医療事故情報収集等事業 第46回報告書

医療事故情報収集等事業
第46回 報 告 書
(2016年4月 ∼6月 )
2016年 9月 29日
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本事業の内容(報告書、事例等)は、以下のホームページから閲覧・検索していただけます。
(公財)日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業トップページ:http://www.med-safe.jp/
○ 報 告 書 ・ 年 報 :http://www.med-safe.jp/contents/report/index.html
○ 医 療 安 全 情 報 :http://www.med-safe.jp/contents/info/index.html
○ 公開データ検索:http://www.med-safe.jp/mpsearch/SearchReport.action
目次
はじめに …………………………………………………………………………………… 1
医療事故情報収集等事業について ∼第46回報告書の内容を中心に∼ ………… 3
I 医療事故情報収集等事業の概要……………………………… 43
1 経緯 ………………………………………………………………………… 43
【1】ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業の経緯 ………………………………43
【2】医療事故情報収集・分析・提供事業の経緯 ………………………………………43
【3】本財団における事業の経緯 …………………………………………………………44
2 医療事故情報収集・分析・提供事業の概要 …………………………… 45
【1】事業の目的 ……………………………………………………………………………45
【2】医療事故情報の収集 …………………………………………………………………45
【3】医療事故情報の分析・提供 …………………………………………………………46
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業の概要 …………………… 47
【1】事業の目的 ……………………………………………………………………………47
【2】ヒヤリ・ハット事例の収集 …………………………………………………………47
【3】ヒヤリ・ハット事例の分析・提供 …………………………………………………49
Ⅱ 報告の現況 …………………………………………………… 50
1 医療事故情報収集等事業の現況 ………………………………………… 50
2 医療事故情報収集・分析・提供事業 …………………………………… 51
【1】登録医療機関 …………………………………………………………………………51
【2】報告件数 ………………………………………………………………………………53
【3】報告義務対象医療機関からの報告の内容 …………………………………………57
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業 …………………………… 78
【1】登録医療機関 …………………………………………………………………………78
【2】発生件数情報の報告件数 ……………………………………………………………80
【3】事例情報の報告件数 …………………………………………………………………85
【4】事例情報の報告の内容 ………………………………………………………………89
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況 ……………………………… 106
1 概況 ………………………………………………………………………… 106
【1】分析対象とするテーマの選定状況 ……………………………………………… 106
【2】分析対象とする情報 ……………………………………………………………… 106
【3】分析体制 …………………………………………………………………………… 107
【4】追加情報の収集 …………………………………………………………………… 107
2 個別のテーマの検討状況 ………………………………………………… 108
【1】腫瘍用薬に関連した事例 ②「レジメン登録、治療計画、処方」の事例 … 108
【2】持参薬と院内で処方した薬剤の重複投与に関連した事例 ……………………… 138
【3】永久気管孔にフィルムドレッシング材を貼付した事例 ………………………… 149
3 再発・類似事例の発生状況 ……………………………………………… 157
【1】概況 ………………………………………………………………………………… 157
「アレルギーのある食物の提供」
(医療安全情報 No. 69)について ………… 160
【2】
「放射線検査での患者取り違え」
(医療安全情報 No. 73)について ………… 173
【3】
参考 医療安全情報の提供 …………………………………… 185
【1】目的 ………………………………………………………………………………… 185
【2】対象医療機関 ……………………………………………………………………… 185
【3】提供の方法 ………………………………………………………………………… 185
【4】医療安全情報 ……………………………………………………………………… 185
はじめに
公益財団法人日本医療機能評価機構
理事長 河北 博文
公益財団法人日本医療機能評価機構は、国民の医療に対する信頼の確保および医療の質の向上を図
ることを目的として、病院機能評価事業や医療事故情報収集等事業など様々な事業を運営し、医療の
質をできるだけ高く保ち、継続的に安心・安全な医療を提供するために、これらの事業に取り組んで
おります。
医療事故情報収集等事業では、収集した医療事故情報やヒヤリ・ハット事例の集計、分析結果を定
期的な報告書や年報として取りまとめるとともに、医療安全情報を作成し、医療従事者、国民、行政
機関等広く社会に対して情報提供を行っております。その上で、医療安全情報については医療安全の
直接の担い手である医療機関により確実に情報提供が行えるよう、希望する病院にファックスで直接
提供する事業を行っております。医療安全情報は2016年2月から全国の約7割の病院に提供する
まで拡大しています。
本事業は2014年9月30日に5年毎に必要とされている医療法施行規則に基づく登録分析機関
として3期目の登録を更新いたしました。この間、医療安全の推進のため、平素より本事業において
医療事故情報やヒヤリ・ハット事例等の情報の提供にご協力いただいております医療機関の皆様や、
関係者の皆様に深く感謝申し上げます。
本事業における報告書の公表は今回が46回目になります。今回は2016年4月から6月ま
でにご報告いただいた医療事故情報とヒヤリ・ハット事例の報告をとりまとめたものです。また、
本報告書に掲載しております医療安全情報はこれまで118回の情報提供を行ってきたもののうち、
2016年4月から6月に提供した No. 113から No. 115を掲載しております。
これまでに公表した報告書に対しては、医療事故情報の件数や内容に関するお問い合わせや報道な
ど多くの反響があり、医療安全の推進や医療事故の防止に関する社会的関心が依然として高いことを
実感しております。
今後とも、本事業や病院機能評価事業などの様々な事業を通じて、国民の医療に対する信頼の確保
と、日本の医療の質の向上に尽力して参りたいと考えておりますので、ご理解とご協力を賜りますよ
う宜しくお願い申し上げます。
-1-
-2-
医療事故情報収集等事業について
∼第46回報告書の内容を中心に∼
公益財団法人日本医療機能評価機構
執行理事 後 信 医療事故防止事業部長 坂口 美佐
1 はじめに
平素より本事業の運営にご理解とご協力をいただき、深く感謝申し上げます。
さて今回は、2016年4月から6月までにご報告いただいた医療事故情報とヒヤリ・ハット事例
をとりまとめた第46回報告書を公表いたします。報告書の内容をご参照いただき、安全管理を担当
する方を中心に、それぞれの医療機関の実情に即した有用な部分を院内で周知していただければ幸い
に存じます。
また、医療を受ける立場でこの報告書や本事業のホームページをご覧の皆様におかれましては、
医療事故情報やヒヤリ・ハット事例の現状、そして医療機関や医療界が再発防止に向けて取り組んで
いる姿を、ご理解いただければ幸いに存じます。
さらに、このたびの公表にあたり、医療事故情報収集等事業や関連する事業の現況について、以下
にご紹介させていただきます。
2 第46回報告書について
1)参加登録医療機関数
本事業に参加している医療機関数は、2016年6月30日現在で1,443となり、前回の
報告書に記した数より少し増加しました。参加登録医療機関数の内訳を示す図表を50頁に掲載し、
医療事故情報を報告している医療機関数、ヒヤリ・ハット事例を報告している医療機関数、重複を
除いた事業参加医療機関数などをお示ししています。また、この図表の内容は、本事業の参加状況
を示す基本的な内容であることから、ホームページの「参加登録医療機関一覧」において随時情報
を更新しています(http://www.med-safe.jp/contents/register/index.html)
。
2)報告件数など
この報告書が対象としている2016年4月1日から6月30日の間に、896件の医療事故情
報をご報告いただきました。内訳は、報告義務対象医療機関から813件、参加登録申請医療機関、
つまり任意で参加していただいている医療機関から83件でした。この4月∼6月の報告件数を単
純に1年分に換算すれば、昨年の報告件数3,654件とほぼ同様の状況となります。毎年の報告
件数は、前年とほぼ同じか前年を上回る数の報告が続いており、医療事故を報告することが定着し
てきているものと考えています。そして、将来、報告範囲に該当する事例が十分報告されるように
なった段階で、特定の種類の医療事故がいくつも減少して行くことが観察されるとすれば、それは
望ましいことと考えています。そのためにも有用な事例の報告、分析、情報提供という改善サイク
ルを回し続けることが重要です。医療事故の発生予防や再発防止に資する事例のご報告をいただく
-3-
ことにより、わが国の医療安全の推進のために重要な情報が得られ、広く医療機関に共有すること
が可能になります。医療を取り巻く環境が厳しくなっているという指摘が多くなされる中で、医療
事故情報やヒヤリ・ハット事例をご報告くださる医療機関の皆様のご協力に心より感謝申し上げま
す。今後とも、本報告書中の、
「Ⅰ−2 医療事故情報収集・分析・提供事業の概要【2】医療事
故情報の収集」に掲載している報告範囲(45∼46頁)をいま一度ご確認いただき、該当事例を
ご報告いただければ幸いに存じます。報告範囲につきましてはホームページに掲載している「事業
の内容と参加方法」(http://www.med-safe.jp/pdf/business_pamphlet_2016_01.pdf)や事業開始
時のお知らせ(http://www.med-safe.jp/pdf/2004.09.21_1.pdf)にも記載しています。
また、全ての事業参加医療機関にとって、報告範囲に該当する事例の発生を把握すること、事実
を確認して整理すること、そしてその内容をまとめて報告することは、決して容易なことではない
と考えています。しかし、本事業に参加し、質の高い報告を継続的に行うことで、事実を把握する
能力や報告する能力が高まることや、医療機関というひとつの組織として医療安全を重視した方針
を決定するための有用な資料とできることなどが期待できます。これらは医療機関における医療安
全推進だけでなく、わが国の医療安全の底上げにつながるものと考えられますので、何卒よろしく
お願いいたします。
3)任意参加医療機関からの報告件数∼任意参加医療機関からの報告を期待しています∼
任意参加の医療機関から報告される医療事故情報の件数については、報告義務が課せられている
医療機関の報告件数に比べ随分少ない現状が事業開始後長く続いたあと、2010年は521件と、
それまでの約3倍程度に増加しました。しかし、2011年以降の報告件数は300件前後になり、
2014年も283件にとどまり、2015年も280件となっています。一方で、任意参加の医
療機関数が増加していることは、本事業へのご協力の意思のあらわれと考えられ、大変ありがたく
思っております。そして、
「参加」の段階の次は、
「報告」の段階です。報告件数をみると、私ども
の取り組みを含め、この「報告」の段階の取り組みがまだ不十分であると考えられます。
任意参加の医療機関からの報告件数が、報告義務対象医療機関からのそれよりも随分少ないこと
は、報告に対する意識の違いを示しているとも考えられ、本事業の運営委員会でも指摘されている
ところです。本事業として講演の機会をいただいた際には、この点についてご説明し、出席者の皆
様にご協力をお願いしています。同時に、医療事故情報を外部報告することについて、医療機関や
医療界の中で十分な動機が成熟してこそ、件数だけでなく質の高い内容の報告がなされるという考
え方も併せてご説明しています。つまり、報告件数が少ないことを問題視するあまり、国がいたず
らに報告義務を拡大したり、罰則を課したりする方法で達成されるものではないと考えています。
医療事故情報の報告件数は、医療界が医療安全に積極的に取り組んでいる姿勢が評価されるひと
つの目安になると思われます。報告義務が課せられている医療機関と任意で参加されている医療機
関の間に報告件数の大きな差があることは、必ずしも日常の診療現場の医療安全の努力の実態を反
映していないのではないかと考えられます。任意で参加されている医療機関の皆様におかれまして
は、報告範囲に該当する事例の適切なご報告に引き続きご協力くださいますようお願いいたします。
-4-
表1 医療事故情報の報告件数
年
2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015
報告義務
報告件数
任意参加
1,296
1,266
1,440
1,895
2,182
2,483
2,535
2,708
2,911
3,374
151
155
179
123
169
521
316
347
341
283
280
1,265
1,451
1,445
1,563
2,064
2,703
2,799
2,882
3,049
3,194
3,654
報告義務
272
273
273
272
273
272
273
273
274
275
275
任意参加
283
300
285
272
427
578
609
653
691
718
743
合計
555
573
558
544
700
850
882
926
965
993
1,018
合計
医療機関数
1,114
4)報告の現況
本報告書の「Ⅱ 報告の現況」に示している多くの図表の数値は、毎回大きな変化は見られない
傾向にあります。本事業は、変化がある場合もない場合も医療事故やヒヤリ・ハットの現状を社会
に継続的に示し、医療の透明性向上に寄与していくことも役割と考えており、集計結果を掲載して
います。
また、「当事者の直前1週間の勤務時間」「発生場所」「事故調査委員会設置の有無」「事故の概要
×事故の程度」など、報告書に掲載していない図表を、ホームページ(http://www.med-safe.jp/
contents/report/html/StatisticsMenu.html)に掲載していますので、ご参照ください。
図1 集計表のページ
「報告書・年報」のページの
「集計表(Web 公開分)」をクリック
報告書の集計表(2016年分)
報告書の集計表(2015年分)
年報の集計表(2015年分)
報告書の集計表(2014年分)
5)個別のテーマ(108∼156頁)
本報告書の個別のテーマでは、
「腫瘍用薬に関連した事例」
「持参薬と院内で処方した薬剤の重複
投与に関連した事例」
「永久気管孔にフィルムドレッシング材を貼付した事例」を取り上げました。
これらのうち、
「腫瘍用薬に関連した事例」は、テーマを設定した後、それに該当するヒヤリ・ハット
事例を1年間にわたり収集しながら医療事故情報と総合的に検討し、前方視的に分析していくテー
マです。それ以外のテーマは、2016年4月∼6月に報告された重要な事例をテーマとして設定
し、同種事例を過去に遡って、後方視的に分析したものです。このように、個別のテーマの分析には、
前方視的分析と後方視的分析とがあります。
-5-
表2 個別のテーマ一覧
①前方視的分析を行うテーマ
(テーマに該当するヒヤリ・ハット事例を1年間収集しながら、医療事故情報と総合的に分析するテーマ)
・腫瘍用薬に関連した事例
②後方視的分析を行うテーマ
(4∼6月に報告された医療事故情報の中からテーマを設定し、同種事例を過去に遡って活用し分析する
テーマ)
・持参薬と院内で処方した薬剤の重複投与に関連した事例
・永久気管孔にフィルムドレッシング材を貼付した事例
テーマ分析の概要を次に紹介します。
(1)腫瘍用薬に関連した事例 ②「レジメン登録、治療計画、処方」の事例(108∼137頁)
本テーマは、事例を1年間継続的に収集し、第45回報告書から4回にわたって取り上げる予定
で、今回が2回目の掲載となります。
腫瘍用薬は、主に複数の薬剤を使用すること、患者の体表面積や体重によって投与量が決定され
ること、薬剤の取り扱いに注意が必要なこと、患者への影響が大きいことなどから、医療事故情報
およびヒヤリ・ハット事例が本事業に多数報告されています。前回の第45回報告書では、腫瘍用
薬に関連した医療事故情報とヒヤリ・ハット事例を概観しました。今回は、本報告書の分析対象期
間(2016年4月∼6月)に報告された事例を追加して現状を紹介するとともに、報告された事
例の中から発生段階が「レジメン登録」
「治療計画」
「処方」に該当する事例を取り上げて分析を行
いました。
「レジメン登録」に関する事例は、登録間違いの内容として投与量、単位、用法、投与日数があ
り、結果的にはすべて患者へ薬剤が過剰に投与された事例でした。「治療計画」に関する事例には、
「腫瘍用薬の総投与量の管理」の事例がありました。「処方」に関する事例では、「薬剤間違い」
「薬剤量間違い」「投与時間間違い」「投与日・日数間違い」など、様々な内容の事例が報告されて
いました。これらの事例について、代表的な事例の概要を紹介し、背景・要因、医療機関の改善策、
専門分析班・総合評価部会の議論などをまとめて示しました。
また、本事業では、これまでに腫瘍用薬に関連する医療安全情報を3回提供し、注意喚起を行っ
てきました。医療安全情報 No. 22「化学療法の治療計画の処方間違い」
(2008年9月提供)
、
医療安全情報 No. 93「腫瘍用薬のレジメンの登録間違い」
(2014年8月提供)
、医療安全情報
No. 104「腫瘍用薬処方時の体重間違い」
(2015年7月提供)は、いずれも今回の報告書の内
容と共通するテーマを取り上げています。
医療機関におかれましては、本報告書や関連する医療安全情報を活用していただき、同種事例の
発生予防に努めていただければ幸いに存じます。
-6-
表3 「処方」の「投与日・日数間違い」の内容
種類
投与間隔や投与日数
薬剤
処方間違いの背景
予定した内容
フルダラ錠10mg
内服薬
ゼローダ錠 300
間違えた内容
5日間連続投与後、 2週間(10日分)
23日間休薬
の処方
14 日投与後、
7日間休薬
・ 1週間後に来院予定で1週間分の処方を行っ
たが、患者が来院できないとのことで、2週
間分に変更した際に誤って他の薬と同様に
2週間分を処方した。
・ 患者は休薬のことを忘れ、14 日分がなくなる前
に予約外で外来受診し、問診票に「薬の不足」
14 日投与後、
と記入し追加処方を希望した。
1週間分の追加処方
・ 主治医以外の外科一般外来の医師がプロトコール
を確認せずにゼローダ錠を追加処方した。
注射薬
メソトレキセート錠
週1回投与
2.5mg
連日処方
・記載なし。
ティーエスワン配合 2 週間投与後、
顆粒T 20
1 週休薬
3 週間分の処方
・ 処方時にコピーして PC 操作し、次回受診に合
わせ一括で日数を設定すると全ての薬剤が同じ
日数になった。
シスプラチン点滴
静注液
2 週間連続の処方
・医師は 1 回目の処方をDo処方した。
4 週間に 1 回投与
(2)持参薬と院内で処方した薬剤の重複投与に関連した事例(138∼148頁)
患者が入院時に持参した薬剤を院内の処方へ切り替える際は、薬剤の規格間違い、用法・用量の
指示間違い、同じ成分や同じ薬効の薬剤の重複投与などに注意が必要です。患者に同じ成分や同じ
薬効の薬剤を重複して投与した場合、薬剤によっては患者に与える影響が大きくなる可能性があり
ます。今回、本報告書分析対象期間(2016年4月∼6月)に、持参薬と院内で処方した同じ成
分の薬剤を重複して患者に投与した事例が1件報告されました。そこで、本報告書では事例を過去
に遡って検索し、持参薬と院内で処方した同じ成分や同じ薬効の薬剤を重複して投与した事例を取
り上げ、分析を行いました。
2010年以降に報告された該当事例5件の内訳は、同じ成分の薬剤を重複して投与した事例が
4件、同じ薬効の薬剤を重複して投与した事例が1件でした。なかには、4種類の薬剤を重複投与
した事例も報告されていました。これらの事例について、重複して投与した薬剤の組み合わせや患
者への影響などを整理して示しました。また、事例の概要を紹介し、経過が複雑で複数の当事者が
関わった事例については事例の内容を経時的に図示しました。さらに、事例の背景・要因を①処方・
指示、②準備・配薬、③保管・管理に分類し、医療機関の改善策とともに紹介しています。報告さ
れた事例から、持参薬の保管などの取り扱いを統一することや、患者が内服している薬剤について
正しい薬剤名で指示を出すことの重要性が示されました。
医療機関におかれましては、報告された事例の内容や背景・要因、改善策を参考にしていただき、
同種事例の防止に努めていただければ幸いに存じます。
-7-
表4 同じ成分の薬剤の組み合わせ
薬効注1)
その他の
循環器官用薬
消化性潰瘍用剤
添付文書上の
薬効分類名注2)
成分名
持参薬
院内で処方した薬剤
テラナス錠5注3)
片頭痛治療剤
塩酸ロメリジン
ミグシス錠5mg
プロトンポンプ
阻害剤
ラベプラゾール
ナトリウム
ラベプラゾールNa錠
パリエット錠10mg
10mg
胃炎・胃潰瘍治療剤 レバミピド
レバミピド錠
100mg
ムコスタ錠100mg
その他の
消化器官用薬
消化管運動改善剤
ドンペリドン
ドンペリドン錠
10mg
ナウゼリンOD錠10
痛風治療剤
高尿酸血症治療剤
アロプリノール
アロチーム錠
100mg注4)
ザイロリック錠100
その他の
血液・体液用薬
抗血小板剤
シロスタゾール
プレタールOD錠
100mg
シロスタゾールOD錠
50mg「マイラン」
注1) 薬効は、薬価基準収載医薬品コードの先頭3桁をもとに分類した。
添付文書に記載されている薬効分類名を記載した。また、事例に記載されていた薬剤名をそのまま掲載したため、「屋号(会社名等)
」
注2)
が記載されていない薬剤については、一般的名称および剤形が同じである添付文書を参考にした。
注3)テラナス錠5は、販売中止が予定されており、2016年4月1日から経過措置となっている。
注4)アロチーム錠100mgは、現在では販売名がアロプリノール「サワイ」に変更されている。
(3)永久気管孔にフィルムドレッシング材を貼付した事例(149∼156頁)
永久気管孔とは、喉頭癌、咽頭癌などの治療のため喉頭を全摘出後、呼吸のために気管を頚部の
皮膚に縫合して造られた孔です。永久気管孔は一般的な気管切開とは気道の構造が大きく異なって
おり、造設後は気道と食道が完全に分離するため、口や鼻で呼吸することはできなくなります。今回、
本報告書分析対象期間(2016年4月∼6月)に、患者が永久気管孔で呼吸しているという認識
がないまま、シャワー浴を行う際、湯が入るのを防止するためにフィルムドレッシング材で永久気
管孔を塞いだことにより、患者の呼吸状態に影響を及ぼした事例が1件報告されました。そこで本
報告書では、事例を過去に遡って検索し、同様の事例を取り上げ、分析を行いました。
本報告書では、事例の概要を紹介し、背景・要因を①永久気管孔に関する情報収集と情報共有、
②患者のケアに関する指示や看護計画に分けてまとめました。さらに、事例が発生した医療機関の
改善策を整理して示しています。報告された事例から、入院時に患者の情報収集を行い、その情報
を医療スタッフ間で共有し、患者の状態を理解したうえで看護ケアを行うことの重要性が示唆され
ました。また、永久気管孔を造設している患者がいることや、永久気管孔を塞ぐことが生命にかか
わる影響を与える可能性があることを認識する必要があります。
医療機関におかれましては、同種事例の発生予防のため、本報告書を教育などにご活用いただけ
れば幸いに存じます。
-8-
図2 永久気管孔と気管切開の違い
〔永久気管孔〕
〔気管切開〕
喉頭
声帯
食道
気管
食道
気管
6)再発・類似事例の発生状況(157∼183頁)
第17回報告書まで掲載していた「共有すべき医療事故情報」や、「個別のテーマの検討状況」、
そして「医療安全情報」で取り上げた事例の中には、一度情報提供しても、実際には引き続き類似
事例が報告されているものがあります。そこで、
「Ⅲ−3 再発・類似事例の発生状況」では、再
び報告があった事例を取り上げ、情報提供後の類似事例の発生件数の推移、類似事例の概要、医療
機関から報告された具体的な改善策などの内容を掲載しています。
過去に掲載した「共有すべき医療事故情報」と「個別のテーマの検討状況」の中から、本報告書
が対象とする2016年4月∼6月に報告された再発・類似事例の件数を158∼159頁に掲載
しています。「共有すべき医療事故情報」の再発・類似事例の件数は、「熱傷に関する事例(療養上
の世話以外)
」が8件、
「薬剤の注入経路を誤って投与した事例」が6件などでした。
「個別のテー
マの検討状況」の再発・類似事例の件数は、「凝固機能の管理にワーファリンカリウムを使用して
いた患者の梗塞及び出血の事例」「胃管の誤挿入に関連した事例」がそれぞれ6件、
「内視鏡の洗浄・
消毒に関連した事例」が3件などでした。
また、これまでに提供した「医療安全情報」の中から、本報告書分析対象期間に報告された再発・
類似事例の件数を159頁に掲載しています。このうち、「No. 101:薬剤の投与経路間違い」が
4件と多く報告されていました。
それらの中から今回取り上げたのは、
「アレルギーのある食物の提供」
(医療安全情報 No. 69)
と「放射線検査での患者取り違え」
(医療安全情報 No. 73)の再発・類似事例です。概要を次に
示します。
-9-
(1)「アレルギーのある食物の提供」(医療安全情報 No. 69)について(160∼172頁)
本事業には、薬剤や治療・処置などに関する事例だけでなく、医療機関で提供する食事に関する
事例も報告されています。第15回報告書(2008年12月公表)では、
「共有すべき医療事故情報」
として禁忌食品の配膳間違いの事例を取り上げ、第18回報告書(2009年9月公表)の「再発・
類似事例の発生状況」でも事例を紹介しました。さらに、第23回報告書(2010年12月公表)
から 1 年間にわたって「食事に関連した医療事故」をテーマに取り上げ、食事に関する様々な事例を
整理して分析しました。その後、医療安全情報 No. 69「アレルギーのある食物の提供」
(2012年
8月提供)では、栄養部に患者の食物アレルギーの情報が伝わっているにもかかわらず、誤って
アレルギーのある食物を提供し、患者が摂取した事例を紹介し、注意喚起を行いました。今回、
本報告書分析対象期間(2016年4月∼6月)においても類似の事例が2件報告されたため、
再び取り上げました。
本分析では、主な再発・類似事例を掲載し、該当事例14件の患者の年齢、当事者職種、誤って
提供した食事内容を分類しました。また、アレルギー情報の入手から患者に食事を提供するまでの
業務工程図の一例を示しました。医療機関で献立作成や調理などに携わる皆様におかれましては、
本報告書とともに以前に公表した報告書や医療安全情報を参考にしていただき、同種事例の発生予
防と再発防止に努めていただければ幸いに存じます。
表5 誤って提供した食事
誤って提供した食事
登録されていたアレルギー情報
内容
アレルギーの
原因となった
食材
目視 で 形 が 確 認 で
きた、または可能性
があった食材
鶏卵、乳
桃シャーベット
牛乳
ミルクアレルギー用調製乳
に普通ミルクが混入
牛乳
牛乳・乳製品
牛乳を使用した食パン
牛乳
乳製品
乳製品乳酸菌飲料
卵
ハム
卵
卵、そば、ピーナッツ、マグロ
卵白粉末の入った栄養剤
卵
瓜、なす、西瓜、南瓜、パイナップル
胡瓜入りもずく酢
胡瓜
○
スイカ、胡瓜、瓜
胡瓜が入ったサラダ
胡瓜
○
卵、乳製品、魚、キウイ、ごま
鮭入りポテト煮
鮭
○
乳製品、納豆、豚肉、魚、海老、かに
海老入りきのこ餡かけ
海老
○
クルミ、いくら、キウイ
クルミ入りの副食
クルミ
○
牛肉、豚肉
ミートローフ
香辛料(胡椒含む)
ハンバーグ
卵・卵製品、牛乳・牛乳製品、コンソメ、
麩入りすき焼き
小麦粉
- 10 -
乳
乳製品
肉
胡椒
小麦粉
(2)「放射線検査での患者取り違え」(医療安全情報 No. 73)について(173∼183頁)
医療安全情報 No. 73「放射線検査での患者取り違え」
(2012年12月提供)では、放射線検
査での患者氏名の確認が不十分であったため、違う患者が入室したにもかかわらず、そのまま検査
が行われた事例を取り上げ、情報提供を行いました。その後、本報告書分析対象期間(2016年
4月∼6月)においても類似の事例が1件報告されたため、再び取り上げることとしました。
今回は、医療安全情報 No. 73の集計期間後に報告された類似事例6件の概要を紹介するととも
に、患者取り違えの内容、事例における患者確認の状況、取り違えに気付いた場面などを整理して
示しました。また、事例の背景・要因や医療機関から報告された改善策を紹介しています。
患者確認は医療の安全を確保する上で基本とされており、どの部署においても重要です。特に、
医療機関で放射線検査に携わる皆様におかれましては、本報告書を教育・研修などにご活用いただ
き、同種事例の防止に努めていただければ幸いに存じます。
表6 予定していた患者の検査と誤って実施した検査や処置
予定していた患者Aの検査
誤って患者Aに実施した患者Bの検査や処置
骨シンチ検査
PET検査用放射性医薬品(FDG)の静脈注射
PET検査
シンチグラフィーのための診断補助薬(タイロゲン)の筋肉注射
CT検査
CT検査(違う部位)
頭部MRI検査
造影CT検査
なし
胸部X線検査、胸部CT検査
副甲状腺シンチ検査
PET−CT検査用放射性医薬品(18F−FDG)を静脈注射
- 11 -
3 医療事故情報、ヒヤリ・ハット事例データベースとホームページの機能
1)事例の公開・検索機能
本事業のホームページの「公開データ検索」のボタンをクリックすると、図3の画面が現れます。
このページ上で、医療事故情報やヒヤリ・ハット事例を検索することができます。また、図の下方
にボタンがあり、選択した事例を「XML」
「PDF」
「CSV」の3つのファイル形式で、皆様の
コンピュータにダウンロードして活用することが可能です。このような事例を参考に、安全な診療、
看護、調剤などのマニュアルの整備や医薬品の表示の改善、医療安全分野の医学的、工学的な研究
が行われています。また、医療事故が発生した場合に、類似事例を閲覧することで、患者の病状の
推移や治療方法などの点で参考になります。本機能の活用に関するアンケート調査では、「医療事
故発生時の参考資料として使用」
「安全管理委員会の参考資料として使用」
「安全管理に関連した研
修会の教材として使用」などが多く回答されました。さらに、2014年には「公開データ検索」
のページに、関連診療科及び当事者職種を選択できるプルダウンメニューを設定しました。本事業
に対して、各診療領域の基幹的な学会から講演依頼を受けることがあり、医療安全関連の委員会の
事業として、有害事象の収集を検討されている学会もあるようです。しかし、事例収集をシステム
として行うことは容易ではないことから、本事業の「公開データ検索」のページの活用を検討する
学会もありました。そのような検討にあたっては、この関連診療科や当事者職種を絞り込む機能は
有用なものと考えられます。
以上の機能は、本事業に参加しておられる医療機関や研究者の皆様、またその他多くの皆様より、
報告書に掲載される事例が多くなり内容も豊富になっているため、Webを活用した事例の閲覧や
検索ができるシステムの開発を望む声を多くいただいてきたことに対応したものです。そしてこの
検索ページでは、本稿執筆時点で医療事故情報19,231件、ヒヤリ・ハット事例43,967件
が検索できます。なお、このようにデータベースの件数が増加したことから、2015年度に実施
したシステム改修に伴い、検索結果が1,000件を超える場合には個別事例は表示されず、検索
条件の変更を促すメッセージが現れますので、ご留意ください(図4)。
ご報告いただいた情報をこのような形で公表し、それが適切に活用されることによって医療提供
の仕組みやモノの改善が進み、また、紛争解決にも寄与し、その成果が実感されることによりさら
に報告が定着する、といった医療安全の好循環が生じ、医療界だけでなく我が国の社会において重
要な機能となることを願っています。
- 12 -
図3 医療事故情報、ヒヤリ・ハット事例を検索できるページ
キーワードの入力
事例概要の選択
ファイル形式毎のダウンロードボタン
図4 検索結果が1,000件を超えた場合のメッセージの表示(点線囲み部分)
- 13 -
2) 国立大学附属病院における医療上の事故等の公表に関する指針について
∼本事業を通じた医療機関による医療事故の公表∼
医療事故が発生した場合は、医療機関が医療の透明性を高めることや、事例を他施設での活用に
供することによって、同種事例の再発防止を図ることなどを目的として、また、医療事故の当事者
や家族が、医療事故を再発防止のために活用することを希望することに対応する目的などから、医
療機関が事故を公表することがあります。
国立大学附属病院長会議では、2005年3月に「国立大学附属病院における医療上の事故等の
公表に関する指針」を策定し、医療上の事故等が発生した場合の公表に関する基準を示しました。
その後、本事業を通じた医療事故の概要、再発防止策その他の医療安全に関する社会的な公表シス
テムが定着し、機能するようになっているという認識に基づき、2012年に同指針が改訂されま
した。改訂前の指針と同様、各国立大学附属病院において、医療上の事故等につき、医療の透明性
を高め、国民からの信頼向上をはかるとともに、他医療機関における医療安全管理の徹底及び再発
防止に資することを目的として、公表を行うための一定の基準が示されています。国立大学附属病
院における医療事故の公表に関しては、一部の医療事故事例を医療機関のホームページ等を通じて
公表し、その他の多くの事例を本事業への報告を通じて公表することとされています。このように、
本事業の成果物、特に公開データ検索の機能は、医療の安全に関する透明性の向上や、各医療機関
の医療事故の公表という重要な役割を担っていると考えています。
3) 医療事故情報収集等事業のデータベースを活用した医薬品の取り違え防止のための製薬企業の対応
∼「ノルバデックス」と「ノルバスク」の販売名類似による取り違えに関する注意喚起∼
本事業の事例データベース等を活用し、
「アルマールとアマリール」
、
「ノルバスクとノルバデックス」
などの名称類似薬の取り違えについて、製薬企業から注意喚起がなされていることを、過去の年
報や報告書でご紹介しました(平成23年年報 16∼19頁、平成24年年報 25∼29頁、
第29回報告書 13∼18頁、第34回報告書 19∼21頁)
。このように、本事業に報告さ
れたことを契機として、本財団以外の関係団体や企業から、医療事故防止のための具体的な注意喚
起が行われることが継続しています。2015年7月には、
「デュファストン ® 錠(一般名:ジド
ロゲステロン)
」(アボットジャパン株式会社)と「フェアストン ® 錠(一般名:トレミフェンク
エン酸塩)
:乳癌治療剤」(日本化薬株式会社)について、それぞれの製造販売業者である企業から、
販売名の類似に関する注意喚起がなされました(https://www.pmda.go.jp/files/000206336.pdf)
。
それぞれの薬効は、デュファストンは、切迫流早産、習慣性流早産、無月経、月経周期異常、月経
困難症などですが、フェアストンは、閉経後乳癌ですので、大きく異なっています。
また、よく知られた名称類似薬である「ノルバデックス ®(一般名:タモキシフェンクエン酸塩)
:
抗乳がん剤」と「ノルバスク ®(一般名:アムロジピンベシル酸塩):高血圧症・狭心症治療薬
/持続性Ca拮抗薬」の取り違えについても、製薬企業より、本事業の成果を引用した注意喚起
が繰り返し行われてきており、2013年11月に再び注意喚起がなされ、2014年7月及び
2016年3月にもその情報が更新されました(図5)。
- 14 -
医療従事者に対して注意喚起をするために企業名で公表された文書には、本事業に報告された事
例が紹介されているとともに、具体的な表示や検索システムの改善による対策、医薬品の外観の写
真などが紹介されています。また、対策がとられていても、医師に異動や非常勤といった事情があ
ることにより、対策が十分理解されていないことによる取り違えの事例もあることから、周知徹底
を呼びかけています。
このように、医療の現場の安全性を高めることにより、国民に安全な医療を提供することにつな
がる改善のために、本事業の成果が活用されることは、事業の趣旨に即した適切な取り組みである
と考えています。同種の事例について今後も繰り返し注意喚起することが本事業の役割であるとと
もに、製造販売業者である企業の皆様にもこのようなご活動を継続していただければありがたいと
考えています。
図5 「ノルバデックス ®」と「ノルバスク ®」の販売名類似による取り違え注意のお願い(一部掲載)
<参考> 本事業の成果を活用した注意喚起
本事業に報告される事例は、医薬品の製造販売業者に位置付けられる企業によって、医薬品の取り違
えだけでなく適正使用に関する注意喚起もなされています(図6)
。2015年8月には、ペグイントロン
® 皮下注用の調製に関する注意喚起が公表されています。注意喚起文書の中で、
「ペグイントロン ®
皮下注用50μg/0.
5mL用、ペグイントロン ® 皮下注用100μ g/0.
5mL用、ペグイン
トロン ® 皮下注用150μg/0.
5mL 用(以下、本剤)につきまして、公益財団法人日本医療
機能評価機構の医療事故情報収集等事業において、調製時に添付の注射用水0.
7mLで溶解し、そ
のまま全量(0.
7mL)を投与した事例や、注射用水0.
5mLで溶解し、過量に投与した事例が複
数報告されています。
」と、本事業における報告事例に基づいた注意喚起情報であることが説明され
ています。本注意喚起の文書発出後、同種事例の報告はないものの、引き続き注意を喚起するとして、
2016年4月に再度同趣旨の文書が発出されています。
- 15 -
図6 ペグイントロン ® 皮下注用調製時の注意に関するお願い
(2015年8月)
(2016年4月)
また、本事業では、2015年8月に、医療安全情報 No. 105で「三方活栓の開閉忘れ」を取
り上げ、情報提供しました(図7)。これに関し、
(独)医薬品医療機器総合機構が、本事業の事例や、
医薬品、医療機器の品質及び安全性の確保等に関する法律に基づく副作用・不具合報告において収
集された事例の中などから、専門家の意見を参考に医薬品、医療機器の安全使用推進の観点から情
報提供を行っている「PMDA医療安全情報」において、2016年1月に No. 48「三方活栓の
取扱い時の注意について」を公表しています(図8)
。このように、本事業に報告された事例や分
析の内容について透明度を高くして公表することにより、その活用が広がっています。
図7 医療安全情報 No. 105
「三方活栓の開閉忘れ」
図8 PMDA医療安全情報 No. 48
「三方活栓の取扱い時の注意について」
- 16 -
4)ホームページにおける「分析テーマ」と「再発・類似事例の発生状況」の閲覧機能
2013年、本事業のホームページに、①「分析テーマ」と②「再発・類似事例の発生状況」の
ボタンを追加しました(図9)。
図9 本事業のホームページ
①「分析テーマ」のボタン
②「再発・類似事例の発生状況」のボタン
図9の①のボタンをクリックすると、第1∼45回報告書で取り上げた分析テーマについて、テーマ
のタイトルと該当するページのPDFファイルを閲覧することができます。
図10 分析テーマのページ
該当ページのPDFファイル
第45回報告書
分析テーマ
第44回報告書
分析テーマ
- 17 -
事業開始後、第1∼46回報告書に掲載したテーマのうち過去3年分を次に示します。
表7 報告書で取り上げた分析テーマ一覧(過去3年分)
年
回数
第46回
2016 年
第45回
第44回
第43回
2015 年
第42回
第41回
第40回
第39回
2014 年
第38回
第37回
延べテーマ
No .
テーマ
183
腫瘍用薬に関連した事例
②「レジメン登録、治療計画、処方」の事例
182
持参薬と院内で処方した薬剤の重複投与に関連した事例
181
永久気管孔にフィルムドレッシング材を貼付した事例
180
腫瘍用薬に関連した事例
① 概要
179
外観の類似した薬剤の取り違えに関連した事例
178
人工呼吸器の回路の接続外れに関連した事例
177
インスリンに関連した医療事故
④「無投与、中止時の注射、投与時間間違い、その他」の事例
176
観血的医療行為前に休薬する薬剤に関連した事例
175
気管切開時の電気メス使用による引火に関連した事例
174
インスリンに関連した医療事故
③「薬剤量間違い、投与速度間違い」の事例
173
座位による中心静脈カテーテルの処置に関連した事例
172
胃管の誤挿入に関連した事例
171
インスリンに関連した医療事故
②「薬剤間違い、対象者間違い」の事例
170
与薬時の患者または薬剤の間違いに関連した事例
169
パニック値の緊急連絡に関連した事例
168
インスリンに関連した医療事故
① 概要
167
手術中の砕石位に関連した事例
166
病室での自殺及び自殺企図に関する事例
165
職種経験1年未満の看護師・准看護師に関連した医療事故
④「療養上の世話」の事例
164
カリウム製剤の急速静注に関連した事例
163
放射線治療の照射部位の間違いに関連した事例
162
口頭による情報の解釈の誤りに関連した事例
161
職種経験1年未満の看護師・准看護師に関連した医療事故
③「治療・処置、医療機器等、ドレーン・チューブ、検査」の事例
160
皮膚反応によるアレルギーテストの実施時の試薬に関する事例
159
内視鏡の洗浄・消毒に関する事例
158
職種経験1年未満の看護師・准看護師に関連した医療事故
②「薬剤、輸血」の事例
157
後発医薬品に関する誤認から適切な薬物療法がなされなかった事例
156
無線式心電図モニタの送受信機に関連した事例
155
調乳および授乳の管理に関連した事例
154
職種経験1年未満の看護師・准看護師に関連した医療事故
① 概要
153
気管切開チューブが皮下や縦隔へ迷入した事例
152
事務職員の業務における医療安全や情報管理に関する事例
また、図9の②のボタンをクリックすると、第18∼45回報告書で取り上げた、
「再発・類似
事例の発生状況」のテーマについて、テーマのタイトルと該当するページのPDFファイルを閲覧
することができます。
- 18 -
図11 再発・類似事例の発生状況のページ
該当ページのPDFファイル
第45回報告書
再発・類似事例の
発生状況
第44回報告書
再発・類似事例の
発生状況
第18回報告書から開始した「再発・類似事例の発生状況」で掲載したテーマのうち過去3年分
を次に示します。
表8 報告書で取り上げた「再発・類似事例の発生状況」一覧(過去3年分)
年
回数
第46回
2016 年
第45回
第44回
第43回
2015 年
第42回
第41回
第40回
第39回
2014 年
延べテーマ
No.
85
「アレルギーのある食物の提供」(医療安全情報 No. 69)について
84
「放射線検査での患者取り違え」(医療安全情報 No. 73)について
83
「病理診断時の検体取り違え」(医療安全情報 No. 53)について
82
共有すべき医療事故情報「眼内レンズに関連した事例」
(第15回報告書)について
81
「併用禁忌の薬剤の投与」(医療安全情報 No. 61)について
80
共有すべき医療事故情報「酸素ボンベ残量の管理に関連した事例」
(第17回報告書)について
79
「B型肝炎母子感染防止対策の実施忘れ」
(医療安全情報 No. 49)について
78
77
共有すべき医療事故情報「体内にガーゼが残存した事例」
(第14回報告書)について
「人工呼吸器の回路接続間違い」(医療安全情報 No. 24)について
76
「患者の体内に植込まれた医療機器の不十分な確認」(医療安全情報 No. 62)について
75
「抗リウマチ剤(メトトレキサート)の過剰投与に伴う骨髄抑制」
(医療安全情報 No. 2 第2報 No. 45)について
74
「小児への薬剤10倍量間違い」
(医療安全情報 No. 29)について
73
「禁忌薬剤の投与」
(医療安全情報 No. 86)について
72
「画像診断報告書の確認不足」(医療安全情報 No. 63)について
71
共有すべき医療事故情報「三方活栓の閉塞や接続外れ等、使用に関する事例」
(第11回報告書)について 70
「未滅菌の医療材料の使用」
(医療安全情報 No. 19)について
69
「清拭用タオルによる熱傷」
(医療安全情報 No. 46)について
68
第38回
67
第37回
テーマ
「ガベキサートメシル酸塩使用時の血管外漏出」(医療安全情報 No. 33)
、
「ガベキサートメシル酸塩使用時の血管炎」(医療安全情報 No. 77)について
共有すべき医療事故情報「歯科診療の際の部位の取り違えに関連した医療事故」
(第15回報告書)について
66
「小児の輸液の血管外漏出」(医療安全情報 No. 7)について
65
「電気メスによる薬剤の引火」(医療安全情報 No. 34)について
- 19 -
4 医療安全情報の提供
本事業は、特に周知すべき情報を提供することにより、医療事故の発生予防、再発防止を促進
することを目的として、医療安全情報を提供しています。医療安全情報は、医療の現場で忙しく業
務に従事している方々が手軽に活用できる情報として、A4サイズ2枚程度に情報量を絞り込み、
イラストや表を入れるなど視認性に配慮して作成しています。2006年12月から医療安全情報の
提供を開始し、本報告書の対象期間である2016年4月∼6月には No. 113∼ No. 115を作成、
提供しました(186∼191頁)。
医療安全情報は、医療事故情報収集・分析・提供事業やヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業
の参加登録医療機関に対して、毎月1回ファックスで提供するとともに、本事業のホームページにも掲
載しています。さらに、より広く情報を共有するため、事業に参加されていない病院でもご希望があれ
ば医療安全情報をファックスで無料配信しています。ファックス配信は医療安全情報の公表日に行い
ますので、迅速に情報を受け取ることができ、院内の回覧などに利用していただくことができます。
2015年12月にファックス受信のご希望を募ったところ、579病院から新たにご依頼をいた
だき、ファックスを受信する医療機関は全国の病院の約7割になりました。
図12 医療安全情報の申し込み方法
本業のホームページにアクセス
①
①または②
「医療安全情報」をクリック
「FAX申し込み」をクリック
②
「関連文書」をクリック
「■参加登録等に関すること」の
「医療安全情報申し込み用紙」をクリック
申し込み用紙に記入してファックス送信
申し込み完了
※ファックスによる提供は病院を対象としています。
また、2016年3月には、ファックスによる医療安全情報の提供を受けている医療機関名を閲
覧できるボタンを作成しました。 これを押すことにより、2016年3月末時点の 5,
935施設
が掲載されたPDFファイルが開きますので、近隣の医療安全情報提供先医療機関名を確認して
いただくことができます。医療安全情報のファックス配信のご依頼は随時受け付けていますので、
まだ提供を受けていない病院の皆様には、地域の医療機関に関するこのような情報を参考にしていた
だき、病院の約7割に配信されている医療安全情報をぜひお申し込みいただきますようにお願いいた
します。
- 20 -
図13 医療安全情報提供医療機関一覧のボタン
5 医療安全情報集の作成、公表
本事業の成果のひとつである医療安全情報は、2006年12月から発行され、2015年3月
で第100号という節目を迎えました。2011年12月には第1号から第50号までを掲載した
「医療安全情報集 No. 1∼ No. 50」を公表しました。医療安全情報集 No. 1∼ No. 50は、多くの
医療機関から、よくまとまっていて院内で活用したい、余分があれば追加送付して欲しい、院内で印
刷して職員に配布し、特に新入職員の教育に活用したい、といったご連絡をいただきました。ご関心
を持っていただきましたことに深く感謝申し上げます。そこで、2015年9月には第51号から第
100号までを掲載した「医療安全情報集 No. 51∼ No. 100」を公表し、事業に参加しておられ
る医療機関などに送付するとともに、ホームページにも掲載しています。どなたでもダウンロードし
てご活用いただくことができます(http://www.med-safe.jp/pdf/med-safe-collection_051-100.pdf)。
情報集の中では、本事業の運営委員会座長である、株式会社日立製作所ひたちなか総合病院院長
永井庸次先生や、総合評価部会座長である、東邦大学医学部社会医学講座医療政策・経営科学分野教授
長谷川友紀先生から、それぞれ「医療安全情報の意義と課題」
、「医療安全情報に寄せて」としてご
寄稿いただき、医療安全情報の性質や活用などについてお感じになられてきたことを執筆していた
だきました(医療安全情報集 No. 51∼ No. 100:5∼8頁)
。その中でも言及されていますが、
100号を重ねることができたことは、本事業の参加医療機関や関係者の皆様のお陰であり、深く感
謝申し上げます。また、
「医療安全情報のあゆみと今後の展望」として、①医療安全情報作成の経緯、
②医療安全情報の提供、③医療安全情報の構成、④医療安全情報のテーマの考え方、⑤医療安全情報
の5つのパターン、⑥医療安全情報の影響、⑦医療安全情報の海外への情報発信、などについてご説
明しています。特に⑥医療安全情報の影響は、医療安全情報が、医薬品の製造販売業者である企業の
皆様による、医薬品の名称類似による取り違えの注意喚起につながった事例を紹介しており、情報提
供による具体的成果をお示ししている部分です。
- 21 -
さらに、
「医療安全情報集 No. 51∼ No. 100」では、「医療機関における医療安全情報の活用」
という項目を設けて、医療機関における医療安全情報の活用の実例を紹介しています。事業参加医療
機関のご協力を得て活用例を収集したところ、①医療安全情報に掲載したイラストを抜粋して使用し
た例、②医療安全情報に院内の事例を加えた例、③院内発行物に医療安全情報を組み込んで掲載し
た例、④医療安全情報を院内教育の資料に使用した例、の4つのパターンがありました。我が国の
医療機関で実際に発生した事例が、このように他施設において具体的な形で活用されることにより、
医療事故の発生予防に寄与するという好影響が一層広がることを期待し、本事業としても、このよう
な事例をこれからもご紹介していきたいと考えています。
図14 医療安全情報 No. 98
図15 医療機関における医療安全情報の活用例
「カリウム製剤の投与方法間違い」 (医療安全情報集 No. 51∼ No. 100に掲載)
- 22 -
6 医療安全情報の提供医療機関拡大とアンケート調査について
本事業では、継続的に医療安全情報のファックスによる提供医療機関数の拡大を図るため、講演
会におけるご案内や、ファックス未受信病院に対する受信希望調査を行ってきました。2011年に
調査を行ったところ、新たに697病院から提供のご希望をいただきました。このように、ご希望を
募る調査を行うたびに、相当数の申し込みがあるのが現状です。そこでこの度、再度同様な調査を行
うとともに、ファックス未受信病院における医療安全情報の活用状況等について2015年12月に
アンケート調査を実施しました。その結果、調査を依頼した3,385病院のうち1,021病院から
回答がありました(回答率30. 2%)
。また、今回の調査によって、新たに579病院から提供のご
希望をいただきました。
表9 医療安全情報提供拡大のためのご希望を募った調査年と増加数
(新規)情報提供を希望した病院数
情報提供医療機関数合計
提供開始した医療安全情報
第1回
第2回
第3回
第4回
第5回
2006年
2007年
2008年
2011年
2015年
1,924
1,039
623
697
579
3,332
4,232
4,838
5,307
5,932
No. 6∼
No. 15∼
No. 27∼
No. 63∼
No. 111∼
アンケート調査の結果では、ファックス未受信病院においても「医療安全情報を見ている」と
回答した病院は67.9%、また、医療安全情報を「活用している」または「どちらかというと活用
している」と回答した病院は92.6%でした。このように医療安全情報はファックス未受信病院に
おいても相当程度に知られており、かつ、活用されていることが明らかとなりました。従来、医療安
全情報の普及について、ファックス受信病院数や、全病院に占める割合を目安にしていましたが、実
際はそれ以上に普及が進んでいると考えられました。さらに、医療安全情報を「どちらかというと活
用していない」と回答した病院に対して、その理由をお尋ねしたところ、「自施設では内容が合致し
ない」とする回答が最も多く65.3%を占め、次に「その他」
(14.3%)
、「自施設で周知する方
法がない」(10.2%)等でした。「その他」の回答の自由記載欄には、「精神科病院なので、内容が
合致するものが少ないが、精神科でも身体管理が増えてきているので、今後活用したい」「当院は医
療処置が少ない為、療養上の内容や医療処置・検査等に関係する内容は活用している」「当院では事
故はなく、軽微なインシデントが多い」等の記載がありました。このような特定の診療科や処置が少
ない医療現場における有効な情報提供のあり方は、今後の医療安全情報の内容の充実にとって課題で
あると考えられました。「医療安全情報を見ていない」と回答された病院のうち86.9%が「今後医
療安全情報を入手する希望の有無について「はい」と回答し、入手の方法は、
「ファックスの受信を
希望する」と回答した病院が74.0%ありました。このように、医療安全情報のファックス受信の
ご要望は、まだ潜在的に多いものと考えられました。
- 23 -
図16 医療安全情報の提供拡大のためのファックス未受信病院へのアンケート調査結果(抜粋)
①最新の「医療安全情報」の定期的な閲覧について
項目
見ていない
32.1%
病院数
見ている
693
見ていない
328
合 計
1,021
見ている
67.9%
(①で「見ている」と回答した病院への問い)
②「医療安全情報」の院内での活用について
どちらかというと
活用していない
6.6%
活用していない
0.4%
未回答
0.3%
項目
病院数
活用している
396
どちらかというと活用している
246
どちらかというと活用していない
どちらかというと
活用している
35.5%
46
活用していない
3
未回答
2
活用している
57.1%
合 計
693
●「活用している」または「どちらかというと活用している」と回答した病院での活用方法
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258
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445
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121
䠑㻚䛭䛾௚
䠒㻚ᮍᅇ⟅
31
1
- 24 -
(②で「どちらかというと活用していない」または「活用していない」と回答した病院への問い)
③「医療安全情報」を活用していない理由について
複数回答
2.0%
他の情報を
活用している
8.2%
項目
その他
14.3%
自施設で周知する
方法がない
10.2%
自施設では内容が
合致しない
65.3%
病院数
自施設では内容が合致しない
32
自施設で周知する方法がない
5
他の情報を活用している
4
その他
7
複数回答
1
合 計
49
□その他の回答
・周知する仕組みを考えていなかったが、今後活用する予定である
・職員への意識づけが不十分である
・ 精神科病院なので内容が合致するものが少ないが、精神科でも身体管理が増えてきているので、今後活用したい
・当院は医療処置が少ない為、療養上の内容や医療処置・検査等に関係する内容は活用している
・当院では事故はなく、軽微なインシデントが多い
・当院の現状から判断して関係のあるもののみを必要な部署に伝えている
・活用できる情報は活用しているが、今後もっと活用していきたい
・ホームページからその都度個人でしか情報を収集していない
④今後の「医療安全情報」の入手について
●①で「見ている」と回答した病院
●①で「見ていない」と回答した病院
未回答
1.5%
未回答
2.3%
希望しない
11.6%
希望しない
46.5%
項目
希望する
51.2%
希望する
86.9%
項目
病院数
希望する
355
希望する
希望しない
322
希望しない
未回答
合 計
16
未回答
合 計
693
- 25 -
病院数
285
38
5
328
7 医療事故情報収集等事業平成26年年報英語版及び医療安全情報 No. 96∼107
英語版の公表と Canadian Patient Safety Institute(cpsi-icsp)のプロジェクト「Global
Patient Safety Alerts」を通じた情報発信
医療事故情報収集等事業では、平成17年年報より英語版を作成し、ホームページを通じて公表し
たり、海外からの訪問者の方々に差し上げたりして、事業の内容や成果の周知に活用してきました。
2016年3月末に、平成26年年報の英語版である、
「Project to Collect Medical Near-Miss/
Adverse Event Information 2014 Annual Report」を公表いたしました。この内容は、ホームページ
で閲覧、ダウンロードできるとともに、検索のページ(報告書・年報検索 Full Text Search:http://
www.med-safe.jp/reportsearch/SearchReportInit)より、英語による検索が可能です。
図17 医療事故情報収集等事業平成26年年報英語版と目次
また、医療安全情報の英語版も作成して、それらを海外に向けて情報提供しています。2016年3月末
には、医療安全情報 No. 96∼107の英語版を公表しました(図18)
。それらは、本事業のホームページ
の英語のページ(http://www.med-safe.jp/contents/english/index.html)に掲載していますので、機
会がありましたらご活用いただければ幸いに存じます。
ま た 引 き 続 き、 カ ナ ダ の Canadian Patient Safety Institute(cpsi-icsp)
(http://www.ca/en/
patientsafetyinstitute.Pages/default.aspx)がWHOと行う共同プロジェクトである「Global Patient
Safety Alerts」(http://www.patientsafetyinstitute.ca/en/NewsAlerts/Alerts/Pages/default.aspx)
において、医療安全情報英語版を世界的に共有することのご依頼をいただいたことから、そのプロジェ
クトを通じた情報発信も続けています。具体的には、各医療安全情報(英語版)に基づき、それぞれ
に掲載されている情報の要旨、関連情報、関連する推奨事項が新たに記述され、同じ画面から医療安
全情報(英語版)へのリンクが設置されています。同プロジェクトのホームページの協力団体には、
本財団の名称を掲載していただいています。また、閲覧用アプリも提供されています。
- 26 -
図18 医療安全情報 No. 105(英語版)
後述する、有害事象の報告及び学習システムをテーマとした、WHO Inter-regional Consultation
Conference (Colombo) において、同団体の Iona Popescu 氏が International Perspective: Canada
と題した講演を行いました。同団体の様々なプロジェクトの説明には、Global Patient Safety Alert
も含まれていました。その説明の中で、何度も本事業の医療安全情報について言及されました。
例えば、「Global Patient Safety Alert では、日本のアラートを多く掲載している。日本のアラートの
情報の中から、我々のフォーマットに従って内容を抽出して整理したものを公開している。当然のこ
ととして、日本のアラートのホームページにもリンクしている。日本の有害事象報告制度のホーム
ページには英語版のアラートを掲載したページがある。」とご説明がありました。講演後の質疑応答
の時間に、「2011年だったと記憶しているが、本事業の医療安全情報英語版の提供の要請を受け
た。このプロジェクトでアラートが閲覧されている頻度を教えてほしい。ある程度閲覧されていると
しても、まだ知らない人も多くいるので、一層の周知をお願いしたい。
」と質問及び依頼をしました。
ご回答としては、
「毎年40,000件くらいのアクセスがあり、年々増加している。周知はこれから
もやっていく。活用しやすいようにアプリも作成している。」との返答でした。そこで「このプロジェ
クトやアプリについては、日本の医療事故情報収集等事業の定期報告書や年報の中で記述している。
毎回の報告書で紹介してきた。今後も継続的に医療安全情報英語版を提供するので、活用と周知をよ
ろしくお願いする。
」と依頼しました。会を主催されたWHOの担当者は、このご講演や質疑応答を
聞いて、WHOの活動や成果と Global Patient Safety Alert との連携を強化したいご意向でした。会合
の終了後、Iona Popescu 氏及び Global Patient Safety Alert の担当者と連絡を取り、医療安全情報英
語版 No. 107までを本事業のホームページに掲載したので、活用していただくように依頼しました。
先方からは、ホームページを改修し、単なるアラートの紹介だけでなく、関連情報等もあわせて掲載
するよう準備中とのことであり、本稿執筆中、その改修が進捗しています。
このように、本事業の英語のホームページの他に、
「Global Patient Safety Alerts」のページの協力
団体のページや検索機能、アプリを通じて、医療安全情報英語版の内容が世界から閲覧されています。
- 27 -
8 WHOにおける有害事象報告システム(Minimal Information Model for Patient Safety :
MIM PS)の開発について
WHOでは2004年10月に創設した医療安全プログラムを継続して実施する中で、国際的に
医療安全を推進するための方法論として、本事業と類似の方法論である、有害事象を報告しそれを分
析して再発防止を図る学習システムを開発するプロジェクトを進めています。2005年には、医
療安全の分野でよく知られている「WHO Draft Guidelines for Adverse Event Reporting and Learning
Systems」(現在改訂作業中)を作成、公表し、その中で、体系的な有害事象の収集を通じた学習シス
テムの基本原則などが述べられました。本事業も、我が国における有害事象の報告、学習の仕組みと
して紹介されています。
後 述 す る よ う に、 有 害 事 象 を 把 握 す る た め の 基 盤 的 な シ ス テ ム の 一 つ と し て、Conceptual
Framework for the International Classification for Patient Safety(ver.1.1)が作成、公表されました。
その中では、インシデントを把握するために、発生に寄与した因子、患者の要因、インシデントの特徴、
発見の契機、重症度に影響した要因、患者への影響、組織への影響、対策などについて様々な項目が
提案されています。そしてその成果に基づいて、施設レベルを超えて世界レベルで学習したり、情報
を共有したりできるシステム、Minimal Information Model for Patient Safety(MIM PS)が開発
され、2015年5月12∼13日、ポーランドのワルシャワで開催された会議 WHO International
Consultation on European Validation of the Minimal Information Model for Patient Safety Incident
Reporting and Learning においてその内容が説明されました。同会議では、日本の有害事象報告
制度として、我が国からの参加者によって本事業の説明を含む講演が行われました。また、同様に
本事業の講演を依頼された2016年2月と3月の会議においても、WHOの担当者からその進捗
が講演されました。3月22∼24日にスリランカのコロンボで開催された WHO Inter-Regional
Consultation Patient Safety Incident Reporting and Learning Systems in Africa and Asia Pacific
Regions における講演内容について、次に示します。
The Minimal Information Model for Reporting Patient Safety incidents-progress review
Ms Maki Kajiwara
●MIM PSについて
インシデントレポートを理解し比較するための必須と考えられるコード構造の概念である。
それ以上の概念を追加したり、カスタマイズしたりすることもできる。目的は、最低限の有意義
な学習が得られるために重要な特徴を見出すことにより、効果的な報告がなされることを強化
することである。報告制度がない場合は、MIM PSはインシデントを収集する共通のツール
となりうる。
● 2005年にWHO RLSドラフトガイドラインが作成された。その中で、報告基準と事例
の分類の調和が必要とされた。RLSは医療システムの失敗に学び、非難を回避するために有
用である。また、リスクの様相の分析に基づいた建設的な対応や同種事例の再発を防止するた
めの教訓を周知することが必要である。
- 28 -
● 2009年には患者安全の国際分類のための概念的な枠組み(Conceptual Framework:CF)
が作成された。重要な10の項目は次の通りであり、それぞれについて20∼40項目の選択
肢がある。
①インシデントの類型
②患者の特徴
③インシデントの特徴
④発生に寄与した因子や危険
⑤発見の情報
⑥被害が緩和された要因
⑦患者の予後
⑧組織への影響
⑨改善策
⑩リスクを低減させるために採られた方策
●用語の定義
①患者安全インシデント:不必要な害が患者に及んだ出来事や状況
②医療における安全:医療提供に伴う不必要な害を許容範囲まで低下させること
③エラー:計画通りに行動することに失敗すること、あるいは、誤った計画を実行すること
④ニアミス:患者に到達しなかったインシデント
⑤無害インシデント:患者に到達したが判別できる害が生じなかった事例
⑥有害事象:患者に害を及ぼした事例
⑦ 有害反応: 事象が発生した状況において、正しい過程が行われることにより、正当化さ
れる行為の結果生じた予期しない害
●MIM PSの定義と標準版(8項目)について
①患者情報(直接又は間接的に患者安全インシデントに関与した人、最低限その人の年齢、性
別を把握する)、②発生時間(インシデントが発生した日時)、③発生場所(インシデントが発
生した物理的環境)、④関係者、関連機器等(インシデントに影響を与える可能性がある物、機器、
人やあらゆる要素)、⑤インシデント類型(共通の性質で類型化、グループ化されたインシデ
ントの型を示す記述的な用語)、⑥インシデントの結果(インシデントの一部や全てが患者や
組織に与えた影響)、⑦改善策(インシデントの結果実施された行動)、⑧報告者の役割(イン
シデントを収集し、記載した人)。
● 2014∼2015年には、EU(ベルギー、クロアチア、チェコ、デンマーク、イタリア、
ル ク セ ン ブ ル グ、 ポ ー ラ ン ド、 ス ペ イ ン、 U K ) と E F T A(The European Free Trade
Association)MS(ノルウェー)で試行と検証を実施した。目的は、WHOのMIM案を経験的
に検証して改善(必要な修正を加えること)すること、欧州におけるRLSとして現実的であ
るか評価することである。手法としては、EU加盟国から事例を選び出し、欧州で稼動してい
る報告システムの事例情報がMIM案に則したものであるか検証する。その結果は、①MIM
の項目ごとに欧州の報告システムの事例でも情報が報告されている率、②欧州の報告システム
ごとにMIMの求める情報が報告されている率、で表すこととした。
- 29 -
●欧州におけるMIMの検証結果について
400件以上の事例が登録された。全てのデータには、MIMの項目の5項目以上に該当する
データが報告されていた。全ての項目を網羅していた国や地域は6つであった。報告されてい
なかった項目には、患者情報、インシデントの発生日時、関係者、関連機器等、インシデント
類型、インシデントの結果及び報告者の役割が挙げられた。
●国際的な専門家による検証について
2015年5月12∼13日にポーランドのワルシャワで会議を開催した。欧州、豪州、イン
ド、日本から45名の専門家が参加した。目的は、MIMの開発経緯のまとめを検証することや
MIMの医療現場における適用性を検証すること、患者安全情報の報告と学習に関する世界的
なベストプラクティスや、よい経験、教訓に学ぶこと、比較可能な結果から学習する効果を高
め共通の報告事項に同意すること、現行のMIMのフォーマットを検証し今後の改善を推奨する
こと、RLSの現時点の優先課題を同定し推奨される将来の戦略的な方向性を示すことである。
●検証の結果について
RLSに関し各国が共通した対応を行うことの必要性が認識された。MIM PSがEU加盟国
やその他の国において情報共有や教訓を学ぶための基本的な枠組みであることが検証された。
10個の項目を有するMIMが了解され、また、既存の報告制度が機能している国においても
有用性があるというコンセンサスが得られた。8個の報告項目を有するMIMも報告制度を持
たない国々では報告制度を開始する際によいモデルであると考えられた。既存の報告制度が機
能している国でもしていない国でも、MIM PSの構造は、データによる構造的な部分とフ
リーテキストから成る。RLSの学習の性質を強化することが重要であり、それは、蓄積した
データの体系的分析とその比較や、急速に増加する優先度の高い事象を同定することによって
行われる。
●標準8項目と拡大10項目の比較について
<参考>MIM PS標準版と拡大版(下線部が相違点)
◆ MIM PS標準版
◆ MIM PS拡大版
①患者情報(年齢、性別)
①患者情報(年齢、性別)
②発生時期
②発生時期
③発生場所
③発生場所
④関係者、関連機器等
④原因
⑤インシデント類型
⑤寄与因子
⑥インシデントの結果
⑥エラーの緩和要因
⑦改善策
⑦インシデント類型
⑧報告者の役割
⑧インシデントの結果
⑨改善策
⑩報告者の役割
- 30 -
●拡大版の定義を追加された項目について
④原因:インシデントを誘発した中心的な事象、⑤寄与因子:インシデントの原因や、進展、
リスクの増大に部分的に寄与したと考えられる因子、⑥エラーの緩和要因:インシデントが患
者に害を与えることを緩和したり妨げたりした行動や状況。
●医療安全の情報源としてのRLS:EU各国における調査結果の成果について
患者安全を優先することの確立、保健省の推奨、テーマ分析と報告、警告や参照情報の提供。
多くの情報を含んだ冊子、ニュースレター、グッドプラクティスのメモ、特定のエラーの防止
法、新しいプロトコールの提示。ピアレビューの実施、教育セッションの実施、チェックリス
トの作成、統計的分析。その結果明らかとなったことは次の通り。リストにある全ての事象が
全ての国で生じるわけではない。13%の国では、レポートは単に報告されて蓄積されている
のみ。分析はインシデントの種類による。手法としては Failure mode やRCA(Root Cause
Analysis)がある。
● EUにおける評価を終えた際には、次のメッセージを公表した。MIM PSは、患者安全と
医療の質の強化のためのEU全域にわたる幅広い戦略を、組織しさらに開発するために必須な
共通の枠組みである。
●MIMに関するこの他の方向性について
報告と監視のためのMIM(Cross cutting MIM)。WHOにはいくつかのタスクフォースがあ
り、患者安全のための報告と監視システムの導入機会、利益、方向性を検討している。具体的
には、輸血、医療機器、患者安全、医薬品の副作用監視、放射線の安全、ワクチン、漢方、注
射の安全、診断的検査、労働衛生のタスクフォースがある。
● 患者安全のための報告と監視システムとしてのMIMに関する非公式会議を、2014年4月
にスイスのジュネーブで開催した。10の技術的分野から45名の専門家が出席した。目的は、
MIMの開発経緯のまとめを検証することやMIMの医療現場における適用性を検証すること、
患者安全情報の報告と学習に関する世界的なベストプラクティスや、よい経験、教訓に学ぶこ
と、比較可能な結果から学習する効果を高め共通の報告事項に同意すること、現行のMIMの
フォーマットを検証し、今後の改善を推奨すること、RLSの現時点の優先課題を同定し、推
奨される将来の戦略的な方向性を示すこと(ワルシャワの会合の目的と同じ)である。また、
次のことも目的である。多職種による高いレベルの議論を行う。報告システムの必要性、困難
性とそのギャップについて理解する。
●今後について
アジア、アフリカ地域での試行。MIMの運用による学習効果の強化。多職種・多部門が関与
する領域(薬効・副作用監視、輸血、放射線、医療機器、ワクチン接種)におけるMIMの試
行。患者からの報告を可能にするなど有害事象報告システムに関する新しい考え方の導入(患
者の責任感の養成、患者の声を現場に届ける、患者・住民と医療者とのパートナーシップの形
成が期待できる)。
- 31 -
9 ISQua(International Society for Quality in Health Care)との連携について
I S Q u a(The International Society for Quality in Health Care)
(http://www.isqua.org/) は、
医療の質の向上に関わる国際団体で1985年に設立され、現在本部はダブリン(アイルランド)に
置かれています。そして、約70カ国の組織会員、個人会員とアイルランド政府から資金を得て運営
されています。本財団は組織会員として登録するとともに、24名が個人会員として参加しています。
2015年10月4日∼7日に、中東のカタール、ドーハの National Convention Center で、
第32回 ISQua International Conference が開催されました。会期中に開催された理事会におい
て、本財団の今中雄一理事が、ISQuaの理事として選出されました。
ISQuaの主な事業は次の通りです。
・病院等の第三者評価に関する国際認定(IAP : International Accreditation Programme)
・学会誌 International Journal for Quality in Health Care の出版
・医療の質向上に関する教育・啓発事業(ISQua Education)
・国際学術会議 International Conference の開催 2016年は、10月16日(日)∼19日(水)東京国際フォーラムにて開催の予定です(http://
jcqhc.or.jp/banaimg/ISQua.pdf)
。この機会を活用して、同会との連携を深める中で、国際的な流れに
即した取り組みを実践することだけでなく、国際的な流れの形成に参加することにも取り組んでいます。
図19 2016年のISQua国際会議(東京)を伝える情報(ISQuaホームページより)
また、最近では、本財団はISQuaと共同で、インターネット講義である Webinar の日本語版
である「Japanese Webinar」を運営することによって、一層の情報発信に努めています。同時に、同
じ内容を英語版の Webinar でも情報発信しています。
- 32 -
10 海外に向けた情報発信
医療事故情報収集等事業では、年報の英語版や医療安全情報の英語版を公表しており、本事業の
ホームページの英語のページに掲載し、事業の内容や成果の周知に活用してきました。
そのような情報発信を続けておりましたところ、2010年度以降、毎年のように、海外から本
事業を含む、本財団の医療の質や安全に関する事業の講演のご依頼を受けるようになりました。ま
た、本財団がISQua(International Society for Quality in Healthcare)との連携を強める中で、
ISQuaの年次会議でも同様の内容で発表を続けています。
最近では、WHOの会議において本事業や本財団の運営している医療の質や安全に関する事業
についてご説明する講演やプレゼンテーション等のご依頼を頂いています。後が2015年9月に
WHO West Pacific Region が 主 催 し 香 港 で 開 催 さ れ た WPRO Policy Round Table on Quality in
Health Services (第44回報告書 34∼36頁に概要を掲載)
、11月にスイス、ジュネーブの
W H O 本 部 で 開 催 さ れ た WHO Strategic Expert Working Group Meeting Developing Vision and
Strategic Directions for Improving Patient Safety and Quality of Care ( 第44回報告書 39頁に
概要を掲載)に引き続き、2016年2月には、オマーンのマスカットで開催された Inter-Regional
Technical Consultation on Best Practices in Patient Safety and Quality of Care 、3月には、スリラン
カのコロンボで開催された WHO Inter-Regional Consultation Patient Safety Incident Reporting and
Learning Systems in Africa and Asia Pacific Regions で本事業について講演しました。それら2回の
会議の概要を次に示します。
1) Inter-Regional Technical Consultation on Best Practices in Patient Safety and Quality of Care,
8-10 February 2016 in Muscat, Oman
○ 2016年2月8∼10日にオマーンのマスカットにおいて、日本およびオマーン政府の協力
を得て、WHOの 4 つの地域(アフリカ地域、東地中海地域、南東アジア地域、西太平洋地域)
の連携を図ることを目的として、WHO本部及びWHO東地中海地域オフィスの主催により開
催された。
○ 会合は、WHO Global Patient Safety and Quality Network を構築するイニシアチブの一環であ
り、同時に、医療の質と安全の強化を望む世界的な関心の高まりに対するもの。
○ 22の国から医療の質や安全に関し、120名の参加者と専門家つまり保健省の政策決定者や
主要な施設、組織、利害関係者が集まる会議に参加した。
○目的は次の通りである。
①対話や経験やノウハウに関する国際的な情報交換の場を提供すること。
②患者安全の推進に成功している取り組みに学び重要な考察を行うこと。
③ 医療安全の強化や、質と安全の改善において、今後患者にどのように参加してもらうこと
ができるか検討すること。
④医療安全や質の改善分野において、世界的ネットワークを構築すること。
- 33 -
○ 当方の役割として、1日目午前に本事業についての講演(30分)をした。具体的には、日本
の医療安全対策(国レベル:医療事故情報収集等事業、産科医療無過失補償/原因分析・再発
防止制度、病院機能評価事業等、施設レベル:院内インシデント報告制度、紛争対応)につ
いて説明した。1日目午後のパネルディスカッション Panel Discussion on Selected Evidence
Based Interventions for Patient Safety and Quality of Care の司会(1時間)を行い、その他、
意見やコメントを述べて議論に参加した。
○会議で提案された推奨事項
各国のプレゼンテーションと3日間の議論を経て、以下の通り多くの推奨事項が導かれた。
① 患者安全におけるリーダーシップの関与:課題実行して患者安全や質の改善を進めるため
には強力なリーダーシップを必要とする。政治の関与も必須である。また、医療機関や医
療者によるマネジメント能力の発揮も同様である。このことは健康政策上優先されるべき
であり、患者安全の実施プログラムや介入の大規模化を図る上で、必要な資源を与えられ
るべきである。
② 政策や実践を説明するエビデンス:報告と学習のシステムが医療の安全や質の即時的モニ
タリングツールとして、また、エラーに学ぶツールとして確立されるべきである。様々な
規制により、このシステムを非懲罰的なものとしなければならない。そうすることにより、
失敗が正確に報告され、修正されることになる。医療の安全や質の必要性を評価し、達成
された進捗をモニタするための指標の確立も必要である。
③ 知識と技術的な能力の強化:計画された仕事の実行を支援するために、患者安全やコミュ
ニケーションに関するスタッフ教育が促進されるべきである。WHOが作成した患者安全
に関する多職種用のカリキュラムは、卒前、卒後及び継続的な教育プログラムにおいて有
用な資源となりうる。
④ 効果的なコミュニケーション手段:信頼でき効果的なメディアを通じたコミュニケーション
の戦略の作成のために、メディアによる、患者安全問題の根本原因の理解を構築する初期
の段階が必要である。
⑤ 患者安全における患者の強化と関与:患者の能力を養うことは、安全な医療の提供におい
て、説明を受けたパートナーとして積極的に関与してもらうために必要である。この中には、
患者や地域全体における健康に関する基礎的な能力向上を含み、そのことによって効果的
な患者や地域の関与を確実にするものである。
⑥ 優れた事例の共有と適用の促進:患者安全や質の領域におけるコミュニケーションや
警告、優れた取り組みの共有のための基盤として、WHO Global Patient Safety and Quality
Network が確立され維持される必要がある。この基盤によって、効果的で費用対効果の高
い解決を促進するために、資源の少ない状況に適応可能な革新的なアプローチの開発を可
能にする。
- 34 -
2) WHO Inter-Regional Consultation Patient Safety Incident Reporting and Learning Systems in
Africa and Asia Pacific Regions, 22-24 March 2016, Colombo, Sri Lanka
○ 2016年3月22∼24日にスリランカのコロンボにおいて、日本政府及びスリランカ政
府の支援を受けて、WHOの 4 つの地域(アフリカ地域、東地中海地域、南東アジア地域、
西太平洋地域)の連携を図ることを目的として、WHO本部及びWHO東南アジア地域オフィス
の主催により開催された。
○ WHOでは国レベルのインシデント報告制度の創設を希望する加盟国を支援するために、
2005年にドラフトガイドライン(初版)、簡素で機能的な報告項目であるMIM PS
(Minimal Information Model for Patient Safety Incident Reporting and Learning System) を開
発してきた。
○ 会議における議論は、今後作成される WHO Implementation Guidelines on Patient Safety
Incident Reporting and Learning Systems に活かされる予定である。
○ 21の国から医療の質や安全に関し、専門家つまり保健省の政策決定者や主要な施設、組織、
利害関係者が集まる会議に参加した。
○目的は次の通りである。
①報告と学習システムの運営から得られた教訓の情報交換を促進すること。
② 今後作成される WHO Implementation Guidelines on Patient Safety Incident Reporting and
Learning Systems に活かす知見を得ること。
③ MIM PSが試行された4つの地域における結果を、特に資源の少ない地域における運営
に着目してレビューすること及び、幅広く加盟国で運用可能であって、現場で運用可能な
ツールとしての有用性についてレビューすること。
④ データ分析の能力の開発:組織や需要度、資源に基づく分析方法の選択と適用に関する能
力を開発すること。
⑤ これらの議論から得られる教訓を活用すること及び、報告システムの更なる充実という
方向性に向けた推奨事項を提供すること。
○ 当方の役割として、1日目午後に本事業についての講演(15分)をした。具体的には、医療
事故情報収集等事業における報告の方法、分析結果、成果の活用例(名称類似薬の解消等)に
ついて説明した。1日目午後のグループワーク Developing WHO Guidance on Patient Safety
Incident Reporting and Learning Systems の司会とまとめ(2時間)を行い、その他、意見や
コメントを述べて議論に参加した。
○会議で行われた中心的な議論及び提案された推奨事項
○ 報告と学習システム(RLS : Reporting and Learning System)は患者安全の中心であり、
施設レベル、国レベル、WHOの地域レベル、世界レベルの全てのレベルで実践されるべきで
ある。加盟国は、国レベルで効果的かつ持続可能なインシデント報告システムを構築すべきで
ある。
- 35 -
○ 国レベルの報告システムについて、施設、地域、国のいずれのレベルから開始してもよいので、
段階的に国レベルのインシデント報告システムを整備する。これにより、次のことが期待され
る。
①患者安全への理解が改善し文化が醸成され、活用しやすい報告システムとなる。
② 政策的枠組み、法や規制の整備を行う。利害関係者を明確化し、公的、私的医療施設を対
象とし、また全ての医療を包括的に対象にした、義務的/任意的な報告制度を創設する。
③ 規制によって報告制度を非懲罰的なものとすることにより、発生した誤りが正確に報告さ
れるシステムを確立する。
④患者安全のためのナショナル・アクションプランを策定する。
⑤ 国レベルのガイドライン、定義、分類、ツール、SOPs(標準作業手順書)、インフラが
必要であり、その中で報告範囲を明確化する。
⑥この件に関する国レベルの中心や組織レベルの中心を設置することが必要である。
⑦ 報告者とそれに続く対応者とを明確化する。データ分析、推奨事項の作成、フィードバック、
モニタ、周知における役割と責任を明確化する。
⑧ 国や施設レベル、しかも病院だけでなくプライマリケアのレベルでも、リーダーシップの
形成とトレーニングの提供を行うべきである。
⑨ 教育にあたっては、WHOが作成した多職種向けカリキュラムを活用して、UG・PG(卒
前・卒後)カリキュラムや、CPD(Continuing Professional Development、継続研修)を
最新の内容に見直す。
⑩報告及び学習システム(RLS)のうち「学習」部分を強化する。
⑪ アンダー・レポーティングの問題と報告の質の問題に取り組む。インセンティブや報償の
仕組みの導入を検討する。
⑫研究機関の参加を得る。
⑬幅広い医療情報と関連させる。患者安全の指標を開発する。
⑭ キャンペーンの実施や、ソーシャルメディアによるネットワーク化、組織間や医療者、患
者代表者間のネットワーク化を図る。
⃝WHOの地域とグローバルレベルの報告制度
①リーダーシップ、政策立案と連携
・エビデンスやリサーチに基づく加盟国の支援
・ 戦略的な助言を行う、より大きな目的につなげる、UHC(Universal Health Coverage)
やSDG(Sustainable Development Goals)に関連させる
・政策の誘導、立法の必要性
・UHCや世界患者安全デーの制定に必要なWHO総会決議の作成
・効果的なパートナーシップの構築
− WHO Patient Safety and Quality Network
− Global Patient Safety Alerts(Canadian Patient Safety Institute)
−医師や看護師の教育委員会や大学との連携
−WHO連携センターやNGOとの公的な関係としての連携
−国際機関(ISQua、WONCA)
- 36 -
②基準、スタンダード、ガイドライン
・ WHOによる報告及び学習システム(RLS)の構築と実践のためのガイドライン、いく
つかの異なる技術的システムを統合する組織的なモデルが推奨されている
・整合性の評価ツール
・ITシステムの確立
・データ収集、分析、周知のための公開ソフトウエアやツールの開発
・ WHOの開示指針の策定:加盟国が患者や家族に対する情報開示の仕組みを開発するため
の指針
・用語の定義と、最低限の共通化した報告項目の開発
・医療における賠償制度創設の指針
・認定の効果と費用対効果のエビデンスの作成
○技術的指針、施設や人材に対する支援や能力開発
①加盟国との共同作業を行う。RLSの開発や分析を、オンサイトで支援する。
② 全ての医療関係者の受講する教育プログラムに患者安全のカリキュラムを組み込む。卒前、
卒後のいずれの教育プログラムも対象とする。
③ 加盟国に対し、フェローシップや研修プログラムを通じて、国際的な能力開発の機会を提
供する。
④国レベルの認定制度を構築する。
⑤MIMを実践の初期段階において技術的支援を行う。
○モニタと測定
①ニーズの評価や進捗のモニタができるように、患者安全の指標を開発する。
② WHOによる Web-based reporting system の構築。世界レベルでデータ収集を行い、周知
する。
- 37 -
11 依頼講演への対応∼医療事故調査制度に関する内容を含む講演依頼が増えています∼
医療機関、薬局や、関係団体などのご依頼に対応して、本事業の現況や報告書、年報、医療安全
情報などの成果物の内容をご説明する講演を、毎年国内外で50回程度行っています。我が国におい
て、有害事象を調査、収集、分析、学習を行う全国規模の事業は図20の通りです。本財団が担当し
ている事業が多いことから、各事業の相互関係も含め、ご説明させていただいている内容は表10
の通りです。表に示すように、事業や成果の内容全般をご説明することが多いのですが、最近では、
2018年度開始を目途に準備が進められている新しい専門医制度の創設の関係で、制度を運営する
様々な学会からのご依頼もあり、その場合は、当該学会の専門領域に関する医療事故情報やヒヤリ・
ハット事例を詳しくご説明しています。
2015年10月に開始された医療事故調査制度に関する講演に関しては、本財団は、医療事故調
査制度における支援団体ですので、その役割として講演に対応しています。本年6月には、医療法に
定められていた交付後2年以内の見直しが行われ、その過程では、厚生労働省から社会保障審議会医
療部会にその内容が報告されました(図21)。
本事業にご参加いただいている医療機関の皆様の中で、ご希望がございましたらできる限り対応さ
せていただきますので、ご連絡いただければ幸いに存じます。
図20 有害事象(医療事故、ヒヤリ・ハット)の調査、収集、分析、学習を行う全国規模の制度・
事業
有害事象(医療事故、ヒヤリ・ハット)の
調査、収集、分析、学習を行う全国規模の制度・事業
2004 ∼
2015.10
医療事故情報
収集等事業
2008 ∼
薬局ヒヤリ・ハット事例
収集・分析事業
2009 ∼
産科医療補償制度
2015 ∼
医療事故調査制度
- 38 -
表10 講演内容
1. 医療事故をシステムの問題としてとらえる視点とその分析
2. 国レベルの有害事象・ニアミス報告制度
1)医療機関の報告制度∼医療事故情報収集等事業
・医療事故情報、ヒヤリ・ハット事例収集の意義
・事業の趣旨・概要
・報告書の内容(収集結果、テーマ分析の内容)
・医療安全情報(インスリン、カリウム製剤、抗凝固剤等に関する事例等)
・ホームページの活用方法
・原因分析の意義・方法
・海外への情報発信
2)薬局の報告制度∼薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業
・医療事故、ヒヤリ・ハット事例収集の意義
・事業の趣旨・概要
・集計報告、年報の内容(収集結果、疑義照会事例の増加、テーマ分析の内容)
①名称類似に関する事例の紹介、名称類似の販売名の組み合わせ、改善策等
② 疑義照会に関する事例の紹介、事例の内容(薬剤削除、分量変更等)、疑義照会は行わなかったが
その後疑義が生じた事例
③後発変更等に関する事例の紹介、他
・ 薬局と医療機関との連携の重要性(疑義照会が不十分であったために生じた医療事故及び改善策の紹
介等)
・薬局ヒヤリ・ハット分析表(後発変更等に関する事例、配合剤に関する事例等)の活用
・共有すべき事例の活用方法
・ホームページの活用方法
3)医療事故調査制度
・制度創設の経緯
・制度の全体像
・制度における「医療事故」とその判断、報告
・院内事故調査
・遺族説明の方法
・再発防止、医療事故情報収集等事業との類似性
・2016年6月に行われた制度の見直し
3. 分娩医療事故に関する無過失補償制度∼産科医療補償制度
・社会保障とそれを補完する民間の補償制度
・無過失補償の考え方と必要性
・事業の趣旨・概要
・無過失を前提とした補償基準の考え方と審査の現況
・原因分析の現況
・原因分析の考え方
・再発防止の現況
・産婦人科領域の紛争の現況
4. その他
・ISQua国際会議、WHO地域間会合等で学んだ海外の医療安全推進の取り組みについて
- 39 -
図21 医療事故調査制度の見直しの内容(社会保障審議会医療部会資料より)
12 医療事故調査制度における支援団体としての役割について
2015年10月1日に、医療事故調査制度に関する医療法が施行され、制度が開始されました。
本財団は、法に定める「医療事故調査等支援団体」として告示されています。具体的な支援内容とし
ては、医療機関からの求めに応じ、制度のご説明を含む講演のご依頼に対応することで支援を行って
おり、既に複数件の実績があります。講演では、制度の概要だけでなく、開始後の報告件数等の現況、
医療事故情報収集等事業や産科医療補償制度における、原因分析や再発防止の方法や内容の類似性、
医療現場における医療事故の判断の現状等についてもご説明しており、本財団が様々な類似事業を運
営していることの特長を生かした内容となっています。医療事故調査制度に関する最近の話題として
は、先述したように、2016年6月9日開催の社会保障審議会医療部会において、法に定める期限
までには法改正はできないこと、運用面では必要な改善措置を実施することが報告されました。そして
2016年6月には、医療法に定められていた公布後2年以内の見直しが行われ、中央レベルと地方
レベルに支援団体連絡協議会を制度的に位置づけること、管理者は院内で発生する死亡事例を遺漏
なく把握できる体制を確保すること、遺族からの相談に対応し相談内容等を医療機関に伝達するこ
と、研修の充実や優良事例の共有を行うこと、医療事故調査・支援センターから医療機関に対して院
内事故調査報告書の内容に関する確認や照会等を行うことが見直され、明確化されるなどしました
(図21)。そのような内容も盛り込んだ講演を提供することで、医療機関や関連団体をご支援してい
ます。
- 40 -
13
Facebook を活用した情報発信
医療事故防止事業部では、公式の Facebook ページを作成し、2014年4月8日より情報発信を
始めました。Facebook を活用することにより、1)本事業の最新の情報をタイムリーに発信でき、
「いいね!」に登録していただいたユーザはタイムリーに情報を受け取ることができる、2)「いい
ね!」に登録していただいた Facebook ユーザを介して、本事業をご存知ではない方に情報発信でき
る、などのメリットがあると考えています。情報発信する内容としては、①報告書、年報に関する情
報、②医療安全情報に関する情報、③システムメンテナンスに関する情報、④その他 事業の動向(取
材対応など)を考えており、発信頻度は1回/週を目安としています。本稿執筆時点で、本事業の
Facebook のページの「いいね!」に登録していただいたユーザは1,697名となっています。本事
業の Facebook のページ及びコンテンツの例を次に示します(図22)
。
図22 医 療 事 故 情 報 収 集 等 事 業 の Facebook ペ ー ジ( U R L:https://www.facebook.com/
medsafe.jcqhc)
- 41 -
14
おわりに
事業に参加しておられる医療機関の皆様におかれましては、引き続き本事業において医療事故情報
やヒヤリ・ハット事例をご報告いただきますよう宜しくお願い申し上げます。また、これまで以上に
報告しやすい環境を整備することにより、報告の負担のために従来本事業への参加を躊躇しておられ
た医療機関の皆様の新規のご参加も期待しております。今後とも本事業が我が国の医療事故の防止お
よび医療安全の推進に資するよう、報告書や年報の内容充実と、一層有効な情報提供に取り組んでま
いりますので、皆様のご理解とご協力を心よりお願い申し上げます。
- 42 -
Ⅰ 医療事故情報収集等事業の概要
本事業は、医療事故情報やヒヤリ・ハット事例の収集を基盤として、日々進歩する医療における
安全文化の醸成を図るよう取り組んでいる。
本事業は、医療事故情報収集・分析・提供事業とヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業の2つ
の事業より構成されており、以下にそれぞれの事業の概要を述べる。
1 経緯
【1】ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業の経緯
厚生労働省は、2001年10月から、ヒヤリ・ハット事例を収集・分析し、その改善方策等医療
安全に資する情報を提供する「医療安全対策ネットワーク整備事業(ヒヤリ・ハット事例収集事業)」
を開始した。事業開始当初、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構(現(独)医薬品医療機器総
合機構)が参加医療機関からヒヤリ・ハット事例を収集したのち厚生労働省へ報告し、厚生労働省の
研究班が集計・分析を行う枠組みとなっていた。この枠組みに従ってヒヤリ・ハット事例収集が行われ、
厚生労働省より集計結果の概要を公表する等、収集したヒヤリ・ハット事例に基づく情報提供が行わ
れた。(注1)
2004年度からは、本財団が医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構(現(独)医薬品医療機器
総合機構)よりヒヤリ・ハット事例収集事業を引き継ぎ、ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業
を行ってきた。集計・分析結果は、本事業のホームページにおいて公表している。(注2)
【2】医療事故情報収集・分析・提供事業の経緯
2002年4月、厚生労働省が設置した医療安全対策検討会議が「医療安全推進総合対策」(注3)を
取りまとめ公表した。同報告書は、2001年10月から開始された医療安全対策ネットワーク整備
事業(ヒヤリ・ハット事例収集事業)に関し、
「事例分析的な内容については、今後より多くの施設から、
より的確な原因の分析・検討結果と改善方策の分析・検討結果を収集する体制を検討する必要がある。
」
と述べるとともに、医療事故事例に関してもその収集・分析による活用や強制的な調査・報告の制度化
を求める意見を紹介しつつ、医療事故の報告に伴う法的な問題も含めてさらに検討する必要があると
述べた。
(注1)厚生労働省ホームページ「医療安全対策」
(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/i-anzen/index.html)
参照。
(注2)公益財団法人日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業ホームページ(http://www.med-safe.jp/)参照。
(注3)「医療安全推進総合対策」では、
『医療機関における安全対策』、
『医薬品・医療用具等にかかわる安全向上』、
『医療安全に関する教育研修』
、
『医療安全を推進するための環境整備等』を取り組むべき課題として提言がなされた。
厚生労働省ホームページ(医療安全対策のページにおける「3 医療安全推進総合対策」の報告書)(http://www.mhlw.go.jp/topics/
bukyoku/isei/i-anzen/houkoku/index.html)参照。
- 43 -
I
Ⅰ 医療事故情報収集等事業の概要
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
その後、厚生労働省が平成16年9月21日付で医療法施行規則の一部を改正する省令(注1)を公布
し、特定機能病院などに対して医療事故の報告を義務付けた。本財団は、同年10月1日付厚生労働
省告示第三百七十二号を受け(同年9月30日登録)、当該省令に定める事故等分析事業を行う登録
分析機関となり、医療事故情報収集・分析・提供事業を開始した。その後、本財団は5年毎に必要とさ
れている医療法施行規則第十二条の五に基づく登録分析機関として、2009年に2期目の登録更新、
2014年に3期目の登録更新を行った。
【3】本財団における事業の経緯
2004年7月1日、本財団内に医療事故防止センター(現 医療事故防止事業部)を付設し、
2004年10月7日、法令に基づく医療事故情報の収集を開始した。医療事故防止事業部では、
ヒヤリ・ハット事例、医療事故情報を併せて総合的に分析し、当事業部の運営委員会(注2)の方針に
基づいて、専門家より構成される総合評価部会(注3)による取りまとめを経て報告書を作成している。
2006年度からは特に周知すべき事例や個別テーマを医療安全情報として作成・提供し、2010年
度からは、より具体的な個別テーマの分析を開始し、報告書に掲載している。
また、2008年より、医療機関の報告の負担を軽減し、これまで以上に報告しやすい環境を整備
するとともに、医療安全推進に必要な情報の収集は引き続き行っていく観点から、本事業の運営委
員会や総合評価部会において報告体制の見直しが検討された。その内容を具体化し、2010年より、
インターネットを活用した医療事故情報やヒヤリ・ハット事例の新たな収集方式および情報提供を
開始した。
本財団は、報告書や医療安全情報を、本事業に参加している医療機関、関係団体、行政機関などに
送付するとともに、本事業のホームページ(注4)へ掲載することなどにより広く社会に公表している。
(注1)厚生労働省令第133号。
(注2)医療全般、安全対策などの有識者や一般有識者などで構成され、当事業部の活動方針の検討及び活動内容の評価などを行っている。
(注3)各分野からの専門家などで構成され、報告書を総合的に評価・検討している。また、分析手法などに関する技術的支援も行っている。
(注4)公益財団法人日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業ホームページ(http://www.med-safe.jp/)参照。
- 44 -
2 医療事故情報収集・分析・提供事業の概要
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
2 医療事故情報収集・分析・提供事業の概要
I
【1】事業の目的
報告義務対象医療機関並びに医療事故情報収集・分析・提供事業に参加を希望する参加登録申請医
療機関から報告された医療事故情報などを、収集、分析し提供することにより、広く医療機関が医療
安全対策に有用な情報を共有するとともに、国民に対して情報を提供することを通じて、医療安全対
策の一層の推進を図ることを目的とする。
【2】医療事故情報の収集
(1)対象医療機関(注1)
対象医療機関は、次に掲げる報告義務対象医療機関と参加登録申請医療機関である。
ⅰ)報告義務対象医療機関(注2)
① 国立研究開発法人及び国立ハンセン病療養所
② 独立行政法人国立病院機構の開設する病院
③ 学校教育法に基づく大学の附属施設である病院(病院分院を除く)
④ 特定機能病院
ⅱ)参加登録申請医療機関
報告義務対象医療機関以外の医療機関であって、医療事故情報収集・分析・提供事業に参加を希
望する医療機関
(2)医療事故情報として報告していただく情報の範囲
報告の対象となる医療事故情報は次の通りである。
① 誤った医療または管理を行ったことが明らかであり、その行った医療又は管理に起因して、患
者が死亡し、若しくは患者に心身の障害が残った事例又は予期しなかった、若しくは予期して
いたものを上回る処置その他の治療を要した事例。
② 誤った医療または管理を行ったことは明らかでないが、行った医療又は管理に起因して、患者
が死亡し、若しくは患者に心身の障害が残った事例又は予期しなかった、若しくは予期してい
たものを上回る処置その他の治療を要した事例(行った医療又は管理に起因すると疑われるも
のを含み、当該事例の発生を予期しなかったものに限る)。
③ ①及び②に掲げるもののほか、医療機関内における事故の発生の予防及び再発の防止に資する
事例。
(注1)対象医療機関は公益財団法人日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業ホームページ「参加登録医療機関一覧」
(http://www.medsafe.jp/contents/register/index.html)参照。
(注 2) 国立研究開発法人、国立ハンセン病療養所、独立行政法人国立病院機構の開設する病院、学校教育法(昭和22年法律第26号)に基づく
大学の附属施設である病院(病院分院を除く)
、特定機能病院に対して、厚生労働省は平成16年9月21日付で医療法施行規則の一部
を改正する省令(平成16年 厚生労働省令第133号)を公布し、医療事故情報の報告を義務付けた。
- 45 -
Ⅰ 医療事故情報収集等事業の概要
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
医療事故情報は、
「発生年月及び発生時間帯」
「事故の程度」
「事故の概要」
「患者の数、患者の年齢及
び性別」
「事故の内容、背景・要因、改善策」等、28項目の情報の報告を行う。また、報告は当該事故
が発生した日若しくは事故の発生を認識した日から原則として二週間以内に行わなければならない。
また、以下の①∼⑧の項目を医療事故情報収集等事業事業要綱 第十四条の2(注1)に基づき、
「特に
報告を求める事例」と定めている。
① 汚染された薬剤・材料・生体由来材料等の使用による事故
② 院内感染による死亡や障害
③ 患者の自殺又は自殺企図
④ 入院患者の失踪
⑤ 患者の熱傷
⑥ 患者の感電
⑦ 医療施設内の火災による患者の死亡や障害
⑧ 間違った保護者の許への新生児の引渡し
(3)報告方法
報告はインターネット回線(SSL暗号化通信方式)を通じ、
Web上の専用報告画面を用いて行う。
報告方法は、Web上の報告画面に直接入力し報告する方法と、指定フォーマット(XMLファイル)
を作成し報告する方法とがある。直接入力する方法は、チェックボックスやプルダウンリストから該
当する項目を選択して回答する選択形式と、記述欄に文字入力する記述形式がある(注2)。
【3】医療事故情報の分析・提供
(1)集計・分析
公益財団法人日本医療機能評価機構 医療事故防止事業部において行っている。
(2)集計・分析結果の公表
本事業の報告書及びホームページ(注3)を通じて、関係者や国民に情報提供している。
(注1)医療事故情報収集等事業事業要綱 第十四条の2 当事業部は、前項の各号に規定する事故の範囲に該当する事例に関する情報を適切に
収集するために、必要な報告項目を定めることができる。
(http://www.
(注2)「報告入力項目(医療事故情報)」は公益財団法人日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業ホームページ「関連文書」
med-safe.jp/pdf/accident_input_item.pdf)参照。
(注3)公益財団法人日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業ホームページ(http://www.med-safe.jp/)参照。
- 46 -
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業の概要
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業の概要
I
【1】事業の目的
参加医療機関から報告されたヒヤリ ・ ハット事例を収集、分析し提供することにより、広く医療機関
が医療安全対策に有用な情報を共有するとともに、国民に対して情報を提供することを通じて、医療
安全対策の一層の推進を図ることを目的とする。
【2】ヒヤリ・ハット事例の収集
(1)対象医療機関(注)
対象医療機関は、ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業に参加を希望する医療機関である。
ヒヤリ・ハット事例には「発生件数情報」と「事例情報」の2種類の情報がある。
ⅰ)「発生件数情報」を報告する医療機関(参加医療機関)
ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業に参加を希望する全ての医療機関である。
ⅱ)「事例情報」を報告する医療機関(事例情報報告参加医療機関)
ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業に参加を希望する医療機関のうち、事例報告を
希望する医療機関である。
(2)ヒヤリ・ハット事例として報告していただく情報の範囲
ⅰ)ヒヤリ・ハット事例の定義
① 医療に誤りがあったが、患者に実施される前に発見された事例。
② 誤った医療が実施されたが、患者への影響が認められなかった事例または軽微な処置・
治療を要した事例。ただし、軽微な処置・治療とは、消毒、湿布、鎮痛剤投与等とする。
③ 誤った医療が実施されたが、患者への影響が不明な事例。
ⅱ)報告内容
① 「発生件数情報」の報告
発生件数情報は、
ヒヤリ・ハット事例を「薬剤」
「輸血」
「治療・処置」
「医療機器等」
「ドレーン・
チューブ」
「検査」
「療養上の世話」
「その他」といった事例の概要で分類する。同時に、まず、誤っ
た医療行為の実施の有無を分け、さらに誤った医療行為の実施がなかった場合、もしその医療行
為が実施されていたら、患者にどのような影響を及ぼしたか、といった影響度で分類し(発生
件数情報入力画面参照)、それぞれの分類に該当する件数を報告する。
発生件数情報の報告期間は、各四半期(1∼3、4∼6、7∼9、10∼12月)の翌月初め
から月末としている。
(注) 対象医療機関は公益財団法人日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業ホームページ「参加登録医療機関一覧」(http://www.medsafe.jp/contents/register/index.html)参照。
- 47 -
Ⅰ 医療事故情報収集等事業の概要
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
【発生件数情報入力画面】
誤った医療の実施の有無
実施なし
影響度
項 目
当該事例の内容が仮に実施された場合
実施あり
合 計
死亡もしくは重篤 濃厚な処置・治療 軽微な処置・治療が必要
な状 況に至ったと が 必 要 であると もしくは処置・治療が不要
考えられる
考えられる
と考えられる
(1)薬剤
件
件
件
件
件
(2)輸血
件
件
件
件
件
(3)治療・処置
件
件
件
件
件
(4)医療機器等
件
件
件
件
件
(5)ドレーン・チューブ
件
件
件
件
件
(6)検査
件
件
件
件
件
(7)療養上の世話
件
件
件
件
件
(8)その他
件
件
件
件
件
件
件
件
件
件
【1】薬剤の名称や形状に関連する事例
件
件
件
件
件
【2】薬剤に由来する事例
件
件
件
件
件
【3】医療機器等に由来する事例
件
件
件
件
件
【4】今期のテーマ
件
件
件
件
件
合 計
再 掲
注)「【4】 今期のテーマ」とは、収集期間ごとに定められたテーマに該当する事例のことである。
② 「事例情報」の報告
事例情報は次のⅰ∼ⅴに該当する事例の情報(
【発生件数情報入力画面】実線囲み部分)を
収集する。
ⅰ 当該事例の内容が仮に実施された場合、死亡もしくは重篤な状況に至ったと考えられる事例
ⅱ 薬剤の名称や形状に関連する事例
ⅲ 薬剤に由来する事例
ⅳ 医療機器等に由来する事例
ⅴ 収集期間ごとに定められたテーマに該当する事例
なお、2016年のテーマは「腫瘍用薬に関連した事例」である。
ヒヤリ・ハット事例は、「発生年月及び発生時間帯」
「事例の概要」
「医療の実施の有無」
「事例
の治療の程度または影響度」「発生場所」「患者の数、患者の年齢及び性別」「事例の内容、背景・
要因、改善策」等、24項目の情報の報告を行う。
事例情報の報告期限は、事例が発生した日もしくは事例の発生を認識した日から1ヶ月として
いる。
- 48 -
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業の概要
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
(3)報告方法
報告はインターネット回線(SSL暗号化通信方式)を通じ、
Web上の専用報告画面を用いて行う。
ⅰ)「発生件数情報」の報告
Web上の報告画面に発生件数を直接入力する。
ⅱ)「事例情報」の報告(注1)
Web上の報告画面に直接入力し報告する方法と、指定フォーマット(XMLファイル)を
作成し報告する方法とがある。直接入力する方法は、チェックボックスやプルダウンリストから
該当する項目を選択して回答する選択形式と、記述欄に文字入力する記述形式がある。
【3】ヒヤリ・ハット事例の分析・提供
(1)集計・分析
公益財団法人日本医療機能評価機構 医療事故防止事業部において行っている。
(2)集計・分析結果の提供
本事業の報告書及びホームページ(注2)を通じて、関係者や国民に情報提供している。
(注1)
「報告入力項目(ヒヤリ・ハット事例)
」は公益財団法人日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業ホームページ「関連文書」
(http://www.med-safe.jp/pdf/hiyarihatto_input_item.pdf)参照。
(注2)公益財団法人日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業ホームページ(http://www.med-safe.jp/)参照。
- 49 -
I
Ⅱ 報告の現況
1 医療事故情報収集等事業の現況
医療事故情報収集等事業は、医療事故情報収集・分析・提供事業とヒヤリ・ハット事例収集・分析・
提供事業の2つの事業により構成されている。
2016年6月30日現在、それぞれの事業に参加している医療機関は以下の通りである。
(注)
図表Ⅱ - 1- 1 (QI-01)
参加登録医療機関の登録状況
ヒヤリ・ハット事業
登録状況
参加する
参加しない
義務
発生件数と
事例情報
参加する
124
参加する
356
合計
発生件数のみ
82
480
任意
医療事故事業
参加しない
70
298
216
276
253
183
163
249
643
547
合計
1,031
755
412
253
1,443
1,190
各事業の報告の現況を、2 医療事故情報収集・分析・提供事業、3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・
提供事業に示す。
(注)各図表番号に併記される( )内の番号はWeb上に掲載している同図表の番号を示す。
- 50 -
2 医療事故情報収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
2 医療事故情報収集・分析・提供事業
医療事故情報収集・分析・提供事業は、報告義務対象医療機関と本事業に参加を希望する参加登録
申請医療機関から医療事故情報の収集を行う。本報告書には、報告義務対象医療機関より報告された
内容を中心に集計結果を掲載している。事故の概要や事故の程度等の集計結果は、2016年4月
から6月の集計値と2016年の累計値とを併記して掲載した。
Ⅱ
【1】登録医療機関
(1)報告義務対象医療機関数及び参加登録申請医療機関数
2016年6月30日現在、医療事故情報収集・分析・提供事業に参加している医療機関数は以下の
通りである。なお、医療機関数の増減の理由には、新規の開設や閉院、統廃合の他に、開設者区分の
変更も含まれる。
図表Ⅱ - 2- 1 (QA-01)
報告義務対象医療機関数及び参加登録申請医療機関数
開設者
国立大学法人等
独立行政法人国立病院機構
国立研究開発法人
国立ハンセン病療養所
国
独立行政法人労働者健康安全機構
独立行政法人地域医療機能推進機構
その他の国の機関
都道府県
市町村
自治体
公立大学法人
地方独立行政法人
日本赤十字社
恩賜財団済生会
北海道社会事業協会
自治体以外の公的 厚生農業協同組合連合会
医療機関の開設者 国民健康保険団体連合会
健康保険組合及びその連合会
共済組合及びその連合会
国民健康保険組合
学校法人
医療法人
公益法人
法人
会社
その他の法人
個 人
合 計
報告義務対象
医療機関
参加登録申請
医療機関
45
143
8
13
0
0
0
2
0
9
1
0
0
0
0
0
0
0
0
54
0
1
0
0
0
276
1
0
0
0
31
40
0
20
84
2
22
56
19
1
18
1
1
10
0
13
307
46
12
28
43
755
※参加登録申請医療機関とは、報告義務対象医療機関以外に任意で本事業に参加している医療機関である。
- 51 -
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
(2)参加登録申請医療機関数の推移
2016年1月1日から同年6月30日までの参加登録申請医療機関数の推移は以下の通りである。
図表Ⅱ - 2- 2 (QA-02)
参加登録申請医療機関数の推移
2016 年
1月
2月
3月
新規登録
医療機関数
3
5
登録取下げ
医療機関数
0
746
累 計
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10 月
11 月
12 月
0
3
3
1
−
−
−
−
−
−
0
0
1
1
1
−
−
−
−
−
−
751
751
753
755
755
−
−
−
−
−
−
- 52 -
2 医療事故情報収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
【2】報告件数
(1)月別報告件数
2016年1月1日から同年6月30日までの報告義務対象医療機関及び参加登録申請医療機関の
月別報告件数は以下の通りである。
図表Ⅱ - 2- 3 (QA-03)
報告義務対象医療機関及び参加登録申請医療機関の月別報告件数
2016 年
報告義務対象
医療機関報告数
参加登録申請
医療機関報告数
報告義務対象
医療機関数
参加登録申請
医療機関数
10 月 11 月 12 月
合計
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
316
228
321
281
244
288
−
−
−
−
−
−
1,678
50
16
19
33
11
39
−
−
−
−
−
−
168
275
275
275
275
276
276
−
−
−
−
−
−
−
746
751
751
753
755
755
−
−
−
−
−
−
−
(2)医療事故情報の報告状況
① 報告義務対象医療機関の報告状況
報告義務対象医療機関の2016年4月1日から同年6月30日までの報告医療機関数及び報告
件数を図表Ⅱ - 2- 4に、事業開始からの報告件数を開設者別に集計したものを図表Ⅱ - 2- 5に、病床
規模別に集計したものを図表Ⅱ - 2- 6に、地域別に集計したものを図表Ⅱ - 2- 7に示す。また、
同期間内における報告医療機関数を報告件数別に集計したものを図表Ⅱ - 2- 8に示す。なお、報告
義務対象医療機関については、集計期間中に特定機能病院の認定や医療機関の廃止等の変更が行われ
ることがあるため、医療機関数等の数値が他の図表と一致しない場合がある。2016年6月30日
現在、報告義務対象医療機関は276施設、病床数合計は141,202床である。
図表Ⅱ - 2- 4 (QA-04)
開設者別報告義務対象医療機関の報告医療機関数及び報告件数
開設者
国立大学法人等
国
独立行政法人国立病院機構
国立研究開発法人
国立ハンセン病療養所
報告医療機関数
報告件数
自治体
医療機関数
※ 2016 年
6月30日現在
2016 年
4月∼6月
2016 年
1月∼6月(累計)
2016 年
4月∼6月
45
30
38
171
410
143
93
123
301
728
8
6
7
14
40
13
4
7
7
17
12
8
10
93
134
54
25
31
222
344
2016 年
1月∼6月(累計)
都道府県
市町村
公立大学法人
地方独立行政法人
法人
学校法人
公益法人
合 計
1
1
1
5
5
276
167
217
813
1,678
- 53 -
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
図表Ⅱ - 2- 5 (QA-05)
報告義務対象医療機関の報告件数(累計)
報告件数
開設者
2004 年10月∼
2016 年6月
国立大学法人等
5,861
独立行政法人国立病院機構
国
10,641
国立研究開発法人
988
国立ハンセン病療養所
286
都道府県
自治体
市町村
1,643
公立大学法人
地方独立行政法人
法人
学校法人
5,645
公益法人
41
合 計
25,105
図表Ⅱ - 2- 6 (QA-06)
病床規模別報告義務対象医療機関の報告医療機関数及び報告件数
病床数
医療機関数
※ 2016 年
6月 3 0日現在
報告医療機関数
2016 年
4月∼6月
報告件数
2016 年
1月∼6月
(累計)
2016 年
4月∼6月
2016 年
1月∼6月
(累計)
0 ∼ 19 床
0
0
0
0
0
20 ∼ 49 床
15
2
2
5
5
50 ∼ 99 床
5
1
1
1
1
100 ∼ 149 床
8
0
4
0
8
150 ∼ 199 床
7
5
5
16
20
200 ∼ 249 床
16
10
12
15
35
250 ∼ 299 床
16
8
13
21
45
300 ∼ 349 床
28
18
24
39
76
350 ∼ 399 床
16
10
14
46
100
400 ∼ 449 床
27
18
24
65
175
450 ∼ 499 床
19
14
17
54
133
500 ∼ 549 床
10
5
7
16
31
550 ∼ 599 床
8
8
8
36
94
600 ∼ 649 床
27
16
21
114
237
650 ∼ 699 床
7
7
7
31
83
700 ∼ 749 床
11
7
10
21
64
750 ∼ 799 床
3
2
3
6
12
800 ∼ 849 床
12
9
11
98
160
850 ∼ 899 床
4
2
3
12
56
900 ∼ 999 床
11
9
9
64
88
1000 床以上
26
16
22
153
255
276
167
217
813
1,678
合 計
- 54 -
2 医療事故情報収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
図表Ⅱ - 2- 7 (QA-07)
地域別報告義務対象医療機関の報告医療機関数及び報告件数
地域
医療機関数
※ 2016 年
6月 3 0日現在
報告医療機関数
2016 年
4月∼6月
報告件数
2016 年
1月∼6月
(累計)
2016 年
4月∼6月
2016 年
1月∼6月
(累計)
北海道
10
8
8
16
26
東北
25
14
20
40
78
関東甲信越
87
53
64
304
536
東海北陸
38
30
33
158
298
近畿
35
18
25
74
148
中国四国
35
22
33
121
291
九州沖縄
合 計
46
22
34
100
301
276
167
217
813
1,678
図表Ⅱ - 2- 8 (QA-08)
報告件数別報告義務対象医療機関数
報告医療機関数
報告件数
2016 年
4月∼6月
0
109
59
1
50
39
2
27
21
3
20
33
4
15
24
5
11
13
6
12
10
7
6
6
8
8
8
9
3
10
10
3
5
11 ∼ 20
8
30
21 ∼ 30
2
13
31 ∼ 40
0
2
41 ∼ 50
0
1
2016 年
1月∼6月(累計)
51 ∼ 100
2
1
101 ∼ 150
0
1
151 ∼ 200
0
0
200 以上
合 計
0
0
276
276
- 55 -
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
② 参加登録申請医療機関の報告状況
参加登録申請医療機関の2016年4月1日から同年6月30日までの報告医療機関数及び
報告件数を図表Ⅱ - 2- 9に、事業開始からの報告件数を開設者別に集計したものを図表Ⅱ - 2- 10
に示す。
図表Ⅱ - 2- 9 (QA-09)
参加登録申請医療機関の報告医療機関数及び報告件数
開設者
国
報告医療機関数
医療機関数
※ 2016 年
6月30日現在
2016 年
4月∼6月
報告件数
2016 年
1月∼6月
(累計)
2016 年
4月∼6月
2016 年
1月∼6月
(累計)
72
3
7
3
20
自治体
128
8
17
25
61
公的医療機関
106
2
8
4
16
法 人
406
16
24
51
71
個 人
43
0
0
0
0
合 計
755
29
56
83
168
図表Ⅱ - 2- 10 (QA-10)
参加登録申請医療機関の報告件数(累計)
開設者
報告件数
2004 年10月∼ 2016 年6月
国
141
自治体
713
公的医療機関
768
法 人
1,421
個 人
6
合 計
3,049
- 56 -
2 医療事故情報収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
【3】報告義務対象医療機関からの報告の内容
2016年4月1日から同年6月30日までの報告義務対象医療機関からの医療事故情報の
報告の内容は以下の通りである。
なお、各表は、医療事故情報報告入力項目(注)を集計したものである。
図表Ⅱ - 2- 11 (QA-28-A)
当事者職種
当事者職種
件数
医師
490
歯科医師
18
看護師
436
准看護師
5
薬剤師
2
臨床工学技士
12
助産師
2
看護助手
7
診療放射線技師
11
臨床検査技師
1
管理栄養士
1
栄養士
2
調理師・調理従事者
4
理学療法士(PT)
7
作業療法士(OT)
4
言語聴覚士(ST)
1
衛生検査技師
0
歯科衛生士
1
歯科技工士
0
その他
8
合計
Ⅱ
1,012
※当事者とは当該事象に関係したと医療機関が判断した者であり、複数回答が可能である。
(注) 「報告入力項目(医療事故情報)
」は公益財団法人日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業ホームページ「関連文書」
(http://www.
med-safe.jp/pdf/accident_input_item.pdf)参照。
- 57 -
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
図表Ⅱ - 2- 12 (QA-29-A)
当事者職種経験
当事者職種経験
医師
歯科医師
看護師
准看護師
薬剤師
臨床工学
技士
助産師
看護助手
診療放射線 臨床検査
技師
技師
0年
7
0
23
0
0
0
0
0
1
0
1年
4
1
37
0
0
0
1
2
0
0
2年
24
3
40
0
0
0
0
0
0
1
3年
29
3
43
0
0
0
0
0
1
0
4年
18
1
25
0
0
1
0
0
1
0
5年
24
0
23
0
0
1
0
1
0
0
6年
22
1
18
0
0
0
0
1
1
0
7年
30
0
20
0
0
2
0
0
0
0
8年
18
0
13
0
0
1
0
0
0
0
9年
28
1
22
0
0
2
0
0
0
0
10 年
27
0
22
1
0
0
0
0
0
0
11 年
28
0
12
0
0
1
0
0
2
0
12 年
28
1
10
0
1
1
0
0
0
0
13 年
26
0
8
0
0
1
1
0
0
0
14 年
8
0
11
0
1
0
0
0
0
0
15 年
14
1
7
0
0
0
0
1
1
0
16 年
15
0
13
0
0
0
0
0
0
0
17 年
12
0
6
0
0
0
0
0
0
0
18 年
17
2
10
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
19 年
6
2
7
0
0
0
20 年
16
1
3
0
0
1
0
0
0
0
21 年
10
0
4
0
0
0
0
0
1
0
22 年
22
0
11
1
0
0
0
0
0
0
23 年
5
0
6
0
0
0
0
0
0
0
24 年
11
0
5
0
0
1
0
0
1
0
25 年
10
0
8
0
0
0
0
1
0
0
26 年
3
0
2
0
0
0
0
0
0
0
27 年
6
0
2
0
0
0
0
0
0
0
28 年
5
1
6
0
0
0
0
1
0
0
29 年
3
0
4
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
30 年
2
0
4
1
0
31 年
3
0
1
0
0
0
0
0
0
0
32 年
1
0
1
0
0
0
0
0
1
0
33 年
2
0
1
0
0
0
0
0
0
0
34 年
2
0
3
0
0
0
0
0
0
0
35 年
2
0
2
2
0
0
0
0
0
0
36 年
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
37 年
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
38 年
1
0
1
0
0
0
0
0
1
0
39 年
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
40 年超
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
合 計
490
18
436
5
2
12
2
7
11
1
※当事者とは当該事象に関係したと医療機関が判断した者であり、複数回答が可能である。
- 58 -
2 医療事故情報収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
管理栄養士
栄養士
調理師・ 理学療法士 作業療法士 言語聴覚士 衛生検査
歯科衛生士 歯科技工士
調理従事者 (PT)
(OT)
(ST)
技師
その他
合計
0
1
0
1
0
0
0
0
0
1
34
1
0
0
0
0
0
0
0
0
1
47
0
0
1
1
0
1
0
0
0
0
71
0
0
0
0
1
0
0
1
0
1
79
0
0
0
0
2
0
0
0
0
2
50
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
51
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
43
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
52
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
32
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
54
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
51
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
43
0
0
0
1
0
0
0
0
0
1
43
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
36
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
20
0
0
0
1
0
0
0
0
0
1
26
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
29
0
0
0
1
1
0
0
0
0
0
20
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
29
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
15
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
21
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
15
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
34
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
11
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
18
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
20
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
5
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
8
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
13
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
7
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
8
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
4
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
3
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
3
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
5
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
6
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
3
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
1
2
4
7
4
1
0
1
0
8
1,012
- 59 -
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
図表Ⅱ - 2- 13 (QA-30-A)
当事者部署配属期間
当事者部署配属期間
医師
歯科医師
看護師
准看護師
薬剤師
臨床工学
技士
助産師
看護助手
診療放射線 臨床検査
技師
技師
0年
101
3
92
1
1
3
0
1
3
0
1年
71
2
93
1
0
1
1
4
1
0
2年
34
1
62
0
0
0
0
0
3
1
3年
39
2
67
2
1
1
0
0
0
0
4年
33
2
36
0
0
2
0
1
2
0
5年
29
1
26
0
0
2
0
1
1
0
6年
22
1
22
0
0
1
0
0
1
0
7年
23
0
9
0
0
0
0
0
0
0
8年
19
1
8
0
0
0
0
0
0
0
9年
16
0
7
0
0
1
1
0
0
0
10 年
26
2
4
0
0
1
0
0
0
0
11 年
8
0
1
0
0
0
0
0
0
0
12 年
8
0
2
1
0
0
0
0
0
0
13 年
10
0
1
0
0
0
0
0
0
0
14 年
4
0
0
0
0
0
0
0
0
0
15 年
9
0
3
0
0
0
0
0
0
0
16 年
5
2
0
0
0
0
0
0
0
0
17 年
6
0
1
0
0
0
0
0
0
0
18 年
7
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
19 年
6
0
0
0
0
0
20 年
3
0
0
0
0
0
0
0
0
0
21 年
1
0
1
0
0
0
0
0
0
0
22 年
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
23 年
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
24 年
3
1
0
0
0
0
0
0
0
0
25 年
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
26 年
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
27 年
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
28 年
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
29 年
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
30 年
1
0
0
0
0
31 年
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
32 年
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
33 年
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
34 年
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
35 年
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
36 年
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
37 年
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
38 年
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
39 年
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
40 年超
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
合 計
490
18
436
5
2
12
2
7
11
1
※当事者とは当該事象に関係したと医療機関が判断した者であり、複数回答が可能である。
- 60 -
2 医療事故情報収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
管理栄養士
栄養士
調理師・ 理学療法士 作業療法士 言語聴覚士 衛生検査
歯科衛生士 歯科技工士
調理従事者 (PT)
(OT)
(ST)
技師
その他
合計
0
1
0
2
0
0
0
0
0
2
210
1
0
0
0
0
0
0
0
0
1
176
0
0
1
1
0
1
0
0
0
0
104
0
0
0
2
3
0
0
1
0
1
119
0
1
0
0
1
0
0
0
0
2
80
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
62
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
47
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
33
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
29
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
26
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
33
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
9
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
12
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
11
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
4
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
13
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
7
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
7
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
7
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
6
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
3
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
4
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
2
4
7
4
1
0
1
0
8
1,012
- 61 -
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
図表Ⅱ - 2- 14 (QA-35-A)
事故の概要
事故の概要
2016 年4月∼6月
件数
%
2016 年1月∼6月(累計)
件数
%
薬剤
58
7.1
96
5.7
輸血
2
0.2
3
0.2
治療・処置
261
32.1
491
29.3
医療機器等
25
3.1
47
2.8
ドレーン・チューブ
53
6.5
121
7.2
検査
療養上の世話
その他
合 計
36
4.4
65
3.9
292
35.9
640
38.1
86
10.6
215
12.8
813
100.0
1,678
100.0
※割合については、小数点第2位を四捨五入したものであり、合計が 100.0 にならないことがある。
図表Ⅱ - 2- 15 (QA-37-A)
事故の程度
事故の程度
死亡
2016 年4月∼6月
件数
%
65
8.0
2016 年1月∼6月(累計)
件数
147
%
8.8
障害残存の可能性がある(高い)
88
10.8
178
10.6
障害残存の可能性がある(低い)
225
27.7
455
27.1
障害残存の可能性なし
192
23.6
442
26.3
障害なし
201
24.7
374
22.3
不明
合 計
42
5.2
82
4.9
813
100.0
1,678
100.0
※事故の発生及び事故の過失の有無と事故の程度とは必ずしも因果関係が認められるものではない。
※「不明」には、報告期日(2週間以内)までに患者の転帰が確定していない事例が含まれる。
※割合については、小数点第2位を四捨五入したものであり、合計が 100.0 にならないことがある。
- 62 -
2 医療事故情報収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
図表Ⅱ - 2- 16 (QA-40-A)
関連診療科
関連診療科
2016 年4月∼6月
件数
2016 年1月∼6月(累計)
%
件数
%
内科
66
6.8
131
6.4
麻酔科
39
4.0
67
3.3
循環器内科
47
4.8
109
5.3
神経科
25
2.6
63
3.1
呼吸器内科
52
5.3
109
5.3
消化器科
56
5.7
120
5.8
血液内科
17
1.7
33
1.6
循環器外科
5
0.5
13
0.6
アレルギー科
1
0.1
1
0
3
0.3
6
0.3
小児科
リウマチ科
39
4.0
89
4.3
外科
85
8.7
191
9.3
107
11.0
262
12.7
形成外科
8
0.8
15
0.7
美容外科
0
0
0
0
脳神経外科
51
5.2
101
4.9
呼吸器外科
10
1.0
29
1.4
心臓血管外科
45
4.6
84
4.1
小児外科
5
0.5
8
0.4
ペインクリニック
1
0.1
1
0
整形外科
皮膚科
14
1.4
26
1.3
泌尿器科
29
3.0
49
2.4
0
0
0
0
性病科
肛門科
0
0
0
0
15
1.5
39
1.9
産科
3
0.3
6
0.3
婦人科
9
0.9
17
0.8
産婦人科
眼科
11
1.1
28
1.4
耳鼻咽喉科
22
2.3
41
2.0
2
0.2
2
0.1
心療内科
精神科
60
6.2
127
6.2
リハビリテーション科
10
1.0
20
1.0
放射線科
12
1.2
25
1.2
6
0.6
9
0.4
歯科
矯正歯科
0
0
0
0
小児歯科
1
0.1
1
0
15
1.5
23
1.1
1
0.1
2
0.1
歯科口腔外科
不明
その他
合 計
102
10.5
211
10.3
974
100.0
2,058
100.0
※関連診療科は複数回答が可能である。
※割合については、小数点第2位を四捨五入したものであり、合計が 100.0 にならないことがある。
- 63 -
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
図表Ⅱ - 2- 17 (QA-41-A)
発生要因
発生要因
当事者の行動に関わる要因
確認を怠った
観察を怠った
報告が遅れた(怠った)
記録などに不備があった
連携ができていなかった
患者への説明が不十分であった(怠った)
判断を誤った
ヒューマンファクター
知識が不足していた
技術・手技が未熟だった
勤務状況が繁忙だった
通常とは異なる身体的条件下にあった
通常とは異なる心理的条件下にあった
その他
環境・設備機器
コンピュータシステム
医薬品
医療機器
施設・設備
諸物品
患者側
その他
その他
教育・訓練
仕組み
ルールの不備
その他
合 計
2016 年4月∼6月
2016 年1月∼6月(累計)
件数
%
件数
%
909
242
220
16
21
111
89
210
439
128
138
89
12
16
56
366
12
17
31
31
19
229
27
393
160
24
40
169
2,107
43.2
11.5
10.4
0.8
1.0
5.3
4.2
10.0
20.9
6.1
6.5
4.2
0.6
0.8
2.7
17.5
0.6
0.8
1.5
1.5
0.9
10.9
1.3
18.6
7.6
1.1
1.9
8.0
100.0
1,938
494
478
42
42
236
205
441
868
258
286
169
16
30
109
808
20
29
76
59
40
530
54
789
328
57
94
310
4,403
44.2
11.2
10.9
1.0
1.0
5.4
4.7
10.0
19.8
5.9
6.5
3.8
0.4
0.7
2.5
18.3
0.5
0.7
1.7
1.3
0.9
12.0
1.2
17.8
7.4
1.3
2.1
7.0
100.0
※発生要因は複数回答が可能である。
※割合については、小数点第2位を四捨五入したものであり、合計が 100.0 にならないことがある。
図表Ⅱ - 2- 18 (QA-42-A)
特に報告を求める事例
特に報告を求める事例
汚染された薬剤・材料・生体由来材料等の使用
による事故
院内感染による死亡や障害
患者の自殺又は自殺企図
入院患者の失踪
患者の熱傷
2016 年4月∼6月
件数
1
2016 年1月∼6月(累計)
%
件数
0.1
3
%
0.2
0
0
1
0.1
14
1.7
25
1.5
6
0.7
7
0.4
11
1.4
17
1.0
患者の感電
0
0
0
0
医療施設内の火災による患者の死亡や障害
2
0.2
2
0.1
間違った保護者の許への新生児の引渡し
本事例は選択肢には該当しない
合 計
0
0
0
0
779
95.8
1,623
96.7
813
100.0
1,678
100.0
※割合については、小数点第2位を四捨五入したものであり、合計が 100.0 にならないことがある。
- 64 -
2 医療事故情報収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
図表Ⅱ - 2- 19 (QA-64-A)
発生場面 × 事故の程度
障害残存の 障害残存の
障害残存の
可能性がある 可能性がある
可能性なし
(高い)
(低い)
死亡
発生場面×事故の程度
障害なし
不明
合計
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
薬剤に関する項目
処方
手書きによる処方箋の作成
オーダリングによる処方箋の作成
口頭による処方指示
手書きによる処方の変更
オーダリングによる処方の変更
口頭による処方の変更
その他の処方に関する場面
調剤
内服薬調剤
注射薬調剤
血液製剤調剤
外用薬調剤
その他の調剤に関する場面
製剤管理
内服薬製剤管理
注射薬製剤管理
血液製剤管理
外用薬製剤管理
その他の製剤管理に関する場面
与薬準備
与薬準備
与薬
皮下・筋肉注射
静脈注射
動脈注射
末梢静脈点滴
中心静脈注射
内服
外用
坐剤
吸入
点鼻・点耳・点眼
その他与薬に関する場面
輸血に関する項目
処方
手書きによる処方箋の作成
オーダリングによる処方箋の作成
口頭による処方指示
手書きによる処方の変更
オーダリングによる処方の変更
口頭による処方の変更
その他の処方に関する場面
輸血検査
準備
実施
その他の輸血検査に関する場面
放射線照射
準備
実施
その他の放射線照射に関する場面
輸血準備
製剤の交付
その他の輸血準備に関する場面
輸血実施
実施
その他の輸血実施に関する場面
0
1
0
0
0
0
0
0
1
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1
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2
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3
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1
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2
0
2
3
4
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0
0
0
0
1
5
0
3
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0
0
0
0
1
6
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8
3
4
0
0
0
0
2
1
8
0
12
3
5
0
0
0
0
2
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1
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0
0
2
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0
0
0
0
1
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0
0
2
0
0
0
0
0
3
10
0
12
6
12
0
0
0
0
5
4
18
0
18
8
17
0
0
0
0
6
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0
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0
0
1
0
1
0
0
0
1
0
1
0
1
0
2
0
3
0
- 65 -
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
障害残存の 障害残存の
障害残存の
可能性がある 可能性がある
可能性なし
(高い)
(低い)
死亡
発生場面×事故の程度
障害なし
不明
合計
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
治療・処置に関する項目
指示
手書きによる指示の作成
オーダリングによる指示の作成
口頭による指示
手書きによる指示の変更
オーダリングによる指示の変更
口頭による指示の変更
その他の指示に関する場面
管理
管理
その他の管理に関する場面
準備
準備
その他の準備に関する場面
実施
実施
その他の治療・処置に関する場面
医療機器等・医療材料の使用・管理に関する項目
指示
手書きによる指示の作成
オーダリングによる指示の作成
口頭による指示
手書きによる指示の変更
オーダリングによる指示の変更
口頭による指示の変更
その他の指示に関する場面
管理
管理
準備
準備
使用
使用中
ドレーン・チューブ類の使用・管理に関する項目
指示
手書きによる指示の作成
オーダリングによる指示の作成
口頭による指示
手書きによる指示の変更
オーダリングによる指示の変更
口頭による指示の変更
その他の指示に関する場面
管理
管理
準備
準備
使用
使用中
検査に関する項目
指示
手書きによる指示の作成
オーダリングによる指示の作成
口頭による指示
手書きによる指示の変更
オーダリングによる指示の変更
口頭による指示の変更
その他の指示に関する場面
管理
管理
準備
準備
実施
実施中
0
0
1
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
1
0
2
0
0
0
0
1
0
1
0
0
0
0
6
0
1
0
0
0
0
6
0
0
0
0
0
0
6
0
0
0
0
0
0
6
0
0
1
0
0
0
0
1
1
3
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
2
0
0
0
13
1
4
4
0
0
0
14
5
1
8
2
3
2
8
2
8
0
13
0
3
0
8
0
8
0
11
0
1
0
7
0
28
3
55
4
0
0
1
0
0
0
0
0
1
0
4
0
0
1
1
1
4
0
5
1
0
0
0
0
5
1
11
2
15
2
35
5
28
3
60
6
40
1
75
4
56
0
106
4
47
0
75
1
12
3
20
5
198
9
371
25
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
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0
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0
0
0
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0
0
0
0
0
1
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0
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0
1
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0
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1
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1
1
1
1
1
1
2
2
3
6
9
0
0
0
1
1
1
0
0
2
2
0
0
3
4
1
3
0
3
2
4
3
7
5
7
1
4
12
28
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
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0
0
0
0
0
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0
0
0
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0
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0
0
0
1
0
1
1
1
2
6
3
9
6
9
0
1
12
27
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
3
5
4
11
10
23
6
23
16
24
1
4
40
90
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
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0
0
0
0
0
1
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0
0
0
0
0
1
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0
0
0
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1
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0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
1
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0
0
0
0
0
2
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0
0
0
0
1
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0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
3
2
0
0
0
0
0
4
0
1
1
1
1
1
0
1
0
2
0
1
2
7
0
0
0
0
2
2
0
2
0
1
0
1
2
6
4
6
3
4
6
13
2
7
11
14
2
2
28
46
- 66 -
2 医療事故情報収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
障害残存の 障害残存の
障害残存の
可能性がある 可能性がある
可能性なし
(高い)
(低い)
死亡
発生場面×事故の程度
障害なし
不明
合計
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
療養上の世話に関する項目
計画又は指示
手書きによる計画又は指示の作成
オーダリングによる計画又は指示の作成
口頭による計画又は指示
手書きによる計画又は指示の変更
オーダリングによる計画又は指示の変更
口頭による計画又は指示の変更
その他の計画又は指示に関する場面
管理・準備・実施
管理
準備
実施中
その他
合 計
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
1
1
0
0
0
0
0
3
1
0
0
0
0
0
3
2
0
0
1
0
0
8
2
2
0
1
0
0
13
1
0
0
0
0
0
1
1
0
0
0
0
0
1
4
1
0
0
0
0
1
5
3
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
1
1
0
8
20
65
14
1
15
41
147
17
0
4
12
88
27
0
16
26
178
63
2
39
20
225
131
2
84
47
455
42
0
34
16
192
102
2
75
57
442
29
0
21
10
201
72
0
44
35
374
3
0
4
8
42
6
1
13
9
82
※事故の発生及び事故の過失の有無と事故の程度とは必ずしも因果関係が認められるものではない。
※「不明」には、報告期日(2週間以内)までに患者の転帰が確定していない事例が含まれる。
- 67 -
8
1
0
1
0
0
15
9
5
0
1
0
0
20
155 352
2
6
110 247
86 215
813 1,678
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
図表Ⅱ - 2- 20 (QA-65-A)
事故の内容 × 事故の程度
障害残存の
障害残存の
障害残存の
可能性がある 可能性がある
可能性なし
(高い)
(低い)
死亡
事故の内容×事故の程度
障害なし
不明
合計
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
薬剤に関する項目
処方
処方忘れ
処方遅延
処方量間違い
重複処方
禁忌薬剤の処方
対象患者処方間違い
処方薬剤間違い
処方単位間違い
投与方法処方間違い
その他の処方に関する内容
調剤
調剤忘れ
処方箋・注射箋鑑査間違い
秤量間違い調剤
数量間違い
分包間違い
規格間違い調剤
単位間違い調剤
薬剤取り違え調剤
説明文書の取り違え
交付患者間違い
薬剤・製剤の取り違え交付
期限切れ製剤の交付
その他の調剤に関する内容
製剤管理
薬袋・ボトルの記載間違い
異物混入
細菌汚染
期限切れ製剤
その他の製剤管理に関する内容
与薬準備
過剰与薬準備
過少与薬準備
与薬時間・日付間違い
重複与薬
禁忌薬剤の与薬
投与速度速すぎ
投与速度遅すぎ
患者間違い
薬剤間違い
単位間違い
投与方法間違い
無投薬
混合間違い
その他の与薬準備に関する内容
与薬
過剰投与
過少投与
投与時間・日付間違い
重複投与
禁忌薬剤の投与
投与速度速すぎ
投与速度遅すぎ
患者間違い
薬剤間違い
単位間違い
投与方法間違い
無投薬
その他の与薬に関する内容
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0
4
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1
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2
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2
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1
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3
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1
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2
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15
2
2
1
3
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0
3
8
0
8
3
15
- 68 -
2 医療事故情報収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
障害残存の
障害残存の
障害残存の
可能性がある 可能性がある
可能性なし
(高い)
(低い)
死亡
事故の内容×事故の程度
障害なし
不明
合計
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
輸血に関する項目
指示出し
指示出し忘れ
指示遅延
指示量間違い
重複指示
禁忌薬剤の指示
対象患者指示間違い
指示薬剤間違い
指示単位間違い
投与方法指示間違い
その他の指示出しに関する内容
輸血検査
未実施
検体取り違え
判定間違い
結果記入・入力間違い
その他の輸血検査に関する内容
放射線照射
未実施
過剰照射
過少照射
患者間違い
製剤間違い
その他の放射線照射に関する内容
輸血管理
薬袋・ボトルの記載間違い
異物混入
細菌汚染
期限切れ製剤
その他の輸血管理に関する内容
輸血準備
過剰与薬準備
過少与薬準備
与薬時間・日付間違い
重複与薬
禁忌薬剤の与薬
投与速度速すぎ
投与速度遅すぎ
患者間違い
薬剤間違い
単位間違い
投与方法間違い
無投薬
その他の輸血準備に関する内容
輸血実施
過剰投与
過少投与
投与時間・日付間違い
重複投与
禁忌薬剤の投与
投与速度速すぎ
投与速度遅すぎ
患者間違い
薬剤間違い
単位間違い
投与方法間違い
無投薬
その他の輸血実施に関する内容
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2
- 69 -
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
障害残存の
障害残存の
障害残存の
可能性がある 可能性がある
可能性なし
(高い)
(低い)
死亡
事故の内容×事故の程度
障害なし
不明
合計
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
治療・処置に関する項目
指示
指示出し忘れ
指示遅延
対象患者指示間違い
治療・処置指示間違い
日程間違い
時間間違い
その他の治療・処置の指示に関する内容
管理
治療・処置の管理
その他の治療・処置の管理に関する内容
準備
医療材料取り違え
患者体位の誤り
消毒・清潔操作の誤り
その他の治療・処置の準備に関する内容
実施
患者間違い
部位取違え
方法(手技)の誤り
未実施・忘れ
中止・延期
日程・時間の誤り
順番の誤り
不必要行為の実施
誤嚥
誤飲
異物の体内残存
診察・治療・処置等その他の取違え
その他の治療・処置の実施に関する内容
医療機器等・医療材料の使用・管理に関する項目
指示
指示出し忘れ
指示遅延
対象患者指示間違い
使用方法指示間違い
その他の医療機器等・医療材料の
使用に関する内容
管理
保守・点検不良
保守・点検忘れ
使用中の点検・管理ミス
破損
その他の医療機器等・医療材料の
管理に関する内容
準備
組み立て
設定条件間違い
設定忘れ
電源入れ忘れ
警報設定忘れ
警報設定範囲間違い
便宜上の警報解除後の再設定忘れ
消毒・清潔操作の誤り
使用前の点検・管理ミス
破損
その他の医療機器等・医療材料の
準備に関する内容
1
0
0
1
0
0
0
1
0
0
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0
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0
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1
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0
0
0
0
0
0
0
1
1
0
1
0
0
2
1
1
0
1
0
0
4
2
1
4
3
1
2
6
3
5
1
11
3
4
1
11
1
9
0
11
0
1
1
2
6
22
6
45
16
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
1
0
0
0
1
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0
0
1
0
0
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0
0
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0
0
0
1
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0
2
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2
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0
0
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1
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0
7
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0
0
1
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0
0
0
0
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0
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18
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0
1
1
0
0
0
0
1
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1
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38
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0
6
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0
0
0
2
1
0
1
1
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0
12
1
0
0
0
2
1
0
2
1
50
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1
8
1
0
0
0
1
0
1
3
0
34
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2
13
1
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0
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1
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1
8
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0
0
0
0
0
1
6
0
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24
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0
0
0
1
0
2
13
0
69
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6
0
0
0
0
1
2
1
3
0
30
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4
12
0
0
2
0
4
2
1
10
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46
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0
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0
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0
0
0
0
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12
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0
0
0
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0
0
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0
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0
21
1
7
33
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0
0
0
4
3
3
15
1
154
1
10
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3
0
2
0
8
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37
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282
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1
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0
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1
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0
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1
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0
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1
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4
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1
0
5
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1
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0
1
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1
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0
1
1
0
0
1
1
- 70 -
2 医療事故情報収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
障害残存の
障害残存の
障害残存の
可能性がある 可能性がある
可能性なし
(高い)
(低い)
死亡
事故の内容×事故の程度
障害なし
不明
合計
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
使用
医療機器等・医療材料の不適切使用
誤作動
故障
破損
その他の医療機器等・医療材料の
使用に関する内容
ドレーン・チューブ類の使用・管理に関する項目
指示
指示出し忘れ
指示遅延
対象患者指示間違い
使用方法指示間違い
その他のドレーン・チューブ類の
使用・管理の指示に関する内容
管理
点検忘れ
点検不良
使用中の点検・管理ミス
破損
その他のドレーン・チューブ類の
管理に関する内容
準備
組み立て
設定条件間違い
設定忘れ
消毒・清潔操作の誤り
使用前の点検・管理ミス
その他のドレーン・チューブ類の
準備に関する内容
使用
点滴漏れ
自己抜去
自然抜去
接続はずれ
未接続
閉塞
切断・破損
接続間違い
三方活栓操作間違い
ルートクランプエラー
空気混入
誤作動
故障
ドレーン・チューブ類の不適切使用
その他のドレーン・チューブ類の
使用に関する内容
検査に関する項目
指示
指示出し忘れ
指示遅延
対象患者指示間違い
指示検査の間違い
その他の検査の指示に関する内容
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
1
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0
0
1
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0
1
2
0
0
1
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0
0
0
3
0
1
0
2
0
0
2
2
0
0
4
0
0
0
1
1
1
1
1
5
0
0
4
10
1
2
6
1
2
0
2
0
0
0
2
2
3
0
0
3
9
Ⅱ
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
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0
0
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0
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0
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1
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0
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1
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0
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1
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0
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1
1
1
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0
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2
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0
0
0
0
0
0
3
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4
0
0
1
5
0
0
0
1
0
0
1
9
19
7
2
0
6
11
0
0
0
2
1
0
1
2
4
2
5
7
13
4
15
8
13
0
0
23
50
0
0
0
0
0
0
0
0
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0
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1
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0
0
1
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0
0
- 71 -
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
障害残存の
障害残存の
障害残存の
可能性がある 可能性がある
可能性なし
(高い)
(低い)
死亡
事故の内容×事故の程度
障害なし
不明
合計
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
管理
分析機器・器具管理
試薬管理
データ紛失
計算・入力・暗記
その他の検査の管理に関する内容
準備
患者取違え
検体取違え
検体紛失
検査機器・器具の準備
検体破損
その他の検査の準備に関する内容
実施
患者取違え
検体取違え
試薬の間違い
検体紛失
検査の手技・判定技術の間違い
検体採取時のミス
検体破損
検体のコンタミネーション
データ取違え
結果報告
その他の検査の実施に関する内容
療養上の世話に関する項目
計画又は指示
計画忘れ又は指示出し忘れ
計画又は指示の遅延
計画又は指示の対象患者間違い
計画又は指示内容間違い
その他の療養上の世話の計画又は指
示に関する内容
管理・準備・実施
拘束・抑制
給食の内容の間違い
安静指示
禁食指示
外出・外泊許可
異物混入
転倒
転落
衝突
誤嚥
誤飲
誤配膳
遅延
実施忘れ
搬送先間違い
患者間違い
延食忘れ
中止の忘れ
自己管理薬飲み忘れ・注射忘れ
自己管理薬注入忘れ
自己管理薬取違え摂取
不必要行為の実施
その他の療養上の世話の管理・準備・
実施に関する内容
その他
合 計
0
0
0
0
0
0
0
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0
0
0
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0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
1
0
0
0
1
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0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
1
1
0
0
0
0
0
2
3
0
0
0
0
0
0
2
3
0
0
0
0
0
0
2
0
0
3
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
5
1
0
9
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
14
2
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
26
2
0
3
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
63
10
0
3
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
136
14
1
3
1
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
50
8
2
1
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
2
0
0
0
0
0
117
11
4
1
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
26
1
1
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
64
6
2
2
3
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
7
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
14
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
1
0
162
21
3
9
3
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
4
2
1
0
0
1
0
362
34
7
19
5
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
4
5
16
6
15
35
75
14
42
23
45
1
6
84
199
20
65
41
147
12
88
26
178
20
225
47
455
16
192
57
442
10
201
35
374
8
42
9
82
※事故の発生及び事故の過失の有無と事故の程度とは必ずしも因果関係が認められるものではない。
※「不明」には、報告期日(2週間以内)までに患者の転帰が確定していない事例が含まれる。
- 72 -
86 215
813 1,678
2 医療事故情報収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
Ⅱ
- 73 -
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
図表Ⅱ - 2- 21 (QA-68-A)
関連診療科 × 事故の概要
薬剤
関連診療科×事故の概要
2016 年
4月∼6月
輸血
2016 年
1月∼6月
(累計)
2016 年
4月∼6月
治療・処置
2016 年
1月∼6月
(累計)
2016 年
4月∼6月
医療機器等
2016 年
1月∼6月
(累計)
2016 年
4月∼6月
2016 年
1月∼6月
(累計)
10
15
0
0
6
16
2
3
麻酔科
4
8
1
1
31
43
1
4
循環器内科
1
4
0
0
17
36
1
4
神経科
0
0
0
0
6
8
0
0
呼吸器内科
2
3
0
0
2
8
3
5
消化器科
3
4
1
1
22
49
2
3
血液内科
6
8
1
1
2
5
0
0
循環器外科
0
0
0
0
2
4
0
0
アレルギー科
0
0
0
0
0
0
0
0
リウマチ科
1
2
0
0
1
1
0
0
小児科
7
14
0
0
3
7
1
5
外科
2
4
0
0
42
80
4
5
整形外科
0
0
0
1
19
46
1
3
形成外科
0
1
0
0
6
8
1
1
美容外科
0
0
0
0
0
0
0
0
脳神経外科
2
4
0
0
24
39
0
0
呼吸器外科
0
0
0
0
6
16
0
0
心臓血管外科
2
5
0
0
24
46
4
6
小児外科
1
2
0
0
2
2
0
0
ペインクリニック
0
0
0
0
1
1
0
0
皮膚科
2
2
0
0
2
2
0
0
泌尿器科
3
3
0
0
16
27
1
1
性病科
0
0
0
0
0
0
0
0
肛門科
0
0
0
0
0
0
0
0
産婦人科
1
3
0
0
9
22
0
0
産科
0
0
0
0
2
4
0
0
婦人科
0
1
0
0
5
7
1
2
眼科
0
0
0
0
8
14
0
1
耳鼻咽喉科
3
3
0
0
12
19
2
3
心療内科
0
0
0
0
0
0
0
0
精神科
0
0
0
0
1
2
0
1
リハビリテーション科
0
0
0
0
4
5
0
0
放射線科
1
1
0
0
7
10
0
0
歯科
0
0
0
0
4
5
0
0
矯正歯科
0
0
0
0
0
0
0
0
小児歯科
0
0
0
0
0
0
0
0
歯科口腔外科
1
1
0
0
8
10
0
0
内科
不明
その他
合 計
0
0
0
0
0
0
0
0
12
18
0
0
34
62
5
8
64
106
3
4
328
604
29
55
※関連診療科は複数回答が可能である。
- 74 -
2 医療事故情報収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
ドレーン・チューブ
2016 年
4月∼6月
2016 年
1月∼6月
(累計)
検査
2016 年
4月∼6月
療養上の世話
2016 年
1月∼6月
(累計)
2016 年
4月∼6月
その他
2016 年
1月∼6月
(累計)
2016 年
4月∼6月
合 計
2016 年
1月∼6月
(累計)
2016 年
4月∼6月
2016 年
1月∼6月
(累計)
2
9
4
6
32
62
10
20
66
131
0
6
0
0
0
0
2
5
39
67
4
9
2
3
18
35
4
18
47
109
0
2
0
0
17
46
2
7
25
63
4
8
6
10
30
66
5
9
52
109
2
7
6
11
15
29
5
16
56
120
1
1
0
1
7
14
0
3
17
33
1
6
1
1
1
2
0
0
5
13
0
0
0
0
1
1
0
0
1
1
0
0
0
0
1
2
0
1
3
6
6
16
1
1
18
41
3
5
39
89
6
20
5
7
16
45
10
30
85
191
3
3
1
3
72
179
11
27
107
262
0
0
0
0
1
4
0
1
8
15
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
5
12
2
4
13
28
5
14
51
101
2
4
0
0
1
6
1
3
10
29
2
7
1
3
7
11
5
6
45
84
0
1
1
1
1
2
0
0
5
8
0
0
0
0
0
0
0
0
1
1
1
4
0
0
8
16
1
2
14
26
2
3
0
0
7
13
0
2
29
49
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
2
2
5
2
7
15
39
0
0
1
1
0
0
0
1
3
6
1
3
0
0
0
2
2
2
9
17
0
0
0
2
3
6
0
5
11
28
2
4
0
0
1
7
2
5
22
41
0
0
0
0
1
1
1
1
2
2
0
0
0
0
52
103
7
21
60
127
0
0
0
0
6
14
0
1
10
20
0
2
2
6
2
5
0
1
12
25
0
0
0
0
2
2
0
2
6
9
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
1
0
0
1
1
1
3
1
1
3
4
1
4
15
23
0
0
0
0
0
0
1
2
1
2
9
16
5
14
17
54
20
39
102
211
54
146
40
77
356
806
100
260
974
2,058
- 75 -
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
図表Ⅱ - 2- 22 (QA-71-A)
発生要因 × 事故の概要
薬剤
発生要因×事故の概要
2016 年
4月∼6月
輸血
2016 年
1月∼6月
(累計)
2016 年
4月∼6月
治療・処置
2016 年
1月∼6月
(累計)
2016 年
4月∼6月
医療機器等
2016 年
1月∼6月
(累計)
2016 年
4月∼6月
2016 年
1月∼6月
(累計)
当事者の行動に関わる要因
確認を怠った
47
79
0
1
78
131
18
29
観察を怠った
4
10
0
0
41
71
4
9
報告が遅れた(怠った)
2
2
0
0
3
9
0
0
記録などに不備があった
8
11
0
0
4
8
0
0
連携ができていなかった
12
23
0
1
34
50
3
6
5
6
0
0
8
24
2
2
12
20
1
2
55
114
2
3
23
37
1
2
25
46
5
9
7
9
0
1
56
111
5
5
12
19
0
0
16
22
3
8
1
2
0
0
6
9
0
0
1
4
0
0
7
11
0
0
6
10
0
0
21
35
1
2
6
13
0
0
4
4
1
1
10
17
0
0
3
4
0
0
医療機器
0
0
1
2
11
26
10
25
施設・設備
0
1
0
0
4
5
1
1
諸物品
0
0
0
0
4
9
3
3
患者側
2
2
1
1
47
83
0
1
その他
3
3
0
0
9
16
0
0
12
23
1
2
35
64
3
8
仕組み
4
8
0
0
14
21
0
2
ルールの不備
9
13
0
0
10
24
2
6
10
13
0
0
77
147
3
5
196
325
5
12
572
1,044
66
125
患者への説明が不十分で
あった(怠った)
判断を誤った
ヒューマンファクター
知識が不足していた
技術・手技が未熟だった
勤務状況が繁忙だった
通常とは異なる身体的条
件下にあった
通常とは異なる心理的条
件下にあった
その他
環境・設備機器
コンピュータシステム
医薬品
その他
教育・訓練
その他
合計
※発生要因は複数回答が可能である。
- 76 -
2 医療事故情報収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
ドレーン・チューブ
2016 年
4月∼6月
2016 年
1月∼6月
(累計)
検査
2016 年
4月∼6月
療養上の世話
2016 年
1月∼6月
(累計)
2016 年
4月∼6月
その他
2016 年
1月∼6月
(累計)
2016 年
4月∼6月
合 計
2016 年
1月∼6月
(累計)
2016 年
4月∼6月
2016 年
1月∼6月
(累計)
909
1,938
16
47
7
17
61
151
15
39
242
494
15
35
5
6
135
313
16
34
220
478
1
5
1
3
7
18
2
5
16
42
1
2
1
1
7
19
0
1
21
42
5
21
7
10
43
102
7
23
111
236
0
1
1
3
68
157
5
12
89
205
22
45
8
14
95
205
15
38
210
441
439
868
6
21
7
8
53
102
8
33
128
258
16
32
7
13
42
89
5
26
138
286
5
11
1
4
41
85
11
20
89
169
0
0
0
0
1
1
4
4
12
16
0
2
1
2
5
7
2
4
16
30
1
4
3
4
16
37
8
17
56
109
366
808
0
0
0
0
0
0
1
2
12
20
0
2
3
3
1
3
0
0
17
29
1
10
1
2
5
6
2
5
31
76
0
1
2
4
20
38
4
9
31
59
4
8
0
0
6
17
2
3
19
40
7
23
6
13
144
336
22
71
229
530
0
0
1
2
8
17
6
16
27
54
393
789
10
21
4
6
85
179
10
25
160
328
1
1
1
3
4
14
0
8
24
57
5
8
1
4
12
26
1
13
40
94
10
19
15
22
18
39
36
65
169
310
126
319
83
144
877
1,961
182
473
2,107
4,403
- 77 -
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業
ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業で収集する情報には発生件数情報と事例情報がある。
発生件数情報はヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業に参加を希望する全ての医療機関から収集
を行う。事例情報は、ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業に参加を希望する医療機関のうち、
事例情報の報告を希望した医療機関から収集を行う。本報告書には、2016年4月1日から同年6月
30日までの発生件数情報と事例情報の集計結果を掲載している。
【1】登録医療機関
(1)参加医療機関数
2016年6月30日現在、ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業に参加している医療機関数
は以下の通りである。なお、医療機関数の増減の理由には、新規の開設や閉院、統廃合の他に、開設
者区分の変更も含まれる。
図表Ⅱ - 3- 1 (QH-01)
参加医療機関数
開設者
参加医療機関
国立大学法人等
独立行政法人国立病院機構
国立研究開発法人
国
国立ハンセン病療養所
独立行政法人労働者健康安全機構
独立行政法人地域医療機能推進機構
その他の国の機関
都道府県
市町村
自治体
公立大学法人
地方独立行政法人
日本赤十字社
恩賜財団済生会
北海道社会事業協会
自治体以外の公的 厚生農業協同組合連合会
医療機関の開設者 国民健康保険団体連合会
健康保険組合及びその連合会
共済組合及びその連合会
国民健康保険組合
学校法人
医療法人
法人
公益法人
会社
その他の法人
個 人
合 計
- 78 -
29
118
5
11
31
44
0
27
129
9
25
80
20
0
20
2
1
20
1
47
413
53
12
41
52
1,190
事例情報報告
参加医療機関
18
69
3
4
26
24
0
17
72
5
11
45
10
0
8
0
0
12
1
33
204
24
3
21
33
643
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
(2)参加医療機関数の推移
2016年4月1日から同年6月30日までの参加医療機関数の推移は以下の通りである。
図表Ⅱ - 3- 2 (QH-02)
参加医療機関数の推移
2016 年
1月
2月
3月
4月
5月
7月
8月
9月
3
−
−
−
−
−
−
0
−
−
−
−
−
−
1,179 1,182 1,184 1,184 1,187 1,190
−
−
−
−
−
−
新規登録
医療機関数
1
3
2
3
4
登録取下げ
医療機関数
0
0
0
3
1
累 計
6月
10月 11月 12月
事例情報報告
新規登録
医療機関数
1
0
0
1
2
1
−
−
−
−
−
−
事例情報報告
登録取下げ
医療機関数
0
1
1
2
1
0
−
−
−
−
−
−
644
643
642
641
642
643
−
−
−
−
−
−
累 計
- 79 -
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
【2】発生件数情報の報告件数
(1)発生件数情報の報告状況
2016年4月1日から同年6月30日までの発生件数情報の報告は以下の通りである。
図表Ⅱ - 3- 3 (QNR-01)
発生件数情報の報告件数
誤った医療の実施の有無
実施なし
影響度(当該事例の内容が仮に実施された場合)
項 目
死亡もしくは重篤 濃厚な処置・治療 軽微な処置・治療が
実施あり
な状況に至ったと が 必 要 で あ る と 必要もしくは処置・
考えられる
考えられる
治療が不要と考えら
れる
合計
(1)薬剤
209
1,111
21,641
48,204
71,165
(2)輸血
22
51
452
755
1,280
(3)治療・処置
88
425
3,763
8,954
13,230
(4)医療機器等
63
183
2,694
4,570
7,510
(5)ドレーン・チューブ
58
362
6,515
25,038
31,973
(6)検査
70
409
7,179
12,874
20,532
(7)療養上の世話
136
702
12,656
33,704
47,198
(8)その他
137
467
11,884
14,285
26,773
783
3,710
34
120
合 計
66,784 148,384 219,661
再 掲
【1】薬剤の名称や形状に関連する事例
1,528
2,959
4,641
146
600
7,737
20,506
28,989
【3】医療機器等に由来する事例
50
138
1,116
2,756
4,060
【4】今期のテーマ
67
150
727
2,185
3,129
【2】薬剤に由来する事例
報告医療機関数
病床数合計
- 80 -
520
210,104
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
(2)病床規模別の発生件数情報
2016年4月1日から同年6月30日までの病床規模別の発生件数情報を図表Ⅱ - 3- 4∼図表
Ⅱ - 3- 10に示す。
図表Ⅱ - 3- 4 (QNR-02)
病床規模別発生件数情報の報告件数(病床数が0∼99床の医療機関)
誤った医療の実施の有無
実施なし
Ⅱ
影響度(当該事例の内容が仮に実施された場合)
項 目
死亡もしくは重篤 濃厚な処置・治療 軽微な処置・治療が
実施あり
な状況に至ったと が 必 要 で あ る と 必要もしくは処置・
考えられる
考えられる
治療が不要と考えら
れる
合計
(1)薬剤
0
2
277
283
562
(2)輸血
0
0
1
7
8
(3)治療・処置
0
1
120
122
243
(4)医療機器等
0
0
59
25
84
(5)ドレーン・チューブ
0
0
32
159
191
(6)検査
0
1
112
146
259
(7)療養上の世話
0
4
161
252
417
(8)その他
0
0
286
147
433
0
8
1,048
1,141
2,197
【1】薬剤の名称や形状に関連する事例
0
0
3
1
4
【2】薬剤に由来する事例
0
2
88
143
233
【3】医療機器等に由来する事例
0
0
16
9
25
【4】今期のテーマ
0
0
2
1
3
合 計
再 掲
報告医療機関数
病床数合計
- 81 -
30
1,504
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
図表Ⅱ - 3- 5 (QNR-03)
病床規模別発生件数情報の報告件数
(病床数が100∼199床の医療機関)
誤った医療の実施の有無
実施なし
影響度(当該事例の内容が仮に実施された場合)
項 目
(1)薬剤
(2)輸血
(3)治療・処置
(4)医療機器等
(5)ドレーン・チューブ
(6)検査
(7)療養上の世話
(8)その他
合 計
死亡もしくは重篤 濃厚な処置・治療 軽微な処置・治療が
実施あり
な状況に至ったと が 必 要 で あ る と 必要もしくは処置・
考えられる
考えられる
治療が不要と考えら
れる
合計
3
0
0
1
0
2
5
0
11
73
2
17
8
15
8
46
5
174
1,339
18
213
149
397
486
1,387
1,072
5,061
1,812
33
298
236
669
609
1,809
845
6,311
3,227
53
528
394
1,081
1,105
3,247
1,922
11,557
0
3
0
0
5
49
3
1
66
471
33
8
26
729
66
16
97
1,252
102
25
再 掲
【1】薬剤の名称や形状に関連する事例
【2】薬剤に由来する事例
【3】医療機器等に由来する事例
【4】今期のテーマ
78
11,988
報告医療機関数
病床数合計
図表Ⅱ - 3- 6 (QNR-04)
病床規模別発生件数情報の報告件数
(病床数が200∼299床の医療機関)
誤った医療の実施の有無
実施なし
影響度(当該事例の内容が仮に実施された場合)
項 目
(1)薬剤
(2)輸血
(3)治療・処置
(4)医療機器等
(5)ドレーン・チューブ
(6)検査
(7)療養上の世話
(8)その他
合 計
死亡もしくは重篤 濃厚な処置・治療 軽微な処置・治療が
実施あり
な状況に至ったと が 必 要 で あ る と 必要もしくは処置・
考えられる
考えられる
治療が不要と考えら
れる
合計
16
0
3
7
1
4
4
9
44
87
3
33
17
24
30
109
48
351
2,126
27
325
274
470
610
1,917
1,133
6,882
3,292
54
626
328
1,641
912
3,975
1,040
11,868
5,521
84
987
626
2,136
1,556
6,005
2,230
19,145
7
11
5
1
27
49
10
6
99
451
77
17
282
1,428
210
39
415
1,939
302
63
再 掲
【1】薬剤の名称や形状に関連する事例
【2】薬剤に由来する事例
【3】医療機器等に由来する事例
【4】今期のテーマ
報告医療機関数
病床数合計
- 82 -
82
20,273
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
図表Ⅱ - 3- 7 (QNR-05)
病床規模別発生件数情報の報告件数(病床数が300∼399床の医療機関)
誤った医療の実施の有無
実施なし
影響度(当該事例の内容が仮に実施された場合)
項 目
(1)薬剤
(2)輸血
(3)治療・処置
(4)医療機器等
(5)ドレーン・チューブ
(6)検査
(7)療養上の世話
(8)その他
合 計
死亡もしくは重篤 濃厚な処置・治療 軽微な処置・治療が
実施あり
な状況に至ったと が 必 要 で あ る と 必要もしくは処置・
考えられる
考えられる
治療が不要と考えら
れる
合計
10
2
11
2
6
7
14
19
71
97
7
54
28
53
46
85
73
443
2,900
56
515
392
804
871
1,866
1,692
9,096
6,648
84
1,216
658
3,057
1,805
5,013
2,443
20,924
9,655
149
1,796
1,080
3,920
2,729
6,978
4,227
30,534
2
2
3
0
11
31
19
3
92
820
116
57
244
2,324
346
132
349
3,177
484
192
再 掲
【1】薬剤の名称や形状に関連する事例
【2】薬剤に由来する事例
【3】医療機器等に由来する事例
【4】今期のテーマ
94
31,330
報告医療機関数
病床数合計
図表Ⅱ - 3- 8 (QNR-06)
病床規模別発生件数情報の報告件数
(病床数が400∼499床の医療機関)
誤った医療の実施の有無
実施なし
影響度(当該事例の内容が仮に実施された場合)
項 目
(1)薬剤
(2)輸血
(3)治療・処置
(4)医療機器等
(5)ドレーン・チューブ
(6)検査
(7)療養上の世話
(8)その他
合 計
死亡もしくは重篤 濃厚な処置・治療 軽微な処置・治療が
実施あり
な状況に至ったと が 必 要 で あ る と 必要もしくは処置・
考えられる
考えられる
治療が不要と考えら
れる
合計
36
2
22
15
7
8
20
24
134
228
9
95
40
59
52
136
118
737
3,828
59
473
598
1,184
839
2,278
3,036
12,295
8,435
122
1,602
972
4,683
2,169
6,843
2,885
27,711
12,527
192
2,192
1,625
5,933
3,068
9,277
6,063
40,877
4
29
8
27
16
127
23
41
182
852
167
194
253
2,824
452
734
455
3,832
650
996
再 掲
【1】薬剤の名称や形状に関連する事例
【2】薬剤に由来する事例
【3】医療機器等に由来する事例
【4】今期のテーマ
報告医療機関数
病床数合計
- 83 -
85
37,265
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
図表Ⅱ - 3- 9 (QNR-07)
病床規模別発生件数情報の報告件数
(病床数が500∼599床の医療機関)
誤った医療の実施の有無
実施なし
影響度(当該事例の内容が仮に実施された場合)
項 目
(1)薬剤
(2)輸血
(3)治療・処置
(4)医療機器等
(5)ドレーン・チューブ
(6)検査
(7)療養上の世話
(8)その他
合 計
死亡もしくは重篤 濃厚な処置・治療 軽微な処置・治療が
実施あり
な状況に至ったと が 必 要 で あ る と 必要もしくは処置・
考えられる
考えられる
治療が不要と考えら
れる
合計
69
6
21
15
20
28
74
40
273
198
7
51
36
44
88
114
73
611
3,294
70
408
282
961
1,190
1,398
1,317
8,920
6,716
88
1,232
589
3,659
2,056
4,217
1,606
20,163
10,277
171
1,712
922
4,684
3,362
5,803
3,036
29,967
9
58
11
7
15
125
31
14
130
1,718
128
223
347
2,778
346
568
501
4,679
516
812
再 掲
【1】薬剤の名称や形状に関連する事例
【2】薬剤に由来する事例
【3】医療機器等に由来する事例
【4】今期のテーマ
52
28,003
報告医療機関数
病床数合計
図表Ⅱ - 3- 10 (QNR-08)
病床規模別発生件数情報の報告件数
(病床数が600床以上の医療機関)
誤った医療の実施の有無
実施なし
影響度(当該事例の内容が仮に実施された場合)
項 目
(1)薬剤
(2)輸血
(3)治療・処置
(4)医療機器等
(5)ドレーン・チューブ
(6)検査
(7)療養上の世話
(8)その他
合 計
死亡もしくは重篤 濃厚な処置・治療 軽微な処置・治療が
実施あり
な状況に至ったと が 必 要 で あ る と 必要もしくは処置・
考えられる
考えられる
治療が不要と考えら
れる
合計
75
12
31
23
24
21
19
45
250
426
23
174
54
167
184
208
150
1,386
7,877
221
1,709
940
2,667
3,071
3,649
3,348
23,482
21,018
367
3,858
1,762
11,170
5,177
11,595
5,319
60,266
29,396
623
5,772
2,779
14,028
8,453
15,471
8,862
85,384
12
43
23
32
46
217
52
85
956
3,337
579
226
1,806
10,280
1,327
695
2,820
13,877
1,981
1,038
再 掲
【1】薬剤の名称や形状に関連する事例
【2】薬剤に由来する事例
【3】医療機器等に由来する事例
【4】今期のテーマ
報告医療機関数
病床数合計
- 84 -
99
79,741
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
【3】事例情報の報告件数
(1)事例情報の月別報告状況
2016年1月1日から同年6月30日までの事例情報の月別報告件数は以下の通りである。
図表Ⅱ - 3- 11 (QH-03)
事例情報の月別報告件数
1月
事例情報
報告数
事例情報報告
参加医療機関数
2月
3月
4月
5月
2016 年
6月
7月
4,206 1,422 1,937 3,758 1,500 1,535
644
643
642
641
642
643
- 85 -
10月 11月 12月
合計
8月
9月
−
−
−
−
−
−
14,358
−
−
−
−
−
−
−
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
(2)事例情報の報告状況
事例情報報告参加医療機関の2016年4月1日から同年6月30日までの報告医療機関数及び報告
件数を図表Ⅱ - 3- 12に、病床規模別に集計したものを図表Ⅱ - 3- 13に、地域別に集計したもの
を図表Ⅱ - 3- 14に示す。また、同期間内における報告医療機関数を報告件数別に集計したものを
図表Ⅱ - 3- 15に示す。2016年6月30日現在、事例情報報告参加医療機関は643施設、病床
数合計は211,808床である。
図表Ⅱ - 3- 12 (QH-04)
開設者別事例情報報告参加医療機関数及び報告件数
報告医療機関数
医療機関数
開設者
国
※ 2016 年
6月 3 0日現在
報告件数
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
1月∼6月
1月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
(累計)
(累計)
国立大学法人等
18
4
5
16
34
独立行政法人国立病院機構
69
7
14
16
37
国立研究開発法人
3
0
1
0
423
国立ハンセン病療養所
4
0
0
0
0
独立行政法人労働者健康安全機構
26
2
3
222
523
独立行政法人地域医療機能推進機構
24
3
4
595
1,183
0
0
0
0
0
105
17
22
2,904
5,853
その他の国の機関
自治体
都道府県
市町村
公立大学法人
自治体以外の公的医療機関
の開設者
地方独立行政法人
日本赤十字社
45
8
8
828
1,715
恩賜財団済生会
10
2
2
136
537
0
0
0
0
0
北海道社会事業協会
厚生農業協同組合連合会
8
0
1
0
1
国民健康保険団体連合会
0
0
0
0
0
健康保険組合及びその連合会
0
0
0
0
0
12
2
2
2
8
共済組合及びその連合会
法人
1
0
0
0
0
学校法人
国民健康保険組合
33
4
5
233
679
医療法人
204
17
20
1,067
1,802
公益法人
24
1
1
3
9
3
0
0
0
0
21
4
4
749
1,514
個 人
33
1
2
22
40
合 計
643
72
94
6,793
14,358
会社
その他の法人
- 86 -
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
図表Ⅱ - 3- 13 (QH-05)
病床規模別事例情報報告参加医療機関数及び報告件数
病床数
医療機関数
※ 2016 年
6月 3 0日現在
報告医療機関数
2016 年
4月∼6月
報告件数
2016 年
1月∼6月
(累計)
2016 年
4月∼6月
2016 年
1月∼6月
(累計)
0 ∼ 19 床
53
0
2
0
8
20 ∼ 49 床
22
2
2
70
122
50 ∼ 99 床
39
3
6
62
124
100 ∼ 149 床
42
3
4
13
17
150 ∼ 199 床
74
7
8
384
604
200 ∼ 249 床
43
5
6
161
280
250 ∼ 299 床
36
7
8
627
1,232
300 ∼ 349 床
74
6
9
1,013
2,412
350 ∼ 399 床
36
4
6
235
450
400 ∼ 449 床
63
7
9
421
1,400
450 ∼ 499 床
30
3
4
141
261
500 ∼ 549 床
26
6
6
699
1,363
550 ∼ 599 床
19
2
3
10
25
600 ∼ 649 床
20
3
5
283
922
650 ∼ 699 床
14
3
3
386
778
700 ∼ 749 床
13
2
2
22
47
750 ∼ 799 床
4
0
1
0
4
800 ∼ 849 床
8
3
3
2,231
4,034
850 ∼ 899 床
3
1
1
1
1
900 ∼ 999 床
11
4
5
20
40
1000 床以上
13
1
1
14
234
643
72
94
6,793
14,358
合計
図表Ⅱ - 3- 14 (QH-06)
地域別事例情報報告参加医療機関数及び報告件数
地域
医療機関数
※ 2016 年
6月 3 0日現在
報告医療機関数
2016 年
4月∼6月
報告件数
2016 年
1月∼6月
(累計)
2016 年
4月∼6月
2016 年
1月∼6月
(累計)
北海道
52
6
7
64
137
東北
63
6
8
286
807
関東甲信越
167
21
24
2,170
4,299
東海北陸
110
10
14
2,352
4,327
近畿
94
12
16
1,250
2,946
中国四国
79
10
14
556
1,592
九州沖縄
78
7
11
115
250
643
72
94
6,793
14,358
合計
- 87 -
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
図表Ⅱ - 3- 15 (QH-07)
報告件数別事例情報報告参加医療機関数
報告医療機関数
報告件数
2016 年
4月∼6月
2016 年
1月∼6月
(累計)
0
571
549
1
16
22
2
2
8
3
4
1
4
2
6
5
3
1
6
3
0
7
4
2
8
0
0
9
1
1
10
1
5
11 ∼ 20
6
11
21 ∼ 30
2
1
31 ∼ 40
1
4
41 ∼ 50
3
1
51 ∼ 100
6
6
101 ∼ 150
5
4
151 ∼ 200
0
1
200 以上
合計
13
20
643
643
- 88 -
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
【4】事例情報の報告の内容
2016年4月1日から同年6月30日までの事例情報報告参加医療機関からのヒヤリ・ハット
事例情報報告の内容は以下の通りである。
なお、各表はヒヤリ・ハット事例「事例情報」報告入力項目(注)を集計したものである。
図表Ⅱ - 3- 16 (QH-28)
当事者職種
当事者職種
件数
医師
Ⅱ
360
歯科医師
5
看護師
5,986
准看護師
64
薬剤師
330
臨床工学技士
47
助産師
139
看護助手
38
診療放射線技師
87
臨床検査技師
113
管理栄養士
23
栄養士
40
調理師・調理従事者
33
理学療法士(PT)
79
作業療法士(OT)
46
言語聴覚士(ST)
7
衛生検査技師
0
歯科衛生士
5
歯科技工士
0
その他
293
合 計
7,695
※当事者とは当該事象に関係したと医療機関が判断した者であり、複数回答が可能である。
(件)
6,000
5,500
5,000
4,500
4,000
3,500
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
500
その他
歯科技工士
歯科衛生士
衛生検査技師
言語聴覚士︵ST︶
作業療法士︵OT︶
理学療法士︵PT︶
調理師 調・理従事者
栄養士
管理栄養士
臨床検査技師
診療放射線技師
看護助手
助産師
臨床工学技士
薬剤師
准看護師
看護師
歯科医師
医師
0
(注)
「報告入力項目(ヒヤリ・ハッ
ト事例)
」は公益財団法人日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業ホームページ「関連文書」
(http://www.
med-safe.jp/pdf/hiyarihatto_input_item.pdf)参照。
- 89 -
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
図表Ⅱ - 3- 17 (QH-29)
当事者職種経験
当事者職種経験
医師
歯科医師
看護師
准看護師
薬剤師
臨床工学
技士
助産師
看護助手
診療放射線 臨床検査
技師
技師
0年
98
0
831
4
52
6
19
3
12
32
1年
25
0
809
2
52
6
13
8
7
5
2年
21
1
549
1
27
0
13
6
4
1
3年
20
0
427
1
8
10
10
6
9
1
4年
20
1
447
2
12
3
9
5
7
3
5年
12
0
304
4
17
0
6
1
3
2
6年
11
1
235
1
14
2
5
0
4
0
7年
9
0
187
0
18
1
9
3
1
3
8年
8
0
171
0
10
2
3
1
1
2
9年
9
0
191
2
11
5
3
2
2
0
10 年
9
0
163
1
8
2
4
2
4
2
11 年
4
0
129
1
3
1
1
0
1
1
12 年
7
0
118
0
8
2
5
0
0
2
13 年
7
0
130
0
2
1
5
0
0
1
14 年
10
0
114
2
4
0
1
1
1
2
15 年
9
1
136
1
6
0
2
0
4
6
16 年
10
0
107
0
4
0
2
0
2
4
17 年
10
0
83
2
2
1
3
0
2
2
18 年
6
0
92
3
1
1
2
0
0
2
19 年
2
0
71
2
5
1
2
0
0
0
20 年
8
0
108
1
3
1
5
0
2
3
21 年
5
0
57
0
1
0
0
0
3
5
22 年
5
0
54
1
9
0
0
0
1
3
23 年
4
0
71
0
7
0
2
0
0
4
24 年
5
0
28
1
9
0
0
0
1
1
25 年
5
0
63
1
3
1
1
0
2
5
26 年
0
0
21
3
4
0
1
0
1
0
27 年
3
0
53
5
7
0
3
0
1
1
28 年
1
0
45
0
2
0
1
0
1
0
29 年
3
0
29
3
4
0
2
0
2
2
30 年
6
1
47
7
6
1
2
0
3
11
31 年
3
0
13
0
0
0
2
0
1
0
32 年
0
0
10
0
2
0
3
0
1
0
33 年
2
0
15
0
3
0
0
0
0
1
34 年
0
0
22
0
2
0
0
0
1
1
35 年
0
0
19
3
1
0
0
0
1
1
36 年
0
0
11
0
0
0
0
0
2
1
37 年
0
0
3
3
2
0
0
0
0
2
38 年
0
0
4
1
1
0
0
0
0
0
39 年
0
0
3
2
0
0
0
0
0
0
40 年超
3
0
16
4
0
0
0
0
0
1
合 計
360
5
5,986
64
330
47
139
38
87
113
※当事者とは当該事象に関係したと医療機関が判断した者であり、複数回答が可能である。
- 90 -
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
管理栄養士
栄養士
調理師・ 理学療法士 作業療法士 言語聴覚士 衛生検査
歯科衛生士 歯科技工士
調理従事者 (PT)
(OT)
(ST)
技師
その他
合 計
5
7
1
19
9
1
0
0
0
193
1,292
0
5
1
7
11
2
0
0
0
7
960
1
0
3
16
6
2
0
0
0
9
660
2
0
2
9
2
1
0
0
0
6
514
3
2
0
1
1
0
0
0
0
9
525
1
1
0
2
1
0
0
0
0
7
361
1
0
0
4
1
0
0
0
0
4
283
0
0
1
4
5
1
0
0
0
2
244
0
2
2
2
2
0
0
0
0
3
209
0
3
0
2
2
0
0
0
0
8
240
2
1
4
3
3
0
0
0
0
2
210
3
1
2
0
0
0
0
0
0
4
151
1
2
1
0
0
0
0
0
0
1
147
0
0
0
0
1
0
0
0
0
4
151
0
0
0
0
0
0
0
0
0
3
138
0
1
1
0
1
0
0
0
0
3
171
0
0
0
0
0
0
0
2
0
1
132
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
106
1
0
0
0
0
0
0
0
0
1
109
0
0
0
1
0
0
0
1
0
1
86
2
10
2
0
0
0
0
1
0
1
147
0
0
2
1
0
0
0
0
0
1
75
0
0
1
1
0
0
0
0
0
1
76
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
89
0
0
1
1
0
0
0
0
0
0
47
0
3
0
0
0
0
0
0
0
1
85
0
0
0
0
0
0
0
0
0
3
33
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
73
0
0
0
1
1
0
0
0
0
1
53
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
47
0
2
3
0
0
0
0
0
0
1
90
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
19
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
16
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
21
0
0
1
4
0
0
0
0
0
0
31
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
25
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
15
1
0
1
0
0
0
0
0
0
0
12
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
7
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
5
0
0
1
0
0
0
0
0
0
15
40
23
40
33
79
46
7
0
5
0
293
7,695
- 91 -
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
図表Ⅱ - 3- 18 (QH-30)
当事者部署配属期間
当事者部署配属期間
医師
歯科医師
看護師
准看護師
薬剤師
臨床工学
技士
助産師
看護助手
診療放射線 臨床検査
技師
技師
0年
169
1
1,578
13
59
6
32
10
15
43
1年
50
0
1,323
7
61
6
24
10
10
13
2年
30
1
873
0
33
3
18
5
5
4
3年
9
0
591
4
19
12
11
3
9
5
4年
10
0
552
4
14
2
16
3
5
4
5年
16
1
332
1
17
0
7
2
3
2
6年
14
1
185
8
25
2
3
0
4
0
7年
8
0
136
1
14
0
5
2
2
6
8年
6
0
93
4
4
1
3
0
1
2
9年
3
0
79
3
4
3
2
2
0
3
10 年
11
0
75
4
4
2
5
1
6
5
11 年
5
0
40
6
5
0
2
0
0
1
12 年
4
0
17
0
7
1
4
0
1
2
13 年
0
0
28
2
1
0
0
0
1
3
14 年
4
0
6
1
1
0
0
0
1
1
15 年
2
0
19
0
5
1
0
0
2
3
16 年
0
0
7
1
2
1
3
0
3
1
17 年
4
0
3
0
1
5
0
0
0
1
18 年
0
0
5
0
1
2
2
0
0
2
19 年
0
0
5
3
2
0
0
0
1
0
20 年
3
1
9
1
4
0
2
0
3
2
21 年
2
0
3
0
1
0
0
0
1
2
22 年
0
0
2
0
7
0
0
0
2
1
23 年
0
0
4
0
5
0
0
0
0
2
24 年
0
0
2
0
8
0
0
0
0
0
25 年
5
0
5
0
1
0
0
0
3
0
26 年
0
0
4
0
4
0
0
0
1
0
27 年
0
0
1
0
5
0
0
0
1
1
28 年
0
0
2
0
3
0
0
0
0
0
29 年
1
0
0
0
3
0
0
0
1
0
30 年
3
0
1
0
4
0
0
0
1
2
31 年
0
0
1
0
1
0
0
0
1
0
32 年
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
33 年
0
0
0
0
3
0
0
0
0
1
34 年
0
0
1
0
1
0
0
0
0
0
35 年
0
0
2
0
1
0
0
0
1
1
36 年
0
0
0
0
0
0
0
0
2
0
37 年
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
38 年
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
39 年
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
40 年超
1
0
1
1
0
0
0
0
0
0
合 計
360
5
5,986
64
330
47
139
38
87
113
※当事者とは当該事象に関係したと医療機関が判断した者であり、複数回答が可能である。
- 92 -
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
管理栄養士
栄養士
調理師・ 理学療法士 作業療法士 言語聴覚士 衛生検査
歯科衛生士 歯科技工士
調理従事者 (PT)
(OT)
(ST)
技師
その他
合 計
8
10
1
30
14
2
0
0
0
196
2,187
5
9
2
6
11
3
0
0
0
15
1,555
3
1
4
12
7
2
0
0
0
14
1,015
1
4
5
6
2
0
0
0
0
4
685
1
9
2
2
1
0
0
0
0
9
634
0
3
1
1
0
0
0
0
0
4
390
0
1
0
7
4
0
0
0
0
6
260
0
0
1
1
1
0
0
1
0
3
181
0
1
0
1
1
0
0
1
0
6
124
0
0
0
2
2
0
0
1
0
7
111
2
0
4
2
2
0
0
0
0
2
125
0
1
2
0
0
0
0
0
0
2
64
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
37
0
0
1
0
0
0
0
0
0
2
38
1
1
0
0
0
0
0
0
0
1
17
0
0
2
0
1
0
0
0
0
1
36
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
18
0
0
1
0
0
0
0
0
0
1
16
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
13
0
0
0
1
0
0
0
0
0
1
13
1
0
0
0
0
0
0
1
0
0
27
1
0
2
1
0
0
0
0
0
1
14
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
13
0
0
0
1
0
0
0
0
0
1
13
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
10
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
15
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
9
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
8
0
0
0
1
0
0
0
0
0
1
7
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
7
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
12
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
3
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
4
0
0
0
4
0
0
0
0
0
0
6
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
5
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
14
17
23
40
33
79
46
7
0
5
0
293
7,695
- 93 -
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
図表Ⅱ - 3- 19 (QH-31)
事例の概要
事例の概要
薬剤
2016 年4月∼6月
%
件数
%
2,663
39.2
5,618
39.1
輸血
治療・処置
医療機器等
ドレーン・チューブ
0.4
67
0.5
4.3
592
4.1
157
2.3
330
2.3
15.6
2,268
15.8
489
7.2
1,120
7.8
1,173
17.3
2,626
18.3
その他
合 計
30
295
1,061
検査
療養上の世話
2016 年1月∼6月(累計)
件数
925
13.6
1,737
12.1
6,793
100.0
14,358
100.0
※割合については、小数点第2位を四捨五入したものであり、合計が 100.0 にならないことがある。
図表Ⅱ - 3- 20 (QH-33)
影響度
影響度
死亡もしくは重篤な状況に
至ったと考えられる
濃厚な処置・治療が必要
であると考えられる
軽 微 な 処 置・ 治 療 が 必 要
もしくは処置・治療が不要
と考えられる
合 計
2016 年4月∼6月
件数
2016 年1月∼6月(累計)
%
件数
%
55
1.6
106
1.6
132
3.9
263
3.9
3,186
94.5
6,314
94.5
3,373
100.0
6,683
100.0
※割合については、小数点第2位を四捨五入したものであり、合計が 100.0 にならないことがある。
- 94 -
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
図表Ⅱ - 3- 21 (QH-36)
発生要因
2016 年4月∼6月
発生要因
件数
%
10,057
4,386
1,702
175
208
1,167
921
1,498
4,760
743
522
1,795
103
683
914
1,919
215
347
146
161
150
638
262
2,428
690
216
306
1,216
19,164
当事者の行動に関わる要因
確認を怠った
観察を怠った
報告が遅れた(怠った)
記録などに不備があった
連携ができていなかった
患者への説明が不十分であった(怠った)
判断を誤った
ヒューマンファクター
知識が不足していた
技術・手技が未熟だった
勤務状況が繁忙だった
通常とは異なる身体的条件下にあった
通常とは異なる心理的条件下にあった
その他
環境・設備機器
コンピュータシステム
医薬品
医療機器
施設・設備
諸物品
患者側
その他
その他
教育・訓練
仕組み
ルールの不備
その他
合 計
52.5
22.9
8.9
0.9
1.1
6.1
4.8
7.8
24.9
3.9
2.7
9.4
0.5
3.6
4.8
10.0
1.1
1.8
0.8
0.8
0.8
3.3
1.4
12.6
3.6
1.1
1.6
6.3
100.0
2016 年1月∼6月(累計)
件数
%
20,610
9,150
3,480
369
428
2,344
1,793
3,046
9,310
1,568
1,094
3,517
213
1,210
1,708
4,164
402
730
317
330
297
1,551
537
5,064
1,574
476
756
2,258
39,148
52.7
23.4
8.9
0.9
1.1
6.0
4.6
7.8
23.8
4.0
2.8
9.0
0.5
3.1
4.4
10.7
1.0
1.9
0.8
0.8
0.8
4.0
1.4
12.9
4.0
1.2
1.9
5.8
100.0
※発生要因は複数回答が可能である。
※割合については、小数点第2位を四捨五入したものであり、合計が 100.0 にならないことがある。
図表Ⅱ - 3- 22 (QH-61)
事例の概要 × 影響度
事例の概要×影響度
軽微な処置・治療が必要
死亡もしくは重篤な状況 濃厚な処置・治療が必要
も し く は 処 置・ 治 療 が
に至ったと考えられる
であると考えられる
不要と考えられる
合 計
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
1 月∼6月
1 月∼6月
1 月∼6月
1 月∼6月
4月∼6月 (累計) 4月∼6月 (累計) 4月∼6月 (累計) 4月∼6月 (累計)
薬剤
20
33
45
97
1,214
2,527
1,279
2,657
輸血
0
0
0
1
12
27
12
28
治療・処置
7
15
12
27
123
230
142
272
医療機器等
2
7
4
11
79
154
85
172
ドレーン・チューブ
5
10
37
56
446
833
488
899
検査
4
9
3
9
302
623
309
641
療養上の世話
3
10
21
43
650
1,256
674
1,309
その他
合 計
14
22
10
19
360
664
384
705
55
106
132
263
3,186
6,314
3,373
6,683
- 95 -
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
図表Ⅱ - 3- 23 (QH-64)
発生場面×影響度
発生場面×影響度
薬剤に関する項目
処方
手書きによる処方箋の作成
オーダリングによる処方箋の作成
口頭による処方指示
手書きによる処方の変更
オーダリングによる処方の変更
口頭による処方の変更
その他の処方に関する場面
調剤
内服薬調剤
注射薬調剤
血液製剤調剤
外用薬調剤
その他の調剤に関する場面
製剤管理
内服薬製剤管理
注射薬製剤管理
血液製剤管理
外用薬製剤管理
その他の製剤管理に関する場面
与薬準備
与薬準備
与薬
皮下・筋肉注射
静脈注射
動脈注射
末梢静脈点滴
中心静脈注射
内服
外用
坐剤
吸入
点鼻・点耳・点眼
その他与薬に関する場面
輸血に関する項目
処方
手書きによる処方箋の作成
オーダリングによる処方箋の作成
口頭による処方指示
手書きによる処方の変更
オーダリングによる処方の変更
口頭による処方の変更
その他の処方に関する場面
輸血検査
準備
実施
その他の輸血検査に関する場面
放射線照射
準備
実施
その他の放射線照射に関する場面
輸血準備
製剤の交付
その他の輸血準備に関する場面
輸血実施
実施
その他の輸血実施に関する場面
死亡もしくは重篤な状況 濃 厚 な 処 置・ 治 療 が 必 軽微な処置・治療が必要
もしくは 処 置・ 治 療 が
に至ったと考えられる
要であると考えられる
不要と考えられる
合 計
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
1 月∼6月
1 月∼6月
1 月∼6月
1 月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
0
3
0
0
0
0
2
0
4
0
0
0
0
2
0
4
1
0
0
1
1
0
10
2
0
0
1
1
4
26
2
3
4
0
21
4
51
6
7
9
1
56
4
33
3
3
4
1
24
4
65
8
7
9
2
59
1
1
0
0
0
5
3
0
1
0
3
3
0
0
0
4
8
0
0
0
73
45
2
5
5
163
97
4
7
10
77
49
2
5
5
172
108
4
8
10
0
0
0
0
1
0
0
0
0
1
0
0
0
1
1
1
0
0
1
4
9
13
2
2
11
17
31
4
3
30
9
13
2
3
13
18
31
4
4
35
6
7
8
23
206
369
220
399
0
1
0
0
1
3
0
0
0
0
1
0
2
0
1
3
3
0
0
0
0
1
2
5
0
5
1
8
0
0
0
0
1
4
9
1
8
1
17
1
0
0
0
1
45
100
3
95
30
421
34
1
7
11
34
105
186
9
237
73
888
57
3
13
24
63
47
106
3
100
32
432
34
1
7
11
36
109
197
10
246
77
908
58
3
13
24
65
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
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0
0
0
1
0
1
4
0
1
1
0
1
4
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
5
1
5
1
5
1
5
0
0
0
0
0
0
1
0
3
1
8
5
3
1
9
5
- 96 -
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
発生場面×影響度
治療・処置に関する項目
指示
手書きによる指示の作成
オーダリングによる指示の作成
口頭による指示
手書きによる指示の変更
オーダリングによる指示の変更
口頭による指示の変更
その他の指示に関する場面
管理
管理
その他の管理に関する場面
準備
準備
その他の準備に関する場面
実施
実施
その他の治療・処置に関する場面
医療機器等・医療材料の使用・管理に関する項目
指示
手書きによる指示の作成
オーダリングによる指示の作成
口頭による指示
手書きによる指示の変更
オーダリングによる指示の変更
口頭による指示の変更
その他の指示に関する場面
管理
管理
準備
準備
使用
使用中
ドレーン・チューブ類の使用・管理に関する項目
指示
手書きによる指示の作成
オーダリングによる指示の作成
口頭による指示
手書きによる指示の変更
オーダリングによる指示の変更
口頭による指示の変更
その他の指示に関する場面
管理
管理
準備
準備
使用
使用中
検査に関する項目
指示
手書きによる指示の作成
オーダリングによる指示の作成
口頭による指示
手書きによる指示の変更
オーダリングによる指示の変更
口頭による指示の変更
その他の指示に関する場面
管理
管理
準備
準備
実施
実施中
死亡もしくは重篤な状況 濃 厚 な 処 置・ 治 療 が 必 軽微な処置・治療が必要
もしくは 処 置・ 治 療 が
に至ったと考えられる
要であると考えられる 不要と考えられる
合 計
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
1 月∼6月
1 月∼6月
1 月∼6月
1 月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
0
0
0
0
0
0
1
1
0
1
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
1
1
1
1
1
0
1
18
1
3
2
1
0
4
27
1
1
1
1
0
1
20
2
3
3
1
0
4
29
0
1
1
1
2
1
6
2
12
2
23
7
14
4
30
10
2
0
3
0
1
0
4
0
26
5
49
8
29
5
56
8
3
0
7
0
5
2
11
3
41
14
84
21
49
16
102
24
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
20
0
1
0
1
0
0
27
0
0
0
0
0
0
20
0
1
0
1
0
0
27
1
4
0
1
16
38
17
43
0
1
2
3
9
22
11
26
1
2
2
7
34
65
37
74
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
11
0
0
0
0
0
0
13
0
0
0
0
0
0
80
0
2
0
0
1
0
111
0
0
0
0
0
0
91
0
2
0
0
1
0
124
2
3
5
11
39
100
46
114
0
1
0
0
0
4
0
5
3
6
21
32
327
615
351
653
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
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0
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0
0
0
0
0
1
5
5
3
0
1
3
64
8
10
3
0
4
4
116
6
5
3
0
1
3
65
9
10
3
0
4
4
117
0
1
0
1
25
45
25
47
2
3
0
2
54
123
56
128
2
5
1
4
142
310
145
319
- 97 -
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
発生場面×影響度
療養上の世話に関する項目
計画又は指示
手書きによる計画又は指示の作成
オーダリングによる計画又は指示の作成
口頭による計画又は指示
手書きによる計画又は指示の変更
オーダリングによる計画又は指示の変更
口頭による計画又は指示の変更
その他の計画又は指示に関する場面
管理・準備・実施
管理
準備
実施中
その他
合計
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
死亡もしくは重篤な状況 濃 厚 な 処 置・ 治 療 が 必 軽微な処置・治療が必要
もしくは 処 置・ 治 療 が
に至ったと考えられる
要であると考えられる 不要と考えられる
合 計
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
1 月∼6月
1 月∼6月
1 月∼6月
1 月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
3
0
0
0
0
1
0
5
1
2
1
0
1
1
118
3
5
1
0
2
3
204
1
2
1
0
1
1
121
3
5
1
0
3
3
209
1
0
2
14
55
4
0
6
22
106
5
0
13
10
132
9
0
28
19
263
166
28
332
360
3,186
303
58
677
664
6,314
172
28
347
384
3,373
316
58
711
705
6,683
- 98 -
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
図表Ⅱ - 3- 24 (QH-65)
事例の内容 × 影響度
事例の内容×影響度
死亡もしくは重篤な状況 濃厚な処置・治療が必要 軽微な処置・治療が必要
もしくは 処 置・ 治 療 が
に至ったと考えられる
であると考えられる
不要と考えられる
合 計
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
薬剤に関する項目
処方
処方忘れ
処方遅延
処方量間違い
重複処方
禁忌薬剤の処方
対象患者処方間違い
処方薬剤間違い
処方単位間違い
投与方法処方間違い
その他の処方に関する内容
調剤
調剤忘れ
処方箋・注射箋鑑査間違い
秤量間違い調剤
数量間違い
分包間違い
規格間違い調剤
単位間違い調剤
薬剤取り違え調剤
説明文書の取り違え
交付患者間違い
薬剤・製剤の取り違え交付
期限切れ製剤の交付
その他の調剤に関する内容
製剤管理
薬袋・ボトルの記載間違い
異物混入
細菌汚染
期限切れ製剤
その他の製剤管理に関する内容
与薬準備
過剰与薬準備
過少与薬準備
与薬時間・日付間違い
重複与薬
禁忌薬剤の与薬
投与速度速すぎ
投与速度遅すぎ
患者間違い
薬剤間違い
単位間違い
投与方法間違い
無投薬
混合間違い
その他の与薬準備に関する内容
与薬
過剰投与
過少投与
投与時間・日付間違い
重複投与
禁忌薬剤の投与
投与速度速すぎ
投与速度遅すぎ
患者間違い
薬剤間違い
単位間違い
投与方法間違い
無投薬
その他の与薬に関する内容
0
0
1
0
1
0
0
1
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2
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1
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1
1
0
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2
0
2
0
1
1
64
1
16
5
3
4
6
0
2
27
111
2
32
9
5
7
13
1
7
67
65
1
20
6
4
4
6
1
3
30
112
2
39
11
8
7
15
2
8
70
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0
0
0
0
0
0
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0
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0
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0
0
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0
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0
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0
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1
0
1
0
5
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0
1
0
4
4
11
1
14
7
9
0
30
0
4
6
0
40
9
18
2
49
10
28
3
65
2
9
9
1
71
4
11
1
15
7
9
0
32
0
4
6
0
44
9
18
2
53
10
29
3
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9
10
1
77
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0
0
0
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0
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13
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2
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3
34
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66
27
25
26
10
2
4
3
20
40
6
7
59
10
129
13
14
19
7
2
2
1
11
24
4
3
35
9
67
30
26
27
11
3
4
3
24
46
8
8
63
12
133
0
0
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0
0
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1
0
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7
7
3
3
2
0
3
0
4
1
0
2
6
11
86
83
74
23
10
30
10
22
20
3
22
245
100
198
183
144
39
17
75
22
43
49
7
49
504
224
91
83
77
25
10
31
10
25
22
3
24
249
107
206
186
149
41
17
78
22
49
51
7
52
511
237
- 99 -
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
事例の内容×影響度
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
死亡もしくは重篤な状況 濃厚な処置・治療が必要 軽微な処置・治療が必要
もしくは 処 置・ 治 療 が
に至ったと考えられる
であると考えられる
不要と考えられる
合 計
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
輸血に関する項目
指示出し
指示出し忘れ
指示遅延
指示量間違い
重複指示
禁忌薬剤の指示
対象患者指示間違い
指示薬剤間違い
指示単位間違い
投与方法指示間違い
その他の指示出しに関する内容
輸血検査
未実施
検体取り違え
判定間違い
結果記入・入力間違い
その他の輸血検査に関する内容
放射線照射
未実施
過剰照射
過少照射
患者間違い
製剤間違い
その他の放射線照射に関する内容
輸血管理
薬袋・ボトルの記載間違い
異物混入
細菌汚染
期限切れ製剤
その他の輸血管理に関する内容
輸血準備
過剰与薬準備
過少与薬準備
与薬時間・日付間違い
重複与薬
禁忌薬剤の与薬
投与速度速すぎ
投与速度遅すぎ
患者間違い
薬剤間違い
単位間違い
投与方法間違い
無投薬
その他の輸血準備に関する内容
輸血実施
過剰投与
過少投与
投与時間・日付間違い
重複投与
禁忌薬剤の投与
投与速度速すぎ
投与速度遅すぎ
患者間違い
薬剤間違い
単位間違い
投与方法間違い
無投薬
その他の輸血実施に関する内容
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0
2
0
0
1
0
0
8
- 100 -
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
事例の内容×影響度
治療・処置に関する項目
指示
指示出し忘れ
指示遅延
対象患者指示間違い
治療・処置指示間違い
日程間違い
時間間違い
その他の治療・処置の指示に関する内容
管理
治療・処置の管理
その他の治療・処置の管理に関する内容
準備
医療材料取り違え
患者体位の誤り
消毒・清潔操作の誤り
その他の治療・処置の準備に関する内容
実施
患者間違い
部位取違え
方法(手技)の誤り
未実施・忘れ
中止・延期
日程・時間の誤り
順番の誤り
不必要行為の実施
誤嚥
誤飲
異物の体内残存
診察・治療・処置等その他の取違え
その他の治療・処置の実施に関する内容
医療機器等・医療材料の使用・管理に関する項目
指示
指示出し忘れ
指示遅延
対象患者指示間違い
使用方法指示間違い
その他の医療機器等・医療材料の
使用に関する内容
管理
保守・点検不良
保守・点検忘れ
使用中の点検・管理ミス
破損
その他の医療機器等・医療材料の
管理に関する内容
準備
組み立て
設定条件間違い
設定忘れ
電源入れ忘れ
警報設定忘れ
警報設定範囲間違い
便宜上の警報解除後の再設定忘れ
消毒・清潔操作の誤り
使用前の点検・管理ミス
破損
その他の医療機器等・医療材料の
準備に関する内容
死亡もしくは重篤な状況 濃厚な処置・治療が必要 軽微な処置・治療が必要
もしくは 処 置・ 治 療 が
に至ったと考えられる
であると考えられる
不要と考えられる
合 計
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
1
2
1
0
1
1
1
8
4
2
2
3
2
1
9
2
1
0
1
1
1
10
4
2
2
3
2
1
12
0
1
0
2
2
0
5
2
6
9
14
16
8
10
19
20
0
0
0
2
0
0
0
3
0
1
0
1
0
1
1
3
2
2
0
24
3
2
3
48
2
3
0
27
3
3
4
54
0
0
1
0
0
0
0
1
0
0
0
0
1
1
0
1
0
0
0
0
1
0
0
0
0
5
0
0
2
1
0
0
0
0
0
0
0
0
4
0
0
3
1
0
1
0
0
0
0
1
0
8
1
3
4
13
0
0
0
2
0
0
4
1
38
3
4
9
18
1
1
0
6
1
0
10
1
67
1
3
7
14
0
0
0
3
0
0
4
1
43
4
4
13
19
1
2
0
7
1
0
11
1
80
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
2
3
2
3
0
0
1
0
0
0
3
0
0
0
0
0
0
0
2
0
2
1
9
1
5
2
24
2
2
1
10
1
5
2
29
2
0
1
0
0
11
20
11
21
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
3
1
0
2
0
0
0
1
3
0
5
2
2
2
0
0
0
2
7
0
3
1
0
2
0
0
0
1
4
0
5
2
2
2
0
0
0
2
9
0
0
1
1
2
3
7
4
10
- 101 -
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
事例の内容×影響度
使用
医療機器等・医療材料の不適切使用
誤作動
故障
破損
その他の医療機器等・医療材料の
使用に関する内容
ドレーン・チューブ類の使用・管理に関する項目
指示
指示出し忘れ
指示遅延
対象患者指示間違い
使用方法指示間違い
その他のドレーン・チューブ類の
使用・管理の指示に関する内容
管理
点検忘れ
点検不良
使用中の点検・管理ミス
破損
その他のドレーン・チューブ類の
管理に関する内容
準備
組み立て
設定条件間違い
設定忘れ
消毒・清潔操作の誤り
使用前の点検・管理ミス
その他のドレーン・チューブ類の
準備に関する内容
使用
点滴漏れ
自己抜去
自然抜去
接続はずれ
未接続
閉塞
切断・破損
接続間違い
三方活栓操作間違い
ルートクランプエラー
空気混入
誤作動
故障
ドレーン・チューブ類の不適切使用
その他のドレーン・チューブ類の
使用に関する内容
検査に関する項目
指示
指示出し忘れ
指示遅延
対象患者指示間違い
指示検査の間違い
その他の検査の指示に関する内容
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
死亡もしくは重篤な状況 濃厚な処置・治療が必要 軽微な処置・治療が必要
もしくは 処 置・ 治 療 が
に至ったと考えられる
であると考えられる
不要と考えられる
合 計
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
1
0
1
0
3
0
10
3
3
9
14
4
8
14
11
3
4
9
15
4
11
14
1
1
0
2
15
30
16
33
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
1
1
1
0
0
3
5
4
6
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
2
0
1
1
3
2
1
11
3
2
3
26
6
2
2
11
5
2
4
27
9
1
2
5
6
26
62
32
70
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
0
1
0
0
0
0
0
0
0
2
0
1
0
0
0
1
0
0
0
2
0
3
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
1
0
0
1
0
1
0
2
0
0
1
0
0
0
1
0
0
1
0
17
2
1
0
2
3
0
0
2
0
0
0
0
1
26
5
1
0
2
5
0
0
2
0
0
0
1
10
252
30
26
0
12
20
2
7
10
1
0
0
7
20
460
64
42
2
22
33
2
9
17
1
0
0
11
10
269
32
28
0
14
23
2
7
12
2
0
0
8
21
487
69
45
2
24
39
2
9
19
2
0
0
13
0
0
2
2
23
40
25
42
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
1
0
0
2
2
1
4
19
2
4
1
4
32
2
2
2
4
19
2
4
2
4
32
- 102 -
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
事例の内容×影響度
管理
分析機器・器具管理
試薬管理
データ紛失
計算・入力・暗記
その他の検査の管理に関する内容
準備
患者取違え
検体取違え
検体紛失
検査機器・器具の準備
検体破損
その他の検査の準備に関する内容
実施
患者取違え
検体取違え
試薬の間違い
検体紛失
検査の手技・判定技術の間違い
検体採取時のミス
検体破損
検体のコンタミネーション
データ取違え
結果報告
その他の検査の実施に関する内容
療養上の世話に関する項目
計画又は指示
計画忘れ又は指示出し忘れ
計画又は指示の遅延
計画又は指示の対象患者間違い
計画又は指示内容間違い
死亡もしくは重篤な状況 濃厚な処置・治療が必要 軽微な処置・治療が必要
もしくは 処 置・ 治 療 が
に至ったと考えられる
であると考えられる
不要と考えられる
合 計
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
1月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
4月∼6月
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
3
0
0
3
24
4
0
0
4
46
3
0
0
3
24
4
0
0
4
46
0
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
3
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
5
5
2
6
0
36
10
11
2
16
0
88
5
5
2
6
0
38
10
11
2
16
0
93
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
1
1
0
0
0
0
0
0
0
0
1
4
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
0
0
0
0
1
1
0
0
0
0
4
8
5
1
3
17
22
1
0
2
16
115
18
9
1
13
30
47
5
1
6
24
245
8
5
1
3
17
22
1
0
2
17
118
19
9
1
13
31
48
5
1
6
25
253
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
2
1
1
1
3
1
2
2
2
1
1
1
4
1
2
2
0
0
0
0
5
14
5
14
拘束・抑制
0
0
0
0
1
5
1
5
給食の内容の間違い
0
0
0
0
19
31
19
31
安静指示
禁食指示
外出・外泊許可
異物混入
転倒
転落
衝突
誤嚥
誤飲
誤配膳
遅延
実施忘れ
搬送先間違い
患者間違い
延食忘れ
中止の忘れ
自己管理薬飲み忘れ・注射忘れ
自己管理薬注入忘れ
自己管理薬取違え摂取
不必要行為の実施
0
0
0
0
1
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
3
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
15
3
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
26
7
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
6
8
1
373
116
3
0
2
10
1
17
2
3
0
0
3
0
5
3
8
16
17
5
697
221
9
0
2
17
2
26
3
7
1
1
5
0
9
8
2
6
8
1
389
120
3
0
2
10
1
17
2
3
0
0
3
0
5
3
9
17
17
5
726
229
9
0
2
17
2
26
3
7
1
1
5
0
9
8
その他の療養上の世話の管理・準備・
実施に関する内容
1
5
3
8
65
144
69
157
14
55
22
106
10
132
19
263
360
3,186
664
6,314
384
3,373
705
6,683
その他の療養上の世話の計画又は
指示に関する内容
管理・準備・実施
その他
合計
- 103 -
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
図表Ⅱ - 3- 25 (QH-67)
発生要因×事例の概要
薬剤
輸血
治療・処置
2016 年
4月∼6月
確認を怠った
2,256
4,704
21
46
182
358
113
223
観察を怠った
403
792
8
15
53
113
38
70
報告が遅れた(怠った)
72
155
3
7
11
24
5
7
記録などに不備があった
103
206
0
4
12
23
1
9
連携ができていなかった
524
1,059
11
18
58
106
29
57
患者への説明が不十分で
あった(怠った)
227
439
0
0
22
38
5
9
判断を誤った
389
810
5
12
46
102
28
45
知識が不足していた
381
797
8
13
32
77
35
60
技術・手技が未熟だった
259
519
3
6
36
77
18
37
勤務状況が繁忙だった
865
1,700
10
19
57
96
31
62
発生要因×事例の概要
2016 年
4月∼6月
2016 年
1月∼6月
(累計)
医療機器等
2016 年
1月∼6月
(累計)
2016 年
4月∼6月
2016 年
1月∼6月
(累計)
2016 年
4月∼6月
2016 年
1月∼6月
(累計)
当事者の行動に関わる要因
ヒューマンファクター
通常とは異なる身体的
条件下にあった
通常とは異なる心理的
条件下にあった
46
98
1
2
5
8
1
3
321
589
4
5
37
56
13
19
その他
347
685
6
10
32
57
20
39
コンピュータシステム
108
189
1
5
8
15
9
11
医薬品
309
651
2
3
6
10
1
2
医療機器
22
43
1
1
22
48
45
108
施設・設備
33
64
0
2
4
7
7
14
諸物品
14
45
1
2
9
16
9
15
患者側
100
241
1
2
19
48
1
3
その他
93
213
3
7
14
26
8
17
教育・訓練
355
751
6
14
33
62
31
57
仕組み
115
236
1
2
12
24
11
27
ルールの不備
158
373
3
10
20
38
11
23
その他
353
641
3
5
39
67
18
32
7,853
16,000
102
210
769
1,496
488
949
環境・設備機器
その他
合計
※発生要因は複数回答が可能である。
- 104 -
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
ドレーン・チューブ
2016 年
4月∼6月
2016 年
1月∼6月
(累計)
検査
2016 年
4月∼6月
療養上の世話
2016 年
1月∼6月
(累計)
2016 年
4月∼6月
2016 年
1月∼6月
(累計)
その他
2016 年
4月∼6月
合計
2016 年
1月∼6月
(累計)
2016 年
4月∼6月
2016 年
1月∼6月
(累計)
10,057
20,610
465
973
376
852
427
930
546
1,064
4,386
9,150
510
1,074
36
94
454
977
200
345
1,702
3,480
13
25
24
50
9
35
38
66
175
369
5
13
25
54
12
40
50
79
208
428
130
232
127
265
139
320
149
287
1,167
2,344
189
351
23
54
331
689
124
213
921
1,793
399
791
59
146
390
855
182
285
1,498
3,046
4,760
9,310
75
175
65
147
68
167
79
132
743
1,568
79
190
19
59
52
118
56
88
522
1,094
281
506
121
266
257
550
173
318
1,795
3,517
18
28
7
13
18
44
7
17
103
213
86
138
59
116
77
135
86
152
683
1,210
189
297
53
130
123
254
144
236
914
1,708
1,919
4,164
3
6
39
67
3
20
44
89
215
402
12
27
6
10
7
16
4
11
347
730
25
53
10
24
6
13
15
27
146
317
28
54
7
19
68
142
14
28
161
330
29
54
10
20
51
96
27
49
150
297
190
458
14
27
254
662
59
110
638
1,551
26
45
18
50
33
79
67
100
262
537
2,428
5,064
72
209
39
92
91
268
63
121
690
1,574
20
41
14
49
7
38
36
59
216
476
14
48
33
85
16
82
51
97
306
756
142
240
61
135
135
253
465
885
1,216
2,258
3,000
6,028
1,245
2,824
3,028
6,783
2,679
4,858
19,164
39,148
- 105 -
Ⅱ
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
1 概況
【1】分析対象とするテーマの選定状況
本事業においては、収集された情報を基に、医療事故の発生予防・再発防止に資する情報提供を行
うために、分析対象とするテーマを設定し、そのテーマに関連する事例をまとめて分析、検討を行っ
ている。テーマは、①一般性・普遍性、②発生頻度、③患者への影響度、④防止可能性、⑤教訓性といっ
た観点から、専門家の意見を踏まえ選定している。なお、医療事故情報とヒヤリ・ハット事例を総合
的に検討するテーマについては、ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業において収集期間ごとに
定められたテーマに該当する事例情報を収集し、分析している。
本報告書における分析テーマについて図表Ⅲ - 1- 1に示す。
図表Ⅲ - 1- 1 本報告書における分析テーマ
①前方視的分析を行うテーマ
(テーマに該当するヒヤリ・ハット事例を1年間収集しながら、医療事故情報と総合的に分析するテーマ)
・腫瘍用薬に関連した事例
②後方視的分析を行うテーマ
(4∼6月に報告された医療事故情報の中からテーマを設定し、同種事例を過去に遡って活用し分析する
テーマ)
・持参薬と院内で処方した薬剤の重複投与に関連した事例
・永久気管孔にフィルムドレッシング材を貼付した事例
【2】分析対象とする情報
本報告書対象期間内に収集した医療事故情報及びヒヤリ・ハット事例のうち、対象とするテーマに
関連する情報を有している事例を抽出し、分析対象とした。
さらに、分析の必要性に応じて、本報告書対象期間外の過去の事例についても、抽出期間を設定し
た上で、同様の抽出を行い、分析対象とした。
- 106 -
1 概況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
【3】分析体制
医療安全に関わる医療専門職、安全管理の専門家などで構成される専門分析班を月1回程度の頻度
で開催し、本事業で収集された事例の概要の把握を行っている。その上で、新たな分析テーマに関す
る意見交換や、すでに分析対象となっているテーマについての分析の方向性の検討、助言などを行っ
ている。
さらに、事例の集積の程度や専門性に応じて設置が必要と判断されたテーマについては、テーマ別
専門分析班を設置し、分析を行っている。テーマ別専門分析班の開催頻度は報告書での公表のタイミ
ングや事例の集積の程度に応じて全体で月1∼2回程度としている。また、テーマによってはテーマ
別専門分析班を設置せず、専門分析班の助言を得ながら当事業部の客員研究員や事務局員が分析を
行っている。
最終的に専門分析班、テーマ別専門分析班の意見を踏まえ、当事業部で分析結果を取りまとめ、
総合評価部会の審議を経て分析結果の公表を行っている。
Ⅲ
【4】追加情報の収集
専門分析班において、医療機関から報告された事例の記述内容を分析する上で、さらに詳細な
事実関係を把握する必要があると判断される事例に関しては、文書による問い合わせや、医療機関の
協力を得て現地状況確認調査を行っている。追加情報の内容は、医療安全対策を検討するために活用
している。医療機関への現地状況確認調査は、2016年4月1日から6月30日までに2事例実施
した。
概況
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
- 107 -
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
2 個別のテーマの検討状況
【1】腫瘍用薬に関連した事例 ②「レジメン登録、治療計画、処方」の事例
がん治療において腫瘍用薬(抗がん薬)を用いた薬物療法は、手術療法や放射線療法とともに重要
である。腫瘍用薬を用いた薬物療法は、がんの治癒及び患者のQOLを高めることを目的とし、対象
疾患も多く、治療法、使用する薬剤も様々である。腫瘍用薬は単剤で使用することもあるが、多くは
複数の薬剤を組み合せた多剤併用療法がなされている。また、腫瘍用薬を投与する際の副作用の軽減
などを目的とした支持療法に用いる制吐剤や抗アレルギー薬などの薬剤と併用することも多い。
腫瘍用薬は、がん細胞に効果がある一方で、正常な細胞に損傷を与える危険もある。そのため、医
療機関では、腫瘍用薬を用いる化学療法に関して、科学的根拠に基づき薬剤の種類、投与量、投与方法、
投与期間、投与日、投与順などを決定し、時系列に明記した治療計画を作成し、院内の委員会で審査
した上でレジメン登録し実施するなど、組織的な管理がなされている。さらに、患者の治療過程にお
いては、患者の状態把握、治療効果の判断が重要であり、医師のみならず、薬剤師や看護師などがレ
ジメンや患者の病態などの情報を共有し、安全に治療できるよう、チームで取り組んでいる。
厚生労働科学研究「
『医薬品の安全使用のための業務手順書』作成マニュアル(2007年3月)
」1)
において、抗がん剤は特に安全管理が必要な医薬品(要注意薬)の投与等に注意が必要な医薬品とさ
れている。また、一般社団法人日本病院薬剤師会による「ハイリスク薬に関する業務ガイドライン
(Ver.2.2)(2016年6月4日改訂)」2)では、抗悪性腫瘍薬はハイリスク薬に該当している。
本事業では、報告された事例を基に、これまでに腫瘍用薬に関連する医療安全情報を3回提供し、
事例を紹介するとともに注意喚起を行ってきた(第45回報告書114頁 図表Ⅲ - 2- 1)。また、
第18回報告書(2009年9月公表)及び第20回報告書(2010年3月公表)では「化学療法
に関連した医療事故」として主な事例の紹介を行った。さらに、第34回報告書(2013年6月公
表)では「リツキシマブ製剤投与後のB型肝炎再活性化に関連した事例」を分析テーマとして取り上げ、
発生要因の分析やB型肝炎治療ガイドラインの紹介を行った。
腫瘍用薬は主に複数の薬剤を使用すること、患者の体表面積や体重によって投与量が決定されるこ
と、当日の検査値などから減量や投与中止の判断など薬剤の取り扱いに注意が必要なこと、患者への
影響が大きいことなどから、医療事故情報およびヒヤリ・ハット事例が本事業に多数報告されている。
そこで、本事業では腫瘍用薬に関連した医療事故情報やヒヤリ・ハット事例を個別のテーマとして
取り上げ、事例を1年間継続的に収集し、4回の報告書にわたって分析を進めることとした。前回の
第45回報告書では、腫瘍用薬に関連した医療事故情報やヒヤリ・ハット事例を概観した。今回は、
本報告書の分析対象期間(2016年4月∼6月)に報告された事例を追加して現状を紹介するとと
もに、報告された事例の中から発生段階が「レジメン登録」
、「治療計画」
、「処方」に該当する事例を
取り上げて分析を行った。
- 108 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
(1)腫瘍用薬に関連した医療事故情報の現状
①腫瘍用薬に関連した医療事故情報の考え方
本分析の対象は、2010年以降に報告された医療事故情報のうち、以下のキーワードを含む事例を
検索し、その中で、腫瘍用薬やその作用、薬剤の投与中の管理に関わる事例を対象とした。また、腫
瘍用薬を投与する際、副作用の軽減のため支持療法として投与される薬剤に関わる事例も対象とした。
なお、本分析では、腫瘍用薬投与中の患者の転倒、転落、誤飲、誤嚥、自殺などに関連した事例
や留置されているカテーテルの腫瘍用薬を投与している時以外の管理に関する事例、医薬品の臨床
試験に関連した事例などは対象に含めないこととした。
キーワード
腫瘍用薬
抗がん剤
抗癌剤
腫瘍薬
腫瘍剤
プロトコール
プロトコル
レジメン
ケモ
化学療法
Ⅲ
②発生状況
前回の第45回報告書では、2010年1月から2016年3月までに報告された医療事故
情報のうち、上記の基準に合致する腫瘍用薬に関連した医療事故情報228件の分析を行った。
今回は、分析対象期間(2016年4月∼6月)に報告された22件を追加し、250件を分析の
対象とした。
報告された事例について、事例の内容と発生段階で整理し、発生状況を集計した(図表Ⅲ - 2- 1)。
事例の内容としては、
「薬剤の血管外漏出・血管炎」が最も多く73件であり、次いで「腫瘍用薬
投与中の状態の悪化(副作用等)
」が57件、「薬剤量間違い/過剰」が37件と多かった。発生段
本報告書では事例を詳細に検討し、「事例の内容」を分類しなおしたため、第45回報告書に掲
載した図表と異なる部分がある。
図表Ⅲ - 2- 1 発生状況(医療事故情報)
事例の内容
薬剤量間違い
薬剤 対象者
間違い 間違い
過剰
過少
不明
カテー 腫瘍用
薬剤の カテー テル 薬投与
投与日
・
血管外 テル
投与
投与
支持
投与
中の
中止時
・
ポート
外れ
漏出
経路 無投与
時間
速度
状態の 療法の その他
の不具合
の投与
日数
・
・
間違い
間違い 間違い
悪化 間違い
・
間違い
血管炎 漏れ 取り扱い(副作用
間違い 等)
合計
レジメン登録
0
0
3
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
5
治療計画
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
2
処方
5
1
23
1
0
0
4
4
0
1
2
0
0
0
0
6
1
48
指示出し
0
0
0
0
0
1
1
0
0
0
2
0
0
0
0
0
1
5
指示受け
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
1
その他
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
調剤
2
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
4
調製
0
0
8
0
0
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
10
その他
0
0
1
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
患者への説明・指導
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
実施
3
5
0
0
0
5
2
1
8
3
0
0
0
3
0
2
1
33
実施に伴う確認・観察
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
73
6
0
57
0
1
137
指示
発生段階
準備
その他
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
2
合 計
10
6
37
1
0
7
7
8
8
6
4
73
6
3
57
9
8
250
- 109 -
腫瘍用薬に関連した事例
②﹁レジメン登録、治療計画、処方﹂の事例
階では、「実施に伴う確認・観察」が最も多く137件、次いで「処方」が48件と多かった。
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
(2)腫瘍用薬に関連したヒヤリ・ハット事例の現状
①腫瘍用薬に関連したヒヤリ・ハット事例の考え方
2016年1月から12月までの1年間、ヒヤリ・ハット事例の今期のテーマとして「腫瘍用薬
に関連したヒヤリ・ハット事例」を収集している。分析対象は、医療事故情報と同様に、以下のキー
ワードを含む事例を検索し、その中で、腫瘍用薬やその作用、薬剤の投与中の管理に関わる事例を
対象とした。また、腫瘍用薬を投与する際、副作用の軽減のため支持療法として投与される薬剤に
関わる事例も対象とした。
なお、医療事故情報と同様に、腫瘍用薬投与中の患者の転倒、転落、誤飲、誤嚥、自殺に関連し
た事例や留置されているカテーテルの腫瘍用薬を投与している時以外の管理に関する事例、医薬品
の臨床試験に関連した事例は対象に含めないこととした。
キーワード
腫瘍用薬
抗がん剤
抗癌剤
腫瘍薬
腫瘍剤
プロトコール
プロトコル
レジメン
ケモ
化学療法
②発生状況
前回の第45回報告書では、2016年1月から3月までに報告されたヒヤリ・ハット事例の
うち、上記の基準に合致する腫瘍用薬に関連したヒヤリ・ハット事例158件の分析を行った。
今回は、分析対象期間(2016年4月∼6月)に報告された216件を追加し、374件を分析
の対象とした。
報告された事例の概要を事例の内容と発生段階で整理し、発生状況を集計した(図表Ⅲ - 2- 2)
。
事例の内容としては、
「薬剤の血管外漏出・血管炎」が78件、「支持療法の間違い」が50件と多
かった。発生段階では、
「実施」が155件と多く、腫瘍用薬に関連したヒヤリ・ハット事例全体
の41. 4%を占めていた。
図表Ⅲ - 2- 2 発生状況(ヒヤリ・ハット事例)
事例の内容
薬剤量間違い
薬剤 対象者
間違い 間違い
過剰
過少
不明
カテー 腫瘍用
薬剤の カテー テル 薬投与
投与日
・
血管外 テル
投与
支持
投与
中の
投与
中止時
・
ポート
外れ
漏出
経路 無投与
時間
状態の 療法の その他
速度
の不具合
の投与
日数
・
・
間違い
悪化 間違い
間違い 間違い
・
間違い
血管炎 漏れ 取り扱い(副作用
間違い 等)
合計
レジメン登録
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
治療計画
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
処方
4
0
6
9
2
0
0
1
0
2
1
0
0
0
0
5
5
35
指示出し
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
3
0
0
0
0
1
1
6
指示受け
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
4
0
0
0
0
3
1
10
その他
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
調剤
3
3
4
5
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
15
調製
4
1
11
2
0
1
0
1
0
2
1
0
0
0
0
0
4
27
その他
8
指示
発生段階
準備
1
0
0
0
0
0
0
1
1
0
0
0
0
1
2
0
0
3
患者への説明・指導
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
3
4
実施
4
0
2
2
1
28
28
3
1
30
0
0
2
9
0
39
6
155
実施に伴う確認・観察
0
0
0
0
0
3
0
0
0
0
0
78
19
0
0
0
4
104
その他
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
1
7
9
合 計
15
4
23
18
3
32
30
6
1
37
9
78
22
11
0
50
35
374
- 110 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
(3)「レジメン登録」に関する医療事故情報およびヒヤリ・ハット事例の分析
レジメンは、がん治療において、投与する腫瘍用薬の種類や量・期間・手順などを時系列で示した
計画である。一般的に、医療機関ではレジメンを組織的に統括し管理するために、診療科から申請さ
れたレジメンを化学療法委員会が科学的根拠に基づき妥当性や安全性を審査し、承認を受けたレジメ
ンが登録される、という流れになっている。
①発生状況
2010年1月から2016年6月の間に報告された腫瘍用薬に関する医療事故情報のうち、
「レジメン登録」に関する事例は5件であった(既出、図表Ⅲ - 2- 1)
。また、2016年1月か
ら2016年6月の間に報告された腫瘍用薬に関するヒヤリ・ハット事例のうち、
「レジメン登録」
に関する事例は1件であった(既出、図表Ⅲ - 2- 2)
。「レジメン登録」の事例が腫瘍用薬に関す
る事例全体に占める割合は、医療事故情報の2.0%、ヒヤリ・ハット事例の0.3%であった。
本事業に報告された「レジメン登録」に関する医療事故情報の事例の内容は「薬剤量間違い/過
Ⅲ
剰」が3件、
「投与日・日数間違い」が2件であった。またヒヤリ・ハット事例では、審査委員会
承認済のレジメンの電子カルテへの登録が投与当日にも完了しておらず、投与開始が遅れたという
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
「その他」の事例が1件であった。
腫瘍用薬に関連した事例
②﹁レジメン登録、治療計画、処方﹂の事例
- 111 -
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
②事例の内容
「レジメン登録」に関する主な事例について、代表的な事例を取り上げ、専門分析班および総合評
価部会の議論を付して図表Ⅲ - 2- 3に示す。
図表Ⅲ - 2- 3 「レジメン登録」の事例の内容及び専門分析班・総合評価部会の議論
No.
報告事例
事故の内容
背景・要因
改善策
薬剤量間違い/過剰
医療事故
情報
1
患者は病理組織診断にて胞状 「がん化学療法レジメン新規採用申請書」の
「/body」に分
奇胎が確認され、CTにて肺転 基準値の欄が「薬剤量」
移を認めた為、侵入胞状奇胎 かれておらず、MTX療法を申請した医師は
と診断された。その後メソトレ 「/body」を記入しなかった。化学療法
キセート単剤を開始した。その 委員会で新規レジメンを検討する際に、薬剤
「/body」の未記
際、事前に登録されていた「絨 量の検討が主になり、
毛性疾患に対するMTX」のレ 入を確認せず承認した。薬剤師がホームペー
ジメンを使用したが、体表面 ジに新規レジメンを登録する手順が決まって
積当たりで計算し、予定量の おらず、レジメンに「/body」の記載が
1.5倍の45mg/日で5日 なかったが添付文書の確認、申請した医師へ
間投与した。レジメン登録時 の問い合わせをせず、既登録レジメンを修正
に「/body」とするところ、 して「/m 2」と誤登録した。その後、他の
誤って「/m2」と入力してい 薬剤師のダブルチェックでも誤りに気付かな
た。投与後、口内炎(grade3)
、 かった。
骨 髄 抑 制(grade4)
、発熱性
好中球減少症、脱毛(grade2)
などの副作用が強く、原因等
を調べていたところ、登録さ
れたレジメンに間違いがあっ
たことが判明した。副作用は
順調に改善し退院となった。
・ 「がん化学療法レジメ
ン新規採用申請書」の
基準値の欄に「/m2」
「/kg」
「/body」
を記入する枠を追加し
た。
・ 薬剤師は、新規レジメ
ンの申請書を受け取っ
た後、添付されたエビ
デンスと比較する。
・ 新規レジメンマスター
登録後は、テスト患者
を使用して2名の薬剤
師が内容の確認を行
い、更に申請医師が内
容を確認してから使用
できるようにする。
・ 化学療法委員会では、
新規レジメン申請書に
記載漏れがないか確認
する。
専門分析班・総合評価部会の議論
○ レジメンの新規登録申請書の自由度は必要だが、書く人によってばらつきが生じないよう、誰が書いても同じにな
るように記載ができる申請書であることが重要である。
○ レジメンをどう管理するかは一つの課題である。新規登録は増えても使用していないレジメンを削除することは難
しい。増えていくレジメンの整理がされていない現状がある。
○ レジメンの審査が目的の委員会、化学療法の適正性の審査が目的の委員会など、委員会の目的を分けている医療機関
もある。
- 112 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
③事例の分類
「レジメン登録」に関する事例6件を大別すると、レジメン登録の間違いの5件はすべて医療事
故情報であり、レジメン登録の遅れの1件はヒヤリ・ハット事例であった。レジメン登録にあたっ
て一般的に医療機関では、ア)診療科からのレジメン申請、イ)化学療法委員会で審査のうえ承認、
ウ)電子媒体への入力、という場面がある。間違いの発生した場面について記載があった事例のうち、
診療科からのレジメン申請の場面が3件であり、電子媒体への入力の場面が2件であった。電子媒
体への入力の場面の登録の遅れの事例は、審査委員会で承認されたレジメンの登録作業が遅れたた
め、患者への投与開始が遅れたヒヤリ・ハット事例であった。
図表Ⅲ - 2- 4 「レジメン登録」の事例の分類
事例の分類
発生場面
登録の間違い
登録の遅れ
診療科からのレジメン申請
3
0
化学療法委員会で審査・承認
0
0
電子媒体への入力
1
1
不明
1
0
5
1
合 計
Ⅲ
④「レジメン登録」の「登録の間違い」の分析
本報告書では、レジメンの「登録の間違い」の事例5件に着目して分析を行った。
1)内容
レジメンの「登録の間違い」の事例5件の疾患名、薬剤、間違えて登録した内容等を図表Ⅲ - 2
- 5に示す。間違いの内容は、投与量、単位、用法、投与日数と様々であったが、結果的にはすべて
患者へ薬剤が過剰に投与された事例であった。レジメン登録時の入力間違いについては、本事業の
医療安全情報 No. 93「腫瘍用薬のレジメン登録間違い」(2014年8月提供)においても注意
喚起をしている。(http://www.med-safe.jp/pdf/med-safe_93.pdf)
また、誤ったレジメンを登録すると複数の患者が使用する可能性がある。報告された事例のうち
2件で、複数の患者に同じレジメンが使用されたことが記載されており、レジメン登録間違いに気
がついた後、患者への影響を検証する等の対応がなされていた。
図表Ⅲ - 2- 5 「レジメン登録」の「登録の間違い」の内容
事例の内容
薬剤量
間違い/
過剰
疾患名
薬剤
予定した登録内容
間違えて登録した内容
投与した患者数
患者への影響
50mg/m2
投与量
100mg/m2
2
・ 化学療法による副作用(嘔気、
下痢、骨髄抑制)が出現した
注射用メソトレ
キセート
/body
単位
/m2
1
・ 口内炎、骨髄抑制、発熱性好
中球減少症、脱毛など副作用
が強く出現した
急性骨髄性白血病 ノバントロン注
7mg/m2
投与量
12mg/m2
6
・なし
1
・ 治療途中で誤りに気付き入院
して副作用対策を行った
1
・記載なし
小細胞肺癌
カンプト
点滴静注
侵入胞状奇胎
2
投与日・
日数間違い
前立腺癌
注射用
エンドキサン
急性骨髄性白血病 記載なし
1000mg/m2
/回を3週間毎に
1回投与
用法
1000mg/m
/回を週1回、3
週間投与、4週目
は休薬
5日間
投与日数
6日間
- 113 -
腫瘍用薬に関連した事例
②﹁レジメン登録、治療計画、処方﹂の事例
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
2)気付いたきっかけ
間違いに気付いたきっかけは医療機関において医療安全対策を検討する上で重要な情報となるた
め、報告された事例の内容に、間違いに気がついたきっかけの記載があったもの中から、主なもの
を以下に示す。
○レジメンの確認
・医師Aが医師Bに投与スケジュールを確認した際に気付いた。
・薬剤師がレジメンの資料を見直した際に気付いた。
○副作用の出現
・ 患者の副作用症状が強く、次の治療の実施について科長に相談した際に、経験豊富な科長が気
付いた。
・ 副作用が強く、原因等を調べていたところ、登録されたレジメンに間違いがあったことが判明
した。
3)主な背景・要因
「レジメン登録」の「登録の間違い」の事例5件の主な背景・要因と事例の内容を示す(図表
Ⅲ - 2- 6)。
図表Ⅲ - 2- 6 「レジメン登録」の「登録の間違い」の主な背景・要因
発生場面
主な背景・要因
内容
・ がん化学療法レジメン新規採用申請書の基準値の欄が「薬剤量」
新規採用申請書の
「/body」に分かれておらず、医師はMTX療法の新規採用申請
不備や記載漏れ及
書の基準値に「/body」を記入しないで申請した
び入力・記載間違
・ 薬剤師は「/body」の記載がなかったが、確認しないまま「/m2」
い
で登録した
診療科からの
レジメン申請
・ エンドキサンによる化学療法のレジメン申請の際に「1000mg/
m2/回を3週間ごと投与、1週間休薬」のところ「1 000mg/
m2/回を週1回、3週間投与し4週目は休薬」と記載されていた
・ 診療科医師がノバントロン注のレジメンを申請する際に、正しい投与
量で記載したものと、誤った投与量を記載したものが混在したまま申
請していた
入力・記載間違い
電子媒体へ
入力
不明
・ CPT - 11(カンプト)投与量は、単独投与の場合は100mg/m2、
併用療法の場合は50mg/m2だが、薬剤師が誤って入力をし、併
用療法も100mg /m2で登録した
・ 標準療法では投与日は5日間であるが、6日間となっていた
(薬剤名記載なし)
- 114 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
4)主な改善策
事例が発生した医療機関の改善策を、各発生場面における改善策と全体的な改善策に分けて以下に
示す(図表Ⅲ - 2- 7)。
図表Ⅲ - 2- 7 「レジメン登録」の「登録の間違い」の主な改善策
【診療科からのレジメン申請に関する改善策】
レジメン申請書の変更
●「がん化学療法レジメン新規採用申請書」の基準値の欄に「/m
2
」「/kg」
「/body」を記入する
枠を追加する。
● レジメン申請書の様式を変更する。
【電子媒体への入力・登録に関する改善策】
入力したデータの確認
● 新規登録されるレジメンは、電子カルテシステムへの仮登録後、申請医師とレジメン管理担当薬剤師で
内容の確認を行い、申請医師の押印または署名を取得した後にレジメン登録し運用を開始する。
Ⅲ
● 新たな医療情報システム導入などでデータ移行を行う際は、レジメン内容が元のレジメン内容と同一で
あることを診療科と薬剤部との間で確認した後、運用を開始する。
● 新規レジメンマスタ登録後は、テスト患者に代挿して2名の薬剤師が内容の確認を行い、更に申請医師
が内容を確認してから使用できるようにする。
● 現在登録されているレジメンのチェックについて、提出するレジメンの確認作業を各診療科で行う。
【全体的な改善策】
● レジメン申請時やその後のチェック体制を構築する。
● 化学療法に関する講習会開催と受講を必修化する。
- 115 -
腫瘍用薬に関連した事例
②﹁レジメン登録、治療計画、処方﹂の事例
● 化学療法剤投与予定表により情報を共有する。
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
(4)「治療計画」に関する医療事故情報およびヒヤリ・ハット事例の分析
①発生状況
2010年1月から2016年6月の間に報告された腫瘍用薬に関する医療事故情報のうち、
「治
療計画」に関する事例は2件であり(既出、図表Ⅲ - 2- 1)
、いずれも添付文書上、総投与量の上
限がある腫瘍用薬の管理についての事例であった。また、2016年1月から2016年6月の間
に報告された腫瘍用薬に関するヒヤリ・ハット事例のうち、「治療計画」に関する事例の報告はな
かった(既出、図表Ⅲ - 2- 2)
。「治療計画」の事例が腫瘍用薬に関する事例全体に占める割合は、
医療事故情報の0.8%であった。
②事例の内容
「治療計画」に関する事例について、専門分析班および総合評価部会の議論を付して図表
Ⅲ - 2- 8に示す。
腫瘍用薬の中には副作用の発現予防のため添付文書上、患者の生涯にわたって投与する累積量
の上限値が定められている薬剤があり、本稿ではその投与量を「総投与量」とする。総投与量は、
累積投与量、限界投与量などともいう。アントラサイクリン系薬剤は心毒性が強く心筋障害を起こ
す可能性があり、ブレオマイシンは肺毒性が強く間質性肺炎や肺線維症等を起こす可能性があるた
め、投与量の上限値が添付文書に記載されている。報告された事例は2件ともアントラサイクリン
系薬剤のアドリアシンの事例であった。アドリアシン注用の添付文書の用法・用量には「・・・ド
」とあり、重
キソルビシン塩酸塩の総投与量は500mg(力価)/m2(体表面積)以下とする。
要な基本的注意には、「アントラサイクリン系薬剤未治療例で、本剤の総投与量が500mg/m2
を超えると重篤な心筋障害を起こすことが多くなるので注意すること。」と記載がある。
- 116 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
図表Ⅲ - 2- 8 「治療計画」の事例の内容及び専門分析班・総合評価部会の議論
No.
報告事例
事故の内容
背景・要因
改善策
その他
1
専門分析班・総合評価部会の議論
○ 医療機関で使用している腫瘍用薬で総投与量の上限のあるものについてチェック体制を構築しておくことは重要で
ある。
○ 総投与量は体表面積から計算されるので、患者の体重により変化することもあり、単純に投与量を足していけばい
いものではない。どの医療機関でもシステムで管理できるとは限らず、良い方法があればシステム業者が協働出来
るような情報の共有がなされるとよい。
- 117 -
Ⅲ
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
腫瘍用薬に関連した事例
②﹁レジメン登録、治療計画、処方﹂の事例
患者は子宮体がんに対し、3 医師はアドリアシンの過量投与にともなう心 ・ 総投与量に制限がある
年4ヶ月前に子宮全摘、両側 筋障害の危険性は知っていた。アドリアシン 薬剤の投与に関して、
付 属 器 切 除、 骨 盤・ 傍 大 動 の総投与量は意識していたが、患者へ投与し 医師は開始前に、患者
脈 リ ン パ 節 郭 清、 大 網 切 除 た量は記憶に頼っており、正確な記録はなく、 に対して治療の内容、
術 を 施 行 し た。 そ の 後 T C 6コースは大丈夫だろうと思っていた。事例 リスクについて十分説
(Paclitaxel + Carboplatin) 療 に記載している総投与量は、事例発生後に遡っ 明する。
法6コースを行った。2年前 て計算したものである。レジメン入力画面に ・ 医師がレジメンを入力
に腹膜播種再発あり、AP療法 総投与量の画面表示はあるが、オーダしたバ する際は、薬剤師に電
を6コース施行した(この時点 イアル数が出る仕組みであることから、実際 話 な ど に よ り 連 絡 す
でアドリアシン(Doxorubicin) の投与量が分からず活用されていなかった。 る。
総投与量310mg/m 2(体 患者への総投与量についての情報の共有がな ・ 薬剤師がレジメン開始
表面積)
)
。1年前に膣断端再 されておらず、医師のみで管理されていた。 時に患者への説明で使
発あり、腫瘍摘出を施行した。 過量投与が問題となる薬剤に対して医師以外 用する説明用紙に投与
その 後、AP(Doxorubicin + がチェックする仕組みがなかった。
量の上限を明記する。
Cisplatin)療法を3コース施行
・ 薬 剤 師 の レ ジ メ ン
した(この時点でアドリアシン
チェック用紙に総投与
総投与量470mg/m 2(体
量の欄をつくり、毎回
表面積)
)
。アドリアシンはドキ
記載したうえで、患者
ソルビシン塩酸塩として総投与
に説明する。
医療事故
量が500mg/m 2(体表面
・ 電子カルテのレジメン
情報
積)をこえると重篤な心筋障害
システムで指示する際
が発生するおそれがあることは
に、総投与量に注意が
知っていたが、今回の症例は再
必要な旨のアラートが
発症例の術後であり、化学療法
出るように改修した。
施行により予後の延長が期待で
・ 電子カルテのレジメン
きるため、前回有効であった
システムで自動的に
AP療法を追加することとし
総投与量が計算され、
た。化学療法は通常6コース
上限を超える場合に
行うことが多い。6コースの
はアラートが出るよ
途中で総投与量を超えること
うに改修した。
に配慮がおよばず、通常の6
コースを実施した。投与中は
自覚症状なく、予定コース数
を6ヶ月前に完遂した(総投
与量620mg/m2(体表面
積)
)。その後、上気道炎を契
機として心不全を発症し、精
査を行ったところ薬剤性心筋
障害とわかった。
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
No.
報告事例
医療事故
情報
2
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
事故の内容
背景・要因
改善策
子宮体がん I c期の診断で子宮 病歴聴取と既往使用薬剤の調査が不十分で ・ 他科治療歴には細心の
体がん根治術を施行した。術 あった。
注意を払う。
後の補助化学療法として標準治
・ 病歴のチェックを徹底
療であるAP療法(アドリアシ
する。
ン+シスプラチン)で、アドリ
・ 抗悪性腫瘍剤投与時に
アシンを総量299mg/m2
チェックを徹底する。
を6回に渡り投与した。6回
投与後の外来受診時に胸水貯
留を認め、入院となった。循
環器内科の精査で心不全の診
断となり調査を行ったところ、
10年前にろ胞性リンパ腫で
CHOP療法を受けていたこ
とが判明した。当事者は、患
者が既往で化学療法を受けて
い る こ と は 認 識 し て い た が、
内容をよく確認せず、CHO
P療法の「H」をヒドロキシ
カルバミドと思い込み、アド
リアシンは使用していないと
判断した。実際には、10年
前の治療にアドリアシンが使
用されており、今回の投与量
299mg/m 2 と併せると、
総投与量が600mg/m2と
なり、アドリアシンの投与量
限度(500mg/m 2 以下)
を超過していた。しかし報告
時点では、アドリアシンの投
与と心不全の因果関係につい
ては、はっきりしていない。
専門分析班・総合評価部会の議論
○ 複数の医療機関を経緯して治療を行っている患者の場合、診療情報提供書の記載は重要である。しかし、過去に行
われた薬剤の投与情報まで把握することは難しい現状がある。
○ 患者への薬剤や総投与量の情報提供や教育は、事故防止対策のひとつにはなるが、患者が「抗癌剤治療をした」と
覚えていても「アドリアシンを○○mg/m2(体表面積)まで」と記憶することは難しいため、全国規模の医療
機関情報共有体制の検討が望まれる。
○内服薬はお薬手帳に記録されるので、注射薬のお薬手帳のようなものがあればいいのではないか。
- 118 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
③主な背景・要因
「治療計画」に関する事例の主な背景・要因を図表Ⅲ - 2- 9に示す。
図表Ⅲ - 2- 9 「治療計画」の事例の主な背景・要因
主な背景・要因
○医師
・総投与量に対する注意が不十分であった。
・患者へ投与した量は記憶に頼っており、正確な記録がなかった。
・病歴聴取と使用薬剤の調査が不十分であった。
○薬剤師
・総投与量をチェックするルールがなかった。
・レジメンを確認する際、総投与量の確認が漏れた。
○システム
・ 電子カルテにレジメンを入力する際に総投与量の画面はあるが、オーダした薬剤のバイアル数が出る仕
組みであることから、実際の投与量は自動計算されないため活用していなかった。
○体制
・過量投与が問題となる薬剤に対しても医師以外がチェックする仕組みがなかった。
・患者への総投与量についての情報の共有がなされておらず、医師のみで管理されていた。
④主な改善策
事例が発生した医療機関の改善策を以下に示す(図表Ⅲ - 2- 10)
。
主な改善策
● 病歴や他科治療歴のチェックを徹底する。
● 総投与量に制限がある薬剤の投与に関して、次の通りとした。
1. 医師は治療開始前に、治療の内容、リスクについて患者に十分に説明する。
2. 医師がレジメンを入力する際は、薬剤師に電話などにより連絡する。
3. 薬剤師はレジメン開始時に患者への説明で使用する説明用紙に投与量の上限を明記する。
4. 薬剤師のレジメンチェック用紙に総投与量の欄をつくり、毎回記載したうえで、患者に説明する。
● 電子カルテレジメンシステムで指示する際に、総投与量に注意が必要な警告画面が出るように改修する。
- 119 -
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
腫瘍用薬に関連した事例
②﹁レジメン登録、治療計画、処方﹂の事例
図表Ⅲ - 2- 10 「治療計画」の事例の主な改善策
Ⅲ
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
(5)「処方」に関する医療事故情報およびヒヤリ・ハット事例の分析
①発生状況
2010年1月から2016年6月の間に報告された腫瘍用薬に関する医療事故情報のうち、
「処方」に関する事例は48件であった。また、2016年1月から2016年6月の間に報告さ
れた腫瘍用薬に関するヒヤリ・ハット事例のうち、
「処方」に関する事例は35件であった。「処方」
の事例が腫瘍用薬に関する事例全体に占める割合は、医療事故情報の19.1%、ヒヤリ・ハット
事例の9.
4%であった。
腫瘍用薬に関連した「処方」に関する医療事故情報の事例の内容では、
「薬剤量間違い/過剰」
が最も多く23件(47.9%)であった。「処方」に関するヒヤリ・ハットの事例の内容では、
「薬剤量間違い/過少」が9件(25.
7%)と多かった。
「薬剤量間違い/過剰」では患者の身体に
与える影響が大きいことから医療事故情報として報告され、
「薬剤量間違い/過少」では、期待され
た治療効果は得られない可能性はあるが、患者に与える影響が少ないことからヒヤリ・ハット事例と
して報告されていることが考えられる。
また、
「処方」に関するヒヤリ・ハット事例では、事例の内容が「薬剤間違い」「薬剤量間違い/
過剰」「薬剤量間違い/過少」「支持療法の間違い」などさまざまな内容の事例が発生していた。
図表Ⅲ - 2- 11 「処方」の事例の内容
事例の内容
医療事故情報
件数
ヒヤリ・ハット事例
%
件数
%
薬剤間違い
5
10.4%
4
11.4%
対象者間違い
1
2.1%
0
0.0%
過剰
23
47.9%
6
17.1%
薬剤量間違い 過少
1
2.1%
9
25.7%
不明
0
0.0%
2
5.7%
投与時間間違い
4
8.3%
0
0.0%
投与日・日数間違い
4
8.3%
1
2.9%
無投与
1
2.1%
2
5.7%
中止時の実施
2
4.2%
1
2.9%
支持療法の間違い
6
12.5%
5
14.3%
その他
1
2.1%
5
14.3%
48
100.0%
35
100.0%
合 計
- 120 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
②事例の内容
「処方」に関する主な事例について、代表的な事例を取り上げ、専門分析班および総合評価部会
の議論を付して図表Ⅲ - 2- 12に示す。
図表Ⅲ - 2- 12 「処方」の事例の内容及び専門分析班・総合評価部会の議論
No.
報告事例
事故の内容
背景・要因
改善策
薬剤間違い
医療事故
情報
1
外来を臨時で担当した医師A 本来処方されるべきノルバスク錠の処方量は ・ 医師は、処方入力した
は、前医の紹介状に基づき降 通常2.5−5mgであるが、実際に処方され 後、画面及び処方箋を
圧 剤 ノ ル バ ス ク 錠( 5 m g ) たノルバデックス錠は20mgであり、薬剤 目で見て、指差し、声
1 錠 を 処 方 し よ う と し た が、 名、薬剤量から考えると、本来は起こり得な だし確認する。
誤ってノルバデックス錠(20 い誤処方である。しかしながら、医師Aが最 ・ 薬剤検索をかな文字3
mg)1錠を1週間分処方し 初に誤処方した日は外来および病棟業務が多 文字で検索のシステム
た。 以 後、 医 師 B( 主 治 医 ) 忙で、ノルバデックス錠がノルバスク錠の後 に変更した。
はノルバデックス錠が前医で 発医薬品と思い込み、薬効および用量の確認
追加処方されたものと思い込 を怠った。また、医師B(主治医)もノルバデッ
み、11ヵ月にわたり誤処方 クス錠が前医で追加処方されたものと勘違い
し、前医の紹介状を改めて確認することなく、
を継続した。
誤処方を継続した。また、適用外の薬剤処方は、
通常、診療報酬審査時に査定されるが、本件
では一切の査定および指摘がなされなかった。
さらに、医事システムにおける処方薬剤の検
索は3文字検索となっており、「ノルバ」と入
力するとノルバデックス錠しか表示されず、
抗腫瘍薬であることの警告もなかった。
専門分析班・総合評価部会の議論
薬剤量間違い/過剰
医療事故
情報
2
喉頭がん再発に対し、セツキシ 添付文書に記載されたアービタックス注射液
マブ・CDDP・5FUを用い の投与方法の詳細を確認せずに投与した。初
た全身化学療法を計5クール 回投与時のレジメンを作成したが、2回目以
行った。1クールに3回セツキ 降のアービタックス注射液を減量したレジメ
シマブを投与するが、1クール ンを作成せずに治療を継続した。
目初回のみ400mg/m2で
あとは全て250mg/m2で
投与するところ、各クール初回
に400mg/m2でセツキシ
マブを投与していた。その後、
セツキシマブの副作用である間
質性肺炎を発症した。
添付文書に記載された
アービタックス錠の投
与方法の詳細を確認せ
ずに投与した。初回投与
時のレジメンを作成し
たが、2回目以降のアー
ビタックスを減量した
レジメンを作成せずに
治療を継続した。
専門分析班・総合評価部会の議論
○ 事例の化学療法は5クールまで行われており、最初に正しいと判断すると途中で気付くことは難しい。このような
事例を次に活かすために発見の経緯を分析しておくことが重要である。
○ アービタックス注射液の添付文書の用法及び用量では、「初回は400mg/m2を2時間かけて、2回目以降は
250mg/m2を1時間かけて点滴静注する」とあるが、各クールの1回目、と解釈する可能性があり注意が必
要である。
- 121 -
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
腫瘍用薬に関連した事例
②﹁レジメン登録、治療計画、処方﹂の事例
「ノルバデックス錠」の取り違えについては製薬企業から、処方時のみではなく処方監査時、交付時、
○ 「ノルバスク錠」
配薬時も含めた注意喚起がなされている。
○ 当該事例は脳神経外科からの処方であり、診療科の情報から保険薬局でノルバデックス錠の処方に違和感を感じて、
疑義照会をしていれば防止できた可能性がある。保険薬局とも共有したい医療事故情報である。
Ⅲ
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
No.
報告事例
医療事故
情報
3
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
事故の内容
背景・要因
改善策
肺がんに対する治療のため入 看護師が経過表に体重を誤入力しすぐに削 ・ 電子カルテ上経過表に
院している患者(45Kg)で、 除したが、患者プロファイルの体重情報に 記入された体重が、患
看護師が患者の体重入力時に は削除が反映されず、誤入力した体重のま 者プロファイルの体重
同姓患者の体重(78.
5Kg) ま体表面積が算出された ( 経過表に入力した 情報と連動し反映され
と間違えて入力した。すぐに データは患者プロファイルへ反映されるシ るようシステム改善を
間違いに気づきデータを削除 ステムになっているが、反映されるデータ 医 療 情 報 部 に 依 頼 し
したが削除は一部のデータに は新規データ及び修正データのみで、経過 た。
し か 反 映 さ れ ず、 1 ク ー ル 表で削除されたデータは患者プロファイル ・ 各コースごとに実際に
目の抗がん剤オーダ時、体重 に反映されないシステム )。主治医がレジメ 患者の体重を主治医が
78.5Kgで投与量が計算さ ン入力時に体重が明らかに異なることに気 実測し手計算で体表面
れ、2回(1週間毎)患者へ づかず、誤入力された体重から算出された 積を算出、主治医自身
シ ス プ チ ラ ン 1 1 4.4 m g 体表面積のまま抗がん剤の量が設定された。 で抗がん剤の用量設定
投与のところ、シスプチラン また、前回投与時のシスプチランの量と比較 を行い、コンピュータ
148. 56mgを投与した。 しなかった。薬剤部でシスプチランの量が前 上の抗がん剤の用量設
抗がん剤治療2クール目のレ 回投与時と乖離がある点を指摘されなかった。 定と乖離がないことを
ジメンオーダ確認時に1クー
確認した上で抗がん剤
ル目の投与量より3∼4割程
を投与する。
度過量であるため、1クール
目に抗がん剤が過剰投与され
ていたことに気づいた。その
後 白 血 球 減 少 と 発 熱 が あ り、
3クール目の治療開始に影響
した可能性がある。
専門分析班・総合評価部会の議論
○ 体重を誤入力することは起こりうる。電子カルテで修正したデータが反映される画面と反映されない画面が混在す
るシステムは見直しの検討が必要である。
○ メインの基本情報システムデータを変更すれば、他の下位システムに反映されるが、下位システムである看護シス
テムを変更しても他の画面に反映されないことがある。看護師はそのことを知らないことが多いのではないか。
○看護師は自身が入力したデータがどこに影響するのかを知っておくことは重要である。
○ 本事例はシステムの問題であるが、薬剤師の処方監査で過去の投与量との比較した際に、疑義照会の対象とならな
かったことの分析も重要である。
○ システム上、前回投与量と20∼30%違うとアラートが出される仕組みを取り入れている医療機関もある。
ヒヤリ・
ハット
事例
4
原疾患に対し化学療法 2 クー 医師は、患者の最新の体重を確認せずに前回 ・ 抗がん剤を処方する時
は、最新の体重に基づ
ル目を開始予定であり、医師か と同量の抗がん剤を処方した。
いた投与量で処方オー
らアバスチン点滴静注用、エル
ダを行う。
プラット点滴静注用のオーダが
・ 処方オーダを確定する
あった。薬剤師が抗がん剤の投
前に、投与量に間違い
与量の確認を行ったところ、前
ないか確認する。
回と同量で処方されていた。し
かし、患者の体重は前回よりも
28kg減少しており、体重が
多い値であったため投与量が過
量となっていた。そのため、疑
義照会を行い最新の体重に基
づいた投与量へ減量になった。
専門分析班・総合評価部会の議論
○本事例は薬剤師の本来の役割が機能し、適切な疑義照会がなされた事例である。
○ 腫瘍用薬の投与にあたって薬剤師の役割は重要である。
- 122 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
No.
報告事例
医療事故
情報
5
事故の内容
背景・要因
改善策
潰瘍性大腸炎にロイケリン散 上級医からの口頭による150mgとの指示に ・ 全職員に本事例に関す
1 0 % の 内 服 治 療 を 行 っ た。 基づき処方を行った。上級医は、以前に所属 る注意喚起を行った。
1 日 1 5 m g の 用 量 で 投 与 していた施設では、投与1回あたりの総量で ・ 特に中途採用者向けの
す る は ず で あ っ た が、 1 日 オーダしていたことから、これを念頭に総量を 研修で本事例を取り上
150mgで10日間投与さ 示したつもりであった。本院では成分量でオー げ、定期的に注意を促
れていた。1ヶ月後に好中球 ダすることになっているため、指示を受けた医 す。
減少の遷延によると思われる 師は成分量150mgと入力した。オーダを受 ・ 薬剤師による処方医へ
発熱が生じたため、抗生剤及 けた薬剤師は、
「通常、潰瘍性大腸炎には、体 の問合せでも疑義が解
びG−CSFを投与した。
重1kgあたり1日1.
0∼1.
2mgの投与が 消しない場合は、より
推奨されているところ、処方オーダでは、1日 上級の医師に疑義照会
分が体重1kgあたり3mgに相当することに を行うこととした。
なるが、間違いではないか」と、入力した医
師に疑義照会したところ、医師は、適正な全
体量・成分量を理解していないにもかかわら
ず、
「150mgで間違いない」旨の返答があっ
たと記憶している。しかし、入力した医師は、
疑義照会があったこと自体の記憶がなかった。
施設によりオーダの仕方が異なっていたこと
が原因の一つである。
Ⅲ
専門分析班・総合評価部会の議論
○ 本事例の背景・要因に記載されているように、医療機関によりオーダの仕方やシステムのデフォルトが総量となって
いたり、有効成分の量となっていたりと異なっている。そのため、一つの医療機関だけではなく、少なくとも地域で
システムを標準化することの検討がなされると良い。
○ 「内服薬処方せんの記載方法の在り方に関する検討会報告書」3)では内服薬は製剤量(総量)で処方することが基本
とされているが、添付文書上の用法・用量は有効成分の量で記載されていることがあることも、医療現場で両者が混
在することの一因となっているのかもしれない。
投与日・投与日数間違い
6
専門分析班・総合評価部会の議論
○ 薬剤師の疑義照会の適応となる事例である。2クール分を処方する可能性もあるが、薬剤師は自分で解釈せずに必ず
疑義照会をしたうえで調剤することが重要である。
- 123 -
腫瘍用薬に関連した事例
②﹁レジメン登録、治療計画、処方﹂の事例
医療事故
情報
病状悪化に伴いフルダラ錠の フルダラ錠は5日間連続投与後23日間休薬 ・ ワーニングがでるよう
投与を行うこととした。当初フ を行う薬剤である。当処方箋の投与日数変更 な工夫等を検討する必
ルダラ錠投与1週間後に来院予 に関連した単純な入力ミスである。薬剤師か 要がある。
定で、以前より内服している薬 らの疑義照会はなかった。
剤を7日分、フルダラ錠を5日
分入力した。その後患者が1週
間後に来院できないとのことで
2週間分に変更した。その時は
誤りに気が付かず、処方箋を患
者に手渡した。2週間後、患者
が来院した際、前回の処方でフ
ルダラ錠が5日分×2(週間)
になり10日分処方されていた
ことに気が付いた。
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
No.
報告事例
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
事故の内容
背景・要因
改善策
無投与
ヒヤリ・
ハット
事例
7
R−CHOP療法の2コース R−CHOP療法であったが、内服が処方さ ・ 普段医師が当たり前に
目の患者であり、内服はカレ れ内服できているかの確認をすっかり忘れて 正しく処方しているこ
ン ダ ー に セ ッ ト し て あ っ た。 しまっていた。他患者の慣れない処置に気を とに慣れてしまってい
リツキサン注を施行し、翌日 とられてしまい、プレドニン錠の確認へ意識 る部分があったと思わ
からR−CHOP療法開始で が向かなかった。
れる。
あった。朝よりプレドニン錠
・ 治療の内容を把握し、
を内服する予定であったが処
初心にもどって確認を
方されておらず、内服してい
しっかりとする。
な い こ と に 気 付 か な か っ た。
翌々日午後退院予定であり午
前中に薬剤師が服薬指導に行
くと「あの苦いお薬はいつか
ら飲むんですか?」という質
問を受け、すぐに確認したと
ころプレドニン錠が処方され
ていないことに気づく。すぐ
に主治医に報告し退院処方と
して5日分処方され、3日後
から内服で可の指示をもらい
薬剤師に伝え服薬指導しても
らった。
専門分析班・総合評価部会の議論
○ 腫瘍用薬の治療過程において、レジメン、処方、指示、ワークシートなどいろいろな帳票が存在する。その中で治
療の全体像がわかるものがあると良い。
○本事例は患者からの問いかけで処方忘れに気がついており、患者に治療の全体像を説明しておくことも重要である。
- 124 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
No.
報告事例
事故の内容
背景・要因
改善策
支持療法の間違い
大量メソトレキセート療法を
行った際、利尿薬の選択とし
て本来避けるべきであるフロ
セミド(ラシックス注)を使
用してしまった。結果として
腎障害、メソトレキセートの
排泄遅延が生じた。
8
医療事故
情報
専門分析班・総合評価部会の議論
○医師は腫瘍用薬の処方に注意が向くため、支持療法の内服薬の処方忘れが生じるのであろう。
○腫瘍用薬のレジメンに支持療法で投与する薬剤を含んで登録している医療機関もある。
○ メソトレキセート投与時の利尿剤の選択にあたって、メソトレキセートの処方に慣れている医師はラシックスなど
尿を酸性化する薬剤の使用を避けることは、当然に知っている事柄であるが、事例のように経験の少ない医師には
支援する体制が必要である。そのため、薬剤師からの情報提供や疑義照会が重要である。
- 125 -
Ⅲ
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
腫瘍用薬に関連した事例
②﹁レジメン登録、治療計画、処方﹂の事例
レジメンプロトコールは、原則支持療法を含 ・ 化学療法および支持療
めて作成されているが、当該診療科において 法入力の際は、必ず複
は、支持療法は別に作成されていた。 医師 数の医師で確認をする
A は、化学療法、支持療法のオーダ入力の経 とともに、確認したか
験がほとんどなく不慣れであった。化学療法 どうかのチェックも徹
及び支持療法のオーダは、医師 B が行ってい 底する。
た。医師 A は、メソトレキセート投与時の尿 ・ レジメンプロトコール
のアルカリ化と輸液による Wash out は理解 を再検討し、支持療法
していたが、利尿剤の選択にあたって、酸性 を含めたプロトコール
化する薬剤(フロセミドの使用)を避けると の作成を行う。
いう事を理解していなかった。化学療法の入 ・ 病棟常駐薬剤師により
力は、がん専門医である指導医によるチェッ 時系列での処方の相互
クを行っている。 今回、医師 A、医師 B が 作用についてチェック
1 週間交代で休暇を取った。通常オーダを行 体制の強化を行う。
う医師 B が休暇を取るため、医師 A によっ
てレジメンオーダの入力が行われた。医師 A
は、支持療法の理解が不十分であると判断し、
2 日目以降の支持療法を先にオーダした。1
日目が未完成の状態であったが、すでにオー
ダ済みであると医師 B に報告した。その際、
医師 B はがん専門医である指導医 C の 確 認
を 受 け る よ う に 指示した。その後、骨髄
抑制のため化学療法の開始が 1 週間延期され
た。 1 週間後、化学療法開始前に指導医 C は
レジメンオーダを確認したが、支持療法の
確認はしなかった。血液検査の結果、化学
療法がさらに延期され、医師 A が休暇に入
る際、医師 A から医師 B にオーダ内容の確
認 を 受 け る よ う に 申 し 送 っ た が、 そ の 際、
1 日目の支持療法の入力ができていないこと、
支持療法について指導医 C の確認を受けてい
ないことを伝えていなかった。医師 B は、指
導医 C による化学療法及び支持療法のチェッ
クはすでに受けているものと誤認し、確認依
頼を聞き流しプロトコルと照らし合わせての
確認を行わなかった。その後、医師 B は初日
の支持療法が入力されていないことに気付い
たが、延期前の化学療法が火曜日開始であっ
たため支持療法の入力が1日ずれているもの
と誤認し、支持療法のオーダを前倒しにした。
薬剤師による注射処方の監査において、レジ
メンの確認はできていなかった。よって疑義
照会は行っていなかった。この結果、本来、
1日目の大量輸液、ダイアモックス注射用に
よる利尿、2日目以降はメソトレキセートの
血中濃度が下がったことを確認後、大量輸液
+ラシックス注による利尿を行うべきところ
を、1日目から大量輸液+ラシックス注によ
る利尿となり、腎障害を生じた。
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
③「処方」の事例の分析
「処方」に関する医療事故情報48件、ヒヤリ・ハット事例35件について、事例の内容に着目して、
報告件数が多かった「薬剤間違い」
「薬剤量間違い」
「投与日・日数間違い」「支持療法の間違い」
「その他」について医療事故情報とヒヤリ・ハット事例を総合的に分析することとした。
1)「処方」の「薬剤間違い」の事例
腫瘍用薬に関連した処方の「薬剤間違い」の事例は医療事故情報が5件、ヒヤリ・ハット事例が
4件報告されていた。
「薬剤間違い」は非小細胞肺がんのところ小細胞肺がんのレジメン画面を選
択し、カルボプラチン点滴静注液とティーエスワン配合剤のところ、カルボプラチン点滴静注液と
ラステット注を処方した事例などであった。また、本来投与する予定ではない患者に、誤って腫瘍
用薬が処方された事例が3件と多かった。腫瘍用薬を処方する際に発生した事例ではないが、腫瘍
用薬を必要としていない患者への投与は正常な細胞へ影響を与える可能性もあるため、本分析の対
象とした。
医療事故情報は、ノルバスク錠(高血圧・狭心症治療薬 / 持続性Ca拮抗薬)を処方する際に、
処方画面の3文字検索で「ノルバ」と入力したところ、
ノルバデックス錠(抗乳癌剤)が表示されたが、
ノルバスク錠と見誤って処方した事例が3件、ノルバデックス錠はノルバスク錠の後発医薬品であ
ると思い込んで、ノルバデックス錠を処方した事例が1件、などであった。ノルバスク錠、ノルバ
デックス錠の販売名称類似による取り違えに関する注意喚起は、製薬企業から成され、医療機関に
おいても一般名で処方するシステムにする等の対策がなされており、引き続き注意が必要である。
ヒヤリ・ハット事例は、処方の変更が適切になされなかった事例などであった。主な内容は次の
とおりである。
○ 処方は、薬剤部では前日の15時に確定するルールになっていたが、その後に処方内容を変更
し、薬剤部から払い出された薬品と出力した注射ラベルに相違が生じた。
○ 患者は、先発医薬品のタキソテール点滴静注を希望していたが、後発医薬品のドセタキセル点
滴静注「EE」に変更になっていた。
2)「処方」の「薬剤量間違い」の事例
ⅰ分類
腫瘍用薬に関連した処方の「薬剤量間違い」の事例は医療事故情報が24件、ヒヤリ・ハット事例
が17件報告されていた。
「薬剤量間違い」の41件をア)身長・体重測定時の数値の入力・記載
間違い、イ)投与量の入力・記載間違い、ウ)その他、に大別した(図表Ⅲ - 2- 13)
。
- 126 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
図表Ⅲ - 2- 13 「処方」の「薬剤量間違い」の分類
分類
件数
ア)身長・体重測定時の数値の入力・記載間違い
数値の入力・記載間違い
17
10
身長と体重の取り違え
4
他の患者の体重を入力・記載
2
他のデータ(SpO2)との取り違え
1
イ)投与量の入力・記載間違い
22
予定していた治療とは別のレジメン等を参考にした
4
セット登録されている投与量を変更する際の誤り
3
製剤量と有効成分の量の間違い
3
前回の体重で計算
2
治療の過程で投与量を変更する際の誤り
2
参考にしたレジメン等の内容の見落し
1
他の患者の体重で計算
1
仮の体重で計算
1
投与量の計算の誤り
1
その他
1
不明
3
ウ)その他
Ⅲ
2
41
身長・体重測定時の数値の入力・記載の間違いの内訳は、単純な数値の入力・記載間違い10件
と多く、身長と体重の取り違えが4件、他の患者の体重を入力・記載が2件、他のデータ(SpO 2)
との取り違えが1件であった。処方時の体重間違いにより腫瘍用薬が過剰に投与された事例につ
いては、本事業の医療安全情報 No. 104「腫瘍用薬処方時の体重間違い」
(2015年7月提供)
においても注意喚起をしている。(http://www.med-safe.jp/pdf/med-safe_104.pdf)
投与量の入力・記載間違いの内訳は、予定していた治療とは別のレジメン等を参考にしたが4件、
セット登録されている投与量を変更する際の誤り、製剤量と有効成分の量の間違いがそれぞれ3件
などであった。製剤量と有効成分の量の間違いについては、すべてロイケリン散10%を処方する
際、有効成分の量のところ、誤って製剤量で処方した事例であった。本事業の医療安全情報 No. 9
「製剤の総量と有効成分の量の間違い」(2007年8月提供)においても、腫瘍用薬に限定はせず
注意喚起をしている。(http://www.med-safe.jp/pdf/med-safe_9.pdf)
ⅱ気付いたきっかけ
間違いに気付いたきっかけは医療機関において医療安全対策を検討する上で重要な情報となるた
め、報告された事例の内容に記載があったもの中から、主なものを以下に示す。
- 127 -
腫瘍用薬に関連した事例
②﹁レジメン登録、治療計画、処方﹂の事例
合 計
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
○処方した医師による確認
・処方の際、体重の内容に疑問をもった。(複数報告あり)
・処方を再確認しているときに気付いた。(複数報告あり)
・次の処方の際に気付いた。(複数報告あり)
・検査値をチェックしているときに気付いた。
・再入院時の体重とのデータの違いに気付いた(初回が間違っていた)
。
○別の医師の気付き
・投与日の朝、別の医師が前回のオーダの投与量が少ないことに気付いた。
・退院後の外来で主治医が診察した際に、副主治医の処方の誤りに気付いた。
・放射線科医から薬剤量が多いと指摘があった。
○薬剤師の処方監査や疑義照会など
・病棟担当薬剤師が体重の誤入力に気付いた。
・処方監査で体重が誤っていることに気付いた。(複数報告あり)
・処方監査で投与量が前回と大きく異なることに気付いた。
・ 初回の抗がん剤治療であったため、薬剤に関する詳細な説明が患者に必要だと考えた病棟薬剤
師は、がん専門薬剤師に説明内容について相談した際に、がん専門薬剤師が投与量が少ないと
感じ疑義照会した。
・複数回の処方がなされる中で薬剤師が気付いた。
・腫瘍用薬治療実施後に行う副作用チェックを含む薬学的管理を目的とした面談で気付いた。
・ オーダ時間が通常時間外であったので、チェックがされずに、病棟に薬剤が配送された。薬剤
投与終了後にオーダリング上で保存された処方内容から薬剤師が気付いた。
○看護師による確認
・投与当日の夕方の体重測定の値で、看護師が体重の誤りがあることに気付いた。
・看護師が薬剤を準備中、イレッサ錠の薬袋が2つあることに気付いた。
○副作用の出現
・倦怠感出現、ふらつき、吐き気から処方内容を確認した。
・診察時に骨髄抑制が進行しているため、患者と話をしたところ過剰投与に気付いた。
強い骨髄抑制が生じ汎血球減少の状態となり、
同じ診療科の医師に指摘された。
・ 化学療法施行後、
・患者より聴力障害の訴えがあり、再度処方内容を確認した。
・ 顆粒球600、血小板3.7万/μLと著明な汎血球減少を認めたため緊急入院となり、血液
内科の診察によりロイケリン散10%の過剰投与を指摘された。
・外来受診時に3系統の血球減少と炎症反応の上昇を認め、原因を検索した。
・ 化学療法の終了後に血液検査を実施したところ、白血球、血小板が減少しており、骨髄抑制が
考えられた。
・振戦が出現したため原因を検索した。
- 128 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
ⅲ主な背景・要因
「処方」の「薬剤量間違い」に関する事例の、ア)身長・体重測定時の数値の入力・記載間違い、
イ)投与量の入力・記載間違いについて、主な背景・要因を事例の分類ごとに図表Ⅲ - 2- 14に
示す。
図表Ⅲ - 2- 14 「処方」の「薬剤量間違い」の主な背景・要因
事例の分類
主な背景・要因
ア)身長・体重測定時の数値の入力・記載間違い
数値の入力・記載間違い
・看護師がカルテの体重の入力を間違えた。
・ 体重が記載されたメモで6が4に見えた可能性がある。もしくは入力
時ボタンを打ち間違えた可能性がある。
・ 数値を入力する際、正しい数値を入力していると思い込み、打ち込ん
だ後再度確認しないまま、保存した。
・入院時の体重測定で数字を見間違えたか、入力ミスがあった。
他の患者の体重を入力・記載
・ 看護師が経過表に他の患者の体重を誤入力したことに気付き、すぐに
削除したが、患者プロファイルの体重情報には削除が反映されず、誤
入力した体重のまま体表面積が算出された。
他のデータ(SpO2)との
取り違え
・ 電子カルテに入力をする際に経過表に一括入力で入力しており、最終
的に間違いが無かったか確認をせず、他のデータ(SpO2)と取り違
えた。
イ)投与量の入力・記載間違い
予定していた治療とは別の
レジメン等を参考にした
・ 医師はレジメンを見ながら電子カルテに薬剤を手入力した際に中断し
た。すぐに再開したが、次のページのレジメンと見間違えた。
・ 小児の化学療法に対応できる医師は 1 人であり、相互にチェックする
仕組みが機能していなかった。
・予定のレジメンに類似した別のレジメンがあった。
・当該医師は、外来など日常診療の負担もあり多忙であった。
・添付文書に記載された薬剤の投与方法の詳細を確認しなかった。
セット登録されている投与量
・ 2回目以降、薬剤量は減量となるが、レジメンのセット登録がなされ
を変更する際の誤り
ておらず、初回のレジメンを使用した際に投与量を変更しなかった。
製剤量と有効成分の量の
間違い
・ 医師はロイケリン散10%を処方した経験はなく、当該疾患の専門医
ではなかった。
・ 処方の際、有効成分の量で記載することの注意表示が入力画面に出現
するが、気に留めることなく総量を有効成分の量と同じものと思い込
んだ。
・ 上級医からの口頭による「150mg」との指示に基づき処方を行った。
上級医が前に所属していた医療機関では、投与1回あたりの総量でオー
ダしていたことから、これを念頭に総量を示した。当該医療機関では
有効成分の量でオーダすることになっているため、指示を受けた医師
は成分量150mgと入力した。
- 129 -
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
腫瘍用薬に関連した事例
②﹁レジメン登録、治療計画、処方﹂の事例
身長と体重の取り違え
・ 身長や体重は治療にも関わる重要な値であるためダブルチェックを行
うこととなっていたが、入力したか否かの確認のみで、値は確認され
なかった。
・ 電子カルテには前回入力した身長・体重の値よりも5%以上差がある
場合、ワーニングメッセージを表示する仕組みがある。しかし当該患
者は初回入院であったため、メッセージが表示されなかった。
Ⅲ
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
事例の分類
主な背景・要因
前回の体重で計算
・ 医師は、患者の最新の体重を確認せずに前回と同量の抗がん剤を処方
した。
・ 入院患者の場合、入院後に測定された体重で抗がん剤の投与量の計算
がされないケースがあり、前回までの体重を用いて投与量の計算がさ
れることがあった。
治療の過程で投与量を
変更する際の誤り
・ 前日に抗がん剤40%の減量の処方をした際に、40%減量と入力 →
再計算のボタンを押す → 確定ボタンを押すという手順を行うが、再計
算のボタンを押さずに、確定ボタンを押した可能性がある。
・オーダ複写の際に、最新の処方ではなく、もう一つ前のものを複写した。
参考にしたレジメン等の
内容を見落した
・ 乳児例はレジメン上通常体重換算量の半量投与となっていたが、処方
の時点で見落としていた。
・医師の思い込みがあった。
・入力した投与量の確認をせずに処方した。
他の患者の体重で計算
・ 同一のレジメンで加療中の他の患者の電子カルテを参照し、他の患者
の身長・体重をみて体表面積を計算し、そこから薬剤量を算出した。
仮の体重で計算
・ 主治医は開始 1 週間前に体重を99kg と仮入力し、化学療法初日当日
変更するつもりでレジメンから指示を出した。
投与量の計算の誤り
・一度体表面積を掛けたことを忘れ、処方の際に再度体表面積を掛けた。
その他
・ 主治医と副主治医の薬剤規格の確認ができていないコミュニケーショ
ンエラーがあった。
- 130 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
ⅳ主な改善策
ア)身長・体重測定時の数値の入力・記載間違い、イ)投与量の入力・記載間違いについて、
事例が発生した医療機関の改善策を事例の内容ごとに分けて以下に示す(図表Ⅲ - 2- 15)
。
図表Ⅲ - 2- 15 「処分」の「薬剤量間違い」の主な改善策
ア)身長・体重測定時の数値の入力・記載間違い
○システムの機能の改善
● 電子カルテ上、経過表に記入された体重が患者プロファイルの体重情報と連動し、反映されるようシス
テム改善を医療情報部に依頼する。
● 電子カルテシステムによるチェックを検討する。
● 電子カルテバージョンアップの際には、レジメン機能に身長の値よりも体重の値が大きくなる場合には、
ワーニングメッセージを表示する、あるいはエラーを表示する仕組みの導入を検討する。
● 20歳以上の患者の場合、身長の値が100cm
以下で入力されるとエラーメッセージが表示されるシス
テムに変更した。
Ⅲ
○医師に関すること
● 患者の体重を主治医が実測し、手計算で体表面積を算出し、主治医自身で抗がん剤の用量設定を行い、
コンピュータ上の抗がん剤の用量設定と乖離がないことを確認する。
● 医師はデバイスで入力する際、打ち込んだ後、再度入力した数値が合っているか確認してから、保存する。
○看護師に関すること
● 看護師による体重入力方法の手順を作成し、周知を行った。
● 身長・体重は治療に関わる重要なデータであるため、入力した値はダブルチェックを徹底する。
○多職種のチェック
認する。
イ)投与量の入力・記載間違い
○システムの機能の改善
● 処方システム上の初期設定が標準用量で設定されているため、内服抗がん剤の1日投与量の自動表示を
「0」に設定変更した。
● 抗がん剤内服の投与量のアラートを検討する。
● 体重の誤入力を防止するため、測定された体重がカルテ上に直接入力されるよう、カルテと体重計が連
動されるようにする。
● 有効成分量や製剤量についてシステム入力の統一を図る。
○医師に関すること
● 最終的にレジメン入力後に他の医師が確認しダブルチェックする。
(複数報告あり)
● 抗がん剤を処方する時は自動計算だけでなく、手計算を行い、入力画面と照合し投与量を確認する。
(複
数報告あり)
● 患者の体表面積の計算から、上級医とダブルチェックするようにする。
● 初診時に身長、体重測定を必ず行う。
● 医師はレジメンオーダの際に正確なデータを入力する。
● 他の医師とのダブルチェックの体制を作る。
● 医師1名を増員し外来の担当を免除した。
● 診療科のサポート体制を強化した。
- 131 -
腫瘍用薬に関連した事例
②﹁レジメン登録、治療計画、処方﹂の事例
● 医師と看護師は、外来化学療法室入室時に体重と注射指示書の体重を確認し、薬剤師の面談時に再度確
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
○薬剤師に関すること
● 薬剤師は患者と共に身長、体重を確認する。
● レジメンチェックの際には、薬剤投与量を算出するための体表面積と、そのもとになる身長・体重も確
認する。
● 薬剤師は症例毎に実施計画書に記載されている量を確認し、調剤量を決定することを徹底する。
● 今後、保険薬局からのフィードバック体制の構築が必要である。
○多職種のチェック
● 内服薬に関しての主治医間や薬剤師によるダブルチェックを検討する。
(複数報告あり)
● ダブルチェック方法の再確認を行う。
● 全てのプロトコールについて、関係部署へ提出する。
● 医師、薬剤師は体重の履歴をみて、前回の体重と違いがないか確認する。
○患者への説明
● 使用中のプロトコールについて患者への説明書を作成する。
○その他
● 抗がん剤や免疫抑制剤を処方するときは院内処方を原則とし、過剰投与や不適切投与に制御機能が働く
ようにする。
- 132 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
3)「処方」の「投与日・日数間違い」の事例
腫瘍用薬に関連した「処方」の「投与日・日数間違い」の事例は医療事故情報が4件、ヒヤリ・ハット
事例が1件報告されていた。添付文書の用法・用量に、休薬期間が記載されている薬剤について、
本来は休薬期間にあたる日に誤って処方がなされた事例が多かった。薬剤名、本来の内容、間違い
の内容、処方間違いの背景について図表Ⅲ - 2- 16に示す。
なお、処方間違いにより腫瘍用薬を非投与日に投与した事例については、本事業の医療安全情報
No. 22「化学療法の治療計画の処方間違い」
(2008年9月提供)においても注意喚起をしてい
る。(http://www.med-safe.jp/pdf/med-safe_22.pdf)
図表Ⅲ - 2- 16 「処方」の「投与日・日数間違い」の内容
種類
投与間隔や投与日数
薬剤
処方間違いの背景
予定した内容
フルダラ錠10mg
内服薬
ゼローダ錠 300
間違えた内容
5日間連続投与後、 2週間(10日分)
23日間休薬
の処方
14 日投与後、
7日間休薬
・ 1週間後に来院予定で1週間分の処方を行っ
たが、患者が来院できないとのことで、2週
間分に変更した際に誤って他の薬と同様に
2週間分を処方した。
・ 患者は休薬のことを忘れ、14 日分がなくなる前
に予約外で外来受診し、問診票に「薬の不足」
14 日投与後、
と記入し追加処方を希望した。
1週間分の追加処方
・ 主治医以外の外科一般外来の医師がプロトコール
を確認せずにゼローダ錠を追加処方した。
連日処方
・記載なし。
ティーエスワン配合 2 週間投与後、
顆粒T 20
1 週休薬
3 週間分の処方
・ 処方時にコピーして PC 操作し、次回受診に合
わせ一括で日数を設定すると全ての薬剤が同じ
日数になった。
シスプラチン点滴
静注液
2 週間連続の処方
・医師は 1 回目の処方をDo処方した。
4 週間に 1 回投与
- 133 -
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
腫瘍用薬に関連した事例
②﹁レジメン登録、治療計画、処方﹂の事例
注射薬
メソトレキセート錠
週1回投与
2.5mg
Ⅲ
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
4)「処方」の「支持療法の間違い」の事例
ⅰ分類
腫瘍用薬に関連した「処方」の「支持療法の間違い」の事例は医療事故情報が6件、ヒヤリ・ハット
事例が5件報告されていた。
「支持療法の間違い」の11件をア)処方忘れ・遅れ、イ)投与日数
間違い、ウ)薬剤間違い、エ)その他、に大別した(図表Ⅲ - 2- 17)
。
処方忘れ・遅れは、医療事故情報、ヒヤリ・ハット事例共に、医師は支持療法が必要なことは
知っていたが、処方を忘れた事例が多く報告されていた。また、その他では、メソトレキセート療
法を行った際、利尿薬の選択として本来尿を酸化する薬剤は避けダイアモックスなどを選択すると
ころ、フロセミド(ラシックス)を使用した事例、化学療法中の血液検査にて好中球減少を見逃し、
G−CSFを投与しなかった事例であった。
図表Ⅲ - 2- 17 「支持療法の間違い」の分類
事例の分類
医療事故情報
ヒヤリ・ハット事例
件数
処方忘れ・遅れ
4
3
7
投与日数間違い
0
1
1
薬剤間違い
1
0
1
その他
1
1
2
6
5
11
合 計
次に、支持療法の処方忘れ・遅れのあった事例の内容から、腫瘍用薬または療法と支持療法薬及
び支持療法の目的を整理し、図表Ⅲ - 2- 18に示す。
図表Ⅲ - 2- 18 処方忘れ・遅れのあった支持療法薬
処方忘れ・遅れの
あった支持療法薬
腫瘍用薬または療法
支持療法薬の主な目的
ザイティガ錠
副腎皮質ホルモン剤
補充
アリムタ注射用500mg
ビタミンB12、葉酸
補充
小細胞肺がんに対する腫瘍用薬(薬剤名不明)
副腎皮質ホルモン剤、
5−HT受容体拮抗剤
制吐
大量エンドキサン療法
ウロミテキサン注
泌尿器系障害の発現抑制
FOLFOLI+Pmab療法
イメンドカプセル
制吐
パクリタキセル
レスタミンコーワ錠
アレルギー症状の抑制
CBDCA+PTX療法
レスタミンコーワ錠
アレルギー症状の抑制
- 134 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
ⅱ主な背景・要因
「処方」の「支持療法の間違い」に関する事例の、主な背景・要因を事例の分類ごとに図表
Ⅲ - 2- 19に示す。
図表Ⅲ - 2- 19 「処方」の「支持療法の間違い」の主な背景・要因
事例の分類
主な背景・要因
・処方医は支持療法の知識はあったが失念した。
・ 抗がん剤実施計画書には、一番下段に葉酸とビタミンB 12 を投与することと明記され
た注意コメントはあったが、目につきにくい場所であった。
処方忘れ・遅れ
・新しい電子カルテシステム導入直後で、医師は不慣れであった。
・ 電子カルテによる抗がん剤レジメンにおいて、大量エンドキサン療法の注意マニュアル
に、ウロミテキサン投与の記載がなかった。
・ 注射オーダ画面のカレンダーではデカドロン錠は Day 5、Day 6まで矢印が引いてあ
投与日数間違い
るがコメント欄には Day 5、Day 6の記載はなかった。通常カレンダーと指示書は連
動しているはずであるができていなかった。
薬剤間違い
・ ロイコボリン錠を処方するつもりでオーダ処方画面に「ロイコ」と入力し、誤って
ロイコン錠を処方した。他の患者への対応に追われており、確認を怠った。
その他
・ レジメンは、原則支持療法を含めて作成されているが、当該診療科においては、支持
療法は別に作成されており、医師は、化学療法、支持療法のオーダ入力の経験がほとん
どなく不慣れであった。
・ 検査結果において血小板が顕著に低下し血小板輸血の手配をする事に気がとられて好
中球減少に気がつかなかった。
事例が発生した医療機関の改善策を、事例の分類ごとに分けて以下に示す(図表Ⅲ - 2- 20)
。
図表Ⅲ - 2- 20 「処方」の「支持療法の間違い」の主な改善策
【処方忘れ・遅れに関する改善策】
システムの改善
● 失念エラーを防ぐために、注意喚起できる仕組みのオーダ画面を作成する。
● 内服薬もレジメン入力時、一括して処方できるようシステムを変更することを検討する。
● 次期のシステムでは、支持療法薬を含めた抗がん剤実施計画書としてオーダされるように検討する。
● 電子カルテによる抗がん剤入力の際に、自動的にウロミテキサンが併用されるように登録する。
複数の医師のチェック
● 化学療法時に前投薬についてダブルチェックを行う。
多職種のチェック
● 多職種でのチェック機構を整える。
● 薬剤師が調製する際に用いる注射処方箋に、支持療法の処方の確認ができるようにチェック欄を設けた。
● 看護師は指示受け時や投与当日は、レジメンを確認し処方忘れがないか確認を行う。
その他
● 化学療法の注意マニュアルにおいて支持療法の薬剤名と投与の必要性を明記する。
● 抗がん剤治療に関する知識の向上に努める。
● 患者教育を強化する(腫瘍用薬導入時の教育入院を検討)
。
- 135 -
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
腫瘍用薬に関連した事例
②﹁レジメン登録、治療計画、処方﹂の事例
ⅲ主な改善策
Ⅲ
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
【投与日数間違いに関する改善策】
● スタッフにレジメンが変更になっていることを周知する。
【薬剤間違いに関する改善策】
● 処方画面には薬剤名を最後まで入力し、処方した薬剤名と量、投与日数を確認する。
【その他に関する改善策】
レジメンの改善
● レジメンを再検討し、支持療法を含めた作成を行う。
複数の医師のチェック
● 化学療法および支持療法入力の際は、必ず複数の医師で確認をするとともに、確認したかどうかのチェック
も徹底する。
多職種のチェック
● 病棟常駐薬剤師によりチェック体制の強化を行う。
その他
● 常に患者の検査データ全体の確認を怠らない。
5)「処方」の「その他」の事例
腫瘍用薬に関連した「処方」の「その他」の事例は医療事故情報が1件、ヒヤリ・ハット事例が
5件報告されていた。
医療事故情報は、ティーエスワンの内服時にワーファリンを内服すると相互作用を生じ、PTが
延長するという認識がないまま処方し、患者が皮下出血とPT延長をきたした事例であった。
ヒヤリ・ハット事例の主な内容は次のとおりである。
○ ティーエスワンの処方がされたが、添付文書上併用注意とされているヒダントール(フェニト
イン)を内服中の患者であったため、薬剤師が疑義照会を行った事例
○ タキソテールの初回投与の際、患者はアルコールに過敏であったが、アレルギーチェックが不
十分で、エタノールが含まれている溶解液を使用し、気分不快が出現した事例
○ 薬剤投与量決定に用いる血清クレアチニン値をカルテに誤記したため、処方入力する値を間
違ったが、薬剤部の疑義照会で未然防止できた事例
医師が薬剤の相互作用や調製法などの薬剤の情報や、患者のアレルギー情報を処方時に確認する
ことや、薬剤師が適切な疑義照会を行うことは重要である。
- 136 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
(6)まとめ
本報告書では腫瘍用薬に関連した医療事故情報とヒヤリ・ハット事例のうち、「レジメン登録」
「治療計画」「処方」の事例について分析を行った。
「レジメン登録」の事例が腫瘍用薬に関連した事例全体に占める割合は、医療事故情報の2.0%、
ヒヤリ・ハット事例の0.
3%であった。
「レジメン登録」の間違いの発生段階では、診療科からのレ
ジメン申請の際が多かった。
「治療計画」では添付文書上、総投与量の上限が定められている薬剤の投
与量の管理について、システムの構築や医師、薬剤師のチームでの関与が重要であることがわかった。
「処方」の事例が腫瘍用薬に関連した事例全体に占める割合は、医療事故情報の19.
1%、ヒヤリ・ハッ
ト事例の9.4%であった。「処方」の事例では報告件数の多かった「薬剤量間違い」及び「支持療法
の間違い」について、事例の主な背景・要因、間違いに気付いたきっかけ、及び主な改善策を整理した。
今後も事例の収集を継続し、専門分析班において各分類の代表的な事例に焦点を当てて分析を行っ
ていくこととしている。
Ⅲ
(7)参考文献
1. 平成18年度厚生労働科学研究「医薬品等の安全管理体制の確立に関する研究」主任研究者
北澤 式文「. 医薬品の安全使用のための業務手順書」作成マニュアル(2007年3月)
(Online).
available from<http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/hourei/dl/070330-1a.
pdf>( last accessed 2016-4-14)
.
available from <http://www.jshp.or.jp/cont/16/0609-1.html>( last accessed 2016-8-4)
.
3. 厚生労働省 . 内服薬処方せんの記載方法の在り方に関する検討会報告書 . 平成22年1月29日 .
(Online).available from< http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/01/s0129-4.html>( last
accessed 2016-8-2)
.
- 137 -
腫瘍用薬に関連した事例
②﹁レジメン登録、治療計画、処方﹂の事例
2. 一般社団法人日本病院薬剤師会 . ハイリスク薬に関する業務ガイドライン
(Ver. 2. 2)
(Online)
.
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
【2】持参薬と院内で処方した薬剤の重複投与に関連した事例
患者が入院した際に持参した院内で採用していない薬剤の継続、または院内の処方へ切り替える場
合などには、薬剤の規格間違い、用法・用量の指示間違い、同じ成分や同じ薬効の薬剤の重複投与に
注意が必要である。本事業では、これまでに医療安全情報No . 78「持参薬を院内の処方に切り替
える際の処方量間違い」(2013年5月)を提供し、持参薬を院内の処方に切り替える際の薬剤の
規格や剤形の間違いについて注意喚起した。
今回、本報告書分析対象期間(2016年4月∼6月)に、持参薬と院内で処方した同じ成分の薬
剤を重複して患者に投与した事例が1件報告された。患者に同じ成分や同じ薬効の薬剤を重複して投
与した場合、薬剤によっては患者に大きな影響を与える可能性がある。そこで、本報告書では事例を
過去に遡って検索し、持参薬と院内で処方した同じ成分や同じ薬効の薬剤を重複して投与した事例を
取り上げ、分析を行った。
(1)発生状況
①対象とする事例
本分析では、報告された事例の中から「事故の内容」、
「事故の背景要因の概要」や「関連医薬品」
に持参薬と院内で処方した薬剤が記載してある事例を抽出し、同じ成分もしくは同じ薬効の薬剤を
重複して投与した事例を対象とした。なお、本分析において同じ薬効とは、厚生労働省の薬価基準
収載医薬品コードの先頭3桁が同じである場合とした。
②報告件数
2010年1月から2016年6月までに報告された医療事故情報のうち、対象とする事例は5
件であった。報告年ごとの件数を、図表Ⅲ - 2- 21に示す。
図表Ⅲ - 2- 21 報告件数
報告年
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
(1∼6月)
合計
件数
1
1
0
1
1
0
1
5
③当事者の職種
当事者の職種は、医師、看護師がそれぞれ4件であった(図表Ⅲ - 2- 22)
。「当事者」として
は選択されていなかったが、事例の内容に薬剤師が関わったことが記載されている事例も報告され
ていた。
図表Ⅲ - 2- 22 当事者職種
当事者職種
件数
医師
4
看護師
4
※当事者は、医療機関が当該事例に関係したと判断した者であり、複数の入力が可能である。
- 138 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
④事例の分類
対象とする5件の事例を分類すると、同じ成分の薬剤を重複して投与した事例が4件、同じ薬効
の薬剤を重複して投与した事例が1件であった。なお、同じ成分の薬剤を重複して投与した事例の
うち1件は、4剤を重複して投与しており、そのうち3剤は同じ成分の薬剤であったが、1剤は同
じ薬効の薬剤を投与した事例であった。
図表Ⅲ - 2- 23 事例の分類
事例の分類
件数
同じ成分の薬剤の重複投与
4※
同じ薬効の薬剤の重複投与
1
※同じ成分の薬剤の重複投与の中には、投与した薬剤が複数あり、
同じ薬効の薬剤の重複投与も含まれている事例がある。
Ⅲ
⑤重複して投与した薬剤の組み合わせ
報告された事例の中から、「事故の内容」、「事故の背景要因の概要」や「関連医薬品」に記載さ
れていた持参薬と院内で処方した薬剤の薬剤名を抽出した。同じ成分の薬剤の組み合わせを図表
Ⅲ - 2- 24、同じ薬効の薬剤の組み合わせを図表Ⅲ - 2- 25に整理した。また、同じ成分の薬剤
の組み合わせについて、ミグシス錠5mgとテラナス錠5以外は先発医薬品と後発医薬品の組み合
わせであった。
図表Ⅲ - 2- 24 同じ成分の薬剤の組み合わせ
その他の
循環器官用薬
消化性潰瘍用剤
添付文書上の
薬効分類名注2)
成分名
持参薬
院内で処方した薬剤
テラナス錠5注3)
片頭痛治療剤
塩酸ロメリジン
ミグシス錠5mg
プロトンポンプ
阻害剤
ラベプラゾール
ナトリウム
ラベプラゾールNa錠
パリエット錠10mg
10mg
胃炎・胃潰瘍治療剤 レバミピド
レバミピド錠
100mg
ムコスタ錠100mg
その他の
消化器官用薬
消化管運動改善剤
ドンペリドン
ドンペリドン錠
10mg
ナウゼリンOD錠10
痛風治療剤
高尿酸血症治療剤
アロプリノール
アロチーム錠
100mg注4)
ザイロリック錠100
その他の
血液・体液用薬
抗血小板剤
シロスタゾール
プレタールOD錠
100mg
シロスタゾールOD錠
50mg「マイラン」
注1) 薬効は、薬価基準収載医薬品コードの先頭3桁をもとに分類した。
添付文書に記載されている薬効分類名を記載した。また、事例に記載されていた薬剤名をそのまま掲載したため、「屋号(会社名等)
」
注2)
が記載されていない薬剤については、一般的名称および剤形が同じである添付文書を参考にした。
注3)テラナス錠5は、販売中止が予定されており、2016年4月1日から経過措置となっている。
注4)アロチーム錠100mgは、現在では販売名がアロプリノール「サワイ」に変更されている。
- 139 -
持参薬と院内で処方した薬剤の重複投与に関連した事例
薬効注1)
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
図表Ⅲ - 2- 25 同じ薬効の薬剤の組み合わせ
薬効注1)
催眠鎮静剤、抗不安剤
無機質製剤
添付文書上の薬効分類名注2)
添付文書上の薬効分類名注2)
持参薬
院内で処方した薬剤
成分名
成分名
睡眠誘導剤・抗痙攣剤
不眠症治療薬
ニトラゼパム錠
サイレース錠
ニトラゼパム
フルニトラゼパム
徐放性鉄剤
可溶性の非イオン型鉄剤
フェルムカプセル100mg
フェロミア錠50mg
フマル酸第一鉄徐放
クエン酸第一鉄ナトリウム
注1) 薬効は、薬価基準収載医薬品コードの先頭3桁をもとに分類した。
添付文書に記載されている薬効分類名を記載した。また、事例に記載されていた薬剤名をそのまま掲載したため、「屋号(会社名等)
」
注2)
が記載されていない薬剤については、一般的名称および剤形が同じである添付文書を参考にした。
⑥患者への影響
5件の事例の事故の程度は、「障害残存の可能性なし」や「障害なし」を選択しており、患者へ
大きな影響を及ぼした事例の報告はなかった。しかし、治療の程度で「軽微な治療」を選択してい
た事例があり、同じ成分の抗血小板剤を重複して投与したことが一因となり、血尿が増強して膀胱
タンポナーデをきたしたことにより膀胱洗浄を実施した事例であった(図表Ⅲ - 2- 26)
。
図表Ⅲ - 2- 26 治療の程度
治療の程度
件数
濃厚な治療
0
軽微な治療
1
なし
4
合 計
5
- 140 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
(2)事例の内容
持参薬と院内で処方した同じ成分や同じ薬効の薬剤を重複して投与した事例を図表Ⅲ - 2- 27に
示す。
図表Ⅲ - 2- 27 事例の内容
No.
事故の内容
事故の背景要因の概要
改善策
同じ成分の薬剤の重複投与
入院時に持参薬を確認した際、ミグシス錠が
他の薬剤と一包化されていたため、看護師は
ミグシス錠の確認ができなかった。担当医
は、持参薬は使用せず院内で処方すること
を入院時担当看護師Aに伝え、テラナス錠を
1 1日2回7回分処方した。翌日、看護師Bは
持参薬があることに気付いたが、持参薬内服
の指示が出されていないため、担当医に持参
薬内服の指示を依頼した。担当医は、前日に
テラナス錠を処方したことを忘れて、持参薬
(ミグシス錠)内服の指示を出した。
入院時担当看護師Aは、使用しないことに ・ 院内で処方した場合には、
なった持参薬に何のコメントもつけず、他 持参薬を使用しないこと
の看護師の目につくところに保管した。担 を処方箋コメントに入力
当医は、テラナス錠を処方したことを忘れ し注意喚起する。
て、持参薬(ミグシス錠)内服の指示を出
した。
Ⅲ
- 141 -
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
持参薬と院内で処方した薬剤の重複投与に関連した事例
患者は脳梗塞の既往があり、入院時、持参薬 病棟薬剤師は、入院時に紹介状、お薬手帳、・ 後発医薬品への切り替え
のプレタール錠を内服していた。化学療法前 持参薬等から持参薬鑑定を行い、看護師と 薬剤について、わかりや
に水腎を認めたため、左腎瘻を造設すること ともに内容確認を行った(持参薬報告)
。 すく見直し、周知する。
になり、術前にプレタール錠が中止となった。 その報告をもとに、医師は持参薬内服の指 ・ 医師は後発医薬品に変更
腎瘻造設後、医師は「プレタール内服再開」 示を出した。指示は、オーダ情報として電 した際、必ず看護師に伝
という指示を入力したが、処方はしなかった 子カルテ上に記録される。病棟薬剤師が初 える。
ため、看護師は持参薬の残薬のプレタール錠 回面談をした際、患者の持参薬の服用状況 ・ 看護師は後発医薬品の表
をセットした。プレタール錠再開2日後、プ は、用法や用量などが説明でき理解度は良 記を確認したら、医師に
レタール錠を処方するつもりで院内採用薬の 好であった。プレタール錠の残数が多かっ どの薬剤からの切り替え
シロスタゾール錠を処方し、シロスタゾール たため確認したところ、服用方法が誤って か確認する(後発医薬品
錠に変更して内服を継続した。シロスタゾー おり薬剤師は患者に用法の説明をした。持 の表記:成分名+規格(数
ル錠に変更後6日目、看護師が定期処方をセッ 参薬報告書には院内採用薬シロスタゾール 字)+「メーカー名」)。
トする際に、シロスタゾール錠と持参薬の残 と表示されていた。2ヶ月前に院内採用薬 ・ 病棟薬剤師と協働し、病
薬のプレタール錠を一緒にセットしたため、 がプレタール錠からシロスタゾール錠に切 棟の専門性に応じた後発
患者は2剤を内服した。その後、血尿が増強 り替えになっており、プレタール錠の後発 医薬品に関する理解を深
して膀胱タンポナーデをきたし、膀胱洗浄を 医薬品の認識が希薄であった。院内の処方 めるための研修を行う。
開始した。翌日(変更後7日目)、「プレター オーダは「プレタール」と入力すると院内
ル内服中止」の指示が出たため、プレタール 採用薬の「シロスタゾール」が画面に表示
錠のみ壁掛け配薬から取り除いた。変更後9 され処方ができる。主治医はシロスタゾー
2 日目、プライマリーナースがカルテを見てい ル錠に変更したという認識がないままプレ
た時に、プレタール錠とシロスタゾール錠が タール錠のつもりで処方した。そのため、
同じ成分の薬剤であり抗血小板剤が重複して 主治医はプレタール錠からシロスタゾール
いたこと、シロスタゾール錠を継続して内服 錠に変更したあとも、一般指示に「プレター
していることを発見した。
ル内服再開(中止)」と記載し、診療録も
再開、休止の記載はすべて「プレタール」
で記載していた。医師から出された持参薬
内服の指示は、電子カルテ上オーダ情報と
して反映されるため、看護師は内服指示
ワークシートを用いて確認を行っている。
途中で薬剤の中止や減量などの変更をする
場合、医師が一般指示を出しそれに基づい
て薬剤をセットしている。看護師は、プレ
タール錠とシロスタゾール錠が同じ成分の
薬剤であることを知らなかったため、一般
指示に従ってプレタール錠を患者の壁掛け
配薬にセットした。その際、中止になった
持参薬は患者本人に返却していたが、患者
に確認し、患者持ちの持参薬からセットし
た。
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
No.
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
事故の内容
事故の背景要因の概要
改善策
持参薬のフェルムカプセル100mg、ラベ 処方した医師は、患者が内服中の持参薬を ・ 持参薬の内服状況につい
プラゾールNa錠10mg、ドンペリドン錠 把握せず処方した。指導医、看護師は、持 て確認する。
10mg、レバミピド錠100mgと、処方 参薬と処方内容について確認不足であっ
した薬剤のフェロミア錠50mg、パリエッ た。持参薬の確認は薬剤師が行っており、
ト錠10mg、ナウゼリンOD錠10mg、 必ず患者と面談を行い電子カルテ上の薬剤
ムコスタ錠100mgが2日間重複しており、 師記録に記載している。 薬剤師記録は、薬
処方量の2倍内服していた。
剤部の部門システム等への記載ではなく、
医師や看護師と同様に電子カルテへの記録
である。 記録内容は、処方病院名、診療科、
3
処方内容、当院採用薬への切り替え時の留
意点(同一規格薬、同効薬などの情報)な
どと、持参薬に関する情報(お薬手帳など)
の有無、自己管理状況(管理者、自己調整
や飲み忘れの有無など)についても面談時
に聞き取り、記載する。さらにアレルギー
歴の有無、市販薬やサプリメントの服用状
況なども確認し、入院後の薬物療法全体の
リスク評価を行っている。
持参薬のアロチーム錠100mg 注) を配薬
していた。持 参 薬の終了後、院内で処方し
たザイロリック錠100mgに移行する予定
であった。院内で処方したザイロリック錠
4 100mgに変更予定の当日、深夜勤看護師
Aは、配薬ボックスにアロチーム錠とザイロ
リック錠を重複して準備した。8:30に日
勤看護師Bは、配薬ボックスから2剤を取り
出し患者に与薬した。
持参薬のアロチーム錠100mgは主とし ・ 基本的に持参薬は全て中
て泌尿器科で多く使用されており、院内に 止とし、院内で処方した
は在庫がなかった。院内ではザイロリック 薬剤に変更する。
錠を採用していた。通常であれば、すぐに
薬剤師が納品の手続きをとっているが、正
確に伝達が行われていなかった。
同じ薬効の薬剤の重複投与
患者は、眠前に持参薬のニトラゼパム錠を内 与薬開始日の確認をせず、処方内容のダブ ・ マニュアル通りに指差し
服していた。持参薬がなくなるため、同効薬 ルチェックしかしていなかった。与薬開始 呼称を行う。
のサイレース錠が処方され病棟に届いていた。 日の記載は、普段通り薬袋の右上に日付が ・ 処方を切り替える場合は、
看護師は、配薬カートにセット済みの持参薬 書かれていた。手書きで「持参薬のニトラ 与薬開始日を分かりやす
(ニトラゼパム錠)を1人で確認後、鍵付管理
ゼパム錠の代わりです」と書かれていたが、 く記載する。
5
のサイレース錠をダブルチェックして、2剤を 与薬開始日が目立つようには記載されてい ・ 内服予定日を薬袋の裏に
患者に与薬した。翌日の夕方、日勤看護師よ なかった。ニトラゼパム錠とサイレース錠 記入する。
りサイレース錠が 1 錠少なく、ニトラゼパム が同効薬との認識がなかった。
錠とサイレース錠の重複投与の指摘を受けた。
注)アロチーム錠100mgは、現在では販売名がアロプリノール「サワイ」に変更されている。
(3)事例の概要
今回対象とした事例5件は、いずれも持参薬と院内で処方した同じ成分または同じ薬効の薬剤の両方
が存在し、持参薬から院内で処方した薬剤に切り替える際に、切り替えに関する指示が適切に出されな
かった、あるいは伝わらなかった事例であった。
事例1、2は、複数人が関わっており、持参薬から院内で処方した薬剤への切り替え、さらに持参薬
の中止や再開など、患者が内服する薬剤を管理する上で複雑な状況であるため、事例の内容を経時的に
図示した(図表Ⅲ - 2- 28、図表Ⅲ - 2- 29)
。事例3は、患者が内服中の持参薬を把握しないまま、医
師が新たに処方したため、2日間にわたり持参薬と院内で処方した薬剤を重複して内服した事例であっ
た。事例4、5は、処方は正しくされていたが、持参薬から院内で処方した薬剤に切り替える際に、看
護師が薬剤の準備や配薬をする段階で投与開始日や投与時間についての確認が不足していたことにより、
患者が重複して内服した事例であった。このように、処方や指示、配薬の場面など様々な場面や要因に
より起こる可能性がある。
- 142 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
1) 事例1:持参薬(ミグシス錠)と院内で処方したテラナス錠を重複して投与した事例について
(図表Ⅲ - 2- 28)
患者が内服した薬剤
持参薬
医師
院内で処方
した薬剤
看護師A
看護師B
ミグシス錠
入院当日
持参薬のミグシス錠が一包化
されていたため、使用せず
院内で処方することを決めた
テラナス錠を処方した
医師から持参薬を使用しない
という指示を口頭で受けた
Ⅲ
使用しない持参薬を他の
看護師の目につく場所に
保管した
入院翌日
保管してある持参薬を
見つけた
テラナス錠
医師に持参薬(ミグシス錠)
内服の指示を依頼した
ミグシス錠
事例1は、入院当日に医師は持参薬(ミグシス錠)が一包化されていたため使用しないことを決
め、同じ成分の薬剤であるテラナス錠を処方している。しかし、翌日、看護師に持参薬内服の指示
を依頼され、医師はテラナス錠を処方したことを忘れて持参薬内服の指示を出したため、患者が持
参薬のミグシス錠と院内で処方したテラナス錠を重複して内服した事例であった。
事例の内容には、患者が持参薬のミグシス錠と院内で処方したテラナス錠を重複して内服したと
記載されていたが、持参薬は一包化されており、入院翌日、医師が持参薬内服の指示を出したため、
患者は一包化の中の他の薬剤についても重複して内服した可能性や本来中止する予定であった薬剤
を内服した可能性も考えられる。
事例の要因として、医師は持参薬を使用しないことを看護師Aに伝えたが明確な指示を記載しな
かったこと、看護師Aが入院時に使用しないと決めた持参薬を他の看護師の目につくところに何の
コメントもつけずそのまま保管したこと、患者から受け取った持参薬の管理の方法が明確でなかっ
たことや、持参薬を使用しないことについての情報の共有が不足していたことなどが挙げられる。
使用しない持参薬は、患者に返却する、患者に許可を取った後に廃棄する、病棟の決まった場所に
保管するなど、取り扱いの手順を統一することが重要である。
- 143 -
持参薬と院内で処方した薬剤の重複投与に関連した事例
持参薬(ミグシス錠)
内服の指示を出した
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
2)事例2:持参薬のプレタール錠と院内で処方したシロスタゾール錠を重複して投与した事例について
(図表Ⅲ - 2- 29)
患者が内服
した薬剤
院内で
持参薬 処方した
薬剤
プレタール錠
入院時
病棟薬剤師
医師
看護師
(術後担当)
看護師
看護師
(変更後
6日目担当)
看護師
(変更後
7日目担当)
看護師
(患者の
担当看護師)
お薬手帳や持参
薬から持参薬鑑
定を行い、持参
薬報告をした
持参薬報告書に
は、
「院内採用薬
シ ロスタゾ ー
ル」
と記載した
手術
数日前
持参薬報告をも
とに、持 参 薬 内
服を指示した
手術のためプレ
タール錠の内服
を中止した
術後
プレタール錠
一般指示に「プ
レタール内服再
開」
と記載した
再開
2日後
プレタール錠を
セットした
持参薬を患者に
返却した
患者に返却して
いた持参薬か
ら残 薬 のプレ
タール錠をセッ
トした
プレタール錠か
ら院内採用薬の
シロスタゾール
錠 に 変 更し、処
方した
指示の薬剤名を
「プレタール」の
まま 変 更し な
かった
変更後
6日目
シロスタゾール錠
プレタール錠
変更後
7日目
定期処方をセッ
トする際 に 、シ
ロスタゾール錠
と、
「プレター
ル 」の 指 示 が
あった た め、患
者に返却した持
参薬の残薬の
プレタール錠を
セットした
シロスタゾール
錠 を 中 止 する
つもりで、
「プレ
ター ル 内 服 中
止」
と指示した
壁掛け配薬から
プレタール錠の
み取り除いた
ኚ᭦ᚋ
䠕᪥┠
シロスタゾール
錠が継続して投
与されているこ
とに気付いた
事例2は、患者は入院時に持参薬のプレタール錠を内服しており、手術のために中止し、術後にプ
レタール錠の内服を再開した。その後、持参薬のプレタール錠から院内で処方したシロスタゾール錠
へ変更しているが、変更後6日目に担当した看護師が定期処方をセットする際、シロスタゾール錠
と持参薬の残薬のプレタール錠を一緒にセットしたため、患者が同じ成分の薬剤を重複して内服し
た事例であった。
- 144 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
事例の要因として、医師はオーダ時に「プレタール」と入力し、画面には「シロスタゾール」と
表示されシロスタゾール錠を処方したが、シロスタゾール錠に変更したという認識がないままプレ
タール錠のつもりで処方したため、変更後も指示の薬剤名を「プレタール」と記載したこと、看護
師はシロスタゾール錠がプレタール錠の後発医薬品であり、同じ成分の薬剤であると認識していな
かったことが挙げられていた。
持参薬から院内で処方した薬剤に切り替える際に、医師は患者が内服している薬剤について正し
い薬剤名で指示を出すことが重要であり、看護師は指示された薬剤の成分を確認しておくことが望
まれる。また、持参薬と院内で処方した薬剤は同じ成分で名称が異なる場合があることを認識する
ことが必要である。さらに、病棟薬剤師が持参薬の管理について適切に介入することにより、持参
薬と院内で処方した薬剤を患者が重複して内服することを防ぐことができる可能性がある。
<参考> 持参薬から院内で処方した薬剤に切り替える際、院内で処方した同じ薬効の薬剤を重複して
投与した事例
Ⅲ
持参薬のイルベタン錠を院内採用薬に切り替える際、院内で処方した同じ薬効のミカルディス錠
とアバプロ錠を重複して患者に投与した事例が報告されていた。本分析では、持参薬と院内で処方
した薬剤を重複して投与した事例を対象としたため、本テーマには該当しないが参考事例として以
下に示す。
事故の内容
事故の背景要因の概要
改善策
- 145 -
持参薬と院内で処方した薬剤の重複投与に関連した事例
14:50 薬剤師は持参薬報告をカルテに 薬剤師は他施設から移動したばかりであ ・ 持参薬報告の記載内容を医師
記載した。その際、
「持参薬のイルベタン錠 り、通常は「代替薬 ミカルディス錠」を が処方しやすいように簡潔に
50mg 1錠は採用なし。代替薬はミカル 記載するが、
「限定採用 アバプロ錠」も 分かりやすく書く。
ディス錠、限定採用にアバプロ錠100mg」 記載した。院内採用薬の代替薬は、同効 ・ 不必要な情報や複数の情報は
と書いた。15:09 医師Aより、ミカル 薬の場合もあれば、同一成分薬の場合も 書き込まない。
ディス錠40mg 1錠の処方があった。患 ある。医師への報告内容が曖昧であった。・ 代替薬については、文字の色
者は、持参薬のイルベタン錠50mgを内服 通常の薬剤は電子カルテからオーダする を変えて分かりやすくする。
中であり、薬剤師は重複処方になることを医 が、限定採用の薬剤は「手書き処方箋」・ 代替薬については用量(規格・
師Aへ疑義照会しようとしたが、医師Aと連 でオーダするというルールであった。最 錠数)まで記載する。
絡が取れず医師Bに連絡した。15:17 終確認とその後の処理ができていなかっ ・ 院内で処方する薬剤への代替
医 師 B は 薬 剤 師 か ら の 疑 義 照 会 の 意 図 を、 た。削除しなければならない薬剤を削除 については、特に注意して処
アバプロ錠の方が良いと判断し、手書き処方 していなかった。
方された後の最終確認を行
箋でアバプロ錠100mg 0.5錠 分1
う。
朝食後 6日分を処方した。その際、電子カ
ルテからオーダされているミカルディス錠
は、薬剤師が削除すると医師Bと話し合った。
しかし、薬剤師はミカルディス錠を削除し忘
れ、2剤が払い出された。4日後、次の処方
時に2剤を内服していることが分かった。
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
(4)事例の背景・要因
報告された事例の内容から主な背景・要因を、薬剤の①処方・指示、②準備・配薬、③保管・管理、
④その他、に分類して図表Ⅲ - 2- 30に整理した。
図表Ⅲ - 2- 30 主な背景・要因
①処方・指示
・医師は、患者が内服中の持参薬を把握せず処方した。
・ 主治医は、プレタール錠から院内採用薬のシロスタゾール錠に変更したという認識がないままプレタール
錠のつもりで処方したため、変更後も指示に「プレタール内服再開(中止)
」と記載した。また、診療録
も再開、休止の記載はすべて「プレタール」と記載していた。
・医師は、前日にテラナス錠を処方したことを忘れて、持参薬(ミグシス錠)内服を指示した。
②準備・配薬
・ 看護師はプレタール錠とシロスタゾール錠が同じ成分の薬剤であることを知らず、医師が出した一般指示
に従って持参薬の残薬のプレタール錠も壁掛け配薬にセットした。
・配薬した看護師は、ニトラゼパム錠とサイレース錠が同じ薬効の薬剤であることの認識がなかった。
・ 中止になった持参薬は患者に返却していたが、医師から「プレタール内服再開」と指示が出たため、患者
に確認し、返却した持参薬からセットした。
・与薬前に与薬開始日の確認をせず、処方内容の確認しかしなかった。
③保管・管理
・ 入院時の担当看護師は、使用しないことになった持参薬に何のコメントもつけず、他の看護師の目につ
くところに保管した。
・ 薬袋に手書きで「持参薬のニトラゼパム錠の代わりです」と書かれていたが、与薬開始日は目立つよう
に記載されていなかった。
④その他
・ 院内採用薬がプレタール錠からシロスタゾール錠に切り替えになって日が浅く、プレタール錠の後発医
薬品の認識が希薄であった。
・ 院内ではザイロリック錠が採用されており、持参薬のアロチーム錠は院内に在庫がなかった。
(5)事例が発生した医療機関の改善策について
事例が発生した医療機関の改善策を以下に示す。
○処方・指示に関すること
・ 医師は持参薬から院内の処方へ切り替える場合には、持参薬を使用しないことを処方箋コメント
に入力し注意喚起できるようにする。
・医師は持参薬から院内で処方した後発医薬品に変更した際には、必ず看護師に伝える。
・医師は処方する際、患者の持参薬の内服状況について確認を行う。
○指示受けに関すること
・ 看護師は院内で処方された後発医薬品の表記(成分名+規格(数字)+「メーカー名」)を確
認した際には、医師に何の薬剤からの切り替えか確認する。
- 146 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
○準備・配薬に関すること
・薬剤を確認する際には、マニュアル通りに指差し呼称を行う。
○保管・管理に関すること
・持参薬から院内の処方へ切り替える場合は、与薬開始日を分かりやすく記載する。
・院内で処方した薬剤の薬袋の裏に与薬開始日を記載する。
○その他
・基本的に持参薬は全て中止し、院内で処方した薬剤に変更する。
・後発医薬品へ切り替える薬剤について、わかりやすく見直し、周知する。
・ 病棟薬剤師と協働し、
病棟の専門性に応じた後発医薬品に関する理解を深めるための研修を行う。
(6)薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業における関連情報
本財団で行っている薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業において、平成25年年報(2014年
10月公表)16) の分析テーマ「
【6】同種同効薬の重複処方に関するヒヤリ・ハット」
(306∼
Ⅲ
338頁)で集計・分析を行った。重複した同種同効薬の「主な薬効」の種類、患者が服用中の薬と
の重複処方に関する事例の同種同効薬の組み合わせ(320∼323頁)や、同種同効薬の重複処方
に関する共有すべき事例(328∼330頁)などが掲載されている。
(7)まとめ
本報告書分析対象期間に、持参薬と院内で処方した同じ成分の薬剤を重複して投与した事例が報告
複して投与した事例5件について分析を行った。
事例に記載されていた内容から、同じ成分または同じ薬効の薬剤の組み合わせを示した。また、複
数人が関わっており、持参薬から院内で処方した薬剤への切り替えや持参薬の中止・再開など、患者が
内服する薬剤を管理する上で複雑な状況であった事例については、事例の内容を図示して掲載した。
持参薬と院内で処方した同じ成分や同じ薬効の薬剤の重複投与は、処方や指示、配薬の場面など様々
な場面や要因により起こる可能性がある。患者の内服薬を管理するにあたり、いつまで持参薬を内服し
ていつから院内で処方した薬剤に切り替えるか等、切り替えに関する指示を適切に出すことや、確実に
指示を伝えることができるような仕組みが必要である。また、持参薬と院内で処方した薬剤は同じ成分
で名称が異なる場合があることを認識することが重要である。さらに、病棟薬剤師が持参薬の管理につ
いて適切に介入することにより、持参薬と院内で処方した薬剤を患者が重複して内服することを防ぐこ
とができる可能性がある。
- 147 -
持参薬と院内で処方した薬剤の重複投与に関連した事例
された。そこで、事例を過去に遡って検索し、持参薬と院内で処方した同じ成分や同じ薬効の薬剤を重
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
(8)参考文献
1.ミグシス錠5mg添付文書.ファイザー株式会社.2009年12月改訂(第8版).
2.テラナス錠5添付文書.MSD株式会社.2010年10月改訂(第9版).
3. ラベプラゾールNa錠10mg「AA」添付文書.あすか製薬株式会社.2016年4月改訂
(第11版).
4. パリエット錠5mg/パリエット錠10mg添付文書.エーザイ株式会社.2016年4月改
訂(第28版).
5. レバミピド錠100mg「JG」添付文書.日本ジェネリック株式会社.2010年5月作成
(第1版).
6. ムコスタ錠100mg/ムコスタ顆粒20%添付文書.大塚製薬株式会社.2013年7月改
訂(第14版)
.
7.ドンペリドン錠10mg「YD」添付文書.株式会社 陽進堂.2016年7月改訂(第2版).
8. ナウゼリンOD錠5/ナウゼリンOD錠10添付文書.協和発酵キリン株式会社.2016
年7月改訂(第3版).
9. ザイロリック錠50/ザイロリック錠100添付文書.グラクソ・スミスクライン株式会社.
2015年3月改訂(第16版).
10. プレタールOD錠50mg/プレタールOD錠100mg添付文書.大塚製薬株式会社.
2013年2月改訂(第6版).
11. シロスタゾールOD錠50mg「マイラン」/シロスタゾールOD錠100mg「マイラン」
添付文書.マイラン製薬株式会社.2014年2月作成(第1版).
12. ニトラゼパム錠5mg「イセイ」添付文書.コーアイセイ株式会社.2015年7月改訂
(第2版).
13. サイレース錠1mg/サイレース錠2mg添付文書.エーザイ株式会社.2015年6月改訂
(第10版).
14.フェルムカプセル100mg添付文書.日医工株式会社.2014年2月改訂(第2版)
.
15. フェロミア錠50mg/フェロミア顆粒8.
3%添付文書.サンノーバ株式会社.2014年
6月改訂(第11版).
16. 公益財団法人日本医療機能評価機構.薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 平成25年
年報.2014年10月30日.(online)
.available from < http://www.yakkyoku-hiyari.
jcqhc.or.jp/pdf/year_report_2013_T006.pdf >(last accessed 2016-7-11).
- 148 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
【3】永久気管孔にフィルムドレッシング材を貼付した事例
永久気管孔とは、喉頭癌、咽頭癌などの治療のため喉頭を全摘出する手術や、重度の嚥下障害の
ある重症心身障害児の誤嚥を防止するために行われる喉頭気管分離術によって、呼吸のために気管を
頚部の皮膚に縫合して造られた孔である。気管切開とは違い、永久気管孔は気道と食道が完全に分離
するため、口や鼻で呼吸することはできず、一度造設すると閉鎖することは想定されていない(図表
Ⅲ - 2- 31)。参考として、医療機関より提供いただいた永久気管孔の写真を掲載する。
永久気管孔と同じように頚部に孔を開けて患者の気道を確保する方法に気管切開があり、頚部にあ
る孔の外観は似ている(図表Ⅲ - 2- 32)
。しかし、気管切開の場合は、気管は喉頭∼咽頭へつながっ
ているため、永久気管孔の造設とは気道の構造が大きく異なり、通常、気管切開チューブが挿入され
ている。長期にわたり気管切開チューブを挿入していると頚部の皮膚が気管の近くまで入り込み、気
管切開チューブを抜去しても気管切開孔の閉鎖が困難な状態になることがある。そのような場合、気
管切開チューブを抜去した穴が瘻孔の様に見えるが、患者は口や鼻での呼吸が可能である。
今回、本報告書分析対象期間(2016年4月∼6月)に、患者が永久気管孔で呼吸しているとい
Ⅲ
う認識がないまま、シャワー浴を行う際、湯が入るのを防止するためにフィルムドレッシング材で永
久気管孔を塞いだことにより、患者の呼吸状態に影響を及ぼした事例が1件報告された。
そこで本報告書では、事例を過去に遡って検索し、同様の事例を取り上げ、分析を行った。
図表Ⅲ - 2- 31 永久気管孔の構造
(参考)永久気管孔のある患者の頚部(写真)
図表Ⅲ - 2- 32 気管切開の構造
(参考)気管切開チューブが挿入されている状態
喉頭
喉頭
声帯
声帯
食道
気管
食道
気管
- 149 -
永久気管孔にフィルムドレッシング材を貼付した事例
食道
気管
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
(1)発生状況
①対象とする事例
本分析の対象事例は、2010年以降に報告された医療事故情報の中から、永久気管孔をフィルム
ドレッシング材などで覆ったために、患者の呼吸状態に影響をきたした事例を対象とした。
②報告件数
2010年1月から2016年6月までに報告された医療事故情報のうち、対象の事例は2件で
あった(図表Ⅲ - 2- 33)。2事例とも、シャワー浴などの保清の際に、永久気管孔にフィルムドレッ
シング材を貼付した事例であった。
図表Ⅲ - 2- 33 報告件数
報告年
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
(1∼6月)
合計
件数
0
0
0
0
0
1
1
2
③事例の概要
入浴時、永久気管孔にフィルムドレッシング材を貼付した事例の概要を示す(図表Ⅲ - 2- 34)
。
事例1は、医師は患者が永久気管孔を造設していることを入院担当の看護師に伝えていたが、
看護師間で永久気管孔造設の情報が共有されていなかった。そのため、入浴担当の看護師は気管切
開後の瘻孔だと思いガーゼとフィルムドレッシング材で保護し、さらにフィルムドレッシング材を
追加して永久気管孔を完全に覆ってシャワー浴の介助を行った事例である。
事例2は、入院時に入手した永久気管孔造設の情報や、1回目の入浴を担当した看護師が患者は
口で呼吸をしていないと判断し、タオルで周囲を保護して入浴した情報が共有されていなかった。
そのため、2回目の入浴の際に処置を担当した看護師は患者に永久気管孔があることを認識しない
まま、永久気管孔を気管切開チューブ抜去後の瘻孔と思い、フィルムドレッシング材で完全に閉鎖
後、入浴担当の介護福祉士が入浴の介助を行った事例である。
2事例とも、複数の医療スタッフが関わっているが、患者が永久気管孔によって呼吸していると
いう認識のないままフィルムドレッシング材を貼付している。そのため、フィルムドレッシング材
貼付直後の患者の呼吸状態の確認は行っているものの、十分ではなかった可能性がある。報告され
た事例2件のうち1件の事故の程度は、「死亡」と選択されていた。
- 150 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
図表Ⅲ - 2- 34 事例の概要
事例1
事例2
関連診療科
リハビリテーション科
内科、麻酔科、リハビリテーション科
発生時間帯
8:00∼9:59
8:00∼9:59
発生場所
浴室
浴室
当事者職種
看護師4名
看護師、看護助手(介護福祉士)
患者の年齢
70歳代
70歳代
直前の患者の状態
その他:発語不能
意識障害
永久気管孔造設に
関する情報
① 入院時担当看護師:
①入院担当看護師:
情報収集していたが、共有していな
医師から永久気管孔を造設している患
かった。
者であるという情報を入手し、看護プ
ロファイルの「活動/休息」欄に、
「永 ② 入院後1回目の入浴を介助した看護師:
久気管孔のため、口・鼻呼吸ができな
患者が口で呼吸ができないと判断し、
い」と記載した。
永久気管孔を塞ぐことなく入浴を実施
②受け持ち看護師D:
したが、その判断を共有しなかった。
看護プロファイルに記載されていた永 ③ 2回目の入浴時に処置した看護師:
久気管孔の情報を知らず、患者が永久
電子カルテから情報を得なかったた
気管孔であるという認識はなかったた
め、知らなかった。
め、永久気管孔に関する看護計画は立
案していなかった。
③入浴担当看護師A、B、C:
入浴時、患者がのど元に使用していた
エプロン様のガーゼを外した際に永久
気管孔を初めて見た。
気管切開チューブ抜去後の瘻孔だと思っ 気管切開チューブ抜去後の瘻孔だと思っ
た。
た。
実施した処置
1) 看護師Bは、永久気管孔をガーゼ、
フィルムドレッシング材で保護した
永久気管孔にフィルムドレッシング材を
(たまたま上部が空いていた)。
直接貼付した。
2) 看護師Cは、上部にフィルムドレッ
シング材を追加貼付した。
上記の処置1)の際は、患者に呼吸が苦
フィルムドレッシング材
しくないか質問し、口の動きで「苦しく 貼付後、患者の表情と胸の動きを確認し、
を貼付直後の呼吸状態
異常なしと判断した。
ない」と確認した。
の確認
上記の処置2)の際は、記載なし。
患者に行った保清
シャワー浴
入浴
患者の異変に気付く
までの時間
フィルムドレッシング材の貼付から
フィルムドレッシング材を追加貼付後、
13分後(脱衣、洗髪・洗身し、浴槽に
1分以内
入るまで)
気付いたきっかけ
全身色不良、意識消失
顔色不良
永久気管孔が塞がって
別の患者の入浴介助中であった看護師A 病棟師長
いることに気付いた者
- 151 -
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
永久気管孔にフィルムドレッシング材を貼付した事例
当事者の認識
Ⅲ
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
(2)事例の内容
入浴時、永久気管孔にフィルムドレッシング材を貼付した事例2件を図表Ⅲ - 2- 35に示す。
図表Ⅲ - 2- 35 事例の内容
事例
1
事故の内容
事故の背景要因
改善策
9:50頃患者の入浴準備を行った。看護 患者は当院の外来に通院してお ・ 入院時の情報収集を行う際に、カン
師Bは患者の頚部に大きな瘻孔があるた り、主治医は永久気管孔につい ファレンスを用いて情報を周知する。
め、どのように対応したらよいか同じ入浴 て把握していた。入院時の入浴 更に入院時カンファレンスや掲示板
係担当の看護師Aや患者の受け持ち看護 に 関 す る 指 示 は「 介 助 入 浴 可 」 等を使い、情報共有を図りリスクに対
師 D に相談をした。看護師Dは、患者の状 であり、具体的な内容ではなかっ する対応策については、周知徹底して
況から移乗が難しいためストレッチャーに た。入院担当看護師は、キーパー いく。
よるシャワー浴を提案したが、この時、看 ソンの妻から、患者の情報収集 ・ 自宅からの入院時は、キーパーソンや
護師Dは永久気管孔の情報収集をしていな を行ったが、十分ではなかった。 主な介護者から、患者の病態やリスク
かった。入浴担当者同士で検討し、シャ その後、医師から患者の永久気 的観点からの意図的な情報収集を行
ワー浴では4cm大の頚部の瘻孔よりお湯 管孔について説明を受け、看護 う。また、日常生活動作の介助方法の
が入ってしまうため、ガーゼとフィルムド プ ロ フ ァ イ ル の「 活 動 / 休 息 」 具体的な内容を確認し、看護計画に活
レッシング材での保護がよいのではないか 欄に、「永久気管孔のため、口・ かせるように情報を活用する。
と判断し、看護師Bが実施した。その際、 鼻呼吸ができない」と記載した。・ 患者の電子カルテを開いた時に、最初
ガーゼで頚部の瘻孔を保護し、フィルムド 受け持ち看護師Dは、患者の頚 に表示される掲示板へ「永久気管孔を
レッシング材でガーゼを覆った。患者に呼 部に白いエプロン様のガーゼが 造設」と記載した。
吸が苦しくないか確認すると「苦しくない」 かかっていることは知っていた ・ 病棟では経験のない疾患の患者が入
と口の動きで確認した。この時、フィルム が、永久気管孔であることは認 院・転棟してきた場合は、病棟内で疾
ドレッシング材で覆ったが、たまたま気管 識していなかった。受け持ち看 患への注意点を周知できるようなカ
孔の上部が完全に塞がれていなかった。看 護師Dは看護計画において、患 ンファレンスの運営をリーダーが行
護師Bは他の患者の対応へ向かい、看護師 者の状況から「移乗能力の障害」 えるようにする。また、意識的に情報
Cがシャワー浴を担当した。看護師Cは頚 を立案したが、永久気管孔に関 共有や情報発信ができるようなリー
部の瘻孔に貼ったフィルムドレッシング材 する看護計画は立案しなかった ダーの育成を行えるように日々の業
が少しはがれていることを確認し、上部が た め、 看 護 師 間 で、 永 久 気 管 務内で指導する。スタッフ間でも日頃
空いていると湯が入ると思いフィルムド 孔が造設されていることについ から発問できる風土作りが必要であ
レッシング材で更に上部を塞いだ。そのま て事前に情報共有が行えていな る。
ま、看護師Cはシャワー浴を開始した。1 かった。看護師A∼Dは、初め ・ 助言する際には、どのような意図での
分もしないうちに患者の全身色が不良とな て患者の永久気管孔を見た。患 発言か内容を理解できたか確認を行
り、患者は意識消失した。看護師Cは異変 者の病態生理についての理解が う。助言を受けた場合は曖昧にせず、
に気づき、患者に何度も呼びかけた。他患 不足していた。初めて見ること 自分の考えが正しいのか確認を行う。
者の入浴介助中であった看護師Aは、その や聞くことについての不安や心 ・ 入院後の追加情報は、共有できるよう
様子から異変に気づき患者に近づいた。患 配についての確認行動が不足し に記録へ記載する。必要な看護ケアに
者は呼名に反応なく、脈は触れたが呼吸は ていた。
ついては看護計画へ具体的な計画の
なかった。フィルムドレッシング材をはが
立案を行う。
すと呼吸開始し、徐々に全身色が良好に戻
・ 入浴介助で初めて対応する患者もい
り、意識が回復した。
るため注意事項について、当日の受
け持ち看護師は入浴係へ情報を伝え
ることや、入浴表の活用を行い、情
報共有を行う。入浴表には、当日の
受け持ち看護師が患者状態を記載し、
入浴担当者と情報交換し、特に伝えた
い情報については、入浴表の注意点の
欄に情報を記載する。
・ 入浴表の定位置は浴室とし、患者毎に
確認してから入浴を実施する。
・ 「入浴」のマニュアルに永久気管孔が
ある患者の注意点として、「永久気管
孔を塞がないようにタオルで土手を
作り、永久気管孔が見える状態にし
て実施する」、
「永久気管孔へのお湯の
流入を避けるため浴槽には入れない」
を追記した。
- 152 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
事例
事故の内容
事故の背景要因
改善策
- 153 -
Ⅲ
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
永久気管孔にフィルムドレッシング材を貼付した事例
入院後1回目の入浴を行った担当者は、患 1) 医師・看護師の入院時の指示 ・ 医師の指示の明確化:入院時、主治医
事項に対する意識の薄れ:主 が基本指示項目(安静度、食事、入浴、
者は口では呼吸ができないと判断し、瘻孔
治医は、患者の病態や永久気 症状出現時の対応、持参薬の継続)を
に水が入らないよう、また瘻孔部を塞がず
管孔について問題視していな 決め、指示する。
見えるように、気管孔の周囲にタオルを置
かったため、看護師への指示 ・ 医師による患者理解のための入院時
いて実施した。
をしなかった。患者は1ヶ月 カンファレンスの確立:患者の医学
入院後2回目の入浴担当の介護福祉士は、
前に脳出血を発症したばかり 的な疾病を理解したうえで看護ケア
浴槽へ患者を移送するため、ベッドからス
で、転院前、入浴は行ってい が行えるように、医師主導のカンファ
トレッチャーに移すのを手伝って欲しいと
なかったが、バイタルサイン レンスを行う。
看護師(2年目)に病室で声をかけた。さ
の確認のみで看護師が入浴可 ・ 看護上の情報共有の仕方・ルールの確
らに頚部にある瘻孔の処置についても看護
と判断した。
立(マニュアルの整備):入院から退
師に依頼した。看護師は電子カルテから
情報を得ずワークシートのみ確認し、永 2) 教育の不足による永久気管孔 院までの受け持ち看護師制を導入し、
と気管切開チューブ抜去後の 入院前から診療情報提供書や地域連
久気管孔を気管切開チューブ抜去後の瘻孔
瘻孔の違いに対する知識の欠 携室から情報を得て、入院準備を行
だと思いフィルムドレッシング材を貼り保
如:当該病棟はリハビリテー い、入院当日は担当する。また、当日
護した。その際、患者の表情と胸の動きを
ションを目的とする病棟であ 受け持った看護師はワークシートに
確認し、異常がなかったため、そのまま浴
り、人工呼吸器を装着した患 記載されている情報を把握し、追加情
室を出た。介護福祉士はストレッチャーを
者 は 多 く 入 院 し て い る も の 報を入手した場合は更新することに
廊下に出し、1人で患者の寝衣を脱がせた
の、永久気管孔を造設した患 責任を持つ。
(この時、瘻孔にフィルムドレッシング材が
者はあまりいなかった。その ・ 新人および経験の浅い看護師に対する
貼られているのを確認)。介護福祉士は患者
ため、院内の看護手順書に、 業務配分のルールの確立:入院受け
の頭髪・身体を洗い、その後、患者を浴槽
永久気管孔について説明はな 入れ担当は病棟師長が選定する。リー
に入れるため、ベルトを装着し頭側と足側
く、「入浴時、気管切開孔は ダー業務の看護師は、新人および経験
をギャッジアップし、患者を浴槽に入れた。
フィルムドレッシング材を貼 の浅い看護師の相談役となり、業務実
フィルムドレッシング材を貼付してから
る」と記載されており、他の 践に気を配る。
13分後、介護福祉士は患者の顔色不良に
看護師でも同様の事故を起こ ・ 院長による今回の事故についてのカン
気が付き、足元のボタン操作を行い浴槽か
す可能性があった。
ファレンス:今回の事故の内容、呼吸
ら上げた。介護福祉士はジェット浴槽から
入浴用ストレッチャーへ患者を移し、ベッ 3) 危険予測と情報共有の不足: に関連した治療方法と管理方法につ
患者の入院を担当した看護師 いて、全職員対象にカンファレンスを
2 ドを水平にした。看護助手に患者を見てい
は 1 年 目 の 新 人 で あ っ た た 行う。
るように伝え、看護師を呼ぶため浴室を出
め、その際、病棟師長は患者 ・ 定期的な研修会:医学的に深く理解し
た。フロアに看護師がいたので、患者の急
の永久気管孔について説明し た方が良いものや、より広く他の病
変を知らせ、看護師と浴室に戻った。患者
た。 基 本 情 報 の 既 往 歴 の 欄 棟の看護師・介護士・リハビリスタッ
は全身チアノーゼ状態で、介護福祉士はさ
に「喉頭癌術後(永久気管孔 フが理解した方が良いケースを医師
らに応援を呼びに浴室を出たところ、病棟
造設)
」と記載した。看護師 や看護師が選出し、1ヶ月に1回程度
師長が通りかかり、すぐに永久気管孔に貼
は必要な情報を電子カルテで 講義を行う。
付されていたフィルムドレッシング材を剥
はなく、ワークシート(受け
がした。心肺蘇生を開始し、医師に連絡し
持ち患者の情報と業務内容が
た。
簡略化され記載)で情報を確
認することが習慣になってい
た。しかし、情報の内容や入
力の基準は明確になっておら
ず、ワークシートに全ての情
報が記載されていなかった。
4) 処置中心の看護:ワークシー
トを確認すると、患者の疾患
や症状などの情報よりも、処
置を行うことに意識が向いて
いることが読み取れた。
5) 新人や経験の浅い看護師への
業務に対する配慮と看護実践
の確認の不足:当時入院して
いた患者は38名であり、勤
務していた看護師は4名で
あった。看護師(2年目)は、
新人看護師の指導役を担いな
がら業務を行っていた。
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
(3)事例の背景・要因
事例の背景・要因について、事例が発生した医療機関から報告された内容から、①永久気管孔に関
する情報収集と情報共有、②患者のケアに関する指示や看護計画に分けてまとめた。
①永久気管孔に関する情報収集と情報共有について
事例1では、入院担当看護師は、家族から十分な情報収集を行うことが出来ていなかったが、
医師から患者が永久気管孔を造設しているという情報を得て、看護プロファイルに入力している。
しかし、受け持ち看護師Dは、患者が永久気管孔を造設していることを認識していなかった。シャ
ワー浴に関わった看護師A∼Cは永久気管孔を見たことがなく、気管切開後の瘻孔であると認識し
た。
事例2では、患者の入院を受け持った看護師が新人であり、病棟師長が患者の永久気管孔につ
いて説明していることから、患者が永久気管孔を造設している事実を把握し、電子カルテの基本情
報の既往歴の欄に「喉頭癌術後(永久気管孔造設)
」と記載している。しかし、通常情報を得るた
めに使用されていることが多いワークシートにその情報は反映されていなかったことから、他の
スタッフにその情報を共有できていなかった。また、入院後1回目の入浴を行った看護師は、患者
は口では呼吸ができないと判断し、永久気管孔の周囲にタオルを置いて入浴を実施しているが、そ
の判断についても共有できていなかったと推測される。
このように、2事例ともに患者が永久気管孔を造設していることの情報を得ているにもかかわら
ず、情報の共有ができず、患者にとって重要な事項として扱われていない。永久気管孔は、冒頭で
説明したとおり、頚部の皮膚に気管が縫合されており、気管切開とは気道の構造が大きく異なる。
患者に永久気管孔があるのか、それとも気管切開チューブ抜去後の瘻孔なのか情報を収集して、患
者の気道の状態を理解することが重要である。また、患者の生命にかかわる重要な情報については、
スタッフ全員が共有できる媒体やツールの活用や、カンファレンスなどを利用した情報共有の必要
性が示唆された。
②患者のケアに関する指示や看護計画について
事例1については、患者は以前より外来通院しており、医師は患者が永久気管孔を造設している
ことを把握したうえで、入院時に「介助入浴可」の指示を出している。しかし、受け持ち看護師は、
患者の永久気管孔に関する看護計画は立てていなかった。そのため、シャワー浴直前に永久気管孔
があることを知らない入浴担当者間で検討し、フィルムドレッシング材の貼付を決めている。
事例2では、主治医が永久気管孔について問題視しておらず、入浴などに関する指示を出してい
ない。入院時に受け持った看護師は、永久気管孔の情報を得ているが、具体的なケアの看護計画を
立案していなかった。また、看護師がバイタルサインの確認のみで入浴可能であると判断しており、
入院翌日から入浴を行っている。
患者の入院の目的は治療であるが、患者の入院生活(保清、食事など)を支えることも重要である。
患者の安全・安楽を考えた日常生活の援助が提供できるよう、医師は患者に関する情報提供や注意
すべき具体的な指示を行い、看護師は患者の状態に合った看護計画を立案する必要がある。
- 154 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
(4)事例が発生した医療機関の改善策について
事例が発生した医療機関の主な改善策を以下に示す。
○情報収集について
・ 自宅からの入院時は、キーパーソンや主な介護者から、患者の病態やリスク的観点からの意図
的な情報収集を行う。
○情報共有について
・患者の電子カルテを開いた時に、最初に表示される掲示板に「永久気管孔を造設」と記載した。
・入院後の追加情報は、共有できるように記録へ記載する。
・ 当日受け持った看護師はワークシートに記載されている情報を把握し、追加情報を入手した場
合は更新することに責任を持つ。
・ 初めて入浴介助を行う場合もあるため、受け持ち看護師は入浴係へ当日の情報や注意事項を伝
える。また、入浴表を活用し、情報共有を行う。
Ⅲ
・ 入浴表には、当日の受け持ち看護師が患者の状態を記載し、入浴担当者と情報交換し、特に伝
えたい情報については、入浴表の注意点の欄に情報を記載する。入浴表の定位置は浴室とし、
患者毎に確認してから入浴を実施する。
・ 意識的に情報共有や情報発信ができるリーダーの育成を行えるように日々の業務内で指導する。
・ 病棟では経験のない疾患の患者が入院・転棟してきた場合は、病棟内で疾患への注意点を周知
できるようなカンファレンスの運営をリーダーが行えるようにする。
・ 看護師が患者の医学的な疾病を理解したうえで看護ケアが行えるように、医師による患者理解
のための入院時カンファレンスを行う。
・ 入院時カンファレンスや掲示板等を使い情報共有を図り、リスクに対する対応策については、
周知徹底していく。
・ 今回の事例の内容や、呼吸に関連した治療方法と管理方法について、全職員対象にカンファレ
ンスを行う。
○医師指示について
・ 入院時、主治医が基本指示項目(安静度、食事、入浴、症状出現時の対応、持参薬の継続)を決め、
指示を出す。
○看護計画の立案について
・日常生活動作の介助方法の具体的な内容を確認し、看護計画に活かせるように情報を活用する。
・必要な看護ケアについては、看護計画へ具体的な計画の立案を行う。
○看護体制について
・ 患者の入院から退院まで受け持ち制を導入し、入院前から診療情報提供書や地域連携室から情
報を得て入院準備を行い、入院当日は受け持ち看護師が担当する。
- 155 -
永久気管孔にフィルムドレッシング材を貼付した事例
○患者の状態の理解について
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
○マニュアルへの追加について
・ 「入浴」のマニュアルに永久気管孔がある患者の注意点として、
「永久気管孔を塞がないように
タオルで土手を作り、永久気管孔が見える状態にして実施する」
、「永久気管孔へのお湯の流入
を避けるため、浴槽には入れない」を追記した。
(5)まとめ
本報告書分析対象期間に、患者が永久気管孔を造設しているという認識がなく、気管切開後の瘻孔
だと思いフィルムドレッシング材を貼付したことにより、患者の呼吸状態に影響を及ぼした事例が報
告された。本事業に報告された事例は2件であるが、患者への影響度、教訓性といった観点から本報
告書で取り上げた。
本報告書では、事例2件を掲載し、事例の概要を整理するとともに、医療機関から報告された背景・
要因や改善策をまとめた。いずれも、入浴担当者が患者に永久気管孔があることを知らないままシャ
ワー浴などを行った事例であった。したがって、入院時に患者の情報収集を行い、その情報を医療ス
タッフ間で共有し、患者の状態を理解したうえで看護ケアを行うことが重要である。また、永久気管
孔を造設している患者が存在することや、永久気管孔を塞ぐことが生命にかかわる影響を与える可能
性があることを認識する必要がある。
また、本分析において、医療安全の推進のため、永久気管孔の写真をご提供いただいた医療機関の
ご厚意に感謝申し上げる。
同種事例の発生予防のため、本報告書を院内での教育や手順の見直し等の参考にしていただきたい。
- 156 -
3 再発・類似事例の発生状況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
3 再発・類似事例の発生状況
本事業では、第3∼17回報告書において「共有すべき医療事故情報」として、医療事故事例を分
析班等で個別に検討し、広く共有すべきであると考えられた事例の概要を公表してきた。また、第1回
∼本報告書において「個別のテーマの検討状況」として、分析対象となるテーマを設定し、そのテーマ
に関連する事例をまとめて分析、検討を行っている。
さらに、これまでに「共有すべき医療事故情報」や「個別のテーマの検討状況」として取り上げた
事例の中から、特に周知すべき情報を提供するため「医療安全情報」を公表している。
ここでは、
「共有すべき医療事故情報」
、「個別のテーマの検討状況」や「医療安全情報」として取
り上げた内容の再発・類似事例の発生状況について取りまとめた。
【1】 概況
これまでに取り上げた「共有すべき医療事故情報」の再発・類似事例の件数について図表Ⅲ - 3- 1、
Ⅲ
「個別のテーマの検討状況」の再発・類似事例の件数について図表Ⅲ - 3- 2にまとめた。
本報告書分析対象期間に報告された「共有すべき医療事故情報」の再発・類似事例の内容は19で
あり、事例数は50件であった。このうち、類似事例が複数報告されたものは、「熱傷に関する事例
(療養上の世話以外)」が8件、「薬剤の注入経路を誤って投与した事例」が6件、「左右を取り違えた
事例」、「ベッドからベッドへの患者移動に関連した事例」、「ベッドのサイドレールや手すりに関連
した事例」がそれぞれ4件、
「『療養上の世話』において熱傷をきたした事例」
、「小児への薬剤倍量
間違いの事例」、「眼内レンズに関連した事例」、「食物アレルギーに関連した事例」がそれぞれ3件、
また、本報告書分析対象期間に報告された「個別のテーマの検討状況」の再発・類似事例のテーマ
は14であり、事例数は31件であった。このうち類似事例が複数報告されたものは、
「凝固機能の
管理にワーファリンカリウムを使用していた患者の梗塞及び出血の事例」、「胃管の誤挿入に関連した
事例」がそれぞれ6件、
「内視鏡の洗浄・消毒に関連した事例」が3件、
「皮下用ポート及びカテーテ
ルの断裂に関連した医療事故」、「薬剤内服の際、誤ってPTP包装を飲んだ事例」、「膀胱留置カテー
テル挿入の際、尿流出を確認せずにバルーンを膨らませ尿道損傷を起こした事例」、「院内での自殺及
び自殺企図に関する事例」、
「観血的医療行為前に休薬する薬剤に関連した事例」がそれぞれ2件であっ
た。
- 157 -
概況
「小児の輸液の血管外漏出」、「体内にガーゼが残存した事例」がそれぞれ2件であった。
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
図表Ⅲ - 3- 1 2016年4月から6月に報告された「共有すべき医療事故情報」の再発・類似事例
内容
件数
掲載報告書(公表年月)
薬剤の名称が類似していることにより、取り違えた事例
1
第 3 回(2005 年 10 月)
グリセリン浣腸に伴い直腸穿孔などをきたした事例
1
第 3 回(2005 年 10 月)
3
第 5 回(2006 年 6 月)
左右を取り違えた事例
4
第 8 回(2007 年 2 月)
小児の輸液の血管外漏出
2
第 8 回(2007 年 2 月)
熱傷に関する事例(療養上の世話以外)
8
第 9 回(2007 年 6 月)
MRI検査室に磁性体を持ち込んだ事例
1
第 9 回(2007 年 6 月)
小児への薬剤倍量間違いの事例
3
第 10 回(2007 年 9 月)
投与目的とは異なる場所へ輸液等を投与した事例
1
第 10 回(2007 年 9 月)
三方活栓使用時の閉塞や接続はずれ等に関する事例
1
第 11 回(2007 年 12 月)
ベッドなど患者の療養生活で使用されている用具に関連した事例
1
第 11 回(2007 年 12 月)
薬剤の注入経路を誤って投与した事例
6
第 12 回(2008 年 3 月)
アレルギーの既往がわかっている薬剤を投与した事例
1
第 12 回(2008 年 3 月)
ベッドからベッドへの患者移動に関連した事例
4
第 13 回(2008 年 6 月)
ベッドのサイドレールや手すりに関連した事例
4
第 13 回(2008 年 6 月)
体内にガーゼが残存した事例
2
第 14 回(2008 年 9 月)
病理検体に関連した事例
1
第 15 回(2008 年 12 月)
眼内レンズに関連した事例
3
第 15 回(2008 年 12 月)
食物アレルギーに関連した事例
3
第 15 回(2008 年 12 月)
「療養上の世話」において熱傷をきたした事例
図表Ⅲ - 3- 2 2016年4月から6月に報告された「個別のテーマの検討状況」の再発・類似事例
内容
件数
掲載報告書(公表年月)
凝固機能の管理にワーファリンカリウムを使用していた患者の梗塞及び
出血の事例
6
第 20 回(2010 年 3 月)
皮下用ポート及びカテーテルの断裂に関連した医療事故
2
第 21 回(2010 年 6 月)
薬剤内服の際、誤ってPTP包装を飲んだ事例
2
第 23 回(2010 年 12 月)
医療用照明器の光源により発生した熱傷に関連した医療事故
1
第 25 回(2011 年 6 月)
膀胱留置カテーテル挿入の際、尿流出を確認せずにバルーンを膨らませ
尿道損傷を起こした事例
2
第 31 回(2012 年 12 月)
はさみを使用した際、誤って患者の皮膚や医療材料等を傷つけた事例
1
第 36 回(2014 年 3 月)
気管切開チューブが皮下や縦隔へ迷入した事例
1
第 37 回(2014 年 6 月)
事務職員の業務における医療安全や情報管理に関する事例
1
第 37 回(2014 年 6 月)
後発医薬品に関する誤認から適切な薬物療法がなされなかった事例
1
第 38 回(2014 年 9 月)
内視鏡の洗浄・消毒に関連した事例
3
第 39 回(2014 年 12 月)
院内での自殺及び自殺企図に関する事例
2
第 41 回(2015 年 6 月)
与薬時の患者または薬剤の間違いに関連した事例
1
第 42 回(2015 年 9 月)
胃管の誤挿入に関連した事例
6
第 43 回(2015 年 12 月)
観血的医療行為前に休薬する薬剤に関連した事例
2
第 44 回(2016 年 3 月)
- 158 -
3 再発・類似事例の発生状況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
次に、これまでに取り上げた「医療安全情報」の再発・類似事例の件数について、図表Ⅲ - 3- 3
にまとめた。本報告書分析対象期間に報告された「医療安全情報」の再発・類似事例の内容は22で
あり、事例数は32件であった。このうち、類似事例が複数報告されたものは、
「No. 101:薬剤の
投与経路間違い」が4件、
「No. 7:小児の輸血の血管外漏出」
、「No. 37:
[スタンバイ]にした人
工呼吸器の開始忘れ」、
「No. 57:PTPシートの誤飲および No. 82:PTPシートの誤飲(第2報)」、
「No. 58:皮下用ポート及びカテーテルの断裂」
、「No. 59:電気メスペンシルの誤った取り扱いに
よる熱傷」、
「No. 69:アレルギーのある食物の提供」、
「No. 80:膀胱留置カテーテルによる尿道損傷」
がそれぞれ2件であった。
図表Ⅲ - 3- 3 2016年4月から6月に報告された「医療安全情報」の再発・類似事例
No.
提供年月
1
2007 年 2 月
No. 4 薬剤の取り違え
No. 68 薬剤の取り違え(第2報)
1
2007 年 3 月
2012 年 7 月
No. 7 小児の輸液の血管外漏出
2
2007 年 6 月
No. 8 手術部位の左右の取り違え
No. 50 手術部位の左右の取り違え(第2報)
1
2007 年 7 月
2011 年 1 月
No. 10 MRI検査室への磁性体(金属製品など)の持ち込み
No. 94 MRI検査室への磁性体(金属製品など)の持ち込み(第2報)
1
2007 年 9 月
2011 年 1 月
No. 14 間違ったカテーテル・ドレーンへの接続
1
2008 年 1 月
No. 17 湯たんぽ使用時の熱傷
1
2008 年 4 月
No. 37 [スタンバイ]にした人工呼吸器の開始忘れ
2
2009 年 12 月
No. 54 体位変換時の気管・気管切開チューブの偶発的な抜去
1
2011 年 5 月
No. 57 PTPシートの誤飲
No. 82 PTPシートの誤飲(第2報)
2
2011 年 8 月
2013 年 9 月
No. 58 皮下用ポート及びカテーテルの断裂
2
2011 年 9 月
No. 59 電気メスペンシルの誤った取り扱いによる熱傷
2
2011 年 10 月
No. 69 アレルギーのある食物の提供
2
2012 年 8 月
No. 70 手術中の光源コードの先端による熱傷
1
2012 年 9 月
No. 73 放射線検査での患者取り違え
1
2012 年 12 月
No. 75 輸液ポンプ等の流量と予定量の入力間違い
1
2013 年 2 月
No. 80 膀胱留置カテーテルによる尿道損傷
2
2013 年 7 月
No. 90 はさみによるカテーテル ・ チューブの誤った切断
1
2014 年 5 月
No. 93 腫瘍用薬のレジメンの登録間違い
1
2014 年 8 月
No.101 薬剤の投与経路間違い
4
2015 年 4 月
No.104 腫瘍用薬処方時の体重間違い
1
2015 年 7 月
No.105 三方活栓の開閉忘れ
1
2015 年 8 月
3 グリセリン浣腸実施に伴う直腸穿孔
※医療安全情報の事例件数は、共有すべき医療事故情報や、個別テーマの検討状況に計上された事例件数と重複している。
本報告書では、本報告書分析対象期間において報告された再発・類似事例のうち、医療安全情報と
して取り上げた「No. 69:アレルギーのある食物の提供」
、「No. 73:放射線検査での患者取り違え」
について事例の詳細を紹介する。
- 159 -
Ⅲ
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
概況
件数
No.
タイトル
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
【2】「アレルギーのある食物の提供」(医療安全情報 No. 69)について
(1)発生状況
第15回報告書(2008年12月公表)において、禁忌食品の配膳間違いの事例が報告され「共
有すべき医療事故情報」として取り上げた。その後、
第18回報告書(2009年9月公表)において、
該当事例が報告されたことを受け「再発・類似事例の発生状況」として事例を紹介した。
さらに、第23回報告書(2010年12月公表)∼第26回報告書(2011年9月公表)の
個別のテーマ「食事に関連した医療事故」において、該当する医療事故情報とヒヤリ・ハット事例に
ついて1年間にわたり分析した。そのうち、第25回報告書(2011年6月公表)では、食事に関
する「アレルゲンの提供・摂取」を取り上げ、患者が誤ってアレルゲンである食材を摂取した事例を
紹介した。
その後、栄養部に患者の食物アレルギーの情報が伝わっているにもかかわらず、誤ってアレルギー
のある食物を提供し、患者が摂取した事例について、医療安全情報 No. 69「アレルギーのある食物
の提供」
(2012年8月提供:集計期間2008年1月∼2012年6月)を作成し、情報を提供した。
今回、本報告書分析対象期間(2016年4月∼6月)においても医療安全情報 No. 69の類似
の事例が2件報告されたため、再び取り上げることとした。医療安全情報 No. 69の集計期間後の
2012年7月以降に報告された類似事例の報告件数を図表Ⅲ - 3- 4に示す。
図表Ⅲ - 3- 4 「アレルギーのある食物の提供」の報告件数
1∼3月
(件)
4∼6月
(件)
7∼9月
(件)
1
0
1
2013年
0
2
2
1
5
2014年
0
1
3
1
5
2015年
1
0
0
0
1
2016年
0
2
−
−
2
2012年
10∼12月
(件)
図表Ⅲ - 3- 5 医療安全情報 No. 69 「アレルギーのある食物の提供」
- 160 -
合計
(件)
3 再発・類似事例の発生状況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
(2)事例の概要
2012年7月以降に報告された事例14件について、下記の通り分類した。
①事例の分類
事例をアレルギーのある食物が混入した発生段階で分類した(図表Ⅲ - 3- 6)
。「献立作成」の
事例が7件と多く、使用する食材を誤った事例や、アレルギー情報を見落としメニューの選択を誤っ
た事例などであった。次いで、
「調理」の事例が3件であり、調理中に手袋に付着した胡瓜が混入
した事例などであった。「トレイに載せる」の事例では、アレルギーに対応した代替食が用意され
ていたにもかかわらず、トレイに食事を載せる際に誤って通常の食事を載せた事例などであった。
図表Ⅲ - 3- 6 事例の分類
発生段階
件数
献立作成
7
食札作成
1
調理
Ⅲ
3
※
トレイに載せる
2
その他
1
合 計
14
※ 「トレイに載せる」は、指示された食種、アレルギー及び禁止食材など、食札に
記載された情報を基に、主食や副食などをトレイにセットすることである。
患者の年齢は、
0∼9歳が6件、
10代が4件と比較的若い年代の事例が多かった(図表Ⅲ - 3- 7)
。
図表Ⅲ - 3- 7 患者の年齢
年代
件数
0∼9歳
6
10代
4
40代
1
50代
2
70代
1
合 計
14
﹁アレルギーのある食物の提供﹂︵医療安全情報№ ︶について
②患者の年齢
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
69
- 161 -
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
③主なアレルギー症状
事例の内容から、アレルギーのある食物を摂取したことにより患者に現れたアレルギー症状をま
とめた(図表Ⅲ - 3- 8)
。アナフィラキシーショックが5件のほか、
蕁麻疹などの皮膚・粘膜症状や、
下痢などの消化器症状などが出現している。
図表Ⅲ - 3- 8 主なアレルギー症状
主なアレルギー症状
アナフィラキシーショック
皮膚・粘膜症状
消化器症状
呼吸器症状
件数
5
蕁麻疹
4
発赤疹(胸部、顔)
2
皮膚の違和感
1
口腔内の掻痒感
1
口唇に膨疹
1
下痢
3
腹痛
1
胃部不快
1
嘔吐
1
咳嗽
2
呼吸困難
2
軽度の喘鳴
1
なし
1
※1事例に複数の症状が報告されている。
④当事者職種
事例14件の当事者職種をまとめた(図表Ⅲ - 3- 9)。本分析は、栄養部に患者の食物アレルギー
の情報が伝わっているにもかかわらず、誤ってアレルギーのある食物を摂取した事例が対象のため、
当事者職種は、調理者・調理従事者、栄養士、管理栄養士など栄養部に従事している職種が多かった。
図表Ⅲ - 3- 9 当事者職種
当事者
件数
調理師・調理従事者
13
栄養士
10
管理栄養士
3
看護師
3
※当事者職種は、複数回答が可能である。
- 162 -
3 再発・類似事例の発生状況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
(3)事例の内容
医療安全情報 No. 69の主な再発・類似事例を図表Ⅲ - 3- 10に示す。
図表Ⅲ - 3- 10 事例の内容
No.
事故の内容
事故の背景要因
改善策
献立作成
患者は治療による食思不振と多項目の 担当栄養士は患者が卵アレルギーであること
食物アレルギー保有のため特別献立に を認識していた。栄養剤を選択する際、食事
て対応していた。保有する食物アレル 箋規約内の各栄養剤のアレルギー表記の部分
ギーは「卵、そば、ピーナッツ、マグロ」 を見て、全ての栄養剤に卵が含まれていない
であった。事故前日に、主治医より担 ことを確認したうえで、サンケンラクトを提
当栄養士に、
「経口摂取が不良となっ 供した。しかし、実際には食事箋規約の栄養
ており炭水化物に偏っているので、た 剤のリストの中に「サンケンラクト」は入っ
んぱく質を強化出来る栄養剤の使用を ておらず、アレルギー表記の確認の際に、ア
検討している」と相談があり、翌日よ レルギー項目と各栄養剤の名前を付き合わせ
り栄養剤を付帯することになった。複 て見ることが出来ていなかった。担当栄養士
数の栄養剤を試し、どの栄養剤が飲め はサンケンラクトも食事箋規約に入っている
るか確認してみることになった。当日 と思い込んでいたため、サンケンラクトを患
の昼食にテルミールコーンとサンケン 者の特別献立内に入力した。配膳点検の際に
ラクト(粉末、ストロベリー味)を配 も栄養士によるアレルギーのチェックがあっ
2
膳した。配膳後、母にサンケンラクト たが、見落とした。院内には栄養管理委員会
はおやつの牛乳に混ぜて飲むことを提 があり、1 回/月開催している。栄養剤につ
案した。4時半頃にサンケンラクトを いては、栄養管理委員会で承認を得たうえで
溶かした牛乳を喫食後、腹痛の訴えが 採用している。
あり喫食を中止した。その後、全身に
蕁麻疹が出現し、下痢、嘔吐を認めた
ため、医師は抗アレルギー薬の点滴を
開始した。担当栄養士は、発症直後に
栄養剤の相談のため訪床した際、アレ
ルギー様症状がでていると看護師より
報告受け、すぐに栄養剤の原材料の確
認を行った。提供したサンケンラク
トに卵白粉末が入っていたことが分か
り、主治医に報告した。
- 163 -
・ 栄養剤のアレルギーを確認する
際には、必ず栄養剤の名前とア
レルギー項目、原材料名を照合
して確認する。
・ アレルギー対応が必要な特別献
立 を 作 成 し た 際、 必 ず ダ ブ ル
チェックを行う。
・ 新たに栄養剤の使用を始めると
きには、事前に医師や看護師に
原材料情報を含む栄養剤の情報
を提供し、医師に確認をしても
らう。
・ サンケンラクトの個包装には原
材料やアレルギー情報の表記が
ないため、製造業者にはそれら
の表記の依頼をする。
・ 食事箋規約の栄養剤やその他特
殊食品栄養組成表に、院内採用
品すべてを記載する。
Ⅲ
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
﹁アレルギーのある食物の提供﹂︵医療安全情報№ ︶について
症候性てんかん、代謝性脳症の患者は、 禁止項目のチェックや読み上げ方法が統一さ ・ アレルギーと嗜好の献立は別に
「乳製品、納豆、豚肉、魚、海老、かに」 れていなかった。食札の確認が不十分であっ 分け、献立を立てやすくする。
と禁止項目が複数あった。調理従事者 た。複数の禁止項目を一度で読み上げたため、・ 帳票を拡大する、食材が分かる
献立名にする等、アレルギーの
が行う食材チェックの際、
「海老、かに」 細かい確認が行えなかった。
多い食材は明確にする。
の情報を見落とし献立表への転記を行
・ 献立の確認はアレルギー食から
わなかった。病院栄養士は、味噌汁と
開始し優先順位をつけてチェッ
きのこあんの鰹だしの変更に気をとら
クする。
れ、きのこあんに海老が使用されてい
・ 各々が所有する帳票にチェック
ることに気付かなかった。調理師の検
済みの印をつけ、途中で業務が
品では、食札と食事の照合を行ったが、
中断してもチェック漏れがわか
食札の「海老、かに」アレルギーの表
るようにする。
1 記を見落とした。結果、患者に海老入
・ 栄養士は献立表で、調理師は食
りの食事が提供され、2 ∼ 3 口摂取し
札で見るよう、提供前のチェッ
た時点で、皮膚の違和感・全身の発疹
クを分業する。
が出現した。
・ 統一したダブルチェック方法を
毎朝、朝礼で二人ずつ実践し身
に付ける(朝食の早出職員は調
理前、夕食のパート職員には夕
食の盛り付け前)。
・ 異なる勤務体制の職員全員に対
して、正しい方法を周知し、継
続させる教育体制を整える。
69
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
No.
事故の内容
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
事故の背景要因
改善策
患者には「卵、乳製品、魚、キウイ、 アレルギー患者の入院時から個別献立を作成 ・ 栄養士が献立を作成した後、調
ごま」のアレルギーがあった。付添い (5日分)、別の栄養士が個別献立を確認(5 理師に献立を渡す前に再度調理
の母親より、朝食のおかずを食べたと 日分をダブルチェック)、献立の不備があれ 指示書を栄養士が確認する。
ころ患者の口唇に膨疹があると聞い ば差し戻して献立を作成している。今回は、・ 調理師がアレルギー患者と禁止
た。確認すると、ポテト煮の中に禁止 差し戻し後の確認(トリプルチェック)を実 食 材 を 一 目 で 把 握 で き る よ う
食材の魚(鮭)が入っており、一口食 施したにもかかわらず朝食の鮭を見落として に、調理室の所定場所に名簿を
べて吐き出していた。看護師から電話 いた。前日の16:00に翌日の朝食分の「調 掲示する。
連絡を受け、すぐに小児科医師が診察 理指示書」を出力し、当日の5:00に調理 ・ 調理師が調理した後、温冷配膳
した。その後、栄養士が来棟し、アレ 師は、この「調理指示書」に基づいて調理を 車に入れ込む前に再度チェック
ルギー食の対応、献立作成から食事 開始する。その際、魚の出汁を除くことになっ を行う。
提供までの流れについて家族に説明し ていたため献立に鮭が入っていることに少し ・ 患者家族に献立表を事前に渡し、
3 た。今回の原因は、献立の見落としで、 疑問を持ったが、献立通りに調理した。朝食 家族もアレルギー食材が入って
禁止食材を除外していなかったためで だったので、栄養士が不在で聞くことができ い な い か 確 認 に 参 加 し て も ら
あることを説明した。
なかった。調理後、食事提供までに最終確認 う。
を行う体制にはなっていなかった。電子カル ・ 長期的な対策として、電子カル
テの「患者プロファイル」画面の食物アレル テの患者プロファイルと食事コ
ギーが入力されていたが、栄養部では、
「食 メントの連動や、部門システム
物選択画面」をクリックしないと、食物アレ の機能を改善(アレルギーのコ
ルギーの情報を見ることができない。
メントと使用食材のチェック機
能)することを検討する(チェッ
ク機能のためには、すべての食
材マスタにアレルギー情報を入
力する必要がある)。
調理
以前、スイカ、胡瓜、瓜にてアナフィ 提供予定のエネルギーコントロール食に「胡 ・ 食物アレルギーについて、原因
ラキシーショックがあり、
「瓜類禁止」 瓜の和え物」のメニューがあり、「瓜類禁止」 食物の摂取後、身体にとって不
の禁止コメントが入力されていた。今 のコメントに該当するため、献立変更の必要 利益な症状や命にかかわること
回、胡瓜が入ったサラダを提供しアナ があり、夕食の調理時に委託職員(食札担当) もあるため、病院食の重要性と
フィラキシーを起こした。
から病院管理栄養士へメニュー変更の相談が 調理工程や盛りつけにも細心の
あった。病院管理栄養士は「盛りサラダ」の 注意を払う必要があることを周
胡瓜抜きレタス倍量とトマトのメニューへ変 知徹底する。
更するように口頭で指示を出した。委託職員 ・ 禁止コメントチェック方法につ
(食札担当)は委託職員(調理担当)にその いて、形骸化している現状を認
4
旨を口頭で伝えた。委託職員(調理担当)は 識し、1件ずつ確実に確認する
ボールに入ったレタスと胡瓜が混ざったもの ことの徹底、盛り付け方法も、
をレタスのみと思い込み、トマトと一緒に盛 使用している食材が分かるよう
り付けた。食事セット完了後、委託職員(食 に盛り付けることも徹底する。
事チェック担当)2名、委託職員(禁止コメ ・ 使用できる食材がない場合、在
ントチェック担当)1名、病院管理栄養士1 庫食材から新たに調理を行える
名で、禁止食材が入っていないか目視で確認 ように指示を出す。
したが、見過ごしてしまった。その後、患者
に配膳された。
- 164 -
3 再発・類似事例の発生状況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
No.
事故の内容
「瓜、なす、西瓜、南瓜、パイナップ
ル」禁止食の患者の昼食副菜に、胡瓜
が混入したもずく酢が準備され配膳さ
れた。配膳前に管理栄養士と病棟看護
師が禁止食材の混入がないか目視で確
認しているが、胡瓜は確認できなかっ
た。患者は、もずく酢の汁を摂取する
と違和感があり、食器内をさがすと胡
瓜の破片(3mm×10mm大)が
出てきた。車椅子でナースステーショ
ンに来て、
「味が変で息が苦しい」と
訴える。咳嗽・呼吸困難(SpO 2:
88∼98%)と胸部発赤疹が出現し
5 た。
事故の背景要因
改善策
調理師は、別のアレルギーのある食材の調理・ ・ 調理担当者がアレルギーのある
盛り付け作業をしたあと、手袋着用のまま流 食材を取り扱う際に、食材ごと
水で手袋を洗い、その後、患者のもずくを錦 で手袋を廃棄し新しい手袋に替
糸卵と和えた。その際、手袋に少量の胡瓜が えて次の作業にかかる。
付着したままとなり、酢の物に混入したと考 ・ 管理栄養士は、トレイに配膳さ
えられる。アレルギーのある食材の調理・盛 れた料理を目視すると共に、調
り付け作業の時に、手袋を交換しなかった。 理担当者に献立の内容確認及び
手袋交換を行うのは、油による汚れなどを重 食材ごとに手袋を交換したか確
視していた。
認する。また、手袋を替えた形
跡がない場合は調理済食材を廃
棄し作り直す。
・ 献立の内容確認は、指差し声出
し確認をする。
・ アレルギーのある食材を誤配膳
し、患者が食べた場合、呼吸困
難となり生命の危険も十分ある
ことを、栄養管理室職員全員に
説明する。
・ 毎月初旬に医療安全推進担当者
が、対策の実行を確認し、評価
カンファレンスを開催する。
・ アレルギーによる禁止食材か嗜好
による禁止食材か食事オーダー
だけではわからない場合があるた
め、病棟と情報交換を行ったり、
患者からの聞き取りを行い、正し
い情報を得るようにする。
トレイに載せる
- 165 -
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
﹁アレルギーのある食物の提供﹂︵医療安全情報№ ︶について
患者は、入院時に「牛肉、豚肉」に 特別食コーナー(糖尿・腎臓・潰瘍・流動)・ 調理師は、ダブルチェックの担
てアレルギーがあることを自己申告 で調理・配膳を行う調理師は、それぞれ1人 当者を明確にし、配膳終了段階
し、食事は、
「牛肉・豚肉禁止、糖尿 で調理・配膳を担当している。食札は管理栄 でダブルチェックを行った後、
食1600カロリー」と指示されてい 養士が準備し、
「牛肉、豚肉禁止」表示は朱 配膳車への搬入を開始し、配膳
た。当日は夕食の献立がミートローフ 書で印字される。メニューがアレルギー対応 車搬入の際にも食事と食札内容
であり、肉禁止の代替食として「魚の 食の場合、変更したメニュー内容がさらに朱 に相違がないか確認することを
味噌焼き」が提供されることになった。 書表示される。栄養士は、準備する調理師や、 手順として取り決め、確認を徹
食札に患者氏名と共に、
「牛肉、豚肉 摂取する患者に意識してもらうために、朱書 底する(医療安全管理部が給食
禁止」の文字と、
代替食メニューの「魚 のメニュー表示をさらに赤鉛筆で丸をつけて 部で勉強会を開催し、指差し呼
の味噌焼き」が朱書で表示されていた。 いる。配膳車への搬入の際には、調理師複数 称、ダブルチェックの効果と重
しかし、給食部で糖尿食を担当する調 人で再度確認を行うようにと声かけしていた 要性について調理師へ説明・指
理師が、お膳に食事を準備する際、メ が、確認方法についての指導はできておらず、 導を実施した)。
ニュー表示を意識せず、通常メニュー ダブルチェックは徹底されていなかった。調 ・ アレルギー対応食であることが
のミートローフを載せた。他病棟で同 理師は、食札の赤丸表示を目視して準備した 一目でわかるよう、蓋の色を区
じ糖尿食1600カロリーを摂取して つもりであったが、食札と食事内容を照らし 別しやすいものに改善し、患者
いる患者が、
「食札のメニューはミー 合わせながらの確認はしておらず、また、他 にも食事内容に間違いないこと
6
トローフになっているのに魚がきてい 者と確認し合うという意識、習慣がなかった。 を確認してもらう。
る」と申し出があり、肉アレルギー患 病棟で看護師が配膳した際、食札の患者氏名
者にミートローフを誤配膳したことが と共に禁忌表示を見たが、食器には半透明の
わかった。当該患者は、ミートローフ 蓋が被さっており、食事内容は目視できな
を魚肉製品と思い込み、全量摂取して かった。患者は、以前より何度かアレルギー
いた。その約 4 時間後に下痢症状と 反応を繰り返し、牛・豚肉アレルギーの自覚
蕁麻疹が出現した。その後、血圧低下、 はあり、入院時にも申し入れ、食札に「牛肉、
意識レベル低下となり、ボスミン筋注、 豚肉禁止」と表示がされていたため、メニュー
ポララミン、ソルコーテフ点滴により の「魚の味噌焼き」表示には注意は向かず、
症状は改善した。
配膳されたミートローフを魚肉製品と思い込
み、全量摂取した。アレルギー対応食を誤っ
て配膳された他病棟の患者からの問い合わせ
があったため、当該患者への禁忌食材の誤配
膳・誤摂取が早い段階で発覚し、食事摂取直
後より経過観察できていたため、症状出現時
に速やかに対応することができた。
Ⅲ
69
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
(4)事例の分析
①誤って提供した食事
事例14件について、患者のアレルギー情報と誤って提供した食事の内容をまとめた(図表
Ⅲ - 3- 11)。乳・牛乳・乳製品のアレルギーが多く、次いで卵や胡瓜であった。また、アレルギー
の原因となる食材が複数ある患者が多かった。
クルミが提供された患者から「これはクルミでは?」と指摘されていた事例があり、目視での確
認が可能である場合もあった。胡瓜、鮭、海老が使われた食事についても、目視で材料の混入を確
認できたと推測される。また「ミートローフ」という献立名から肉が入っていると推測できる食事
もあった。その他のアレルギーのある食材については、食事または加工品の中に混入しており、目
視による確認は難しい。
図表Ⅲ - 3- 11 誤って提供した食事
誤って提供した食事
登録されていたアレルギー情報
内容
アレルギーの
原因となった
食材
目視 で 形 が 確 認 で
きた、または可能性
があった食材
鶏卵、乳
桃シャーベット
牛乳
ミルクアレルギー用調製乳
に普通ミルクが混入
牛乳
牛乳・乳製品
牛乳を使用した食パン
牛乳
乳製品
乳製品乳酸菌飲料
卵
ハム
卵
卵、そば、ピーナッツ、マグロ
卵白粉末の入った栄養剤
卵
瓜、なす、西瓜、南瓜、パイナップル
胡瓜入りもずく酢
胡瓜
○
スイカ、胡瓜、瓜
胡瓜が入ったサラダ
胡瓜
○
卵、乳製品、魚、キウイ、ごま
鮭入りポテト煮
鮭
○
乳製品、納豆、豚肉、魚、海老、かに
海老入りきのこ餡かけ
海老
○
クルミ、いくら、キウイ
クルミ入りの副食
クルミ
○
牛肉、豚肉
ミートローフ
香辛料(胡椒含む)
ハンバーグ
卵・卵製品、牛乳・牛乳製品、コンソメ、
麩入りすき焼き
小麦粉
乳
乳製品
肉
胡椒
小麦粉
②発生段階と内容
誤った場面とその内容を図表Ⅲ - 3- 12にまとめた。
発生段階として多かった「献立作成」の事例は、アレルギーの原因となる食材の情報を見落とし
て献立を作成した事例が多かった。「調理」の事例は、調理の過程でアレルギーの原因となる食材
が混入したことに気付かずに調理を行った事例であった。「トレイに載せる」の事例は、食札にア
レルギーの情報があったが見落とし、誤った食事をトレイに載せた事例であった。
栄養部より病棟に搬送された食事は、患者のアレルギー情報をもとに、配膳時に看護師がアレルギー
の原因となる食材が混入していないか確認を行っている。しかし、前述した通り、目視でわかる食
材であれば確認できるが、乳、卵、調味料や小麦などは料理または加工品に含まれてしまうと確認
は難しく、栄養部において、適切な食事を提供することが重要であることが示唆された。
- 166 -
3 再発・類似事例の発生状況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
図表Ⅲ - 3- 12 発生段階と内容
発生段階
内容
アレルギー情報が複数あり、そのうち海老・かにの情報を見落とし、献立表への転記を行わ
なかった
献立使用食材一覧表のメニューを1段見間違えた
献立作成
食事箋規約内の各栄養剤のアレルギー表記を確認し提供可能としたが、今回の栄養剤はリスト
になかった
パンに脱脂粉乳が含まれていることを認識していなかった
ハムに卵白を使用しているという認識がなかった
アレルギー対応である食材を確認したが、麩に小麦粉が含まれていることを見落とした
アレルギー情報に魚と記載されていることを見落とし、鮭が入ったメニューにした
食札作成
食札にアレルギーコメントが表示されており、それに該当するメニュー名は修正テープで消す
ことになっていたが消し忘れた
レタスと胡瓜が混ざったものをレタスのみと思い込んだ
調理
別のアレルギーのある食材の調理時の手袋を着用したまま水で流したが、少量の胡瓜が手袋
に付着していた
作業工程が明確化しておらず、アレルギー対応ミルクや普通ミルクなど異なる3種類の
ミルクの調乳作業を一緒に行っていた
トレイに
載せる
食札に卵、乳アレルギーの表示があったが、卵だけが目にとまり、牛乳の入った桃シャーベット
を載せた
詳細不明
(4)業務工程図の一例
患者への食事の提供は、食物のアレルゲンの把握から、指示、献立作成、調理と様々な工程があり、
その工程の中で携わる医療関係者も多い。そこで、報告された事例を元に、アレルギーのある患者に
食事を提供する業務工程図の一例を示す(図表Ⅲ - 3- 13)
。医療機関や部署によって、患者に食事
が提供されるまでの手順は異なる可能性があり、本業務工程図はあくまでも一例を示しているにすぎ
ないが、医療機関において業務の見直しや事例分析を行う際の参考にしていただきたい。
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
﹁アレルギーのある食物の提供﹂︵医療安全情報№ ︶について
その他
食札に代替食メニュー「魚の味噌焼き」が朱書で印字されていたが見落とし、通常メニュー
のミートローフを載せた
Ⅲ
69
- 167 -
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
図表Ⅲ - 3- 13 アレルギー情報の入手から食事を提供するまでの業務工程図(一例)
<病棟>
医師
<栄養部>
管理栄養士・栄養士
看護師など
患者から食物アレルギーの
情報を入手する
医療安全情報No.69の対象は、
アレルギー情報が伝わっていたが、
栄養部内でアレルギー情報が伝達
されなかった、またはアレルギー
のある食材が混入した事例である。
食物アレルギーの情報を
電子カルテに入力する
患者から入手
した情報が入力
されている
調理師・調理従事者
患者から食物アレルギー
の情報を入手する
NO
YES
食事指示を確定する
食事指示を見る
食事指示を見る
献立と調理指示を作成する
医師の食事指示と患者
から入手したアレルギー
情報を照合する
NO
献立と調理指示の
アレルギー情報を照合する
医師の食事指示と
患者から入手したアレルギー
情報が合っている
献立と調理指示の
アレルギー情報が
合っている
YES
NO
YES
食札を作成する
食札と献立のアレルギー情報
を照合する
食札と献立のアレルギー情報
が合っている
NO
YES
調理師に調理指示と食札を渡す
調理指示と食札を見る
調理指示と食札に
記載されたアレルギーのある食材が
NO
献立に入ってない
YES
指定された食材で調理する
料理と調理指示を照合する
調理指示に記載
された料理である
NO
YES
トレイに食札を載せる
トレイに料理を載せる
食札とトレイに載った
料理を照合する
食札に印字された
料理が載っている
NO
YES
食札とトレイに載った
料理を照合する
食事指示書を印刷する
NO
食札に印字された
料理が載っている
YES
食事を受け取る
食事指示書と食事、
食札の記載内容を照合する
食事と、食事指示書、
食札の食事内容が
合っている
NO
YES
配膳する
患者の摂取状況を観察する
- 168 -
※ダブルチェ ックを行うタイミングや内容、
担当者につ い ては、医療機関によ っ て
異なる可能性があるが、一例として 示し
ている。
3 再発・類似事例の発生状況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
(5)事例が発生した医療機関から報告された背景・要因の概要
報告された事例の内容から、主な背景・要因を発生段階別に図表Ⅲ - 3- 14に整理した。
図表Ⅲ - 3- 14 主な背景・要因
献立作成
○情報の見落とし
・ 「アレルギー献立使用食材一覧表」が小さく見づらかったため、メニューを1段見間違い、本来提供する
肉団子でなく禁止食材の入ったハンバーグを献立として作成した。
・複数の禁止項目を一度に読み上げたため、一つ一つの食材の確認が不十分となった。
・ アレルギー患者の入院後、5日分の個別献立を作成し、別の栄養士が個別献立を確認、献立の不備があ
れば差し戻しているが、差し戻し後の確認(トリプルチェック)を実施したにもかかわらず朝食の鮭を
見落とした。
・アレルギー対応の食事であることを確認していたが、小麦粉を見落としていた。
・栄養士は献立を確認する際に指示を読み上げず、正しいと思い込み確認を怠った。
○認識不足
・ 卵禁忌の患者に、卵白入りのハムのメニューが作成されていたが、担当した栄養士はハムに卵白を使用
しているという認識がなかった。
・委託栄養士と病院栄養士は、パンに脱脂粉乳が含まれていることを共通認識できていなかった。
○マニュアル・ルールの不備
・ 禁止項目のチェックや読み上げ方法が統一されていなかったため、アレルギー情報を見落とし献立表へ
の転記ができなかった。
○システムの不備
○その他
・ 患者が卵アレルギーであったため、食事箋規約の各栄養剤のアレルギー表記を確認したが、今回提供し
た栄養剤は食事箋規約の中に含まれていなかった。
食札作成
・ 食札にアレルギーのコメントとメニューが表示されているため、提供できないメニューは修正テープで
消すことになっていたが、メニューを消し忘れた。
調理
○確認不足
・調理師2名は食材を確認して調理したが、原材料の確認を怠った。
・ 「胡瓜の和え物」のメニューが「瓜類禁止」のコメントに該当するため、病院管理栄養士は「盛りサラダ」
に変更するように口頭で指示を出したが、委託職員(調理担当)はボールに入ったレタスと胡瓜が混ざっ
たものをレタスのみと思い込んだ。
・ 調理師は、
「調理指示書」に基づいて調理を開始した際、魚の出汁は除くことになっていたため献立に鮭
が入っていることに疑問をもったが、献立通りに調理した。
・おやつを作り終えた後のダブルチェック時に、アレルギー情報の書かれた指示書を確認しなかった。
○マニュアル・ルールの不備
・ 別のアレルギーのある食材の調理・盛り付け作業をしたあと、手袋着用のまま水にて流したが、手袋に
少量の胡瓜が付着して酢の物に混入した可能性がある。
・ 手袋交換を行うのは油による汚れなどを重視し、アレルギーのある食材の調理・盛り付け作業の前に手
袋を変えていなかった。
・ミルク作成の作業工程が明確化しておらず、異なる3種類のミルクの調乳作業を同時に行っていた。
・朝食の準備時など、栄養士不在の場合に確認する方法が決まっていなかった。
- 169 -
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
﹁アレルギーのある食物の提供﹂︵医療安全情報№ ︶について
・献立表に禁止項目の印刷がされず、手書きで対応していた(システムの問題)。
・ 電子カルテの「患者プロファイル」画面の食物アレルギーに「卵、乳製品、魚、キウイ、ごま」が入力され
ているが、
栄養部では「食物選択画面」をクリックして開かないと食物アレルギー情報を見ることができない。
Ⅲ
69
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
トレイに載せる
○情報の見落とし
・ 食事セット完了後、委託職員(食事チェック担当)2名、委託職員(禁止コメントチェック担当)1名、
病院管理栄養士1名で禁止食材が入っていないか、目視にて確認したが見落とした。
・患者の食札には鶏卵、乳アレルギーの表示があったが、卵だけ目にとまり乳の情報を見落とした。
○認識不足
・ トレイに食事を並べる際、食札に記載されているアレルギーコメント(乳製品)に気づいたが、乳製品
や乳酸菌飲料を載せることに疑問をもたなかった。
○マニュアル・ルールの不備
・調理後、食事提供までに最終確認を行う体制ではなかった。
・ 配膳車への搬入の際には、調理師複数人で再度確認を行うようにと声かけしていたが、確認方法につい
ての指導はできておらず、ダブルチェックは徹底されていなかった。
・ 最終的なチェックを行う際、アレルギー対応食のみ取り出して確認を行わず、通常の食事と同じ場所で
行ったため、該当するトレイのある列を飛ばしてチェックしていた。
・ 調理師は、食札の赤丸表示を目視して準備したつもりであったが、食札と食事内容を照合する確認はし
ておらず、また、他者と確認し合うという意識、習慣がなかった。
病棟での配膳
・看護師は、患者が香辛料禁止であることを把握していたが、胡椒が香辛料であると思わなかった。
・最終的に病棟で患者に配膳する際に、食札とアレルギーのある食材を照合するルールがなかった。
- 170 -
3 再発・類似事例の発生状況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
(6)事例が発生した医療機関の改善策
事例が発生した医療機関の主な改善策を図表Ⅲ - 3- 15に整理した。
図表Ⅲ - 3- 15 主な改善策
指示出し・指示受けに関すること
・ アレルギーによる禁止食品か嗜好による禁止食材か食事オーダだけではわからない場合があるため、栄
養士は病棟との情報交換や患者から聞き取りを行い、正しい情報を得る。
・ 新たに栄養剤の使用を始めるときには、事前に医師や看護師に原材料情報を含む栄養剤の情報を提供し、
医師に確認をしてもらう。
・ 食事オーダ時に自動的にパンになるシステムであったため禁止食材(脱脂粉乳)を提供したことから、
医師が主食の種類を選択した後に確定するシステムに変更する。
食材管理に関すること
・調理に使用する調味料などに含まれている原材料の洗い出しを行う。
・ 調味料や加工品は原材料の確認をする。また、工場内や製造工程でのアレルギー食材の使用について確
認する。
・「食事箋規約」の栄養剤・その他特殊食品栄養組成表に、院内採用品すべてを記載する。
・ミルクを種類別に保管するようにした。
献立作成に関すること
○確認作業
○その他
・ アレルギーのある食材が入った献立の場合、食材変更などの展開指示は止め、在庫の食材から新たに調
理を行えるように指示を出す。
・献立表に禁止項目の印刷がされないため手書きしていたが、システムを改善し手書き入力をしない。
食札の作成に関すること
・「香辛料」では認識の違いがあるため、禁止食材は食札に一つずつ明記する。
・ 乳製品などの既製品をそのまま提供する場合、食札には商品名の表示のみでなく、頭に「乳」を付ける
など乳製品であることを表示する。
調理に関すること
○アレルギー食材の混入防止
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
﹁アレルギーのある食物の提供﹂︵医療安全情報№ ︶について
・加工品を使用しない献立作成を行い、献立作成者と献立確認者でダブルチェックを行う。
・ 栄養剤のアレルギーを確認する際には、必ず栄養剤の名前とアレルギー項目、原材料名を照合して確認
する。
・献立の確認はアレルギー食から開始し優先順位をつけてチェックする。
・ 個人献立作成担当者の献立作成時の確認と、日直業務での献立出力時に日直栄養士による献立内容の確
認を徹底する。
・栄養士が献立を作成した後、調理師に献立を渡す前に再度調理指示書を栄養士が確認する。
Ⅲ
69
・調理師がアレルギー患者と禁止食材を一目で把握できるように、調理室の所定場所に名簿を掲示する。
・調理機器の点検を行い、十分な洗浄を行ったうえで調理し、器へ盛り付ける。
・ 調理担当者がアレルギーのある食材を取り扱う際に、食材ごとで手袋を廃棄し新しい手袋に替えて次の
作業を行う。
・特殊調乳を先に行い、終了後に次の作業に移るようにした。
- 171 -
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
○食事内容のチェック体制
・献立の内容確認は、指差し声出し確認をする。
・ 調理師は予定献立表(調理)をメニューだけでなく原材料と対比させた一覧表を使い指示を読み上げて
食材を確認したのち調理する。
・ 禁止コメントチェック方法について、形骸化している現状を認識し、1件ずつ確実に確認することを徹
底する。
・食器に盛り付ける時に、使用している食材が分かるように盛り付けることを徹底する。
トレイに載せることに関すること
○確認作業
・栄養士は献立表で、調理師は食札で見るよう、提供前のチェックを分業する。
・調理師が調理した後、温冷配膳車に入れ込む前に再度チェックを行う。
・ 調理師は、ダブルチェックの担当者を明確にし、トレイに載せた段階でダブルチェックを行った後、配
膳車への搬入を開始し、配膳車へ搬入の際にも食事と食札内容に相違がないか確認することを手順とし
て取り決め、確認を徹底する。
・ アレルギー対応食は通常の食事とは別のところに取り出し、アレルギーのある食材のチェックに集中で
きる体制にする。
・ 管理栄養士は、トレイに載せた料理を目視すると共に、調理担当者に献立の内容確認及び食材ごとに手
袋を交換したか確認する。また、手袋を替えた形跡がない場合は調理済の食事を廃棄し、作り直す。
○その他
・アレルギー対応食の食事であることが一目でわかるよう、蓋の色を区別しやすいものに変更する。
病棟での配膳に関すること
・ 乳製飲料などの製品がそのまま提供されている場合は、病棟で配膳する際にもアレルギーのある食材で
はないか最終確認をする。
その他
・ 各々が所有する帳票にチェック済みの印をつけ、途中で業務が中断してもチェック漏れがわかるように
する。
・事前に患者や家族に献立表を渡し、アレルギー食材が入っていないか確認に参加してもらう。
・ 原因食物の摂取により、患者にとって不利益なアレルギー症状が出現し、命にかかわることもあるため、
病院食の重要性と調理工程や盛りつけにも細心の注意を払う必要があることを周知徹底する。
(7)まとめ
本報告書では、栄養部に患者の食物アレルギーの情報が伝わっているにもかかわらず、誤ってアレ
ルギーのある食物を提供した事例をまとめた医療安全情報 No. 69「アレルギーのある食物の提供」
について、医療安全情報の集計期間後の2012年7月から本報告書分析対象期間(2016年4月
∼6月)に報告された事例を分析した。主な再発・類似事例を掲載し、該当事例14件の患者の年齢、
当事者職種、誤って提供した食事内容を分類した。また、アレルギー情報の入手から患者に食事を提
供するまでの業務工程図の一例を示した。医療機関においては、アレルギーのある食材が含まれた食
事を患者に提供しないよう様々な工夫がされているが、再発・類似事例が発生している現状を踏まえ、
栄養部に患者のアレルギー情報が伝達された後、「献立作成」「食札作成」「調理」「トレイに載せる」
の各段階において、アレルギーのある食材が食事に混入する可能性がないか再度確認することが必要
である。
今後も引き続き類似事例の発生について、その推移に注目していく。
- 172 -
3 再発・類似事例の発生状況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
【3】「放射線検査での患者取り違え」(医療安全情報 No. 73)について
(1)発生状況
医療安全情報 No. 73「放射線検査での患者取り違え」
(2012年12月提供)では、放射線検
査での患者氏名の確認が不十分であったため、違う患者が入室したにもかかわらず、そのまま検査が
行われた事例を取り上げ、情報を提供した(医療安全情報掲載件数6件、集計期間:2008年1月
∼2012年10月)。
本報告書分析対象期間(2016年4月∼6月)においても類似の事例が1件報告されたため、
再び取り上げることとした。
医療安全情報 No. 73の集計期間以降(2012年11月∼2016年6月)に報告された「放射
線検査での患者取り違え」の類似事例の報告件数を図表Ⅲ - 3- 16に示す。
図表Ⅲ - 3- 16 「放射線検査での患者取り違え」の報告件数
1∼3月
(件)
4∼6月
(件)
7∼9月
(件)
2012年
10∼12月
(件)
合計
0
0
2013年
0
1
0
0
1
2014年
1
0
0
1
2
2015年
0
2
0
0
2
2016年
0
1
−
−
1
図表Ⅲ - 3- 17 医療安全情報 No. 73 「放射線検査での患者取り違え」
Ⅲ
﹁放射線検査での患者取り違え﹂︵医療安全情報№ ︶について
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
73
- 173 -
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
(2)事例の分類
事例を患者取り違えのきっかけで分類した(図表Ⅲ - 3- 18)。医療スタッフが患者Bを呼び出
した際に、別の患者Aが「はい」と返事をした事例、医療スタッフが患者Aを患者Bと思い込んだ
事例はそれぞれ3件であった。取り違えのきっかけは患者の聞き間違いや思い込みだけでなく、医
療スタッフの思い込みによって発生する場合もある。
図表Ⅲ - 3- 18 患者取り違えのきっかけ
患者取り違えのきっかけ
件数
患者Bを呼び出した際に患者Aから返答があった
3
医療スタッフは患者Aを患者Bと思い込んだ
3
合 計
6
(3)事例の内容
医療安全情報 No. 73の集計期間後の2012年11月以降に報告された再発・類似事例6件を
図表Ⅲ - 3- 19に示す。
図表Ⅲ - 3- 19 事例の内容
No.
事故の背景要因
事故の内容
改善策
患者Bを呼び出した際に患者Aから返答があった
9時45分頃、10時実施の骨シンチ検査目的で患者A 実施前に患者から氏名と生年 ・ 患者に氏名と生年月日を名
が受付をした。9時50分頃、撮影補助の職員が10時 月 日 を 言 っ て も ら う こ と に 乗ってもらう運用を遵守す
10分実施予定のFDG−PET検査のため、患者Bの なっていたが、遵守できてい る。
・ 検査ごとに検査カードを配
名前を呼んだところ、患者Aが返事をしたため、PET なかった。
布して、検査前の確認に用
検査の説明を行った。10時5分頃、医師はPET検査
いる。
1 室で患者AにFDG−PET検査の注射を行い、陽電子
待機室で待機するよう説明した。10時15分、受付の
事務員は骨シンチの待合室に患者Aがいないことに気付
き、陽電子待機室にいた患者の名前を確認したところ、
FDG−PET検査の注射をしたのは患者Bでなく患者
Aであることが分かった。
医師は11時30分診察予約の患者Bに投与するタイロ 患者が診察室に入った後、患 ・ 診察室に入った後、診察券
ゲン筋注用を準備し、患者Bの名前を呼んだところ、廊 者 の 再 確 認 を 行 わ な か っ た。 で患者名を確認する。
下を歩いていた患者Aが返事をしたので診察室に入って 患者は軽度の難聴があるよう
もらった。患者Aは、10時30分より核医学検査室で で、患者名を呼びながら本来
PET検査を受けた別の患者であった。診察時に、患者 の患者に対する説明をしたが、
名を呼びながらヨード制限などの質問をしたが、その都 その都度「はい」と返事をし
2 度「はい」と返事をしたのでタイロゲン筋注用を筋注した。 ていた。
その後、「明日も来てください」と説明した際、患者は次
は金曜日のはずだと言ったため、診察券を確認したとこ
ろ間違って患者Aに注射したことがわかった。患者Aに
は健康被害がほとんどないことを説明して一旦帰宅して
もらったが、翌日、検査等のため入院となった。
- 174 -
3 再発・類似事例の発生状況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
No.
事故の背景要因
事故の内容
CT検査の際、診療放射線技師が患者Bの名前を呼んだ
ところ名前の類似(姓は同じで名前の一文字が違う)し
た患者Aが来て、そのまま違う部位のCT撮影を実施し
3 た。その後、患者Aの名前が呼ばれた際に、患者Bの母
親が診療放射線技師に報告し、取り違えが判明した。
改善策
類似する氏名の患者が同時刻 ・ 患者の本人確認を徹底する
に存在する可能性があるとい (患者に名乗ってもらう、
う意識が薄かった。氏名を名 生年月日など)。
乗ってもらい本人を確認する
ことができていなかった。待
合室は雑音も多く、患者自身
の思い込みも考えられた。
医療スタッフは患者Aを患者Bと思い込んだ
患者Aは頭部MRI実施予定で、患者Bは造影CTを予 待合所からの呼び出しの際と ・ 患者確認の徹底、特に検査
定していた。放射線科受付で、患者Bの受付を行い、受 点滴ルート確保の際、CT室 直前の検査内容の説明と患
付担当者はCT室の前で待つように伝えた。診療放射線 に入室し検査実施前の3回名 者自身が名乗ることを必須
技師Xは受付で患者Bを見ていたが、CT室に呼び込む 前を名乗ってもらい確認する とする。その際、複数の技
際、同時間帯に受付後、CT室に向かっていた患者Aに タイミングがあったが、確認 師が検査準備に対応したと
対して「患者Bさんですか?」と声をかけると、患者A を怠った。複数の職員が関わ しても主にセッティングを
は「はい」と答えた。診療放射線技師Xは患者Aを患者 る検査においては、他の者に 行う技師が患者確認を行う
Bと誤認し、点滴ルート確保の場所へ案内した。その後、 依存し、決められた手順より こととし、責任者を明確に
診療放射線技師Xが患者Aを案内をしてきたため、看護 逸脱する甘さがあった。
する。
師も患者確認を行わずに点滴ルートの確保を行った。点
・ 部門システムより放射線検
4 滴ルートの確保後、診療放射線技師Yは患者Aを案内し
査票を出力できることとな
た。診療放射線技師XとZが検査のセッティングを行っ
り、患者名と詳細検査内容
た。その際も、患者Aを患者Bと思い込んでおり患者確
を患者の目の前で確認する
認を行わなかった。患者Aが「この検査は初めてだ」と
ことが可能となるため、こ
言ったため、患者Bの検査履歴を確認したところ、初め
れを用いて患者確認を行
て行う検査であり、疑問に思わなかった。検査のセッティ
う。
ングを行う際に患者Bの名前で何回か声掛けをしたが、
そのときに患者Aから指摘はなかった。CT検査実施後、
消化器内科に行くように案内したときに患者Aが「脳外
科である」と言ったため、間違いに気が付いた。
Ⅲ
﹁放射線検査での患者取り違え﹂︵医療安全情報№ ︶について
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
73
- 175 -
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
No.
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
事故の背景要因
事故の内容
改善策
「患者誤認防止マニュアル」
朝、主治医は、次週予定していた患者Bの胸部CT検査を、 今まで看護補助員は、患者に ・ 本日中に実施して欲しいと放射線科へ依頼した。その 氏名を呼びかけ、患者からの には「患者自身に氏名を名
後、CT検査日を変更した事をリーダー看護師に伝えた。 返事により患者確認をしてい 乗ってもらう、患者のリス
9時30分頃、放射線撮影室から患者BのX線検査と た。当院の「患者誤認防止マ トバンドやベッドネームを
CT検査の呼び出しがあった。リーダー看護師は、看護 ニュアル」に明記している「患 確認する」という事を明記
補助員に患者Bを検査室へ移送するよう依頼した。看護 者自身に氏名を名乗ってもら しており、マニュアルの再
補助員は、リーダー看護師から胸部CT検査の予約票を う、患者のリストバンドやベッ 確認とともに事例の周知を
受け取り、患者Bと思い込んで患者Aのもとを訪床した。 ドネームを確認する」という 行った。
そして「Bさん、検査の呼び出しがありました」と伝え 患者確認を行っていなかった。・ 医療安全管理委員会で事例
ると、患者Aから「はい」と返答があり、看護補助員が 放射線科ではデータ処理に際 紹介を行い、周知した。
持参した車椅子に座った。看護補助員は患者Aの病室で し、CT検査の方がX線検査
事前に渡しているはずのX線予約票を探したが、見当た よりも上位データとして取り
らなかったため、リーダー看護師にX線予約票の再印刷 扱われる事となっていた。X
を依頼した。リーダー看護師は、X線予約票を渡し忘れ 線検査室では、CT検査室で
ているのだと考え、再印刷した。看護補助員に渡す準備 患者データが展開されている
をしていたが、ナースコールが鳴ったため、X線予約票 事を確認していた。上位であ
をテーブルの上に置き、ナースコールに対応した。ナー るCT検査室で患者データを
スステーションには誰もいない状態だったが、看護補助 展開しているため、X線検査
員はテーブルのX線予約票を見つけ、それを持って患者 室では患者データを展開でき
Aを検査室へ移送した。X線検査室では診療放射線技師 ず、バーコード認証もできな
Xが患者Bの到着を待っていた。診療放射線技師Xが「B いのだと判断した。更に看護
5 さんですか」と確認すると、看護補助員から「はい」と 補助員と共にやってきた患者
返答があったため、患者Aを患者Bだと思い込んだ。次 が間違っているはずが無いと
に患者Aのリストバンドを用いてバーコード認証した。 いう思い込みも重なり、バー
その時エラーが生じたが、診療放射線技師Xはその原因 コード認証ができないのは機
をバーコードの不調だと思い込み、持参した患者BのX 械の不調だと思い、患者自身
線予約票を用いて認証を行い、X線検査を実施した。次 に氏名を確認することなく検
に胸部CT検査予定であったため、患者Aと看護補助員 査 を 実 施 し た。 C T 検 査 は、
はCT室へ移動した。CT室でも診療放射線技師Yは看 検査自体が予約制で検査室や
護補助員と共にきた患者Aを患者Bだと思い込み、磁性 時間が決まっていることから、
体の除去物の確認のみ行って検査を実施した。検査終了 バーコード認証は元々患者確
後、患者Aのリストバンドを見て氏名が異なる事に気づ 認のためのものではなく、多
いた。
くの検査予約の中から患者画
面を展開させるために用いら
れていた。X線検査室の診療
放 射 線 技 師 X と 同 じ よ う に、
看護補助員が同伴している患
者が間違っているはずはない
という認識で、患者確認をす
ることなく検査を行った。皆
が「 ま さ か 違 う は ず が 無 い 」
という前提で対応し、全てを
すり抜けてしまった。
- 176 -
3 再発・類似事例の発生状況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
No.
事故の背景要因
事故の内容
改善策
(4)事例の分析
2012年11月以降に報告された事例6件について、下記の通り分析した。
①患者の背景
報告された事例のほとんどが外来患者であり、10代から80代と幅広い年齢層であった(図表
Ⅲ - 3- 20、21)
。また、
「直前の患者の状態」の報告項目では、患者の意識障害、視覚障害、
聴覚障害、認知症・健忘、薬剤の影響下などを選択できるようになっているが、報告された事例の
「直前の患者の状態」の項目の選択では、患者が入院している 1 事例が「床上安静」を選択してい
るのみであった。医療スタッフが患者を取り違えて思い込む可能性や、判断能力に問題がないと考
えられる患者でも、誤った名前を呼ばれた際には「はい」と返事をする可能性がある。
- 177 -
Ⅲ
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
﹁放射線検査での患者取り違え﹂︵医療安全情報№ ︶について
診療放射線技師は患者BのPET検査の際に、誤って患者 検査開始時に「患者に姓名を ・ 放射線検査における患者確
Aへ氏名を名乗ってもらったが、患者Bと聞き間違えた。 名乗ってもらう」という当院 認手順を改訂し、運用を徹
名前をはっきりと聞き取れなかったため、再度「PETを の基本ルールが実施されてい 底する。
受けられる方ですね」と問い直したところ、患者Aより なかった。患者に氏名を名乗っ <患者確認項目>
「はい」と返答を受け、本来副甲状腺シンチ予定の患者A てもらった際、診療放射線技 1.待合い
をPET−CT予定の患者Bと取り違えた。診療放射線 師 は 確 信 が 持 て な か っ た が、・ 診療放射線技師は受付番号
技師は患者AへPET−CT検査の説明を行い、PET 再度氏名の確認を行わなかっ にて患者を呼び、患者より
処置室へ案内した。医師と看護師は処置室入室時に患者 た。患者が持参している指示 検査予約票を受け取る。
の氏名を再確認するルールであったが、案内された患者 書等の名前表記との照合が一 ・ 患者に姓名を名乗ってもら
Aが患者Bであると思い込み、氏名の確認を行なわなかっ 度も行われなかった。診療放 い、表記を確認し検査予約
た。患者Aへの問診の後、PET−CT用の検査薬18 射線技師は不安に思い検査名 票にチェックする。
F−FDGを投与した。その後、副甲状腺シンチ待合室 を患者に確認し再確認を行っ ・ 患者と共に指示書を用いて
に患者Aがいないため、患者の取り違えに気付いた。
ているが、検査の個別名称で 予定検査の確認を行い、検
確認が行われたため、患者に 査予約票にチェックする。
は正誤の判断はつかなかった ・ 診療放射線技師は処置室内
と推察される。医師と看護師 の医師や看護師へ患者名・
はすでに患者確認が診療放射 検査名・検査時間を申し送
6
線技師によって行われている る。
と思い込んだため、氏名確認 2.処置室
を行わなかった。処置、問診 ・ 看護師は患者から検査予
時にも患者氏名の確認が行わ 約 票 を 受 け 取 り、 氏 名 を
名乗ってもらい指示書なら
れなかった。
びに部門システムにて確認
し、検査予約票にチェック
する。
・ 患者と共に検査予約票を
用いて予定検査を確認し
チェックする。
3.検査薬投与時(必要時)
・ 医師、看護師は投与前に準
備された薬剤のラベルに記
載されている患者名、検査
名を確認する。
73
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
図表Ⅲ - 3- 20 患者区分
図表Ⅲ - 3- 21 患者の年齢
患者区分
件数
年代
件数
外来
5
10代
1
入院
1
50代
1
合 計
6
60代
1
70代
2
80代
1
合 計
6
②当事者職種
当事者は、診療放射線技師が多いほか、医師や看護師、看護助手、撮影補助者等、多職種の医療
スタッフが選択されていた(図表Ⅲ - 3- 22)
。
図表Ⅲ - 3- 22 当事者職種
当事者職種
件数
診療放射線技師
7
医師
3
看護師
2
看護助手
1
その他(撮影補助者)
1
合 計
14
※当事者職種は複数回答が可能である
③予定していた検査と誤って実施した検査や処置
患者に予定していた検査と、誤って患者に実施した他の患者の検査を、図表Ⅲ - 3- 23に示す。
放射線検査の患者取り違えにより誤った診断がなされ、患者に適切な治療が実施できなくなる可能
性があることを認識しておくことが重要である。
図表Ⅲ - 3- 23 予定していた検査と誤って実施した検査や処置
予定していた患者Aの検査
誤って患者Aに実施した患者Bの検査や処置
骨シンチ検査
PET検査用放射性医薬品(FDG)の静脈注射
PET検査
シンチグラフィーのための診断補助薬(タイロゲン)の筋肉注射
CT検査
CT検査(違う部位)
頭部MRI検査
造影CT検査
なし
胸部X線検査、胸部CT検査
副甲状腺シンチ検査
PET−CT検査用放射性医薬品(18F−FDG)を静脈注射
- 178 -
3 再発・類似事例の発生状況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
④患者確認の状況
医療安全情報 No. 73「放射線検査での患者取り違え」における事例が発生した医療機関の取
り組みには、患者自身に氏名を名乗ってもらうことや院内で取り決めた放射線検査時の患者の確認
方法を徹底することが挙げられている。報告された事例の内容から、患者確認のルールの有無及び
遵守の状況について図表Ⅲ - 3- 24に示す。患者に名乗ってもらった1件は、医療スタッフが名
前を聞き取れず、検査名で確認した事例であった。ほとんどの事例で患者に名乗ってもらうルール
はあったが、多くの事例で遵守されていなかった。また、医療スタッフが持っている検査伝票等と
患者が持参した診察券や検査予約票など患者が持っている情報で患者氏名を照合するルールがあっ
たが、遵守されなかった事例が2件あった。医療スタッフの情報と患者が持っている情報の患者氏
名を照合するルールが不明な事例は4件であったが、そのうち3件は改善策に放射線検査票などを
使って医療スタッフの情報と照合することを挙げていた。院内で決められた放射線検査時の患者を
確認する方法について、ルールを周知したり、ルールの遵守状況を確認する重要性が示唆された。
図表Ⅲ - 3- 24 患者確認の状況
Ⅲ
患者確認の状況
医療スタッフの情報と患者が
持っている情報の患者氏名を照
合する
患者に名乗ってもらう
ルールあり
5
2
1
0
遵守しなかった
4
2
不明
1
4
⑤医療スタッフが関わった場面
患者取り違えのきっかけ(既出、図表Ⅲ - 3- 18)から患者を取り違えて検査等を実施する
までに、複数人の医療スタッフが関わり、誤りに気付く機会があったが誤りに気付かなかった事
例が多かった。そこで事例の内容から、患者確認を行う医療スタッフが関わった場面を整理し
た(図表Ⅲ - 3- 25)。患者を呼び出す際に、患者確認のルールである「患者に名乗ってもらう」
「モノ(診察券、検査予約票など)で照合する」を実施してないが(既出、図表Ⅲ - 3- 24)
、
患者が検査室に入った際には患者確認はすでに終わっているとされ、その後の患者確認は省略され
ている。複数の医療スタッフが関わる日常の検査の中で、患者確認が曖昧になっている現状が伺わ
れた。
﹁放射線検査での患者取り違え﹂︵医療安全情報№ ︶について
遵守した
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
73
- 179 -
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
図表Ⅲ - 3- 25 医療スタッフが関わった場面
患者Bを呼び出した際に患者Aから返答があった
撮影補助者
医師
事例1 ・ PET検査の説明をする際、患者Bの名前を呼んだ
・PET検査室内にいた患者Aを患者Bと思った
ところ患者Aが返事をした
医師
事例2 ・ 診察室に呼び込む際、患者Bの名前を呼んだところ ・ 患者Bの名前を呼びながら問診を行ったが、患者A
患者Aが来た
から「はい」と返事があった
診療放射線検査技師
事例3
・CТ室に呼び込む際、患者Bの名前を呼んだところ患者Aが来た
医療スタッフは患者Aを患者Bと思い込んだ
診療放射線技師X
事例4
看護師
診療放射線技師Y・Z
・ CТ室に呼び込む際、患者Aを
患者Bと思い、検査室に向かっ ・ 点滴ルートを確保する際、その ・ CТ検査を実施する際、検査室
て い た 患 者 A に「 B さ ん で す 場 所 へ 技 師 X が 案 内 し た た め、 に案内された患者Aを患者Bと
か?」と声をかけると、患者A 患者Bと思った
思った
から「はい」と返事があった
看護補助員
診療放射線技師X
診療放射線技師Y
・ X線検査の際、
「Bさんですか?」
・ 検査室に誘導する際、患者Aを と声をかけたところ、看護補助
事例5
患者Bと思い込み、患者Aの病 員が「はい」と返事をした
・ CТ検査の際、看護補助員と一
室 へ 行 き「 B さ ん、 検 査 で す 」・ リストバンドでバーコード照合 緒に来た患者Aを患者Bである
と声をかけると、「はい」と返事 を行ったところ、エラーになっ と思い込んだ
があった
たが、機械の不具合と思い込ん
だ
診療放射線技師
医師・看護師
事例6 ・ PET−CТ検査の説明をする際、患者Aに名乗っ ・ PET処置室に案内された患者Aを患者Bと思い込
てもらったが聞き取れず「PETを受ける方ですよ
んだ
ね」と聞いたところ、「はい」と返事があった
- 180 -
3 再発・類似事例の発生状況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
⑥取り違えに気付いたきっかけ
患者取り違えに気付いた場面ときっかけを図表Ⅲ - 3- 26に示す。いずれも違う患者に検査や
検査に関係する処置を実施していた。検査に関係する処置を実施後に患者の発言から検査について
の確認を行い、誤りに気付いた事例のように、患者や家族の発言が確認のきっかけになった事例が
あった。
図表Ⅲ - 3- 26 患者取り違えに気付いた場面ときっかけ
気付いた場面
取り違えに気付いたきっかけ
検査に関係する処置 ・ 筋肉注射後、「明日も来て下さい」と説明すると、患者Aより「次は金曜日のはずだ
を誤って実施した後
が」と指摘があった。
検査を誤って
実施した後
・ CT検査後、消化器内科に行くように案内したところ、患者Aが「脳外科である」と
言った
・検査終了後、患者Aのリストバンドを見た
Ⅲ
・ 患者Aの検査の呼出し時、誤って患者Bの検査を行っていたため副甲状腺シンチ待
合室に患者Aがいなかった
患者Aの呼出し時
・ 待合室に骨シンチ検査予定の患者Aがいなかったため、受付事務員が陽電子待合室
にいた患者Aに名前を聞いた
・患者Bの検査後、患者Aの名前を呼んだところ、患者Bの家族から問合せがあった
事例が発生した医療機関から報告された主な背景・要因を整理して次に示す。
○ルール違反に関すること
・ 検査開始前に、患者から氏名と生年月日を言ってもらうルールになっていたが、遵守できてい
なかった。(複数報告あり)
・患者のリストバンドやベッドネームを確認するというルールを遵守できていなかった。
・処置、問診時にも患者氏名の確認を行わなかった。
・患者が診察室に入った後、患者の再確認を行わなかった。
・患者が持参している指示書等の名前表記との照合が一度も行われなかった。
○確認の方法やタイミングに関すること
﹁放射線検査での患者取り違え﹂︵医療安全情報№ ︶について
(5)事例の背景・要因
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
73
・ 診療放射線技師は不安に思い検査名を患者に確認したが、検査の名称で確認が行われたため、
患者は判断できなかった。
・ 患者に氏名を名乗ってもらった際、診療放射線技師ははっきり聞き取れなかったが、再度氏名
の確認を行わなかった。
・ 待合室からの呼び出しの際と点滴ルートを確保する際、CT検査室に入室し検査実施前の3回
名前を名乗っていただき確認するタイミングがあったが、確認を怠った。
- 181 -
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
○医療スタッフの関わり
・ 複数の医療スタッフがかかわる検査においては、他の医療スタッフに依存し、決められた手順
より逸脱する甘さがあった。
・看護補助員が同伴している患者が間違っているはずはないという認識があった。
・医師と看護師はすでに患者確認が診療放射線技師によって行われていると思い込んだ。
○バーコード認証に関すること
・ CT検査室で患者データを展開しているため、X線検査室では患者データを展開できず、バー
コード認証もできないと判断した。
・バーコード認証ができないのは機械の不調だと思い、患者自身に氏名を確認しなかった。
・ CT検査は、検査自体が予約制で検査室や時間が決まっていることから、バーコード認証は患
者確認のためではなく、多くの検査予約の中から患者画面を展開させるために用いられていた。
○患者側の要因
・ 患者は軽度の難聴があるようで、患者の氏名を呼びながら説明をしたが、患者はその都度「はい」
と返事をしていた。
・患者自身の思い込みも考えられた。
○環境
・待合室は雑音が多かった。
(6)事例が発生した医療機関の改善策について
放射線検査での患者取り違えの事例に挙げられていた主な改善策を整理して示す。患者を確認する
際、いつ、誰が、どのように確認するのかを明らかにした改善策が多かった。
①患者の確認方法に関すること
○患者に名乗ってもらう
・ 患者確認を徹底するため、特に検査直前の検査内容の説明と患者自身に名乗ってもらうことを
必須とする。
○医療スタッフの情報と患者が持参したモノの情報を照合する
・検査ごとに患者に検査カードを配布して、検査前の確認に用いる。
・診察室に入った後、診察券で患者氏名を確認する。
・ 部門システムより放射線検査票を出力できることとなり、患者氏名と詳細な検査内容を患者の
目の前で確認することが可能となり、これを用いて患者確認を行う。
○その他
・ 複数の診療放射線技師が検査準備に対応したとしても主にセッティングを行う診療放射線技師
が患者確認を行い、責任者を明確にする。
・放射線検査における患者確認手順を改訂し、運用を徹底する。
- 182 -
3 再発・類似事例の発生状況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
②その他
・医療安全管理委員会で事例紹介を行い、周知した。
また、医療機関の改善策には、具体的なマニュアルの内容が記載されたものがあったため、一例
として次に紹介する。
<患者確認項目>
1.待合い
・診療放射線技師は受付番号にて患者を呼び、患者より検査予約票を受け取る。
・患者に姓名を名乗ってもらい、表記を確認し検査予約票にチェックする。
・患者と共に指示書を用いて予定検査の確認を行い、検査予約票にチェックする。
・診療放射線技師は処置室内の医師や看護師へ患者名・検査名・検査時間を申し送る。
Ⅲ
2.処置室
・ 看護師は患者から検査予約票を受け取り、氏名を名乗ってもらい指示書ならびに部門システム
にて確認し、検査予約票にチェックする。
・患者と共に検査予約票を用いて予定検査を確認しチェックする。
3.検査薬投与時(必要時)
(7)まとめ
本報告書では、医療安全情報 No. 73「放射線検査での患者取り違え」について、医療安全情報
No. 73の集計期間後の2012年11月から本報告書の分析対象期間(2016年4月∼6月)に報
告された再発・類似事例6件を紹介した。事例を患者取り違えのきっかけで分類したところ、患者Bを
呼び出した際に患者Aから返答があった事例、医療スタッフが患者Aを患者Bと思い込んだ事例がそ
れぞれ3件であった。それらの事例の患者を取り違えた場面や取り違えに気付いたきっかけなどを整
理し、医療機関の改善策を掲載した。放射線検査の患者取り違えにより別の患者の検査結果を基に診
断がなされることで、患者に適切な治療が実施できなくなる可能性があることを認識しておくことが
﹁放射線検査での患者取り違え﹂︵医療安全情報№ ︶について
・ 医師、看護師は投与前に準備された薬剤のラベルに記載されている患者名、検査名を確認する。
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
73
重要である。
複数の医療スタッフが関わる日常の放射線検査の中で、患者確認について、いつ、誰が、どのよう
に行うかが曖昧になっている現状が伺われた。院内で決められた放射線検査時の確認方法について、
ルールを周知したり、遵守状況を確認するとともに、具体的な確認の手順についてルールが明らかに
なっているかを見直すことも必要であろう。
今後も引き続き類似事例の発生について注意喚起するとともに、その推移に注目していく。
- 183 -
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
- 184 -
参考 医療安全情報の提供
2006年12月より医療事故情報収集等事業において、報告書、年報を作成・公表する情報提供
に加え、特に周知すべき情報を医療安全情報として、事業に参加している医療機関などに対してファッ
クスなどにより提供することとした。
【1】目的
医療事故情報収集等事業で収集した情報に基づき、特に周知すべき情報を提供し、医療事故の発生
予防、再発防止を促進することを目的とする。
【2】対象医療機関
① 医療事故情報収集・分析・提供事業の報告義務対象医療機関及び参加登録申請医療機関
② ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業の参加医療機関
③ ファックスによる情報提供を希望した病院
なお、事業に参加していない病院からも、ファックスによる情報提供の依頼を随時受け付けている。
また、2015年12月にも医療安全情報の提供を受けていない病院に対し、第5回目の情報提供の
希望を募った。医療安全情報 No. 111より、約6,
000医療機関へ情報提供を行っている。
【3】提供の方法
主にファックスにより情報提供している。
【4】医療安全情報
2016年4月∼6月分の医療安全情報 No. 113∼ No. 115を次に掲載する。
(注)公益財団法人日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業ホームページ(http://www.med-safe.jp/)参照。
- 185 -
参考
なお、本事業のホームページ(注)にも掲載し、広く社会に公表している。
参考 医療安全情報の提供
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
医療事故情報収集等事業 医療安全情報 No.113 2016年4月
公益財団法人 日本医療機能評価機構
医療事故情報収集等事業
医療
安全情報
No.113 2016年4月
中心静脈カテーテル抜去後の
空気塞栓症
座位で中心静脈カテーテルを抜去したため、血管内に空気が流入した事例が3件報告
されています(集計期間:2012年1月1日∼2016年2月29日)。この情報は、第43回
報告書「個別のテーマの検討状況」
(P133)
で取り上げた内容を基に作成しました。
座位で中心静脈カテーテルを抜去後、空気塞栓
症をきたした事例が報告されています。
医療機関の取り組みのイメージ
事例1のイメージ
仰臥位 または
トレンデレンブルグ位
座位
座位
- 186 -
参考 医療安全情報の提供
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
医療事故情報収集等事業
医療事故情報収集等事業
医療
No.113 2016年4月
安全情報
中心静脈カテーテル抜去後の空気塞栓症
事例1
医師は中心静脈カテーテル(ブラッドアクセス)の抜去のため訪室したところ、患者は
座っていた。医師は座位で抜去することの危険性を知らず、座位のまま中心静脈カテーテル
を抜去した。その後、患者は呼吸困難を生じ、脳梗塞を発症した。カテーテル抜去部から
空気が血管内に流入したことによる空気塞栓症と考えられた。
事例2
研修医は中心静脈カテーテル(ダブルルーメン)を抜去する際、仰臥位またはトレンデ
レンブルグ位とすることを知らず、患 者に座 位 のまま息 止めをしてもらい 抜 去した。
研修医は抜去部を約3分間圧迫後、数分かけて皮膚に残っていた糸を除去した。その際、
患者は気分不良を訴え、意識消失した。CTを撮影したところ、右内頚静脈内に少量の
ガス像を認め、中心静脈カテーテル抜去後の空気塞栓症と考えられた。
事例が発生した医療機関の取り組み
※この医療安全情報は、
医療事故情報収集等事業(厚生労働省補助事業)
において収集された事例をもとに、
本事業の一環として総合評価
部会の専門家の意見に基づき、
医療事故の発生予防、
再発防止のために作成されたものです。本事業の趣旨等の詳細については、
本事業
ホームページに掲載されている報告書および年報をご覧ください。
http://www.med-safe.jp/
※この情報の作成にあたり、
作成時における正確性については万全を期しておりますが、
その内容を将来にわたり保証するものではありません。
※この情報は、
医療従事者の裁量を制限したり、
医療従事者に義務や責任を課したりするものではありません。
▼カラー版はこちらから▼
公益財団法人 日本医療機能評価機構
医療事故防止事業部
〒101-0061 東京都千代田区三崎町1-4-17 東洋ビル
電話:03-5217-0252 FAX:03-5217-0253
http://www.med-safe.jp/
- 187 -
参考
・
「中心静脈カテーテル抜去の方法」のマニュアルを作成する。
○体位は仰臥位またはトレンデレンブルグ位とする。
○吸気後に息を止めてもらいカテーテルを抜去する。
○抜去部は5分以上圧迫する。
○抜去部は密閉性の高いドレッシング材で覆う。
・中心静脈カテーテルの研修会の内容に、抜去時の注意事項を
追加する。
参考 医療安全情報の提供
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
医療事故情報収集等事業 医療安全情報 No.114 2016年5月
公益財団法人 日本医療機能評価機構
医療事故情報収集等事業
医療
安全情報
No.114 2016年5月
抗凝固剤・抗血小板剤の
再開忘れ
観血的医療行為のために中止していた抗凝固剤または抗血小板剤の再開を忘れた
事例が4件報告されています(集計期間:2012年1月1日∼2016年3月31日)。
この情報は、第34回報告書「個別のテーマの検討状況」
(P135)
で取り上げた内容
を基に作成しました。
観血的医療行為のために中止していた抗凝固剤
または抗血小板剤の再開を忘れたことにより、
患者に影響があった事例が報告されています。
主な薬効
薬剤名
ワーファリン錠
再開忘れに
気付いた時期
背景
観血的医療行為の 抗凝固剤の再開可能な時期になっても
再開について検討されなかった。
17日後
「
薬剤全て再開」と指示したため、手術
観血的医療行為の 直前まで内服していた薬剤のみ再開し、
抗凝固剤 ワーファリン錠
それより前に中止していたワーファリン錠
10日後
は再開されなかった。
プラザキサカプセル
抗血小板剤 バイアスピリン錠
観血的医療行為
中止の
14日後
腎生検が中止になった際、中止していた
プラザキサカプセルの再開を忘れた。
観血的医療行為の 「手術翌日よりバイアスピリン錠再開」
の指示があったが、指示を見落とした。
9日後
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参考 医療安全情報の提供
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
医療事故情報収集等事業
医療事故情報収集等事業
医療
No.114 2016年5月
安全情報
抗凝固剤・抗血小板剤の再開忘れ
事例1
医師は手術のため、患者の抗凝固剤(ワーファリン錠)
を中止した。術後出血
のリスクを考え、抗凝固剤の再開時期を遅らせる予定であったが、そのまま
再開していなかった。
術後17日目、
医師が患者に声をかけると反応がなかった
ため頭部CT検査を行ったところ、脳梗塞を認めた。
事例2
手術の1週間前より抗血小板剤(バイアスピリン錠)
を中止した。医師は入院
時指示に「手術翌日よりバイアスピリン錠再開」
と記載したが、看護師は指示
を見落とし再開していなかった。術後9日目、患者が傾眠傾向であったため
頭部MRI検査を行ったところ、多発性の脳梗塞を認めた。
事例が発生した医療機関の取り組み
※この医療安全情報は、
医療事故情報収集等事業(厚生労働省補助事業)
において収集された事例をもとに、
本事業の一環として総合評価
部会の専門家の意見に基づき、
医療事故の発生予防、
再発防止のために作成されたものです。本事業の趣旨等の詳細については、
本事業
ホームページに掲載されている報告書および年報をご覧ください。
http://www.med-safe.jp/
※この情報の作成にあたり、
作成時における正確性については万全を期しておりますが、
その内容を将来にわたり保証するものではありません。
※この情報は、
医療従事者の裁量を制限したり、
医療従事者に義務や責任を課したりするものではありません。
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公益財団法人 日本医療機能評価機構
医療事故防止事業部
〒101-0061 東京都千代田区三崎町1-4-17 東洋ビル
電話:03-5217-0252 FAX:03-5217-0253
http://www.med-safe.jp/
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参考
・術後指示に抗凝固剤や抗血小板剤の再開日の記入欄を
追加する。
・病棟薬剤師は、術後の抗凝固剤や抗血小板剤の内服
状況について、医師に情報提供する。
参考 医療安全情報の提供
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
医療事故情報収集等事業 医療安全情報 No.115 2016年6月
公益財団法人 日本医療機能評価機構
医療事故情報収集等事業
2012年から2014年に
医療
安全情報 提供した医療安全情報
No.115 2016年6月
2015年にも再発・類似事例が発生しています
◆医療安全情報No.62∼97の再発・類似事例件数です。
◆再発・類似事例が5件以上報告された医療安全情報は、事例を掲載しています。
1)
番号
タイトル
No.62 患者の体内に植込まれた医療機器の不十分な確認
No.63 画像診断報告書の確認不足
2015年の
報告件数
2件
11件
5年前、
腹部大動脈瘤に対しステントグラフト内挿術を施行し、
以後心臓血管外科で評価のためのCT検査
を行っていた。心臓血管外科の医師は、
画像診断報告書が報告される前にCT画像を見て結果を患者に説
明し、診察後に画像診断報告書を確認しなかった。その後、呼吸器内科で患者に肺がんが発見された際、
過去のCT検査の画像診断報告書を確認したところ、
3年前に気管分岐部食道近傍に腫瘤影が指摘されて
いたことがわかった。
(他10件)
No.65 救急カートに配置された薬剤の取り違え
No.66
No.68
インスリン含量の誤認(第2報)
第1報:医療安全情報No.1
薬剤の取り違え(第2報)
第1報:医療安全情報No.4
No.69 アレルギーのある食物の提供
No.71 病理診断報告書の確認忘れ
3件
3件
4件
1件
5件
医師は、
患者の定期診察を行った際、
1年前の内視鏡検査の病理所見で早期胃癌を指摘されていたことに
気付いた。今回の内視鏡検査で胃癌は増大しており、早急に治療が必要な状態であった。
(他4件)
No.75 輸液ポンプ等の流量と予定量の入力間違い
1件
2件
1件
No.77 ガベキサートメシル酸塩使用時の血管炎(第2報)
2件
No.72 硬膜外腔に持続注入する薬剤の誤った接続
No.73 放射線検査での患者取り違え
第1報:医療安全情報No.33
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参考 医療安全情報の提供
医療事故情報収集等事業 第 46 回報告書(2016年4月∼6月)
医療事故情報収集等事業
医療
安全情報
No.115 2016年6月
2012年から2014年に提供した医療安全情報
1)
番号
タ イト ル
No.78 持参薬を院内の処方に切り替える際の処方量間違い
No.80 膀胱留置カテーテルによる尿道損傷
2015年の
報告件数
4件
10件
膀胱留置カテーテルを抵抗なく挿入できたが、
尿の流出はなかった。看護師は、患者が処置直前にトイレで
排尿を済ませていたので膀胱内に尿が溜まっていないと考え、
バルーンに蒸留水10mLを注入した。
患者が
痛みを訴えたため、
膀胱留置カテーテルを抜去した。
その後、
排尿時に尿道から出血があったため、
泌尿器科
医師が診察し、
尿道損傷による出血と診断された。
(他9件)
No.81 ベッド操作時のサイドレール等のすき間への挟み込み
No.82 PTPシートの誤飲(第2報)
第1報:医療安全情報No.57
2件
11件
看護師は、
PTPシートを1錠ごとにはさみで切り、
患者に配薬した。その後、
患者より1錠だけPTPシートごと
薬を飲んでしまい、
つかえ感があると話があった。ごみ箱を確認すると、
夕食後の薬のうちロキソプロフェン
のPTPシートだけがなかった。
(他10件)
No.83 脳脊髄液ドレナージ回路を開放する際の誤り
No.85 移動時のドレーン・チューブ類の偶発的な抜去
1件
7件
術後、患者を手術台からベッドに移動した際、右内頚静脈に留置中の中心静脈カテーテルがスライディン
グボードに引っ掛かり、13cm固定から6cmまで引き抜かれた。中心静脈カテーテルよりドブポンを投与
しており、一時的に血圧が60mmHg台に低下した。
(他6件)
No.86 禁忌薬剤の投与
No.94 MRI検査室への磁性体(金属製品など)の持ち込み(第2報)
4件
No.95 セントラルモニタの送信機の電池切れ
2件
1件
第1報:医療安全情報No.10
No.97 肺炎球菌ワクチンの製剤の選択間違い
1)
の番号は、
医療安全情報の提供番号を示しています。
◆医療安全情報No.1∼97の再発・類似事例につきましては、
平成27年年報に掲載いたします。
※この医療安全情報は、
医療事故情報収集等事業(厚生労働省補助事業)
において収集された事例をもとに、
本事業の一環として総合評価
部会の専門家の意見に基づき、
医療事故の発生予防、
再発防止のために作成されたものです。本事業の趣旨等の詳細については、
本事業
ホームページに掲載されている報告書および年報をご覧ください。
http://www.med-safe.jp/
※この情報の作成にあたり、
作成時における正確性については万全を期しておりますが、
その内容を将来にわたり保証するものではありません。
※この情報は、
医療従事者の裁量を制限したり、
医療従事者に義務や責任を課したりするものではありません。
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〒101-0061 東京都千代田区三崎町1-4-17 東洋ビル
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参考
No.92 人工呼吸器の配管の接続忘れ
1件
1件
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を制限したり、医療従事者に義務や責任を課したりするものでもありません。