リング型共振素子を用いたリフレクトアレーにおける

2016 年電子情報通信学会通信ソ サイ エ テ ィ 大会
B-1-70
リング型共振素子を用いたリフレクトアレーにおける広帯域化
Broadband in the Reflectarray Using a Ring Resonator Element
牧野滋 1
Shigeru Makino
竹島健飛 1
Kento Takeshima
廣田哲夫 1
野口啓介 1
Tetsuo Hirota
Keisuke Noguchi
瀧川道生 2
Michio Takikawa
金沢工業大学 1
Kanazawa Institute of Technology
まえがき
本論文では,リフレクトアレーアンテナの狭帯域とな
る理由が,共振素子と金属板の間を伝搬する Floquet の
高次モードの影響と考え,エバネッセントモードである
高次モードが十分に減衰するように,誘電体基板厚を選
ぶことで広帯域化を実現できることを示す.
の収差解析と一致しているが,∆ϕ1 の影響により,リッ
プルが生じている.これらのことより,使用周波数帯域
によって,誘電体基板厚 t を適当に決定する必要がある.
むすび
誘電体基板厚 t を厚くすることにより高次モードが十
分に減衰し,広帯域化を実現できることを定量的に確認
した.今後,高能率広帯域化を目指すには,∆ϕ1 が小さ
い共振素子の形状を検討する必要がある.
4
高次モードの減衰量
高次モードが L[dB] 減衰するための誘電体の厚さ t は
式 (1) より求まる [1].
2
λL
1
110[(sin θ − λd )2 − ϵr ] 2
[mm]
塩出剛士 2
Takeshi Shiode
三菱電機株式会社情報技術総合研究所 2
Mitsubishi Electric Corpration
1
t=
伊東健治 1
Kenji Itoh
(1)
λ は使用する周波数における自由空間の波長,ϵr は誘電
体の比誘電率,θ は最大入射角,d は共振素子の間隔で
ある.式 (1) より誘電体基板厚 t と減衰量 L は比例関係
であると分かる.
図1
解析結果
評価関数として,∆ϕ1 は実現できない反射位相,∆ϕ2
はリング径が微小に変化したときの位相誤差,∆ϕ3 は
TE 波と TM 波の位相誤差,∆ϕ4 は周波数が 0.2[GHz]
変化したときの反射位相差の最大値と定義する [2].こ
の内の ∆ϕ1 ,∆ϕ2 は中心周波数における位相誤差,∆ϕ3
は交差偏波発生量,∆ϕ4 は位相誤差における周波数特性
に対応している.
d を 9.2[mm] で固定し、L を 5.0∼15.0[dB] 変化させ
たときの t を式 (1) によって決定する.そのときの評価
関数を図 1 に示す.図 1 より t が厚い場合には,∆ϕ4 が
小さくなるために広帯域となるが,∆ϕ1 が大きいため設
計周波数における能率が低くなると考えられる.一方,
t が薄い場合には,設計周波数における能率は高いが狭
帯域となる.図 2 に,t を変化させたときの能率周波数
特性を示す.図より能率は,図 1 の評価関数に対応して
いることが分かる.次に開口上の位相分布により,図 1
の妥当性を確認する.波面で生じる二次の残留収差の理
論値は収差解析により求めることができる [3].図 3 に
開口上位相分布の周波数特性を示す.(a) は t が薄い場
合で,(b) は t が厚い場合である.図 3 より,L が小さ
い (a) のときは,周波数が変化すると,二次の残留収差
の上に大きなリップルが生じている.これは,高次モー
ドが十分に減衰していないためである.一方,L が大き
い (b) のときは,高次モードがほぼ減衰して,概ね二次
誘電体基板厚 t に対する評価関数
3
図2
誘電体基板厚変化時の能率周波数特性
図 3 開口上の位相分布
参考文献
[1] J P.Montgomery,IEEE,vol.AP-23,No1,1975.
[2] 藤井他, 信学技報,vol.AP2014-183,pp.127-132,2014.
[3] 吉本他, 信学技報,vol.AP2015-118,pp.47-52,2015.
70
2016/9/20 〜 23 札幌市
( 通信講演論文集 1 )
Copyright © 2016 IEICE