証券代行コンサルティング部

第54号(2016年6月発行)
株主総会後の実務対応
<目
次>
株主総会後の実務対応 ………………………………………… 1
コラム-ワンポイント会社法実務(第 49 回)……………… 9
※本ファイルは、内容を抜粋して掲載しております。
証券代行コンサルティング部
証券代行ニュース第 54 号(2016 年 6 月)
株主総会後の 実務対応
本号では、株主総会後の実務対応のうち、株主宛て通知物の送付、取締役会および
監査役会等の開催、株主総会議事録の作成および各種書類の備置き等、各種開示等の
手 続 ( コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス に 関 す る 報 告 書 を 含 み ま す )、お よ び 登 記 手 続 に つ い
て説明します。
なお、本文中の法令の引用について、会社法は条数のみを表記し、会社法施行規則
は 「 施 行 規 則 」、 会 社 計 算 規 則 は 「 計 算 規 則 」、 金 融 商 品 取 引 法 は 「 金 商 法 」、 企 業 内 容
等の開示に関する内閣府令は「開示府令」と表記します。
1.株主宛て通知物の送付
(1)決議通知
決議通知の送付は、会社法上の義務ではありませんが、株主総会に出席できない
株主に結果を知らせる方法として、長年の慣行として多くの会社で送付されていま
す( 2015 年 版 株 主 総 会 白 書 138 頁 に よ る と 、74.7% の 会 社 で 送 付 )。決 議 通 知 の 送
付に際しては、報告書、配当金関係書類等が同封されますが、剰余金の配当を取締
役会が決定する会社等、これらの書類を株主総会の前に送付する会社では、同封物
がない場合が生じます。この場合は、決議通知をハガキにより行う方法も可能であ
り、会社のホームページを用いて決議通知や議決権行使結果を掲載する会社も増加
しています。
決議通知には、株主総会における報告事項、決議事項および決議結果が記載され
ま す 。 こ の ほ か 、「 配 当 金 の 受 取 方 法 等 の 案 内 」、「 取 締 役 会 に お け る 代 表 取 締 役 お よ
び役付取締役の選定ならびに監査役会における常勤監査役の選定」について記載す
る 会 社 が 多 く 、「 無 配 の お 知 ら せ 」、「 執 行 役 員 人 事 」、「 単 元 未 満 株 式 の 買 取 ・ 買 増 制
度 の 案 内 」、「 株 主 優 待 制 度 の 案 内 」 等 に つ い て 記 載 す る 会 社 も あ り ま す 。
(2)報告書等
報 告 書 に つ い て は 、「 株 主 通 信 」、「 ○ ○ レ ポ ー ト 」 等 の 名 称 も 使 わ れ ま す 。 主 に 、
事業報告、計算書類および連結計算書類に係る内容が記載されますが、 招集通知の
事 業 報 告 と 異 な り 法 律 上 の 制 限 は あ り ま せ ん 。 そ の た め 、 IR 的 な 観 点 か ら 見 や す さ
や理解しやすさを志向し、グラフ、図表、写真等を交え、社長挨拶、経営理念、新
商品、新店舗、事業年度におけるトピックス等、幅広い内容を記載のうえ、カラー
印刷するのが一般的です。招集通知が送付されない議決権のない単元未満株主に対
し 、計 算 書 類 等 の 内 容 を 知 ら せ る と と も に 、単 元 株 主 に 対 し て IR 面 で 会 社 を ア ピ ー
(注)無断転写を禁じます。
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証券代行ニュース第 54 号(2016 年 6 月)
ルするという目的が報告書にはあります。
2.取締役会および監査役会等の開催
(1)定時株主総会後の取締役会
株主総会終了後に開催される取締役会では、 主に次のような決議が行われます。
① 代 表 取 締 役 の 選 定 * 362 条 3 項 +
② 業 務 執 行 取 締 役 お よ び 役 付 取 締 役 の 選 定 * 363 条 1 項 +
③株主総会および取締役会の議長ならびに招集権者の職務代行者を定めるとしてい
るときはその決議
④取締役の報酬等の配分の決定(株主総会議案の可決にかかる賞与、退職慰労金ま
たはストックオプションの発行等がある場合はそれを含む)
⑤ 支 配 人 そ の 他 の 重 要 な 使 用 人 の 選 任 * 362 条 4 項 3 号 +
⑥ 特 別 取 締 役 を 定 め る と き は そ の 選 定 * 373 条 1 項 +
⑦指名委員会等設置会社における各委員会の委員の選定、執行役の選任、代表執行
役 お よ び 役 付 執 行 役 の 選 定 、 執 行 役 へ の 業 務 執 行 の 権 限 委 任 * 400 条 2 項 ・ 402
条 2 項 ・ 420 条 1 項 ・ 416 条 1 項 1 号 ハ・ 同 4 項 +
⑧役員賠償責任保険付保の同意、対象役員との責任限定契約の締結
このうち、①②③は、再任の場合は、任期が一旦終了しているので、取締役会で
改めて選定および決定する必要があります。④は、コーポレートガバナンス・コー
ドに関連して、報酬等の決定方針を新たに設け、または変更した場合は、それに従
い決定します。⑤は、取締役に使用人職務を委嘱する場合、委嘱される取締役は特
別利害関係人に該当しますので議決には加わることができません。
(2)定時株主総会後の監査役会
株主総会終了後に開催される監査役会では、主に次のような決議等が行われます。
① 常 勤 監 査 役 の 選 定 * 390 条 2 項 2 号 +
② 特 定 監 査 役 を 定 め る こ と と し て い る 場 合 は 、そ の 選 定* 施 行 規 則 132 条 5 項 2 号 、
計 算 規 則 124 条 5 項 2 号 ・ 130 条 5 項 2 号 +
③ 監 査 の 方 針 お よ び 監 査 計 画 、 監 査 方 法 、 監 査 業 務 の 分 担 等 の 決 定 * 390 条 2 項 3
号+
④ 監 査 役 の 報 酬 等 の 配 分 の 協 議 * 387 条 2 項 +
⑤ 会 計 監 査 人 の 報 酬 等 の 決 定 に 関 す る 同 意 * 399 条 2 項 +
このうち、①は、再任の場合は、任期が一旦終了しているので、監査役会で改め
て選定および決定する必要があります。②については、監査役会規則等において、
(注)無断転写を禁じます。
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常勤監査役を特定監査役とする旨が定められていれば不要となります *日本監査役
協 会 の 監 査 役 会 規 則 ( ひ な 型 7 条 2 項 参 照 )+。 ④ に つ い て は 、 本 来 は 監 査 役 の 協 議
に よ る も の に な り ま す が 、全 員 一 致 の 決 議 で あ れ ば 監 査 役 会 に て 行 う こ と も 可 で す 。
この場合、監査役会の議事録には決議事項ではなく協議事項であることを明記して
おくことが望ましいと考えられます。
(3)定時株主総会後の監査等委員会
株主総会終了後に開催される監査等委員会では、主に次のような決議等が行われ
ます。
①監査等委員長の選定(任意)
②常勤の監査等委員の選定(任意)
③特定監査等委員を定めることとしている場合は、その選定 (任意)
④監査の方針および監査計画、監査方法、監査業務の分担等の決定
⑤ 監 査 等 委 員 で あ る 取 締 役 の 報 酬 等 の 配 分 の 協 議 * 361 条 3 項 +
このうち②は、監査役会と異なり会社法上の義務はないため、会社の判断に委ね
られます(定款で常勤の監査等委員を置く旨を規定している場合は、義務化されま
す )。
なお、監査等委員会設置会社への移行直後においては、上記に加え、監査等委員
会 規 則 の 制 定 や 、会 計 監 査 人 の 解 任 ま た は 再 任 の 決 定 の 方 針* 施 行 規 則 126 条 4 号 +
等について決議することも考えられます。
3.株主総会議事録の作成および各種書面の備置き等
(1)株主総会議事録の作成
株 主 総 会 の 議 事 に つ い て は 、議 事 録 の 作 成 が 必 要 で あ り* 318 条 1 項 +、そ の 記 載
内 容 は 法 務 省 令* 施 行 規 則 72 条 +に 定 め ら れ て い ま す 。な お 、議 事 録 の 作 成 義 務 者
は取締役であり、代表取締役である必要はありません。議事録の作成は業務執行で
は な く 、 取 締 役 の 職 務 と 解 さ れ ま す ( 相 澤 ・ 論 点 解 説 495 頁 )。
(2)株主総会議事録の備置き
株 主 総 会 の 議 事 録 は 、 株 主 総 会 の 日 か ら 10 年 間 、 本 店 に 備 え 置 か な け れ ば な ら
ず、支店にはその写しを 5 年間備え置かなければなりません。ただし、当該議事録
が電磁的記録で作成されている場合であって、支店において当該電磁的記録の閲覧
等 に 応 じ る こ と が 可 能 な 措 置 を と る と き は 、 支 店 で の 備 置 き は 不 要 で す * 318 条 2
項 ・3 項 +。
(注)無断転写を禁じます。
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