プレスリリース - 世田谷美術館

Press Release
ぼ ろ
志村ふくみ―母衣への回帰
志村ふくみさんの手に成った御作品は、
色の精霊でもあり、 いのちの秘光でもあり、 魂が発色したような気品を感じます。
―石牟礼道子―
なかば幻になりつつあるほどの老齢の身であるが、
なお未来の方向にむけて目をはなせないでいる。
―志村ふくみ―
(本展図録より)
志村ふくみは、現代日本の染織分野に独自の世界を展開する 91 歳を迎えてなお現役の
染織家です。1924(大正 13)年、滋賀県近江八幡市に生まれ、母・小野豊の影響で、
織物を始めました。1957(昭和 32)年、の第 4 回日本伝統工芸展に初出品で入選し、
その後も受賞を重ねます。そして、1990(平成 2)年には、紬織の重要無形文化財保持
者(人間国宝)に認定されました。
こちらの心が澄んで、植物の命と、自分の命が合わさったとき、ほんの少し、扉があくのでは
ないかと思います。こちらにその用意がなく、植物の色を染めようとしても、扉は堅く閉ざさ
れたままでしょう。
―『志村ふくみの言葉 白のままでは生きられない』より
草木からの自然染料で染められた糸によって織り上げられた作品は、多くの人を魅了し、
国際的にも高く評価されています。
「民衆の知恵の結晶である紬の創作を通して、自然との共生という人間にとって根源的な
価値観を思索し続ける芸術家」として、2014(平成 26)年に第 30 回京都賞(思想・
芸術部門)を受賞し、2015(平成 27)年には文化勲章を受章しました。
このたびの展覧会では、代表作を中心に、初期の作品から最新作までを一堂に展示する
ことで、60 年におよぶ創作の歩みを紹介するとともに、志村ふくみの魅力とその芸術の
核心に迫ります。
京都国立近代美術館(2016 年 2 月 2 日‐3 月 21 日)、沖縄県立博物館・美術館(2016
年 4 月 12 日‐5 月 29 日)に続く巡回展の最終会場となる本展は、東京において、志村
ふくみの作品が初めて本格的に紹介される機会となります。世田谷美術館では、更なる
新作 2 点も発表されるほか、特別展示としてゲーテやシュタイナーの色彩論につながる
コーナーを設けます。
志村ふくみは、 『色』 と 『織』 の卓越した詩人なのである。 ―高階秀爾―
(本展図録より)
[開催概要]
撮影:四方邦熈
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展覧会名:志村ふくみ―母衣への回帰
SHIMURA FUKUMI
会期: 2016 年 9 月 10 日(土)−11 月 6 日(日)
会期中大幅な展示替えを行います(前期 9 月 10 日∼ 10 月 10 日、後期 10 月 12 日∼ 11 月 6 日)。
会場: 世田谷美術館 1 階展示室
開催時間:午前 10 時∼午後 6 時(入場は午後 5 時 30 分まで)
休館日: 毎週月曜日 ※ただし 9 月 19 日(月・祝)・10 月 10 日(月・祝)は開館、9 月 20 日(火)・10 月 11 日(火)は休館
観覧料: 一般 1,000(800) 円、65 歳以上 800(600) 円、大高生 800(600) 円、中小生 500(300) 円
※障害者の方は 500(300) 円。ただし小・中・高・大学生の障害者は無料、介助者(当該障害者 1 名につき 1 名)は無料。
※( )内は 20 名以上の団体料金。
※リピーター割引:会期中、本展有料チケットの半券のご提示で、2 回目以降の観覧料が団体料金になります。
主催: 世田谷美術館(公益財団法人せたがや文化財団)、京都国立近代美術館
後援: 世田谷区、世田谷区教育委員会
特別協力:滋賀県立近代美術館
協賛: 株式会社 資生堂
◆オープニング・レセプション:9 月 9 日(金)15 時 30 分∼ 18 時
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[展示構成]
展覧会全体の展示構成は、最新作から初期の作品および志村氏の原点とも言える作品群へと遡っていくものとなっています。
1.未来への祈り―母衣曼荼羅と十二の色
ぼ ろ
最初のコーナーでは、サブタイトルにも関連する本巡回展のために制作さ
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れた《母衣曼荼羅》や、植物から生み出される日本の色を、一色ごとに一
着の着物に仕立て、志村ふくみがそれぞれに名前をつけた十二色の着物の
新作を展示します。また高野山の植物で染めた袈裟などを展示し、未来に
向けた祈りの空間をつくっています。
サブタイトルについて:
このたび、志村ふくみは本展に「母衣への回帰」というサブタイトルをつけています。
この表記について志村ふくみは本展図録で次のように記しています。「辞書をひいた。
襤褸の意味は、ただ、ぼろ、くずとしか書いていない。私は拍子抜けしていると、す
ぼ ろ
ぐ傍に母衣という字があった。平安の頃か、戦場に大きくふくらませた袋のようなも
のを背につけて馬にのり、矢をふせぐためのものであったという。咄嗟に襤褸と母衣
が結びついた。襤褸は母の衣ではないか。」志村ふくみはその読みと字から、母・小
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1.母衣曼荼羅(全体図) 2016 年
野豊から譲り受けた襤褸織りの繋ぎ糸を連想し、襤褸の字の代わりに母衣という字を
使いました。
その繋ぎ糸ばかりで織りはじめた布が、志村を圧倒し、「私をとおして無名の多くの
機織りの女性とともに織るのだという思いがふっと湧いてきて」と本展図録に志村は
ぼ ろ
書いています。志村の手をとおして襤褸は母衣へと昇華していったのです。
2.代表作で辿る 60 年の歩み
2.薫梅 2015 年
1).琵琶湖シリーズ
志村氏の染織のルーツに繋がる琵琶湖をテーマとしたシリーズ。これまで
の代表作から最新作までを展示します。
3.朱茜 2015 年
4.青湖(3 部作[新作]) 2015 年
6.雪炎(3 部作[新作]) 2015 年
5.蘆刈(3 部作[新作]) 2015 年
7.光の湖 1991 年 京都国立近代美術館
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2).文学の世界 文筆家としても知られる志村ふくみの豊かな文学性に根ざした作品を展示
します。
①リルケの『ドゥイノの悲歌』、折口信夫の『死者の書』、石牟礼道子の新
作能『沖宮』などの文学作品に触発されて制作された作品を展示いたします。
②源氏物語 日本の色彩が繊細芳醇に花開いた平安時代。色が導く壮大な人間模様を描
いた物語をテーマにした作品群を展示します。
9.鈴虫 1959 年
滋賀県立近代美術館
<前期展示>
8.レクイエムⅠ 2015 年
<後期展示>
10.明石の姫 2003 年
滋賀県立近代美術館
<後期展示>
3).一色一生
琵琶湖や文学ばかりでなく様々なテーマで制作された代表作を始めとして、
2014 年に資生堂ギャラリーで開催された「せいのもとで」に展示された《經》
を発展させたインスタレーション《光の經》や、志村ふくみがこれまで制作
した裂地を春夏秋冬のイメージで美しい裂張りの裂箱に収めた《小裂帖》、
小さな着物の形に切って貼り付けた無地や模様の雛形を展示します。
また、今回の世田谷美術館の展示では、ゲーテの『色彩論』やシュタイナー
の『色彩の本質』に深く感応した志村ふくみの作品も加えて紹介いたします。
11.光の經 2014 年
12.小裂帖(春)展開 2012 年
13.小裂帖(冬)裂箱 2012 年
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3.原点を想う(出逢いに導かれて)
志村ふくみに染織を教えた母・小野豊や精神的な支えともなった兄・小野
元衛の作品、志村ふくみの活動を後押しし、支えた、木漆工芸家・黒田辰秋、
陶芸家・富本憲吉などの作品を志村ふくみの初期作品などと併せて展示し
ます。
14.黒田辰秋《螺鈿瓜形棗》
京都国立近代美術館
15.小野豊《吉隠》
1960 年頃 撮影:安河内聡 <前期展示>
※所蔵先を明記していない作品は個人蔵です。
■染織家・志村ふくみ略歴
1924 年 滋賀県近江八幡生まれ。
1955 年 母・小野豊の影響で織物を始める。
1956 年 木漆工芸家の黒田辰秋と出会い、工芸の根本姿勢を学ぶ。
1964 年 資生堂ギャラリーにて第 1 回作品展を開催。以降、日本各地で作品展を開催。
1968 年 京都市嵯峨野に移り住み、制作を行う。
1985 年 「現代染織の美」展(森口華弘・宗廣力三・志村ふくみ)を東京国立近代美術館で開催。
1990 年 紬織の重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定。
1993 年 文化功労者に選ばれる。
2013 年 後進の育成のため、京都市岡崎に志村洋子とともに「芸術学校アルスシムラ」を設立。
2014 年 第 30 回京都賞(思想・芸術部門)を受賞。
2015 年 文化勲章受章。「アルスシムラ嵯峨校」開校。
2016 年 巡回展「志村ふくみ─母衣 ( ぼろ ) への回帰─」を京都国立近代美術館、沖縄県立博物館・美術館、世田谷美術館で順次開催。
著書に『一色一生』
(大佛次郎賞)
、
『語りかける花』
(エッセイスト・クラブ賞)
、
『ちよう、はたり』
、
『志村ふくみの言葉 白のままでは生きられない』
、
『晩
禱 リルケを読む』
、
『伝書 しむらのいろ』
、集大成の作品集『つむぎおり』などがある。
[交通案内]
●お問合せ
●東急田園都市線「用賀」駅下車、北口から徒歩 17 分、もしくは美術館行バス「美術館」
下車徒歩3分
●小田急線「成城学園前」駅下車、南口から渋谷駅行バス「砧町」下車徒歩 10 分
●小田急線「千歳船橋」駅下車、田園調布駅行バス「美術館入口」下車徒歩 5 分
●来館者専用駐車場(60 台、無料):東名高速高架下、厚木方面側道 400m 先、美術館
まで徒歩 5 分
[同時開催]ミュージアム コレクション
一般来館者(展覧会のご案内)
展覧会のご案内:03-5777-8600(ハローダイヤル)
報道関係者 ※取材および写真貸出依頼
村上由美/門あすか
電話 03-3415-6419(学芸直通)
FAX 03-3415-6413
展覧会担当
清水真砂/村上由美
電話 03-3415-6409(直通)
■神話の森 美と神々の世界
7 月 23 日∼ 10 月 23 日
■ぜんぶ 1986 年―世田谷美術館の開館とともに
11 月 5 日∼ 2017 年 4 月 9 日
〒157-0075 東京都世田谷区砧公園 1-2
http://www.setagayaartmuseum.or.jp/
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[関連企画]
講演会「炎の霊性――志村ふくみと色彩の詩学」
日 時 :10 月 16 日(日) 14:00 ∼ 15:30
講 師 :若松英輔(批評家・随筆家)
会 場 :当館講堂
定 員 :先着 140 名 ※当日 12 時よりエントランスホールにて整理券を配付いたします。
参加費 :無料
「美紗姫物語」
志村ふくみが 20 歳の時に書き下ろした物語の朗読と笠井叡の新作舞踏のコラボレーション。
日 時 :10 月 14 日(金)、15 日(土) 各回 19:30 ∼ 20:30(開場 19:00)
出演者 :笠井叡(舞踏家・振付師)ほか
会 場 :1階展示室
定 員 :各回 50 名
料 金 :3,000 円 ※9 月 1 日より受付開始
※詳しくは、決まり次第、当館 HP に掲載
草木染体験ワークショップ「セタビで染めるオオクヌギ 150 年の色」
世田谷美術館のシンボルツリー、樹齢 150 年を超えるオオクヌギで、スカーフを染める体験ワークショップ。
日 時 :10 月 10 日(月・祝) ①10:30 ∼ 12:30、②14:30 ∼ 16:30 会 場 :当館地下創作室 C
講 師 :都機工房
対 象 :一般(高校生以上)
定 員 :各回 18 名 (応募者多数の場合は抽選)
参加費 :5,000 円
申込方法:往復はがきにて(①か②かも明記)お申込みください。
締 切 :9 月 26 日(消印有効)
子ども × 大人ワークショップ「しむらのいろ―草木から生まれる色の世界」
玉葱からはどんな色が?爽やかな水色はどんな植物から生まれるのでしょう?お話と作品鑑賞後、様々な植物
を使って染められた貴重な糸を使って、子どもと大人がペアになって言葉と色による作品作りを行います。
日 時 :10 月 15 日(土) 13:00 ∼ 16:00 会 場 :当館地下創作室 AB、1 階展示室
講 師 :都機工房
対 象 :小学校 4 年生∼中学生とその保護者
定 員 :20 組 40 名(応募者多数の場合は抽選)
参加費 :子ども 1 名、大人 1 名の 1 組 3,000 円(展覧会観覧料を含む)
申込方法:往復はがきにてお申込みください(はがき 1 枚に、子どもと大人それぞれのお名前を明記)。
締 切 :9 月 30 日(消印有効)
ワークショップは、いずれも往復はがきに①イベント名②住所③氏名④電話番号⑤年齢をご記入いただき
(返信用にも住所・氏名を明記)当館「志村ふくみ展ワークショップ係」までお申込みください。
※熱で消えるペンでのご記入はご遠慮ください。
※個人情報については目的外で使用することはございません。
◆100 円ワークショップ
糸をタテとヨコに組み合わせて、ミニ織物を作ります。
日時:会期中の毎土曜日 13:00 ∼ 15:00(随時受付)
会場:当館創作室 C
対象:どなたでも
参加費:1 回 100 円
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撮影:四方邦熈