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社会への取り組み|お客様第一・品質第一への取り組み
お客様第一・品質第一への取り組み
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「お客様第一」
「品質第一」に対する基本的な考え方
品質は、開発 ・ 設計、調達、生産、販売、アフターサービス活
創業以来の「お客様第一」
「品質第一」を実践し、お客様と社
動などの連携からつくりだされます。お客様にご満足いただけ
会の期待に応え続けていくために、各分野の一人ひとりが常に
る品質をお届けするためには、これらすべての分野における努
高い問題意識を持ち、自分事としてとらえて改善に努め、各分
力が必要です。
野が緊密に連携しながらお客様の安全・安心と満足度向上に努
トヨタでは、
「製品」の質、
「営業 ・ サービス」の質、それを支
めています。
える基盤として従業員一人ひとりの「仕事」の質があり、この
品質の定義
三つが一体となったものが品質であり、これが確保されて初め
て、お客様の信頼に応え得る製品 ・ サービスになると考えてい
お客様の笑顔
ます。また、品質の原点は「監査改良」の精神にあり、常に改
善、という PDCA を回し続けることで品質の向上を図る、これ
をトヨタの不変的なモノづくりとしています。
製品の質
営業・サービスの質
2010 年の一連のリコール問題以降、トヨタは 2 月 24 日を
「再出発の日」と定め、お客様の期待を超える「品質のトヨタ」
仕事の質
の再構築に向けて、従業員が一層の努力を重ねています。
物流
仕事の基本を守る
販売・アフターサービス
商品企画
開発・設計
品質保証
検査
調達
生産準備
生産
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推進体制・仕組み
トヨタは「品質機能方針」を「『仕事の基本』堅守による、お
どに取り組んでいます。また 2016 年に、業務改革を推進する
客様の期待を超える『品質のトヨタ』再確立」とし、年度ごとに
TQM 推進部に、全社課題を洗いだし改善を進める BR 品質改革
重点活動を定めて諸課題に取り組んでいます。進め方の基本と
室を統合し、
「業務品質改善部」に再編。品質の基盤となる仕事
なるのは「機能別管理」と「方針管理」です。
「機能別管理」は、
の質の監査改良を一層強化し、一人ひとりの取り組みとして根
品質という機能で全社方針を策定し、各部門が横につながりな
付かせていくための活動を推進しています。
がら活動を進めることです。
「方針管理」は、全社方針のもとに
各部門が目標達成に向けた実施計画を立案・実行するというも
ので、実行段階においては品質機能会議などを通じて進捗・結
果を報告し、適宜、対応を図ります。
また、地域主導の品質改善活動を強化するために、日本を
はじめとした世界各地域に品質責任者である「チーフ クオリ
ティ オフィサー(CQO)」を配置。地域ごとの課題に取り組む
とともに、グローバルな連携を図っています。
社内においては、2012 年に「カスタマーファースト推進本
品質会議体のグローバル推進体系(基本スキーム)
品質機能方針
グローバル課題への
対応策
方針管理
議長:CF 推進本部長
出席者:各本部長 など
連携
連携
(取り組み項目の調整)
部(以下、CF 推進本部)」を設置し、お客様目線での「品質の
地域課題への
対応策
トヨタ」を目指し、品質向上に向けた社内体制づくりの強化な
各地域の品質方針
016 Sustainability Data Book 2016 社会への取り組み
品質機能会議
(相互参画・進捗共有)
方針管理
議長:各地域の CQO
出席者:各事業体・機能代表者 など
各地域の品質委員会
社会への取り組み|お客様第一・品質第一への取り組み
重大な品質不具合への対応
製品品質の向上に、一人ひとりが自分事として「お客様第一」で
取り組んでいる一方、万が一に備え迅速な対応を行っています。
トヨタでは、法令順守はもとより、お客様目線の安全・安心
ようにしています。また、リコールを決定した後、トヨタ販売
店を通じお客様へご連絡するとともに、ホームページに情報を
掲載し、迅速な修理に結びつけています。
の観点から品質不具合を捉え、リコールを決定しています。
リコールの決定にあたっては、お客様に一番近い地域の代表
お客様が、安全・安心にお車にお乗りいただけるよう、今後
も改善を続けていきます。
者もその決定に加わり、地域のお客様の声が確実に反映される
[ 過年度実績および本年度の主な取り組み ]
2015 年度の主な取り組み(実績)
品質
2016 年度の主な取り組み
一人ひとりが感度を上げ、
仕事の基本を守りきる風土・仕組みの盤石化
お客様の立場に立って考え、
仕事の基本を実践できるグローバルでの風土・人づくり
●品質関連施策の着実な推進と品質教育の海外展開強化
●組織改編(カンパニー制の導入)に伴い、
さらなる迅速な品質改善
● CQO を軸とした地域品質活動の各地域における
一層の浸透
● CQO を中心とした地域主導による
品質改善活動の継続強化
●お客様の立場に立って業務推進できる
人材の育成を目的に品質学習施設の拡充
お客様
●既存活動の継続推進
●お客様の声から自らの行動につながる
施策の検討と実施(お客様月間の実施)
●お客様へのプロアクティブな情報提供の仕組み再構築
●お客様の声研修の全社資格別教育織込み
●「トヨタ消費生活アドバイザーの会(1991 年発足)」
によるお客様視点での取り組み(車両評価など)を実施
[ 2015 年度の主な取り組み ]
「グローバル CQO 会議」により、品質の現状 ・ 活動を世界で共有
各地域の品質責任者(CQO)が一堂に会して行うのが「グ
有です。特に 2010 年に開催した「グローバル品質特別委員会」
ローバル CQO 会議」です。地域のお客様の現状や、地域ごと
以降、継続して取り組んでいるお客様の安全・安心に向けた全
に推進している品質改善活動事例のグローバルな共有などを目
社の取り組みのさらなる
的に、2013 年にスタートしました。
強化や、市場やお客様の
2015 年 5 月、その第 3 回となる会議を、北米、欧州、アフリ
期待の変化を感度高く捉
カ、中国、アジア・中近東、東アジア・オセアニア、中南米の全
え、グローバルで連携し
7 地域の CQO およびトヨタの関係役員の出席のもとに開催し
た取り組みを強化してい
ました。今回の主な議題は、2010 年の一連のリコール問題以
くことについて確認しあ
降、トヨタおよび各地域が主体的に進めてきた活動の総括・共
いました。
2015 年 5 月、全地域の CQO が集まり、本社品
質監査棟で開催
一連のリコール問題からの学びを風化させない仕組みづくり・啓発活動の推進
トヨタは一連のリコール問題の米国公聴会が行われた 2 月
24 日を「トヨタ再出発の日」と定め、当時の出来事からの学び
みについて議論しました。
こうしたさまざまな施策を通じて全従業員が当時の出来事
を風化させない仕組みづくり・啓発活動に取り組んでいます。
を振り返ることは、仕事のプロ
2016 年のこの日はリコール問題の振り返りや当時の担当
セスの見直しを促します。そし
者インタビューなどの全社施策に加え、各組織・各地域の自主
て、一人ひとりの仕事の質が向
施策が展開されました。なかでも、北米から幹部を招き、豊田
上することで、さらなる「お客
社長も交えた座談会を開催。当時を振り返るとともに、北米の
様第一」の風土の構築につなげ
キーワードである「One Toyota」実現のための今後の取り組
ていきます。
017 Sustainability Data Book 2016 社会への取り組み
北米幹部座談会
社会への取り組み|お客様第一・品質第一への取り組み
「品質月間」で従業員への品質啓発活動を推進
トヨタは毎年 11 月を「品質月間」とし、品質に対する当事者
意識を高め、それを行動に結びつけるための取り組みを展開し
り組みや、お客様第一に向けた自らの行動などについて各職場
で考えました。
ています。2015 年 11 月は、品質について優れた取り組みを実
品質に関するさまざまな取り組みの目的は、お客様目線で
践している他社の方を招き、その考え方や事例をご紹介いただ
業務を見つめ、それを行動に移すことにあります。さらに振り
きました。
返っては見直すサイクルを繰り返すことで、仕事の質向上に結
また、一人ひとりの業務がお客様とどのようにつながってい
びつけていきます。
るかを整理する「つながりシート」を活用し、お客様目線の取
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お客様の声をより良い製品、サービスに反映する仕組み
トヨタの「お客様第一」の原点は、お客様に喜んでいただけ
したいと考えています。そして、
「もっといいクルマづくり」を
る製品やサービスの提供にあります。この想いを原点とし、環
実践するため、販売店からの情報やお客様相談センターに寄せ
境、安全、品質性能に優れ、しかも走行性能などクルマ本来の
られたお客様の声を積極的に活用しています。
魅力にあふれた商品を、お客様に買っていただける価格で提供
お客様の声のフィードバックの仕組み【国内の例】
販売店
品質保証部 &
お客様品質部
国内
サービス部
設計・製造
品質・
商品面
お客様
相談センター
お客様
国内販売
事業本部
販売店
販売面
お客様相談窓口の活動
トヨタブランドの「お客様相談センター」およびレクサスブ
ランドの「レクサスインフォメーションデスク」は、365 日受
2015 年度 お客様相談窓口実績
入電件数(30.2万件)
付、フリーダイヤル、24 時間カタログ受付などお客様の利便性
に配慮した体制のもとに活動しています。
「お客様第一」の原
点に立った迅速・的確・親身な応対を基本に、お客様からのご
デスク」も設置しています。さらに、お電話をいただいたお客
18%
ご意見・ご要望
7%
ナビ・オーディオ
21%
カタログ請求
4%
り良い製品・サービスづくりにつなげる活動に取り組んでいま
ため、販売店営業スタッフの相談窓口「営業スタッフサポート
その他
(納期など)
11%
相談やご意見、ご要望にお応えするとともに、お客様の声をよ
す。また、販売店における「お客様第一」の応対をサポートする
相談内容の内訳
営業スタッフサポート
相談
82%
様に自動音声による電話応対アンケートを実施し、改善に取り
組んでいます。
018 Sustainability Data Book 2016 社会への取り組み
車両本体関連
(仕様・装備他)
57%
社会への取り組み|お客様第一・品質第一への取り組み
世界各国・各地域からのお客様の声
トヨタでは、
「お客様第一」を原点に製品やサービスを提供するため、日本国内だけでなく、米国、欧州、アジアのほか、
世界各国のディストリビューターがお客様相談窓口を設けています。ここではお客様からお寄せいただいた声をいくつか紹介します。
トヨタにお寄せいただいたお客様の声
[お褒めの声 ]
米国
「シエナ」で高速道路を走行中、
韓国
私は会社の経営者で、
自社の営業車 4 台を「プリウス」に代替えした。
突然、エンジン警告灯が点灯し、最寄りの販売店へ。
突然の入庫にもかかわらず、
速やかに対応してくれた。
月平均約 4,200Km 走行しているが、
安心して旅行を続けることができた。素晴らしい対応をありがとう!
トヨタの高い技術力に感動している。
その後も修理の進捗を逐次連絡してくれたおかげで、
低燃費のおかげで
年間 144 万円も燃料費を節約できた。
[苦情・相談の声 ]
「パンク応急修理キットの使い方が
分かりにくい !」
「スマートキーが電池切れを起こしたときの
エンジンのかけ方が分からない!」
日本
ハイブリッド車の修理で、
日本
・米
国
インバーターの全交換が必要となったが、
修理費用が高すぎる。
壊れた部分だけを修理できないのか?
というお客様の声が多数。一方、お客様相談センターや販売店でも、
電話越しで対応方法を説明することが難しく、結果的にお客様をお待
対応
たせしてしまうことに‥‥。
対応
【改善に向けた取り組み】
HV 部品の分解修理・
再生への取り組み推進
【改善に向けた取り組み】
「よくあるご質問」を動画で配信
こうした声を受けて、よりスムーズな対応を行うため、2016 年 4 月よ
りホームページの「お問い合わせ・よくあるご質問」に、これらの事案の
対処方法を説明した動画の掲載を開始しました。トヨタでは、お客様のお
困りごとの解決のスピードアップに向けた取り組みを進めています。
最近はスマートフォンでも動画が観られるので、外出先でのトラブル時
にも役立ちます
2013 年より、一部 HV 部品につい
て、故障部位をさらに絞り込んだ修理
対応を開始しています。トヨタでは、
社内ワーキンググループにて HV 部品
の修理費低減の取り組みを進めてお
り、構成部品を細分化して補給・交換
することによる分解修理、回収した不
具合品を再生し安価に補給するリビル
ト/リユース技術の確立に取り組んで
います。
【対応事例 :「アクア」】
パワーコントロールユニットについ
て、内部の変圧器部品を交換可能と
し、より安価に修理ができるようにな
りました。
変圧器部品
[ 2015 年度の主な取り組み ]
「お客様第一」社内啓発活動を推進
トヨタは国が定めた「消費者月間」に合わせて毎年 5 月を
「お客様月間」とし、
「お客様第一」の意識の浸透に向けたさま
ざまな活動に取り組んでいます。
年間を通じては、コールセンターである「お客様相談セン
ター」を見学・体感する「お客様の声体験研修」を実施。また、
有資格者からなる「ト
その一つが、お客様の声を自分事として捉え、行動すること
ヨタ消費生活アドバ
を目的とした「お客様の声体験」で、社内イントラネットを活
イザーの会」によるお
用して、お客様の声を全従業員へと配信しています。また、
「お
客様目線での施設評
客様の声展示会」では、国内だけでなくグローバルのお客様の
価・ 車 両 評 価 な ど も
声や、お客様目線での取り組み事例を紹介。ほかに、他企業か
行っています。
ら講師を招いての「講演会」なども開催しています。
019 Sustainability Data Book 2016 社会への取り組み
お客様の声展示会の様子
社会への取り組み|お客様第一・品質第一への取り組み
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アフターサービスに対する基本的な考え方
「いいサービス」は「いいクルマ」と両輪をなします。お客様
にクルマをお使いいただいている間には、定期点検・車検、故
障や事故による修理などが発生しますが、その間、トヨタやレ
乗用車の平均使用年数(日本)
(使用年数)
14
13
クサスのブランドを支え続けるのがアフターサービスです。特
12
に最近はクルマの平均使用年数が約 12 年(日本国内)と長く
11
なっていることから、アフターサービスの役割はますます大き
10
くなっています。お客様が笑顔でクルマをお使いになれるよ
9
う、トヨタは「3S 精神(正確 + 親切 = 信頼)」のもと、
「もっと
8
いいサービス」の提供に取り組んでいます。
2000年以降
2~3割長期化
’00
’02
’04
’06
’08
’10
’12
’14
(年度)
出典:自動車検査登録情報協会 HP
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推進体制・仕組み
現在、日本国内では約 310 社・約 5,000 店の販売店・共販
で必要とされる部品を迅速に供給する体制を確立しています。
店、約 4 万 6,000 人のサービススタッフがアフターサービスに
販売店の現場にもトヨタ生産方式の考え方を応用することで、
関わっています。さらに海外では約 170 社・約 1 万店、13 万
部品在庫の効率化や短時間車検などを実現しています。
4,000 人のサービススタッフが活動しています。トヨタは各地
さらに、トヨタは「アフターサービスはクルマの開発段階か
域に教育システム・教育施設を設置すると同時に、
「多治見サー
ら始まる」という考えのもと、サービス、技術、販売などの各部
ビスセンター」をその核として、世界のサービススタッフの知
門が連携をとり、
「直しやすいクルマづくり」や「知りたいこと
識・技術の向上に取り組んでいます。
がすぐわかる取扱説明書」
「手早く、迷わずに修理ができる修理
また、修理などをより早く進めるために、トヨタは世界各国
解説書」などの取り組みを展開しています。
[ 主な取り組み ]
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サービス技術を集積したグローバル研修施設「多治見サービスセンター」
2013 年 7 月、サービススタッフの教育施設として岐阜県多治
見市に開設したのが「多治見サービスセンター」です。18.7 万
㎡の広大な敷地に研修棟やさまざまな路面の走行確認路などを
完備し、年間約 3,100 人のサービススタッフを世界中から受け
入れています。トヨタが販売するクルマの最新技術にも対応す
る最新のサービス技術もここに集結し、グローバルな研修拠点
として、研修に訪れたスタッフが知識と技術の向上を図ります。
「お客様の声」を聴くためのトヨタ自動車販売店協会との取り組み
お客様に直接、サービスを提供しているのは販売店であり、
門部会で議論を進めています。
「技術専門部会」ではお客様目線
「もっといいクルマ」
「もっといいサービス」のために、販売店
での品質課題、サービス性を検討。
「サービス研究会」では販売
とメーカーが一体となった活動を推進しています。国内ではト
店のサービス現場での諸課題を議論し、それぞれ改善に役立て
ヨタ自動車販売店協会とトヨタがアフターサービスのための専
ています。
020 Sustainability Data Book 2016 社会への取り組み