こちらから - 生命環境科学研究科

「モンゴル・ステップ・大草原」記念シンポジウムが開催されました
2016 年 8 月 28 日、ミュージアムパーク茨城県自然博物館にて現在開催されている第 66 回企画展「モ
ンゴル・ステップ・大草原~花と羊の遊牧民~」の関連イベントとして、企画展記念シンポジウム「ステ
ップ研究最前線」が行なわれました。
講師には、茨城県自然博物館の小幡和男研究員と本学生命環境系から中村徹名誉教授、田村憲司教授、
川田清和助教、本学 OB である鈴木康平・名古屋大学環境学研究科研究員が登壇し、ユーラシア大陸にお
けるステップ地帯の多様な植物、生き物、環境保全問題などについての講演をされました。
冒頭の挨拶では小幡和男研究員が「この企画展は 2003 年~2010 年にわたり行なわれた筑波大学のユ
ーラシアステップ研究調査隊に同行させていただいたことから企画実現したものです」と、ユーラシア
ステップでのフローラ(植物相)
、植生、バイオマス、土壌の幅広い分野におけるこの研究プロジェクト
の成果が展示に反映されていることについて紹介していただきました。
講演ではこの研究プロジェクトのリーダーを担ってこられた中村徹名誉教授が、
「なぜステップ研究が
必要なのか」と題して、1987 年の予備調査の段階からユーラシア大陸のステップ地帯の砂漠化が進行す
る状況を危惧していたこと、草原の荒廃はその国だけの問題ではないと一研究者として真摯に取り組ま
れてこられた経過を語られました。川田清和助教は、ユーラシアステップの荒廃の原因である過放牧に
ついて、現在までの調査についての検証結果を報告、鈴木康平研究員も調査で訪問した現地での遊牧民
との交流し、遊牧民の食生活に欠かせない乳搾りに奮闘した経験など笑い話を交えながら紹介してくれ
ました。田村憲司教授は、
「ステップの生態系を支える土壌」と題して土壌研究の観点から講演。草原の
土壌劣化は外貨獲得のためのカシミヤヤギの牧畜による過放牧、気候変動による干ばつによる草原の荒
廃により、日本でも黄砂現象が増加していることを挙げ草原の保全が地球規模の環境保護にも繋がると
説明。また、調査訪問する中で現地の方から「表土にスコップを挿すことは、私たちの肌をナイフで刺す
ことと同じことだと現地の国民は二千年、三千年と続く長い歴史の中で身をもって知っている。だから
こそ、草原の保全は、放牧民、国民、研究者が一致団結して行なっていくことが必要だ」と語り、筑波大
学が行なっているモンゴルのフスタイ国立公園における調査研究が貢献していることについて述べられ
ました。
この企画展は 9 月 19 日までミュージアムパーク茨城県自然博物館にて開催しております。
ミュージアムパーク茨城県自然博物館映像ホールにて行なわれたシンポジウムの様子