米国資産運用ビジネスを変えるフィンテックと

リサーチ TODAY
2016 年 9 月 23 日
米国資産運用ビジネスを変えるフィンテックとミレニアル世代
常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創
世界最大の資産運用市場である米国において、近年、IT技術の進歩とミレニアル世代(2000年代に成
人あるいは社会人になる世代)の台頭を受け、リテール資産運用ビジネスの変革が進みつつある。みずほ
総合研究所は、米国における資産運用の新たな潮流に関するリポートを発表している1。下記の図表は世
界の地域別にみた資産運用残高を示す。米国を中心とする北米が36.1兆ドルと世界全体のほぼ半分を占
める。この世界最大の市場である米国では、FinTechに代表されるIT技術進歩とミレニアル世代の台頭を
受けて、資産運用ビジネスの変革が進んでいる。IT技術の進歩により資産運用ビジネスでは、①ロボ・アド
バイザーによる自動化、②スマートフォンの普及によるモバイル化の2つの変革が生じ、運用手数料などが
引き下げられている。こうした動きは離陸期を迎える日本の資産運用ビジネスにも大きな影響を与えると展
望される。
■図表:地域別にみた資産運用残高
(兆ドル)
南米
1.9
その他
3.4
アジア
10.4
北米
36.1
欧州
19.6
(注)2015 年。
(資料)Boston Consulting Group よりみずほ総合研究所作成
ロボ・アドバイザーの登場で、個人投資家は、自分自身のニーズにあった資産運用サービスを非常に低
いコストで利用できるようになった。次ページの図表に示されるように、個人投資家はロボ・アドバイザーを
フィナンシャル・アドバイザーと併用している。今後も、ロボ・アドバイザーを単独で使用する形態は減少し、
併用の流れが強まるとみられる。個人投資家としては、ロボ・アドバイザーをフィナンシャル・アドバイザーと
併用して双方のもつ利点を活かしていこうとしているが、資産運用会社はロボ・アドバイザーを用いてコスト
1
リサーチTODAY
2016 年 9 月 23 日
削減につなげようとしている。
■図表:ロボアドバイザー利用形態別シェア
100
(%)
87
80
80
現在
5年後
60
40
20
13
20
0
RA・FA併用
RA単独
(ロボ・アドバイザー利用形態)
(注)ロボ・アドバイザーをメインの資産運用サービス利用形態とする準富裕層(Mass Affluent)に占めるシェア。
RA はロボ・アドバイザー、FA はフィナンシャル・アドバイザーの略。
(資料)A.T. Kearney よりみずほ総合研究所作成
下記の図表で、18歳以上人口の推移を世代別にみると、ミレニアル世代は2015~16年にベビーブーム
世代を抜き、今後は米国で最も人口規模が大きな世代になる。ベビーブーム世代からミレニアル世代への
相続も増え、ミレニアル世代の投資可能資産も増加する。今後、ミレニアル世代をどう取り込むかが資産運
用ビジネスのカギになる。そのためには、IT技術の進歩に加え、SNSを通じたメディアコンテンツなどの情
報提供や、資産運用のゲーミフィケーション(ゲーム化)の活用が重要だ。こうした動きは離陸期を迎えた日
本の資産運用ビジネスにも参考となるだろう。
■図表:米国の世代別人口の実績と予測
(百万人)
90
ミレニアル
80
70
ジェネレーションX
60
50
ベビーブーマー
40
30
20
サイレント
10
0
2010
15
20
25
30
35
40
45
50
55
60 (年)
(注)18 歳以上人口。2016 年以降は予測値。ミレニアル: 1981~97 年生、ジェネレーション X:1965~80 年生、
ベビーブーマー: 1946~64 年生、サイレント: 1925~45 年生。
(資料)米国商務省センサス局よりみずほ総合研究所作成
1
服部直樹 「変革が進む米国資産運用ビジネス」 (みずほ総合研究所 『みずほインサイト』 2016 年 9 月 1 日)
当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき
作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。
2