2016/9/14 ESC 2016レポート|抗血栓療法トライアルデータベース ツイート 2016年8月27~31日,イタリア・ローマ リバーロキサバン投与中のNVAF患者における重大な出血の予測因子―XANTUSより 2016.9.14 ESC 2016取材班 リバーロキサバン投与に関連する出血予測因子は,加齢,心不全,血管疾患,多量のア ルコール摂取,管理不良の高血圧,抗血小板薬/NSAIDs/アセトアミノフェンの併用であ り,修正可能な予測因子(多量のアルコール摂取,コントロール不良の高血圧,抗血小板 薬/NSAIDs/アセトアミノフェンの併用)の数が増えるにしたがい出血リスクが上昇-8月28 日 , 欧 州 心 臓 病 学 会 学 術 集 会 ( ESC 2016 ) に て , Paulus Kirchhof 氏 ( Institute of Cardiovascular Sciences, University of Birmingham,英国)が発表した。 ●背景・目的 経口抗凝固薬は心房細動患者の脳卒中発症抑制に有用である一方,出血リスクが上昇 する。これまで,ビタミンK拮抗薬投与下での出血予測因子は明らかにされているが,非ビ タミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)に関する出血予測因子についてはまだ知見が少ない。 Paulus Kirchhof氏 また,改善可能な予測因子の相対的な重要性について検討した報告はない。 そこで,XANTUS 1)のデータを用い,リバーロキサバン投与下での出血予測因子,ならびに修正可能な予測因子の影響度 についても解析した。 ●方法 XANTUSは,リバーロキサバンを投与された非弁膜症性心房細動(NVAF)患者6,784例(平均治療期間329日)を前向きに 観察した研究である。本解析は,1年の追跡期間中における重大な出血(ISTH出血基準)の有無別に,背景などのデータ を検討した。解析にあたっては,単変量解析で出血事象の発現と相関を示すパラメーターを用いて多変量モデルを構築 し,出血に関する独立予測因子を同定した。 ●結果 1. 全体の患者背景 患者全体の平均年齢は71.5歳,男性の割合は59.2%,平均CHA2DS2-VAScスコアは3.4であった。クレアチニンクリアラン ス(CLcr)<80mL/分は43.6%,≧80mL/分は22.0%で,34.4%ではデータが入手できなかった。リバーロキサバンは20.8% に低用量が,78.7%に通常量が投与されていた。データ欠損は0.6%であった。 2. 重大な出血発現の有無別の患者背景 重大な出血発現例(128例)は非発現例(6,656例)にくらべ,高齢であった(平均年齢はそれぞれ75.9歳,71.4歳,p< 0.001)。CLcr<80mL/分の割合が多く(68.0%,43.2%,p=0.0246),リバーロキサバン低用量投与が多かった(30.5%, 20.6%,p=0.0004)。 3. 出血の独立予測因子 http://att.ebmlibrary.jp/conferences/2016/esc/esc1603.html 1/2 2016/9/14 ESC 2016レポート|抗血栓療法トライアルデータベース 多変量解析より,加齢(ハザード比[HR]1.05,95%CI 1.02-1.07,p<0.001),心不全(HR 1.97,95%CI 1.36-2.86,p< 0.001),血管疾患(HR 1.91,95%CI 1.32-2.77,p<0.001),多量のアルコール摂取(HR 2.37,95%CI 1.24-4.53,p= 0.009),管理不良の高血圧(HR 1.79,95%CI 1.05-3.05,p=0.034),抗血小板薬/NSAIDs/アセトアミノフェンの併用(HR 1.80,95%CI 1.24-2.61,p=0.002)が,出血の独立予測因子として同定された。 4. 予測因子 修正可能な予測因子(抗血小板薬/NSAIDs/アセトアミノフェンの併用,管理不良の高血圧,多量のアルコール摂取)と修 正不可能な予測因子(年齢,心不全,血管疾患)の保有状況について検討した。 全体集団と重大な出血発現例で各保有状況にやや違いがみられ,全体では修正可能な予測因子のみ保有は8%,両者 保有は16%,修正不可能な予測因子のみ保有は45%であったのに対し,重大な出血発現例では,それぞれ9%,30%, 50%であった。 また,修正可能な予測因子の数と出血事象発現率の関係について検討したところ,修正可能な予測因子が0(5,150例)の 患者では1.5%,1つ(1,577例)では3.0%,2つ以上(57例)では3.5%であり,修正可能な予測因子の保有数が増えるにした がい出血リスクが高くなることが示された。この結果は,修正可能なリスク因子の保有数とその影響度を,修正不可能なリ スク因子と比較する仮想モデルでの検討においても裏づけられた。 ●結論 XANTUSでは,リバーロキサバン投与をうけた患者の約2%に重大な出血が認められ,出血の予測因子として,年齢,心不 全,血管疾患といった修正不可能な予測因子と,抗血小板薬/NSAIDs/アセトアミノフェンの併用,管理不良の高血圧,多 量のアルコール摂取といった修正可能な予測因子が同定された。修正可能な予測因子の保有数が多くなるほど出血リス クが上昇したことから,本結果はNOAC投与中のNVAF患者において修正可能な出血予測因子を減らすことの潜在的価値 を示唆するものである。 文献 1. Camm AJ, et al.; XANTUS Investigators. XANTUS: a real-world, prospective, observational study of patients treated with rivaroxaban for stroke prevention in atrial fibrillation. Eur Heart J 2016; 37: 1145-53. 抗血栓療法トライアルデータベース http://att.ebmlibrary.jp/conferences/2016/esc/esc1603.html 2/2
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