文 / 安藤 佳子 イギリス Ando Yoshiko EU 離脱、消費者の心配 ● Which? ホームページ http://try.which.co.uk/brexit http://www.which.co.uk/news/2016/07/brexit-value-of-the-pound-tops-post-vote-fears-448605/ ほか 2016 年6月 23 日の国民投票の結果イギリスの EU 宅ローンへの影響、家計費、雇用状況の変化などに対 離脱(ブレグジット:Brexit)が決定した。正式離脱 する懸念が強かった。さらに、節約をしようと思う に2年はかかりそうだが、国内外の政治・経済情勢の 分野としては高額消費財が 28%(残留派 37% に対し 不安定は免れない。Which? は離脱決定翌日に消費者 離脱派 5%) 、預貯金・投資が 26%(同 31% 対 12%)、 に冷静な行動を呼び掛け、今後も消費者の権利擁護 つき合いや外食が 25% (同 34% 対5%) の順である。 に尽力するとコメントした。しかし、Which? が読 Which? では専用サイトを開設し ●消費者保護法 者会員を対象に懸念事項について尋ねたアンケート は変わるのか ●預貯金は保護されるか ●海外のネッ (1,834 人回答)では、ポンド安が 75%、年金・預貯金 ト通販にかかる関税 ●新車や輸入車の購入 ●株相場 の目減りが各 71%・68%、EU 域内共通で利用できる の下落で年金が減額するのか ●海外旅行や携帯電話 欧州健康保険カード (EHIC) の失効が 63%、食料品や のローミングへの影響 ●雇用への影響など、消費者 日用品の高騰が 63% と、やはり経済状況の悪化に集 の懸念や質問を受け付け丁寧に回答している。また、 中している。興味深いのは、残留派と離脱派で大きく 離脱決定後に不安を表した SNS の発信者を標的に、 食い違う点であり、ポンド安については残留派 93%に 資産の目減り回避策を伝授するなどとうたう詐欺 対し離脱派 34%、年金は 85% 対 36%、預貯金は 82% メールが激増しているとして、添付ファイルなどを 対 34% など。総じて 45 歳以下の層ではポンド安、住 開いて個人情報を盗まれないように呼び掛けている。 アメリカ 手指消毒剤の安全性データを企業に追加要請 ● FDA ホームページ http://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/ucm509097.htm ● CDC ホームページ http://www.cdc.gov/handwashing/ http://www.cdc.gov/Features/GlobalHandwashing/index.html 近くに石けんや水が無いときに、水で洗い流さず 菌製品の有効性と安全性に関する大規模なルール作 使え、皮膚に残るタイプの市販の手指消毒剤は便利 りに着手している。2013 年 12 月には一般消費者用 だ。主な有効成分はエチルアルコール (エタノール) として、2015 年4月には医療・保健用として規準案 が約9割、その他イソプロピルアルコールや塩化ベ が発表されている。今回の追加データ提出とその後 ンザルコニウムなどが使われている。 のパブリックコメントを経て最終案が発表される。 FDA( 食品医薬品局 ) では 1970 年代に登場した当 一方 CDC( 疾病予防管理センター ) は、石けんと 時から同製品の評価を始めたが、近年では低濃度で 清潔な流水による手洗いは病気予防の最も重要な手 も検出できる最新の高度技術により、従来想定され 段の1つであり、下痢を伴う疾患の 30% 減少、風邪 ていた数値を上回る手指消毒剤中の主成分が血中や などの呼吸器疾患の 20% を減少させることができる 尿中から検出されたとする外部の専門家などからの として、トイレの後や調理前などに励行を呼びかけ 指摘があり、前述の3主成分について、安全性と有 ている。水と石けんが使用できない場合に限り手指 効性に関する追加データの提出を製造業者側に求め 消毒剤 (アルコール60%以上) の利用を推奨している。 ることとした。 なお、2008 年より毎年 10 月 15 日は、 「世界ハンド FDA は特に妊婦および小児が同製品を吸入する場 合の安全性に強い関心を持っており、既に市販の抗 ウォッシュデー」であり、世界 100 カ国、2億人以上 が参加している。 2016.9 24 文 / 岸 葉子 ドイツ Kishi Yoko 国旗ペイントグッズから有害物質検出 ●商品テスト財団 ホームページ https://www.test.de/Fanschminke-Schminke-und-Klebe-Tattoos-mit-Schadstoffen-belastet-5024667-0/ https://www.test.de/Fan-Schminke-Douglas-und-andere-grosse-Anbieter-rufen-WM-Schminkstifte-zurueck-4731744-0/ ●バーデン・ビュルテンベルク州農村地域・消費者保護省 ホームページ http://mlr.baden-wuerttemberg.de/de/unser-service/presse-und-oeffentlichkeitsarbeit/ pressemitteilung/pid/behoerden-ziehen-fanschminke-aus-dem-verkehr-1/ サッカーは、ドイツで最も人気のスポーツである。 ある。8商品から検出されたナフタレン (PAH の化 国別対抗戦では、ドイツ国旗を顔にペイントして応 合物の一種)は発がん性が疑われ、化粧品への使用 援するファンの姿が目立つ。黒・赤・金の国旗をひ が禁止されている。また、4商品から検出された と塗りで描けるように、3色同時にセットされたス DEHP(フタル酸ジ -2- エチルヘキシル) 、DIBP(フ ティックも販売されている。ところが、2014 年の タル酸ジイソブチル)等も、生殖系への悪影響を理 ワールドカップ開催中、複数のドイツ国旗ペイント 由として、化粧品への使用が禁止されている。さら グッズが回収される騒ぎとなった。バーデン・ビュ に、禁止成分ではないが、高濃度の MOAH(芳香族 ルテンベルク州の行政機関が実施したテストで、発 炭化水素系鉱油)が検出された商品もあった。鉱物 がん性の疑いがある赤色の禁止色素が検出されたた 油ベースの化粧品に頻繁に使われる成分だが、発が めである。そこで、今回は、スティックタイプ等の ん性との関連性が指摘されている。 化粧品7商品、タトゥーシール5商品の計 12 商品を 対象に、商品テスト財団がテストを行った。 このように、問題の多いテスト結果となったが、 日常的に継続使用する商品ではないので、健康への その結果、禁止色素は姿を消していたが、全商品 直接的な影響はないとするのが同財団の見解である。 から別の有害物質が検出された。 特に目立ったのが、 しかし、粘膜を刺激する色素を含むため、目・口の PAH(多環芳香族炭化水素) とフタル酸類 (可塑剤) で 周りへの使用は控えるべきと助言している。 か そ オーストリア 養殖魚もひとまず安心 ●オーストリア連邦環境庁 ホームページ http://www.umweltbundesamt.at/aktuell/presse/lastnews/news2016/news_160629/ ●ニーダーエスターライヒ労働者会議所 ホームページ https://noe.arbeiterkammer.at/beratung/konsumentenschutz/essenundtrinken/AK-Test__Geringe_ Belastung_von_Fischen_mit_Ethoxyquin_und.html 海のないオーストリアでは、海洋国に比べると魚の トナム等からの輸入品だった。 摂取量が少ない。簡単に入手できる海の魚は輸入品 テストの結果、問題成分が検出された商品はあっ のサケ等に限定されるが、その一方で、マスをはじめ たものの、全商品が摂食に適すると評価された。特 とする川魚 (淡水魚) は、古くから食卓に上ってきた。 に、養殖の7商品と天然の3商品は 「非常に満足」と シューベルトの歌曲“Die Forelle (鱒) ”でもお馴染みで いう高評価になった。なお、エトキシキンは飼料の ある。最近、魚摂食による健康効果が同国でも認識さ 品質維持のために添加される抗酸化剤だが、EU で れつつあるが、重金属汚染や養殖魚に使われる抗生 は飼料添加剤としての基準値はない。また、水銀は 物質、飼料添加物を問題視する消費者団体もある。 自然界に広く分布する成分だが、水中で神経毒性を な じ そこで、ニーダーエスターライヒ労働者会議所は、 スーパーで購入した魚に含まれるエトキシキンと水 持つメチル水銀に変換されると、マグロ、カジキな ど一定の大型魚に蓄積されると言われる。 銀のテストを、連邦環境庁に委託した。対象品は養 テストを委託した労働者会議所は、過去の調査と 殖魚 18 商品 (マス7、サケ6、イワナ2、パンガシウ 比べて明らかに改善されたと評価する一方で、消費 ス2、ティラピア1) 、天然魚3商品 (全てサケ) の計 者に自信を持って推奨できる魚は、 「非常に満足」と 21 商品である。そのうち、国産品はイワナの2商品 された商品に限られるとする。さらに、妊産婦はマ だけで、ほかはノルウェー、イタリア、アラスカ、ベ グロやカジキを食べないほうがよいと助言している。 2016.9 25
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