2016/ 為替トピックス 9/12 投資情報部 FX ストラテジスト 由井 謙二 ドル円相場のデジャブ、2015年相場との比較 ここ数年の年後半のドル円相場をみると、2013年と14年は10月に底をつけ、12月にかけて 上昇した。そして、相場を動かす手掛かり材料は日米の金融政策であった。 2015年のドル円相場は、米9月利上げが見送られたことを受けて弱含む場面もみられた が、その後は、米利上げ観測が再燃するなかで値を戻す展開となった。 今年も、米9月利上げ見送りでドル円は軟化する可能性がある。もっとも、年内の米利上げ が見通せる状況となれば、ドル円の下落は一時的にとどまり、12月にかけて持ち直すという 2015年型の相場展開も予想される。 2013年、14年のドル まず、ここ数年の年後半のドル円相場がどのような値動きだったのか、どのような材 円相場は10月に底を つけ、12月にかけて 上昇 料で動いたのかを振り返りつつ、今後のドル円相場の行方を展望したい。 下図は、2013年から2016年までのドル円相場を、6月初めを100としてその後の推移 をみたものである。2013年と14年の年後半のドル円相場は、10月頃にいったんの底 をつけ、12月にかけて上昇した。そして、相場を動かす手掛かり材料は日米の金融 政策であった。 2013年を振り返ると、バーナンキ前米連邦準備理事会(FRB)議長が5月に量的緩 和策の縮小開始を示唆し、同年12月には量的緩和の縮小に着手することを決定。 為替市場ではドル買いが優勢となるなか、ドル円は堅調地合いとなった。 ここ数年の年後半のドル円推移 (6月初=100) 120 2014年 日本:追加緩和 米国:量的緩和終了 2013年 2014年 2015年 2016年 115 110 2013年 米国:量的緩和縮小開始 105 100 95 2015年 米国:利上げ開始 90 6月 7月 8月 9月 10月 11月 (注)2016年は9/9まで 出所:ブルームバーグのデータ等よりみずほ証券作成 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 1 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 12月 2016/9/12 為替トピックス 2014/19/18 2014年は、10月下旬にFRBの量的緩和策が終了し、次は利上げが意識されたう え、日銀が追加緩和を実施したことで、日米金融政策の方向性の違いが鮮明とな り、為替市場では円売りとドル買いが相まって、ドル円は大幅上昇となった。 2015年と16年はこれ までのところ似たよう な値動き。米利上げ 時期が焦点に 2015年と2016年の6月以降の値動きを比較してみてみると、これまでのところ似たよ うな値動きとなっている。 下図は、2015年6月以降のドル円を左目盛、2016年6月以降のドル円を右目盛で並 べたものである。2015年は、6月から8月にかけてギリシャ問題や中国懸念(人民元 の切り下げ)の高まりを背景に米利上げ観測が後退し、ドル円は急落した。9月の米 連邦公開市場委員会(FOMC)では海外リスクの高まりもあって、FRBは利上げを見 送ることを決定。その後、ドル円は上値の重い推移となったが、11月に公表された 10月米雇用統計が良好なものとなり、利上げ観測が再燃。12月にかけてドル円は 上昇する動きとなった。 2016年は、6月の英EU離脱(ブレグジット)決定もあり、米利上げはないとの見方の なかで、ドル円は一時100円を割り込む場面もみられた。8月下旬のイエレンFRB議 長やフィッシャーFRB副議長の発言から9月利上げ観測が高まり、ドル円は一時104 円台まで上昇したが、その後は上値の重い推移となっている。 今年も、米国で9月利上げが見送られる場合、11月に米大統領選を控えて、ドル円 は軟化する可能性がある。ただ、年内の利上げが見通せる状況となれば、ドル円の 下落は一時的にとどまり、12月にかけてドル円は値を戻す展開も予想される。 なお、2015年は12月の米利上げ実施後に材料出尽くし感でドル売りが優勢となっ た。今年は、米利上げの有無に加えて、2017年以降も利上げが続くとの見通しが強 まるかどうかが、ドル高の持続性を見極めるうえで重要となろう。 (1ドル=円) 126 2015年・2016年の6月以降のドル円推移 (1ドル=円) 112 2015年8月:中国人民元切り下げ 125 110 124 2015年11月:米利 上げ観測再燃 123 108 2015年9月:米 利上げ見送り 122 106 121 104 120 102 119 118 2016年8月:FRB正副議長 発言で利上げ観測再燃 2016年6月: ブレグジット 2015年(左目盛) 2016年(右目盛) 117 100 98 6月 7月 8月 9月 10月 (注)2016年は9/9まで 出所:ブルームバーグのデータ等よりみずほ証券作成 11月 12月 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 2 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 2016/9/12 為替トピックス 2014/19/18 次に、ドル円の行方を占ううえで関心の高い米国の金融政策についてみていきた 9月会合は利上げの 地均しにとどまり、12 月会合の利上げを予 想 い。 下図は米利上げを占う4つのポイントとして、①労働市場、②インフレ率、②その他 経済指標、④市場の利上げの織り込み度合い、を示している。 左上の労働市場の動向をみると、非農業部門雇用者数の前月比増減は8月に過去 3ヵ月平均で+20万人を超える堅調な伸びとなっている。一方で、右上のFRBが物価 指標として重視するコア個人消費支出デフレーター(食品とエネルギーを除く)は前 年同月比+1.6%と伸び悩んでおり、FRBとして急いで利上げを行う必然性は乏しい。 その他の経済指標として、左下の企業景況感指数をみると、8月にISM製造業景況 指数は半年ぶりに節目の50を割り込み、非製造業景況指数が2010年2月以来6年 半ぶりの低水準を付けた。これら企業景況感指数の悪化は、基調的な景気悪化を 示唆する兆候なのかどうか、FRBとしても今後の経済指標を見極めたいという動きに つながると思われる。 そして、右下のFF金利先物から算出される9月利上げ確率は依然として50%を下回 る。このままFRBが9月の利上げに踏み切れば、金融市場でネガティブサプライズと なり、米国株が大幅に下落する可能性がある。こうした状況下、9月FOMCで年内利 上げに向けた地均しをおこない、実際には11/8の大統領選挙終了後の12月会合 (12/13~14)で利上げを実施する可能性が高いのではないかと考えている。 米雇用関連指標 (万人) (%) (月次:2015/1~2016/8) 40 (月次:2005/1~2016/7) 3.0 非農業部門雇用者数前月比増減 3ヵ月平均 30 米国インフレ関連指標(前年同月比) 2.5 2.0 23.2 20 1.6 1.5 15.1 10 FRBインフレ目標(2.0%) 個人消費支出デフレーター(除く食品・エネルギー) 1.0 0 15/1 15/4 15/7 15/10 16/1 16/4 0.5 16/7 05 06 07 08 09 10 11 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 (年/月) 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 米ISM景況感指数 (%) (月次:2012/1~2016/8) 60 100 58 12 13 14 15 16 (年) FF金利先物から算出される米利上げ確率 (日次:2016/6/1~2016/9/9) 年内利上げ確率 80 9月利上げ確率 56 60.4 60 54 52 50 非製造業 48 40 51.4 49.4 30.0 20 製造業 46 12 13 14 15 0 16/6 16 出所:全米供給管理協会(ISM)、ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 (年) 16/7 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 16/8 16/9 (年/月) この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 3 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 2016/9/12 為替トピックス 2014/19/18 9月下旬にドル円は 円高・ドル安トレンド 転換を試す展開に 最後に、テクニカル的な注目点をみていきたい。 下図はドル円の日足一目均衡表の推移である。今年のドル円相場は、日足一目均 衡表の雲の水準、今年1月高値から5月、7月、9月の高値近辺を結んだ下降トレンド ラインの水準が抵抗線(レジスタンス)となって上値を抑えている。 ただ、日米の金融政策決定会合(9/20~21)頃に日足雲が切り下がり、下降トレンド ラインも102~103円の水準に切り下がる公算。ドル円はこのレジスタンスを上抜けれ ば、年初から続く円高・ドル安トレンドが転換する可能性があり、日米金融政策の結 果と合わせて注目したい。 (1ドル=円) 126 ドル円 一目均衡表 (日次:2015/12/4~2016/9/9) (1ドル=円) 126 122 122 118 118 114 114 110 110 106 106 102 102 98 16/1/8 16/3/4 出所:各種資料よりみずほ証券作成 16/4/29 16/6/24 16/8/19 98 16/10/14 (年/月/日) この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 4 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 2016/9/12 為替トピックス 2014/19/18 金融商品取引法に係る重要事項 当社取り扱いの商品等(外貨建商品等も含む)にご投資いただく際には、各商品等に所定の手 数料(投資信託の場合は銘柄ごとに設定された販売手数料および信託報酬等の諸費用等)を ご負担いただきます。債券を当社との相対取引によりご購入いただく場合は、購入対価のみを お支払いいただきます。 各商品等には価格の変動や発行者の信用状況等の悪化等により損失を生じるおそれがあり ます。 なお、債券の利金・償還金の支払いについて、発行者の信用状況等によっては、支払いの遅 滞・不履行が生じるおそれがあります。 外貨建商品等の売買等にあたり、円貨と外貨を交換する際には、外国為替市場の動向をふま えて当社が決定した為替レートによるものとします。また、売却時等の為替相場の状況によっ ては為替差損が生じ、損失を被るおそれがあります。 商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面や目 論見書またはお客さま向け資料等をよくお読みください。 商 号 等 : みずほ証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 94 号 加入協会 : 日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、 一般社団法人第二種金融商品取引業協会 広告審査番号 : MG5690-160912-27 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 5 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
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