巨大氷惑星の形成現場を捉えた アルマ望遠鏡で見つけた海王星サイズ

2016年日本天文学会秋季年会記者発表
巨大氷惑星の形成現場を捉えた
—アルマ望遠鏡で見つけた海王星サイズの惑星形成の証拠—
発表者
塚越 崇 ( 城大学・理学部)
野村 英子 (東京工業大学・地球惑星科学系)
武藤 恭之 (工学院大学・基礎教養教育部門)
他共同研究者
川邊良平(国立天文台), 石本大貴(東京工業大学/京都大学), 金川和弘(シュチェチン大学),
奥住聡(東京工業大学), 井田茂(東京工業大学地球生命研究所),
Catherine Walsh (ライデン大学), Tom J. Millar (クイーンズ大学ベルファスト)
本研究の概要
•
惑星系の土台「原始惑星系円盤」
•
•
若い恒星うみへび座TW星に着目
アルマ望遠鏡を用いて円盤からの電波放射を捉えた
•
円盤内の 間構造を確認
•
2周波数による観測で塵の大きさ分布を調査
•
間では大きい塵が少なくなっており、小さい塵のみが多
く存在していることを発見した
•
•
惑星形成に伴う 間構造を示唆
間の幅と深さは、海王星質量程度の惑星の存在を示唆
惑星系のふるさと:原始惑星系円盤
•
若い星を取り巻く
原始惑星系円盤
•
•
•
冷たいガスと塵で構成
星の周りを回転
塵の合体成長
•
マイクロメートル・サ
イズからミリメートル・
サイズへ
•
塵の核がガスを纏い
惑星となる
©Newton Press
うみへび座TW星の紹介
• 質量:およそ太陽程度
• 年齢:1000万年程度
太陽系の形成を調べる
• 水素核融合反応を起こす前段階にある星 上で重要な観測天体
• 若い恒星としては最も地球に近い
•
地球からの距離:175光年
アルマ望遠鏡による電波観測
•
アルマ望遠鏡
2015年12月1~2日に実行
• 最大で66台のアンテナを16kmに渡って展開する巨大電波望遠鏡
• 多数のアンテナにより高解像度・高感度を実現
• 今回は36台のアンテナを10kmに展開して使用
• 175光年先にある円盤の木星軌道まで見ることが可能
•
天体から放射される電波を観測
• 冷たい塵(~-250℃)からの放射を直接見ることができる
アルマ望遠鏡外観
研究グループのこれまでの観測成果
•
アルマ望遠鏡によるやや低解
像度での観測結果
•
•
野村,塚越ら(2016)
電波で見たうみへび座
TW星の原始惑星系円盤
2015年5月に観測実行
半径~25天文単位付近に 間
構造を発見
※1天文単位は太陽と地球の距離
およそ1億5000万キロメートル
残されていた課題
アルマ望遠鏡の
最小可視サイズ
30天文単位
間の正確な構造はどのようになっているのか?
円盤内での塵の大きさの分布はどのようになっているのか?
今回得られた電波画像
原始惑星系円盤の詳細な姿を捉えた
10天文単位
太陽系の大きさ
海王星軌道
木星軌道
複数の
間構造
間構造に着目
•この
アルマ望遠鏡の
最小可視サイズ
(22天文単位)
22,37天文単位
• 5,
※2つの周波数のデータ(後述)をもとに、円盤の明るさ分布を求めた
2周波数での電波観測を実行
強度比から塵の大きさを調べることができる
電波強度
塵が放射する電波の強度
•
•
周波数で変わる
塵の大きさで変わる
塵が小さい場合
塵が大きい場合
マイクロメートル・サイズ
ミリメートル・サイズ
強度比
強度比
大きい
小さい
周波数
低
高
低
高
本研究では、145GHzと233GHzの周波数を採用
測定した電波強度比
間では強度比が大きくなっている
間の位置
大きい塵が少なく、
小さい塵のみ存在
解釈:惑星形成に伴う塵の分布の変化
惑星軌道に 間を形成、塵の大きさで分布が異なる
• 惑星がある場合の円盤構造の理論予想(Zhuら 2012)
2ical
August
The10Astrophysical
Journal,
755:610
(18pp), 2012 August 10
Journal,
755:6 (18pp),
2012 August
• 惑星によって円盤中のガスに 間構造ができる
•
対応して塵にも 間構造ができる(ガスとの抵抗力)
•
ミリメートル・サイズの塵が最も顕著な 間構造を示す
Zhu et al.
=> 間では小さな塵は残るが大きな塵は少なくなる
ガスの分布
半径(天文単位)
30µmの塵の分布
1mmの塵の分布
1木星質量の惑星がある場合
どのくらいの重さの惑星があるのか?
間を形成した惑星の重さと、 間の幅・深さの間の理論的関係
金川ら(2015,2016)
20
広い
( 金川ら 2015, 2016)
0.54
0.24
5
0.06
0
0.0
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
深い
浅い
[ 明るい部分との光度比 ]
0.9
1
惑星の質量
10
[ 木星質量 ]
[ 天文単位 ]
0.95
様々な惑星質量に対する
15
狭い
•
どのくらいの重さの惑星があるのか?
間を形成した惑星の重さと、 間の幅・深さの間の理論的関係
金川ら(2015,2016)
20
広い
( 金川ら 2015, 2016)
0.54
10
0.24
5
0.06
軽い
0
0.0
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
深い
浅い
[ 明るい部分との光度比 ]
0.9
1
惑星の質量
重い
[ 木星質量 ]
[ 天文単位 ]
0.95
様々な惑星質量に対する
15
狭い
•
どのくらいの重さの惑星があるのか?
間を形成した惑星の重さと、 間の幅・深さの間の理論的関係
金川ら(2015,2016)
20
広い
( 金川ら 2015, 2016)
0.54
土星質量
10
5
0.24
0.06
軽い
海王星質量
0
0.0
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
深い
浅い
[ 明るい部分との光度比 ]
0.9
1
惑星の質量
重い
[ 木星質量 ]
[ 天文単位 ]
0.95
様々な惑星質量に対する
15
狭い
•
どのくらいの重さの惑星があるのか?
間を形成した惑星の重さと、 間の幅・深さの間の理論的関係
金川ら(2015,2016)
海王星質量程度の惑星を示唆
20
広い
( 金川ら 2015, 2016)
0.54
土星質量
10
0.24
今回の観測結果
5
0.06
軽い
海王星質量
0
0.0
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
深い
浅い
[ 明るい部分との光度比 ]
0.9
1
惑星の質量
重い
[ 木星質量 ]
[ 天文単位 ]
0.95
様々な惑星質量に対する
15
狭い
•
アルマ望遠鏡を用いたより詳細な観測へ
•
電波偏光の調査:塵の大きさを正確に測定する
•
•
•
円盤中の塵によって散乱した電波は特定の偏光を持つ
どのくらい偏光するかは、塵の大きさと観測する波長に強く関係
するため、偏光を調べることで塵の大きさを制限できる
分子ガスを捉える観測: 間内のガス量を見積もる
•
円盤の主成分はガスであり、形成される惑星の性質もガスの量に
依存する
•
ガスの分布から 間構造を調べることで、より正確に惑星質量を
見積もることができる
アルマ望遠鏡第4期観測(10月~)に採択済み
本研究のまとめ
•
アルマ望遠鏡による新たな観測結果
•
うみへび座TW星の原始惑星系円盤
•
•
•
間構造を再確認
2周波数による観測で塵の大きさ分布を調査
間では大きい塵が少なくなっており、小さい塵のみが多
く存在していることを発見した
•
•
惑星形成に伴う 間構造を示唆
間の幅と深さは、海王星質量程度の惑星の存在を示唆
本研究で与えられる惑星形成現場のイメージ図
間構造
若い恒星
原始惑星系円盤
惑星(予想)
問い合わせ先等
• 本研究のプレプリント:https://arxiv.org/abs/1605.00289
•
アストロフィジカルジャーナル・レターズに掲載受理済みの論文原稿
• 問い合わせ先
•
塚越 崇 ( 城大学理学部)
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•
029-228-8362(職場)
武藤 恭之 (工学院大学基礎・教養教育部門)
•
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[email protected]
[email protected]
042-628-4938(研究室DI)
野村 英子 (東京工業大学・地球惑星科学系)
•
•
[email protected]
03-5734-2622(研究室)
• 本研究の解説と画像やプレゼンテーションファイル
•
http://alma.mtk.nao.ac.jp/j/news/20160913/
•
随時更新することがあります
• 謝辞
•
この研究は、日本学術振興会科学研究費補助金(No. 24103504, 23103005, 25400229, 26800106, 15H02074, 16K17661)、ポーラ
ンド国立科学センターMAESTRO grant DEC-2012/06/A/ST9/00276からの支援を受けて行われました。
• この分野の研究に詳しい外部研究者の紹介
•
百瀬 宗武 教授 ( 城大学; [email protected])
•
田村 元秀 教授 (東京大学/アストロバイオロジーセンター;[email protected])