社長メッセージ - トヨタ自動車

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社長メッセージ
「3つの意志」
をぶらさず
未来へ挑戦していく
今年に入り、世の中の潮目は大きく変化してきております。
今期に対する私の想いを一言で言えば、
「私たちの『意志』が本物かどうか、試される年」に尽きると思います。
不確実性が増すなかで、さまざまな変化が起こり得る想定のもと、
経営基盤の強化に取り組んでまいりました。
ことが起きてから対応するのではなく、
どのような状況にあっても3つの「意志」をぶらさず変化に立ち向かうことこそ、
いま、私たちがやらなくてはならないことであると考えております。
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社長メッセージ
平素より、当社への格別のご理解とご支援を賜り、心
でいるTNGA*をさらに強力に推し進めていきます。
進技術開発や新価値の創出をより強力に推進する体制を
より御礼申し上げます。
二つ目は、未来への挑戦として、既存の完成車事業は
整えました。この目的は、「意思決定の迅速化」や「組
もちろん、完成車事業の枠にとどまらない領域にも種を
織の垣根を越えた働き方改革」ですが、私の想いはさら
蒔いていくことです。
に、トヨタの将来を担う人を育てる組織づくりというと
そして、三つ目は、これらを実現するための経営基
ころにあります。
トヨタは、2000年代半ばの急成長の後、2008年の
盤・財務基盤の強化です。経営基盤の強化は、現在のト
組織が大きくなるにつれて、人は「自分ごと」として
リーマンショックにより創業以来初めて赤字となり、そ
ヨタだけでなく、次世代につながる取り組みとして、と
の意識が薄くなり、新しいことにチャレンジする気持ち
の後も幾多の困難を経験しました。そのなかで学んだこ
りわけ重要であると考えております。
が弱くなりがちです。カンパニー制により、一つひとつ
「意志ある踊り場」から「意志ある投資」へ
とは、急成長をしてもそのあと赤字では、ステークホル
の単位を「小さなトヨタ」とし、従来よりも新しいこと
ダーの皆様にご迷惑をお掛けするということでした。い
へのチャレンジがしやすい組織、そして、自らの成長を
ま、私たちは、量だけを拡大するのではなく、「もっと
実感できる会社に変えていきたいと考えています。
いいクルマづくり」を着実に進めることこそが大切であ
り、その先に年輪を刻むような持続的成長があると考え
人づくり
次世代リーダー
ております。
今年4月、当社は組織体制を大きく変更しました。
そうした学びを得て、「意志ある踊り場」として、生
年間販売台数が 1,000万台となった今日では、一つ物
また、マネジメント層にとっても、これまでの機能代
産性の向上や人材育成に努め、次なる挑戦に向かうため
事を決めるにしても、調整に時間を費やし、なかなか決
表から、カンパニー全体の責任者へと変わることで、
の基盤強化を図ってまいりました。
められないということが多くなっていました。他方、他
マネジメントとしての覚悟が違ってくるはずです。「決
そして昨年、私は、「意志ある踊り場」から「実行の段階
の自動車メーカーとのアライアンスでは、クルマづくり
断」という漢字は、「断つ」ことを「決める」と書きま
に入った 」
「これからは意志ある投資を進めていく」と申
における技術、情熱、スピード感だけでなく、リソーセ
す。カンパニー全体のことを考えれば、厳しい決断を下
し上げました。
スの使い方も含め、見習うべきことが多く、自らを見直
す場面もあるでしょう。そうしたときに、その決断に影
その「意志」とは、次の3つです。
すきっかけを与えてくれました。
響される「現場」を思いやることも大切です。リーダー
一つは、「もっといいクルマづくり」のさらなる推進
そこで、当社は、車両を軸にしたカンパニー制を導入
としての資質を磨くオポチュニティとしても、今回の組
による競争力の強化です。例えば、ここ数年、取り組ん
し、組織単位を小さくしました。また、未来へ向けた先
織改正を生かしていきたいと考えております。
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Sustainable Management Report 2016
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社長メッセージ
イノベーションとトヨタらしさ
また、同時に、先輩たちが築いてきたトヨタ生産方式
厳しい事業環境のもとでも「意志」をぶらさず、持続
現在、世の中の潮目は大きく変わろうとしており、社
に代表されるトヨタらしさは、現在に引き継いでおりま
的成長を続けていくためには、マネジメントが自ら、
会動向には不透明さが増しています。一方、クルマその
す。今後もイノベーションを起こしながら、トヨタらし
新しいこと、困難なことに挑戦していく姿、私流に言え
ものも、大きな変革の時期を迎えています。
さも進化させていく、そうして持続的成長を実現してい
ば、「バッターボックスに立つ」姿を、従業員に示して
トヨタは、創業のころから、時代を先読みしたイノ
きたいと考えております。
いくことが大切だと考えております。
ベーションにより成長してきました。今年1月には、未来
社会の鍵となるAI(人工知能)技術の研究開発を加速化
するために、Toyota Research Institute, Inc.を設立。
トヨタは、グローバル販売1,000万台という未知の領
域に足を踏み入れました。私たちの行く道は、前例のな
志をつなぐ
い道であり、自分たちで切り拓いていく道です。そし
これは、今後もトヨタおよびトヨタグループが、未来の
経営者の仕事は、自らの在任期間だけを考えるのでは
て、それは、すべてのステークホルダーの皆様とともに
豊かな社会づくりに貢献し続けていくための「意志ある
なく、トヨタという会社を次の100年へと引き継ぐため
歩んでいく道でもあります。これからも多くの困難が待
投資」です。
の継承者としての役割があると考えています。だから
ち構えていると思いますが、私たちは失敗を恐れず、勇
こそ、これまで築いた「もっといいクルマづくり」とい
気を持って、バッターボックスに立ち続けますので、ス
う志を引き継ぎ、また同時に、次の世代に「いい町・い
テークホルダーの皆様の変わらぬご理解、ご支援をお願
い社会」をつないでいくため、未来を見据えて取り組む
い申し上げます。
「意志」が必要なのです。
2016 年 9 月
トヨタ自動車株式会社 取締役社長
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Sustainable Management Report 2016