 働 者 が 失 業 す は人の労働を代替してしまう で、AIとかロボットというの パも増えてきていますが、他方 でこそアメリカとかヨーロッ 本に集積していたわけです。今 ボットというのも圧倒的に日 黒 田 お っ し ゃ る と お り だ と 思いますし、そもそも産業用ロ と も、 ミ ス テ リ ー や 時 代 小 説 宮部 ありがとうございます。 お 忙 し い と 思 い ま す が、 今 後 ご活躍も楽しみにしています。 無限大です。宮部さんの今後の 受け手を含めて組み合わせが プロット、ニュアンスさらには す類のものと異なり、小説は、 黒田 私もそう思います。ある 条件をクリアすることを目指 ろうなとは思います。 ンピューターには無理なんだ の を つ く り 出 す の は、 ま だ コ 変 わ る ん で す ね。 そ う い う も 今 は こ う だ わ と か、 味 わ い が 若いころ読んだものを今読む 変わると違う読み方をしたり、 ん で も お も し ろ い し、 状 況 が が あ り ま す が、 そ れ は 何 回 読 何度もくり返し読んでいる本 てもらうことがあったり、私も ていない読み方をして感動し 思います。小説も、作者が思っ 人によって完成するものだと 宮部 結局、小説を含めたさま ざ ま な 芸 術 作 品 は、 受 け 取 る が 出 て き ま し た。 日 本 で い う の ほ か に、 ロ シ ア の 文 部 大 臣 な い か と 思 う ん で す。 私 は S ないといけないですね。 願いいたします。 と、 昔 は こ う 思 っ た け れ ど も F が 好 き な の で、 そ れ は そ れ の世界をどうぞごひいきにお AIにできない 人間的営みとしての文学 でちょっと楽しみだなと思っ す。 黒 田 小 説 は、 ま さ に そ う で たりしています。 NICHIGIN 2016 NO.47 21 20
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