〔平成 28 年 民事訴訟法〕模擬再現答案(作成者:資格スクエア講師 加藤

〔平成 28 年 民事訴訟法〕模擬再現答案(作成者:資格スクエア講師 加藤喬)
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設問1
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1 . 固 有 必 要 的 共 同 訴 訟 ( 民 事 訴 訟 法 40 条 1 項 ) か 通 常 共 同
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訴訟かの判断においては、訴訟物たる権利の管理処分権の帰
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属態様を基準としつつ、訴訟政策的観点も補完的に加味する
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べきであると解する。
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そして、本件不動産の総有権は、X の構成員全員が有する
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一個の所有権であるから、構成員全員が共同行使しなければ
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ならない権利であるとともに、共有者全員に矛盾なく合一に
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確定されるべき権利関係である。
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し た が って 、X の 構 成 員 が Y に 対し て 本 件 不 動産 の総 有 権
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の確認を求める訴えは固有必要的共同訴訟であり、原則とし
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て構成員全員が原告とならなければならない。
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2.訴訟提起前から提訴非同調者がいる場合には、提訴非同調
者を被告に加えて提訴することを認めるべきである。
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総有権確認訴訟の判決の効力は構成員全員に及ぶところ、
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提訴非同調者も被告として手続に関与するため、判決効を受
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けることを正当化できるだけの手続関与があるからである。
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3.では、訴訟継続後に新たな構成員が現れた場合はどうか。
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(1)新たな構成員が B に同調する場合
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共 同 訴 訟 参 加( 52 条 )に は 、固 有 必 要 的 共 同 訴 訟 に お け
る当事者適格の欠缺を治癒する効果がある。
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共同訴訟参加の要件は、①参加人が当事者適格を有し、
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②他人間の訴訟の判決効を拡張される地位にあることであ
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る。新たな構成員は、総有権確認訴訟の原告適格を有する
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上( ① )、構 成 員 全 員 に 一 個 の 権 利 と し て 帰 属 す る 総 有 権 に
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関 す る 確 認 判 決 の 効 力 を 拡 張 さ れ る 地 位 に あ る ( ② )。
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よ っ て 、新 た な 構 成 員 が 共 同 訴 訟 参 加 を す る べ き で あ る 。
(2)新たな構成員が B に同調しない場合
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原告が権利として新たな構成員を新たな被告に加えると
いう訴えの主観的追加的併合によるべきである。
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この場合、訴訟に引き込まれる新たな構成員の手続保障
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が問題になるが、X の構成員には団体の運営に実質的な関
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心のない者も少なくないため、新たな構成員は本件不動産
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について訴訟係属当初から手続関与を認める必要があるだ
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けの利害関係を有しない。
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また、新たな構成員を被告とする別訴提起及び弁論の併
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合 ( 152 条 1 項 ) と い う 方 法 で は 、 弁 論 の 併 合 が 裁 判 所 の
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裁量事項であるため、実現するかが不確実である。
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よって、訴えの主観的追加的併合によるべきである。
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設問2
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1.確認の利益
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確認の訴えには、権利又は法律関係の存否を既判力により
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確定することを通じてそれらをめぐる現在の紛争を抜本的に
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解決するという機能がある。
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そ し て 、 昭 和 28 年 判 決 が 訴 訟 代 理 権 の 存 否 の 確 認 の 訴 え
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について確認の利益を否定したのは、訴訟代理権の存否が本
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案の前提として判断される手続的事項にすぎないため、確認
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訴訟という方法選択の適格を欠くからである。
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し か し 、Z の 解 任 決 議 の 無 効 及 び Z が X の 会 長 の 地 位 に あ
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ることは、それ自体が本案審理の対象となり得る実体法上の
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権利又は法律関係である上、本訴の訴訟物である所有権移転
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登記請求権の前提問題でもあるから、本案の前提として判断
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されるにすぎない事項とはいえず、これらを既判力により確
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定することを通じて本件不動産の所有権移転登記手続請求と
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いう現在の紛争の抜本的に解決に役立つ。
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したがって、確認の利益が認められる。
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2 . 反 訴 要 件 ( 146 条 )
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( 1 ) ま ず 、「 本 訴 の 目 的 で あ る 請 求 … と 関 連 す る 請 求 」 と は 、
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本訴の訴訟物たる権利の内容又は発生原因において法律上
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又は事実上の共通点を有する請求を意味する。
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Z に対する本訴の訴訟物は、所有権に基づく妨害排除請
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求権としての所有権移転登記請求権であり、その発生原因
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は 、X が 本 件 不 動 産 を A か ら 購 入 し た 事 実 及 び Z 名 義 の 所
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有権移転登記である。これらの発生原因は、反訴の確認対
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象である Z の解任決議の無効・Z の X の会長たる地位とは
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共通性がない。したがって、Z の反訴は「本訴の目的であ
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る請求…と関連する請求」とはいえない。
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( 2 )次 に 、
「 本 訴 の … 防 御 方 法 と 関 連 す る 請 求 」と は 、本 訴 請
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求に対する抗弁事由とその内容又は発生原因において共通
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する請求を意味する。
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Z に対する所有権移転登記手続請求に対しては、登記保
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持権原の抗弁として Z が X の会長の地位にあることが主張
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されることになる。そうすると、反訴の確認対象のうち Z
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が X の 会 長 の 地 位 に あ る こ と は 、本 訴 請 求 に 対 す る 抗 弁 事
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由とその内容又は発生原因において共通するといえる。
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したがって、Z が X の会長の地位にあることの確認を求
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める反訴請求は、
「 本 訴 の … 防 御 方 法 と 関 連 す る 請 求 」と い
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え、適法に提起することができる。
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設問3
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1.下線部分①
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平成 6 年判決は、入会団体の原告適格を認めるに当たり、
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当該不動産を処分するのに必要とされる総会の議決等の手続
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による授権を必要としているから、入会団体について構成員
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からの授権に基づく任意的訴訟担当者として原告適格を認め
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た も の と 解 さ れ る 。 そ れ ゆ え 、 同 判 決 は 、 11 5 条 1 項 2 号 を
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根拠として判決効を構成員に拡張していると解される。
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11 5 条 1 項 2 号 の 根 拠 は 、 訴 訟 担 当 者 の 訴 訟 追 行 に よ り 被
担当者の手続保障が代替されているという考えにある。
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そうすると、自己の所有権を主張していた Z は、総有権確
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認訴訟において X の利害と対立する関係にあるから、X の訴
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訟追行により自己の手続保障が代行されていたとはいえず、
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同号による既判力の拡張を受けないとも思える。
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しかし、Z には、被告として自己の利益主張をしたことに
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よ る 手 続 保 障 が あ る か ら 、11 5 条 1 項 2 号 を 適 用 し て も よ い 。
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したがって、平成 6 年判決を本件において援用することは
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適切であり、全訴判決の既判力が Z に及ぶ。
2.下線部分②
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前 訴 判 決 の 既 判 力 ( 11 4 条 1 項 ) は 、 事 実 審 口 頭 弁 論 終 結
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時の総有権の存在について生じている。そして、既判力の作
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用場面である先決関係とは、前訴の訴訟物たる権利関係が後
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訴の訴訟物たる権利関係の前提問題になっている場合をいう。
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確 か に 、第 2 訴 訟 の 債 務 不 履 行 に 基 づ く 損 害 賠 償 請 求 権 は 、
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Z の債務不履行を基礎づけるものとして、抵当権設定契約時
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に本件不動産が Xの構成員の総有に属していたことを前提問
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題とする。しかし、前訴判決の既判力が生じている訴訟物た
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る権利関係は、第 1 訴訟の事実審口頭弁論終結時の総有権の
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存 在 で あ り 、抵 当 権 設 定 契 約 時 の 総 有 権 の 存 在 で は な い か ら 、
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それが第 2 訴訟の訴訟物たる権利関係の前提問題になってい
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るとはいえない。それゆえ、先決関係は認められない。
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よって、前訴判決の既判力は第 2 訴訟に作用しない。
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3.下線部分③
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(1)Z が、第 1 訴訟で本件不動産の自己所有を主張して敗訴
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したにもかかわらず第 2 訴訟において再び本件不動産の自
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己所有を主張することは、第 1 訴訟で争い敗訴した利益を
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再び主張して紛争を蒸し返すものであるから、訴訟上の信
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義則(1 条 2 項)により制限されるとも考え得る。
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(2)他方、Y は、第 1 訴訟の段階で、Z に対し抵当権設定登
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記 抹 消 登 記 手 続 請 求 訴 訟 に 補 助 参 加( 4 2 条 )す る よ う に 訴
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訟 告 知( 5 3 条 )を す る こ と で Y 敗 訴 の 場 合 に 参 加 的 効 力( 4 6
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条)が Z に及ぶようにすることができたのではないか。
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ま ず 、Z は 、第 1 訴 訟 の Y 敗 訴 の 判 決 主 文 に つ い て Y か
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ら債務不履行責任を追及されるおそれがあるという法律上
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の利害関係を有するから、
「訴訟の結果に利害関係を有する
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第三者」として第 1 訴訟に補助参加する利益を有する。
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次に、X が構成員の総有権の取得原因事実として本件不
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動産を X が A から購入したという事実を主張して第 1 訴訟
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を提起しているから、抵当権設定登記抹消登記手続請求に
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対する認容判決では、判決主文を導き出すために必要な主
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要 事 実 に 係 る も の と し て 、本 件 不 動 産 を X が A か ら 購 入 し
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たという事実が認定されており、この判断には参加的効力
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が生じる。それゆえ、Z が第 2 訴訟で本件不動産の飼い主
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は A で は な く Z で あ る と 主 張 す る こ と は 、参 加 的 効 力 に よ
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り排斥されることになる。
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( 3 )し た が っ て 、Y は 前 記 (2 )の 手 段 に よ り Z の 主 張 を 制 限 で
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き た の だ か ら 、か か る 手 段 を 採 ら な か っ た Y は 不 利 益 を 被
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ってもやむを得ないとして信義則の適用を制限できる。
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よって、Z の主張は信義則により遮断されないから、第
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2 訴訟で本件不動産の帰属に関して改めて審理判断できる。
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