日医総研ワーキングペーパー 医療関連データの国際比較 -OECD Health Statistics 2016- No.370 2016 年 9 月 16 日 日本医師会総合政策研究機構 前田由美子 医療関連データの国際比較-OECD Health Statistics 2016- 日本医師会総合政策研究機構(日医総研) 公益社団法人日本医師会 前田由美子 総合医療政策課 キーワード ◆ 対 GDP 保健医療支出 ◆ 1 人当たり保健医療支出 ◆ 医師数 ◆ 病床数 ◆ 受診回数 ◆ 平均寿命 ◆ 喫煙率 ◆ 自殺者数 ◆ 高齢化率 ポイント ◆ OECD の保健医療支出は、OECD が提供する方法(SHA)に準拠して各国が 推計を行ったものである。2011 年に OECD が SHA1.0 から SHA2011 への改 訂を行い、日本では訪問・通所介護、介護老人福祉施設(特養)等に集 計範囲が広がり、日本の対 GDP 保健医療支出が上昇した。 ◆ 保健医療制度は国によって異なり、すべての国が同じ手法で保健医療支 出等を推計しているわけではない。日本でも全額自費医療は捕捉できて いない。結局のところ、OECD データによる国際比較は目安でしかないが、 諸外国との傾向の違いを見ることで、何らかの示唆を得られる可能性も あることから、本稿では国際比較を図示している。 ◆ SHA2011 改訂の要因を除くと、日本の診療技術料やサービス料は抑制的 であるが、医薬品支出が増加している。また日本は CT、MRI の台数が多 い。そして、医療機器のコスト(減価償却費)はおおむね診療報酬でま かなわれている。日本では、医薬品や医療機器が保健医療支出を押し上 げている可能性がある。 ◆ 為替レートの影響もあるが、日本は高齢化が進んでいる割には、1 人当 たり保健医療支出はそれほど高くない。 ◆ 日本の受診回数の多さがしばしば問題にされるが、受診 1 回当たり単価 が低いため、外来医療費はそれほど高くない。外来医療はいつでも受診 できる上、効率的に提供されている可能性がある。 ◆ 国際比較データは不完全ではあるが、興味深いものもあり、さまざまな ところでとり上げられている。各国の保健医療制度をすべて正しく記載 することは現実的ではないにせよ、丁寧な注釈をつけつつ、冷静に国際 比較をすることの重要性を強く感じている。 目 次 1. はじめに ........................................................ 1 2. 保健医療支出の概要 .............................................. 2 保健医療支出の範囲 .......................................... 2 2.2. 対 GDP 保健医療支出(全体) .................................. 6 3. 2.1. 保健医療支出 ................................................... 12 分野別対 GDP 比 ............................................. 12 3.2. 1 人当たり保健医療支出 ..................................... 16 3.3. 財源別対 GDP 比 ............................................. 20 3.4. 診療種類・サービス別対 GDP 比 ............................... 22 4. 3.1. 医療提供体制と受診回数 ......................................... 26 医師数 ..................................................... 26 4.2. 病床数 ..................................................... 28 4.3. 受診回数 ................................................... 38 4.4. MRI・CT .................................................... 42 5. 4.1. 健康その他 ..................................................... 45 平均寿命 ................................................... 45 5.2. 乳幼児死亡率 ............................................... 48 5.3. 喫煙率 ..................................................... 50 5.4. 自殺者数 ................................................... 52 5.5. 高齢者のインフルエンザワクチン接種率 ....................... 53 6. 5.1. おわりに(所感) ............................................... 55 参考資料 ........................................................... 56 1. はじめに OECD(Organization for Economic Co-operation and Development)の保 健医療支出は、OECD が提供する方法(SHA, System of Health Accounts)に 準拠して各国が推計を行ったものである。2011 年に OECD が SHA1.0 から SHA2011 への改訂を行い、日本の集計範囲が広がって日本の対 GDP 保健医療 支出が上昇した。本稿は、これを踏まえて直近の保健医療支出について図示し たものである。医療提供体制や健康に関する指標もあわせて示した。 保健医療制度は国によって制度が異なり、すべての国が同じ手法で保健医療 支出等を推計しているわけではない。SHA が示した区分が存在しない(あるい は切り分けられない)といったところもある。したがって、OECD データによ る国際比較は結局のところ目安でしかないが、諸外国との傾向の違いを見るこ とで、何らかの示唆を得られる可能性もあることから、国際比較も示している。 G7(G8 のロシアは OECD に加入していない1)と韓国については経年変化 も示した。国によってデータがない年もあるが、中断せずにデータがある年を 接続した。国によって変動が大きい年があるが、大体は推計手法の変更による ものである。 用語については、国によって制度がさまざまであることから、あえて直訳に 近いものにした。日本語として馴染みがない表現もあるが、容赦いただきたい。 ロシアについては OECD 加盟審査が進められていたが、2014 年 3 月にウクライナからの要請を受けて 加盟審査が当面の間延期されることになった。 2014 年 3 月 14 日 日本政府代表部発表 http://www.oecd.emb-japan.go.jp/news/russie.html 1 1 2. 保健医療支出の概要 2.1. 保健医療支出の範囲 OECD の保健医療支出は、日本でいうところの国民医療費、介護費のほか、 一般薬、予防接種、健康診断、保険者の管理コスト等も対象である。OECD が 手法(SHA, System of Health Accounts)を提示し(表 2.1.1)、日本では医療 経済研究機構が SHA に準拠した推計を行っているが、日本では全額自費医療2 や政府の保健医療管理業務費等は把握する仕組みがないのでカウントされてい ない。そういった事情は他の国も同じである。 2011 年に SHA1.0 から SHA2011 への改訂が行われ、Long-Term Care と Preventive care の定義が見直された。 表 2.1.1 SHA 2011 HC.1 HC.1.1 HC.1.1.1 HC.1.1.2 HC.1.2 HC.1.2.1 HC.1.2.2 HC.1.3 HC.1.3.1 HC.1.3.2 HC.1.3.3 HC.1.4 HC.2 HC.2.1 HC.2.2 HC.2.3 HC.2.4 HC.3 HC.3.1 HC.3.2 HC.3.3 HC.3.4 2 OECD の機能区分 Description Curative care/診療 Inpatient curative care/入院診療 General inpatient curative care Specialised inpatient curative care Day curative care/日帰り診療 General day curative care Specialised day curative care Outpatient curative care/外来診療 General outpatient curative care Dental outpatient curative care Specialised outpatient curative care Home-based curative care/在宅診療 Rehabilitative care/リハビリテーション Inpatient rehabilitative care Day rehabilitative care Outpatient rehabilitative care Home-based rehabilitative care Long-term care (health)/長期ケア Inpatient long-term care (health) Day long-term care (health) Outpatient long-term care (health) Home-based long-term care (health) 全額自費の中でも正常な分娩費用は保険者の出産育児一時金を集計している。 2 SHA 2011 HC.4 HC.4.1 HC.4.2 HC.4.3 HC.5 HC.5.1 HC 5.1.1 HC 5.1.2 HC 5.1.3 HC.5.2 HC.5.2.1 HC.5.2.2 HC.5.2.3 HC.5.2.9 HC.6 HC.6.1 HC.6.2 HC.6.3 HC.6.4 HC.6.5 HC.6.6 HC.7 HC.7.1 HC.7.2 HC.9 Description Ancillary services (non-specified by function) Laboratory services /臨床検査 Imaging services /画像検査 Patient transportation/移送 Medical goods (non-specified by function) Pharmaceuticals and other medical non-durable goods /医薬品・その他 非耐久性医療財 Prescribed medicines /処方薬 Over-the-counter medicines /一般薬 Other medical non-durable goods Therapeutic appliances and other medical goods /医療器具・その他医療 財 Glasses and other vision products Hearing aids Other orthopaedic appliances and prosthetics (excluding glasses and hearing aids)/整形器具・装具(除眼鏡・補聴器) All other medical durables, including medical technical devices Preventive care /予防的ケア Information, education and counseling programmes Immunisation programmes /予防接種プログラム Early disease detection programmes Healthy condition monitoring programmes /健康診断プログラム Epidemiological surveillance and risk and disease control programmes / 感染症サーベイランスほか Preparing for disaster and emergency response programmes /災害対 策、救急対応 Governance, and health system and financing administration/行政、保 健システム、財政運営 Governance and Health system administration Administration of health financing Other health care services not elsewhere classified (n.e.c.) *"A System of Health Accounts 2011"に一部邦訳を付した 3 SHA の機能区分 HC.3 Long-Term Care(health)は、SHA2011 によって、 境界が示され、ADL 関係を対象とすることが明確化された(表 2.1.2)3。 日本は、介護保険サービスのうち、SHA1.0(旧基準)では訪問看護、訪問・ 通所リハビリテーション、介護老人保健施設、介護療養型医療施設(介護療養 病床)等を計上していた。これらは、介護保険導入以前には医療保険から給付 されていたサービスである。SHA2011(新基準)で、訪問・通所介護、介護老 人福祉施設(特養)等に範囲が広がった(表 2.1.3)。 表 2.1.2 Long-Term Care(health)の境界 Figure 5.3. The health and social boundary of long-term care (LTC) Personal care Medical or nursing services(ADL) care 食事・入浴など ADL 支援※ Assistance services 買い物、洗濯、掃除 機かけ、料理など Other social care services コミュニティ活動など HC.3 HC.R. Excluded *OECD “A System of Health Accounts 2011 EDITION” ※Personal care services:These services provide help with activities of daily living (ADL) such as: eating, bathing, washing, dressing, getting in and out of bed, getting to and from the toilet and managing incontinence. OECD は 2006 年にも ADL 支援を対象とするというガイドラインを発出したが、日本はこれに準拠し ていなかった。 “GUIDELINES FOR ESTIMATING LONG-TERM CARE EXPENDITURE IN THE JOINT 2006 SHA DATA QUESTIONNAIRE” http://www.oecd.org/els/health-systems/37808391.pdf 3 4 表 2.1.3 Long-Term Care(health)に含まれる日本の介護保険サービス ○OECD基準で長期ケアに計上 ○※訪問介護のうち食事・入浴等のADLに関するサービス部分を計上 ※※長期ケア以外(医療財)に計上 ◆計上しない 居宅サービス 訪問介護 訪問入浴介護 訪問看護 訪問リハビリテーション 通所介護 通所リハビリテーション 福祉用具貸与 短期入所生活介護 短期入所療養介護(老健) 短期入所療養介護(病院等) 居宅療養管理指導 特定施設入居者生活介護(短期利用以外) 特定施設入居者生活介護(短期利用) 居宅介護支援 地域密着型サービス 定期巡回・随時対応型訪問介護看護 夜間対応型訪問介護 認知症対応型通所介護 小規模多機能型居宅介護 認知症対応型共同生活介護(短期利用以外) 認知症対応型共同生活介護(短期利用) 地域密着型特定施設入居者生活介護(短期利用以外) 地域密着型特定施設入居者生活介護(短期利用) 地域密着型介護老人福祉施設サービス 看護小規模多機能型居宅介護(旧複合型サービス) 施設サービス 介護老人福祉施設 介護老人保健施設 介護療養型医療施設 介護予防居宅サービス 介護予防訪問介護 訪問入浴介護 介護予防訪問看護 介護予防訪問リハビリテーション 介護予防通所介護 介護予防通所リハビリテーション 介護予防福祉用具貸与 介護予防短期入所生活介護 介護予防短期入所療養介護(老健) 介護予防短期入所療養介護(病院等) 介護予防居宅療養管理指導 介護予防特定施設入居者生活介護 介護予防支援 介護予防地域密着型サービス 介護予防認知症対応型通所介護 介護予防小規模多機能型居宅介護 介護予防認知症対応型共同生活介護(短期利用以外) 介護予防認知症対応型共同生活介護(短期利用) ○の合計 介護費(億円) 2014年度 72,854 7,992 577 1,864 330 14,191 4,098 2,516 3,983 530 38 713 4,219 3 4,022 10,632 157 29 865 1,886 6,044 3 156 0 1,409 82 31,917 16,422 12,418 3,076 8,210 1,119 2 162 43 2,109 696 239 42 5 0 43 299 553 100 5 70 25 0 123,712 旧基準 SHA1.0 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○※ ○ ○ ○ ○ ○ ※※ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 24,258 *医療経済研究機構「 OECD基準による日本の保健医療支出」(2016年8月4日)を一部改変 金額は厚生労働省「平成26年度介護給付費実態調査報告(平成26年5月審査分~平成27年4月審査分)」による 5 新基準 SHA2011 ◆ ○ ○ ○ ◆ ○ ※※ ◆ ○ ○ ○ ◆ ○ ○ ○ ○ ○ 86,715 対 GDP 保健医療支出(全体) 2.2. SHA の改訂によって、日本の 2014 年の保健医療支出は約 6 兆円増加し、対 GDP 保健医療支出は 1.2 ポイント上昇した(図 2.2.1, 図 2.2.2)。 図 2.2.1 日本の保健医療支出 日本の保健医療支出 SHA1.0(旧基準) (兆円) SHA2011(新基準) 60.0 52.2 42.7 42.7 44.3 44.3 45.8 45.8 2008 2009 2010 47.1 53.4 47.9 54.3 49.1 55.4 49.8 40.0 20.0 0.0 2011 2012 2013 2014 *OECD Health Statistics 2015, OECD Health Statistics 2016 図 2.2.2 日本の対 GDP 保健医療支出(新基準と旧基準) 日本の対GDP保健医療支出(新基準と旧基準) (%) 12.0 11.1 10.0 10.0 9.4 11.2 10.1 11.3 11.4 10.2 10.2 9.5 SHA2011(新基準) SHA1.0(旧基準) 8.5 8.0 2008 2009 2010 2011 2012 *OECD Health Statistics 2015, OECD Health Statistics 2016 6 2013 2014 日本は、2009 年にも対 GDP 保健医療支出が増加している(図 2.2.3)。こ れは名目 GDP が落ち込んだためであるが、経済成長を上回って保健医療支出 が増加していることも事実である。 図 2.2.3 日本の GDP と対 GDP 保健医療支出 日本のGDPと対GDP保健医療支出 名目GDP 対GDP保健医療支出 11.1 800 9.4 名 600 目 G D 400 P 8.1 8.2 8.5 504 507 513 501 11.3 11.4 11.2 9.5 2011年以降SHA2011(新基準) ( 8.1 11.2 ) 兆 円 200 471 483 472 475 479 487 499 12.0 0.0 0 2005 2006 2007 2008 2009 2010 *OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016 7 2011 2012 2013 2014 2015 ( ) 対 10.0 G D 8.0 P 保 6.0 健 医 4.0 療 支 2.0 出 % 2016 年 7 月に、日本銀行(以下、日銀)が住民税、法人税等を活用して GDP を試算した。その結果は、内閣府が算出している GDP を約 30 兆円上回るもの であった。日銀が試算した GDP から計算すると、2014 年の対 GDP 保健医療 支出は 10.7%である(図 2.2.4)。 図 2.2.4 (%) 日本の対 GDP 保健医療支出(現行 GDP と日銀試算 GDP) 日本の対GDP保健医療支出(現行GDPと日銀試算GDP) 11.6 11.4 11.2 11.4 11.3 11.2 現行GDP 11.0 10.8 11.0 日銀試算GDP 11.0 10.6 10.7 10.4 10.2 2012 2013 2014 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016"、藤原・小川「税務データを用いた分配側GDPの試算」、内閣府 「国民経済計算確報」から計算。現行GDPは名目暦年、日銀試算値は名目年度。 8 日本は、SHA2011 を適用した 2011 年に対 GDP 保健医療支出が上昇してい るが、SHA2011 の改訂にあたり「諸外国がどのような対応を行ったかについ ては現在のところ明確にはなっていない」4上、過去何年遡及するかも国によっ てさまざまである(表 2.2.1)。 表 2.2.1 年次別推計方法 SHA 1.0 based health accounts SHA 2011 based health accounts Canada 1975-2005 2006-2015 France 1995-2005 2006-2014 Germany 1995-2010 Korea 2014 2015 2011-2014 2015 1970-2015 United Kingdom United States 2015 1992-2015 Italy Japan OECD estimates 2013-2014 1970-2014 2015 2015 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 4 医療経済研究機構「OECD 基準による日本の保健医療支出」2016 年 8 月 4 日 プレスリリース 9 日本の対 GDP 保健医療支出は 11.2%(2015 年, OECD estimates)で OECD 加盟 35 か国中 3 位であるが、 ドイツ、フランスとほぼ同水準である(図 2.2.5)。 イギリスは 2013 年から SHA2011 を適用し、対 GDP 医療費支出が増加して いる(図 2.2.6)5。 高齢化率(65 歳以上人口比率)との関係で見ると、日本では高齢化が進ん でいる割に対 GDP 保健医療支出は高くない(図 2.2.7)。 図 2.2.5 対GDP保健医療支出(2015) 10.0 11.5 11.2 11.1 11.1 11.0 10.8 10.6 10.4 10.3 10.2 9.9 9.8 9.6 9.4 9.4 9.3 9.1 9.0 8.9 8.8 8.4 8.2 7.8 7.6 7.4 7.2 7.2 7.0 7.0 6.3 6.3 5.9 5.6 5.2 15.0 16.9 (%) 20.0 対 GDP 保健医療支出 5.0 United States Switzerland Japan Germany Sweden France Netherlands Denmark Belgium Austria Canada Norway United Kingdom Finland New Zealand Ireland Australia Italy Spain Portugal Iceland Slovenia Greece Chile Czech Republic Israel Korea Luxembourg Hungary Slovak Republic Poland Estonia Mexico Latvia Turkey 0.0 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" UK Health Accounts: 2014 Appendix 3 - Reconciliation between health accounts and "Expenditure on Healthcare in the UK" https://www.ons.gov.uk/peoplepopulationandcommunity/healthandsocialcare/healthcaresystem/bullet ins/ukhealthaccounts/2014 5 10 図 2.2.6 対 GDP 保健医療支出の推移 対GDP保健医療支出の推移 (%) 18.0 16.0 Canada 14.0 France 12.0 Germany 10.0 Italy Japan 8.0 Korea 6.0 United Kingdom United States 4.0 2.0 2000 2005 2010 2015 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 図 2.2.7 65 歳以上人口比率と対 GDP 保健医療支出 65歳以上人口比率と対GDP保健医療支出(2013 (or nearest year)) 20.0 対 G D 15.0 P 保 健 10.0 医 療 支 5.0 出 日本 ( ) % 0.0 0.0 5.0 10.0 15.0 65歳以上人口比率(%) *OECD.Stat, *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 11 20.0 25.0 30.0 3. 保健医療支出 3.1. 分野別対 GDP 比 診療技術料およびサービス料 医療財(Medical goods)以外の支出を、 「診療技術料およびサービス料」と した。日本の対 GDP 保健医療支出は 3 位であるが、診療技術料およびサービ ス料は 7 位にまで下がる(図 3.1.1)。 診療技術料およびサービス料には予防、公衆衛生サービスも含んでおり、西 沢(2015)はこれらの費用がほとんど算入されておらず、過小推計になってい ると指摘しており、そのため順位が下がったとも考えられる。もっともこうし た問題は他の国でも同様であろう。 日本の保健医療支出に占める診療技術料およびサービス料の割合は 1999 年 以降、SHA2011 改訂の影響を除き、おおむね減少傾向にある(図 3.1.3)。 15.0 10.0 5.0 対 GDP 診療技術料およびサービス料 対GDP診療技術料およびサービス料 (2014(or nearest year)) 9.9 9.8 9.6 9.5 9.4 9.0 8.8 8.8 8.8 8.7 8.5 8.4 8.2 8.1 8.0 7.7 7.6 7.5 7.3 7.3 7.2 7.1 6.6 6.1 5.7 5.6 5.5 5.1 4.9 4.8 4.8 4.5 4.1 3.9 (%) 14.3 図 3.1.1 United States Switzerland Sweden Netherlands Denmark New Zealand Japan France Germany Belgium Ireland Austria United Kingdom Norway Finland Canada Chile Israel Iceland Italy Australia Portugal Spain Slovenia Czech Republic Greece Luxembourg Korea Turkey Poland Estonia Hungary Slovak Republic Mexico Latvia 0.0 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016"から計算。日本、オーストラリアは2013年データ。 2013年以降のデータがない国は除く。 12 図 3.1.2 (%) 16.0 対 GDP 診療技術料およびサービス料の推移 対GDP診療技術料およびサービス料の推移 14.0 Canada 12.0 France Germany 10.0 Italy Japan 8.0 Korea 6.0 United Kingdom United States 4.0 2.0 2000 2005 2010 2015 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016"から計算 図 3.1.3 (%) 88.0 保健医療支出に占める診療技術料およびサービス料の割合の推移 保健医療支出に占める診療技術料およびサービス料の割合の推移 86.0 Canada 84.0 France 82.0 Germany Italy 80.0 Japan 78.0 Korea 76.0 United Kingdom United States 74.0 72.0 2000 2005 2010 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016"から計算 13 2015 医薬品およびその他の非耐久性医療財 医療財のうち、医薬品(処方薬、一般薬)およびその他の非耐久性医療財に ついては、日本の対 GDP 支出は 2.1%で 3 位と(図 3.1.4)、G7 の中でもっと も高い(図 3.1.5)。さらにこの後、日本では高額薬剤の問題が浮上している。 保健医療支出に占める割合は、日本では SHA 改訂の影響でいったん縮小し たが、その後は横ばいである(図 3.1.6)。 注)日本の場合、一般薬を含んでいるという点が、厚生労働省「国民医療費」 と決定的に異なっている。一般薬の費用は、厚生労働省「薬事工業生産動態 統計」の出荷額に、中小企業庁「中小企業実態基本調査報告書」の卸、小売 マージン率(売上高÷売上原価)を乗じて計算されている6。 図 3.1.4 (%) 対 GDP 医薬品およびその他の非耐久性医療財支出の割合 対GDP医薬品およびその他の非耐久性医療財支出 (2014(or nearest year)) 2.0 1.0 2.3 2.2 2.1 2.0 1.9 1.7 1.7 1.6 1.6 1.6 1.5 1.5 1.5 1.5 1.4 1.4 1.4 1.3 1.3 1.3 1.3 1.2 1.2 1.2 1.2 1.1 1.1 0.8 0.7 0.7 0.5 3.0 Greece Hungary Japan United States Slovak Republic Canada France Spain Germany Slovenia Italy Mexico Latvia Korea Belgium Ireland Portugal Poland Australia Czech Republic Austria Switzerland United Kingdom Finland Estonia Iceland Sweden Netherlands Denmark Norway Luxembourg 0.0 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016"から計算。日本、オーストラリアは2013年データ。 2013年以降のデータがない国は除く。 医療経済研究機構「2010-2012 年度 OECD の SHA 手法に基づく総保健医療支出の推計 (National Health Accounts) 報告書」2015 年 3 月 6 14 図 3.1.5 (%) 2.2 対 GDP 医薬品およびその他の非耐久性医療財支出の推移 対GDP医薬品およびその他の非耐久性医療財の推移 2.0 Canada 1.8 France Germany 1.6 Italy 1.4 Japan Korea 1.2 United Kingdom United States 1.0 0.8 2000 2005 2010 2015 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016"から計算 図 3.1.6 (%) 26.0 保健医療支出に占める医薬品およびその他非耐久性医療財支出の割合 保健医療支出に占める医薬品およびその他の非耐久性医療財支出の割合 24.0 Canada 22.0 France 20.0 Germany Italy 18.0 Japan 16.0 Korea 14.0 United Kingdom 12.0 United States 10.0 2000 2005 2010 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 15 2015 1 人当たり保健医療支出 3.2. 1 人当たり保健医療支出は米ドル購買力平価(PPP, purchasing power parity)で計算されており、為替レートの影響を受ける。 日本の 1 人当たり保健医療支出は 4,150 ドルで OECD 加盟 35 か国中 15 位 である(図 3.2.1)。アメリカを除く G7 では、日本はドイツより低く、フラン ス、イギリスと同水準である。また、G7 では上昇傾向が続いている中、日本 はここ数年、為替レートの影響もあるが横ばいである(図 3.2.2)。 高齢化率(65 歳以上人口比率)との関係で見ると、日本は高齢化が進んで いる割には、1 人当たり保健医療支出は高くない(図 3.2.3)。 図 3.2.1 8,000 6,000 4,000 2,000 1人当たり保健医療支出(2015) Current expenditure on health, per capita, US$ purchasing power parities 6,935 6,567 5,343 5,267 5,228 5,155 5,107 4,987 4,943 4,614 4,611 4,420 4,415 4,150 4,015 4,012 3,984 3,740 3,590 3,272 3,153 2,644 2,631 2,533 2,488 2,473 2,245 2,064 1,845 1,824 1,748 1,677 1,371 1,070 1,064 10,000 9,451 (US$ PPP) 1 人当たり保健医療支出 United States Switzerland Norway Netherlands Germany Sweden Luxembourg Ireland Austria Denmark Canada Belgium Australia France Japan United Kingdom Iceland Finland OECD AVERAGE New Zealand Italy Spain Slovenia Portugal Israel Korea Czech Republic Greece Slovak Republic Hungary Estonia Chile Poland Latvia Mexico Turkey 0 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 16 図 3.2.2 1 人当たり保健医療支出の推移 1人当たり保健医療支出の推移 (US$ PPP) 10,000 Canada 8,000 France Germany 6,000 Italy Japan 4,000 Korea United Kingdom 2,000 United States 0 2000 2005 2010 2015 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 図 3.2.3 65 歳以上人口比率と 1 人当たり保健医療支出 (US$ PPP) 65歳以上人口比率と1人当たり保健医療支出(2013 (or nearest year)) 10,000 1人当たり保健医療支 出 8,000 6,000 日本 4,000 2,000 0 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 65歳以上人口比率(%) *OECD.Stat, *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 17 25.0 30.0 為替レートによって順位は変わりうるが、直近の日本の 1 人当たり診療技術 料・サービス料は 17 位で OECD 平均を若干上回る程度である(図 3.2.4) 。 1 人当たり医薬品およびその他の非耐久性医療財支出は 2 位であり(図 3.2.5)、上昇傾向が続いている(図 3.2.6)。OECD は諸外国が抑制的であるの に対し、日本では 1 人当たり医薬品およびその他の非耐久性医療財支出が経済 危機の 2009 年以降も伸びていることを特筆している7。 図 3.2.4 6,000 4,000 2,000 1人当たり診療技術料およびサービス料 (2014(or nearest year)) 5,894 5,420 4,643 4,456 4,375 4,279 4,095 4,075 4,001 3,800 3,606 3,478 3,431 3,382 3,312 3,308 3,307 3,151 2,573 2,372 2,077 2,009 1,909 1,833 1,540 1,355 1,289 1,248 1,202 907 744 8,000 7,767 (US$ PPP) 1 人当たり診療技術料およびサービス料 United States Switzerland Norway Netherlands Sweden Denmark Ireland Germany Austria Luxembourg Belgium Canada France Australia United Kingdom Iceland Japan Finland OECD AVERAGE Italy Spain Portugal Slovenia Czech Republic Korea Greece Estonia Slovak Republic Poland Hungary Latvia Mexico 0 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016"から計算。日本、オーストラリアは2013年データ。 2013年以降のデータがない国は除く。 7 OECD “Health at a Glance 2015 How does Japan compare?” 18 図 3.2.5 1,000 800 600 400 1人当たり医薬品およびその他の非耐久性医療財支出 (2014(or nearest year)) 783 772 741 730 703 656 630 626 623 609 547 544 543 533 532 490 489 487 485 484 476 457 408 401 399 377 348 339 325 324 306 279 1,200 1,112 (US$ PPP) 1 人当たり医薬品およびその他の非耐久性医療財支出 200 United States Japan Canada Germany Switzerland Ireland France Greece Australia Belgium Austria Spain Italy Hungary Slovak Republic OECD AVERAGE Iceland Sweden Korea United Kingdom Slovenia Finland Norway Czech Republic Netherlands Portugal Luxembourg Latvia Poland Denmark Estonia Israel Mexico 0 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016"から計算。日本、オーストラリアは2013年データ。 2013年以降のデータがない国は除く。 図 3.2.6 (US$ PPP) 1,200 1 人当たり医薬品およびその他の非耐久性医療財支出の推移 1人当たり医薬品およびその他の非耐久性医療財支出の推移 Canada 1,000 France 800 Germany Italy 600 Japan Korea 400 United Kingdom 200 United States 0 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 19 財源別対 GDP 比 3.3. 保 健 医療支出に占める公的制度( government and compulsory health insurance schemes)は、日本の場合、公的医療・介護保険の給付費、公費負 担医療である。日本では対 GDP 公的制度支出が 9.5%ともっとも高い。また日 本とドイツは同じような水準、構成である(図 3.3.1)。 図 3.3.1 財源別対 GDP 保健医療支出 15.0 10.0 5.0 0.0 民間 公的 8.4 United States 11.5 7.8 Switzerland 11.2 9.5 Japan 11.1 9.4 Germany 11.1 9.3 Sweden 11.0 8.7 France 10.8 8.7 Netherlands 10.6 8.9 Denmark 10.4 8.0 Belgium 10.3 7.8 Austria 10.2 7.2 Canada 9.9 8.5 Norway 9.8 7.7 United Kingdom 9.6 7.3 Finland 9.4 7.5 New Zealand 9.3 6.5 Ireland 9.3 6.2 Australia 9.1 6.8 Italy 9.0 6.3 Spain 8.9 5.8 Portugal 8.8 7.2 Iceland 8.4 6.0 Slovenia 8.2 5.0 Greece 7.8 4.8 Chile 7.6 6.3 Czech Republic 7.4 Israel 4.6 7.2 Korea 4.0 7.2 6.0 Luxembourg 7.0 Hungary 4.7 7.0 5.6 Slovak Republic 6.3 Poland 4.5 6.3 4.8 Estonia 5.9 Mexico 3.1 5.6 Latvia 3.4 5.2 Turkey 4.0 20.0 財源別対GDP保健医療支出(2015) 16.9 (%) *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 公的:Government schemes and compulsory contributory health care financing schemes 民間:Private expenditure 保健医療支出に占める公的制度の割合は、ノルウェー、ドイツ、日本(84.9%) の順である(図 3.3.2)。ドイツは 2008 年までは 70%台であったが、「保険に なじまない給付」 (妊娠・出産等に係る母性給付、病気の子の看護等のために休 業する際の傷病手当金、家事をする者が病気の際の家事援助など)への連邦補 助金を段階的に引き上げ8、2015 年には日本を超えて 85.0%になっている。 8 日本医師会・民間病院ドイツ医療・福祉調査団報告書(2010)13 頁 20 Norway Germany Japan Denmark Luxembourg Sweden Czech Republic Iceland Netherlands Slovak Republic New Zealand United Kingdom France Belgium Turkey Austria Finland Estonia Italy Slovenia Poland Canada Spain Ireland Switzerland Hungary Australia Portugal Israel Chile Greece Latvia Korea Mexico United States 100.0 80.0 60.0 85.2 85.0 84.9 84.2 84.0 83.7 83.6 81.8 80.7 80.6 79.7 79.0 78.6 77.5 77.2 76.2 75.5 75.5 75.5 72.2 71.6 70.8 69.9 69.5 67.9 67.0 66.7 66.0 62.5 61.1 60.6 60.4 55.6 52.3 49.4 図 3.3.2 (%) (%) 90.0 2000 2005 保健医療支出に占める公的制度の割合 保健医療支出に占める公的制度の割合(2015) 40.0 20.0 0.0 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 図 3.3.3 保健医療支出に占める公的制度の割合の推移 保健医療支出に占める公的制度の割合の推移 80.0 Canada France 70.0 Germany Italy 60.0 Japan Korea 50.0 United Kingdom United States 40.0 2010 21 2015 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 2011年以降、日本とドイツの線は重なっている。 3.4. 診療種類・サービス別対 GDP 比 Curative and rehabilitative care(治療・リハビリテーション) 治療・リハビリテーションの対象は、入院、外来、在宅医療およびリハビリ テーションである。日本の対 GDP 治療・リハビリテーション支出は 6.4%であ る(図 3.4.1)。日本はかつて対 GDP 治療・リハビリテーション支出は G7 の 中で中位であったが、2009 年に名目 GDP が落ち込んで対 GDP 医療支出が上 昇し、かつそれ以降も微増して、現在 G7 の中で米国に次ぐ水準にある(図 3.4.2)。 日本では対 GDP 治療・リハビリテーション支出は 3 位であるが、外来(日 帰り入院9、在宅医療10は含まない)に限ると 6 位に下がる(図 3.4.3)。その分 入院の比重が高いということでもある。 図 3.4.1 対GDP治療・リハビリテーション支出(2014(or nearest year))) Curative and rehabilitative care 5.0 6.6 6.4 6.1 6.1 6.0 6.0 5.9 5.9 5.9 5.6 5.6 5.5 5.4 5.3 5.3 5.2 5.1 5.1 4.9 4.8 4.6 3.9 3.8 3.8 3.6 3.5 3.5 3.4 3.3 2.7 10.0 11.5 (%) 15.0 対 GDP 治療・リハビリテーション支出 United States Switzerland Japan Australia Austria France Denmark Portugal Sweden Germany Finland United Kingdom Netherlands Ireland Spain Canada Iceland Italy Belgium Greece Slovenia Norway Korea Poland Hungary Czech Republic Estonia Slovak Republic Luxembourg Mexico Latvia 0.0 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 2013年以降のデータがない国は除く。 9 10 日本、オーストラリアは2013年データ。 Day curative and rehabilitative care Home-based curative and rehabilitative care 22 図 3.4.2 対 GDP 治療・リハビリテーション支出の推移 対GDP治療・リハビリテーション支出の推移 Curative and rehabilitative care (%) 12.0 10.0 Canada France 8.0 Germany Italy Japan Korea United Kingdom 6.0 4.0 United States 2.0 2000 2005 2010 2015 *OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016 図 3.4.3 9.0 8.1 (%) 対 GDP 外来治療・リハビリテーション支出 対GDP外来治療・リハビリテーション支出(2014(or nearest year))) Outpatient curative and rehabilitative care 3.0 3.5 3.5 3.3 3.1 3.0 3.0 3.0 2.9 2.9 2.5 2.5 2.5 2.4 2.4 2.3 2.2 2.1 2.1 2.0 2.0 2.0 1.9 1.9 1.8 1.7 1.5 1.5 1.5 1.5 1.2 6.0 United States Portugal Switzerland Sweden Denmark Japan Finland Canada Australia Spain Austria United Kingdom Germany Iceland Korea Netherlands Slovenia Czech Republic Italy Mexico Belgium Ireland Norway France Estonia Hungary Luxembourg Slovak Republic Greece Poland Latvia 0.0 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 日本、オーストラリアは2013年データ。 2013年以降のデータがない国は除く。 23 図 3.4.4 (%) 4.0 対 GDP 外来治療・リハビリテーション支出の推移 対GDP外来治療・リハビリテーション支出の推移 Outpatient curative and rehabilitative care 3.0 Canada France 2.0 Germany Italy 1.0 Japan Korea United Kingdom United States 0.0 2000 2005 2010 2015 *OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016 イタリアは2014年に集計方法を変更しているので非表示 Long-term care (health)(長期ケア) 長期ケア(Long-term care (health))は、日本の場合、療養病床や介護保 険サービスの大部分である。介護保険部分は、当然、介護保険被保険者が対象 であるが、フランスの注釈を見ると、高齢者のための超長期病床を含むとあり、 高齢者に限っていない国もある。 日本の対 GDP 長期ケア支出は 2.1%であり(図 3.4.5)、SHA2011 改訂後も 連続して増加しているが、北欧諸国は日本よりも高い(図 3.4.6)。 なお、SHA2011 改訂にあたって「諸外国がどのような対応を行ったかにつ いては現在のところ明確にはなっていない」11ことにも注意が必要である。 11 医療経済研究機構「OECD 基準による日本の保健医療支出」2016 年 8 月 4 日 プレスリリース 24 対 GDP 長期ケア支出 0.1 0.0 0.2 0.2 0.3 0.3 0.3 0.8 1.4 0.4 0.9 0.9 0.9 1.1 1.0 1.0 1.3 1.5 1.5 1.7 1.6 1.8 2.1 2.0 1.8 2.3 2.2 対GDP長期ケア支出(2014(or nearest year)) Long‐term care (health) 2.6 2.6 3.0 2.6 3.0 (%) 2.9 図 3.4.5 Netherlands Sweden Norway Denmark Belgium Ireland Switzerland Japan Iceland United Kingdom Finland Austria Germany Luxembourg Canada France Korea Czech Republic United States Slovenia Italy Spain Poland Estonia Latvia Hungary Portugal Australia Greece Slovak Republic 0.0 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 日本、オーストラリアは2013年データ。 2013年以降のデータがない国は除く。 図 3.4.6 対 GDP 長期ケア支出の推移 対GDP長期ケア支出の推移 Long‐term care (health) (%) 2.5 2.0 Canada France 1.5 Germany Italy Japan Korea United Kingdom 1.0 United States 0.5 0.0 2000 2005 2010 *OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016 25 2015 4. 医療提供体制と受診回数 4.1. 医師数 基本的には臨床医がカウントされているが、イギリスでは NHS の医師だけ が対象で眼科医および検眼医(optometrists/opticians)、非常勤医師は含まな いなど、国や地域によって違いがある12。 Physicians Canada France Germany Italy Japan Korea United Kingdom United States professionally active physicians - Includes nonpractising physicians and professionals who are foreigners. professionally active physicians practising physicians practising physicians practising physicians practising physicians practising physicians - Data cover National Health Service staff only. ( NHSのみ) - Data exclude dental staff, optometrists/opticians, and locum staff. practising physicians 日本の人口 1,000 人対医師数は 2.4 人(2014 年)である。日本のデータは 医学部定員増の効果はまだほとんど出ていない時期のものであるが、G7 の中 ではアメリカの水準に近づいている(図 4.1.2)。 イギリスの人口 1,000 人対医師数は、2000 年以降 1.3 倍に増加した。その 背景として、白瀨(2011)は、医学部の定員増加や養成課程の多様化のほか、 イギリスにおける外国人医師の活用を挙げている。 12 イギリスでも、地域によって範囲が異なる。 Northern Ireland: Data exclude bank staff, research fellows, clinical assistants and hospital/medical practitioners. 26 図 4.1.1 人口1,000人当たり医師数(2014 (or nearest year)) Physicians, Density per 1 000 population (head counts) 4.0 2.0 5.1 4.4 4.4 4.1 4.1 4.1 3.9 3.8 3.7 3.7 3.6 3.5 3.5 3.4 3.4 3.3 3.3 3.3 3.3 3.2 3.0 3.0 2.9 2.8 2.8 2.8 2.8 2.6 2.6 2.4 2.3 2.2 2.2 2.0 1.8 6.0 6.3 (人) 8.0 人口 1,000 人当たり医師数 Greece 3 Austria 1 Portugal 3 Portugal 3 Switzerland 1 Sweden 1 Germany 1 Italy 1 Spain 1 Czech Republic 1 Denmark 1 Iceland 1 Israel 1 Australia 1 Slovak Republic 2 Netherlands 2 France 2 OECD AVERAGE Estonia 1 Hungary 1 Latvia 1 Finland 1 Belgium 1 Luxembourg 1 New Zealand 1 Ireland 1 United Kingdom 1 Slovenia 1 Canada 2 United States 1 Japan 1 Poland 1 Mexico 1 Korea 1 Chile 3 Turkey 2 0.0 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 1. Data refer to practising physicians. Practising physicians are defined as those providing care directly to patients. 2. Data refer to professionally active physicians. They include practising physicians plus other physicians working in the health sector as managers, educators, researchers, etc. (adding another 5‐10% of doctors). 3. Data refer to all physicians who are licensed to practice. 図 4.1.2 (人) 人口 1,000 人当たり医師数の推移 人口1,000人当たり医師数の推移 Physicians, Density per 1 000 population (head counts) 4.5 4.0 Canada 3.5 France 3.0 Germany 2.5 Italy 2.0 Japan Korea 1.5 United Kingdom 1.0 United States 0.5 0.0 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 27 4.2. 病床数 病床数・ベッド数は、病院病床(Hospital beds)、精神ケア病床(Psychiatric care beds) 、長期居住型ベッド(Beds in residential long-term care facilities、 ナーシングホームなど)に区分される(表 4.2.1)。ただし、日本、イギリスは 病院病床に精神科病床を含むなど、区分は一律ではない。 表 4.2.1 人口 1,000 人当たり病床数・ベッド数 Per 1 000 population Psychiatric Total hospital beds Canada 2013 Other Curative Rehabilita care beds Long-term hospital (acute) tive care care beds beds ※ care beds beds 2.7 2.1 0.1 0.5 0.0 0.4 France 2014 6.2 4.1 1.6 Germany 2014 8.2 6.2 2.1 Italy 2013 3.9 2.8 0.4 Japan 2014 13.2 7.9 Korea 2014 11.7 6.4 United Kingdom 2014 2.7 2.3 United States 2013 2.9 2.5 0.5 0.0 0.7 1.3 0.2 0.0 0.1 - 2.7 2.7 2.7 - 4.2 1.0 1.0 0.5 0.5 0.1 0.2 - - - 0.1 ※日本の「その他」は精神病床なのでPsychiatric care beds(精神ケア病床)と重複計上 Beds in residential long-term care facilities 7.5 Canada 2012 France 2014 9.7 Germany 2013 11.2 Italy 2013 3.9 Japan 2014 6.2 Korea 2014 3.0 United Kingdom 2015 8.5 United States 2014 5.1 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 28 0.2 0.9 病院病床数と長期居住型ベッド数とを比較してみると、日本では病院病床は 多いが、長期居住型のベッドは少ない(図 4.2.1)。ただし、日本の場合、介護 老人保健施設、介護老人福祉施設しか計上されていないという問題がある。 図 4.2.1 人口 1,000 人当たり病床数・ベッド数 人口1,000人当たり病床数・ベッド数 Hospital (床) Residential long‐term care facilities 15.0 13.2 11.7 11.2 9.7 10.0 8.5 8.2 7.5 6.2 5.0 6.2 3.9 3.9 5.1 3.0 2.7 2.7 2.9 United Kingdom United States 0.0 Canada France Germany Italy Japan *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 29 Korea 病院病床数 日本では有床診療所も含むが、介護施設や諸外国のナーシングホームと区別 するため「病院病床数」とした。ドイツでは長期療養病床は含まない。イギリ スでは民間セクターは含まない。アメリカでは AHA 登録病院のみである。 Total hospital beds Germany Japan United Kingdom - Beds in long-term-nursing care facilities are excluded. (長期療養は含まない) - Cots for healthy infants, recovery trolleys, emergency stretchers, surgical tables and beds for same-day care and palliative care are also not included. (一時利用は含まない) - All beds in hospitals and medical clinics. (有床診を含む) - Does not include private sector. (民間セクターは含まない) 上記のほかウェールズではIntensive Care(集中治療)なども含まない United States - Includes all the AHA registered hospital beds for all types of hospitals. ( AHA 登録病院のみ) 日本の人口 1,000 人当たり病院病床数は 13.2 床で OECD 加盟国中もっとも 多い(図 4.2.2)。日本の人口 1,000 人当たり病院病床数は減少傾向にあるが、 他の国も減少しているので、G7 の中での差はあまり縮小していない(図 4.2.3)。 30 図 4.2.2 人口1,000人当たり病院病床数(2014 (or nearest year)) Total hospital beds, Per 1 000 population 8.2 7.6 7.0 6.6 6.5 6.2 6.2 5.8 5.7 5.0 4.9 4.7 4.6 4.5 4.5 4.2 3.8 3.3 3.3 3.2 3.1 3.0 2.9 2.8 2.7 2.7 2.7 2.7 2.6 2.5 2.1 1.6 13.2 11.7 (床) 15.0 人口 1,000 人当たり病院病床数 10.0 5.0 Japan Korea Germany Austria Hungary Poland Czech Republic Belgium France Slovak Republic Latvia Estonia Luxembourg Netherlands Switzerland Slovenia Finland Greece Norway Portugal Italy Iceland Israel Spain United States New Zealand United Kingdom Canada Denmark Turkey Ireland Sweden Chile Mexico 0.0 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 図 4.2.3 人口 1,000 人当たり病院病床数の推移 人口1,000人当たり病院病床数の推移 Total hospital beds, Per 1 000 population (床) 20.0 Canada 15.0 France Germany Italy 10.0 Japan Korea 5.0 United Kingdom United States 0.0 1980 1985 1990 1995 2000 2005 **"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 31 2010 2015 (再掲)病院急性期病床数 ドイツではリハビリテーション病床を含まない。アメリカでは、多くの患者 の在院日数が 30 日以下の病院が対象である。 Curative (acute) care beds in hospitals France - Curative care beds are beds for surgery, obstetrics and other medical care.(手術、産科、その他が対象) Germany - Excluded are rehabilitative care beds (psychiatric and non-psychiatric) in prevention and rehabilitation facilities and beds in long-term nursing care facilities. (予防、リハビリ、長期ケア施 設を含まない) Japan - 一般病床、結核病床、感染症病床が対象 - 精神病床、療養病床を含まない United Kingdom - Does not include private sector. (民間セクターを含まない) - Curative care beds also include long-term care beds, rehabilitation beds and other hospital beds. (リハビリ、長期ケアを含む) United States - Short term general hospitals, as defined by the AHA, are hospitals that may provide either non-specialised or specialised care with the majority of their patients staying for fewer than 30 days. (患者の大半が在院期間30日以下) 日本の人口 1,000 人対急性期病床数は 7.9 床で 1 位であるが、亜急性期病床 (当時)を含んでいる点に注意が必要である。(図 4.2.4)。推移については、 日本と同様、G7 もおおむね減少傾向にある(図 4.2.5)。 32 図 4.2.4 6.4 6.2 5.8 5.7 5.0 4.9 4.3 4.3 4.2 4.2 4.1 3.8 3.7 3.5 3.4 3.4 3.3 3.3 3.1 2.8 2.7 2.7 2.6 2.6 2.5 2.4 2.4 2.4 2.3 2.3 2.1 1.9 1.6 8.0 人口1,000人当たり病院急性期病床数(2014 (or nearest year)) Curative (acute) care beds, density per 1 000 population 7.9 (床) 人口 1,000 人当たり病院急性期病床数 6.0 4.0 2.0 Japan Korea Germany Austria Belgium Poland Slovak Republic Hungary Czech Republic Slovenia Luxembourg France Switzerland Estonia Greece Norway Latvia Netherlands Portugal Finland Italy New Zealand Iceland Denmark Turkey United States Ireland Spain Sweden Israel United Kingdom Canada Chile Mexico 0.0 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 図 4.2.5 人口 1,000 人当たり病院急性期病床数の推移 人口1,000人当たり病院急性期病床数の推移 Curative (acute) care beds, density per 1 000 population (床) 15.0 Canada France 10.0 Germany Italy Japan 5.0 Korea United Kingdom United States 0.0 1980 1985 1990 1995 2000 2005 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 33 2010 2015 病院精神ケア病床数 精神ケア病床(諸外国と制度が異なるので「精神病床」と訳していない)は、 日本では精神病床すべてが対象であるが、カナダでは精神科病院の病床が対象 である。 All psychiatric care beds in hospitals Canada - All beds in psychiatric hospitals are classified as ‘Psychiatric’. Additionally, beds reported under Psychiatric Functional Centre in general and specialty hospitals are classified as ‘Psychiatric’. (精神科病院の精神病床) France - Psychiatric care beds include all beds in mental health in general as well as other hospitals and beds for substance abuse treatment only when the head of the unit is a psychiatrist. Germany - Psychiatric care beds in hospitals comprise beds in mental health hospitals Japan - Psychiatric care beds in hospitals. United Kingdom - Does not include private sector. (民間セクターは含まない) United States - AHA-registered hospitals in the United States. 日本の人口 1,000 人対病院精神ケア病床数は 2.7 床で 1 位であるが(図 4.2.6)、国によって、精神ケア、メンタルヘルスの定義は一様ではない。推移 については、日本は減少傾向にあるが、ドイツ以外の他の G7 も抑制されてい る(図 4.2.7)。ドイツについては、公的規制の対象外である心身症・精神療法 病床(治療とリハビリ)が増加したという報告がある13。 13 厚生労働省「諸外国における地域移行をめぐる動向について」2015 年 6 月 34 図 4.2.6 人口1,000人当たり病院精神ケア病床数(2014 (or nearest year)) Psychiatric care beds, Per 1 000 population 1.7 1.4 1.3 1.3 1.2 1.0 1.0 0.9 0.9 0.9 0.8 0.8 0.7 0.7 0.7 0.6 0.6 0.6 0.6 0.5 0.5 0.5 0.4 0.4 0.4 0.4 0.4 0.4 0.2 0.2 0.1 0.1 0.1 0.0 2.7 (床) 3.0 人口 1,000 人当たり病院精神ケア病床数 2.0 1.0 Japan Belgium Netherlands Germany Latvia Norway Korea Czech Republic Switzerland Hungary France Luxembourg Slovak Republic Greece Slovenia Poland Portugal Austria Finland Estonia Denmark United Kingdom Sweden Iceland Israel Australia Canada Ireland Spain New Zealand United States Chile Italy Turkey Mexico 0.0 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 図 4.2.7 人口 1,000 人当たり病院精神ケア病床数の推移 人口1,000人当たり病院精神ケア病床数の推移 Psychiatric care beds, Per 1 000 population (床) 3.0 Canada France 2.0 Germany Italy Japan 1.0 Korea United Kingdom United States 0.0 1980 1985 1990 1995 2000 2005 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 35 2010 2015 長期居住型ベッド数 日本では、介護老人福祉施設(特養)、介護老人保健施設であるが、 「長期居 住型ベッド数」とした。諸外国ではナーシングホームが含まれる。 Beds in residential long-term care facilities France - Data account for beds in EHPAD ("Établissements d'Hé bergement pour Personnes Agées Dépendantes", institutions for dependent elderly people under specific agreement). 高齢者 Germany - Long-term care beds comprise beds in nursing homes in all sector. ナーシングホーム - Data contain the number of places available in nursing homes for the elderly and disabled. Italy - Data refer to all public and private residential care facilities accredited by the National Health Service. 公的のみ Japan - Data refer to a total capacity in “Long-term care and health service facilities for the elderly” and “Longtermcare and welfare service facilities for the elderly”. 介護老人保健施設、介護老人福祉施設 ※有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅は含まない United Kingdom - England / Data include beds or places in all nursing homes and those registered for personal care. ナーシングホームを含む(地域によって対象範囲が若干異なる) United States - The estimates of long-term care beds in nursing homes include certified nursing facility beds. ナーシングホームを含む 日本の人口 1,000 人当たり長期居住型ベッド数は OECD 諸国の中で低い(図 4.2.8)。日本では有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)が 含まれていないことに注意が必要であるが、日本以外にも民間セクターが提供 するベッド数が含まれていない国はある。 日本では 2008 年から 2010 年にかけて長期居住型ベッド数が減少している が、厚生労働省の「介護サービス施設・事業所調査」が 2009~2011 年には民 間委託によるアンケート調査であり、回収率が低かったためである。経年変化 の変動にはこういった事情もある。 36 図 4.2.8 0.5 0.2 2.4 1.8 3.0 2.8 3.9 5.0 6.2 5.1 6.9 6.2 7.8 7.7 7.9 7.8 8.0 8.3 8.0 8.4 8.3 9.2 8.5 10.0 9.7 11.2 11.7 12.8 11.6 10.0 人口1,000人当たり長期居住型ベッド数 Beds in residential long‐term care facilities, Per 1 000 population (床) 15.0 人口 1,000 人当たり長期居住型ベッド数 Sweden Switzerland Finland Germany Luxembourg France Slovenia United Kingdom Hungary Estonia New Zealand Norway Spain Australia Austria Slovak Republic Iceland Czech Republic Ireland Japan United States Italy Korea Latvia Israel Poland Turkey Greece 0.0 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 2013年以降のデータがない国は除く 図 4.2.9 (床) 12.0 人口 1,000 人当たり長期居住型ベッド数の推移 人口1,000人当たり長期居住型ベッド数の推移 Beds in residential long‐term care facilities, Per 1 000 population 10.0 Canada France 8.0 Germany Italy 6.0 Japan 4.0 Korea United Kingdom 2.0 United States 0.0 1993 1998 2003 2008 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 37 2013 4.3. 受診回数 受診回数(Doctors consultations)は、日本では外来延べ日数を公的保険加 入者で割ったものである。ドイツでは四半期ごとの最初の 1 回をカウントして いた。イギリスは NHS 以外の民間セクターは対象外であるなど、受診回数の カウントの方法はまちまちである。 Doctors consultations Germany - One case of treatment only counts the first contact in threemonths even if the patient consults his doctor more often. (四半期ごとの 最初の1回をカウント) - A substantial under-reporting has to be assumed. - With the newly established accounting allowances for the ambulatory medical care in 2008, direct counting is no longer possible. ( 2008年以降比較不可能) Italy - Sample survey. - Data refer to doctor consultations self-reported by the patients. (サンプル調査、自己申告) Japan - The figures refer to days of out-patient surgery per subscriber who is covered by the whole public health insurance system. Korea - Data cover patients who have a consultation with physicians and specialised doctors in hospitals and clinics. United Kingdom - Figures do not include consultations of physicians in the independent sector and do not take into account consultations of specialists outside hospital outpatient departments. ( NHS 以外の独立セクターの医師などは対象外) United States 複数のデータから一部推計して集計されている 38 日本の 1 人当たり受診回数(日数)は 12.8 回であり、韓国についで多い(図 4.3.1)。しかし、“Doctors consultations”であることに注意が必要である。医師 以外の職種へ診療関連業務が移転されている国では、医師が関係しない処置、 指導等もあるが、“Doctors consultations”にはカウントされない。すなわち、 “Doctors consultations”は、医師との対面回数であり、頻回受診を表わす指標 ではない。 なお、韓国がもっとも多いが、韓医師14への受診もカウントされているよう である。ドイツは実際には患者 1 人当たりの受診回数は 17.7 回(2007 年)と の報告がある15。 図 4.3.1 (回) 1 人当たり受診回数 1人当たり受診回数(2014 (or nearest year)) Doctors consultations, Number per capita 15.0 10.0 5.0 14.9 12.8 11.8 11.3 11.1 9.9 8.3 8.0 7.6 7.6 7.4 7.3 7.2 6.8 6.8 6.6 6.3 6.3 5.9 5.9 5.9 4.5 4.3 4.2 4.1 4.0 3.9 3.8 3.7 3.5 2.9 2.6 20.0 Korea Japan Hungary Slovak Republic Czech Republic Germany Turkey Netherlands Canada Spain Belgium Australia Poland Austria Italy Slovenia Estonia France Iceland Latvia Luxembourg Denmark Norway Finland Portugal United States Switzerland Ireland New Zealand Chile Sweden Mexico 0.0 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" “OECD Health Statistics 2016”に、韓国は physicians and specialised doctors への受診をカウントし ているとあり、医師には physicians のほか Korean oriental medicine doctors が含まれるとある。 15 OECD Health Statistics 2016 Definitions, Sources and Methods 14 39 日本の 1 人当たり受診回数は 2000 年代に入ってから減少傾向にある(図 4.3.2)。長期処方の影響が考えられる。 図 4.3.2 1 人当たり受診回数の推移 1人当たり受診回数の推移 Doctors consultations, Number per capita (回) 16.0 14.0 Canada 12.0 France 10.0 Germany Italy 8.0 Japan 6.0 Korea 4.0 United Kingdom 2.0 United States 0.0 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 1 人当たり外来治療・リハビリテーション支出(Outpatient curative and rehabilitative care)を受診回数(Doctors consultations)で除して、受診 1 回当たり費用を試算した。 国によって費用、受診回数が過小推計、過大推計になっている可能性があり、 医師の役割もまちまちであるので、あくまで試みの計算ではあるが、日本は受 診回数は多いが、受診 1 回当たり費用は低い(図 4.3.3, 図 4.3.4)。 ※厚生労働省「医療費の動向」から計算すると、入院外 1 日当たり費用は 2013 年度 11,114 円、2014 年度 11,340 円。院内調剤の薬剤料を含む。 OECD には薬剤料は含まない。 40 図 4.3.3 外来受診 1 回当たり費用(試算) 外来受診1回当たり費用(試算) 38 35 52 47 57 54 82 99 86 117 102 118 139 123 178 140 178 182 179 193 184 291 241 292 464 500 322 519 1,000 945 (US$ PPP) United States Sweden Switzerland Denmark Finland Norway Portugal Australia Luxembourg Iceland Austria Italy Canada Netherlands Mexico Spain France Germany Slovenia Belgium Japan Estonia Czech Republic Korea Poland Latvia Slovak Republic Hungary 0 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 2010年以降のデータがない国は除く。 以下の国以外は2014年データ 2010年:United States、2011年:Belgium、2012年:Portugal、Switzerland、 2013年:Australia、Canada、Czech Republic、Italy、Japan、Spain 図 4.3.4 (US$ PPP) 外 1,000 来 受 800 診 600 1 回 400 当 た 200 り 0 費 用 0.0 1 人当たり受診回数と外来受診 1 回当たり費用(試算) 1人当たり受診回数と外来受診1回当たり費用(試算) 日本 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 1人当たり受診回数(Doctors consultations) *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 2010年以降のデータがない国は除く。 下記以外は2014年データ 2010年:United States、2011年:Belgium、2012年:Portugal、Switzerland、 2013年:Australia、Canada、Czech Republic、Italy、Japan、Spain 41 14.0 16.0 4.4. MRI・CT 日本は 3 年ごとの「医療施設(静態)調査」のデータであり、1999 年まで は病院のみ、2002 年以降は病院、診療所の合計である。日本の MRI 台数は OECD 加盟国中 1 位であり(図 4.4.1)、さらに増加している(図 4.4.2)。日 本の CT 台数も 1 位で、かつ増加傾向にある(図 4.4.3, 図 4.4.4)。 日本の医療機器全体の市場は、2014 年度において 2.8 兆円であり、うち輸 入が 1.4 兆円(49.1%)である(図 4.4.5)。日本は諸外国に比べて CT、MRI 台数が多いが、その投資(減価償却費)は診療報酬で吸収されていることから16、 医療機器が医療費を押し上げている可能性もある。 図 4.4.1 人口 100 万人当たり MRI 台数 人口100万人当たりMRI台数(2014 (or nearest year)) Medical technology, Magnetic Resonance Imaging units, total, Per million population 2.3 4.0 3.0 7.4 6.7 6.1 8.7 8.3 9.8 9.4 8.9 11.3 10.9 10.8 11.6 11.4 12.9 12.6 12.5 15.2 13.4 20.9 24.3 19.7 15.3 20.0 23.3 21.4 25.7 25.2 40.0 38.1 60.0 51.7 (台) Japan United States Korea Italy Greece Finland Iceland Switzerland 1 Austria Spain Australia Ireland Netherlands Luxembourg Latvia Germany 1 Estonia New Zealand France Belgium 1 Turkey Chile Canada Slovenia Slovak Republic Czech Republic Poland United Kingdom Israel Hungary Mexico 0.0 ※1 病院のみ *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 16 一般論として。医療経済実態調査で減価償却費も把握した上で診療報酬を決めるので。個々の医療機 関ベースでは、投資分が回収できず赤字になるケースもある。特に高額医療機器の消費税分が診療報酬で 補てんされていない点が問題になっている。 42 図 4.4.2 人口 100 万人当たり MRI 台数の推移 人口100万人当たりMRI台数の推移 Medical technology, Magnetic Resonance Imaging units, total, Per million population (台) 60.0 Canada France 40.0 Germany Italy Japan 20.0 Korea United Kingdom United States 0.0 1990 1995 2000 2005 2010 2015 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 図 4.4.3 107.1 Japan Australia United States Iceland Denmark Korea Switzerland Latvia Greece Italy Austria Belgium 1 Luxembourg Finland Estonia Germany 1 Spain Slovak Republic New Zealand Ireland Poland France Czech Republic Chile Canada Turkey Netherlands Slovenia Israel United Kingdom Hungary Mexico 120.0 100.0 80.0 60.0 40.0 20.0 0.0 人口100万人当たりCT台数(2014 (or nearest year)) Medical technology, Computed Tomography scanners, total, Per million population 56.1 41.0 39.7 37.7 37.1 36.2 36.1 35.1 33.1 29.4 22.2 21.6 21.4 19.8 18.8 17.5 17.4 17.1 16.7 15.7 15.3 15.1 14.8 14.7 13.9 13.3 13.1 9.6 8.0 7.9 5.9 (台) 人口 100 万人当たり CT 台数 ※1 病院のみ *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 43 図 4.4.4 (台) 120.0 人口 100 万人当たり CT 台数の推移 人口100万人当たりCT台数の推移 Medical technology, Computed Tomography scanners, total, Per million population 100.0 Canada France 80.0 Germany Italy 60.0 Japan 40.0 Korea United Kingdom 20.0 United States 0.0 1990 1995 2000 2005 2010 2015 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 図 4.4.5 (兆円) 日本の医療機器市場規模 日本の医療機器市場規模 3.0 2.2 2.2 2.3 2.6 2.7 1.4 1.4 2.8 2.4 2.0 1.3 1.4 国内 1.1 1.1 1.3 1.1 1.1 1.1 1.1 1.2 1.3 1.4 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 輸入 1.0 0.0 市場規模=国内生産額+輸入額-輸出額 *厚生労働省「薬事工業生産動態統計調査」 44 5. 健康その他 5.1. 平均寿命 日本の平均寿命は女性では 1 位(図 5.1.1,図 5.1.2)、男性では 4 位(図 5.1.3, 図 5.1.4)である。 OECD “Society at a Glance 2014”によれば、アメリカの平均寿命は 1970 年 代には OECD 平均を 1 歳上回っていたが、現在は 1 歳下回っているとし、公 衆衛生のリソースが少なく多くが無保険者であったこと、高カロリー消費、医 薬品(違法ドラッグも含め)消費、交通事故、殺人、そして貧困などを背景に 上げている17。すなわち平均寿命の長さは社会システムの健全性も表している のではないかと思われる。 Society at a Glance 2014 OECD Social Indicators http://www.oecd-ilibrary.org/social-issues-migration-health/society-at-a-glance-2014_soc_glance-2014 -en;jsessionid=bo0nf7hlo1d46.x-oecd-live-02 Health indicators Life expectancy 17 45 Japan Spain France Italy Korea Switzerland Luxembourg Iceland Australia Portugal Norway Sweden Finland Greece Israel Slovenia Austria Belgium Canada Germany Ireland Netherlands New Zealand United Kingdom Denmark Czech Republic Estonia Poland Chile United States Turkey Slovak Republic Hungary Latvia Mexico 100.0 86.8 86.2 86.0 85.6 85.5 85.4 85.2 84.5 84.4 84.4 84.2 84.2 84.1 84.1 84.1 84.1 84.0 83.9 83.6 83.6 83.5 83.5 83.4 83.2 82.8 82.0 81.9 81.7 81.6 81.2 80.7 80.5 79.4 79.4 77.5 図 5.1.1 (歳) 図 5.1.2 (歳) 90.0 1980 1985 1990 1995 2000 女性の平均寿命 女性の平均寿命(2014 (or nearest year)) Life expectancy, Female population at birth, Years 50.0 0.0 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 女性の平均寿命の推移 女性の平均寿命の推移 Life expectancy, Female population at birth, Years 85.0 80.0 75.0 Canada France Germany Italy Japan Korea United Kingdom United States 70.0 2005 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 46 2010 2015 Iceland Switzerland Italy Japan Spain Sweden Australia Israel Norway Netherlands New Zealand France United Kingdom Luxembourg Canada Ireland Austria Korea Greece Belgium Germany Denmark Finland Slovenia Portugal Chile United States Czech Republic Turkey Poland Slovak Republic Estonia Hungary Mexico Latvia 100.0 81.3 81.1 80.7 80.5 80.4 80.4 80.3 80.3 80.1 80.0 79.8 79.5 79.5 79.4 79.4 79.3 79.2 79.0 78.9 78.8 78.7 78.7 78.4 78.2 78.0 76.4 76.4 75.8 75.3 73.7 73.3 72.4 72.3 72.1 69.1 図 5.1.3 (歳) 図 5.1.4 (歳) 85.0 1980 1985 1990 1995 2000 男性の平均寿命 男性の平均寿命(2014 (or nearest year)) Life expectancy, Male population at birth, Years 50.0 0.0 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 男性の平均寿命の推移 男性の平均寿命の推移 Life expectancy, Male population at birth, Years 80.0 75.0 70.0 65.0 Canada France Germany Italy Japan Korea United Kingdom United States 60.0 2005 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 47 2010 2015 5.2. 乳幼児死亡率 出生 1,000 人当たり乳幼児死亡者数(乳幼児死亡率)は、医療水準のみなら ず、人口妊娠中絶が合法か非合法か等の影響も受けるが、日本の乳幼児死亡率 は OECD 加盟国の中で 2 番目に低く(図 5.2.1) 、まだまだ低下傾向にある(図 5.2.2)。 なお乳幼児死亡率についても、一部の国では出生体重等により死亡登録を規 定しており、国によって定義は一律ではない。 48 図 5.2.1 出生1,000人当たり乳幼児死亡者数(2014 (or nearest year)) Infant mortality, Deaths per 1 000 live births 12.5 11.1 (人) 出生 1,000 人当たり乳幼児死亡者数 14.0 12.0 7.0 6.0 5.8 4.8 4.7 4.5 4.2 4.0 3.9 3.9 3.8 3.8 3.6 3.5 3.4 3.4 3.3 3.2 3.1 3.0 3.0 2.9 2.9 2.8 2.8 2.7 2.4 2.4 2.2 2.2 2.1 2.1 1.8 10.0 8.0 6.0 4.0 2.0 Mexico Turkey Chile United States Slovak Republic Canada New Zealand Hungary Poland Denmark Switzerland United Kingdom Greece Latvia Netherlands France Australia Belgium Ireland Germany Israel Austria Korea Portugal Spain Italy Luxembourg Estonia Czech Republic Norway Finland Sweden Iceland Japan Slovenia 0.0 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 図 5.2.2 (人) 50.0 出生 1,000 人当たり乳幼児死亡者数の推移 出生1,000人当たり乳幼児死亡者数の推移 Infant mortality, Deaths per 1 000 live births Canada 40.0 France Germany 30.0 Italy Japan 20.0 Korea United Kingdom United States 10.0 0.0 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 49 喫煙率 5.3. 日本の喫煙率は女性では下位(図 5.3.2)であるが、男性では G7 の中でもっ とも高い(図 5.3.3)。「健康日本 21(第 2 次)(2013 年~)」では、2022(平 成 34)年の成人の喫煙率の目標を 12%としている。2014 年の喫煙率は 19.6% であるが、ここ数年の喫煙率は横ばいで減少傾向にはない(図 5.3.1)。 図 5.3.1 (%) 50.0 成人の喫煙率の推移 成人の喫煙率の推移 Tobacco consumption, % of population 15+ who are daily smokers 40.0 Canada France Germany Italy Japan Korea United Kingdom United States 30.0 20.0 10.0 1980 1985 1990 1995 2000 2005 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 50 2010 2015 図 5.3.2 (%) 40.0 女性の喫煙率の推移 女性の喫煙率の推移 Tobacco consumption, % of female population 15+ who are daily smokers 30.0 Canada France Germany Italy Japan Korea United Kingdom United States 20.0 10.0 0.0 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 *OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016 図 5.3.3 (%) 80.0 男性の喫煙率の推移 男性の喫煙率の推移 Tobacco consumption, % of female population 15+ who are daily smokers 70.0 Canada France Germany Italy Japan Korea United Kingdom United States 60.0 50.0 40.0 30.0 20.0 10.0 1980 1985 1990 1995 2000 2005 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 51 2010 2015 自殺者数 5.4. 日本の自殺率は韓国についで高い(図 5.4.1, 図 5.4.2)。日本は 2016 年に 自殺対策基本法を改正し、その目的に誰も自殺に追い込まれることのない社会 の実現を目指すことを追加したところである。なお、日本の自殺率が 1990 年 代後半に旧上昇したのは、“Society at a Glance 2014”がアジア金融危機と符号 している(韓国も同様)と述べているように18、自殺率には経済環境も大きな 影響を与えている。 図 5.4.1 20.0 10.0 18.7 18.6 18.0 17.3 16.7 16.3 14.7 14.4 14.2 13.9 13.3 13.1 12.4 12.3 12.2 12.2 11.8 11.4 11.3 10.9 10.8 10.7 10.5 10.5 10.3 10.0 9.6 7.5 7.5 6.3 5.5 5.2 4.2 2.6 30.0 10万人当たり自殺者数(2014 (or nearest year)) Causes of mortality: Suicides, deaths per 100 000 population 28.7 (人) 10 万人当たり自殺者数 Korea Japan Slovenia Hungary Estonia Belgium Latvia Poland France Finland Austria Czech Republic United States New Zealand Luxembourg Australia Switzerland Iceland Sweden Denmark Norway Ireland Germany Canada Netherlands Chile Portugal Slovak Republic Spain United Kingdom Italy Israel Mexico Greece Turkey 0.0 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" “Society at a Glance 2014” In Japan, there was a sharp rise in the mid- to late 1990s, coinciding with the Asian financial crisis, but have remained stable since. Suicide rates also rose sharply at this time in Korea, but unlike Japan, rates have continued to increase. 18 52 図 5.4.2 10 万人当たり自殺者数の推移 10万人当たり自殺者数の推移 Causes of mortality: Suicides, deaths per 100 000 population (人) 40.0 30.0 Canada France Germany Italy Japan Korea United Kingdom United States 20.0 10.0 0.0 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 5.5. 高齢者のインフルエンザワクチン接種率 日本では、高齢者(65 歳以上)のインフルエンザワクチン接種率は低く(図 5.5.1)、経年的にも低い水準で推移している(図 5.5.2)。 53 図 5.5.1 高齢者のインフルエンザワクチン接種率 1.4 9.0 2.8 11.0 20.3 20.0 14.1 41.0 31.2 26.9 40.0 40.0 43.0 41.8 49.7 48.5 50.9 50.0 56.2 55.4 60.2 60.0 58.0 63.8 63.1 69.0 67.9 74.5 80.0 72.0 82.3 100.0 79.8 (%) 74.9 高齢者のインフルエンザワクチン接種率 Immunisation against influenza among the elderly population (age 65+) Mexico Korea Chile United Kingdom Netherlands New Zealand United States Israel Canada Ireland Belgium Spain Italy Portugal Japan Sweden France Denmark Luxembourg Iceland Finland Hungary Norway Austria Slovak Republic Slovenia Turkey Latvia Estonia 0.0 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 図 5.5.2 高齢者のインフルエンザワクチン接種率の推移 高齢者のインフルエンザワクチン接種率の推移 Immunisation against influenza among the elderly population (age 65+) (%) 80 Canada France Germany 60 Italy Japan Korea 40 United Kingdom United States 20 2000 2005 2010 *"OECD Health Statistics 2016-JUNE 2016" 54 2015 6. おわりに(所感) 本稿では、OECD SHA2011 改訂の影響を解説しつつ国際比較も示したが、 各国の保健医療制度はまちまちであり、SHA が提示されているとはいえ推計手 法や推計範囲も異なっている。日本は SHA2011 改訂に対応して保健医療支出 が増加し、かつ予防、公衆衛生サービス費等について過小推計が指摘されてい るが、日本以外の国が SHA2011 に完璧に対応しているというわけでもない。 現在のところ国際比較は大体のイメージをつかむ程度のものでしかなく、今 後推計の精度を高める必要はあるが、ひとまず推計手法等の違いを飲み込んで 国際比較や経年推移を眺めてみると、何らかの示唆を得られなくもない。 たとえば日本は SHA2011 改訂によって介護サービス部分が追加され保健医 療支出が大幅に増加したが、その要因を除くと、診療技術料やサービス料は抑 制的であるが、医薬品支出が増加している。日本は CT、MRI の台数が多い。 そして、医療機器のコスト(減価償却費)はおおむね診療報酬でまかなわれて いる。日本では、医薬品や医療機器が保健医療支出を押し上げている可能性が ある。 為替レートの影響もあるが、日本は高齢化が進んでいる割には、1 人当たり 保健医療支出はそれほど高くない。 日本の病床数の多さがしばしば問題にされるが、日本は病院以外の長期居住 型のベッド数は少ない(集計範囲の問題もある)。 日本の受診回数の多さも問題視される。しかし、日本では受診 1 回当たり単 価が低いため、外来医療費はそれほど高くない。その分、入院医療の比重が重 いということでもあるが、外来医療は効率的に提供されており、不安なときに はすぐに受診し、その結果、健康を維持できているのではないだろうか。 さらに日本の医療費の高さが指摘されている半面、乳幼児死亡率は低く、平 均寿命は長い。 国際比較データは不完全ではあるが、興味深いデータもあり、さまざまなと ころでとり上げられている。各国の保健制度をすべて正しく記載することは現 55 実的ではないにせよ、丁寧な注釈をつけつつ、冷静に国際比較をすることの重 要性を強く感じている。 参考資料 OECD 関連 “OECD Health Statistics 2016” http://www.oecd.org/els/health-systems/health-data.htm OECD “A System of Health Accounts 2011 EDITION” http://www.keepeek.com/Digital-Asset-Management/oecd/social-issues-migration-healt h/a-system-of-health-accounts_9789264116016-en#.V75Ck8Lr35o#page6 OECD“ Society at a Glance 2014” http://www.oecd.org/els/societyataglance.htm OECD “Health at a Glance 2015 How does Japan compare?” https://www.oecd.org/japan/Health-at-a-Glance-2015-Key-Findings-JAPAN.pdf 西沢(2015):西沢和彦「『総保健医療支出』における Long-term care 推 計の現状と課題-医療費推計精度の一段の改善を-」J R I レビュー 2015 Vol.11, No.30 https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/jrireview/pdf/8438.pdf 一般財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 「2010-2012 年度 OECD の SHA 手法に基づく総保健医療支出の推計 (National Health Accounts) 報告書」2015 年 3 月 一般財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構「OECD 基準による日本の保健医療支出」2016 年 8 月 4 日 http://www.ihep.jp/news/popup.php?seq_no=763 満武巨裕「厚生労働統計データを利用した総保健医療支出(OECD 準拠の System of Health Account2.0)の推計方法の開発および厚生労働統計との 56 二次利用推進に関する研究」2012 年 3 月, 一般財団法人医療経済研究・社 会保険福祉協会 医療経済研究機構 財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構「OECD の SHA 手法に基づく保健医療支出推計(National Health Accounts)」2012 年 12 月 22 日, 第 2 回 医療費統計の整備に関する検討会資料 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000ye8l-att/2r9852000000yeh8.pdf 諸外国の状況 日本医師会・民間病院ドイツ医療・福祉調査団報告書「混迷するドイツ医 療-日本型を極めて世界のモデルへ-」2010 年 8 月 白瀨(2011) :白瀨由美香「イギリスにおける医師・看護師の養成と役割分 担」『海外社会保障研究』 174 号 52-63 頁 2011 年 http://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/data/pdf/19455406.pdf 厚生労働省「諸外国における地域移行をめぐる動向について」2015 年 6 月 1 日障害者政策委員会資料 http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/seisaku_iinkai/ws2/270601/pdf/s3.pdf GDP 藤原裕行、小川泰尭「税務データを用いた分配側 GDP の試算」日本銀行ワー キングペーパーシリーズ No.16-J-9 2016 年 7 月 https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2016/data/wp16j09.pdf 内閣府「国民経済計算確報」http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/menu.html 医療費・医療政策 厚生労働省「医療費の動向」 http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/database/zenpan/iryou_doukou.html 「健康日本 21(第 2 次) (2013 年~)」 (国民の健康の増進の総合的な推進 を図るための基本的な方針) http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/kenkounippon21_01.pdf 57
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