「ジェネリック」市場環境整備は進むが課題も山積/間近に迫る

 政府は昨年 月、後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用割合
の目標を「2018年度から 年度末のなるべく早い時期に %
以上」とする内容を閣議決定した。その〝一丁目一番地〟とも言える
のが「 年半ばまでに %以上」という目標だ。九州・沖縄でも、
各県担当課と民間企業、関係団体などがメンバーとなって設置さ
れた協議会が中心となって目標達成に向けた具体的な施策を進め
るなど、動きが慌ただしくなってきた。
6
70
新指標に改めた
理由を厚 生労 働
省は「欧米各国の
算出方法に合わせ
た」と説明してい
る。一部 には「 数
向上により、ジェネリックの普及
字を高く見せるた
めのトリック」という見方もある
今でもゾロ薬のイメージが抜け切
が低かった要因が緩和されるだろ
ェネリック医薬品の販社として半
れていないこと」だ。ゾロ薬とは、
が「欧米各国と比較しやすくなっ
世紀余りの社歴をもつ西部沢井薬
先発薬の特許が切れた後で、後発
う」と推測する。その要因とは「以
後発医薬品を全医薬品で除した割
ジェネリック医薬品の使用拡大
が国策として推進されているのは、 合だったため、新指標は旧指標よ
品
(北九州市)
の江口博明社長は
「ジ
薬がゾロゾロ出てくることから付
たことで、ジェネリックの普及を促
りも数字が大きくなる。新指標の
ェネリックの普及率が低い一番の理
けられた名称で「好意的には受け
「使用割合 %」の算出方法は
「後発医薬品÷(後発医薬品に置
%が旧指標では何%にあたるの
由は認識不足だった。欧米と比較
取られていなかった名残」である。
前と比べると、かなり変わってき
か、厚生労働省は明らかにしてい
されることで、患者の認知度の高
しかし、数量ベースで医療用医薬
す作用が期待される」という肯定
ない。しかし、ジェネリック医薬品
まりが期待できる」と説明する。
き換えられる先発医薬品+後発医
し、介護費や医療費などの社会保
の月刊情報誌「月刊ジェネリック」
品の大半がジェネリック医薬品に
世代が 歳以上の後期高齢者に達
れないからだ。同問題は、団塊の
2025年問題への対応が避けら
障費が急増することを指す。国が
月号では「
(新指標と旧指標の)
目標に設定する「使用割合 %」
が達成されれば、医療費の削減効
数値のここ 年の乖離率からす
10
80
8
2
れば %前後」と試算されている。
48
80
果は 兆円以上と言われている。
かいり
置き換わる環境が整備されたこと
たが、一部の医療従事者の間では、
ジェネリック医薬品の使用割合70%の達成期限が間近に迫っている
薬品)×100」である。かつては、 的な見方が多い。その理由を、ジ
80
福岡県ジェネリック医薬品販社
協会の事務局を務める健将(福岡
80
で「医療機関は、処方する抵抗が
20
市)の箕浦將昭社長は「認知度の
「2025年問題」
迫り
国策として使用を推進
17
75
1
88
Zaikai Kyushu / OCT.2016
間近に迫る
〝使用割合 %〟
の達成期限
70
急拡大する
「ジェネリック」
市場
環境整備は進むが課題も山積
業界 FOCUS
医薬品
軽減される」
(箕浦社長)とみら
薬品の普及率(
年
月から
年 月の平均)が最も高いのは米
国の %だ。ドイツ %、イギリ
番目に高く、
位以内
・ %だった。鹿児島県が ・
%で
全国健康保険協会沖縄支部で
は、慢性疾患で薬を継続して使う
よる品質確認やジェネリック医薬
させた。協議会は、第三者機関に
医薬品使用促進協議会」を発足
歳以上の加入者にジェネリック
医薬品への切り替えを促す通知を
病院や薬局の使用実態調査、研
品の採用マニュアルの作成と配布、
修や講演会などを主な内容とする
設けて、意思表示をしやすくする
リック希望シール貼り付け欄」を
療費適正化計画」に基づいて、ジ
な提供を目的とする「第
県民の健康増進と医療の効率的
期医
ジェネリック医薬品の使用割合
が多い自治体を市町村別にみた
など工夫している。
ェネリック医薬品の普及率の向上
を図った。その結果、 年度の普
及率は目標(旧指標)の %を上
ジェネリック医薬品の使用促進
を図る上で、都道府県が果たす役
さらに県は 年度、地域特性に
応じた取り組みの実施や、薬局で
福岡県の
「地域協議会」
多様な手法で使用促進
場合、上位 には九州・沖縄から
市町が入っている。都道府県別
でトップだった沖縄県からは 市
町が、宮崎県と長 崎県、鹿児島
回る ・ %に達した。
所得が低いためと説明されること
県からそれぞれ一つずつだ(表
アしている先進国が二つしかないこ
の一層の普及促進を図る方針を打
一方、厚 労 省の「 調 剤 医 薬 費
の動向( 年度)
」によれば、都
を示しているとも言える。
入した「不動在庫・備蓄ネットワ
ているほか、薬剤師会が 年に導
医療機関が使用を積極的に進め
でも、都道府県の役割が示されて
使用促進のためのロードマップ」
公表した「後発医薬品のさらなる
協議会事業」を同年度から開始
軽減や医療費の抑制を図る「地域
療の質を確保しながら患者負担の
ち出した。この方針に基づき、医
会の活 用、汎 用 ジ
健所単位での協議
係者、学識経験者などで構成する
市医師会と市薬剤師会、病院関
た。例えば、福岡市では 年 月、
4
年
ェネ リック 医 薬 品
「福岡地区ジェネリック医薬品地
14
道府県で
し、これまで 地区で実施してき
リストの作 成 など
域協議会」が設置された。
8
11
薬品の普及に一役買っている。
に触れられている。
年度以降は、県内の 地域
で基幹病院が採用するジェネリッ
07
3
合が最も高かったのは、沖縄県で
福岡県は 年
月、全国に先 駆け
ク医薬品リストを作成し、医療機
1
6
て「県ジェネリック
14
研修事業の実施、市町村または保
いる。その中には、協議会による
11
ークシステム」もジェネリック医
4
月現在の使用割
13
参照)
。沖縄県が多いのは、県民
1
30
ス %、スペイン %と続く。同
資料で日本は、前年同期と比べて
%伸びたものの %と半分を割
08
12
欧米諸国におけるジェネリック医
福岡県が ・ %で 位、大分
厚労省の「ロードマップ検証検
討事業報告書( 年度)
」によれば、 県が ・ %で 位だった。
26 5
れている。
には 位に宮崎県 ・ %が入っ
た。九州の他県は、熊本県が ・
発送したこともある。また、市町
で 位、長崎県が ・ %で 位、 村の中でジェネリック医薬品の使
「ジェネリック使用促進事業」に
位、佐 賀 県が ・
用割合が最も高い与那原町では、
取り組んだ。また、 年度からは
59
年度から被保険者証に「ジェネ
%で
%
62
59
31 0
が多いがそれだけが理由ではない。 割は大きい。厚労省が 年 月に
っていた。
「使用割合 %」をクリ
57
とは、いかに目標達成が難しいか
6
欧米諸国より低い普及率
自治体で明らかな温度差
7
11
5 59
20
14
35
5 71
3
18
7
10
13
(出展)厚生労働省「調剤医療費(電算処
理分)
の動向
(平成26年度版)」
注1)保険請求のあった薬局の所在地
(2015年3月調剤分)
注2)各市町村で、保険請求のあった薬
局が3軒以下の場合は除外
注3)後発医薬品割合は数量ベース
(新
指標)
15 14
(%)
市町村名
割合
沖縄県与那原町
82.4
宮崎県新富町
82.0
長野県木曽町
81.0
岩手県軽米町
80.4
島根県津和野町
80.3
群馬県中之条町
78.2
山形県大石田町
77.5
千葉県白子町
76.9
岩手県久慈市
76.6
茨城県行方市
76.1
宮城県松島町
75.5
茨城県利根町
75.5
沖縄県八重瀬町
75.4
北海道赤平市
75.4
茨城県かすみがうら市 75.4
長崎県波佐見町
75.3
鹿児島県奄美市
75.3
青森県外ケ浜町
75.3
沖縄県浦添市
75.3
沖縄県糸満市
75.2
順位
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
Zaikai Kyushu / OCT.2016
89
4 10
9
2
67
20 9 61
4
1
65
49
80
32
14
13
83
9
92
73
5
(表1)
地域別に見た
ジェネリック医薬品の
使用割合
関や薬局に配布している。その結
指 標に換 算すれば ・
%にな
使用を促してきた。 年度の診療
リック医薬品に切り替えられた場
リック医薬品の使用促進策がさら
報酬・調剤報酬改定でも、ジェネ
れている先発医薬品が全てジェネ
合の額が「削 減 可 能 額」として
に強化された。主なものは①薬局
り、全国平均( ・2%)をわず
算出された。なお、同一成分のジ
の調剤体制加算の基準引き上げ
ク医薬品を使ってみよう」と題し
る。また、薬務課は「ジェネリッ
おか県政出前講座」も実施してい
取り組みを県民に説明する「ふく
ェネリック医薬品の普及に向けた
「ジェネリック医薬
さらに県は、
品を使ってみよう」と題して、ジ
ている。レセプトデータを用いた
険者に請求する情報が掲載され
医療費など、保険医療機関が保
けた取り組みに着手した。レセプ
ジェネリック医薬品の使用促進
を目指して、福岡県は全国に先駆
ルの産生を抑える「リピトール」
億円の削 減 効 果
対策である。レセプトデータとは、 熱 鎮 痛 薬として知られる「ロキ
トデータを用いた新たな普及促進
のように、数量ベースでの使用率
の傷病名や行った医療行為の詳細、 があるとしている。コレストロー
診療報酬明細書の通称だ。患者
は
ープ」が約 億3000万円、解
外用薬では湿布薬の「モーラステ
えば、現時点での使用割合が低い
合の削減可能額を算出した。例
も薬価が高いものに切り替えた場
こうした動きもあり、国内のジ
ェネリック医薬品の市場は急成長
病院や診療所での使用を促す意
るかのカギを握っているとされる、
見直されている点を特徴とする。
これまでの改定と比べると、病
院や診療所向けの点数が大幅に
基準の引き上げ─などだ。
を新設④入院費用に関する評価
外処方に外来語の使用体制加算
準や点数の見直し③診療所の院
かに上回っている。
ェネリック医薬品の中で複数の薬
②入院の際の使用体制加算の基
て、ジェネリック医薬品の使用促
のは「普及が進んでいない地域や
込まれる薬もあった。
(いずれも国
し、日 医工、沢 井 薬 品、東 和 薬
ネリック医薬品を説明する際、資
進に関する取り組みを説明してい
薬剤の種類など細かい分析が可能
保の場合)同課は「ジェネリック
という。
料として活用されるケースも多い
る。また、県民向けのポスターや
になる」
(県薬務課)という判断
ソニン」が約
割 を 超 えているものの、約
億2700万円の削減効果が見
社だけでも、売上高
図があるのは明らかだ。
年から
倍以上の規模に拡
込まれる国 内市場は、
年には
経済は、 年に8997億円と見
大している。民間調査会社の富士
は
品の大手
今後、細かい対応に生かしたい」
医薬品への切り替えが進んでいな
分析対象データは、県後期高
齢者医療広域連合と県内市町村
とする。
針だ。これまでのパンフレットは、 があった。
による負担軽減が主なアピール点
の国民健康保険の同意を得た上で
い領域が、明らかになったことで
だったが、保険医療財政の節約や
提 供を受けた。分 析 結 果は、削
兆1172億円と約 ・ 倍に
まで拡大すると予想する。
国はジェネリック医薬品の使用
量に応じてインセンティブを高く
内トップの武田薬品工業と世界最
展開している。最大の動きは、国
そうした中、新薬メーカーが本
格的にジェネリック医薬品事業を
4
設定するなど、医療 関係機関に
「ジェネ」
市場が急拡大
卸業界は再編の動き
1
ジェネリック医薬品への切り替え
優れた保険医療制度の継承につな
減効果が高い上位 品目のほか、
自己負担割合、公費 受給、診療
18
1
5
1
がることを訴えるなど内容を工夫
することにしている。
類されている。
報酬明細書の種別、被保険者の
居住市町村など複数の項目で分
%で、前 年 度 と比べて
ジェネリックの使用割合が向上す
パンフレットも新たに作成する方
各医療機関の薬剤部が医師にジェ
医薬品の採用品目を決定する際の
参考になったという声が多数寄せ
価の製品が存在する場合には、最
16
られた」
(県薬務課)という。また、
さらなる使用を促すため
「レセプト分析」
を実施
果、
「病院や診療所でジェネリック
2
レセプト分析では、現在使用さ
09
3
2
15
6
2
90
Zaikai Kyushu / OCT.2016
58
56
30
県によれば、 年度のジェネリ
ック医薬品の数量シェア
(旧指標)
は ・
15
・ %伸長している。これを新
6
2
37
2
大のジェネリック医薬品企業のテ
バの業務資本提携だ。 月に設立
医薬品の卸売り大手のアステム
(大分市、吉村恭彰社長)は「使
用割合 %という目標が達成され
ったとされる。新薬メーカー業界
とも、今後の業界再編の火種にな
発品販社との契約を打ち切ったこ
プが販売網として活用してきた後
業になった。さらに、テバグルー
気にジェネリック医薬品の大手企
医薬品事業を担い、武田薬品は一
は、ジェネリック医薬品の取扱量
物流ハブセンターを稼働させたの
霧島市で同社としては カ所目の
長)と語る。昨年 月、鹿児島県
命を果たしたい」
(吉村次生副社
程度だが、総合卸業者としての使
収益ベースでは医薬品全体の 割
た場合、ジェネリックの取扱量は
した武田テバ薬品がジェネリック
位のファイザーだけでなく、田
が増えることを見越した措置とい
後は生活習慣病薬などの特許切れ
辺三菱製薬、第一三共といった新
は必至だ。
ティー(専門)医薬品の領域でも
医薬品製造・販売会社のサンノー
ス(東京)がエーザイ傘下だった
と山口地区を中心に、半世紀近く
井薬品の江口社 長は「北部 九州
ジェネリック医薬品の専業メー
カーも対策を講じている。西部沢
との差別化を図りたい」と語る。
が続出することから、スペシャリ
一方、広域卸業者によるジェネ
リック医薬品業界への進出も、こ
しっかりと対応することで、他者
月には、医薬品業界売上高
バ(群馬県太田市)を買収した。
にわたって高品質で優れたジェネ
きた姿勢は変わらない。安定した
ホールディングス(東京)は 月、 リック医薬品の安定供給に努めて
医薬品の品質管理試験や安定性
供給体制の整備に努めるとともに、
提 携など、今後も新たな動きを
品の専業メーカーとの資本・業務
一連の動きは、ジェネリック医薬
構築してきたネットワークを活用
る。健将の箕浦社長も「これまで
にも積極的に取り組みたい」とす
エール薬品(同)に資本参加した。 情報提供の根幹を担う人材育成
試験の受託などを主な事業とする
9
東 邦 薬品をコア企業とする東 邦
位のアルフレッサホールディング
2
としに入ってから目立っている。
う側面もある。吉村副社長は「今
2
薬メーカーに新たな動きが出るの
2
1
して業容を拡大したい」と語る。
Zaikai Kyushu / OCT.2016
91
80
4
誘発すると見られている。
広告
2
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