9月9日号 エネルギー改革進展でメキシコペソに見直しも

2016/
為替トピックス
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投資情報部
FX ストラテジスト
由井 謙二
エネルギー改革進展でメキシコペソに見直しも

メキシコは、原油生産量の減退に歯止めをかけるべく、エネルギー政策において国有化か
ら開放路線へ

2015年7月より開始された石油鉱区の民間開放入札は着実に進展。今年12月に予定される
入札は大型案件であり、石油メジャーの参加が見込まれる

民間開放プロセスが進展し、原油生産量が回復すれば、国際競争力や潜在成長率が向上
する可能性に加え、対内直接投資の流入拡大期待も高まる公算

トランプ・リスク等が意識され、購買力平価から大幅下方かい離したメキシコペソの見直しに
つながるか、今後の行方が注目される
原油生産量減退に歯
止めをかけるべく、エ
ネルギー政策を国有
化から開放路線へ
メキシコでは、2012年12月に就任したペニャニエト大統領のもと、政権が公約として
最優先課題に掲げるエネルギー改革が着実に進展している。13年12月には、エネ
ルギー改革への道をひらく憲法改正が行われ、過去75年間にわたる石油資源の国
有化が終了。石油・ガスの採鉱・開発・生産等への外資を含む民間参入が解禁さ
れ、15年7月より石油鉱区の民間開放入札が実施されている。
そもそも、ペニャ政権がエネルギー改革を進める背景としては、メキシコの原油生産
量の減退に歯止めがかからないことへの危機感がある。メキシコでは、1958年に国
1 日当たりの原油生産量の推移
(1万バレル/日)
450
1 日当たりの原油生産量の推移
(年次:2005~2015)
カナダ
メキシコ
400
(年次:2005~2015)
(1万バレル/日)
1,400
米国
サウジアラビア
ロシア
1,200
350
1,000
300
800
600
250
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(年)
出所:BP「世界エネルギー統計2016年6月」よりみずほ証券作成
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出所:BP「世界エネルギー統計2016年6月」よりみずほ証券作成
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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為替トピックス
が地下資源の所有・開発権を有し、外資の参入を認めない石油法(憲法)が制定さ
れ、国営石油会社ペメックスによる国家独占のもとで開発・生産が行われてきた。し
かし、①ペメックスの収益の約6割が国庫納付されている、②独占による競争欠如が
招く非効率な経営運営、等により、同社の財務内容が悪化。十分な新規投資が行
えないなか、1970年代に発見された大型油田の生産量が減退し、原油生産量は05
年の日量377万バレルから15年には同259万バレルへと、10年間で30%以上も落ち
込んだ。莫大な原油埋蔵量を誇るメキシコ湾深海域は、開発難度が高く、高い技術
力や資金力が必要とされている。このためペメックスでは十分な開発ができないとい
う状況下、政府はエネルギー政策を国有化から開放路線へと舵を切った。
入札は着実に進展。
今後の 大型案件に
は石油メジャーの参
加が見込まれる
メキシコの石油鉱区・民間開放入札の第1弾は、通称「ラウンドワン」と呼ばれる。
2015年7月に実施されたラウンドワン第1次入札は、小さい鉱区が多く、政府(国家)
の取り分が大きい等、条件が厳しいこともあって、入札14鉱区に対して落札が2鉱区
にとどまる等、低調な結果となった。しかし、15年12月に実施された第3回入札で
は、一定のロイヤルティを政府に支払えば、企業側は採掘した炭化水素資源の所
有権を得ることができるという「ライセンス契約方式」を導入したこともあり、入札25鉱
区のすべてが落札され、市場からは成功と評された。
今年12月に予定される第4次入札は、メキシコ湾深海域の大水深鉱区と埋蔵量がこ
れまでの入札対象鉱区に比べてケタ違いの大型案件でもあり、欧米資源メジャーや
日本企業の参加が見込まれている。また、2017年には「ラウンドツー」の入札が順次
実施される予定である。これらの民間開放プロセスが進展し、原油等の生産量が回
復すれば、メキシコ経済は国際競争力や潜在成長率が向上する可能性に加え、対
内直接投資の流入拡大期待も高まるとみられる。
メキシコの石油鉱区・民間開放入札の第1弾(ラウンドワン)入札結果
日付
入札鉱区数 落札鉱区数
場所
第1次入札
第2次入札
2015/7/15
2015/9/30
14
5
2
3
メキシコ湾浅水域
メキシコ湾浅水域
第3次入札
2015/12/15
25
25
陸上油田
第4次入札
16年12月予定
10
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メキシコ湾深海域
内容
小さい鉱区が多く、政府の取り分が4割台と大きく低調
政府取り分を3割台に抑え成功。日量9万バレル相当
ライセンス契約方式。日量7.7万バレル相当。成功。
25年間で11億ドル投資見込み
ライセンス契約方式。50年間で最大440億ドル投資、深
海油田で技術力や資金力が必要に
出所:ジェトロ資料等よりみずほ証券作成
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性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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為替トピックス
エネルギー改革の進
展がメキシコペソの
見直しにつながる可
能性
メキシコペソの対ドル相場は軟調な展開。メキシコ中銀がインフレ目標を導入した
2001年を基準とした購買力平価でみると、ペソはおおむね米国とのインフレ格差に
そって緩やかな下落基調をたどってきたが、14年以降は、原油安、米利上げ、トラン
プ・リスク等から購買力平価との下方かい離を広げた。ただ、米大統領選という不透
明感の後退によって、同国のエネルギー改革の着実な進展が、中長期的なペソの
見直し買いにつながる可能性があり、注目される。
メキシコペソ円の推移
ドルメキシコペソと購買力平価
(1ドル=ペソ)
6
(1ペソ=円)
(四半期:2001/1~2016/6)
13
ペソ高
ペソ安
11
10
ペソ安
10
12
9
14
8
18
ペソ高
メキシコペソ円
52週移動平均線
52週移動平均線±15%
12
8
16
(週次:2007/1/5~2016/9/8)
7
ドルメキシコペソ(逆目盛)
購買力平価(逆目盛)
購買力平価±20%かい離(逆目盛)
6
5
20
4
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(注)購買力平価は消費者物価指数ベース、2001年基準
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
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出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
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為替トピックス
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