の開発と今後の活用方向性について

※一部抜粋版
第20回日本看護管理学会学術集会
インフォメーション・エクスチェンジ6
変化する医療提供体制に必要な看護実践能力
-「看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)」の開発と活用-
「看護師のクリニカルラダー
(日本看護協会版)」の開発と今後の
活用方向性について
公益社団法人 日本看護協会
常任理事 川本利恵子
公益社団法人
日本看護協会
2016年5月20日 本会公式ホームページにて公表
看護師のクリニカルラダー
(日本看護協会版)
活用のための
手引き
看護師が働く代表的な領域におけるクリニカルラダーの実践例
病院
高齢者介護施設
訪問看護ステーション
http://www.nurse.or.jp/nursing/jissen/index.html
ホーム>重点政策・重点事業>少子超高齢社会に対応する人材育成>看護師のクリニカルラダーの開発
公益社団法人
日本看護協会
「看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)」
5段階のレベル設定
Ⅰ
看
護
4実
つ践
の能
力力
でに
構焦
成点
化
し
、
Ⅱ
ニーズを
とらえる力
ケア
する力
協働
する力
意思決定を
支える力
公益社団法人
日本看護協会
Ⅲ
Ⅳ
Ⅴ
看護実践能力の核となる4つの力
核となる実践能力:看護師が論理的な思考と正確な看護技術を基盤に、
ケアの受け手のニーズに応じた看護を臨地で実践する能力
4つの力は密接に関連し、どの場においても発揮される
ケアの受け手が立ち
会う場面(治療、最
期の迎え方等)にお
いて、その人らしい選
択ができるための意思
決定を支える
ケアの受け手を中心に、
情報やデータを多職種
間で共有し、ケアの方
向性を検討、連携する
意思決定を ニーズを
支える力
とらえる力
ケアの受け手をとらえ、
判断し、その人に適
した方略を選択する
協働する力 ケアする力
ケアの実施・評価を行
う(PDCAサイクルや
看護過程の展開)
公益社団法人
日本看護協会
レベルⅠからⅤの5つの習熟段階
Ⅰ
多様な人材
を教育する
現状
・看護師の教育背景
や働く場の違い
・社会人経験のある
新人看護職員の増加
・中途採用者入職の
増加
等
地域医療・
在宅看護へ
の転換を図
る時代
基本的な
看護手順
に従い必
要に応じ
助言を得
て看護を
実践する
Ⅱ
Ⅲ
標準的な
看護計画
に基づき
自立して
看護を実
践する
ケアの受
け手に合
う個別的
な看護を
実践する
Ⅳ
幅広い視
野で予測
的判断を
もち看護
を実践す
る
Ⅴ
より複雑
な状況に
おいて、
ケアの受
け手に
とっての
最適な手
段を選択
しQOLを高
めるため
の看護を
実践する
・ブルームの教育目標分類学
・ベナー看護論
・施設で作成されたクリニカルラダー
●段階設定は能力の習熟段階を示すため、経験年数別ではとらえないこととし、各レベル
においての経験年数の目安は示していない
公益社団法人
日本看護協会
「協働する力」の【レベル毎の目標】と【行動目標】
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅴ
看護の展開に
必要な関係者
を特定し、情報
交換ができる
ケアの受け手
やその関係者、
多職種と連携
ができる
ケアの受け手を
取り巻く多職種の
力を調整し連携で
きる
ケアの受け手の複雑
なニーズに対応でき
るように、多職種の
力を引き出し連携に
活かす
□ケアの受け手を □ケアの受け手 □ケアの受け手が
取り巻く関係者
の個別的な
おかれている状況
の立場や役割の
ニーズに対応
(場)を広くとらえ、
違いを理解した
するために、そ
結果を予測しなが
うえで、それぞれ
の関係者と協
ら多職種連携の
共有することができる と積極的に情報
力し合いなが
必要性を見極め、
□助言を受けながら
交換ができる
ら多職種連携
主体的に多職種
チームの一員として □関係者と密にコ
を進めていくこ
と協力し合うこと
の役割を理解できる
ミュニケーション
とができる
ができる
□助言を受けながらケ
を取ることがで □ケアの受け手 □多職種間の連携
アに必要と判断した
きる
とケアについ
が機能するように
情報を関係者から収 □看護の展開に
て意見交換が
調整できる
集することができる
必要な関係者を
できる
□多職種の活力を
□ケアの受け手を取り
特定できる
□積極的に多職
維持・向上させる
巻く関係者の多様な □看護の方向性
種に働きかけ、
関わりができる
価値観を理解できる
や関係者の状
協力を求める
□連絡・報告・相談が
況を把握し、情
ことができる
できる
報交換できる
□複雑な状況(場)の中
で見えにくくなってい
るケアの受け手の
ニーズに適切に対応
するために、自律的
な判断のもと関係者
に積極的に働きかけ
ることができる
□多職種連携が十分に
機能するよう、その調
整的役割を担うことが
できる
□関係者、多職種間の
中心的役割を担うこと
ができる
□目標に向かって多職
種の活力を引き出す
ことができる
【
レ 関係者と情報共有
ベ ができる
ル
毎
の
目
標
】
□助言を受けながらケ
【
行
アの受け手を看護し
動
ていくために必要な
目
情報が何かを考え、
標
その情報を関係者と
】
公益社団法人
日本看護協会
6
「協働する力」レベルⅣの活動の場による実践例の変化
【レベル毎の目標】
ケアの受け手を取り巻く多職種の力を調整し連携できる
【行動目標】
□ケアの受け手がおかれている状況(場)を広くとらえ、結果を予測しながら多職種連携の
必要性を見極め、主体的に多職種と協力し合うことができる
□多職種間の連携が機能するように調整できる
□多職種の活力を維持・向上させる関わりができる
病院
高齢者介護施設
訪問看護ステーション
■たとえば、退院支援におい ■生活の場において医療的 ■変化のタイミングをとらえ
な側面を理解してケアに活
た上で、調整会議の開催
て、患者の退院後の生活
かしていく中心的な役割を
を提案する。
を予測した上で、訪問看護
担う。
■自立して、急性期や人生
の調整について、窓口と方
の最終段階にある利用者
法等を理解していたり、多 ■入所者へのケアについて
の多職種間での課題をあ
についてのサービス調整
様化する退院後の生活の
らゆる情報からアセスメン
などの体制づくりをする。
場について、主体的にケア
トし、今後の状況を予測し、 ■ケアマネジャーがいない利
マネジャーと調整する。
適切なケアや予防的なケ
用者に対しては、中心的
■患者に対し、起こりうる課
アについて多職種と話し合
に多職種と連携をつくる。
題を予測して専門・認定看
うことで多職種のケアの向
護師などの専門家の関わ
上を図る。
りを提案し調整することが
できる。
公益社団法人 日本看護協会
7
「看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)」
開発の経緯
公益社団法人 日本看護協会
人々の暮らしと医療を支えるために
重症化予防
疾病の発症
急性期
すべての健康段階で、
切れ目のない看護提供システムが不可欠
在宅療養
慢性期
実現に向けて
●基盤となる看護実践能力の強化
-看護実践能力育成のための教育内容の充実と継続性の強化
●働く場・働き方の多様性の理解と推進
-多様な場で働くことを可能にする看護実践能力の育成
公益社団法人
日本看護協会
専門職としての看護師の能力開発
看護師は国家資格をもった専門職として、キャリア開
発の基盤となる看護実践能力を段階的に開発していく
ことが必要。
クリニカルラダー(clinical ladder)
臨床看護の実践レベル
レベルⅤ
レベルⅣ
レベルⅢ
レベルⅡ
レベルⅠ
クニリカルラダーのイメージ例
キャリアラダー(career ladder)
看護職の専門的な能力の発達や開発、臨床実践
能力ばかりではなく、管理的な能力の段階や
専門看護師・認定看護師・特定行為研修修了
看護師としての段階等も含む
公益社団法人
日本看護協会
看護師の能力開発における現状と課題
●独自にクリ二カルラダーやキャリアラダーを開発している施設は多くあるが、
ラダーの内容やレベルの基準は施設ごとに異なる
●特に、中小規模病院や高齢者介護施設、訪問看護ステーション等における、
教育支援体制の強化が必要
●継続教育の仕組みは、専門看護師や認定看護師等は体系化がなされているが、
専門分野を持たない看護師を対象とした全国標準の仕組みはない
現在 ●ラダーの内容やレベル基準が施設ごとに異なる
●ラダーを導入・作成していない施設もある
A病院
B病院
C病院
あらゆる施設や場で活用可能な標準化されたラダー
今後 を用い、すべての看護師に共通する核となる看護実
践能力の育成へ
A病院
B病院
どの場でも共通して求
高齢者介護施設 められる核となる実践
能力を育成
高齢者介護施設
訪問看護ステーション
訪問看護ステーション
公益社団法人
日本看護協会
C病院
「看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)」
開発の目的
●すべての看護師に共通する看護実践能力の指標の
開発と支援
●看護実践能力の適切な評価による担保および保証
●患者や利用者等への安全で安心な看護ケアの提供
目指した結果
●全国的な標準ラダーによる看護実践能力の担保・保証
●あらゆる場で働く看護師の能力評価への活用
●ラダーに応じた役割や適切な処遇への活用 等
標準化された指標による看護実践能力の保証へ
~全国の看護師に自信を!~
公益社団法人
日本看護協会
平成14年度「ジェネラリストの標準クリニカル・ラダー」
公益社団法人
日本看護協会
「ジェネラリストの標準クリニカル・ラダー」との違い
平成14年度日本看護協会基盤整備研究
「ジェネラリストの標準クリニカル・ラダー」
「看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)」
医療施設におけるキャリア開発の視点からの
人材育成
医療施設だけでなく、介護施設や訪問看護
等においても共通して活用できる看護師の
能力の指標の開発
自己教育・
研究能力
意思決定
ニーズを
を支える力 とらえる力
看護実践
能力
協働する
力
組織的役割遂
行能力
ケアする力
●キャリアの側面を省いて看護実践能力のみに特化
●組織的役割遂行能力や自己教育・研究能力の考え方は
「協働する力」や「ケアする力」の行動目標に一部含めて構成
●自己教育・研究能力や組織的役割遂行能力は、組織の規模や考え方に沿ったものが必要
公益社団法人
日本看護協会
パブリックコメントの実施
目的:現場の看護管理者や教育担当者に対する、「看護師のクリニカルラダー
(日本看護協会版)」(案)に関する意見集約と普及
*「看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)」(案)とキャリア開発に関する経過説明会
地区
東京
日時
会場
参加
者数
応募
者数
12月14日(月)13:00-16:00 JNAホール
160
234
11月13日(水)13:00-16:00 JNAホール
150
246
宮城
11月17日(木)13:00-16:00 TKPガーデンシティ仙台
175
181
福岡
11月14日(木)13:00-16:00 TKP博多駅前シティセンター
137
179
愛知
11月15日(金)13:00-16:00 TKP名古屋駅前カンファレンスセンター
153
215
兵庫
11月18日(月)13:00-16:00 神戸国際会館
135
269
広島
11月22日(金)13:00-16:00 TKPガーデンシティPREMIUM広島駅前
161
177
計
1,071
1,501
* 公式ホームページによるパブリックコメント実施(期間1月12~29日):意見数51(閲覧数4,763)
公益社団法人
日本看護協会
パブリックコメントの結果
説明会・公式ホームページを用いた意見募集1,108名からの回答
(実施期間:平成27年12月~平成28年1月)
「看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)案」 標準化されたラダーは必要である(1067名, 97%)
を活用したい(990名, 89%)
無効 2%
あまり必要でない 1%
活用は難しい 5% 無効 6%
必要である
57%
活用したい 89%
4つの力は適切である(958名, 86%)
段階の設定は妥当である(947名, 85%)
無効 10%
あまり適切でない 4%
大変適切である 12%
大変必要である
40%
無効 10%
あまり妥当でない 4%
適切である 74%
大変妥当である 9%
妥当である 76%
公益社団法人
日本看護協会
日本看護協会の役割と
施設における人材育成の関連
施設における人材育成
日本看護協会
組織の理念
地域における施設
の役割
施設の規模・機能
目指す看護職員像
自己教育・
研究能力
看護実
践能力
組織的役割遂
行能力
看護師のクリニカルラダー
(日本看護協会版)公表
意思決定 ニーズを
を支える力 とらえる力
協働する
力
活用のための手引き公表
実践例
施設における学習支援方法・評価方法の策定
(到達目標・基準の策定)
OJT・研修等
ケアする力
教育内容
学習支援者育成研修
評価方法・評価基準
既存のプログラム等
訪問看護師OJTガイドブック(日本訪問看護財団, 2011)
教育を提供するた
めの組織・運営に
関する基準
継続教育の基準ver.2
2012年4月
公益社団法人 日本看護協会
「継続教育の基準ver.2」活用のためのガイド
継続教育の基準ver.2
(日本看護協会,2012年6月) (日本看護協会,2013年3月)
介護施設における看護職のための系統的な研修プログラム(実務
者向け)のご提案(日本看護協会, 2012)
訪問看護入門プログラム(日本看護協会, 2016)
「看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)」
活用に向けて
公益社団法人
日本看護協会
「看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)」
を標準的指標として自施設のラダ―を評価する場合
「看護師のクリニカルラダー
(日本看護協会版)」
ご所属施設の
クリニカルラダー(例)
「看護実践能力」について
「看護師のクリニカルラダー
自己教育・ 看護実践
(日本看護協会版)」
能力
研究能力
と照らし合わせて
みてください
組織的役割
遂行能力
看護実践能力以外については、
自施設の特徴として生かしてください
公益社団法人
日本看護協会
意思決定 ニーズを
を支える力 とらえる力
協働する力 ケアする力
「看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)」
を標準的指標として自施設のラダ―を評価する場合
「看護師のクリニカルラダー
(日本看護協会版)」
自施設のクリニカルラダー
(例:がん専門病院)
意思決定を支える力 レベルⅢ【行動目標】
倫理的感応力
□ケアの受け手や周囲の人々の意向
①患者・家族の価値観を、ケアに携わ
の違いを多職種に代弁できる
る多職種に伝えることができる。
一致性あり
②患者・家族の価値観を理解できる。
また、患者・家族に関わる他医療従
事者の価値観も理解できる。
□ケアの受け手や周囲の人々の意向
の違いが理解できる
一致性あり
③がん患者特有の意思決定のプロセ
スを理解することができる。
がん専門病院の特徴・強みとして生かす
公益社団法人
□ケアの受け手や周囲の人々の意思
決定に必要な情報を提供できる
新たに追加することで、
看護実践能力を強化することが可能
日本看護協会
「看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)」
を用いて新たにラダ―を導入する場合(ご提案)
組織の理念
地域における施設の役割
施設の規模・機能
地域医療支援病院?
一般病院?
どのような医療や看護を提供したいか?
目指す看護職員像
地域の中で、どのような医療や
看護の提供を期待されているか?
自施設の看護師に必要な能力を検討
例)
①患者を全人的な視点でとらえることができる
②患者の個別性に配慮した看護を実践することが
できる
③多職種と円滑な情報共有・交換をすることができる
④患者の意向を多面的にとらえ、最善の選択に向け
た支援ができる
⑤組織の一員として経営に参画することができる
⑥自己の成長のために必要な能力を積極的に習得
することができる
⑦専門職としてあるべき姿を常に考えて行動する
ことができる
公益社団法人 日本看護協会
「看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)」
を用いて新たにラダ―を導入する場合(ご提案)
組織の理念
地域における施設の役割
施設の規模・機能
地域医療支援病院?
一般病院?
どのような医療や看護を提供したいか?
目指す看護職員像
地域の中で、どのような医療や
看護の提供を期待されているか?
自施設の看護師に必要な能力を検討
例)
看護実践能力
ニーズをとらえる力 ①患者を全人的な視点でとらえることができる
について、
ケアする力 ②患者の個別性に配慮した看護を実践することが
本クリニカルラダーと
できる
協働する力 ③多職種と円滑な情報共有・交換をすることができる
並べながら
確認する
意思決定を支える力 ④患者の意向を多面的にとらえ、最善の選択に向け
た支援ができる
組織的役割遂行能力 ⑤組織の一員として経営に参画することができる
自己教育・研究能力 ⑥自己の成長のために必要な能力を積極的に習得
することができる
基本的資質・態度 ⑦専門職としてあるべき姿を常に考えて行動する
ことができる
看護実践能力以
外については、
本クリニカルラ
ダーに含まず、自
施設の特徴として
別枠に生かす
「看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)」
を用いて新たにラダ―を導入する場合(ご提案)
●レベルの定義
●レベル毎の目標
●行動目標
「自施設の看護師に必要な能力の要素は
ここに含まれていますね」
「このような看護ができればレベルⅢですね」
など具体的に確認してみてください。
行動目標について、自施設における具体的な到達目標や基準を策定する際に、
実践例をお役立てください。
病院
高齢者介護施設
公益社団法人
日本看護協会
訪問看護ステーション
「看護師のクリ二カルラダー(日本看護協会版)」
活用により期待される効果
安心・安全な看護ケア
の提供
(看護の質保証・改善)
地域包括ケアシステム
を支える看護師育成
看護師個人の看護実践
能力の適切な評価
による質担保および保証
社会から評価される看護師の質保証へ
公益社団法人
日本看護協会