Challenge 4 水環境インパクト最小化チャレンジ 水環境インパクト最小化チャレンジ 基本的な考え方 2050 年、世界の総人口は 91 億人、水の需要は現在より 55% これまでトヨタでは、雨水貯留による工業用水利用量削減、 増加、その影響で水不足に悩まされる人は全人口の 40%にも達 ろ過装置による水の再利用率向上、排水リサイクルによる水の する*、といわれています。クルマの製造では塗装工程などで水 再利用と排水域より高い水質で地域に還すことを推進してきま を使用します。そのため、水環境へのインパクトを少しでも減 した。水環境の特性は、地域によって大きな違いがあります。 らさなくてはなりません。対策としては、 「使用量を徹底的に削 今後は地域の要請に合った水環境への対応を世界に広げていき 減」と「徹底的に水をきれいにして還す」の二つがあります。 ます。 *トヨタ調べ 生産活動における水使用量の低減 水使用量低減活動を継続 トヨタ自動車(TMC)においては、2015年度も生産工程での 地道な節水活動に取り組んでいます。特に水資源の厳しい地域 3 蒸気使用量を低減する活動などにより、総使用量は10.9百万m では、水のリサイクルの促進などにより、2015 年度の総使用 (前年度比 5.1% 減) 、生産台数当たり使用量は 4.7m3/ 台(前年 量は 29.3 百万 m3(前年度比 5.4%減)、生産台数当たりの水使 用量は 2.7m3/ 台(前年度比 9.0%減)となりました。 度比 4.2% 減)となりました。 グローバルについては、各国・各地域の水環境事情に応じて、 TMC 水使用量と生産台数当たりの 水使用量の推移 水使用量(百万m3) 18 グローバル水使用量(車両組立工場)と 生産台数当たりの水使用量の推移 (m3/台) 生産台数当たり水使用量(車両組立工場) 9.0 水の総使用量(全社) 16 14 12 8.0 11.5 11.5 11.6 11.5 10 8 4.9 4.8 4.9 4.9 6 7.0 10.9 4.7 6.0 15 2 1.0 ’12 ’13 ’14 0 ’15(年度) 注1:水総使用量は、生産部門、非生産部門(福利厚生施設除く) を対象としています。 注2:生産台数当たり水使用量は、車両組立工場の生産台数当たり原単位を示しています。 注3:過去の数値に誤りがあったため訂正しました。 28.5 29.2 31.2 31.0 7.0 29.3 25 4.0 2.0 ’11 30 5.0 3.0 生産台数当たり水使用量(m3/台) 35 20 4 0 水使用量(百万m3) 5.0 4.8 4.0 3.2 10 3.1 3.0 3.0 2.7 5 0 6.0 2.0 1.0 ’01 ’12 ’13 ’14 0 ’15 (年度) 注1:TMC(車両組立工場)および国内外連結会社など 37社 注2:2013年度より対象会社を追加しました。 25 Environmental Report 2016 Challenge 4 アジア、豪州、 中近東、 南アフリカ、 中南米 欧州 中国 北米 日本 (除くTMC) TMC Challenge 4 水環境インパクト最小化チャレンジ コラム 排水を利用した多様な水辺環境の創出 ― 水質の改善がもたらす新たな命 ― 国内工場では、工場から出る排水を徹底的に処理 (懸濁物の沈殿、ろ過、バクテリアによる有機物の分 解など)したきれいな水を、放流水として川に戻す活 動を長く続けています。 「クラウン」などを生産する元町工場内にある環境 センター * では、2015 年より排水処理後の放流水を 活用したビオトープづくりを進めています。周辺で は、これまで地域在来種の苗木を育成し、5 年ほど前 から従業員と家族で数千本の木々を植樹してきまし 排水処理設備 た。このビオトープでは、既にトンボのヤゴや蝶の幼 虫が観察されています。これは、放流水の水質が地域 の生態系に受け入れられたうれしい報告です。なかで もトンボは、水質や流速に応じて、生息する種類が異 なるといわれています。育った木々は、トンボの隠れ 家や蝶の産卵場になります。元町工場は豊田市の市街 地にありますが、きれいな流水の指標となるハグロト ンボも既に森の中で確認されており、今後たくさんの ヤゴが育つことを期待しています。 コラム 環境センターのビオトープ 植樹エリア内で確認された ハグロトンボ *環境センターは、トヨタの工場などで発生する可燃性の廃棄物から得られ るエネルギーを、元町工場で活用するプラントです。中では低炭素、資源循 環、自然共生に関するさまざまな実験的取り組みが行われています。 住民の衛生・生活環境改善に寄与する地下水浄化設備の導入 インドでは、多くの人々が水道以外の水(主に地下 水)を飲用に使用しています。WHO の調査によれば、 なう持続可能な仕組みも構築されました。現在約 8 万 5,000 人に利用されています。 インドで発症する伝染病の 21%は水が原因と推測さ れ、安全な飲み水を作るための衛生設備を設置するこ とは、地域発展のための基本的要件になっています。 そこでインドの生産事業体 TKM は、2014 年から 地域要請への対応、健康的なコミュニティづくりの 支援のため、地下水浄化設備の導入を推進し、現在は TKM のあるビダディをはじめインド全土に計 10 機 が設置されています。この設備は、RO 膜*などを使っ た 6 つのろ過工程と紫外線照射によって、地下水を IS 10500(飲料水に関するインドの規格)に適合する 水質へと浄化します。これにより住民は市価の 10 分の 1 できれいな水を購入でき、売り上げで運営費をまか 浄水施設開所式の様子 * RO(Reverse Osmosis)膜:水を通しながら水以外の不純物や微粒子を 通さない性質を持った膜 26 Environmental Report 2016 Challenge 4
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