社 長 イン タビ ュ ー 将来の建設業界の変化を見据え人材育成や ガバナンスの強化に取り組んでいます 東洋建設株式会社 代表取締役社長 お客様が抱える問題を解決することが 当社の信頼につながる 武澤 恭司 開を図ってまいります。そのため4月に 「海洋開発部」 を 設置しました。 取締役会での深い議論が より良い経営を実現 2015年度の業績は4期連続の増収増益となりました。 その要因はどのようなものですか。 武澤 震災復興や国際競争力強化のための港湾関連の 経営基盤の一つとしてCSRの取り組みがあります。 土木工事に加え、建築部門の受注の増加や利益率の向 上が大きく寄与しました。事業環境の好転や資材・労 り、ケニア国における当社のプレゼンスが大いに高まり 東洋建設の基本方針をお聞かせください。 務の価格が安定したことも要因にあげられますが、や ました。当社の海外事業は東南アジアが中心ですが、ケ 武澤 当社に限らず、 「事業を通して社会に貢献する」 こ はり職員の頑張りによるものが大きかったと考えてい ニアでの工事を足がかりとして、アフリカ大陸にもしっ とがCSRの最もシンプルかつ強靭な理念だと思います。 ます。当社の職員は外部の方から「真面目」と評される かりと根を張っていきたいと考えています。 ただ、建設事業は自然と向き合い、環境に手を加えざるを 得ないという宿命を負っています。その一方で、人々の財 ことが多く、そのような姿勢が、2015年度の業績に つながったと考えています。 新中計には、2020年以降の建設業のあり方を 前倒しで盛り込む 産・生命を守るための防波堤の築造や魚礁・人工干潟に 象徴されるように、人と環境の共存を推進するといった二 面性があります。この二つが相剋となるのではなく結果 土木、建築、海外の主要3部門の、 さらに注力すべき点はなんでしょうか。 2017年度からの新しい中期経営計画のポイントは 的に環境の維持や向上に資するあり方を模索しています。 武澤 土木事業では民間分野の拡大が大きなテーマに どのようなものですか。 ダイバーシティーの確立も喫緊の課題です。建設業 なります。土木工事は公共分野が圧倒的に多く、今後 武澤 中計の基本的な視座は、 「事業と収益を安定的に 界には「仕事がきつい」 「休みが少ない」などのネガティ も変わらないでしょう。ただ、公共工事は新設から維 持続させ、環境の急変にも対応できる事業基盤の強化」 ブなイメージがあり、人材確保に苦労しています。し 持・更新にシフトしていくなど建設投資の質が変わっ にあります。これは新中計でも変わりません。その上 かし女性活用策の充実や海外人材の採用の拡充などを ていきます。この変化に対応するためには、港湾周辺 で新中計では、 「2020年を境とする建設業界の姿を新 進めることで、ネガティブなイメージを払拭したいと の民間企業からの工事受注が不可欠となりますので、 たな視点で考える」を軸に構想を練っています。東京五 考えています。 この4月に「民間営業統括部」を新設しました。 輪以降の建設需要を予測し、それを2017年度からの 土木・建築の民間工事の受注拡大には、お客様が抱 新中計に前倒しで織り込むことで、従来の延長線上に コーポレート・ガバナンスへの社会の関心も える問題を解決する力とお客様のご要望に遅滞なくお とどまらない取り組みを創造したいと考えています。 高まっています。 応えする力が必要です。お客様の長期的な課題を掌握 例えば、事業主体は官から民へ、受注形態はスー 武澤 当社でも2015年11月に 「コーポレートガバナン し、工期やコスト、デザインなどを詰めていき、事業 パーゼネコンのような百貨店型から領域を絞った専 ス・ガイドライン」を策定し、今後は運用ノウハウの向 計画にマッチさせていくことは無論のこと、期待以上 門店型へと変わる可能性があります。とすれば当社の 上に取り組みます。取締役会は社外取締役が2人とな のものを素早くご提供することで信頼を得られます。 組織や人材には、多様なテーマに機動的に対応できる り雰囲気ががらりと変わりました。社外取締役には作業 今後、一層お客様の裾野を広げていくためには、この 「フレキシビリティ」が求められます。人材育成策も自 所長などと意見を交換して建設業の実態を学んでいた ような「提案型・問題解決型」営業の強化が必須であ ずと変わりますし、組織再編のスピードアップなど企 だくなど、机上に終始しない深い議論ができる仕組み り、そのために必要な人材教育や組織再編などの諸施 業風土の改革も必要になるでしょう。 を作ってまいります。 海外事業は、フィリピンでの40年の実績や人的な 現在の段階でご紹介いただける具体的な取り組みは 最後に ネットワーク、ローカライズされた事業運営を足場に、 ありますか。 2016年度の達成目標は「連結営業利益80億円以上」 策を進めてまいります。 5 東洋建設 CORPORATE REPORT 2016 安定した収益の確保やリスク管理の充実を図ってまい 武澤 一つとして新たな収益源の創造に取り組みたい としています。今後、当社が持続して成長していくた ります。また、今年2月にケニア・モンバサ港で4年の と考えています。例えば、8月に完成した自航式多目的 めには目標の達成が不可欠です。株主様をはじめとす 歳月をかけてコンテナターミナルを完成させました。 船「AUGUST EXPLORER」の活用があります。新造船 るステークホルダーの皆様のご期待に応えるため、役 当社初のアフリカ大陸での工事でしたが、工期内に完 は従来型の海上土木工事に投入するだけでなく、洋上 職員一同全力で業務に取り組んでまいりますので、何 成させたことやケニア人への建設技術の移転などによ 風力発電や海洋資源開発など、新たな事業領域への展 卒ご指導ご鞭撻のほど宜しくお願い申し上げます。 東洋建設 CORPORATE REPORT 2016 6
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