職員の自主性で地域貢献活動を

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職員の自主性で地域貢献活動を
樋脇建治
鹿児島県JAあいら 代表理事組合長
鹿児島市に次ぐ人口を抱え、農村地帯ながら都市型JA
的な性格を持つJAあいら。支店を中心とした地域貢献
活動に力を入れ、JAの存在感を高めています。
◆和牛の一貫経営を軸に
域貢献活動が重要だと考えています。
――空港や高速道路ができ、地域の農業とJ
地域の農業は、合併時にあった養豚や養鶏
Aは変わりましたか。
はほとんどなくなり、かつての主力・お茶は価
JAあいらは平成 4 年に合併してスタートし
格の低迷のため、24億~25億円あったJAの
ました。その後、施設の統廃合を繰り返しな
販売高が半分にまで落ち込みました。
がら、47支店・支所を半分以下にして、組合
いま元気があるのは和牛の繁殖です。もと
員には迷惑をかけてきました。この間、正組合
もと繁殖牛地帯で、管内で年間約8,800頭の
員が減って准組合員が増えました。
子牛生産があります。また、JAあいらは肥
いまは、准組合員がいなくてはJAの経営
育牛センターを持っています。1,200頭の飼育
は成り立たないというのが実態です。農業だ
能力があり、2 年間育てて年間約600頭を出
けではなく、准組合員の利用による信用・共
荷しています。
済事業に頼らざるを得ません。それだけに地
この肥育牛センターは、和牛の産地づくり
に大きな役割を果たしています。繁殖経営に
あい ら
購入する子牛は全て地元の姶 良 市場からで
す。子牛市場もJAが運営しており、地元の牛
は地元で育てる繁殖・肥育の地域内一貫経営
のためです。姶良の子牛は飼いやすく、肉は
上物率が高いので評判がよく、今年の 5 月に
は、競りでは1 頭平均86万円を出し、初めて
全国一になりました。
繁殖牛の将来性については、環太平洋連携
JAあいら本所
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月刊 JA
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協定(TPP)による先行きの不安はあります
ひわき・けんじ
昭 和57年 国 分 市 農 協 理 事、 平 成
4年 J A あ い ら 理 事、 同17年 同
代 表 理 事 常 務、 同23年 同 代 表 理
事組合長、あいら共同株式会社代
表取締役社長、JA鹿児島県中央
会・各連合会理事に就任。
撮影・JAあいら総務部くらし広報課 重森 宏
が、青年部を中心に和牛の同好会が活躍して
生産面では集落営農づくりを進めていま
おり期待しています。
す。JAも出資をし支援していますが、今後
生産者の高齢化などで一時頭数が減りまし
さらに支援を拡大する方針です。そうしない
たが、価格がよくなったことから高齢者の生き
と農業者の高齢化で農業も農地も守れなく
がいとしても見直され、いまは頭数の減少を
なってしまいます。県内でも曽於や大隅地区
防いでいます。200頭規模の大型経営もあり、
は野菜がありますが、姶良では農業の一等地
畜産クラスター事業も導入し、これからもJA
だったところが空港になってしまいました。働
として力を入れていく考えです。
き先ができたことから、ほとんどが兼業農
そ
お
家、それも第 2 種兼業農家になっています。
――他の作目はいかがですか。また、集落営
農や法人などの生産組織づくりはどうですか。
◆全支店で「支店便り」
米は大変です。ピーク時20億円あった販売
――今後、どのようなJAを目指しますか。
高が、今は 5 億円にまで減りました。野菜は
JAあいらは都市型JAといってもいいの
量が少ない中で、有機栽培農産物の産直や A
ではと思っています。霧島市の人口は13万人
コープ、スーパーへの出荷など少しずつ新し
で、県内では鹿児島市に次ぎ、姶良市も 8 万
い芽が出ています。
人います。そのうちJAの組合員は2 万3,000
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JAトップインタビュー JAあいら
一貫経営の拠点、肥育牛センター
JAの活動を知ってもらうための小冊子
人です。それも准組合員が 6 割近くを占めま
農協改革で政府は准組合員の利用を制限す
す。従って職員には、組合員とのつながりを強
ると言いますが、JA以外に誰が地域のお年
くし、地域貢献活動を積極的に行うよう働き
寄りの生活を支援するのでしょうか。各支店
かけています。
ではJAの女性部がお弁当を届けたり、訪問
社会に貢献できない組織・企業は、地域に
活動をしたりしています。足を運ぶだけでも
存在価値はないと思っています。組合員や地
喜んでもらえるのです。
域の人が何をJAに求めているのかを知るこ
具体的な活動は実に多様です。地域の秋祭
とが大事です。そこで「届ける安心 広がる
り、小中学生の農作業体験などのほか、高齢
笑顔 生まれる信頼」の理念のもと、職員は
者訪問や弁当作り、ユニークなところではハ
臨時も含め全職員による一斉全戸訪問活動を
ロウィーンカボチャのコンテスト、和服姿の女
毎月1回、行っています。そこで活用している
性による「姫おごじょ城下町散策」などもあり
のは支店便りです。12の支店全てが発行し、
ます。これらは職員を中心に青年部や女性部
JAや地域の情報を伝えます。組合員とJA
員などが企画・実行します。
をつなぐ重要な道具です。そうした取り組み
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の成果は、すでに貯金などに、良い結果が出
◆自ら考える職員を育成
ています。さらに支店の職員の意欲が高まる
――職員の意欲を引き出す工夫とは。
ように毎年、支店便りのコンクールを行い金
私は「こうしなさい」とは言わないようにし
賞、銀賞を選んで表彰しています。
ています。それでは答えになり、
「分かりまし
また、JAの地域貢献活動を広く知ってもら
た」で終わります。必要なことを説明し、
「考
うため、2年前から小冊子を作っています。支
えてくれないか」でいいのです。職員が自分の
所ごとに 1 年の活動内容を紹介したもので、
職務の中で考え、それを行動に移すよう仕向
関係する機関や組織にも送っています。
けるのです。多様な地域貢献活動はそうして
こうした PR 活動を全国のJAで展開するの
生まれたものです。支店の活動を冊子や支店
はどうでしょうか。農協改革で准組合員を問
便りで PR すると、何もしない支店は、置いて
題にする前に、地域ではJAがこんなことを
きぼりを食らったようになり、いい意味で競争
やっているのだということをまず知ってもらう
心が生まれています。
ことが大事だと思います。
そして職員には、JA職員としてのエリート
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経清塾の様子
意識を持ってもらいたい。JAは地域で企業と
す。上に遠慮せず、どんどん発言する職員で
競争しているのです。負けないという意識が
あってほしい。そして職員は経営者意識を持っ
欲しい。そこでJA独自に4 年前から経清塾を
て、自分の頭で考えてもらいたい。
開講しています。次代を担う人材、JAのリー
35年間、合併前から役員としてJAに関
ダーづくりを目指すものです。県域には鷹山
わってきましたが、職員と違うのは、私が園芸
塾がありますが、1年に1人か 2 人の参加では
農家の経営者だったことです。しかし職員は
間に合いません。中堅職員対象に希望者を募
経営者ではありません。その違いは大きいと
り、1年間、月に1回程度の開講です。希望す
思いますが、少しでも経営者の気持ちを持つ
れば何回でも受けられます。内容は、講義も
職員になっていただきたい。さまざまな交渉
現場研修もあります。投資の成果は必ずある
ごとでも、遠慮することなく必要な要求はして
と期待しています。
いいと思っています。するとそれを実現する
さらに昨年、中堅職員15人ほどを選び「J
ためにはどうすればいいか、私も考えますが
Aあいらイノベーションプロジェクト」を立ち
職員も考えることで共通の意識が生まれるの
上げました。職員の満足度を高めるにはどう
だと思います。
変えたらいいのかということで生まれたプロ
JAトップインタビュー JAあいら
食農教育(永水小学校での煎茶づくり)
(写真は全てJAあいら提供)
ジェクトで、JAや仕事のあり方などについて
検討します。その成果は全役職員の決起大会
のときに発表します。職員が自らイノベーショ
ンしようというものです。素晴らしい意見が出
ています。ここで出た問題は経清塾にも投げ
◎JAあいらの概況
平成4年、霧島市、姶良市、湧水町2市1町の10JAが合
併し、
JAあいら発足。現在に至る。
鹿児島県
かけて、頭の柔らかい若手の意見も聞くよう
にしています。
◆職員も経営者意識を
――これからのJA職員づくりに必要なこと
は、何でしょうか。
JAあいら
▽組合員数
2万2,464人
(うち正組合員9,602人)
▽貯金残高
1,316億6,900万円
▽長期共済契約高
4,120億3,000万円
▽購買品取扱高
47億4,300万円
▽販売品取扱高
93億6,000万円
▽職員数
447人(うち正職員294人)
(平成27年度末)
職員の知恵を引き出すことだと思っていま
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