リアルワールドでのリバーロキサバンの安全性および有効性を再確認

2016/9/12
ESC 2016レポート|抗血栓療法トライアルデータベース
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2016年8月27~31日,イタリア・ローマ
リアルワールドでのリバーロキサバンの安全性および有効性を再確認-XAPASSより
2016.9.12
日本のリアルワールドにおいて,リバーロキサバンのイベント発症率はJ-ROCKET AFより
低く,安全かつ有効に使用されている現状が明らかに-8月29日,欧州心臓病学会学術
集会(ESC 2016)にて,池田隆徳氏(東邦大学内科学講座循環器内科学分野教授)が発
表した。
●背景・目的
日本ならびに欧州のガイドラインでは,非弁膜症性心房細動(NVAF)患者の脳卒中発症
抑制として,ビタミンK拮抗薬(VKA)ならびに非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)の使
用が推奨されている。一方,ガイドラインが推奨するVKAの至適目標域は日本と欧米で異
なり,日本のガイドラインでは70歳以上の高齢者に対し1.6~2.6と低く設定している。リバ
池田隆徳氏
ーロキサバンでは,このような日本特有の医療環境,ならびに日本人と欧米人との体格差
を考慮し,日本人に適した用量設定の下(15mg 1日1回,中等度腎障害患者では10mg 1
日1回),日本独自の試験J-ROCKET AF 1)が行われた。
さ ら に 市 販 後 は , 約 11,000 例 の 日 本 人 NVAF 患 者 を 登 録 し た 前 向 き 観 察 研 究 ( 特 定 使 用 成 績 調 査 ) Xarelto postauthorization safety & effectiveness study in Japanese patients with atrial fibrillation(XAPASS)が実施されている。日本
のリアルワールドにおけるリバーロキサバンの安全性および有効性に関する情報を迅速に収集し,適正な使用法を確立
することを目的としている。 今回,2016年6月時点で調査票収集・データ固定された症例での集計結果,ならびにJROCKET AFとの比較から,リアルワールドでの使用実態について検討した。
●方法
虚血性脳卒中または全身性塞栓症の発症抑制のためにリバーロキサバンが投与されたNVAF患者11,309例を登録した。
本剤投与開始後から2年間を標準観察期間とし,評価は6ヵ月,1年,2年の時点で実施し,その後5年間の予後観察を行う
予定である。
2016年6月時点での安全性解析対象は9,762例,有効性解析対象は9,729例で,平均観察期間は504±340日である。主要
評価項目は出血性副作用および心血管関連の有害事象(脳卒中,全身性塞栓症,心筋梗塞)である。
●患者背景
XAPASSの安全性解析対象症例の平均年齢は73.1歳,男性62.0%,平均体重は61.4kgであった。一方,J-ROCKET AFで
はそれぞれ71.0歳,82.9%,64.3kgであった。クレアチニンクリアランス(CLcr)は,≧30~<50 mL/分はXAPASSでは
20.9%,J-ROCKET AFでは22.1%,≧50~<80 mL/分ではそれぞれ42.8%,51.3%,≧80 mL/分は25.6%,26.6%。ま
た,平均CHADS2スコアは2.2(J-ROCKET AFでは3.3),平均CHA2DS2-VAScスコアは3.4であった。
●結果
1. 出血性副作用
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すべての出血事象は, XAPASS では647例,4.84%/年に発現した。このうち重大な出血は1.02%/年,頭蓋内出血は
0.43%/年であった。これらの結果は,J-ROCKET AF 1~4)の結果と比べても比較的低値であった(J-ROCKET AFでの重
大な出血は3.00%/年,頭蓋内出血は0.65%/年)。
高リスク患者についてみてみると,75歳以上における重大な出血は1.34%/年,頭蓋内出血は0.56%/年(J-ROCKET AFで
はそれぞれ5.01%/年,1.47%/年),腎機能障害患者(CLcr 30~49mL/分)ではそれぞれ1.78%/年,0.65%/年(同
5.09%/年,1.32%/年),脳卒中/一過性脳虚血発作(TIA)/全身性塞栓症既往患者では1.76%/年,0.83%/年(同2.40%/
年,0.62%/年)であった。これらの結果は,いずれもJ-ROCKET AFと一貫した結果であった。
2. 心血管関連の有害事象
心血管関連の有害事象は, XAPASSでは186例,1.35%/年に発症した。このうち,脳卒中/全身性塞栓症は1.21%/年,脳
梗塞は0.90%/年で,J-ROCKET AFとも一貫した結果であった(J-ROCKET AFではそれぞれ1.26%/年,0.80%/年)。
高リスク患者についてみてみると,75歳以上における脳卒中/全身性塞栓症は1.71%/年,脳梗塞は1.32%/年(JROCKET AFではそれぞれ2.18%/年,1.25%/年),腎機能障害患者ではそれぞれ2.01%/年,1.57%/年(同2.77%/年,
1.66%/年),脳卒中/TIA/全身性塞栓症既往患者では2.29%/年, 1.77%/年(同1.66%/年,1.10%/年)であった。
3. 用量別の検討
15mg投与患者(4,909例)と10mg投与患者(4,853例)を比較すると,10mg投与群のほうが高齢で(平均年齢はそれぞれ68.5
歳,77.7歳),男性が少なかった(71.3%,52.7%)。また,10mg投与群では平均CHADS2スコア(1.8,2.5),平均CHA2DS2VAScスコア(2.8,4.4)も高値であるなど,出血リスクならびに脳卒中リスクも高い患者集団であった。なお,15mg投与群に
おけるCrCl<50mL/分の割合は5.1%,≧50mL/分は87.4%,10mg投与群では,それぞれ42.3%,49.2%であった。
用量別のイベント発現状況をみたところ,重大な出血は15mg投与群0.85%/年,10mg投与群で1.20%/年,脳卒中/全身性
塞栓症/心筋梗塞はそれぞれ0.89%/年,1.83%/年,脳梗塞は0.58%/年,1.24%/年で,10mg投与群で高値であった。こ
の結果は,10mg投与群の患者背景も踏まえると,妥当な結果であると考えられた。
4. 薬剤継続率
1年後の薬剤継続率は74.4%であった。治療を中止したおもな理由は,追跡不能15.4%,有害イベント7.6%,患者自身の
選択2.4%,死亡1.9%,ノンコンプライアンス0.5%などであり,比較的忍容性は良好と考えられた。
●まとめ
日本のリアルワールドにてリバーロキサバンを投与されたNVAF患者において,重大な出血や脳卒中の発現はいずれも,
J-ROCKET AFより少なかった。リバーロキサバンはリアルワールドでの幅広い患者集団に対して,良好なベネフィット・リス
クバランスを有している現状が再確認された。
文献
1. Hori M, J-ROCKET AF study investigators. Rivaroxaban vs. warfarin in Japanese patients with atrial fibrillation – the
J-ROCKET AF study –. Circ J 2012; 76: 2104-11.
2. Hori M, J-ROCKET AF Study Investigators. Rivaroxaban vs. warfarin in Japanese patients with non-valvular atrial
fibrillation in relation to age. Circ J 2014; 78: 1349-56.
3. Hori M, J-ROCKET AF study investigators. Safety and efficacy of adjusted dose of rivaroxaban in Japanese patients
with non-valvular atrial fibrillation: subanalysis of J-ROCKET AF for patients with moderate renal impairment. Circ J
2013; 77: 632-8.
4. Tanahashi N, J-ROCKET AF Study Investigators. Rivaroxaban versus warfarin in Japanese patients with nonvalvular
atrial fibrillation for the secondary prevention of stroke: a subgroup analysis of J-ROCKET AF. J Stroke
Cerebrovasc Dis 2013; 22: 1317-25.
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