業 界 覆 う 販 売 と 広 告「 2本 柱 」の 減 少 ネ ッ ト 社 会 の 進 展 で 屋

若年層の
〝新聞離れ〟
が加速し新卒採用にも影響
業界覆う販売と広告
「 本柱」
の減少
ネット社会の進展で屋台骨が揺らぐ
新聞業界が部数減による販売収入と広告収入の〝本業減〟に悩ま
されている。インターネットメディアやSNSの台頭・普及などで、
若年層を中心とした読者だけでなく人材採用面でも「新聞離れ」が
加速している。また、この約 年間での部数減に伴い広告総数と単
置かれている苦しい状況があぶり
出されている。調査(調査対象は
歳以上 歳以下の男女7000
人。回答者3845人、 ・ %)
15
では、朝夕刊のいずれかまたは両
方の新聞の閲覧者は、全体の ・
%で前回 年の調査による ・
接触・評価調査」
。新聞やテレビ、
7
%から ・ ㌽下落した。
ラジオ、雑誌、インターネットへ
6
日本新聞協会広告委員会が隔
年で実施している「全国メディア
54
9
83 77
新聞閲覧者の低下顕著
歳以下は5割を切る
の新聞各紙も新たな収益源と人材確保に向け模索が続いている。
ターネットに流れており、この傾向は今後も続くとみられる。九州
価がともに年々減少。これまで新聞に投下されていた広告費がイン
20
ざまな角度から集計、分析してい
者のライフスタイルなどを、さま
にとどまった。新聞ほどの落ち込
一方、テレビの 視 聴 者 は ・
3%で、前回の ・ %から微減
9
19
みはなかった。
97
る全国的な調査である。
0
これに対し、インターネット利
用者は ・4%で前回の ・ %
98
年 月から 月にかけて行
われた最新の調査からも、新聞の
の接触状況や印象、購読者・視聴
79
13
5
70
66
8
Zaikai Kyushu / OCT.2016
47
業界 FOCUS
新聞 ─ ①
15
11
12
2
より ・ ㌽増加した。検索サイ
増している」
(同)ことは、今後の
いだけにショックは大きかったよ
新聞の存在意義を揺るがしかねな
以外のニュースサイトでの閲覧も
うだ。 年の調査ではその傾向が
顕著になっており、インターネッ
70
7
5
75
22
50
60
2012年
2013年
2014年
2015年
総広告費
58913
59762
61522
61710
マスコミ4媒体広告費
28809
28935
29393
28699
6242
6170
6057
5679
雑誌
2551
2499
2500
2443
ラジオ
1246
1243
1272
1254
テレビ
18770
19023
19564
19323
8680
9381
10519
11594
(単位億円、
電通まとめ)
「年金収入だけでは月3000円
の講読料も負担になる」といった
理由に加え、
「マンション住まいの
シニア世帯にまで、新聞受けに取
りに行くのがめんどうだからとい
うケースも出ている」と表情を曇
らせる。
一方、テレビと同様に長年基幹
メディアとして活用されてきた広
年)後に顕著にな
告媒体としての収入減少もリーマ
ンショック(
り、
「最近では販促媒体としての
効果をクライアントが求めなくな
ってきている」
(広告関係者)とい
う。背景のひとつには「ABC部
れていることもあるのかもしれな
数と実売部数の実態を見極めら
ージしやすいだろうか。
い」
(同)とも話す。
年(1〜
先述したインターネットメディ
アの台頭などによる情報入手の多
ごとなくなっているといえばイメ
媒体別の広告費(2012〜15年)
月)における日本の総広告費を
様化が大きな要因だが、近年では
みてみると、前年比100・ %
報の活用が広がっているため「今
の 兆1710億円。 年以来4
ネット社会の進展により新聞業
界が直面している経営問題が、こ
シニア層にもじわじわとネット情
部は「衝撃的数字だ。特に次代を
は読者の主体となっているが、こ
販売・広告両面で減少続く
ネットが侵食する
〝2本柱〟
なっている。
間の差がはっきりと表れた格好に
9
年連続の増加で、 年に続いての
兆円超えになった。しかし、新
で新聞に関心を示さない若者が急
えられる。
「スマホによる情報収集
が多いことが大きな理由として考
使って社会情報を得ているケース
の普及に伴い、インターネットを
若い世代の新聞離れへの加速の
背景にはスマートフォン(スマホ)
るが、いくつかの県紙が毎年、丸
国内では毎年、100万部ほど
の部数が減少しているとされてい
える。
台骨を揺るがす由々しき事態と言
入の〝2本柱〟であり、まさに屋
ある。この二つは新聞社の基幹収
でいないとは…」と驚きを隠さない。 る販売と広告減の「負の連鎖」で
いわれることが増えている」とか
支払いが大変だからやめたい』と
者は「お年寄り世帯から『毎月の
る。福岡市 内のある販売店関 係
やめる人が目立つようになってい
きたシニア層の中にも新聞購読を
惧する。現に長年新聞に親しんで
の先は…」と別の新聞社幹部は危
ていた費用がインターネット広告
示した。これまで新聞に投下され
一方、インターネット広告は前
年比110・ %の大きな伸びを
ているのである。
から5679億円に大幅減少した。
聞の広告費は 年の6057億円
年と比べると563億円も減っ
14
2
12
48
Zaikai Kyushu / OCT.2016
トでの調べ物が ・2%、新聞社
・4%と高い割合を示し、一定
数が従来、新聞から得ていた情報
トとの接触の有無は、 〜 歳が
い割合を示した。この現象は、新
おり、すでに対策を打っていると
一方、 代は ・ %、 代は
・ %、 代は ・ %で世代
かる。
が ・5%、 代が ・8%と高
年代別の割合を見てみると、年
代が若くなるにつれて新聞に接触
聞社の人材確保にも影響が及んで
・1%、 代が ・7%、 代
19
30
15
する割合が低下していることが分
とを示唆する結果となった。
をネットを介して入手しているこ
15
ころもでている(
。後述に対策事例)
たのに対し、 代は ・ %から
・ %に、 代は ・ %から
・4%に、 代は ・ %から
・ %に、 代は ・ %から
・ %にいずれも減少。 から
歳は ・ %から ・ %とな
り、 割を割り込む結果となった。
47
08
94
90
20
40
94
、 代が 、 年ともに
%以上でほぼ割合は変わらなかっ
90
こ約 年間続いている部数減によ
3
9
9
5
9
15
9
15
12
15
60 75 83 91
43
担う若年層がこれほど新聞を読ん
14
20 30 40 50
この結果について、ある新聞社幹
12
13
93
20
6
6
6
6
インターネット広告費
94
3
70
2
9
6
54
5
新聞
79
60
19 53 61 78 84
部)は %から %に3㌽の微減
全国紙に押されている。部数は毎
万2000部)
、朝
大分県
大分合同新聞 (40%) 読売新聞
(11%) 朝日新聞
(9%) 60%
宮崎県
宮崎日日新聞 (41%) 朝日新聞
(7%) 読売新聞
(6%) 54%
鹿児島県
南日本新聞
(4%) 朝日新聞
(3%) 46%
あるようだ。
日新聞(約
(4%) 51%
に流れているとみられている。先
だった。
(7%) 朝日新聞
の広告関係者は「自動車や家 電、
日新聞(約9万4000部)
、読
売新聞(約9万4000部)に次
熊本日日新聞 (40%) 読売新聞
通信関連などのナショナルブラン
一方、 下 落 幅 が 大 き かっ た
の は 熊 本 日 日 新 聞( 朝 刊 =
ぐ約3万6000部(いずれも朝
熊本県
ドの新聞活用が減っている。一方、
万 1 0 0 0 部、 夕 刊 = 約
約
(9%) 48%
全ての新聞で普及率下落
高かった県紙も下落顕著
刊のみ)
。
全国紙 社が、現在は福岡市
に拠点をシフトしているとはいえ、
(29%) 西日本新聞 (10%) 読売新聞
西部本社を置いて長 年拡販に力
長崎新聞
ら %へ 桁のダウン。大分合同
長崎県
を入れていたこともあり、市民意
(8%) 64%
万部、夕刊=
(42%) 西日本新聞 (14%) 読売新聞
webなどで動画を配信したいと
5万 000部)で、 %から
及率の比較からその程度をみてみ
新聞(朝 刊=約
佐賀新聞
いうクライアントの要望が増えて
%に ㌽減少した。
南日本新聞
(朝
広告収入の減少には、総件数だ
けでなく、単価の下落という側面
よう。
佐賀県
では、九州で発行されている地
元紙と全国紙の落ち込みはどれほ
も大きい。通常単価の数分の一と
約 万部・セット紙)は %から
%に、宮崎日日新聞(朝刊=約
万部)は %から %に低下し
(16%) 毎日新聞 (13%) 52%
いる」と説明する。
言われる通信販 売、旅 行、書 籍
ちなみに新聞普及率とは朝刊
部数を住民基本台帳よる世帯数
刊=約 万7000部)も %か
などの新聞広告はその最たるもの
で割ったもので、県内の新聞発行
ている。
(23%) 読売新聞
年の新聞 普
で、地方紙を見ると近年で一気に
部数に占める占有率とは異なる。
ての県で下落している。
西日本新聞
年と
増えている。このような状況は常
年の朝刊部数を、同年1月1日
現在の住民基本台帳よる世帯数
で割って算出したもので
地域により読者に差異
経済的結びつきが影響
各県地元紙は足元では、全国
紙に比べ高い普及率を保っている
が、中には地域ごとの特色が出て
いる。
市では苦戦していたため 年に本
下記の表は各県の普及率トップ
3を表したもの。西日本新聞は福
㌽
53
減)に減少している。県
約 万7000部)は
福岡県
どなのか。
54
41
岡県を地盤とするものの、北九州
%(
49
紙の 佐 賀 新 聞( 朝 刊=
年は
31
2
拡大に注力した。しかし、いまだ
3社計
21
39
21
21 40
%から %(5㌽減)に、 社体制にして、紙 面拡充と部数
長崎新聞(朝刊=約 万
日本ABC協会のデータと住民基本台帳による世帯数から算出
(2015年)
15
17万7635部
49
10
(39%) 読売新聞
ある。
ま ず、福 岡 県の 普 及
率首位は九州のブロック
紙である西日本新聞(朝
刊=約 万 000部、
夕 刊 =8 万 部 )は、
9
23
年は %の普及率だった
05
9
47
18
Zaikai Kyushu / OCT.2016
49
29
なお、普及率は日本ABC協会の
79万3093部
12
32
態化しており、九州の新聞社の中
朝日新聞(西部)
毎日新聞(西部)
3
40
30
14 8
各県でのトップシェアは地元紙
だが、全国紙を含めて普及率は全
21万0392部
39万9925部
南日本新聞
79万3096部
には 年前と比較して広告による
23万6725部
23万2365部
普及率3位
15
42
60万7599部
宮崎日日新聞
大分合同新聞
67
15 32
13
31万6962部
30万1449部
19万9640部
91万9827部
21万0074部
37万7134部
長崎新聞
普及率2位
普及率1位
05
が、
(日本ABC協会発行社レポート、朝刊のみ)
営業収入が半減しているところも
佐賀新聞
54万7097部
読売新聞(西部)
17万9302部
熊本日日新聞
19万1011部
13万7517部
13万9829部
西日本新聞
66万1768部
日本経済新聞(西部)
20
84万8071部
66万9985部
2005年12月
2015年12月
10年前との販売部数比較
関係者)という。一方、西日本新
聞という意識が強い」
(別の広告
識の中で「西日本新聞は博多の新
新聞は3位の約2 00部である。
聞がトップの約1万部。大分合同
込まれている日田市では西日本新
ている。これ は 全
ルの転 換を模 索し
もにビジネスモデ
( 約 8600 部 )
、読 売 新 聞
だ が、 鳥 栖 市 で は 西 日 本 新 聞
佐 賀 新 聞 は 県 都・ 佐 賀 市 で
は圧 倒 的( 約5万2000部 )
ている。
で北九州を補完しているといわれ
読が多いものの、地域の情報を細
から詳述)
。宮崎日日新聞との併
部でトップといわれている(
頁
リー新聞」
(延岡市)が4〜5万
ないが、県北地域では「夕刊デイ
に入っていないため数字は出てい
宮崎県では夕刊地方紙(日刊)
が健闘している。日本ABC協会
国 紙では近年、経
り 組 んでいる。全
「社業改革」に取
なんらかの形での
化、再構 築を主に
グループ事 業の強
わず 言 えることで、
るためとみられている。
鳥栖市が福岡の経済圏に入ってい
また、離島を有する鹿児島県で
は奄美群島 島を対象として、地
という。
いる。地 方 紙 との
集中〟をすすめて
54
国紙、地方紙を問
(約3700部)
、朝日新聞(約
営 資 源の〝選択と
聞は筑後地域で強く、筑後の収益
2600部)に次ぐ約2000部。 かく伝える姿勢が支持されている
7
域に根差した南海日日新聞
(本社・
や しているが、全
委託する地域を増
協 業 化では、宅配
長 崎 県 で 特 徴 的 なの は 佐 世
保 市。トップは西日 本 新 聞で約
奄美市)が 万3000部程を発
版の紙面委託も含
賃 収で本 業( 新 聞 )の顔をつく
国紙の中には地域
は、県紙の熊本日日新聞が各地域
めた、実質的な地方撤退に踏み切
れる」
(先の新聞関係者)と言わ
行している( 頁で詳述)
。熊本県
をガッチリ押さえているが、減少
っているところもある。
位になっている(いずれも
約1万8000部)
。これは近接
傾向にあることは例外ではない。
販売減と広告収入減という本
業での二重苦にも先の関 係 者は
なっている。
組みはコスト削減での対策が主に
きはさまざまだが、現状での取り
する夕刊を廃止したりと、その動
が今年3月限りで山梨県で発行
年に産経新聞が整理・校閲
部門を分社化したり、朝日新聞
を運営する「KOMPEITO」
「OFFICE DE YASAI」
菜を配達する健康支援サービス
東京都内で160の企業へ新鮮野
ジネスを4月に発表した。一つは
配 達 網を活 用した二つの新 規ビ
れているが、新 聞 販 売 店の戸 別
半程度かかる。福岡市への所要時
れているが、両市間は車で1時間
長崎県は長崎市の県南地域と佐
世保市の県北地域に経済圏が分か
間とさほど変わらないため「より
「現状では、グループ事業が強い
13
「所有不動産での安定
同社は、
う「アクシスモーション」との資
ンやアパートなどの管理業務を行
との業務提携。もう一つはマンショ
大きな経済圏である福岡市の情報
ただ、将 来に向けては、各 社 と
を得たい」
(同)という意向が部数
に表れているとみられる。
大分県でも、福岡経済圏に組み
収入減への対応急務も
全国紙含めて模索続く
経済圏への所要時間が関係してる
数の
聞、県 紙の長 崎新聞はほぼ同部
2万2000部、2位は読 売 新
8
2
56
全国紙と地域企画を強化してい
その中でも特に注目されている
る県紙はまだ余力がある」と話す。 のが朝日新聞の取り組みだ。
ようだ。
3
50
Zaikai Kyushu / OCT.2016
ている。提携により販売店は朝夕
配達、在庫品の回収と集金も行っ
「KOMPEITO」は顧客企業
へカット野菜や惣菜などの商品を
企業だ。
で、提携先はいずれもベンチャー
源確保を模索する取り組みの一つ
折り込みチラシに次ぐ第3の収入
ってくるが、
「販売店側が本気で
いることからもその本気度が伝わ
資に応じ、取締役を1人派遣して
シスモーション社の第三者割当増
り組みと言える。朝日新聞がアク
性を本社と販売店が共有した取
ネスを積極的に推進していく必要
の経営資源を生かした新しいビジ
本・業務提携である。新聞購読料、 制度を支えていくために、販売店
営全般での指南を受けている。
ジネスモデルの再構築に向けて経
を迎え、グループ事業を含めたビ
前社長の石井歓氏(現副会長)
外部アドバイザーとして福岡地所
動産の専門家と連携した事業着
「不動産部」をスタートさせ、不
と表情をゆがめる。
とみられているのかもしれない」
なっている。今では構造不況業種
と違って志望へのこだわりもなく
収益源確保へ本格始動した。また、 は、業界の一企業であって、以前
手など新聞関連事業とは異なる
このような部数減による経 営
環境の変化は約 年前からじわ
読まない今の若者にとって新聞社
退することが増えている。新聞を
で内定を受けた新卒者が、入社辞
なるという施策では」
(先の新聞
取り 組まなければ淘汰の対象に
舗ごとに配送される発泡スチロー
社幹部)とも見られている。
刊配達の空き時間を利用し、店
ルの箱を受け 取 り、保 冷 剤を入
じわと続いていた。もはや明治初
期から基幹メディアとして脈々と
る。混雑する都心部では、自動車
るクラウドソーシングサービス
「九
また、西日本新聞は昨年8月、
インターネット上で仕事を仲介す
万円を支給
新聞が、昨年から採用 内定者に
新聞業界では先述したように
採用面にも影響が出ており、佐賀
の記者を減らして契約社員を増
社OBは、
「内部体制でも正社員
いることは間違いない。ある新聞
受け 継がれてきた本 業でのビジ
で配達するよりバイクが有利にな
州お仕事モール」をスタートさせ
入社準備金として
人材確保にも影響及び
採用内定者に準備金も
る。届け先と商品、個数などの情
た。業界大手ランサーズ(東京)
ら支度金が支払われたり、転職
社業改革の必要性を頭では分かっ
ていない。長年の成功体験の中で、
べると変化のスピードに追いつい
やすなどのコストダウンには取り
している。
情報サイトを通じて採用が決まっ
てもどのように手を打てばいいの
と提 携し、東 京に集中する仕事
た場合に転職祝い金が出るケース
か、暗中模索の状況なのだろう」
という。
クラウドソーシングは、企業が
翻訳やwebサイト、ロゴデザイ
はあるものの、新聞社から入社準
と指摘する。各社の新しい取り組
組んでいるようだが、他業界に比
託を受ける。販 売 店の従 業員が
ン制作などの業務を発注し、個人
備金が支払われる例は非常に珍し
みが今後どのように経営にプラス
を九州に誘導し、九州経済の振興
仕事の合間にマンションやアパー
がサイト上で受注する仕組み。今
い。年齢と学歴が不問であること
に働いていくのか、
「これからは本
製 造業やIT業界など、人材
不足が顕 著な業界では企業側か
トを訪問し、物件状況を写真つき
回のサービスは、地元企業からの
も特徴的だが、裏を返せばそれだ
業以外の収益力で、
〝新聞の顔〟
を図りたい考えだ。
で報告したり、簡単な清掃などの
業務発注も想定している。西日本
け人材確保に苦労しているという
を支えていく時代になる」
(同)
「アクシスモーション」との資本・
業務提携では、販売店は不動 産
業務も行う。こちらも報告はスマ
新聞は将来的に、業務に適切な人
ことだろう。このような状況は佐
とされているが、その取り組みは
販売店を支えてきた購読料と
チラシの折り込み収入が減少する
7
オーナーや管理会社から業務委
後、順次全国に広げていくという。 材を紹介する事業展開も計画し
ートフォンのアプリから行う。今
ている。
賀新聞に限ったことではないよう
まだ始まったばかりである。
ネスモデルが、通用しなくなって
報はスマートフォンに通知される
れてバイクで配達する仕組みであ
20
で、ある新聞関係者は「一次試験
Zaikai Kyushu / OCT.2016
51
30
また同社は、 月に「商品戦
略特命チーム」を設置。 月には
中、これまで守ってきた戸別配達
4
「九州に役立つメディアを
目指しグループ力を結集」
西日本新聞の朝刊部数が 万部程
ます。今の朝刊、夕刊、スポーツ
柴田 部数も広告費も伸びて
いた時代は、同じビジネスモデル
新聞社も生き残るためには変わら
す。この傾向は2000年代に入っ
定期読者がなくなっている状況で
度ですから、うちと県紙1紙分の
入を回復させるのは厳しいと思い
を勘案すると販売と広告だけで収
たが、今は250億円です。現状
柴田
年のピーク 時 は
400億円の営業収入がありまし
新規事業の中で、強化したいの
でいく取り組みは不可欠です。
力はしますが、新たな事業で稼い
みにできるだけ歯止めをかける努
52
Zaikai Kyushu / OCT.2016
紙という 新聞が本当に顧 客(読
者)に受け入れられているのかに
ついて自問しています。ネット配
信(qBiz、西スポプラス)も
ありますが、今のビジネスモデル
が転換期を迎えていることは間違
いありません。
新規事業で
〝新しい財布〟
「不動産部」
を7月に新設
新聞社の屋台骨は販売収入と
広告収入で支えられています。部
を続けていれば一定の収益を挙げ
─では、どのように事業を再
生させていかれるのでしょうか。
数減は広告収入減にも直 結しま
年で社 会動 向における情
ーネットの登場とその後の進展で、
られていました。しかし、インタ
年〜)から減
す。広告に関しては、とくにリー
マンショック後(
少幅が大きくなりました。現状は、 この
各新聞社の経営状況には濃淡があ
ざるを得ません。
部数減と広告減のダブルパンチで、 報の求め方が大きく変わりました。
るものの、どこも厳しい状況です。
〝新しい財布〟を作ろうと考え
ています。現在、本社の営業収入
てから顕著になってきました。
です。当然、販売と広告の落ち込
の9割は、販売と広告によるもの
─販売と広告の基幹収入で経
営を立て直すのは難しいのでしょ
100万部ほどが減少しています。 うか。
状 況でここ数 年 は、毎 年 全 国で
部数と広告収入の減少という〝二重苦〟が止まらない新聞業界。
ブロック紙として九州各県はもとより、東京や海外にも拠点を構
える西日本新聞社も例外ではない。6月に社長に就任した柴田社
長はこの難局にどのように立ち向かおうとしているのか。
販売、
広告頼りから脱却へ
転換期のビジネスモデル
柴田 新聞 業界 全体が厳しい
20
08
柴田 建哉 社長
─ 新聞業界の現 状についてお
聞かせください。
70
【プロフィル】
北海道大経済学部卒業後、入社。那覇支局長、バ
ンコク支局長、報道センター部長など歴任。2013
年、執行役員・販売局長兼お客さまセンター長、15
年取締役(営業担当、営業本部長・広告局長委嘱)、
6月から現職。福岡県糸島市出身の57歳。
97
業界 FOCUS
新聞 ─ ②
西日本新聞社
TOP INTERVIEW
しました。
7月1日付で「不動産部」を新設
社でも珍しくありません。当社も
事業を支えている収益構造は、他
産である程度の収益を挙げ、新聞
は不動産事業です。新聞社が不動
ています。今から種をまいてしっ
甘いものではないのはよくわかっ
体化させていきます。新規事業が
新しい財布の創出についてはこ
れら三つの取り組みを、早急に具
室」で検討を進めています。
しいセクションの「ビジネス開発
る分野で収益をつくれないか。新
社との協業などはその先鞭です。
います。販売店の統合、他の新聞
うな形が一番有効なのか検討して
ていくことが必要であり、どのよ
では質を落とさずに情報を発信し
はりをつけないといけません。一方
られるとは思っていません。めり
ですが、今の体制を未来永劫続け
業は、外 部の成長 力の取り込み
方、新聞事業に関わっていない事
にサポートするかを探ります。一
関わる企業は本体をどう効率的
ずそれを整理します。新聞事業に
新聞事業とそれ以外の事業が
今は混然一体となっているので、ま
するのか。
すが、今は不動産管理がメインで
構造改革にも取り組みます。
せんべん
当社には「西日本エルガーラビ
ル」というグループ会社がありま
の拡充をしていきます。社内の人
す。今後は家賃収入や管理だけで
材だけでは発想も限られますので、
や提携、M&Aも含めて新規事業
かりやっていき、並行して社内の
ブロック紙であるため九州各県
はもちろん、東京、大阪や海外に
はなく、当社が持っているリソー
外部からの指南を受けているとこ
の動向は九州域内にとっても魅力
情報が集中していますので、福岡
ています。九州域内の行政や企業
者にとっても有益であると自負し
ことができます。それは九州の読
らです。近年は福岡にヒト、モノ、 加味して、記事に厚みを持たせる
るつもりはありません。
を失いかねません。ブレてまでや
しての独自性や軸がブレたら全て
他社とのアライアンスは積極的
に進めていきますが、報道機関と
的な観点からの報道ができますし、 ろです。
も拠点があり、コストはかかりま
─事業再構築への具体的な動
きは、これからということですね。 す。しかし、県紙とは違った多角
スを活用して、新たな収入につな
げる開 発なども含めた不動産戦
特命チーム」を設置し、朝刊、夕
的な情 報です。福岡の情 報を他
に頼られる面も大きく、そのよう
西日本新聞は来年創刊140
周年を迎えます。約120年間は、
官邸や中央省庁、海外の見方も
刊、
スポーツ紙という今の商品(新
県に届けるという役割も強くなっ
な役割が果たせるのはブロック紙
柴田 すでに着手していること
もありますが、本格的にはこれか
聞 )が現 代の多 様 なライフタイ
ています。逆に九州各地の最新情
既存のビシネスモデルでよかった
略を考えています。
ルの中で「本当に受け入れられて
報を福岡に届けることもできます。 だからです。
わけですが、この 年間、新聞業
ループの意識も変わりません。
え、覚悟を決めないと、社員やグ
大切なのはわれわれ経営陣の変
革への覚悟です。こちらが腹を据
て知恵を絞っていきます。
ていくのか。グループ力を結集し
九州に役立つ、九州を元気づけ
るために西日本新聞はどう変わっ
界は激変にさらされています。
20
もう一つは新聞事業のあり方に
ついてです。 月に、
「商品戦 略
いるのか」という課題について検
そのような強みは九州のブロック
─ ブロック紙としての体制維
持と事業 改革との兼ね合いでの
については。
─川崎隆生会長が議長の「グ
ループ経営会 議」での取り組み
グループ企業の改革急務
他社とのアライアンスも
討しています。受け入れられてい
できます。今の朝刊、夕刊、スポ
難しさもありますか。
みをさらに生かしていきます。
ないのなら、どう変えていくのか。 紙ならではのものであり、その強
近年、新しい媒体が次々に出てき
ーツ紙以外を読んでいる人たちに
ており、読者は媒体を選ぶことが
も受け入れられる媒体を創り出せ
柴田 課題はグループ企業
社の改革です。新聞事 業を補完
20
う。営業布陣についても同様です。 する企業とそうでない企業をどう
い上げて発信していくことでしょ
柴田 理想は各所に満遍なく
人を配置して、満遍なく情報を吸
ないのかを模索している最中です。
さらに全く新しいビジネスにも
挑戦します。新聞周辺事業と異な
Zaikai Kyushu / OCT.2016
53
4
だ、日本 経 済 新聞だけは琉球新
は漸減傾向にある。同社によれば、
心とする新聞離れなどで購読部数
る。離島の宮古島市を中心とする
「 年前と比べて5000部ほど
報と宮古八重山新聞に、石垣市を
それでも、エリア内における占有
減少している」
(佐藤社長)という。
島)では宮 古新
販売エリアでの存在感が県紙よ
り高い地域紙も多い。例えば、夕
率は 割ほどを維持している。県
全体では約 %を占める宮崎日日
6
(鹿児島県鹿屋市)のように日・
毎日発行されるもの、南九州新聞
イリー(宮崎県延岡市)のように
夕刊もある。その夕刊も、夕刊デ
地方紙と同じように朝刊もあれば
日本新聞は、奄美群の 島を販売
県内で占有率が
紙の占有率が軒並み高い。鹿児島
に詳 述)
。また、離 島では、地域
を大きく上回っている(次ページ
合)は、県紙である宮崎日日新聞
宮崎県北の 市 町を販売エリ
アとする夕刊デイリー新聞社(宮
ーツイベントが週末に集中した時
ため」と説明する。例えば、スポ
新聞が、県北では約 %であるこ
祝日を除いた日に発行されるもの
エリアとする南海日日新聞と奄美
崎県延岡市、佐藤公昭社長)も、
8
2
4
宮崎県北の情報を深掘り
発信する
「夕刊デイリー」
がある。また、当日の日中に配達
新聞には及ばない。
などは、数日に分けて記事を掲載
回発行される週刊、季節
5
割を超える南
される日刊もあれば、週 日刊、
他紙と同様、人口減少や若者を中
部数は圧倒されている。
67
10
沖縄県紙である琉球新報と沖
毎週
1
8
を創業以来、徹底して貫いている
その理由を佐 藤社長は「地域
の話題を読者に届けるという姿勢
持層が多いことが分かる。
とを考えると、夕刊デイリーの支
45
54
Zaikai Kyushu / OCT.2016
〝地元にこだわった〟
紙面づくりで支持得る
読者との密着度で県紙と差別化
近年高い存在感を示す
「地域紙」
縄タイムスも同様だ。 紙を
合 計した占 有 率は本 島では
%以上とも言われるが、背
景には全国 紙は午 後からし
報社に印刷と宅配委託しているた
現在の購読部数は 万980部で
か 届 か ないことが あ る。た
めに県 紙と同様に配布されてい
九州・沖縄にも、地域で高い存在感を示す
「地域紙」
が複数ある
中心とする八重山地方( 島)で
宮 古 島地方(
4
「地域紙」
という。
九州・沖
都道府県の一部を発行エリアとする新聞を
縄には、
地域紙を発行する新聞社が 社ある。
発行形態や部数、
紙面
の大きさは各社で異なるが、
中には販売エリア内の発行部数が県紙
を上回るところもある。
各社が経営の根幹に据えているのは、
地域に
根ざした情報を地道に拾い上げ、
地域住民に届けるという徹底した
地域主義だ。
そこには
「読者とともにつくる」
という姿勢が表れている。
ごとに発行される旬刊もある(表
2
は八重山毎日新聞と八重山日報に
参照)
。
90
刊デイリーの発行エリアでの占有
一口に地域紙と言っても、発行
のスタイルはさまざまだ。例えば、 率( 全紙の発 行 部 数に対する割
さまざまな発行スタイル
中には県紙上回る存在感
2
20
1
8
10
業界 FOCUS
新聞 ─ ③
●(表1)九州・沖縄の地域紙
読者の支持が広がった
長期シリーズ
「光と影」
する。
「できるだけ写真を多用し、 長)という思いがある。
関わった人の名前を含めて情報を
掲載することにこだわっている」
( 松 永 和 樹 常 務)からだ。お悔
やみ欄が、同社にとって重要な広
に至ったのは「ジャーナリスト精
は語る。当時の県北は「日本一の
その思いは「郷土の歴史と伝統を
現状を変えたいというパワーが感
明け」などとやゆされていた半面、
「北は夕暮れ、南は夜
神を体現するためだった」という。 陸の孤島」
尊重し、県民の利益と幸 福増進
じられないことへの危機感もシリ
ーズを開始した理由だったという。
にまい進する」
「読者とともにつく
告収入源であるのは間違いないが、
る紙面で、地域の活性化に貢献す
夕刊デイリーが地域の情報発
信に徹底してこだわる姿勢として、 る」という社是に込められている。
読者にとっては毎日、欠かさずチ
その後、シリーズ名を「宮崎県
の光と影」に変更し、高速道を含
活動や地域活性化、医療、福祉
部の発行部数でスタートした。両
にも協力を取り付けて約4000
にすることに努めた。そこには
「読
から県内にある光と影を浮き彫り
むインフラ問題だけでなく、経済
者らだった。編集方針の違いから
分野に至るまで、さまざまな観点
ェックする貴重な情報源でもある。 今なお社 内に語 り 継がれている
同社の設立メンバーは、競合
紙の 社「 夕 刊 ポケット」の記
1400回ほど続いたシリーズ
「宮
人余りが退社し、販売店
1963年 月の創刊当時、県
内には延岡市を拠点とする地域
者が情報に触れることで、自ら考
逸話がある。創設に至った経緯と
さらに「取材した以上は必ず掲
載する」
(松永常務)ことを基本
有志
いるからだ。そこには「記事掲載
紙がしのぎを削る間に他の 紙は
夕刊新佐賀新聞社
佐賀市
月2回
壱岐日々新聞社
島原新聞社
対馬新聞社
壱岐市
島原市
対馬市
週刊
朝刊
週刊
3,200
15,000
2,800
天草毎日新聞社
人吉新聞社
天草市
人吉市
朝刊
日刊
3,000
15,000
今日新聞社
別府市
日刊
15,000
宮崎中央新聞社
宮崎市
夕刊デイリー新聞社 延岡市
週刊
夕刊
1,500
40,980
奄美新聞社
南海日日新聞社
南九州新聞社
奄美市
奄美市
鹿屋市
朝刊
11,000
日刊
23,875
夕刊(日・祝日除く) 2,000
宮古新報株式会社
宮古毎日新聞社
八重山日報社
八重山毎日新聞社
宮古島市
宮古島市
石垣市
石垣市
日刊
朝刊
日刊
朝刊
淘汰され、
月からは夕刊
いう当社にとってプラスの効果を
う狙いがあった。
生んでいたことは否定しない」と
デイリーだけになった。後発だっ
影」だった。
語る。一方で「高速交通体系から
た夕刊デイリーが、エリアの住民
同シリーズは、 年 月に「我
が宮崎県北どこへ行く」というタ
取り残されることで生じる負の影
佐藤社長は「延岡市が陸の孤
島であったことは、全国紙や県紙
イトルで始まった。
「県都・宮崎市
響の大きさを考えると、当社への
から支持を得られたきっかけにな
周辺では陸・海・空のインフラ整
影響などは二の次と考えたのだろ
が読者の手元に届くのが遅れると
備が進み、その恩恵を受けている
う」と当時の方針を推測する。
有しながら最も近い高速道のイン
ターチェンジまで 時間以上を要
いる課題を議論する契機にしたい
夕刊デイリーにはもう一つ、重
「読者とともにつくる」
紙面には広告も独自性
一方で、県北は人口 万人以上を
ったのがシリーズ「宮崎県の光と
えるきっかけにしてもらう」とい
紙 存 在した。厳しい競 争
朝刊
週刊
旬刊
週5日刊
年
紙が
環境 下であるにも関わらず創刊
大牟田市
前原市
久留米市
大牟田市
と う た
を楽しみに待っている方々の気持
ちに応えることが使命」
(佐 藤 社
有明新報社
糸島新聞社
久留米日日新聞社
日刊大牟田新聞社
3
係を醸成する上で重要」と考えて
崎県の光と影」だ。
4
方針にするのも「読者との信頼関
1
という思いがあった」と佐藤社長
Zaikai Kyushu / OCT.2016
55
1
13,000
15,400
6,000
16,000
発行形態 発行部数
92
4
所在地
9
79
10
1
7,200
10
20
していた。この状況によって生じて
(出処)
各社ホームページおよび弊社取材をもとに作成
12,500
13,000
3,000
15,000
発行元
新聞名
【福岡県】
有明新報
糸島新聞
久留米日日新聞
日刊大牟田
【佐賀県】
夕刊佐賀
【長崎県】
壱岐日々新聞
島原新聞
対馬新聞
【熊本県】
天草毎日新聞
日刊人吉新聞
【大分県】
今日新聞
【宮崎県】
みやざき中央新聞
夕刊デイリー
【鹿児島県】
奄美新聞
南海日日新聞
南九州新聞
【沖縄県】
宮古新報
宮古毎日新聞
八重山日報
八重山毎日新聞
視する運営方針がある。
「読者と
社長は「速報性のあるラジオと記
論による郷土の近代化、文化、経
村山三千夫社長)の社是には「言
る点も特徴だ。
外の主要なニュースを掲載してい
月からは
録性のある新聞のメリットを生か
ショッピングなど生活に欠かせな
立の狙いを説明する。現在は、市
テムを構築したいと考えた」と設
践だ。夜間緊急医療や道路情報、 して、相互に情報を提供するシス
が創刊されたのは終戦後間もない
ひらく」という一文がある。同社
済の向上をはかり、奄美の明日を
イスブックも開設した。
月のホームページと併せて、フェ
紙面をカラー化したほか、 年
年
共につくる」ことの具 体 的 な 実
い情報のほか、読者からの投稿に
リア内に150カ所ある販売拠点
プ」などが、地域の夕刊紙ならで
アの情報を紹介する「ガイドマッ
れる居酒屋などの特集、特定エリ
の「延岡大使祭」や盆前に掲載さ
だと言える。広告では、毎年4月
触れており、夕刊では必要ないと
者は朝 刊やテレビで全国ネタに
ったからだった。この結果は「読
情 報源として夕刊デイリーを利
独自に構築された配達制度も、
用している読者が多いことが分か
その好例だろう。配達の中心を担
はの手法だと言える。
考えていた」
(松永常務)同社が、 なぐことを使命に位置付けている
に関するアンケート調査で、主な
さらに、 年 月に時事通信
社と配信契約を結んだのは、購読
り組んでいる。
を行い、新聞とラジオの融合に取
ほか、当日の紙面内容の紹介など
に在住する奄美群島の出身者をつ
を発行している。そこには、全国
ンパクトにまとめた「月刊・奄美」
て、本紙に掲載したニュースをコ
は奄美出身者向けの情報紙とし
したこともあった。 年 月から
の半分程度のタブロイド判で発行
物資不足で用紙や印刷資材も
乏しい中、はがき大のものや現行
歴史的な経緯を踏まえたものだ。
自由な言論活動が制約されていた
特徴だ。
積極的な姿勢を示していることも
のための事業やイベントなどにも
スポーツの発展、郷土の教育振興
別化を図ってきた。奄美の文化や
入れることで南海日日新聞との差
欄があるなど、斬新な手法を取り
購入できる、遅配が予想される地
全国のコンビニエンスストアに設
置されているマルチコピー機でも
月であり、米軍統治下で
の広報番組や市議会中継などの
で、配達スタッフは総勢450人
姿勢がうかがえる。
うのは、延岡市の カ所など、エ
たいしまつり
程度に達する。そのほか、山間部
紙 面に全国ネタを掲載する必要
風土の詳細を掲載する」と掲げて
に伝わる歴 史、伝 統芸 能、自 然
を忘れず、地域住民の活動、地域
念の一つに「地域紙としての使命
は、九州・沖縄における特徴だろ
島に存在するケースが複数あるの
山日報のように、競合紙が同じ離
垣市にある八重山毎日新聞と八重
ある宮古新報と宮古毎日新聞、石
離島に競合紙あることで
「切磋琢磨」
し紙面に反映
域への配慮として「あすのテレビ」
などでは地元住民が配達員の役割
月に創刊された。企業理
地域性の追求を重視している。
地域紙が「切磋琢磨する関係にあ
の情報源としてラジオが見直され
東日本大震災が発生し、災害時
二つの新聞社でも重視されている。 らに、地元のニュースだけでなく、 ることで、紙面内容の高度化や紙
八つの有人島を販売エリアとする
営は、鹿児島県の奄美群島にある
面刷新といったアイデアが生まれ
せっさたくま
る中、佐藤社長が開局プロジェク
う。その点について、ほとんどの
同社が時事通信社と配信契約
したのは 年 月と早かった。さ
年
性があることを知るきっかけにな
8
を担っている。道路沿いに設置さ
12
ったという。
年
多くの紙面を割いているのも特徴
12
れている約100カ所のポストに
とうかん
読者分の新聞がまとめて投函され、
各集落で決められた担当者が配
達するという仕組みだ。
奄美群島に二つの新聞
斬新な手法で読者獲得
4
例えば、南海日日新聞(奄美市、 読売新聞社との契約により国内
2012年 月にコミュニティ
ーFMを 開 局したのも「 読 者 と
地域紙の存在意義を高める最
共につくる」という方針の実践だ。 良の方法とも言える地域密着経
93
9
トの中心的な役割を担った。佐藤
12
87
56
Zaikai Kyushu / OCT.2016
08
南海日日新聞のライバル紙であ
る奄美新聞(同、若松等社長)は、 奄美群島にある南海日日新聞
と奄美新聞、沖縄県宮古島市に
46
59
45
11
7
41
2
差別化を図っている。八重山毎日
載情報を工夫することで他紙との
「地域に密着した紙面づくり」
を経営の根幹に据える両紙は、掲
しい」と語る。
供する上で、 紙あることが望ま
者に多面的な観点から情報を提
薫社長)の仲新城誠編集長も「読
である八重山日報(石垣市、宮良
市に本社を置くもう一つの新聞社
た方がいい」という立場だ。石垣
八重山毎日新聞社の黒島安隆
社長も「企業の育成という観点か
る」と前向きに捉えている。
たす」
(黒島社長)ことが狙いだ。
「二つのエリアをつなぐ役割を果
ことし台湾に通信員を置いたのは
化、芸能分野の交流も盛んなこと
していた水牛も台湾から来た。文
定着した。田畑を耕すために活躍
込まれ、その後、基幹産業として
イナップルは戦前、台湾から持ち
重山地方の人々の生活を支えるパ
さらに、台湾 関 連の記事を掲
載しているのも同紙の特徴だ。八
ながる」という効果を持つ。
問われるため紙面内容の拡充につ
には情報収集する能力や取材力が
な特徴に由来する内容も含まれ
その情 報には「中国と国 境を
接するという八重山地区の地理的
携が活発に行われている。同社が、 重要な役割」
(黒島社長)である。
から、台湾と同地方は官民での連
る」
(仲新城編集長)
。特に、八重
も、八重山地区の 紙にとっては
容であれば積極的に掲載すること
「県紙が取り上げない情報であ
っても、住民にとって不可欠な内
備を図る」
(黒島社長)ためだ。
者が情報を得られるよう環境整
新聞が届けられない場合でも、読
はの理由もある。
「台風の影響で
じているとは言い難く、また、離
し、課題や問 題点を多 面的に論
れば報道しない自由もある。しか
語る。一方で「報道する自由があ
れるのであれば、それでいい」と
その結果として、保守的と判断さ
多面的な記事の発信に努めている。
集長は「当社は中立的な観点から
ることが多い。しかし、仲新城編
にもかかわらず「県 紙は取り上
ら抗議決議を行っている」という。
石垣市 議 会は200年代 後半か
らに、中国船の領海侵犯に対して、
ら、狭い島でも新聞社は二つあっ
新聞社の黒島社長は「
『視野は世
紙が取り上げな
げないか、仮に取り上げたとして
もベタ記事の扱いが多い」と仲新
城編集長は指摘する。
閣諸島周辺への領海侵犯である。
一例が、中国公船や漁船による尖
い情報の掲載」に積極的だ。その
実際、インターネットで記事を
読んだ本 島の住民から「尖閣 諸
いる」と苦言を呈する。
島問 題には無関心にもみえる県
八重山日報のこうした報道姿
勢から、同社は保守的だと称され
動画配信も行っている。将来的に
ことし 月に入って中国公船な
どが頻繁に出没す
島の周辺が異常事態なのを初めて
回の企画「頑張
は、データを活用した新しい事業
るようになり、全
知った」といった意見が寄せられ
った子どもたち」だ。八重山教育
作品展などで入賞または表彰され
た子どもたちを顔写真入りで紹介
している。
「掲載されることが子ど
もたちの励みになり、取り組む意
中国公船の領海侵
尖閣諸島周辺への
の真実を伝え続けたい」と語った。
はできる。これからも八重山地区
れていることを報道し続けること
いが、国境の島々が危機にさらさ
2
その一例が、年
事務所と提携し、勉強やスポーツ、 の構築も図る方針だ。ウェブ事業
国紙でも取り上げ
ることも少なくないという。仲新
欲の向上につながっている」
(黒島
紙は県民の知る権利を損なって
に力を入れるのには、離島ならで
られる機会が増え
城編集長は「小さい声かもしれな
山日報は「県
県紙と明らかな
〝温度差〟
「離島の真実を伝えたい」
界、視点は郷土』という社是が、
また同社は、ウェブによる情報
全ての紙面づくりの根幹」と語る。 発信にも積極的に取り組むほか、
2
年
た。しかし「
月の国有化後、
12
8
沖縄県の八重山地区にある八重山毎日新聞社
(上)
と八重山日報社
犯は急増した。さ
9
社長)という。また、同地方で開
催される産業共進会での入賞者も、
品目ごとに全てを紹介する。
「新
聞を生活の身近にある存在として
感じてもらうだけでなく、記者ら
Zaikai Kyushu / OCT.2016
57
2
2
2
2