〔平成 28 年 民事訴訟法〕模擬再現答案(作成者:資格スクエア講師 加藤喬) 1 設問1 2 1 . 固 有 必 要 的 共 同 訴 訟 ( 民 事 訴 訟 法 40 条 1 項 ) か 通 常 共 同 3 訴訟かの判断においては、訴訟物たる権利の管理処分権の帰 4 属態様を基準としつつ、訴訟政策的観点も補完的に加味する 5 べきであると解する。 6 そして、本件不動産の総有権は、X の構成員全員が有する 7 一個の所有権であるから、構成員全員が共同行使しなければ 8 ならない権利であるとともに、共有者全員に矛盾なく合一に 9 確定されるべき権利関係である。 10 し た が って 、X の 構 成 員 が Y に 対し て 本 件 不 動産 の総 有 権 11 の確認を求める訴えは固有必要的共同訴訟であり、原則とし 12 て構成員全員が原告とならなければならない。 13 14 2.訴訟提起前から提訴非同調者がいる場合には、提訴非同調 者を被告に加えて提訴することを認めるべきである。 15 総有権確認訴訟の判決の効力は構成員全員に及ぶところ、 16 提訴非同調者も被告として手続に関与するため、判決効を受 17 けることを正当化できるだけの手続関与があるからである。 18 3.では、訴訟継続後に新たな構成員が現れた場合はどうか。 19 (1)新たな構成員が B に同調する場合 20 21 共 同 訴 訟 参 加( 52 条 )に は 、固 有 必 要 的 共 同 訴 訟 に お け る当事者適格の欠缺を治癒する効果がある。 22 共同訴訟参加の要件は、①参加人が当事者適格を有し、 23 ②他人間の訴訟の判決効を拡張される地位にあることであ 1 1 る。新たな構成員は、総有権確認訴訟の原告適格を有する 2 上( ① )、構 成 員 全 員 に 一 個 の 権 利 と し て 帰 属 す る 総 有 権 に 3 関 す る 確 認 判 決 の 効 力 を 拡 張 さ れ る 地 位 に あ る ( ② )。 4 5 よ っ て 、新 た な 構 成 員 が 共 同 訴 訟 参 加 を す る べ き で あ る 。 (2)新たな構成員が B に同調しない場合 6 7 原告が権利として新たな構成員を新たな被告に加えると いう訴えの主観的追加的併合によるべきである。 8 この場合、訴訟に引き込まれる新たな構成員の手続保障 9 が問題になるが、X の構成員には団体の運営に実質的な関 10 心のない者も少なくないため、新たな構成員は本件不動産 11 について訴訟係属当初から手続関与を認める必要があるだ 12 けの利害関係を有しない。 13 また、新たな構成員を被告とする別訴提起及び弁論の併 14 合 ( 152 条 1 項 ) と い う 方 法 で は 、 弁 論 の 併 合 が 裁 判 所 の 15 裁量事項であるため、実現するかが不確実である。 16 よって、訴えの主観的追加的併合によるべきである。 17 設問2 18 1.確認の利益 19 確認の訴えには、権利又は法律関係の存否を既判力により 20 確定することを通じてそれらをめぐる現在の紛争を抜本的に 21 解決するという機能がある。 22 そ し て 、 昭 和 28 年 判 決 が 訴 訟 代 理 権 の 存 否 の 確 認 の 訴 え 23 について確認の利益を否定したのは、訴訟代理権の存否が本 2 1 案の前提として判断される手続的事項にすぎないため、確認 2 訴訟という方法選択の適格を欠くからである。 3 し か し 、Z の 解 任 決 議 の 無 効 及 び Z が X の 会 長 の 地 位 に あ 4 ることは、それ自体が本案審理の対象となり得る実体法上の 5 権利又は法律関係である上、本訴の訴訟物である所有権移転 6 登記請求権の前提問題でもあるから、本案の前提として判断 7 されるにすぎない事項とはいえず、これらを既判力により確 8 定することを通じて本件不動産の所有権移転登記手続請求と 9 いう現在の紛争の抜本的に解決に役立つ。 10 したがって、確認の利益が認められる。 11 2 . 反 訴 要 件 ( 146 条 ) 12 ( 1 ) ま ず 、「 本 訴 の 目 的 で あ る 請 求 … と 関 連 す る 請 求 」 と は 、 13 本訴の訴訟物たる権利の内容又は発生原因において法律上 14 又は事実上の共通点を有する請求を意味する。 15 Z に対する本訴の訴訟物は、所有権に基づく妨害排除請 16 求権としての所有権移転登記請求権であり、その発生原因 17 は 、X が 本 件 不 動 産 を A か ら 購 入 し た 事 実 及 び Z 名 義 の 所 18 有権移転登記である。これらの発生原因は、反訴の確認対 19 象である Z の解任決議の無効・Z の X の会長たる地位とは 20 共通性がない。したがって、Z の反訴は「本訴の目的であ 21 る請求…と関連する請求」とはいえない。 22 ( 2 )次 に 、 「 本 訴 の … 防 御 方 法 と 関 連 す る 請 求 」と は 、本 訴 請 23 求に対する抗弁事由とその内容又は発生原因において共通 3 1 する請求を意味する。 2 Z に対する所有権移転登記手続請求に対しては、登記保 3 持権原の抗弁として Z が X の会長の地位にあることが主張 4 されることになる。そうすると、反訴の確認対象のうち Z 5 が X の 会 長 の 地 位 に あ る こ と は 、本 訴 請 求 に 対 す る 抗 弁 事 6 由とその内容又は発生原因において共通するといえる。 7 したがって、Z が X の会長の地位にあることの確認を求 8 める反訴請求は、 「 本 訴 の … 防 御 方 法 と 関 連 す る 請 求 」と い 9 え、適法に提起することができる。 10 設問3 11 1.下線部分① 12 平成 6 年判決は、入会団体の原告適格を認めるに当たり、 13 当該不動産を処分するのに必要とされる総会の議決等の手続 14 による授権を必要としているから、入会団体について構成員 15 からの授権に基づく任意的訴訟担当者として原告適格を認め 16 た も の と 解 さ れ る 。 そ れ ゆ え 、 同 判 決 は 、 11 5 条 1 項 2 号 を 17 根拠として判決効を構成員に拡張していると解される。 18 19 11 5 条 1 項 2 号 の 根 拠 は 、 訴 訟 担 当 者 の 訴 訟 追 行 に よ り 被 担当者の手続保障が代替されているという考えにある。 20 そうすると、自己の所有権を主張していた Z は、総有権確 21 認訴訟において X の利害と対立する関係にあるから、X の訴 22 訟追行により自己の手続保障が代行されていたとはいえず、 23 同号による既判力の拡張を受けないとも思える。 4 1 しかし、Z には、被告として自己の利益主張をしたことに 2 よ る 手 続 保 障 が あ る か ら 、11 5 条 1 項 2 号 を 適 用 し て も よ い 。 3 したがって、平成 6 年判決を本件において援用することは 4 5 適切であり、全訴判決の既判力が Z に及ぶ。 2.下線部分② 6 前 訴 判 決 の 既 判 力 ( 11 4 条 1 項 ) は 、 事 実 審 口 頭 弁 論 終 結 7 時の総有権の存在について生じている。そして、既判力の作 8 用場面である先決関係とは、前訴の訴訟物たる権利関係が後 9 訴の訴訟物たる権利関係の前提問題になっている場合をいう。 10 確 か に 、第 2 訴 訟 の 債 務 不 履 行 に 基 づ く 損 害 賠 償 請 求 権 は 、 11 Z の債務不履行を基礎づけるものとして、抵当権設定契約時 12 に本件不動産が Xの構成員の総有に属していたことを前提問 13 題とする。しかし、前訴判決の既判力が生じている訴訟物た 14 る権利関係は、第 1 訴訟の事実審口頭弁論終結時の総有権の 15 存 在 で あ り 、抵 当 権 設 定 契 約 時 の 総 有 権 の 存 在 で は な い か ら 、 16 それが第 2 訴訟の訴訟物たる権利関係の前提問題になってい 17 るとはいえない。それゆえ、先決関係は認められない。 18 よって、前訴判決の既判力は第 2 訴訟に作用しない。 19 3.下線部分③ 20 (1)Z が、第 1 訴訟で本件不動産の自己所有を主張して敗訴 21 したにもかかわらず第 2 訴訟において再び本件不動産の自 22 己所有を主張することは、第 1 訴訟で争い敗訴した利益を 23 再び主張して紛争を蒸し返すものであるから、訴訟上の信 5 1 義則(1 条 2 項)により制限されるとも考え得る。 2 (2)他方、Y は、第 1 訴訟の段階で、Z に対し抵当権設定登 3 記 抹 消 登 記 手 続 請 求 訴 訟 に 補 助 参 加( 4 2 条 )す る よ う に 訴 4 訟 告 知( 5 3 条 )を す る こ と で Y 敗 訴 の 場 合 に 参 加 的 効 力( 4 6 5 条)が Z に及ぶようにすることができたのではないか。 6 ま ず 、Z は 、第 1 訴 訟 の Y 敗 訴 の 判 決 主 文 に つ い て Y か 7 ら債務不履行責任を追及されるおそれがあるという法律上 8 の利害関係を有するから、 「訴訟の結果に利害関係を有する 9 第三者」として第 1 訴訟に補助参加する利益を有する。 10 次に、X が構成員の総有権の取得原因事実として本件不 11 動産を X が A から購入したという事実を主張して第 1 訴訟 12 を提起しているから、抵当権設定登記抹消登記手続請求に 13 対する認容判決では、判決主文を導き出すために必要な主 14 要 事 実 に 係 る も の と し て 、本 件 不 動 産 を X が A か ら 購 入 し 15 たという事実が認定されており、この判断には参加的効力 16 が生じる。それゆえ、Z が第 2 訴訟で本件不動産の飼い主 17 は A で は な く Z で あ る と 主 張 す る こ と は 、参 加 的 効 力 に よ 18 り排斥されることになる。 19 ( 3 )し た が っ て 、Y は 前 記 (2 )の 手 段 に よ り Z の 主 張 を 制 限 で 20 き た の だ か ら 、か か る 手 段 を 採 ら な か っ た Y は 不 利 益 を 被 21 ってもやむを得ないとして信義則の適用を制限できる。 22 よって、Z の主張は信義則により遮断されないから、第 23 2 訴訟で本件不動産の帰属に関して改めて審理判断できる。 6
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