大阪工機 (3173・東証 1 部) 2016 年 9 月 8 日 超硬工具に特化した高度専門商社、海外展開で先行 ベーシックレポート 商品力と生産性向上に寄与する提案営業が最大の強み 売上の大半を占める切削工具が柱。製罐業界向け中心の耐摩工具が 続く。切削工具は工作機械に装着され、超高精度の金属加工を実現す ㈱アイフィスジャパン 高田 悟 る超硬工具で最適な工具選びが加工速度や精度に大きく影響する重要 な部材である。当社は主要かつ多彩なメーカーの商材に加え、国内に 類似品のない海外商材を自社ブランドとして販売 会 社 概 要 する。専門商社として圧倒的な品揃えをベースに 所 在 地 大阪府大阪市 ユーザーの生産性向上に寄与する提案営業を最大 代 表 者 柳川 重昌 の強みとする。さらに、即納体制構築、直販と卸 1950/5 の 2 部門体制によるシナジー、国内外ネットワー 設 立 年 月 資 本 金 350 百万円 17/3 期は一旦減速、切削工具や海外の伸び鈍化を想定 (2016/6/30 現在) 上 場 日 U R L 2012/3/9 16/3 期は前期比 15.5%営業増益で着地。17/3 期は同 5.5%営業増益 と成長鈍化を見込む。円高や新興国景気低迷など外部環境悪化の中で http://www.osk-k.co.jp/ 業 クの充実を強みに着実に成長を図ってきた。 種 卸売業 主力の切削工具事業や海外事業の増収率の鈍化を想定し、テクニカル センター設立や海外を中心とした陣容強化など将来へ先行費用の増加 を見込んだことによる。鈍化見込みとはいえ、切削工具事業では新規 主 要 指 標 2016/9/7 現 在 株 価 699 円 945 円 (1/4) 598 円 (2/12) 年初来高値 年初来安値 発行済株式数 6,868,840 株 売 買 単 位 100 株 時 価 総 額 4,801 百万円 予 想 配 当 21.0 円 ( 会 社 予 想 ) E P S ( ア ナ リ ス ト ) 実 績 業 P B R 績 動 は飲料容器メーカー向け販売の底入れ反発を想定、そして、海外は北 中米で拡販を見込み、確り増収を図り営業過去最高益更新を目指す。 1Q は大幅減益、今期は成長減速も来期は再加速を見込む 1Q(4-6 月)は前年同期比 58.2%営業減益となり、17/3 期は大幅減 益で発進した。切削工具販売で前期末好調の反動があり、加えて、中 国の回復遅れや先行費用増から海外事業が悪化したことによる。上期 (4-9 月)が減益計画から悪化は想定されていたとはいえ、熊本地震や 軽燃費不正問題の影響もあり想定以上に悪化したもよう。筆者は円高 が想定以上に進む中、1Q の遅れの挽回は厳しいと見て当社計画を下回 61.88 円 る 17/3 期着地を予想。18/3 期は営業体制強化が進む切削工具の国内シ 1.11 倍 ェア拡大と競合に先行する海外の販売拡大を見込み成長加速を予想。 売上高 百万円 向 開拓や有力販売店囲い込みを中心にシェア向上を図り、耐摩工具事業 前期比 % 営業利益 百万円 前期比 % 経常利益 百万円 前期比 % 当期純利益 百万円 前期比 % EPS 円 績 21,518 8.5 773 15.5 757 6.2 389 1.9 56.76 想 (2016 年 8 月発表) 23,015 7.0 816 5.5 797 5.3 464 19.2 67.64 ア ナ リス ト 予想 22,415 4.2 790 2.2 770 1.7 425 9.3 61.88 2 0 1 8 / 3 ア ナ リス ト 予想 24,450 9.1 980 24.1 980 27.3 570 34.1 82.99 2016/3 実 会 2017/3 社 予 (注)16/3 期より「在外子会社の収益及び費用の換算方法の変更」を行ったため 15/3 期は遡及修正後の数値を記載した。 アナリストレポート・プラットフォーム 1 えんけつ 会 社 会 社 概 概 要 要 会社概要 ・切削工具を核とした高度専門商社。他に耐摩工具、光製品を取扱う。 ・自動車部品加工メーカー向け比重が高く、電機電子メーカーが続く。 ・切削工具世界市場のシェア 6 割をカバーする国内外の主要、有力かつ 多彩な切削工具メーカーを仕入先とする。 ・国内外の商材を厳選し、ユーザーニーズに合致した商材を豊富に揃える。 ・日系メーカーの海外進出に伴い海外ネットワーク強化を推進する。 経 営 者 経営者 柳川 重昌 1969 年 4 月、大阪工機(株)入社、1985 年 4 月、取締役営業部長、 1994 年 3 月専務取締役を経て 2003 年 4 月、代表取締役社長就任。 設 立 経 緯 設立経緯 1945 年、故林治平氏による個人商店「中央機械工具商会」として創業。 終戦直後の当時は軍から機械設備等の払下げがあり、これらを買い取り市 場で販売することを主な事業とした。その後、切削工具は消耗品であるこ とに加え、戦後の復興に向け製造業で需要を大きく見込めたことから、取 り扱いの中心になって行った。1950 年に資本金 45 万円にて現在の当社 会社組織の基礎となる大阪工具(株)を設立。1954 年に、当時はハイス (高速度鋼 high-speed steel の略語)が国内の切削工具の主流であっ たが、今後はドイツで開発された超硬工具が切削工具の主流になって行 くと考え、住友電気工業(5802)の超硬工具「イゲタロイ」の特約店とし て、これからの商材と考えられた超硬工具の販売に乗り出した。以降、 超硬工具販売に注力することにより他の機械工具商と差別化を図り、現 在の当社事業の基礎を築いた。 企 業 理 念 企業理念 1950 年の設立以来、顧客の生産性向上に寄与することで社会の発展に 寄与することを基本方針に掲げる。日本の中核産業であるものづくり産 業の、その根幹に関わる切削工具と耐摩工具の販売に特化することで、 もの作り産業の発展に寄与してきたとの自負のもと、切削工具と耐摩工 具にこだわりを持ち、提案営業(顧客に潜在する問題点を見つけ出し、 当社で提供する商品とその使い方の提案により解決策を提示するスタイ ル)の技術を磨き、営業の質を高め、高度専門商社として、ものづくり 産業の生産性の向上を通じて社会に貢献して行くことを経営の基本理念 とする。 アナリストレポート・プラットフォーム 2 会 沿 社 概 要 革 沿革(図表 1) 1950 年 5月 切削工具販売を目的として、大阪工具(株)を設立 1954 年 10 月 1978 年 4月 1988 年 11 月 1991 年 4月 九州営業所を開設(現 福岡支店) 1995 年 9月 中国地方における販売力強化のため、山崎兄弟商会 現住所に本社を移転し、同時に現社名に改称 東京営業所開設(現 東京支社) 名古屋営業所開設(現 名古屋支社) (株) (広島市西区)を株式取得により子会社化 12 月 広島営業所開設(現 広島支店) 2002 年 10 月 タイに連結子会社 DAIKOH (THAILAND) CO.,LTD 設立 2003 年 7月 オンラインシステム「Cominix On-Line」による販売(受 注、在庫管理、手配、出荷業務の一括処理)を開始 2005 年 8月 経営効率化のため山崎兄弟商会(株)を吸収合併 3月 関東地方における販売力強化のために東京都品川区に 連結子会社(株)CST を設立 2006 年 3月 中国に連結子会社中販貿易(上海)有限公司を設立 10 月 大阪府東大阪市に大阪ロジスティクスセンターを開設 2008 年 11 月 フィリピン駐在事務所開設(現連結子会社 CPI) 2009 年 2月 近畿地方販売力強化のため武和テック(有)を連結子 会社化(2010 年 4 月に株式会社化) 2010 年 2011 年 8月 ベトナム駐在事務所開設(現連結子会社 CVC) 10 月 経営効率化のため武和テック(株)を吸収合併 12 月 経営効率化のため(株)CST を吸収合併 2月 東日本への物流機能拡大のため、群馬県邑楽郡大泉町 に北関東ロジスティクスセンターを開設 2012 年 8月 インドネシアに連結子会社 PT.COMNIX INDNESIA を設立 3月 大阪証券取引所 JASDAQ(スタンダード)に上場 9月 インドに販売拠点として連結子会社を設立 10 月 2013 年 メキシコに販売拠点として連結子会社を設立 6月 日三工業(株)の株式を取得、関東地方販売力を強化 9月 共榮機工(株)の株式を取得、関東地方販売力を強化 2015 年 5月 東京証券取引所市場第二部へ市場変更 2016 年 3月 米国に販売拠点として連結子会社を設立 (出所)有価証券報告書 アナリストレポート・プラットフォーム 3 会 大 社 概 株 要 主 大株主(図表 2) 株主 所有株式数 (株) 所有比率 (%) 1,071,200 15.59 1 林 祐介 2 大阪工機従業員持株会 598,518 8.71 3 大阪ビジネスプラニング有限会社 492,000 7.16 4 柳川 修一 425,600 6.19 5 柳川 妙子 401,600 5.84 6 柳川 重昌 372,000 5.41 7 柳川 十糸久 340,000 4.94 8 宿 320,800 4.67 9 柳川 純子 308,000 4.48 10 柳川 歩 239,200 3.48 淳子 (注)1 位の大株主は創業者の親族。3 位の大株主は筆頭株主が代表取締役を 務める不動産の賃貸及び管理を主とする事業会社。4 位、5 位、8 位の 個人株主は創業者の親族で当社代表取締役(6 位の株主)の親族。7 位 の個人株主は創業者の親族で当社常務取締役。9 位、10 位の株主は 7 位株主の親族。 (出所)2016/3 期有価証券報告書 コーポレートアクション 東京証券取引所第一部への指定替え (株)東京証券取引所の承認により、当社株式は本年 6 月 24 日より 東京証券取引所市場第二部から同市場第一部銘柄に指定された。 得意先密着型の営業推進に伴う固定資産の譲渡及び特別損益の発生 広島支店(現況事業所) 、大竹倉庫(同倉庫) 、福岡支店(同事業所)を 譲渡した。得意先密着型の営業所展開の推進に伴い、保有資産の見直しを 行ったことによる。物件引渡しは本年 12 月末までの予定で、広島支店及び 福岡支店は固定資産の譲渡に伴い移転する予定。 なお、同固定資産の譲渡により、17/3 期 1Q(4-6 月)に特別損失(減損 損失)45 百万円を計上し、17/3 期 3Q(10-12 月)において特別利益(固定 資産売却益)95 百万円を計上する予定である。 アナリストレポート・プラットフォーム 4 事 事 業 業 概 の 内 要 容 事業の内容 当社グループは当社、国内子会社(日三工業(株)、共榮機工(株) )及び 海外連結子会社(中阪貿易[上海]有限公司(中国) 、DAIKOH〔THAILAND〕CO.,LTD. (タイ) 、COMINIX〔PHILIPPINES〕,INC. (フィリピン)、PT. COMINIX INDONESIA (インドネシア)、COMINIX VIETNAM CO.,LTD.(ベトナム)、COMNIX INDIA PRIVATE LIMITED(インド)、COMINIX MEXICO,S.A.DE C.V.(メキシコ) 、 COMINIX U.S.A,INC.(米国)の計 11 社にて構成。そして、①切削工具事業 、②耐摩工具事業、③海外事業、④光製品事業の 4 セグメントにて事業を 展開する。 (図表 3)事業の系統図 ※連結子会社 (出所)有価証券報告書 アナリストレポート・プラットフォーム 5 事 業 売 上 概 構 要 成 売上構成 売上の 65%を占める切削工具事業が中核事業。耐摩工具事業 12%、海外 事業 18%、光製品事業 5%の売上構成。近年、ユーザー生産拠点の海外移転 の動きを受け、従来からのタイ、中国に止まらず、タイを除く東南アジア地 域やインド、そして米州に販売拠点を設立し海外展開を加速させたことに加 え、先行進出地域におけるビジネスの順調な拡大から、海外事業売上比重が 増加。海外事業の売上構成は 12/3 期の 9%から 16/3 期には 18%へ拡大。 (図表 4)ゼグメント別売上高(16/3 期) 海外 18% 光製品 5% 耐摩工具 12% 切削工具 65% (出所)会社資料より筆者作成 収 益 構 造 収益構造 ・創業時からの事業である切削工具事業が収益の柱である。ただし稼 ぎ頭は耐摩工具事業で売上比重は 1 割強に止まるが、営業利益の 3 割強を 同事業が占める。近年は耐摩工具事業をキャッシュカウに強力に海外展開 を進めた。海外事業は費用先行から赤字が続いたが、先行拠点での取り扱 い高の順調な拡大により、過去 2 期は連続の黒字で黒字が定着してきた。 ・切削工具事業では直販と卸の 2 つの販売形態を持つ。直販では高性能・ オーダーメイドの商材、そして卸では独自商材(Cominix 商品)の 取り扱い高の増加が利益水準を高める。 ・耐摩工具事業は製罐業界向けで圧倒的なシェアを持つことが高収益の背景 である。売上が伸びず苦戦した前期(16/3 期)でさえセグメン利益率 (営業利益に相当)は 2 桁台を確保した。 ・仕入れは住友電気工業(株)からがおよそ 3 割弱を占める。一方で海外 メーカーからの仕入れが 2 割から 3 割に上る。 ・海外メーカーからの仕入れ比重が高いが、直接外貨建てで輸入する比重が 低いため、輸入取引に伴う為替影響は限られる。ただし、近年の海外事業 拡大により海外子会社決算の為替換算が業績へ与える影響が大きくなっ てきたことには注意を要そう。 アナリストレポート・プラットフォーム 6 、 事 業 概 要 部 門 別 事 業 内 容 ( 切 削 工 具 事 業 ) 部門別事業内容 ① 切削工具事業 当事業は、自動車エンジン部品などの金属加工業者への超硬切削工具 及び特殊鋼切削工具の販売を中心とする。その他に研削工具、保持工具、 精密測定機器、工作機械等の販売も行う。 当事業で取扱う切削工具は自動車部品などの生産ラインの設備であ る工作機械に装着され、高精度に金属加工を行う先端の刃物として使用 される。このため、非常に硬度の高い超硬合金を原料に作られる。しか し、金属加工を繰り返すうちに徐々に摩耗するため、加工精度を維持す るためにも定期的な交換が必要となる。切削工具は消耗品ではあるが、 製造ラインにおいては設備機械の稼働率アップや加工時間の短縮が重 要課題となるため、長寿命化による性能向上が必要とされるとともに、 迅速かつ安定的な工具の供給体制構築が求められている。 こうした中で当事業においては国内では知名度が低いが優れた性能 を有する海外切削工具メーカーの商品輸入販売も手懸け、国内外多くの 切削工具メーカーの代理店となることで豊富な商品ラインナップを取 り揃えるとともに、国内 2 カ所のロジステックセンターからの即納体制 を構築し、ユーザーのニーズに的確に応えてきた。こうした経緯から販 売先は自動車、電機・電子、エネルギー、航空機など幅広い業種にわた るが中でも代表産業である自動車業界向け比重が高い。 (図表 5)切削工具の仕向け先 (出所)会社資料 アナリストレポート・プラットフォーム 7 事 業 概 要 部 門 別 事 業 内 容 (耐摩工具事業、海外事 業 、 光 製 品 事 業 ) ② 耐摩工具事業 当事業では製罐工具等の耐摩工具の販売を行う。耐摩工具とは雄型と雌 型の対になった工具の間に素材を挟み、工具に強い力を与えることで素材 を工具の形に成形する塑性加工において主に使用される。 耐摩工具は金 属の圧延や引き抜き・剪断・打ち抜き等でも使用され、長時間の熱・圧力・ 摩擦に耐えて使用できることが要求されるカスタム商品(顧客の要求仕様 に合わせてオーダーメイドで製作される工具)でもある。 ビールやジュース等の飲料容器缶業界を中心に化学繊維、自動車や通信 機器、半導体等、様々な業界の製造業者が顧客である。ただし、飲料容器 缶などの製罐業界向け比重が高い。同業界向けが売上げの大半を占め、産 業廃棄物処理業界向けが続く。 なお、当社事業セグメントの中で当事業の収益性は相対的に高い。これ は、国内製罐大手向けで圧倒的なシェア(当社推定で 65%から 70%)を 誇ることに加え、耐摩工具がカスタム商品であることなどによる。 ③ 海外事業 当社並びに海外子会社において、主に海外日系顧客向けに切削工具、 耐摩工具等の販売を行う。2002 年のタイを皮切りに、2000 年代には中国、 フィリピン、ベトナムに販売拠点を設立。2010 年代に入ってからは、顧 客の海外生産移管、現地調達、現地生産体制強化などに伴い、インドネシ ア、インド、メキシコに販売拠点を設立、本年 3 月にはアメリカに販売拠 点を設立した。競合他社にはない、海外展開により、急拡大する日系メー カーの海外拠点の開拓を急ぐが、相次ぐ拠点開設による立ち上げ費用先行 から長らく赤字が続いた。しかし、取扱高の順調な拡大と先行拠点での体 質強化等により 15/3 期に黒字化し、16/3 期も連続で黒字となった。 ④ 光製品事業 当事業では、半導体、液晶、太陽電池向けの検査装置への搭載用として、 光学部品、光源装置、光ファイバーの販売を手掛ける。特に照明用光ファ イバー販売の主要顧客は、外観検査装置製造を行う業界である。同業界は 液晶ガラス、フィルム、半導体、薬の錠剤、飲料容器などの生産ラインに おいて製造中の製品の欠陥を CCD カメラで撮影し、生産ラインから欠陥品 をはじく検査装置を製造する。当事業ではその検査装置に搭載する部品と して照明用光ファイバーや光源装置を納入する アナリストレポート・プラットフォーム 8 事 業 概 要 ビ ジ ネ ス モ デ ル 高い提案力と商品力を強みに差別化を図る 中核の切削工具事業において当社は(1)調達力(商材発掘力)、 (2)メー カー機能(最適な加工方法の提供)、 (3)商品力・在庫力(当社のみが取り扱 う多数の商材、オーダーメイド品から標準品まで幅広いニーズに応える豊富 な品揃えと即納体制)の強化により、専門商社として高い参入障壁を築いて いる。切削工具は最適な工具選びが加工速度や精度に大きく影響することか ら当社は顧客製造業者の生産性向上に寄与する提案力の向上にかねてから 注力し、築きあげられた高い提案力を最大の強みに付加価値の高い商品の拡 販を推進。加えて、高い提案力と商品力という当社の強みを直販と卸の 2 つの販売形態で最大限に活用(情報共有による売れ筋商品情報把握や新商材 発掘、規模の利益でのシナジー等)することで競合との差別化を図り収益拡 大目指すといったビジネスモデル。 また、切削工具事業での高い信用をベースに耐摩工具事業においては製罐 業界向けに圧倒的なシェアを構築。同事業をキャシュ・カウに切削事業にお いては手薄であった東日本地域の開拓、更には海外事業強化などを進める。 販 売 形 態 販売形態 ・ 競合他社にはない直販部門と卸部門の 2 部門体制を創業当時から敷く。 ・ 直販部門は使用量の多い大手企業中心に直接販売。カスタム商品中心。 ・ 卸部門は一次卸先の Cominix グループ及び一般代理店を通じ中堅・中小 ユーザー向けに主に標準品や汎用品を販売。 ・ 直販部門で「新商材の発掘」、卸部門で拡販「規模の利益」を得るシナ ジー効果がある。 (図表 6)販売形態 (出所)会社資料 アナリストレポート・プラットフォーム 9 事 業 概 要 Cominix グ ル ー プ Cominix グループ Cominix グループは売上規模等で一定の基準を満たした卸部門の有力な 当社代理店網で会員店は 113 社(16/3 期末) 。 国内大手メーカー製品の販売に加え、当社自社ブランドである Cominix 商品の販売を手掛ける。 Cominix 商品とは国内に類似品のない当社独自発掘による海外の高品質 なメーカーの商材を当社自社ブランドとし、当社が総代理店として国内 で販売を手掛ける商材。他の卸商材に比べ収益性は相対的に高い。 同グループ売上規模は卸部門売上の約 5 割で約 34 億円。カバー地域は、 北は新潟県や福島県、南は福岡県や熊本県、宮崎県など幅広い。 販 買 網 国内及び海外ネットワーク ・ 国内は大阪本社、1 支社(東京支社)、4 支店(北関東、名古屋、広島、福 岡)、14 営業所、4 出張所にて、東北から九州にかけてのユーザーをカ バーする。 ・ また、ロジスティクスセンター(物流拠点)を北関東(群馬県邑楽郡大 泉町)と大阪(大阪府東大阪市)におく。 ・ 海外は中国、東南アジア 4 カ国、インド、メキシコ、アメリカの合計 8 カ国に現地法人をおく。さらには、現地法人の支店や駐在員事務所 19 カ所をおく。競合他社にはない海外ネットワーク構築により、急拡大す る日系メーカーの海外拠点を開拓する。 アナリストレポート・プラットフォーム 10 事 業 環 境 ・ 切削工具生産は 自動車生産悪化 等を受け、足下は 伸び悩む 業 界 分 析 切削工具市場 ・当社主要商材の切削工具の市場規模は年 4,000 億円程度である。 ・国内生産額も同程度だが、生産の一部は外需が占める。一方で海外からの 輸入額が国内メーカーの外需向け生産額と同程度に上る。 ・ (図表 7)に示すように工具生産高は鉱工業生産との相関関係が強い。 ・異次元の金融緩和が発動した 12 年の年末を底に工具市場は緩やかな回復 傾向にあった。しかし、 (図表 8)に示すように若者の車離れや軽自動車 税引上げなどによる国内需要の悪化から自動車生産が落ち込む中、足下の 工具需要には鈍化が見られる。 ・中期的にも人口減少や産業の空洞化などから国内市場の伸び余地は限られ、 新興国市場の拡大やそれに伴う日系企業の海外生産の拡大などから海外 市場の成長余地が大きいと見られている。 (図表 7)鉱工業生産指数と機械工具生産額の月次推移 機械工具生産金額 鉱工業生産指数(右軸) (鉱工業生産指数) (百万円) 50,000 104.0 102.0 40,000 100.0 98.0 30,000 96.0 20,000 94.0 92.0 10,000 90.0 0 88.0 13/6 13/913/1214/3 14/6 14/914/1215/3 15/6 15/915/1216/3 16/6 (出所)経済産業省、生産動態統計及び鉱工業生産指数 (図表 8)国内自動車生産の月次推移 自動車生産台数 前年同月比 (千台) 1,100 (%) 120.0 1,000 110.0 900 100.0 800 90.0 700 80.0 600 70.0 500 60.0 14/1 14/4 14/7 14/10 15/1 15/4 15/7 15/10 16/1 16/4 16/7 (出所) (社)日本自動車工業会 アナリストレポート・プラットフォーム 11 事 業 環 境 ・ 工具流通に販社 が関わる場合、直 販と卸がある。大 手販社は卸が多い 業 界 分 析 工具の流通形態 機械工具の流通は通常商社が介在するが、一部大手ユーザー向けではメー カーが直接ユーザーへ供給するメーカー直販がある。商社が介在する流通は、 メーカーからユーザーへの商材の供給を直接商社が行う直販と、メーカーと ユーザーの間に商社が卸売として関わり、小売りを通じてユーザーへ供給を 行う卸がある。卸は在庫を多く抱える必要があり、業界大手は卸のみを手掛 ける場合が多い。 直販市場ではユー ザーニーズに的確 に答えられる商社 が選別される時代 直販代理店市場 直販では主に大手ユーザー向けに商社がメーカーの直販代理店として商 材を供給する。この直販代理店市場は商社がメーカーの特定・専属的代理店 として関わる、①特定・専属的代理店市場と、②一般代理店市場に分けられ る。正確なデータはないが、市場規模はそれぞれ半々程度と推定される。 特定・専属的代理店は特定メーカーの商材納入を一手に請負う。このため、 ユーザーの動向の影響を受け易く、経営が不安定という側面がある。大手ユ ーザー側では足下で、コストダウン、取引ルートの抜本見直し、海外移転の 加速、生産性向上等の必要性が一段と高まっている。直販代理店市場ではユ ーザーの海外移転やコストダウンなどユーザーニーズに的確に応えられる 商社が選別される時代になっていると言える。 卸による流通ルート 卸の経営環境は多 くの在庫保有や価 格競争から厳しい 卸では商社が一次卸となって、二次卸へ標準品や汎用品を供給する。二次 卸が主に中堅・中小ユーザー向けに商材を供給する。市場が成熟し大きな成 長が見込めない環境下、卸による流通ルートは、在庫を多く抱える必要があ ることに加え、海外標準品との価格競争などにより厳しくなっている。切削 工具以外の商品拡充等の必要もあり、卸のみでの収益性向上は困難と言える。 汎用品等では通販や EC(イーコマース)によりユーザーへ商材供給を行う 新たな販売形態も登場している。 業界再編が一段と 進む公算が大きい 直販、卸ともに事業環境は厳しい 成長市場は海外であることから、国内製造業の海外生産移転が進む中、国 内切削工具市場の拡大が見込めぬ状況になっている。直販代理店市場ではユ ーザーニーズへの的確な対応が生き残りの条件となる一方で、卸ルートでは 従来からの商流では収益向上が困難になっている。業界内の生存競争は厳し さを増すと見られ、再編の動きが一段と強まる可能性が高い。 アナリストレポート・プラットフォーム 12 経 営 力 分 析 同業他社比較 厳しい環境下で 売上を順調に拡 大、粗利益率は高 く、業界平均以上 下表(図表 9)に過去 10 年度における当社売上高推移と、当社粗利益率 推移及び粗利益率の業界単純平均(機械部品卸業界上場 11 社平均)を示し た。過去 10 年度は 8 年度にはリーマンショックに見舞われ、その後の回復 も緩やかな中、業界を取り巻く環境は総じて厳しかったと言える。こうした 中で当社が順調に売上を伸ばしてきたことが注目される。これにはM&Aの 活用や他社に先駆けての海外展開なども寄与したが、筆者は基本的には(1) 調達力、 (2)メーカー機能、 (3)在庫力をベースとした、高い提案力により 顧客の生産性に寄与するといった当社最大の強みを活かした営業展開の継 続が背景にあったと見ている。また、当社の粗利益率は悪い年度でも 18% 台を確保しており、直前の 4 年度は 19%台後半以上を維持し、業界平均を 上回っている。粗利益率は同業に比べ高い水準にあると言える。これは前述 の当社の強みを活かした営業展開の寄与の証左と見ることができよう。 (注)上場 11 社:MonotaRO(3064) 、NaITO(7624) 、山善(8051) 、 ユアサ商事(8074)、フルサト工業(8087)、トラスコ中山(9830), コンセック(9895) 、植松商会(9914)、杉本商事(9932) 、 ミスミグループ本社(9962)、及び当社 (図表 9)売上高推移、売上高総利益率の当社及び業界平均推移 240 20.5% 20.0% 220 19.8% 19.4% 200 19.1% 180 160 18.5% 140 18.0% 18.7% 18.3% 18.1% 18.6% 19.7% 19.7% 19.3% 19.3% 20.0% 19.4% 19.5% 19.0% 18.7% 18.5% 18.7% 19.0% 18.5% 18.0% 18.0% 120 17.5% 100 80 17.0% 6年度 7年度 8年度 9年度 10年度 11年度 12年度 13年度 14年度 15年度 売上高 粗利益率 粗利益率業界平均 (注)8 年度までは単独決算、9 年度以降は連結決算 (出所)各社決算短信より筆者作成 アナリストレポート・プラットフォーム 13 経 営 力 高い調達力と 圧倒的な品揃え 分 析 (1) 調達力(商品発掘力) 前述のとおり、当社は切削工具市場の世界シェア 60%をカバーする 主要かつ多彩なメーカーを仕入先とする。創業以来、技術で先行する 海外メーカーの商材発掘、増強に努めてきたことから海外メーカーと の取引も相対的に多い。そして、国内外の商材を厳選し、ユーザーニ ーズに応える商材を豊富に揃える。 (図表 10)切削工具 (出所)会社資料 当社は販売基盤が弱いが競争力のある商材を製造する海外メーカー 発掘に継続的に取組む。グローバルスタンダードである海外メーカー 品では圧倒的な実績を誇り、国内メーカーの不得手をカバーする。 (図表 11)切削工具メーカー世界シェア (出所)会社資料 当社の主要仕入れ先は、国内メーカーは住友電気工業(5802) 、不二越(6474) など。海外メーカーでは、イスカルジャパン(IMC グープ、イスラエル) 、 ケナメタルジャパン(米)などの主要かつ多彩なメーカーである。 アナリストレポート・プラットフォーム 14 経 営 力 メーカーに近い 機能を備え同業 他社と差別化 分 析 (2)メーカー機能 当社は設計段階から製造業者へ食い込み、製造工程の切削ラインへの納 入を独占する。そして、当社の協力工場 6 社がオーダーメイド品、特殊品の 調達供給を可能にする。商社でありながらメーカーに近い機能を備えること で競合との差別化を図っている。 (3)在庫力タイトル(3行) 高度な在庫力 当社は標準品では高い専門性により選りすぐった在庫を保有する。ユー ザーニーズに合致した常時 10 万点の品揃えを誇る。加えて、全国翌日午 前中配送の即納体制を構築する等、高度な在庫力を有する。 生産性向上に着目 したコスト削減アプ ロ―チに強み (4) 提案力「最適な加工手法を提供」 切削工具はその良し悪しが加工速度、精度に大きく影響する。ものづ くりにおいて生産性に直結する重要な工具である。当社は徹底した研修 により、人材個々の専門性を高め、切削工具の超専門家(目利き)を育 成する。一般的なユーザーの工具コスト削減のアプローチではなく、ユ ーザーの膨大な加工情報をナレッジとして蓄積し、先端工具のコンサル タント集団による製造原価全体の削減をターゲットとする提案を強み とする。下図に生産性向上に着目したコスト削減アプローチ(▲14%) が、一般的な工具コストの削減提案(▲2.5%)に比べ、製造原価削減効 果が大きいことを示す。 (図表 12)当社のコスト削減アプロ―チ (出所)会社資料 アナリストレポート・プラットフォーム 15 業 績 過年度の業績推移 11/3 期以降売上高は拡大基調、営業利益は 3 期連続で最高益を更新 リーマンショック翌年度の 10/3 期を底に売上高は拡大基調が続く。 直販での商品力、提案力を駆使した大手ユーザーの直接開拓や卸での地 域販社の販売拡大に加え、M&A による有力販社の囲い込みや海外強化等 が寄与してきた。主な M&A 実績としては、大手農機メーカーに商圏を持 つ重要販売店武和テック(有)の 2009 年の買収、 2013 年の日三工業(株)、 共榮機工(株)の立て続けでの買収などが挙げられる。 また、利益面も金融危機直後の 10/3 期及び、上場直後で一過性費用 が嵩んだ 13/3 期を除けば概ね増益基調と言える。堅調な業績推移には 2011 年 2 月に群馬県に北関東ロジスティクスセンターを開設し、比較的 手薄であった関東・東北地方で展開力を高め、西日本に比べものづくり の規模が大きい東日本で事業拡大を図っていることが奏功している。 直前の 16/3 期は主力事業の切削工具に加え、海外、光製品が堅調に 推移し増収。主力切削工具事業及びび海外、光製品事業での販売好調に 伴う粗利益の増加で耐磨工具事業の悪化を補い 2 桁営業増益となった。 (図表 13)リーマンショック以降の業績推移 損益計算書 決算期 連結/単体 売上高 売上原価 売上総利益 販売費及び一般管理費 営業利益 経常利益 当期純利益 単位:百万円 09/3 単体 12,806 10,497 2,309 2,173 136 115 44 10/3 連結 10,385 8,405 1,980 1,906 74 30 9 11/3 連結 13,574 11,062 2,512 2,151 361 341 153 12/3 連結 14,900 12,005 2,895 2,384 510 474 224 13/3 連結 15,058 12,078 2,980 2,557 423 441 273 -12.0 -69.3 18.0 1.1 2.0 -18.9 -45.6 19.1 0.7 0.4 30.7 387.8 18.5 2.7 6.3 9.8 41.7 19.4 3.4 7.8 1.1 -17.1 19.8 2.8 8.0 主要経営指標 売上高増加率 営業利益増加率 売上高総利益率 売上高営業利益率 ROE 14/3 15/3 16/3 連結 連結 連結 17,887 19,828 21,158 14,372 15,931 17,218 3,516 3,896 4,300 2,972 3,226 3,526 543 670 774 571 713 757 291 383 390 18.8 28.3 19.7 3.0 7.9 単位:% na 8.5 na 15.5 19.7 20.0 3.4 3.6 9.5 9.0 (注)16/3 期より「在外子会社の収益及び費用の換算方法の変更」を実施。 15/3 期は当変更を遡及適用後の数値を記載。 このため、 15/3 期と 14/3 期は比較不可。 (出所)会社資料より筆者作成 アナリストレポート・プラットフォーム 16 業 績 16/3 期は主力切削工具及び海外、光製品の好調で耐摩悪化をカバー セグメント別 業績動向 16/3 期における主力切削工具事業の業績は増収、セグメント利益が 2 桁 増益となった。建機や農機向けが低迷したが、主要販売先である自動車業界 向けに加え、電機や航空機業界向けに売上が好調だったことが増収に寄与し た。利益面はオリジナル製品の取扱い増などによる粗利益率の改善(前期 18.6%→18.7%)などもあり 2 桁増益となった。製造業の海外移転が続く中 で、増収基調を維持し、粗利益率は 2 割弱を確保している。 耐摩工具事業は主要販売先である飲料容器メーカーへの販売が猛暑の影 響で堅調であった前期に比べ低迷したことから減収となった。利益面は減収 に伴う粗利益の減少から 2 桁減益。とはいえ、利益率(セグメント損益÷外 部売上高)は 15/3 期が 10.7%、16/3 期が 10.0%となり高いシェアを背景 に高水準を維持している。 16/3 期における海外事業は景気後退から先行して進出した中国で販売が 伸び悩んだが、メキシコの連結子会社において自動車業界向けの販売が好調 だったことにより大幅増収となった。こうした中、増収効果で海外拠点網拡 充に伴う先行費用を吸収し大幅増益となった。 光製品事業は在庫一掃などによるリストラ一巡により 12/3 期以降増収基 調。16/3 期は外観検査装置業界向けの販売が好調であったことなどが寄与 し、大幅増収、大幅増益となった。 (図表 14)セグメント別業績推移 決算期 切削工具事業 外部売上高 セグメント損益 耐摩工具事業 外部売上高 セグメント損益 海外事業 外部売上高 セグメント損益 光製品事業 外部売上高 セグメント損益 14/3 15/3 16/3 (百万円) (構成比) (百万円) (構成比) (前期比) (百万円) (構成比) (前期比) 12,032 231 67.3% 42.5% 13,162 304 66.4% 45.0% 109.4% 132.0% 14,041 375 65.3% 48.3% 106.7% 123.1% 2,670 312 14.9% 57.5% 2,770 298 14.0% 44.1% 103.8% 95.5% 2,526 252 11.7% 32.5% 91.2% 84.6% 2,487 -33 13.9% ‐ 3,086 46 15.6% 6.8% na na 3,971 108 18.5% 13.9% 128.7% 233.1% 699 33 3.9% 6.1% 809 28 4.1% 4.1% 115.8% 83.5% 980 41 4.6% 5.3% 121.1% 148.5% (注)海外事業は 16/3 期の会計基準の変更により、15/3 期は遡及修正した数値を 記載も 14/3 期は従来どおりのため 15/3 期と 14/3 期の比較が不可。 (出所)会社資料より筆者作成、 アナリストレポート・プラットフォーム 17 業 績 営業拠点拡充から販管費は増加傾向も販管費率上昇は僅かに止まる 販管費の内訳 及び動向 ・ 国内外での戦略的な営業拠点拡充に伴う人員増や地代家賃の増に加え、 量拡大に伴う荷造運賃の増などにより販管費は増加傾向にある。 ・ また、16/3 期は東京証券取引所市場第二部への市場変更費用などにより その他の販管費が増加した。 ・ ただし、こうした特殊要因があった中でも人件費率増加の抑制などによ り販管費率の増加は 0.1%(16.3%→16.4%)に止まり、かつ 14/3 期の 水準を下回った。販管費は適切にコントロールされていると言える。 (図表 15)販管費内訳及び動向 決算期 人件費 荷造運賃 地代家賃 その他 販売費及び一般管理費 14/.3 15/.3 (百万円) (売上比) (百万円) (売上比) 1866 10.4% 2,011 10.1% 0.8% 149 0.8% 136 192 1.0% 175 1.0% 795 4.4% 874 4.4% 2972 3,226 16.3% 16.6% (百万円) 2,147 162 219 998 3,526 16/.3 (売上比) 10.0% 0.8% 1.0% 4.6% 16.4% (前期比) 106.8% 108.4% 114.4% 114.2% 109.3% (出所)会社資料より筆者作成 17/3期計画 増収増益、前期に続き営業過去最高益更新を計画 ・ 17/3 期は売上高 23,015 百万円(前期比 7.0%増)、営業利益 816 百万円 (同 5.5%増)と増収、増益を当社は計画。経常利益は 797 億円(同 5.3% 増) 、純利益は 464 百万円(同 19.2%増)と各利益段階で増益を目指す。 ・ 国内切削工具のシェア増や海外拡大、耐摩回復が増収に寄与する。 ・ テクニカルセンター設立や新基幹システム(SAP)導入などを予定、費 用が先行するが、増収による粗利の増で吸収し過去最高益を想定する。 (図表 16)セグメント別計画 決算期 16/3実績 17/3計画 (百万円) (構成比) (百万円) (構成比) (前期比) 切削工具事業 外部売上高 セグメント損益 耐摩工具事業 外部売上高 セグメント損益 海外事業 外部売上高 セグメント損益 光製品事業 外部売上高 セグメント損益 14,041 375 65.3% 48.4% 14,783 376 64.2% 46.1% 105.3% 100.2% 2,526 252 11.7% 32.6% 2,652 284 11.5% 34.8% 105.0% 112.6% 3,971 108 18.5% 14.0% 4,600 129 20.0% 15.8% 115.8% 120.1% 980 41 4.6% 5.3% 980 28 4.3% 3.4% 100.0% 68.8% (出所)会社資料より筆者作成 アナリストレポート・プラットフォーム 18 業 績 17/3 期事業別業 績見通し 主力切削工具はシェア拡大、耐摩は回復、海外は一段の伸長を想定 ・ 切削工具事業は鉱工業生産や自動車生産の低迷が想定される中、市場は 伸び悩むと見られる。しかし、直販での提案型の営業をベースに卸で独 自商品(Cominixs)の拡大が見込めることに加え、近年の営業基盤の強 化により関東、東北地区で増販が期待されること、大規模拠点からでは なく顧客に近いサテライト式の小さな拠点から顧客密着型の営業展開 を強化することなどからシェア拡大による増収を見込む。利益面は先行 費用が嵩むため横這いを想定する。 ・ 耐摩工具事業は東日本大震災復興需要の一巡、主要取引先の生産体制集 約や型替え一段落などによる投資の一服、前年の猛暑の反動などが重な り前期が大きく落ち込んだ。通常に戻ることを想定し増収増益を計画。 ・ 海外事業はメキシコ好調持続や新設の米国売上拡大などを想定する一 方で、 中国やタイなど先行拠点の回復を見込み大幅増収 2 桁増益を計画。 ・ なお、現法決算の換算為替は 1 米ドル 110 円相等が前提。 ・ 光製品事業は好調であった前期の反動を見込み業績悪化を想定する。 17/3期 1Q (4-6 月)業績 1Q は大幅営業増益、光製品を除く各事業が揃って悪化した ・ 1Q(4-6 月)は売上高が前年同期比 6.0%減の 4,891 百万円、営業利益 が同 58.2%減の 79 百万円となり、17/3 期は減収大幅減益で発進した。 ・ 事業セグメント別業績は切削工具が売上高 3,148 百万円(前年同期比 7.7%減)、セグメント利益 20 百万円(同 75.6%減)、耐摩工具が売上高 602 百万円(同 10.4%減) 、セグメント利益 64 百万円(同 11.0%減)、 海外が売上高 909 百万円(同 2.9%増) 、セグメント損失 13 百万円(前 年同期は 28 百万円のセグメント利益) 、光製品が売上高 231 百万円(前 年同期比 1.0%減)、セグメント利益 12 百万円(同 70.4%増)となった。 ・ 主力の切削工具は国内自動車生産が伸び悩む中、自動車業界向け主要顧 客に対する売上が低迷したことに加え、前期期末にかけ全店での販売強 化策などにより前倒しで売上が伸びた反動もあり大幅減益。 ・ 耐摩工具利益は前期からの主要販売先である飲料缶メーカー向け低迷 が 1Q はまだ継続したため 2 桁減益となった。 ・ 海外はメキシコで自動車業界向け好調が継続し、タイでは製罐業界向け 売上が好調であったものの、中国の昨年後半からの低迷継続などから 1 桁の増収に止まった。こうした中、人件費の増加が響き赤字となった。 ・ 光製品は外観検査装置業界向け販売が前年同期に比べ減少したが、粗利 益率の改善により大幅増益となった。 ・ 主力の切削工具に加え、耐摩、海外が揃って悪化し大幅減益となった。 アナリストレポート・プラットフォーム 19 業 績 17/3期、 18/3 期筆者予想 17/3 期営業利益は会社計画割れの微増益、18/3 期は 2 桁増益を予想 ・1Q の当社上期営業利益計画の遂行率は 27%に止まった。 ・熊本震災や軽自動車燃費不正問題などから主力切削工具の自動車業界向け が想定以上に厳しかったもよう。また、海外も中国低迷が長引き当社想定 以下の様子で 1Q 業績は全体で当社予想を下回ったと見られる。 ・主力の切削工具事業は直販で買収子会社とのシナジーにより大手ユーザー 向け拡販が見込める、耐摩工具事業は製罐業界向けに足下受注が上向いて いる、海外は後半に前年が悪かった中国の回復が見込まれるなどから、 2Q(7-9 月)はまだ厳しいが下期(10-3 月)は回復の確度が高いと見る。 ・ただし、会社計画前提を上回る円高進行もあり海外事業を中心に 1Q の遅 れの挽回は厳しいと見るため今期は計画に届かす微増益に止まると見る。 ・18/3 期は 2 桁営業増益を予想。販売網の拡充、顧客密着型の営業展開の 推進、オリジナル製品の投入、単体と子会社とのシナジーなどによるシェ ア拡大と先行費用増の一巡から主力の切削工具業績が上向くと見る。 ・加えて、中国の期初からの回復により海外の拡大加速を見込むことによる。 切削工具市場 成熟の中でも成長 余地は大きいとの 見方に変化なし 切削工具シェア拡大と海外の本格貢献が成長を牽引すると見る ・ 営業基盤強化が進む切削工具の国内シェア拡大と他社に先行し販売網 拡充を進めた海外事業の貢献が中期的に成長を牽引すると予想。 理由は、 ① 北関東ロジスティクスセンター開設、販売拠点の新設、直販を主とする 販社のM&A、などにより、従来手薄であり西日本に比べ生産規模の大 きい東日本地域での営業基盤の強化が近年着実に進んだ。 ② 主力の切削工具事業は市場の伸び悩みが想定されるが、営業基盤強化を 進めた当社は顧客密着型の営業展開の推進、オリジナル製品の投入、買 収した連結子会社とのシナジー、などにより東日本地域を中心に切削工 具の国内シェア拡大が見込まれる。また、今期設立予定のテクニカルセ ンターは社員教育や工具実験に活用し提案力の一段の強化を図る方向 であり、工具市場でのシェア拡大の確度を一層高めるだろう。 ③ 海外は従来からの中国、東南アジア地域に加え、近年のインド、メキシ コ、米国拠点開設により今後、日系顧客の生産拡大が想定される地域を ほぼ網羅できる営業網を競合他社に先行して構築した。 ④ 海外は収益的には後発拠点での先行費用や人件費の増など固定費の増 からまだ厳しいが、切削工具に止まらず強化を進める耐摩工具の販売も 順調で数量は着実に拡大しており、拠点網の拡充の一巡も相俟って今後 は本格的な収益貢献が見込まれる。などによる。 アナリストレポート・プラットフォーム 20 (出所)㈱QUICK 上記チャート図の一部又は全部を、方法の如何を問わず、また、有償・無償に関わらず第三者に配布してはいけません。 上記チャート図に過誤等がある場合でも㈱QUICK 社及び東京証券取引所は一切責任を負いません。 上記チャート図の複製、改変、第三者への再配布を一切行ってはいけません。 2014/3 株 価 推 移 2015/3 2017/3 予 (アナリスト) 2016/3 株価(年間高値) 円 355 845 995 - 株価(年間安値) 円 278 321 585 - 月間平均出来高 百株 1,570 3,760 3,279 - 高 百万円 17,887 19,827 21,518 22,415 売 上 営 業 利 益 百万円 543 670 773 790 経 常 利 益 百万円 571 713 757 770 当 期 純 利 益 百万円 291 382 389 425 業 績 推 移 E P S 円 42.40 55.71 56.76 61.88 R O E % 7.9 9.5 9.0 - 流動資産合計 百万円 8,962 10,250 10,646 - 固定資産合計 百万円 2,291 2,312 2,435 - 資 計 百万円 11,254 12,562 13,081 - 借 対 照 表 流動負債合計 百万円 6,351 7,271 7,560 - 主 要 項 目 固定負債合計 百万円 1,043 1,023 1,028 - 負 計 百万円 7,394 8,294 8,589 - 株主資本合計 百万円 3,714 4,003 4,285 - 純 資 産 合 計 百万円 3,860 4,267 4,492 - 営業活動による CF 百万円 183 -206 308 - 投資活動による CF 百万円 -414 -135 -152 - 財務活動による CF 百万円 533 462 -46 - 現金及び現金同等 物の期末残高 百万円 1,112 1,285 1,359 - キャッシュフ ロー計算書 主 要 項 目 産 債 合 合 (注)16/3 期より「在外子会社の収益及び費用の換算方法の変更」を行ったため 15/3 期は遡及修正後の数値を記載した。 (注 2)株価高安・月間平均出来高・EPS は 16 年 1 月 1 日付の株式分割(1 株→2 株)の影響を遡及修正し表示している。 アナリストレポート・プラットフォーム 21 リ 事 関 ス ク 分 す 業 る リ 析 に ス ク 事業に関するリスク 有利子負債の一部は変動金利になっており、リスク回避目的で負債の 短期から長期への転換を利用しているものの、金利上昇で収益が悪化 する恐れ。 与信管理の徹底を図ってはいるが、今後の景気変動等によっては想定 を超えて取引先の信用状態等が悪化する可能性がある。 特に切削工具については多品種の在庫保有により顧客へ即納体制を 確立しているため、需要動向及び市況の変化によっては過剰在庫や多 額の商品評価損が発生するリスクがある。 大地震の発生など自然災害により当社グループ及び取引先の営業員 や従業員が被害を受けることで売上減少、物流機能麻痺、営業拠点の 修復又は代替のための費用発生等が生じる可能性がある。 1954 年8月に住友電気工業(株)と特約販売契約を締結し同社が製 造する切削工具販売を中心に事業を展開してきた。当該契約書には対 象となる製品、販売地域、支払方法及び解除事由等が記載されている。 現在、当社と同社の関係は良好でリスクは低いが、今後、同社との関 係の変化や同社の特約販売戦略や特約販売店各社に対する諸条件や 諸戦略の変更により、特約販売契約の内容等に変更の可能性や契約継 続に支障を来す要因発生による契約解除のリスクがある。 販売チャネルの一つとしてオンライン発注システムを構築しており、 予期せぬシステム障害の発生が機会損失、信用失墜に繋がる恐れ。 海外進出地域での政治、法律、経済等の激変により事業戦略の見直し を余儀なくされるリスクがある。また、外貨建て輸出入取引を行って おり、急激な為替変動により業績が激変するリスクを抱える。 業 関 す 界 る リ に ス ク 業界に関するリスク 切削工具は自動車業界が主要なユーザーであり円高や需要減に伴う 国内自動車・部品生産の減、設備投資縮小による需要減。 米国及び中国などの新興国景気変調による世界的景気後退。 当社主要製品である超硬切削工具に使用される原材料(タングステ ン)は主要切削工具メーカーのほとんどがその調達を中国からの輸入 に依存する。このため、中国の政治、経済情勢等の変化、法律改正、 紛争、自然災害の発生等、不測の事態により原材料が円滑に調達でき なくなった場合、原材料価格の急激に上昇が業界各社の販売活動低迷 や収益悪化に繋がる可能性がある。 アナリストレポート・プラットフォーム 22 デ ィ ス ク レ ー マ ー 1.本レポートは、株式会社東京証券取引所(以下「東証」といいます。 )が実施する「アナリストレポー ト・プラットフォーム」を利用して作成されたものであり、東証が作成したものではありません。 2.本レポートは、本レポートの対象となる企業が、その作成費用を支払うことを約束することにより作 成されたものであり、その作成費用は、当該企業が東証に支払った金額すべてが、東証から株式会社ア イフィスジャパン(以下「レポート作成会社」といいます。 )に支払われています。 3.本レポートは、東証によるレビューや承認を受けておりません(ただし、東証が文面上から明らかに 誤りがある場合や適当でない場合にレポート作成会社に対して指摘を行うことを妨げるものではありま せん) 。 4.レポート作成会社及び担当アナリストには、この資料に記載された企業との間に本レポートに表示さ れる重大な利益相反以外の重大な利益相反の関係はありません。 5.本レポートは、投資判断の参考となる情報の提供を唯一の目的として作成されたもので、有価証券の 取引及びその他の取引の勧誘又は誘引を目的とするものではありません。有価証券の取引には、相場変 動その他の要因により、損失が生じるおそれがあります。また、本レポートの対象となる企業は、投資 の知識・経験、財産の状況及び投資目的が異なるすべての投資者の方々に、投資対象として、一律に適 合するとは限りません。銘柄の選択、投資判断の最終決定は、投資者ご自身の判断でなされるようにお 願いいたします。 6.本レポート作成にあたり、レポート作成会社は本レポートの対象となる企業との面会等を通じて、当 該企業より情報提供を受けておりますが、本レポートに含まれる仮説や結論は当該企業によるものでは なく、レポート作成会社の分析及び評価によるものです。また、本レポートの内容はすべて作成時点の ものであり、今後予告なく変更されることがあります。 7.本レポートは、レポート作成会社が信頼できると判断した情報に基づき記載されていますが、東証及 びレポート作成会社は、本レポートの記載内容が真実かつ正確であり、そのうちに重要な事項の記載が 欠けていないことやこの資料に記載された企業の発行する有価証券の価値を保証又は承認するものでは ありません。本レポート及び本レポートに含まれる情報は、いかなる目的で使用される場合におきまし ても、投資者の判断と責任において使用されるべきものであり、本レポート及び本レポートに含まれる 情報の使用による結果について、東証及びレポート作成会社は何ら責任を負うものではありません。 8.本レポートの著作権は、レポート作成会社に帰属しますが、レポート作成会社は、本レポートの著作 権を東証に独占的に利用許諾しております。そのため本レポートの情報について、東証の承諾を得ずに 複製、販売、使用、公表及び配布を行うことは法律で禁じられています。 <指標の説明について> 本レポートに記載の指標に関する説明は、東京証券取引所ウェブサイトに掲載されております。 参照 URL ⇒ http://www.jpx.co.jp/listing/ir-clips/analyst-report/02.html アナリストレポート・プラットフォーム 23
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