2016年8月号(PDF/561KB)

JICA モンゴル事務所ニュースレター 2016 年 8 月号
トップニュース
「人材育成奨学計画(JDS)」第 15 期留学生の日本への旅立ち
着物を楽しむ JDS 留学生
無償資金協力「人材育成奨学計画(JDS)」では、モンゴルの行政機関職員を主な対象に、
日本の大学院修士課程への留学支援を行っています。2016 年度は計 18 名が8月に慶応
大学、九州大学、国際大学等へ飛び立ちました。留学に先立ちウランバートルで実施された
事前オリエンテーションでは、モンゴルの財政再建をテーマとするディベートで議論が白熱す
る等、問題意識が高く、日本留学を非常に楽しみにしている様子でした。また、壮行会では、
日本を代表するもの(相撲、松たかこ、NARUTO、宇田多ヒカル等)に扮し、歌と演技をまじ
えたパフォーマンスを披露し、来場者から好評を得る等、18名の良い雰囲気と団結力の高さ
が垣間見られました。日本での2年間で無事修士号を取得し、モンゴルの発展および良好な
日・モ関係の構築に資することが期待されます。
政治・経済動向
政策金利を 4.5%引き上げ、15%に設定
モンゴル中央銀行
モンゴルの通貨トゥグルク(MNT)は、鉱物資源価格の低迷や中国経済の減速等の影響か
ら 1 米ドル 2,000 前後の史上最安値水準が続いていましたが、チョイジルスレン新大蔵大
臣がモンゴルの実体経済、財政が危機的状況にあるとの声明を発表し、債務返済能力への
懸念等、モンゴル経済見通しへの不透明感が広がり、7 月末から対米ドルに対して 8%以上
急落、8 月 17 日には 1 米ドル 2,251MNT を記録しました。これを受けて、8 月 18 日、モン
ゴル中央銀行は、通貨防衛と中期的な経済安定性の確保するためトゥグルク建て資産の利
回り向上を目的として、従来の政策金利 10.5%を 4.5%引き上げ 15%とすることを発表し
ましたが、金利引き上げは更なる景気後退に繋がるリスクも指摘されています。8 月 25 日か
らは臨時国会が開会し、2016 年予算見直し・削減を含む緊縮財政方策について議論され
る等、6 月の総選挙を受けて政権与党となった人民党の舵取りが注目されます。
プロジェクトの動き
北東アジア都市会合で 新田専門家が自動車環境対策についてプレゼンを実施
北東アジア都市会合の様子
8 月 3~5 日にウランバートル市にて「北東アジア都市会合」が開催されました。日本、モン
ゴル、韓国、北朝鮮、中国、ロシアの自治体が参加し、会合のテーマ「グリーンエネルギー」
に関連し、各自治体の取組みやモンゴルにおける援助ドナーの支援が紹介されました。実施
中の技プロ「ウランバートル市大気汚染対策能力強化プロジェクト・フェーズ 2」からは、新田
専門家がウランバートル市における自動車環境対策についてプレゼンテーションしました。グ
リーンエネルギーに関連する企業等の展示会では、中小企業海外展開支援(案件化調査)
「モンゴル国ウランバートル市のディーゼル路線バスの DPF による黒煙低減計画に関する
案件化調査」を実施している株式会社コモテックが DPF 装置のデモンストレーションを行
い、バス会社を中心に多くの見学者が訪れました。
モンゴル・日本人材開発センター協力 スタディツアーの実施
モンゴルの若者との交流会の様子
モンゴル・日本人材開発センターでは、日本の大手旅行会社に協力し、2016 年からスタデ
ィツアー「モンゴルの”今”を知り、日本の文化を伝えよう 6 日間」を実施しています。大草原、
馬、ゲルだけでなく、今のモンゴルのいろいろな姿を紹介しようと企画されたもので、ツアー
第 1 弾 7 名が 8 月 15~20 日に当地を訪問されました。大草原ツアーのほか、同センター
で 2 日間、モンゴルやウランバートルの概要説明、旅のためのモンゴル語講座、若者との交
流を実施し、加えて日本の国際協力の現場訪問も行い、最後に「モンゴル常識検定」が行わ
れました。参加者からは「他のツアーでは知ることのできない、今のモンゴルの状況を知るこ
とができ、とても面白かった。またモンゴルを訪れたい」など好評を得ました。ツアー第 2 弾
は 9 月 5~10 日に行われます。なお、同センターのプログラムはモンゴル在住の方も参加
可能です。ご関心あれば担当の大川専門家までご連絡ください。
草の根技術協力「先天性股関節脱臼ハイリスク児の育児指導」が文科省助成金での活動継続が決定
札幌市立大学がモンゴル国立母子保健センター子ども病院を C/P 機関として 2014 年から
2016 年まで実施していた草の根技協力「先天性股関節脱臼ハイリスク児の育児指導」を振
り返る現地セミナーが 8 月 16・19 日の 2 日間に亘ってウランバートルで開かれました。同事
業は、出生後のエコー検査で特定された先天性股関節脱臼(DDH)のハイリスク群に対し、
乳児の股関節を圧迫するようなモンゴルの伝統的な着衣方法を改めるなどの適切な育児指
導を行い、DDH 発症率の低減を図るもので、両親に対する育児指導や生後 1 ヶ月のエコ
ー再検査の実施のみならず、DDH の診断と治療が明記された国の看護ガイドラインが策定
されるなど高い成果を挙げました。同セミナーでは、同大学が同事業終了後も文科省の研究
助成金を用いて活動継続することが表明され、モ側関係者から高い期待が寄せられました。
セミナー開催時の様子
草の根技術協力「日本伝統医療(柔道整復術)指導者育成・普及プロジェクト」が有終の美を飾る
日本柔道整復師会が 2011 年から実施していた草の根技協「日本伝統医療(柔道整復術)
指導者育成・普及プロジェクト」の成果報告会が 8 月ウランバートル市内の国立医科大学に
おいて行われ、外務省 NGO 連携無償(2006-2009)、JICA 草の根支援型(2009-2011)
を含めた約 10 年間のモンゴルにおける活動の成果が報告されました。同団体は骨折・脱臼
等の外傷が多い一方、特に地方での医療インフラが不十分なモンゴルにおいて、現地で入
手可能な器材を用いて徒手的に治療を行う柔道整復術を普及・展開し、外傷後の後遺症で
悩む患者を減らすことを目的として活動してきました。また、本事業終了に際し、2016 年 9
月から柔道整復術に係る学科が医科大学に新設され、同団体の関係者が客員教授として
任命されるなど、同事業の更なる成果拡大が期待されます。
成果報告会の様子
その他の事業の動き等
・8 月 1 日に山下長期専門家(社会保険実施能力強化プロジェクト)が着任しました。
・8 月 23 日に照屋長期専門家(ウランバートル市における障害者の社会参加促進プロジェクト)が着任しました。
ボランティア事業の動き
ボランティア活動紹介 (専門職種が誕生する時 ~作業療法士~)
病院での作業療法の様子(左:松尾 JOCV)
モンゴルに作業療法士のボランティア派遣が始まったのは 2004 年。それ以降、ウランバー
トルを中心に派遣が続いています。モンゴルでは 2014 年から自国での作業療法士養成が
始まったばかりです。作業療法協会が設立され、名称も Ахуйн засал(生活の療法)から
Хөдөлмөр засал(作業の療法)に変更になりましたが、資格制度や法律はまだ整っていま
せん。松尾 JOCV(H26-3 次隊・作業療法士/ドルノド保健局)は、配属先だけでなく関係
機関や関係者とのつながりを持ち、「まずは作業療法とは何か、を知ってもらいたい。」、「障
害があっても自分らしく生きる方法を助けるための職業だということ伝えたい」、「作業療法の
認知度を高めることは、自国で養成された作業療法士が働ける職場が増えることにつなが
る」、という思いで、日々啓発活動を行っています。
研修・帰国研修員同窓会
早朝の会話
講演する Demberel 教授(前方左手)
最近モンゴルでは「早朝の会話」という、平日朝6、7 時頃に集まり、知識を深めるために参
加者同士で意見交換を行うことが流行しています。帰国研修員同窓会も日本とモンゴルの
架け橋となっている人物を招待し、「早朝の会話」を行っています。初回は 6 月に行われ、日
モ交流を 40 年間にわたり支えてきた Demberel 教授を招待し、日モ交流の歴史等の話を
してもらいました。Demberel 教授は人文大学で言語学を研究する傍らモンゴル日本関係促
進協会の理事長も務めています。同氏が作成した日モ辞書は “Demberel 辞書”との愛称で
親しまれ、日本語研究でも著名な方です。今後、日本研究者の Tumurbaatar 氏、日本式学
校の新モンゴル学校の Naranbayar 学長をはじめ各界の著名人等を「早朝の会話」に招待
し、帰国研修員等の知識を深めながら、より良い日モ交流のあり方を議論する予定です。
事務所ナショナルスタッフが日本語で執筆!
コラム
~モンゴルの文化・生活事情紹介~
「子供が生まれるまでの習慣」
今号では、モンゴルの女性が妊娠してから子供に名前を付けるまでの習慣について紹介します。モンゴル人は妊
娠した時から歳を数え始め、また、元気で健康な子供が産まれるまで妊婦さんが「してはいけない」とされる行
為がたくさんあります。例えば、編み物をしてはいけない(赤ちゃんのへその緒が絡む)、出産前に赤ちゃんに名
付けたり、衣服などを用意してはいけないなど。名付ける時は、「赤ちゃんの第2の母」と呼ばれ尊敬されるお
産に関わった助産師、親戚の中で最も年配の方、お坊さんなどに依頼することが多いです。依頼された方は、自
分で良い意味を表すと思う名前を付けるか、または候補となる名前を紙に書き、お米を入れた器の中から引き出
して決めます。そして、男子の場合は右耳に、女子の場合は左耳に三回言い聞かせてから、皆に公表するので
す。私は現在妊娠中ですが、モンゴルの習慣に倣って名前も服も準備していません。(ボヤナ所員)
独立行政法人 国際協力機構 モンゴル事務所
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