2016/9/11 MTO技術研究所 耐擦傷性付与 2016/01/18作成 2016/9/11見直し MTO技術研究所 所長 桝井捷平 e-mail:[email protected] UR(MTO) http://www.geocities.jp/masui_shohei/ UR(加飾) http://www.geocities.jp/smmasui/ 耐擦傷性付与技術 MTO技術研究所 プラスチックの成形品、加飾した成形品で、傷つき対策は重要である。 1.表1に示すような耐擦傷性付与技術がある。 表の1.、2.は表面を平滑にすることで傷をつきにくくする方法。 図2に示すようにある程度の効果がある。 2.一般的には、表1の3.~5.のように表面を固くして、外力がかかっても傷が つかなくすることである。最近では 鉛筆硬度で9Hまで開発されているが、これは伸びがなく、3次元の成形品には、 適用できない。 3.3次元形状の成形品では、通常、キュア前の伸びの良いハードコート剤を塗布 したフィルを用いて成形し、成形後UVなどでキュアする方法が使用されている。 (図2参照) 4.表面硬度が高く、かつ、伸びのある表面コート剤が開発されれば、アフターキ ュアなしで、傷のつきにくい成形品が得られる。 各社で開発されているが、現時点では、表4,5に示すように、鉛筆硬度Hなら、 100%、2Hなら20-30%位が限界である。このレベルは、展示会に出展して いる他のメーカーに聞いても同レベルである。さらなる改良が待たれる。 他syの例を図4、5に示す。 5.これと全く異なる発想が、自己修復コート剤を塗布したフィルムである。こちら は傷は簡単につくが、短時間で修復するもので、近年よく使われるようになって いる。原理を図6に示す。一般的には鉛筆硬度がF程度である。 東レでは、通常品以外に、鉛筆硬度が2H以上のものも開発している。 1 2016/9/11 MTO技術研究所 表1 耐擦傷性付与技術 Technology of Anti-Scratch 方法 会社 備考 1.表面平滑性改良、滑り 理研ビタミン 平面平滑性 and/or 滑り性改良で耐擦傷 等 性改良 性改良添加材配合樹脂 2.平面平滑フィルム貼 合成形 出光ユニテ ック等 平面平滑性の高いPPフィルム。硬度はBで あるが、傷はつきにくい。(2H品も開発) 3.成形品にハードコート 処理 各社 成形品にハードコート。高硬度可能。 最近では鉛筆硬度H9まで開発。 4.セミキュアフィルム貼 合成形⇒アフターキュア 各社 成形前はセミキュアで伸びを保持し、成形 後、UVキュア 5.柔軟性UV硬化型ハー トクシキ等 ドコートフィルム貼合成形 2Hで30%、Hで100%伸びるハードコート 材 6.自己治癒フィルム貼 合成形 東レ、日本 写真印刷、 リケンテクノス等 外力で傷は付くが、自己修復する。 硬度はF程度 7.高硬度自己修復フィ ルム貼合成形 東レ 6.の改良品で、硬度2-3H 図1 添加剤による耐擦傷性付与 Example of Anti-Scratch by Addition MTO技術研究所 理研ビタミンのリケマスターSCR-003 組成: ポリプロピレン系樹脂(A)100 脂肪酸アマイド(B)0.05~1.0 有機カルボン酸金属塩(C) 0.05~1.0 ジグリセリン脂肪酸エステル(D) 0.01~1.0 評価方法: 表面性測定器(サファイア性引掻針使用) マイクロスコープでの傷観察、針にかかる抵抗値で評価 2 2016/9/11 表2 ハードコート剤の種類 MTO技術研究所 Kinds of Hard Coat コート剤 有機系 化学物質 表面硬度 特 徴 欠 点 *メラミン樹脂 *ウレタン樹脂 *アクリル樹脂 やや硬い ・取り扱い容易 ・リコート性が良い ・硬さ不十分 ・耐久性不十分 *紫外線硬化型 多官能アクリ ル樹脂 硬い ・取り扱い容易 ・インキによってリ コート可能 ・残存未反応物 による耐候性 に影響 シリコン系 シラン化合物 最も硬い ・ガラス構造を持つ 為、硬さと耐久 性が両立できる ・リコート性が劣 る 無機系 金属酸化物 硬い ・真空蒸着による製 膜 ・下地のプラス チックとの接 着性が縣念あり MTO技術研究所 表3 超高硬度のハードコート剤 ダイセルは、独自の分子設計や有機合成加工技術などを駆使する ことで、無機材料を配合せずに鉛筆硬度9Hという高硬度を実現した。 他社でも開発されている。 特徴 1.高耐熱・高透明で打ち抜き加工性に優れる 2.ロール・トゥ・ロールプロセスの適用が可能で、高い生産性 *ある程度の曲げはできるが、伸びはない 用途 1.タッチパネルやタブレットPCのカバーガラスの代替材料など幅 広い用途での利用を見込んでいる。 3 2016/9/11 図2 OMRにおけるハードコートの例 MTO技術研究所 Example of Hard Coat in OMR OMRの成形工程 フィルム構成 成形品例 * 表4 柔軟性UV硬化型ハードコート MTO技術研究所 Example of Soft UV Hard Coat トクシキの柔軟性UV硬化型ハードコート材-1 試験項目 AUP ‒ 1300 AUP - 1200 鉛筆硬度 JIS K 5600-54750g 荷重 2H H 伸び率 (%) 膜厚 5μm(理論値 )室温 30 100 ※試験試料作成 基材: 易接着フィルム(コスモシャイン A-4100 125μm) 溶剤 PGME にて Nv30%に調整後、バーコーター#10 で塗布、コンベクション オーブン 80℃×3 分で溶剤乾燥後、UV 照射。(理論膜厚 5μm) 硬化条件: 80W 高圧水銀灯、積算光量 300mJ/cm2 4 2016/9/11 MTO技術研究所 表5 柔軟性UV硬化型ハードコート Example of Soft UV Hard Coat トクシキの柔軟性UV硬化型ハードコート材-2 製品名 AUP‐ 1380 試験項目 鉛筆硬度 AUP‐ 1300 AUP‐ 1200 2H 2H H 伸び性(%) 引張り試験 20 30 100 耐スチール ウール性 SW(0000) 200g 荷重×100 回 傷無し 傷無し SW(0000) 200g 荷重×100 回 傷無し 傷数20 白化 本以上 SW(0000) 500g 荷重×100 回 傷2~ 3本 JIS K 5600‐5‐4 750g荷重 白化 白化 白化 プレキュアタイプ 図3 各社のコーティング剤-1 AGCコーテック:3F系FEVEフッ素樹脂表面 保護コーティング剤。耐候、撥水、撥油、耐 薬品性良好。延伸タイプもある。 MTO技術研究所 大日精化:UV硬化型コーティング剤。UV照 射後、H-2H/10-20% さらに、表面硬度/伸びの良いものを 開発中であるが、今のところ、F-HB/80 -100%が限界。 他に、自己修復コーテイング剤、有機/ 無機ハイブリッド材料など。 10 5 2016/9/11 図4 各社のコーティング剤-2 DIC:①紫外線硬化型無機/有機(ポリシロキサ ン/アクリルハイブリッド樹脂。②紫外線硬化水 性ウレタン樹脂 MTO技術研究所 荒川化学:高耐候性紫外線硬化ハー ドコート剤。硬化後H,2H ①紫外線硬化型無機/有機(ポリシロキサン/アクリル ハイブリッド樹脂。耐候、耐汚染性良好。 光線透過率 >91%。 ②紫外線硬化水性ウレタン樹脂 柔軟性と硬度の両立 H/50%、3H/10%。 水性で、低VOC 他に、有機触媒型制御重合による高機 能ポリマーなど。 11 図6 自己治癒コートフィルム-1 MTO技術研究所 Self-healing Film 本コート剤は、網目構造のポリマーで、外力が加わると、簡単に変形するが、外力 を取り除くと、元の軌跡で元の状態に戻り、数秒後に傷が回復する。 6 2016/9/11 図7 自己治癒コートフィルム-2 東レの自己修復フィルム Self-healing Film MTO技術研究所 リケンテクノス、 日本写真印刷等も 供給 東レの自己高高度修復フィルム 7
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