グローバルマーケットトピックス(GMT)9月5日号 (PDF

グローバル・マーケット・
トピックス
2016/
9/5
投資情報部
チーフ FX ストラテジスト
鈴木 健吾
シニアエコノミスト
宮川 憲央
9月利上げの決め手とはならず
~米国・雇用統計(2016年8月)と市場の反応
 8月の非農業部門雇用者数は前月比+15.1万人となり、市場予想を下回った。ただ、6月~8
月までの3ヵ月間の平均では+23.2万人と堅調なペースを維持している。
 8月の失業率は4.9%と7月から横ばいにとどまり、平均時給は前年同月比+2.4%と、7月から上
昇率が低下した。米国の労働市場は完全雇用に近づいているものの、賃金上昇率が高まる
動きは明確には確認されていない。
 今回の雇用統計は強弱まちまちの結果となったため、米連邦準備理事会(FRB)としても難し
い判断を迫られるとみられる。みずほ証券投資情報部では、現時点で9月利上げは排除でき
ないと考えているものの、今後、市場の織り込みが進まない場合は12月まで見送りとなろう。
 金融市場における今回の雇用統計の受け止めはまちまちの動きとなった。引き続き、9/20~
21のFOMCをにらみ、神経質な展開が続くとみられる。目先、FOMCにかけて米株や日本株
は高値圏での推移、ドル円は1ドル=103円~104円台を中心とした値動きを想定。
基調として、雇用は
堅調なペースで増加
8月の非農業部門雇用者数は前月比+15.1万人となり、市場予想(ブルームバー
グの集計では+18.0万人)を下回る結果となった。また、過去2ヵ月分の雇用者数は
合計0.1万人の下方修正となった(6月分は前月比+29.2万人から同+27.1万人に下
方修正の一方、7月分は同+25.5万人から同+27.5万人に上方修正)。この結果、6月
~8月までの3ヵ月間平均の雇用者の増加数は+23.2万人となり、基調としては堅調
なペースで雇用は増加している。
内訳では、雇用者数のうち、財生産部門は前月比▲2.4万人、民間サービス部門
は同+15.0万人、政府部門は同+2.5万人となった。業種別では製造業、建設業、鉱
業で雇用が減少した一方、教育・ヘルスケア、レジャー・接客、専門・企業向けサー
ビス、小売、金融・不動産・リース、運輸・倉庫等で増加した。なお、民間部門262業
種における前月比ベースでのディフュージョン・インデックス([雇用が増加した業種
の割合+前月比横ばいの業種の割合]/2)は58.0%と7月の62.4%から低下した。
8月の失業率は4.9%と7月から横ばいにとどまった。市場予想(4.8%)では低下が見
込まれていた。失業率の変化の内訳をみると、労働参加率(16歳以上人口に占める
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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グローバル・マーケット・トピックス
労働力人口の割合)が62.8%と7月と同水準、就業者数(家計調査ベース)も前月比
+9.7万人と小幅の伸びにとどまり、労働需給の改善は足踏みした。一方、広義の失
業率(失業者に加え、経済的理由によるパートタイマーや職探しを断念した人等を
加味)は9.7%と7月から横ばいにとどまる一方、経済的理由によるパートタイマーが
前月比+11.3万人となる等、雇用の質の改善でも足踏みがみられた。
8月は改善が足踏みしたものの、米国の労働市場は完全雇用(FOMC参加者が想
定する長期的な失業率の均衡水準は中央値で4.8%)の状態に近づいているという
状況に変わりはない。ただ、今後、労働市場の改善を受けて、職探しを再開する動
きが広がっていくとみられることから、労働参加率には上昇の余地がある。このた
め、労働市場の需給の緩みにも若干の解消の余地が残っているといえよう。
米雇用関連指標
(月次:2005/1~2016/8)
(1,000人)
600
(%)
11
400
10
200
9
0
8
▲ 200
7
▲ 400
6
▲ 600
5
非農業部門雇用者数・前月差(左目盛)
▲ 800
4
失業率(右目盛)
▲ 1,000
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
3
(年)
出所:米労働省のデータよりみずほ証券作成
米産業別雇用者数の推移
(万人)
雇用者数
16/06
16/07
16/08
前月差
非農業部門
民間
財生産
鉱業
建設業
製造業
民間サービス
卸売
小売
運輸・倉庫
公益
情報通信
金融・不動産・リース
専門・企業向けサービス
教育・ヘルスケア
レジャー・接客
その他サービス
政府部門
14,417
12,203
1,961
69
664
1,229
10,242
592
1,594
488
56
278
828
2,018
2,267
1,550
569
2,214
14,445
12,226
1,962
68
665
1,230
10,264
592
1,595
490
57
278
830
2,026
2,272
1,555
569
2,219
14,460
12,239
1,960
68
664
1,228
10,279
593
1,597
491
56
278
832
2,028
2,276
1,558
570
2,221
15.1
12.6
▲ 2.4
▲ 0.4
▲ 0.6
▲ 1.4
15.0
0.4
1.5
1.5
▲ 0.1
0.4
1.5
2.2
3.9
2.9
0.7
2.5
出所:米労働省のデータよりみずほ証券作成
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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グローバル・マーケット・トピックス
米労働参加率の推移
( 月次:2005/1~2016/8)
(%)
67
66
65
64
63
62
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
(年)
出所:米労働省のデータよりみずほ証券作成
賃金上昇率は 伸び
悩み
8月の時間当たり賃金(平均時給)は前月比+0.1%と市場予想(同+0.2%)を下
回った。前年同月比では+2.4%となり、7月(同+2.7%)から上昇率は低下した。
賃金上昇率は金融危機以前に比べて低い伸びにとどまっている。主に小売やレ
ジャー・接客等、低賃金の業種や職種において雇用が増加する傾向にあることに加
えて、労働生産性上昇率の低下、グローバル化やIT化等の影響もあり、構造的に
賃金が上昇しづらくなっている面はある。また、前述のように、現時点では労働市場
の需給の緩みに解消余地が残っているとみられるため、賃金上昇率が加速していく
には今しばらく時間を要する可能性がある。
ただ、労働参加率が上昇するなかで、雇用の増加が続いていけば、労働需給の
緩みも着実に解消に向かっていくため、緩やかながら賃金上昇率も徐々に高まって
いくとみている。なお、週平均労働時間は34.3時間と7月の34.4時間から減少した。
米失業率と賃金の推移
( 月次:2008/1~2016/8)
(%)
4.5
(%)
3
平均時給・前年同月比(左目盛)
4.0
4
失業率(右逆目盛)
3.5
5
3.0
6
2.5
7
2.0
8
1.5
9
1.0
10
0.5
11
08
09
10
11
12
13
14
15
16
(年)
出所:米労働省のデータよりみずほ証券作成
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
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グローバル・マーケット・トピックス
個人消費の増加と労
働市場の改善を軸と
する米国経済の好循
環は続く見通し
以上のように、8月の雇用統計は賃金上昇ペースが鈍る一方、雇用者数は市場予
想こそ下回ったものの、3ヵ月平均では23.2万人と堅調なペースを維持する等、強
弱まちまちの結果となった。また、失業率は横ばいにとどまったものの、雇用の基調
的な増加ペースは米国の失業率を安定化させるための水準*を上回っており、米国
の労働市場が完全雇用に近づいているという見方に変化はない。なお、今年1月~
8月の雇用者の増加数は月平均+18.2万人と昨年1年間の同+22.9万人から鈍化は
しているものの、完全雇用に近づいているのであれば、失業率を安定的に保つ
ペースとしては十分ともいえる。
*たとえば、フィッシャー米連邦準備理事会(FRB)副議長は「失業率を安定的に保つのに必要な雇
用の増加ペースは7.5万~15万人程度」、ダドリー・ニューヨーク連銀総裁は「月間5万~10万人の
雇用増があれば失業率は安定する」と述べている。
今後については、労働市場が完全雇用の状態に近づいているということは、労働
参加率の持続的な上昇、もしくは潜在成長率を上回る成長が続かない限り、雇用の
増加ペースは低下していく。一方、労働需給のひっ迫にともなって、賃金上昇率は
高まってくると考えられる。このため、雇用の増加ペースが低下していくとしても、賃
金の伸びが補う形で所得の増加が続くとみられる。こうした所得の増加が個人消費
を中心とする米国経済の緩やかな成長を支えるとともに、それがさらなる労働市場
の改善につながっていくという、米国経済の好循環は今後も続くとみている。
市場の織り込みが進
まなければ、9月利
上げは見送りか
ここ最近、FRB当局者から利上げに前向きな発言が続いており、9月利上げの可
能性も徐々に高まってきていた。今回の雇用統計は全体として労働市場の改善が
続いていることを示すため、利上げの方向性に変化はなく、年内利上げの可能性を
残すものといえる。ただ、賃金上昇率の低下等、早期の利上げを迫るほど強くはな
かったため、9月利上げの決め手となるような内容ではなかった。
FRBとしては難しい判断を迫られることになろう。前述のように、基調として雇用の
増加ペースは堅調と評価する可能性がある一方で、米連邦公開市場委員会
(FOMC)のなかには、利上げはインフレ率が上向くまで待つべきと主張する参加者
もいるため、もう少しデータを見極めるべきと主張する可能性もあろう。
みずほ証券投資情報部では、現時点で9月利上げの可能性は排除できないと考
えている。ただ、金融市場で利上げを織り込む動きは進んでおらず、市場の期待が
低いなかでの利上げは金融市場のボラティリティを高めることになりかねない。この
ため、仮にFRBが真剣に9月の利上げを真剣に検討しているのであれば、今回の雇
用統計を受けても、9月利上げがあり得ることを市場に伝えていくことになろう。今
後、当局者からこうした情報発信が出てくるかどうか注視しておきたい。
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
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2016/9/5
グローバル・マーケット・トピックス
金融市場の反応は
まちまち
今回の雇用統計を受けた金融市場の反応は興味深いものとなった。みずほ証券
投資情報部では9/2のFXデイリーレポートで、「非農業部門雇用者数が前月比+15
万人以上ならば9月の利上げの可能性が排除できず、逆に+15万人を下回るようだ
と利上げ見送りの見方が強まる」としたが、結果は+15.1万人というまさに境目の数
字。強弱どちらともとれるが、平均時給の鈍化等から弱い内容とみるならば「9月利
上げ見送り」。一方、基調的な雇用増加ペース等から強い内容と評価し、史上最高
値水準にある株価や低水準の金利なども含めて考えれば「9月利上げは排除できな
い」状況。実際、フェデラルファンド(FF)金利先物からブルームバーグが算出する
利上げ確率は、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では32.0%、12月のFOMC
では59.0%と、雇用統計発表前の9/1から若干の低下にとどまった。
米株式市場は、利上げ観測の後退から上昇する展開。欧州やカナダ、南米大陸
の株式市場等も総じて上昇する動きとなった。同様の受け止めから、原油等、商品
市場も上昇した。為替市場は、このような世界的な株価指数や商品市場の上昇を
受けてリスクオンの反応となり、新興国通貨が上昇し先進国通貨が売られる展開。
ただ、先進国通貨のなかでは、ドルが円やユーロに対して上昇しており「早期利上
げの可能性を排除しきれない」といった反応。米債券市場で金利は上昇(債券売
り)。利上げ実施を織り込む方向の動き。ただ、短期債よりも長期債での金利上昇が
目立っており、「9月の早期利上げ」というよりも「年内の利上げ」といった印象。
このように各市場の反応はまちまちで、利上げに対する消化の方向もそれぞれと
いった印象。引き続き9/20~21に予定されるFOMCでの結果をにらみ、神経質な展
開が続くとみられる。目先、FOMCにかけて米株や日本株は高値圏での推移、ドル
円は1ドル=103円~104円台を中心とした値動きを想定している。
FF金利先物から算出されるFOMCでの利上げの確率
(%)
80
9/1時点(雇用統計発表前日)
70
9/2時点(雇用統計発表後)
59.0
60
50
40
36.4
32.0
30
20
10
0
16/9
16/11
16/12
(年/月)
(注) 各時点のFOMCで0.50%~0.75%以上への利上げを行う確率、FF金利先物を用いてブルームバーグが算出
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
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2016/9/5
金融商品取引法に係る重要事項
グローバル・マーケット・トピックス
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リスク要因として株価変動リスクと発行者の信用リスクがあります。株価の下落や発行者の信用状況の悪化
等により、投資元本を割り込むことがあり、損失を被ることがあります。
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○国内株式の売買取引には、約定代金に対して最大 1.134%(税込み)、最低 2,700 円(税込み)の委託手数料
をご負担いただきます。ただし、売却時に限り、約定代金が 2,700 円未満の場合には、約定代金に 97.2%(税
込み)を乗じた金額を委託手数料としてご負担いただきます。
○株式を募集等により購入する場合は、購入対価のみをお支払いいただきます。
○保護預かり口座管理料は無料です。
■外国株式のリスク
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む)、国や地域の経済情勢等のカントリーリスクがあります。それぞれの状況悪化等により投資元本を割り込
むことがあり、損失を被ることがあります。
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○各国の取引ルールの違いにより、取引開始前にご注文されても、始値で約定されない場合や、ご注文内容が
当該証券の高値、安値の範囲であっても約定されない場合があります。
○外国株式において有償増資等が行われた場合は、外国証券取引口座約款の内容に基づき、原則権利を売
却してお客さまの口座に売却代金を支払うことになります。ただし、権利売却市場が存在しない場合や売却市
場があっても当該証券の流動性が低い場合等は、権利売却ができないことがあります。また、権利が発生し
ても本邦投資家が取り扱いできないことがあります。
○外国株式の銘柄(国内取引所上場銘柄および国内非上場公募銘柄等を除く)については、わが国の金融商
品取引法に基づいた発行者開示は行われていません。
■外国株式の手数料等諸費用について
○外国委託取引
国内取次手数料と現地でかかる手数料および諸費用の両方が必要となります。現地でかかる手数料および
諸費用の額は金融商品取引所によって異なりますので、その金額をあらかじめ記載することはできません。
詳細は当社の担当者までお問い合わせください。国内取次手数料は、約定代金 30 万円超の場合、約定代金
に対して最大 1.08%+2,700 円(税込み)、約定代金 55,000 円超 30 万円以下の場合、一律 5,940 円(税込み)、
約定代金 55,000 円以下の場合、約定代金に対して一律 10.8%(税込み)の手数料をご負担いただきます。
○国内店頭(仕切り)取引
お客さまの購入単価および売却単価を当社が提示します。単価には手数料相当額が含まれていますので別
途手数料および諸費用はかかりません。
○国内委託取引
当社の国内株式手数料に準じます。約定代金に対して最大 1.134%(税込み)、最低 2,700 円(税込み)の委託
手数料をご負担いただきます。ただし、売却時に限り、約定代金が 2,700 円未満の場合には、約定代金に
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定した為替レートによるものとします。
商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面や目論見書または
お客さま向け資料等をよくお読みください。
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加入協会 : 日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、
一般社団法人第二種金融商品取引業協会
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