中国の2016年度国防費

中国の2016年度国防費
公表国防費額
公表国防費の推移
億元
12000
中国の実際の国防関係費の内訳やその額については、中国の予算
制度等が明らかでないこともあり、確たる見積もりを行うことは困難で
あるが、以下のような見方がある。
25
国防費対前年度伸び率
約9,544億元
10000
米国防省「中国の軍事及び安全保障の進展に関する年次
報告」(16年5月)
20
8000
15
6000
10
4000
約2,807億元
公表国防費額
5
2000
約215億元
0
1988 1990
1995
2000
2005
2015 2016
2009 2010
日
本
の
防
衛
関
係
費
0
5年連続で2桁の伸び
21年連続で2桁の伸び
(注1)
(注2)
○ 中国政府は16年度国防費を9,543億5,400万元(=約18兆1,327億円 )と発表
(注2)
・ 2015年の中国の公表国防費は約1,440億ドル。
・ 2015年の軍事関連支出の総額は1,800億ドル以上と見
積もられる。 (2014年の公表国防費の1.25倍以上)
・ 中国の公表国防費は、 R&Dや外国からの兵器調達な
どの重要な支出項目を含んでいない。
ストックホルム国際平和研究所「2015年版年鑑」(15年10月)
・ 2014年の中国の公表国防費8,082.3億元に対して、実際
の国防支出は計1兆3,300億元(=約2,160億ドル)(※公
表国防費の約1.6倍)と見積もられる。2005年から2014年
の10年間で約3.5倍、年平均15%増。
※「2011年度年鑑」では、中国の国防支出合計を見積もるには、装備
の研究開発等に関する予算外の支出を推計する必要があると指摘。
過去28年で約44倍
(過去10年で約3.4倍)
(注3)
中国の国防費に対する見方
国防費対前年度
伸び率 %
(注3)
○ 対前年度当初予算比で674億5,600万元(=約1兆2,817億円 )増、7.6%の伸び
※「2009年版年鑑」では、中国の公表国防費には装備品輸入を含む
重要費目が含まれておらず、国防支出は2008年にフランスを抜いて
初めて世界第2位になったと評価。
台湾国防部「国防報告書」(15年10月)
膨大な経費が非軍事費として隠蔽されているのは明ら
○ 日本の平成28年度防衛関係費(予算案)は、4兆8,607億円(①SACO関係経費、 ・ か。実際の国防費は公表額の約2~3倍と見積もられる。
②米軍再編関係経費のうち地元負担軽減分、③新たな政府専用機導入に伴う経費を除く)
(中国国防費は日本の防衛関係費の約3.7倍)
(注) 国防費は中央財政支出における国防予算額
※ なお、中国は、16年度国防費の内訳について一切説明
を行っていない。
(ただし、15・16年度は、中央本級支出※(中央財政支出の一部)における国防費のみ公表された。15年度については、その後、地方
移転支出等が別途公表されたため、合算し、中央財政支出における国防費を算出。)
(注1) 16年度は公表額(中央本級支出における国防予算額) (注2) 1元=19円(平成28年度の出納官吏レート)で換算
(注3) 15・16年度公表額(中央本級支出における国防予算額)で計算 ※ 中央本級支出とは、中央財政支出から地方移転支出を引いたもの
1
【参考1】中国の海・空戦力の近代化
海上戦力
○より遠方の海域において作戦を遂行する能力の構築
○水上艦艇、潜水艦、揚陸艦など海軍戦力全体の能力向上、戦略ミサイル原潜の更新
○中国初の空母「遼寧」が2012年9月に就役、国産空母を建造中
(隻数はミリタリーバランス各年版、諸元はJane’s Fighting Ships 2016等)
(隻数)
新型駆逐艦・フリゲート
52
ソブレメンヌイ級DDG
(隻数)
50
新型潜水艦
キロ級SS
45
空母 ジン級SSBN
空母「遼寧」
50
40
40
排水量: 8,067t(満載)
初就役: 1999年
備考:ロシアから計4隻購入。改良
版SS-N-22超音速対艦ミ
サイル(射程240km)を装備
30
排水量:3,125t(潜航時)(浮上時:2,362t)
初就役:1994年
備考:ロシアから計12隻購入。静粛性
に優れる。5番艦以降は巡航ミサイル
SS-N-27B(射程220km)を装備
30
20
20
ジャンカイⅡ級FFG
10
ユアン級SS
排水量:59,439t(満載)
初就役:2012年
備考:国産の艦載戦闘機
「J-15」を開発中との指摘
建造中の国産空母
10
0
91 93 95 97 99 01 03 05 07 09 11 13 15 16
※1 ルフ・ルーハイ・ソブレメンヌイ・ルーヤン・ルージョウの各級駆逐艦及び
ジャンウェイ・ジャンカイの各級フリゲートの総隻数
※2 この他中国は19隻(2016年)のジャンダオ級小型フリゲートを保有
航空戦力
排水量: 3,963㌧(満載)
初就役: 2008年
備考: ステルス性を考慮した最新
フリゲート。VLSを採用。現在
も増産中とみられている
0
91 93 95 97 99 01 03 05 07 09 11 13 15 16
※ ジン・シャン・ソン・ユアン・キロの各級潜水艦の総隻数
排水量:2,900t(浮上時)
16年3月17日
初就役:2006年
2隻目の空母のとなる国産空母を大連
備考:最新鋭の国産ディーゼル潜水艦。
で建造中。排水量5万トン級、通常動
AIP(非大気依存推進)技術を採用
力装置、スキージャンプ式発艦方式を
しているとされ現在も増産中
採用(15年12月31日、国防部発表)
○国土防空型から攻防兼備型に転換、第4世代戦闘機が着実に増加
○次世代ステルス戦闘機とされる「J-20」等を開発中との指摘
○空中給油機、早期警戒管制機、輸送機を含む多種多様な航空機の自国での開発・生産・配備
第4世代戦闘機機数推移
900
800
16年、J-15
配備開始
810
J-10戦闘機
中国国産の戦闘機。イスラエルのラビ
戦闘機(80年代後半に開発中
止)に酷似。現在、量産態勢
700
2016年
J-10:
Su-30:
Su-27(J-11):
J-15:
600
347機
97機
352機
14機
計 810機
05年、J-10
配備開始
500
400
300
200
100
92年、Su-27
調達開始
Su-27(J-11)戦闘機
ロシアからの輸入(Su-27)及びライセ
ンス生産(J-11A)に加え、独自に
再設計した機体(J-11B)を生産
次世代戦闘機とされる
J‐20
2011年1月、飛行試験を初めて
実施。ゲイツ前米国防長官は
「中国はステルス性能を備えた次
世代戦闘機を2020年までに50
機、25年までに200機程度配備
する可能性がある」と発言
01年、Su-30
調達開始
0
0
91年 93年 95年 97年 99年 01年 03年 05年 07年 09年 11年 13年 15年 16年
(機数はミリタリーバランス各年版、機体の概要はJane’s All the World Aircraft 2016等)
2
【参考2】中国の核・弾道ミサイル戦力の近代化
核
・
の弾
近道
代ミ
化サ
努イ
力ル
戦
力
名称
※2015年12月末に「ロケット軍」を新設(第二砲兵を改組)
海
軍
○ 戦略的抑止力・反撃能力の増強
(「2010年中国の国防」)
即応性・残存性の向上
打撃力の向上
■ 液体燃料から固体燃料化
⇒液体燃料よりも小型で車載化しやすく即時発射可
■ (半)固定式から車載化(移動式化)
⇒発見・破壊されにくく、任意地点で発射可能
■ 新型SLBMと新型SSBNの開発
⇒残存性の高い戦略核戦力
■ 弾頭の小型化、複数化、個別目標誘導複数弾頭(MIRV)化
⇒同時複数目標攻撃が可能に。ミサイル防衛に対抗
弾道ミサイルの種類・性能
種類
○ 即応能力、防御突破能力、精密打撃能力、総合的破壊力、
防衛能力、残存能力の向上
○ 戦略的抑止力・防衛作戦能力の向上
※
近
代
化
方
針
第
二
砲
兵
◎ MIRV化の指摘があるものは青太字 ◎ 対艦弾道ミサイル(ASBM)との指摘があるものは赤太字
※ 中国が保有する固体燃料推進の弾道ミサイル(SLBM除く)はTEL式
大陸間弾道ミサイル※1
DF-5
シリーズ
DF-31
シリーズ
(CSS-4)
(CSS-10)
■ 誘導制御技術の導入
(終末誘導機動弾頭(MaRV)の装備など)
⇒精度の高い攻撃が可能に
中距離弾道ミサイル
DF-4
DF-26
(CSS-3)
(-)
DF-3
シリーズ
DF-21
シリーズ
(CSS-2)
(CSS-5)
短距離弾道ミサイル
潜水艦発射弾道ミサイル
DF-15
シリーズ
DF-11
シリーズ
JL-2※2
(CSS-6)
(CSS-7)
DF-16
(CSS-11)
推進方式 液体燃料 固体燃料 液体燃料 固体燃料 液体燃料 固体燃料 固体燃料 固体燃料 固体燃料
射程(km)
12,000
7,200
~13,000 ~11,500
ミサイル(基)
75-100
5,400
3,000~
4,000
2,400
~2,800
200-300
1,550
~2,500
1,000
600~900 280~350
1,000-1,200
※1 車載式でMIRV搭載可能な新型ICBM「DF-41」を開発中 ※2 SLBM「JL-2」を搭載予定のジン級SSBNの配備を進めている
※3 SSBNのミサイル数に記入してある数字は発射管数
(CSS-NX-14)
DF-31A大陸間弾道ミサイル
固体燃料
8,000
(12※3×4)
DF-21D中距離弾道ミサイル
(資料源:原則Jane’s Strategic Weapon Systemsを元に作成。ただし、ICBM・IRBM・MRBMの基数については米国防省「中華人民共和国の軍事及び安全保障の進展に関する年次報告」2016年版、SLBMの基数についてはミリタリー・バランス2016)
3
【参考3】対艦弾道ミサイル及び巡航ミサイル
「アクセス阻止/エリア拒否 (A2/AD:Anti-Access/Area-Denial)」
○ 接近阻止(A2:Anti-Access):
対空母攻撃における対艦弾道ミサイルの誘導
(人民解放軍第2砲兵工程学院の記事より抜粋)
ミサイルの飛翔軌道の遠地点
主に長距離能力により、敵軍がある作戦領域に入ることを阻止するための能力
中間誘導段階(mid-segment)で
の軌道変更点
○ 領域拒否(AD:Area-Denial):
より短射程の能力により、作戦領域内での敵軍の行動の自由を制限するための
能力
● A2/ADに用いられる兵器の例
弾道ミサイル、巡航ミサイル、対衛星兵器、防空システム、潜水艦、機雷など
<特に注目される兵器>
○2011年台湾国防白書「DF-21Dは、
●対艦弾道ミサイル(ASBM:Anti-Ship Ballistic Missile)
・ 中国はDF-21を基にした命中精度の高い通常弾頭
の弾道ミサイルを保有
・ 特に、空母などの洋上の艦艇を攻撃するための通
常弾頭のASBM(DF-21D)を配備しているとの指摘も
ある
・ さらに、射程がグアムを収めるDF-26はDF21Dに続く
「第2世代ASBM」とされている
●巡航ミサイル
・ 中国は射程1,500km以上の巡航ミサ
イル(DH-10(CJ-10))を保有
・ 弾道ミサイル戦力を補完し、我が国
を含むアジア太平洋地域を射程に収
める戦力となる可能性
・ さらに、巡航ミサイルを搭載可能な
中距離爆撃機(H-6)も百数十機保有
名 称
2010年に少量が生産され配備され
ている」(2011.7.19)
○2013年国防省報告書「DF-21Dを
含む中距離弾道ミサイルを配備し
ている」(2013.5.6)
○2015年国防省報告書「DF-21Dを
含む通常型の中距離弾道ミサイル
の配備を増やしている」(2015.5.8)
終末誘導
発射地点での軌道
初期誘導による弾着点
(ミサイル発射時の空母
の位置)
終末誘導なしでのミ
サイル弾着点
目標地点
(中間誘導段階空母 (現在の空母の位置)
の位置)
通常戦力による介入対抗戦力
~600km
・DF-15 短距離弾道ミサイル
・DF-11 短距離弾道ミサイル
○2015年9月3日、「抗日戦争勝利70
周年記念大会」の軍事パレードに
おいてDF-21Dを初展示(同パレー
ドにおいてDF-26も初展示)
巡航ミサイル DH-10(CJ-10)
第1列島線
第2列島線
外 観
~2000km
・DF-21D 対艦弾道ミサイル
200~300 基
配備数
・DF-21 準中距離弾道ミサイル
~3,300km
・DF-3 中距離弾道ミサイル
射 程 1,500~2,000km(陸上発射型) ・DH-10 巡航ミサイル
など
・H-6爆撃機+空中発射型巡航ミサイル
弾 頭
核、高性能爆薬、子弾
(出典:防衛白書、 Jane’s Strategic Weapon System、
米国防省「中華人民共和国の軍事・安全保障の進展に関する年次報告」(2016年版))
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